説明

ワーク加工方法及び加工装置

【課題】移動テーブルの移動方向に狭い幅のワークを搬入位置から加工位置へ移動させてもワークの破損を防ぎ、加工品質の劣化を防止する。
【解決手段】ワークとドリルとを相対的に移動させてワークを加工するワーク加工方法であって、固定テーブルからX方向に外れた予め設定された搬入位置にワークを配置する工程と、ワークを第1の速度V1でX方向の加工位置側に移動させる工程(S201)と、搬入位置にあるワークの固定テーブル側のX方向の端部Wxが、固定テーブルから搬入位置側に予め定められたX方向の第1の位置Cxに到達したとき、速度を第1の速度V1から第2の速度Vxに減速する工程(S204,S205)と、ワークの固定テーブル側のX方向の端部Wxが、固定テーブルからX方向の機械原点に対応する第2の位置Oxへ到達したとき、速度を第2の速度V2から第1の速度V1に戻し、加工位置に移動させる工程(S207)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの加工方法及び加工装置に係り、特に、移動テーブルの移動方向に狭い幅のワークを搬入位置から加工位置へ移動させて加工するワークの加工方法及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として例えば特許文献1に記載された発明が公知である。この特許文献1には、スピンドルなどの加工部の数を多くしても、テーブル重量があまり増加しない加工テーブルを備えたワークの加工装置が提案されている。このワーク加工装置の加工テーブルは、加工部に対向する位置にあって、少なくとも該加工部の移動長さ以上の長さを有し、固定部材に固定された固定テーブルと、該固定テーブルに対して前記加工部の移動方向に直交する方向に移動自在に支持され、載置されるワークより前記加工部の移動方向に狭い幅からなる前記載置面を有する移動テーブルと、を備えたものである。そしてこの構成により、移動テーブルの幅を載置されるワークよりも加工部の移動方向に狭くすることで、テーブルの重量を軽くし、加工速度及び加工精度を向上させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−131742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、移動テーブルの移動方向に狭い幅(例えば移動テーブルの移動方向の長さの1/3以下)のワークは作業性の良い搬入位置(移動テーブルの作業者側、即ち、クロスレールに対向する側にある搬入位置)まで引き出すと固定テーブルから外れてしまう。そのため、ワークの移動テーブルから外れた部分が撓むことがある。このように撓むと、ワークを加工位置へ移動させたとき、ワークの撓んだ部分が固定テーブルに衝突する可能性があった。また、複数のドリルが保持されたドリルカセットを交換する場合、移動テーブルを搬入位置まで移動させ、ドリルカセットを交換した後、ワークを加工位置へ移動させるとワークの撓んだ部分が同様に固定テーブルに衝突する可能性があった。このようにワークが撓んで固定テーブルに衝突すると、ワークの加工品質を低下させることになる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、移動テーブルの移動方向に狭い幅のワークを搬入位置から加工位置へ移動させてもワークの破損を防ぎ、加工品質の劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第1の手段は、加工するドリルのY方向の移動距離以上の長さを有し、前記ドリルに対向して固定部材に固定された固定テーブルと、載置されるワークよりも前記Y方向に狭い幅からなる載置面を有し、X方向に移動自在に支持された移動テーブルと、を用い、前記ワークと前記ドリルとを相対的に移動させて前記ワークを加工するワーク加工方法であって、前記固定テーブルからX方向に外れた予め設定された搬入位置に前記ワークを配置する工程と、前記ワークを第1の速度でX方向の加工位置側に移動させる工程と、前記搬入位置にある前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルから前記搬入位置側に予め定められたX方向の第1の位置に到達したとき、速度を前記第1の速度から第2の速度に減速する工程と、前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルからX方向の機械原点に対応する第2の位置へ到達したとき、速度を第2の速度から第1の速度に戻し、前記加工位置に移動させる工程と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
第2の手段は、加工するドリルのY方向の移動距離以上の長さを有し、前記ドリルに対向して固定部材に固定された固定テーブルと、載置されるワークよりも前記Y方向に狭い幅からなる載置面を有し、X方向に移動自在に支持された移動テーブルと、を備え、前記ワークと前記ドリルとを相対的に移動させて前記ワークを加工するワーク加工装置であって、前記移動テーブルの移動速度を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記固定テーブルからX方向に外れた予め設定された搬入位置に前記ワークが配置された後、前記ワークを第1の速度でX方向の加工位置側に移動させ、前記搬入位置にある前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルから前記搬入位置側に予め定められたX方向の第1の位置に到達したとき、速度を前記第1の速度から第2の速度に減速し、前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルからX方向の機械原点に対応する第2の位置へ到達したとき、速度を第2の速度から第1の速度に戻し、前記加工位置に移動させることを特徴とする。
【0008】
なお、第1及び第2の手段において、
・前記第2の速度を4m/min以下とする。
・前記ワークの厚さtに対して、前記第2の速度が、(0.5t+2.5)以下となるように前記厚さtと第2の速度との関係が設定する。
・前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を100mm以上とする。
とするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動テーブルの移動方向に狭い幅のワークを搬入位置から加工位置へ移動させてもワークの破損を防止することが可能となり、加工品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る穴明け加工機の斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1における移動テーブルの斜視図である。
【図4】移動テーブルに設けられる工具載置部を示す図である。
【図5】移動テーブルに載置されたワークと固定テーブルの位置関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係るワーク加工装置のメインルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS102のサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【図8】図6のステップS103のサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【図9】図8のサブルーチンから分岐した一部の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】ワーク1枚の厚さ、移動テーブル速度を変化させて評価試験を行ったときの評価結果を表形式で示す図である。
【図11】図10の評価結果を示す特性図である。
【図12】他の処理例に係るメインルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【図13】図12におけるステップS102aのサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同等な各部には同一の参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る穴明け加工機の斜視図、図2は穴明け加工機の平面図、図3は移動テーブルの斜視図である。
【0013】
これらの図において、本発明の実施形態に係る穴明け加工機100は、ベッド(固定部材)20、固定テーブル50、移動テーブル51、クロスレール21、ガイド23,31、クロススライド22、サドル30、スピンドル40、ドリル41、X方向駆動モータ61、Y方向駆動モータ24、Z方向駆動モータ32及び制御装置6から基本的に構成されている。
【0014】
固定テーブル50は、ベッド20上に2個固定され、移動テーブル51は、載置面51Sにワーク2が載置され、固定テーブル50に形成された3本の溝50Vにそれぞれ摺動自在に支持されている。クロスレール21はベッド20上の奥側に固定され、クロスレール21の前面にはY方向に案内する一対のガイド23が配置されている。クロススライド22はガイド23上をY方向に移動自在に支持され、Y方向駆動モータ24によって駆動される。ガイド31はクロススライド22の前面に一対配置されている。ガイド31上には、サドル30がZ方向に移動自在に支持され、Z方向駆動モータ32によって駆動される。
【0015】
スピンドル40はサドル30上に固定され、スピンドル40の先端には、Y方向へ移動自在なドリル41が図示を省略するコレットチャックにより把持されている。移動テーブル51はX方向駆動モータ61によりX方向に駆動され、同方向に移動する。
【0016】
制御装置6は、X,Y,Zの各方向駆動モータ61,24,32の駆動を制御して移動テーブル51とドリル41とを相対的に移動させ、加工位置に位置決めする。なお、制御装置6はCPU及びメモリを備え、CPUは、制御部と演算部を含み、制御部が命令の解釈とプログラムの制御の流れを制御し、演算部が演算を実行する。また、プログラムは図示しないメモリに格納され、実行すべき命令(ある数値又は数値の並び)を前記プログラムの置かれたメモリから取り出し、前記プログラムを実行する。
【0017】
クロスレール21には、3つのクロススライド22が連結されて1つとなったものが2組設けられている。移動テーブル51は、連結プレート60で3個が一体に連結され、3個連結された2組の移動テーブル群が固定テーブル50を介してベッド20上に設置されている。連結プレート60の下面のベッド上にはX方向に向けてガイド55bが固定され、同じくX方向に向けて配置され、X方向駆動モータ61によって回転駆動されるボールねじ56に連結プレート60の下面に設けられたナット57が螺合している。これにより、X方向駆動モータ61が駆動されると、その駆動方向に応じて3個の移動テーブル51が連結プレートとともにX方向に移動する。
【0018】
なお、本実施形態では、クロススライド22、移動テーブル51を3つ連結したものを備えているが、少なくとも1つを備えていればよく、必ずしも3つである必要はない。また、ワーク2は、例えば、1枚又は2〜6枚が積重ねられたプリント基板である。
【0019】
図4は工具載置部を示す図で、同図(a)は平面図、同図(b)は右側面図である。これらの図において、移動テーブル51にはワーク2が載置され、移動テーブル51のX方向手前側(反クロスレール設置側)に、ドリル載置座(工具載置部)70が設けられている。ドリル載置座70上には、Y方向に複数のドリル41を保持する複数のドリルカセット71(図では6個)と、ドリル41を保持可能な2個のドリルホルダ72a,72bとが載置されている。これは、1本のドリル41で加工できる穴数には限界があり、ドリル41を交換するためである。
【0020】
また、ドリル載置座70は、プリント基板2の端部を支持するサポート73が設けられ、固定テーブル50の前記サポート73と対向する位置には、固定テーブル50の幅方向にわたってサポートとの衝突を防止するための逃げ溝50gが設けられている。サポート73は、この逃げ溝50gを通過することによって固定テーブル50と衝突することなく移動可能となっている。
【0021】
図5は、移動テーブルに載置されたワーク2と固定テーブル50の位置関係を示す説明図である。
【0022】
同図において、ワーク2は基準ピンP、Pによって移動テーブル51上に位置決めされ、固定される。機械原点Oは、予め制御装置6に設定されている装置の基準点である。基準ピンP、Pは、機械原点OからのXY方向の中心座標が既知である。そのため、基準ピンP,Pの中心座標は、移動テーブル51に設置された図示を省略したリニアスケールからの信号に基づいてリアルタイムで演算される。なお、本実施形態では、図示したX−Y座標図の矢印方向を正にとっている。すなわち、紙面上下方向をX方向、紙面左右方向をY方向、機械原点Oの座標を基準として紙面上方向を正のX方向、紙面下方向を負のX方向、紙面右方向を正のY方向、紙面左方向を負のY方向としている。
【0023】
ワーク2を搬入する場合には、作業者が搬入しやすくするために移動テーブル51を作業者側(紙面下方)に移動させ、その状態に移動テーブル51を位置させ、当該移動テーブル51上の搬入位置にワーク2を載置する。このとき、X方向の長さが短いワーク2は固定テーブル50から外れた状態で移動テーブル51に載置される。図5はこの状態を示す。なお、ワーク2のY方向の幅は、例えば、400mmである。
【0024】
はワーク2のクロスレール21側(紙面上方)の端部のX座標である。ワーク2は端部と基準ピン穴の位置が予め分かっているので、基準ピンPのX座標に距離Aを加算した値がWとなる。Nは固定テーブル50のX方向の幅で、例えば60mmである。Qは固定テーブル50の作業者側端部のX座標である。Cはワーク2を搬入位置から加工位置(ワーク2が固定テーブル50上へ載置される位置)へ移動させる際、減速を開始する位置のX座標である。機械原点Oは固定テーブル50のY方向の中心線上で移動テーブル51上の紙面左方にある。機械原点OのX座標Oは減速された移動テーブル51を元の速度に戻す位置のX座標である。ここでは、例えば、O〜Q=30mmである。
【0025】
図6は、本実施形態に係るワーク加工装置のメインルーチンの処理内容を示すフローチャートであり、制御装置6のメモリにプログラムされ、CPUによって実行される。
【0026】
この処理では、まず、作業者側に移動させた移動テーブル51上にワーク2を載置した後(ステップS101)、ワーク移動処理に移行し、ワーク2を加工位置に移動させる(ステップS102)。
【0027】
次に、ワーク2の移動が終了すると、ワーク加工処理に移行し(ステップS103)、ワーク2の加工が終了した後、作業者側に移動させた移動テーブル51上のワーク2を作業者が取り外して搬出する(ステップS104)。そして、次に加工するワーク2がある場合はステップS101に戻って、次のワーク2を移動テーブル51上に載置した後、ステップS102以降の処理を繰り返し、全ワークの加工が終了すると、このメインルーチンを終了する。
【0028】
図7は、ステップS102のサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
このサブルーチンでは、回数nを1、ワーク2端部のX座標であるW(0)をW(1)、移動テーブル51の移動速度Vを第1の速度V(初期速度)とし(ステップS201)、ワーク2端部のX座標W(n)を一定周期(例えば0.5秒)で制御装置6に記憶する(ステップS202)。その後、X座標を比較し、正方向への移動かどうかを判断する(ステップS203)。この判断で、W(n)がW(n−1)以上である場合には、正のX方向への移動であるので、ステップS204に移行し、ワーク2端部のX座標W(n)が減速を開始する位置C以上、機械原点のX座標O以下の範囲に入るかどうかを判断する。
【0029】
ステップS204で、ワーク2端部のX座標W(n)がC以上かつO以下である場合、移動テーブル51の速度を第2の速度Vに変更し(ステップS205)、回数nに1を加算(ステップS206)した後、再びステップS202に戻り、ステップS202以降の処理を繰り返す。
【0030】
ステップS203で負のX方向への移動(すなわちW(n)がW(n−1)より小さくなる)であると判断された場合には、図9(b)のステップS405に移行する。このステップS405では、一連の処理を停止し、アラームを出して作業者へ知らせる。
【0031】
ステップS204でワーク2端部のX座標W(n)がOより大きくなる場合には、移動テーブル51の移動速度Vを第1の速度Vに戻し加工位置までワークを移動させた後(ステップS207)、ワーク移動処理(ステップS102)を終了し、ワーク2の加工処理のサブルーチンに以降する(S603)。
【0032】
図8及び図9はステップS103のサブルーチンの処理内容を示すフローチャートである。ステップS103のワーク加工処理では、まず、処理回数m及びmを1とし(ステップS301)、プリント基板に穴H(m)を加工した後(ステップS302)、処理回数mが予め設定された処理回数Hmdを超えたかどうかを判断する(ステップS303)。予め設定された処理回数Hmd以下ならば、図9(a)のフローチャートに移行し、交換用ドリルがあるかどうかを判断する(ステップS401)。予め設定された処理回数Hmdは、1本のドリル41で加工できる穴数であり、加工に先立って例えば3000(回)に設定される。
【0033】
ステップS401の判断で、交換用ドリルがドリルカセット71にない場合には、ドリルカセット71を交換し(ステップS402)、ドリル交換後(ステップS403)、処理回数mを0にリセットした後、図8のフローチャートのステップS304に移行する。
【0034】
他方、ステップS303で処理回数mが予め設定された処理回数Hmdよりも大きい場合は、ステップS304に移行して、処理回数mとHmxとの大小関係を判断する。Hmxは、1枚のワーク2で加工される全穴数であり、加工に先立って予め設定される。この判断で、処理回数mがHmx以下の場合には(ステップS304:N)、処理回数m及びmに1を加算し(ステップS305)、ステップS302以降の処理を繰り返す。1枚のワーク2で加工される全穴数であるHmxより大きければ、処理は終了したので、ワークの加工を終了し、加工したワークを搬出する。
【0035】
図10はワーク1枚の厚さt、移動テーブル速度の第2の速度Vを変化させて評価試験を行ったときの評価結果を表形式で示す図、図11はその評価結果を示す特性図である。
【0036】
図10において「×」はワーク2に傷及び破損が、「△」はワーク2の一部に傷がそれぞれ目視にて発見された場合を示し、「O」は傷及び破損が発見されない場合を示す。厚さが最も薄い0.8mmのワーク2では撓みも最大になるが、第2の速度Vを2.5m/minにすれば傷及び破損が発見されなかった。従って、本実施形態において、第1の速度Vを60m/minとし、第2の速度Vをワーク2の厚さが0.8mmのとき2.5m/min以下、1.0mm〜2.0mmのとき3.0m/min以下、3.0mmのとき4.0m/min以下とすればよいことが分かった。なお、図中の結果はワーク2が1枚のときであるが、ワーク2を5〜6枚重ねた場合でも同じ結果となった。
【0037】
図11から移動テーブル51の第2の速度Vとワーク厚さtとの関係は、
≦((v−v)/(t−t))t+α ・・・(1)
で表される。
【0038】
ここで、図11から、ワーク厚さt=3mmのとき、移動速度v=4m/minであり、ワーク厚さt=1mmのとき、移動速度v=3m/minであるから移動テーブルの第2の速度Vは、
≦0.5t+2.5 ・・・(2)
で表される。
【0039】
また、移動テーブル51は、実際の移動速度が第1の速度V=60m/minから第2の速度V=2.5m/minに瞬間的に変更されず、第2の速度Vに変更されるまでにある程度の距離移動してしまう。従って、C〜O間の距離は、移動テーブル速度が第1の速度V=60m/minから第2の速度V=2.5m/minに変更されるのに十分な長さとなるように加工に先立って予め設定される。この長さは、例えば、C〜O=100mm以上である。前述のようにO〜Q=30mmであるので、Q〜C=70mm以上となる。
【0040】
以上のように処理すると、移動テーブル51の移動方向に狭い幅のワークを搬入位置から加工位置へ移動させても、撓んだワーク2のクロスレール21側の端部が固定テーブル50の作業者側の端部に接触したときの衝撃を大幅に低減することができる。その結果、ワーク2の破損を防止することが可能となり、加工品質の低下を招くことがなくなる。
【0041】
なお、前記ステップS6のサブルーチンである図7のステップS204の処理に代えて、図13のフローチャートに示すステップS204aの処理とすることによってワーク2の移動処理を実行することもできる。
【0042】
すなわち、図12は、他の処理例に係るメインルーチンの処理内容を示すフローチャートであり、図6に示したメインルーチンとはステップS102のサブルーチンの内容が異なるだけである。ステップS102aのサブルーチンは、図13に示すように図7に示したサブルーチンのステップS204をステップS204aの処理としたものである。具体的には、ステップS204では、ワーク2端部のX座標W(n)がC以上、O以下の範囲に入るかどうかを判断しているが、図13のステップS204aの処理では、ワーク2端部のX座標W(n)が、C以上、Q+β以下の範囲に入るかどうかを判断する。
【0043】
ここでは、固定テーブル50の作業者側端部のX座標であるQxにβを加算した値を判断の基準の1つとしている。βは、固定テーブル50端部とワーク2端部の平行度に誤差があってもワーク2の一部又は全てが固定テーブル50に載るように予め設定される。通常、プリント基板は前記平行度の誤差が1mm以下であるので、ここでは、β=1mmに設定される。
【0044】
以上のことから、ステップS204aにおいて
(n)>Q+β
であれば、移動速度を第1の速度Vに変更するので、第2の速度Vで移動する距離を最短にすることができる。これにより、加工効率を向上させることが可能となる。
【0045】
なお、特許請求の範囲におけるドリルは本実施形態では、符号41に、固定テーブルは符号50に、ワークは符号2に、移動テーブルは符号51に、固定テーブルからX方向に外れた予め設定された搬入位置にワークを配置する工程はステップS101に、ワークを第1の速度でX方向の加工位置側に移動させる工程はステップS201に、第1の速度はVに、速度を第1の速度から第2の速度に減速する工程はステップS205に、第2の速度はVに、固定テーブル側のX方向の端部はWに、第1の位置はCに、速度を第2の速度から第1の速度に戻し、前記加工位置に移動させる工程はステップS207に、第2の位置はOに、制御手段は制御装置6に、それぞれ対応する。
【0046】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
2 ワーク
6 制御装置
41 ドリル
50 固定テーブル
51 移動テーブル
ワークの減速を開始する位置のX座標
第1の速度
第2の速度
ワークのクロスレール側の端部のX座標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工するドリルのY方向の移動距離以上の長さを有し、前記ドリルに対向して固定部材に固定された固定テーブルと、
載置されるワークよりも前記Y方向に狭い幅からなる載置面を有し、X方向に移動自在に支持された移動テーブルと、
を用い、前記ワークと前記ドリルとを相対的に移動させて前記ワークを加工するワーク加工方法であって、
前記固定テーブルからX方向に外れた予め設定された搬入位置に前記ワークを配置する工程と、
前記ワークを第1の速度でX方向の加工位置側に移動させる工程と、
前記搬入位置にある前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルから前記搬入位置側に予め定められたX方向の第1の位置に到達したとき、速度を前記第1の速度から第2の速度に減速する工程と、
前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルからX方向の機械原点に対応する第2の位置へ到達したとき、速度を第2の速度から第1の速度に戻し、前記加工位置に移動させる工程と、
を備えていることを特徴とするワークの加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク加工方法において、
前記第2の速度が4m/min以下であること
を特徴とするワーク加工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のワーク加工方法において、
前記ワークの厚さtに対して、前記第2の速度が、(0.5t+2.5)以下となるように前記厚さtと第2の速度との関係が設定されていること
を特徴とするワーク加工方法。
【請求項4】
請求項1に記載のワーク加工方法において、
前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離が100mm以上であること
を特徴とするワーク加工方法。
【請求項5】
加工するドリルのY方向の移動距離以上の長さを有し、前記ドリルに対向して固定部材に固定された固定テーブルと、
載置されるワークよりも前記Y方向に狭い幅からなる載置面を有し、X方向に移動自在に支持された移動テーブルと、
を備え、前記ワークと前記ドリルとを相対的に移動させて前記ワークを加工するワーク加工装置であって、
前記移動テーブルの移動速度を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記固定テーブルからX方向に外れた予め設定された搬入位置に前記ワークが配置された後、
前記ワークを第1の速度でX方向の加工位置側に移動させ、
前記搬入位置にある前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルから前記搬入位置側に予め定められたX方向の第1の位置に到達したとき、速度を前記第1の速度から第2の速度に減速し、
前記ワークの前記固定テーブル側のX方向の端部が、前記固定テーブルからX方向の機械原点に対応する第2の位置へ到達したとき、速度を第2の速度から第1の速度に戻し、前記加工位置に移動させること
を特徴とするワーク加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のワーク加工装置において、
前記第2の速度が4m/min以下であること
を特徴とするワーク加工装置。
【請求項7】
請求項5に記載のワーク加工装置において、
前記ワークの厚さtに対して、前記第2の速度が、(0.5t+2.5)以下となるように前記厚さtと第2の速度との関係が設定されていること
を特徴とするワーク加工装置。
【請求項8】
請求項5に記載のワーク加工装置において、
前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離が100mm以上であること
を特徴とするワーク加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−63484(P2013−63484A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203161(P2011−203161)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】