説明

ワーク設置装置とワーク設置方法

【課題】 わずかに位置誤差があってもワーク搬送装置のロボットハンドが被設置部材に干渉することなくワークを把持、搬送することができるとともに、ワークに把持部を設けなくても搬送できるワーク設置装置とワーク設置方法を提供することである。
【解決手段】 3次元的に移動可能な把持機構5に取り付けられ、水平方向に移動可能であり、その間に外周面1bを開放可能に把持可能な複数のツメ部材12と複数のツメ部材12を互いに連動して水平方向に駆動する開閉アクチュエータ14とを備える。ツメ部材12はワーク1の外周面1bを把持する把持面12bと水平な底面1cを支持する支持面12cとを有する。被設置部材2は、上端部に案内テーパ面2bを有しワーク1の外周面1bと嵌合する嵌合部2aと、ワーク1の底面1cを支持する底面支持部2cと、ワーク1が鉛直に下降してその底面1cが底面支持部2cに載る位置まで複数のツメ部材12と干渉しないように設けられた切り欠き溝2dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産システムにおけるワーク用装置とワーク設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産システムにおいて、あるワーク(例えば部品)を別の部材(例えば、本体や治具)まで搬送し、その部材に設置することが頻繁に行われる。
この場合、ワーク搬送装置およびワークが設置される部材(以下、「被設置部材」と呼ぶ)は、その機能上、ワーク搬送装置はワークを確実に把持・搬送する必要があり、被設置部材は正確に位置決めする必要がある。
図1に示す未公開の特許文献1で示されているように、ワーク100をロボットなどで把持する際、ハンドの爪112が被設置部材102と干渉しないよう,ワーク100に把持部100bを設けることが一般的である。
しかし、ワーク形状によっては把持部100bを設けることが難しい場合がある。
【0003】
一方、図2に示す特許文献2のように、ワーク200に把持部を設けず,指と被設置部材201との干渉を避けるため、被設置部材201にくぼみ203を設けるアイデアはあるが、ロボットハンド202など剛な(位置決めができる)ものでつかんで搬送しようとすると、位置誤差などの影響でかじったりして、うまく搬送できない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2009−045745、未公開
【特許文献2】特開2003−103443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、把持部100bを設けることが難しいワークに対しても剛な部材で把持、搬送できるものが必要となっていた。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、わずかに位置誤差があってもワーク搬送装置のロボットハンドが被設置部材に干渉することなくワークを把持、搬送することができるとともに、ワークに把持部を設けなくても搬送できるワーク設置装置とワーク設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ワークが鉛直な外周面とその下端に位置する水平な底面とを有し、
前記ワークを搬送して被設置部材の所定位置に設置するワーク設置装置であって、
3次元的に移動可能な把持機構に取り付けられ、水平方向に移動可能であり、その間にワークの前記外周面及び底面を開放可能に把持可能な複数のツメ部材と、
該複数のツメ部材を互いに連動して水平反対方向に駆動する開閉アクチュエータとを備え、
前記ツメ部材は、ワークの外周面を把持する把持面とワークの底面を支持する水平な支持面とを有し、
前記被設置部材は、上端部に案内テーパ面を有しワークの外周面と嵌合する嵌合部と、ワークの底面を支持する底面支持部と、ワークが鉛直に下降してその底面が底面支持部に載る位置まで複数のツメ部材と干渉しないように設けられた切り欠き溝とを有する、ことを特徴とするワーク設置装置が提供される。
【0008】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、前記ツメ部材の把持面は、前記外周面と当接する鉛直面であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明によれば、ワークが鉛直な外周面とその下端に位置する水平な底面とを有し、
前記ワークを搬送して被設置部材の所定位置に設置するワーク設置方法であって、
(A) ワークの底面を複数のツメ部材の水平な支持面で支持し、かつワークの前記外周面を複数のツメ部材の把持面で把持して、ワークを3次元的に移動し、前記被設置部材に設けられた切り欠き溝を通してワークの底面を被設置部材の嵌合部の案内テーパ内まで搬送し、
(B) ワークの底面を複数のツメ部材の水平な支持面で支持したまま、複数のツメ部材を互いに連動して水平外方に駆動して、ワークの外周面と複数のツメ部材の把持面との間に所定の隙間を形成し、
(C) 前記隙間の範囲でワークが自由に水平移動かつ鉛直移動できる状態で、ワークの底面が被設置部材の底面支持部に達するまで、前記被設置部材に設けられた切り欠き溝を通して把持機構を鉛直に下降させて、底面を被設置部材の嵌合部に組み付け、
(D) 次いで、複数のツメ部材を互いに連動して水平外方に駆動して開放する、ことを特徴とするワーク設置方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の装置および方法によれば、被設置部材の円周の一部が切り欠かれているため、ロボットハンドのツメと干渉せずにワークを把持、搬送することができる。
【0011】
また、ワークに把持部を設ける必要が無いため、より広範なワークに対し、ワーク設置装置で正確に搬送、設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】特許文献1の装置の模式図である。
【図2】(A)上から見た特許文献2の装置の模式図である。(B)横から見た特許文献2の装置の模式図である。
【図3】本発明のワーク設置装置を備えた搬送ロボットの全体構成図である。
【図4】本発明の第1実施例におけるワーク設置機構の斜視図である。
【図5】本発明の第1実施例のAから見た平面図である。
【図6】本発明の第1実施例のBから見た平面図である。
【図7】本発明のワーク設置装置の作動説明図である。
【図8】本発明の第2実施例におけるワーク設置装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図3は、本発明のワーク設置装置を備えた搬送ロボットの全体構成図である。この図において、1はワーク、2は本発明の置き治具、3はテーブル、4はロボット、5は把持機構(例えばロボットハンド)、10はワーク設置装置である。
【0015】
置き治具2は、ワーク1が設置される被設置部材であり、テーブル3の上面の所定位置に正確に位置決めされている。以下、置き治具2を「被設置部材2」と呼ぶ。
【0016】
ロボット4は、この例では、多関節ロボットであるが、本発明はこれに限定されず、その他のロボットであってもよい。
またこの図において、6は制御装置であり、指令信号によりロボット4を3次元的に数値制御し、把持機構5を3次元的に移動するようになっている。
【0017】
この例において、ロボット4は、制御装置6からの指令信号により、例えば、図示しない支持台上に置かれたワーク1を把持機構5に取り付けられたワーク設置装置10で把持し、ワーク1を予め定められた搬送経路に沿って数値制御により3次元的に搬送し、テーブル3の上面の所定位置に正確に位置決めされている被設置部材2に設置するようになっている。
【0018】
図4は、本発明の第1実施例のワーク設置機構の斜視図である。
Aから見た平面図を図5に示し、Bから見た平面図を図6に示す。
【0019】
図5は、本発明の第1実施例のワーク設置装置をAから見た平面図である。
【0020】
この図において、ワーク1は、本体1a、外周面1b、および底面1cとからなる。
本体1aは、鉛直な軸線Z−Zを有する。また、外周面1bは、底面1cより上方に垂直に設けられている。底面1cは水平に設けられている。
なおこの例において、本体1aは円筒形または中空円筒形であり、外周面1bは本体1aの円周面である。
【0021】
本発明のワーク設置装置10は、複数のツメ部材12と開閉アクチュエータ14を備える。
【0022】
ワーク設置装置10の本体11は、上述した把持機構5の下部に取り付けられ、3次元的に移動可能に構成されている。また、本体11は、上述した制御装置6により、ワーク1を被設置部材2まで搬送して被設置部材2に設置する行程において、ワーク設置装置10の本体11を一定の姿勢(水平姿勢)に保持するようになっている。
【0023】
複数(この例では2つ)のツメ部材12は、本体11に水平方向に移動可能に取り付けられており、ワーク1の外周面1bと底面1cを開放可能に把持できる。すなわち、この例で2つのツメ部材12は、ワーク1の軸線Z−Zに対して互いに反対方向に移動して、その水平方向の間隔を開閉でき、閉位置Cでワーク1の外周面1bを把持し、開位置Oで外周面1bを開放して、その外端より外側に位置するようになっている。
【0024】
開閉アクチュエータ14は、複数のツメ部材12を互いに連動して水平反対方向に駆動する。この開閉アクチュエータ14は、例えば、(1)リンク機構と電動シリンダの組み合わせや(2)サーボモータとラック&ピニオンの組み合わせを用いることができる。
なお、開閉アクチュエータ14は、ツメ部材12の開閉位置を数値制御できることが好ましいが、本発明はこれに限定されず、開閉位置を3段階(閉、開、中間)に変化できる機構であればよい。
【0025】
図5において、各ツメ部材12は、ハンド部12eに設けられており、支持面12aと把持面12bを有する。
支持面12aは水平であり、底面1cを支持する機能を有する。
把持面12bは、鉛直面からなり、V字状に開いて外周面1bを把持する機能を有する。
すなわち、鉛直面は、外周面1bと当接する鉛直V字面である。V字状の開き角度θは、この例では80°であるが、開き角度θは、この例に限定されず、ワーク1を正しい姿勢で把持できる限りで任意に設定することができる。
なお、ツメ部材12の形状は、上述した例に限定されず、例えばコの字形であってもよい。
【0026】
図6は、本発明の第1実施例のワーク設置装置のBから見た平面図である。
【0027】
この図において、ワーク1が設置される被設置部材2(置き治具)は、上端部に案内テーパ面2bを有しワーク1の外周面1bと嵌合する嵌合部2aとワーク1の底面1cを支持する底面支持部1cとをその上端部に有し、ワーク1が鉛直に下降してその底面1cが底面支持部2cに載る位置まで複数のツメ部材12と干渉しないように設けられた切り欠き溝2dを有する。
この例において、被設置部材2は円筒形の円周の一部をツメ部材12のハンド部12eの幅より大きく切り欠いた形状をしており、被設置部材2とツメ部材12とが干渉しないように構成されている。嵌合部2aは円筒面を切り欠いた形状をしており、案内テーパ面2bは接頭円錐面切り欠いた形状をしている。
【0028】
図7は、本発明のワーク設置装置の作動説明図である。この図において、(A)はワークを把持し案内テーパ面まで搬送している図、(B)はツメ部材12を水平外方に駆動してワーク外周面1bとツメ部材12との間に所定の隙間を形成している図、(C)はワークを設置している図、(D)は設置完了の各行程を示している。
以下、この図を参照して、本発明のワーク設置方法を説明する。
なおワーク設置装置10は、上述した把持機構5の下部に取り付けられ、制御装置6により、一定の姿勢を保持する。ここで「一定の姿勢」とは、ワーク1の軸線Z−Zに対して、ツメ部材12が対称(水平)に移動する姿勢を意味する。
【0029】
ワーク把持行程(A)において、図示しない支持台上に置かれたワーク1の底面1cを複数のツメ部材12の水平な支持面12aで支持し、かつワークの外周面1bを複数のツメ部材12の把持面12b、すなわち鉛直面で把持して、ワーク1を3次元的に移動し、被設置部材2に設けられた切り欠き溝2dを通してワーク1の底面1cを被設置部材2の嵌合部2aの案内テーパ2bの内側まで搬送する。
なお、図示しない支持台からのワークの搬送動作中は、ワーク1の軸線Z−Zを鉛直以外に傾けてもよい。
【0030】
設置準備(B)において、ワーク1の底面1cを複数のツメ部材12の水平な支持面12aで支持したまま、複数のツメ部材12を互いに連動して水平外方に駆動して、ワーク1の外周面1bと複数のツメ部材12の把持面12bすなわち鉛直面との間に所定の隙間を形成する。
ここで「所定の隙間」は、案内テーパ2bの内側まで搬送されたワーク1の底面1cが、被設置部材2の嵌合部2aに嵌合するために要する水平移動距離よりも大きい必要がある。すなわち、所定の隙間は、例えばこの水平移動距離の最大値である案内テーパ2bの最大半径と最小半径の差に設定するのがよい。
【0031】
設置中(C)において、隙間の範囲でワーク1が自由に水平移動かつ鉛直移動できる状態で、底面1cが被設置部材2の底面支持部2cに達するまで、被設置部材2に設けられた切り欠き溝2dを通して把持機構を鉛直に下降させて、底面1cを被設置部材2の嵌合部2aに設置する。
ここで「所定の高さ」とは、ワーク1を被設置部材2に正確に組み付けた際の底面1cよりも低い位置をいう。すなわち、底面1cが被設置部材2に対し所定の高さに達した状態において、ワーク1は被設置部材2に正確に組み付けられており、かつ底面1cと支持面12aは完全に離れている。
【0032】
次いで、設置完了(D)において、複数のツメ部材12を互いに連動して水平外方に駆動して、その間の外周面1bを開放し、ワーク設置装置10をワーク把持行程(A)まで復帰させる。
【0033】
図8は本発明の第2実施例におけるワーク設置機構の斜視図である。第2実施形態のようにワーク1は直方体でもよい。被設置部材2の嵌合部が向かい合った2つの平行な平面からなる。この場合、水平方向2軸のうち1軸のみの位置決めとなる。
【0034】
そのほかの部位に関しては第1実施形態と同様である。
【0035】
上述した本発明の装置および方法によれば、被設置部材2の円周の一部が切り欠かれているため、ツメ部材12と干渉せずにワーク1を正確に搬送・設置することができる。
【0036】
また、ワーク1に把持部を設ける必要が無いため、より広範なワークに対し、ロボットで正確に搬送・設置することが可能になる。
【0037】
従って、本発明によれば、専用の位置出し装置を用いずに、ワークと被設置部材の自動設置をスムーズに行うことができ、搬送装置側に過剰な力を免れる機構が不要であり把持機構を小型・軽量化でき、かつ制御がシンプルであり、制御負荷を小さくできる。
【0038】
なお、上記において、本発明の実施形態について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0039】
1 ワーク
1a 本体
1b 外周面
1c 底面
2 被設置部材
2a 嵌合部
2b 案内テーパ面
2c 底面支持部
2d 切り欠き溝
10 ワーク設置装置
11 本体
12 ツメ部材
12a 支持面
12b 把持面
12e ハンド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが鉛直な外周面とその下端に位置する水平な底面とを有し、
前記ワークを搬送して被設置部材の所定位置に設置するワーク設置装置であって、
3次元的に移動可能な把持機構に取り付けられ、水平方向に移動可能であり、その間にワークの前記外周面及び底面を開放可能に把持可能な複数のツメ部材と、
該複数のツメ部材を互いに連動して水平反対方向に駆動する開閉アクチュエータとを備え、
前記ツメ部材は、ワークの外周面を把持する把持面とワークの底面を支持する水平な支持面とを有し、
前記被設置部材は、上端部に案内テーパ面を有しワークの外周面と嵌合する嵌合部と、ワークの底面を支持する底面支持部と、ワークが鉛直に下降してその底面が底面支持部に載る位置まで複数のツメ部材と干渉しないように設けられた切り欠き溝とを有する、ことを特徴とするワーク設置装置。
【請求項2】
前記ツメ部材の把持面は、前記外周面と当接する鉛直面である、ことを特徴とする請求項1に記載のワーク設置装置。
【請求項3】
ワークが鉛直な外周面とその下端に位置する水平な底面とを有し、
前記ワークを搬送して被設置部材の所定位置に設置するワーク設置方法であって、
(A) ワークの底面を複数のツメ部材の水平な支持面で支持し、かつワークの前記外周面を複数のツメ部材の把持面で把持して、ワークを3次元的に移動し、前記被設置部材に設けられた切り欠き溝を通してワークの底面を被設置部材の嵌合部の案内テーパ内まで搬送し、
(B) ワークの底面を複数のツメ部材の水平な支持面で支持したまま、複数のツメ部材を互いに連動して水平外方に駆動して、ワークの外周面と複数のツメ部材の把持面との間に所定の隙間を形成し、
(C) 前記隙間の範囲でワークが自由に水平移動かつ鉛直移動できる状態で、ワークの底面が被設置部材の底面支持部に達するまで、前記被設置部材に設けられた切り欠き溝を通して把持機構を鉛直に下降させて、底面を被設置部材の嵌合部に組み付け、
(D) 次いで、複数のツメ部材を互いに連動して水平外方に駆動して開放する、ことを特徴とするワーク設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−253624(P2010−253624A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107439(P2009−107439)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】