説明

一体型脈管搬送システム

流体を搬送するために挿入位置で患者に挿入可能なカテーテルを受けるように構成された枠を備える一体型脈管搬送システムである。枠は、第1のハブと、第2のハブと、ハブ間に延在し且つ管状側方部材を含む、1対の可撓性側方部材とを含む。一体型脈管搬送システムはさらに、カテーテルと流体連通する流路であって、第1及び第2のハブの少なくとも一方及び管状側方部材を通り、流体がカテーテル内の流体の流れとは異なる方向に流れる固定された転向部分を含む、流路を備える。第1及び第2のハブは、挿入位置の周囲に、且つカテーテルの両端部に分散配置された、患者に対する定着点となり、それによって枠を患者に定着し、カテーテルを安定させる。さらに、一体型脈管送達システムの使用方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年8月12日に出願した米国特許出願第12/855,013号の優先権を主張するものである。本出願は、さらに、2009年8月14日に出願した米国仮特許出願第61/233,859号の利益を主張するものであり、上記出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、広い意味で医療分野に関するものであり、より具体的には、静脈治療分野における改良型脈管搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
ここでは、本開示に関連した背景情報を示すが、これらの情報は必ずしも先行技術であるというわけではない。
【0004】
治療を受けている患者には、患者の静脈を通じて患者に流体が投与される静脈(IV)治療の形が必要となることが多い。IV治療は、流体及び薬物を患者の身体に搬送する最速の方法の1つである。静脈から注入される流体には、典型的には、食塩水、薬剤、血液、及び抗生物質が含まれる。この流体は、従来、末梢静脈及び中心静脈等、任意の静脈経路に配置された可撓性カテーテルを通じて患者に導入される。
【0005】
従来の装置及び方法を用いてIV治療を準備するには、介護者が選択した静脈の上にカテーテルを配置し、カテーテル内部の針を用いて皮膚を刺通し、カテーテルを静脈中に挿入する。カテーテルは、典型的には、挿入されたカテーテルの遠位端が患者の正中線の方を向くように配置される(例えば、腕の末梢IVラインでは、カテーテル本体は前腕に配置され、肘の方に向けられる)。次いで、介護者は、カテーテルから針を抜き、カテーテルを静脈内に挿入したままにする。カテーテルの中央線に対するカテーテル近位端は、患者の正中線に対して近位にあるカテーテル・ハブの端部に固定される。介護者は、典型的には、カテーテル・ハブの、患者の正中線に対して遠位端に取り付けられた延長管を含めた外部管を介して、カテーテルを流体供給部と連結し、この外部管は、典型的には介護者によってU字形に曲げられる。IVラインが意図せずに再度動く(restart)ことを回避するために、カテーテル及び管は、典型的には、テープ、又はカテーテル本体を拘束する接着性の安定パッド等の類似のカテーテル安定装置(CSD)を用いて、患者の皮膚に固定される。
【0006】
しかしながら、従来のIV治療用の装置及び方法には欠点がある。延長管は、患者が動いている間、又は介護者が操作している間に、付近にある障害物に当たることがあり、これにより痛みを伴う静脈刺激が引き起こされ、IVを傷つける恐れがある。テープ、及び他の既存のCSDは、安定させるのに最適とは言えない。なぜなら、カテーテル及び管等の、円形で、剛性且つ嵩のある構成要素を皮膚に固定するのは困難であり、あまり有効でない場合があり得るからである。テープ及び他の既存のCSDでは、カテーテルが静脈内で動くのを完全に防止することができず、カテーテルのずれ、浸潤(流体が静脈ではなく周囲の組織に入り込む)、及び静脈炎(静脈の炎症)を含めて、患者に危険な合併症を引き起こすことになる。接着性の安定パッドを用いると、皮膚刺激、及び/又は皮膚に長期間集中的に接着させた結果生じる損傷等、他の望ましくない作用が生じる傾向がある。さらに、テープ及び現行のCSDは、カテーテル挿入位置の片側でしかカテーテルを拘束せず、カテーテルが、挿入位置の周囲で痛みと危険を伴って回動し、静脈内で動くのを阻止することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5358493号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、従来の脈管搬送システムの欠点の1つ又は複数を克服する改良型脈管搬送システムを構築することが、静脈治療の分野で求められている。本発明は、かかる改良型脈管搬送システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の図面は、実施可能な全ての実施例ではなく、選択された実施例を例示するためのものにすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムを示す図である。
【図2】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの半透視上面図である。
【図3】別の好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの半透視図である。
【図4A】別の好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの変形例の半透視上面図である。
【図4B】別の好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの変形例の半透視上面図である。
【図4C】別の好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの変形例の半透視上面図である。
【図4D】別の好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの変形例の半透視上面図である。
【図5A】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法の概略図である。
【図5B】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法の概略図である。
【図5C】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法の概略図である。
【図5D】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法の概略図である。
【図5E】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法の概略図である。
【図5F】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法の概略図である。
【図6A】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法における折返しステップの変形例の上面図である。
【図6B】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法における折返しステップの変形例の側面図である。
【図6C】好ましい実施例の一体型脈管搬送システムの使用方法における折返しステップの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面において、対応する参照番号は、対応する部品を示す。
【0012】
本教示の好ましい実施例の以下の説明は、本開示をこれらの好ましい実施例に限定するものではなく、当業者が本発明を構成し、使用できるようにするためのものである。
【0013】
1.一体型脈管搬送システム
図1及び図2に示すように、好ましい実施例の一体型脈管搬送システム100は、枠110と、流路150と、を含む。枠110は、流体を搬送するために挿入位置で患者に挿入可能なカテーテル170を受けるように構成された枠110であって、第1のハブ120と、第2のハブ130と、ハブ間に延在するとともに管状側方部材140’を含む1対の可撓性側方部材140と、を含んでいる。流路150は、カテーテルと流体連通する流路150であって、管状側方部材140’及びハブの少なくとも一方を貫通し、カテーテル170内部の流れとは異なる方向に流体が流れる固定転向部分156を含んでいる。第1及び第2のハブは、好ましくは、それぞれ患者に対する第1及び第2の定着点122及び132となり、これらの定着点は、挿入位置112の周囲に、且つカテーテルの両端部に分散配置され、それによって枠を患者に定着し、カテーテル170を安定させることになる。流路150の転向部分156の流体の流れは、カテーテル内部の流れとは逆となることが好ましい。さらに、この転向部分は、付近の物体に引っ掛かったり当たったりする可能性を低減させる形で固定されることが好ましい。好ましい一実施例では、このシステムは、第2の管状側方部材140’、及びカテーテル170と流体連通し、且つ第2の管状側方部材140’中を貫通する第2の流路150を含む。好ましい実施例では、枠110は、カテーテルをシステムの一体部品として受けるように構成され、カテーテル170は、枠の一部分に、より好ましくはハブの一方に埋め込まれる。代替実施例では、枠110は、枠にスナップ嵌めされる別個のカテーテルを受けるように構成することができる。
【0014】
本システムのいくつかの実施例では、システムは、流体供給部から流路に流体を搬送する、少なくとも1つの延長管180及び/又は流体供給アダプタ182を更に含む場合もある。このシステムは、静脈(IV)治療を受けている患者の静脈に、内包されたカテーテルを用いてアクセスし、そのカテーテルを介して流体を静脈から投与し、カテーテルを患者に確実且つ安全に安定させることを可能とする働きをする。このシステムは、薬剤、抗生物質、食塩水、又は血液を投与するために使用されることが好ましいが、適切な任意の流体を患者に投与するために使用することもできる。このシステムは、腕、手、若しくは脚等の末梢静脈でIVラインを構築し、安定させ、維持するために使用されることが好ましいが、頸部、胸部、若しくは腹部の中心静脈又は末梢静脈からのアクセス、又は適切な任意の静脈位置、動脈位置に使用することもできる。このシステムは、脳脊髄液の搬送等、適切な任意のカテーテルに基づいた患者へのアクセスを構築し、安定させ、且つ維持するために使用することもできる。
【0015】
好ましい実施例では、費用効率が高く、IV設定時間が短くなり及び包装廃棄物が少ない一体型システムを実現するために、カテーテル170、枠110、流路150、延長管180、及び/又は流体供給アダプタ182は、システムの製造中に予め組み立てられる。このシステムは、好ましくは、挿入位置112の周囲、より好ましくは、挿入位置112の少なくとも両側2カ所に分散配置された定着点を用いてカテーテル170を患者に安定させ、それによって患者が通常に動いている間、及び/又は介護者の操作している間に生じ得る、痛みを伴い、危険なカテーテル170の回動運動を低減又は排除することができる。このシステムは、好ましくは、カテーテルを流体供給アダプタと位置合せし、固定されていない外部管を減少することによって合理化され、したがってこのシステムが付近の障害物に当たったり引っ掛かったりする可能性が低減する。このシステムは、好ましくは、汚染及び流体漏れが生じ得る箇所が減少した閉システム(closed system)であり、したがって患者及び介護者の双方にとって安全性が向上している。このシステムは、好ましくは、既存の従来のカテーテル挿入、及びIV設定手順に適合可能であり、したがって介護者は、追加の訓練をほとんど行うことなく、システムを容易に使用することが可能である。
【0016】
一体型脈管搬送システムの枠110は、システムを患者に安定させる働きをする。図1及び図2に示すように、枠110は、好ましくは、枠の一端部にあり、患者に対する第1の定着点122となる第1のハブ120と、枠の、第1のハブのほぼ反対側の端部にあり、患者に対する第2の定着点132となる第2のハブ130と、第1のハブと第2のハブとの間に延在し、それらを可撓に連結する、2つの可撓性側方部材140とを含み、したがって第1のハブと第2のハブとは、かなりの自由度で互いに動くことになる。特に、側方部材140は、好ましくは、第1のハブ及び第2のハブの一方を、他方のハブ上に折り返すように裏返して折曲げ可能である。図2に示すように、好ましい実施例では、これらの側方部材は実質的に平行であり、したがって枠110は、カテーテル170及び挿入位置112の周囲でほぼ長方形の周辺部114を形成することになる。枠110の変形例では、枠が、挿入位置112の周囲で適切な任意の形状及び寸法の周辺部114を形成するように、枠は、適切な任意の数のハブ、及び適切な任意の数の側方部材を含むことができる。枠110は、好ましくは、カテーテル周囲の領域を被覆せずに開放したままにする等によって、カテーテルの挿入位置112が見えるようにするが、或いはこのシステムは、枠上に延在して、挿入位置112及び/又はカテーテル170を被覆する透明、半透明、不透明体、又は適切な任意の種類の材料のカバーを含むことができる。図5Eに示すように、枠は、好ましくは、第1のハブ120及び第2のハブ130を、挿入位置112の両側(好ましくは挿入位置の遠位及び近位)、且つカテーテル170の両端部にある第1及び第2の定着点でそれぞれ患者に定着することによって患者に固定され、それによってカテーテルを安定させる。しかし、枠110は、更に、且つ/又はその代わりに、第1のハブだけ、第2のハブだけ、側方部材、及び/又は枠の他の適切な任意の部分を固定することによって固定することができる。或いは、枠は、カテーテル挿入位置112に対して適切な任意の位置に配置された定着点でカテーテルを安定させることができる。枠110は、患者に固定されると、挿入位置112の片側だけでカテーテルを安定させる従来のカテーテル固定装置よりも効果的に、一体型脈管システムによってカテーテルを安定させることが可能となる。なぜなら、カテーテルを挿入位置の両側2カ所で安定させることによって、患者が通常に動いている間、及び/又は介護者の操作している間に生じ得るカテーテルの回動運動が低減されるからである。
【0017】
枠110の第1のハブ120は、枠の第1の定着点122となる働きをする。図2に示すように、好ましい実施例では、第1のハブ120は更に、流路150の一部分を第1のハブ内に収容する働きをする。第1のハブ120は、好ましくは、枠の、患者の正中線に対して近位端に配置され、したがって第1のハブは、カテーテル挿入位置の、患者の正中線に対して近位にある第1の定着点122となる。或いは、第1のハブ120は、枠の、挿入位置112に対して適切な任意の部分に配置して、挿入位置112に対して適切な任意の位置の第1の定着点122としてもよい。図5Eに示すように、第1のハブ120は、好ましくは、テープで患者の皮膚に固定されるが、更に、且つ/又はその代わりに、第1のハブ120の下面に位置する接着剤、弾性絆創膏、鈎、鈎及び輪、若しくは磁石等の固締具によって固締する絆創膏、又は適切な任意の固締機構で固定することができる。或いは、第1のハブは、患者の皮膚に固定しなくともよい。特定の一実施例では、第1のハブは、好ましくは、幅約20〜30mm、及び厚さ約5mmの比較的広く薄い形状を有する。しかし、第1のハブは、或いは適切な任意の形状及び寸法でよい。幅が広いと、皮膚のより広い面積に力を分散させるのに有利であり、したがって患者に皮膚刺激、創傷、及び他の劣化が生じる可能性が低減する。従来の脈管アクセス装置の厚さよりも約半分の薄さの形状であるため、ハブがベッド装備、又は他の付近の障害物に当たったり引っ掛かったりして、それによってカテーテルが静脈内で動き、カテーテルのずれ、浸潤、及び静脈炎等の合併症が生じ得る危険が低減される。図1に示すように、第1のハブ120は、好ましくは、丸味を帯びた縁部を有し、好ましくは、その横軸に沿って僅かに湾曲した上面を有する。この湾曲した上面によって、患者に固定するテープをその湾曲に沿って受けるように第1のハブを適合させることができる。更に、第1のハブは、肢、指、又は指関節等に沿う下面陥凹部等、患者の身体に沿う機構を有することができる。
【0018】
第1のハブ120は、好ましくは、システムを安定させるように枠110に構造的支持を与える、ナイロン又はシリコーン等の剛性、又は半剛性の材料で作成される。しかし、第1のハブは、任意のポリマー、金属、複合物、又は他の適切な材料で作成することもできる。第1のハブは、流路150が見えるように透明又は半透明でもよい。第1のハブは、好ましくは、射出成形によって製造されるが、光造形、鋳造、フライス加工、又は当業者に既知の他の適切な任意の製造工程で製造することもできる。
【0019】
第1のハブ120及び/又は第2のハブ130は、患者の体温、血圧、又は脈拍数等の生体測定パラメータを測定するセンサ116を含むことができる。センサ116はさらに、且つ/又はその代わりに、pH又は流量等、流体に関する値等の適切な任意のパラメータを感知することもできる。
【0020】
第1のハブ120に固定された流路150の一部分は、流体供給部からシステムの流路150に流体を搬送する働きをする延長管及び/又は流体供給アダプタと結合させることができる。流体供給アダプタは、延長管を流体供給部に取り付けるコネクタを含むことが好ましく、流体供給部は、管を介して流体を供給する、棒取付け式のIV袋であることが好ましいが、注入器、ポンプ、又は他の適切な流体供給部であってもよい。図4に示すように、コネクタは、当業者に既知の、従来のIV袋と一般につなぎ合わされる標準の雌型ルア係止コネクタ、又はY型コネクタであることが好ましい。コネクタは、流体供給部とつなぎ合わされるように適合された適切な任意の雄型コネクタ又は雌型コネクタであってもよい。延長管はさらに、システムが突き当たった場合の応力緩和を実現する働きをし、ポリマー管等の可撓性管で作成されることが好ましいが、他の適切な任意の材料で作成された通路であってもよい。可撓性管は、患者が動いている間、又は介護者が操作している間等にシステムが突然動かされた場合に、機械的応力を緩和し、患者が負傷する可能性を低減させるのに有利である。延長管は、必要に応じて応力緩和を実現できるほど長いほうがよいが、延長管が付近の障害物に当たる、又は引っ掛かる可能性は短いほうが低くなる。或いは、延長管の長さは、適切な任意の長さでよく、システムの特定の用途によって変えることができる。外径及び内径等、流体通路の他の寸法は、システムの特定の用途によって変えることができる。
【0021】
このシステムの代替版では、システムに2つ以上の延長管及び/又はコネクタを含めて、複数の流体供給部から同時にシステムに流体を搬送しやすくすることができる。例えば、2つの流路150を含むシステムの実施例では、このシステムは、第1の流体を第1の流路に搬送する第1の延長管と、第2の流体を第2の流路に搬送する第2の延長管とを含むことができる。しかし、2つの延長管は、2つの別個の流体を同じ流路及びカテーテルを介して投与するステップを含む用途においても有用となり得る。
【0022】
システムの第2のハブ130は、下記の点を除いて第1のハブ120と同様であることが好ましい。第2のハブ130は、枠の、患者の正中線に対して遠位端で、枠110の第2の定着点132となる働きをすることが好ましい。第2のハブは、カテーテル挿入位置112の、患者の正中線に対して遠位に固定され、特定の一実施例では、挿入位置から約15mm以下の遠位にあることが好ましい。しかし、第2のハブは、挿入位置112に対して適切な任意の位置で固定することもできる。図2に示すように、第2のハブ130は、自己封止隔壁134を含むことが好ましい。第2のハブの自己封止隔壁は、カテーテル挿入前は、挿入針をカテーテル170に挿入する開口となり、カテーテル挿入後は、カテーテルから挿入針を抜いた後に、第2のハブの内部路を封止して、血液及び他の考えられ得る生物学的有害物質、若しくは他の流体が流出する、又は漏れるのを防止する働きをする。図2に示すように、隔壁134は、好ましくは、第2のハブ130の、患者の正中線に対して遠位側に配置され、カテーテル170とほぼ同心である。隔壁は、好ましくは、自己封止して気密封止を成す可撓性材料で作成される。この自己封止隔壁は、第2のハブの、患者の正中線に対して遠位側から流体が通り抜けるのを防止し、針で患者を穿刺した後に、血液及び他の流体が、この一体型脈管搬送装置から出ることのない閉システムとなるよう寄与する。或いは、隔壁134は、ストッパ、又は隔壁に付着させる封止材料等の栓で封止することができる。
【0023】
第2のハブ130は、隔壁134とカテーテル170との間に貯蔵部を更に含むことができる。この貯蔵部は、カテーテル挿入後、カテーテルから挿入針を抜く間、いかなる血液漏れも閉じ込める流出室として役立てることができ、又は他の適切な任意の目的に役立てることができる。
【0024】
第2のハブ130は、第2のハブ130と側方部材との間の接続部に、カテーテルを患者に挿入する間に、側方部材を折り返して、ハブの一方をハブの他方上に通過させる際の、側方部材の折れ、圧壊、割れ、又は他の破損を低減させる機構を更に含むことができる。一実例として、第2のハブは、側方部材が鋭角に曲がりすぎたり、又は鋭角な縁部に接して曲がったりするのを防止するように、側方部材の自然な曲げ半径の輪郭に合った、丸味を帯びた縁部を含むことができる。別の実施例として、第2のハブは、側方部材が自然な曲げ半径で曲がるように促す緩和切欠部及び/又は他の補助部を含むことができる。
【0025】
枠110の側方部材140は、第1のハブ120を第2のハブ130対して固定させることによって、枠に構造的安定性を与える働きをする。図1及び図2に示すように、枠110は、少なくとも1つの管状側方部材140’含んで、2つの可撓性側方部材を含むことが好ましい。しかし、枠の代替例では、枠は、より少ない、又はより多くの側方部材を含むことができる。側方部材は、枠に構造的安定性を与えることが好ましく、管状側方部材140’(複数可)は、流路150の一部分を収容することが好ましい。側方部材は、互いに平行であることが好ましく、第1のハブと第2のハブとの間に延在して、カテーテル170の周囲で周辺部114を形成することが好ましい。しかし、側方部材は、どのように交差していてもよいし、平行でなくともよく、適切な任意の向きであってよい。側方部材によって、カテーテル軸に沿った圧縮方向の変位(及びその後の伸長方向の変位)、他の2つの軸に沿った両方向の変位、カテーテル軸に沿った両方向の捻れ、及び他の2つの軸に沿った両方向の曲げを含んで、第1のハブと第2のハブとが互いに対してかなりの自由度数で動くことが可能となる。特に、側方部材は、好ましくは、第1及び第2のハブの一方を、他方のハブ上に折り返すように裏返して折曲げ可能である。図5B及び図6に示すように、カテーテルを患者に挿入する間、側方部材は、好ましくは、第1のハブ120を第2のハブ130上に折り返すように折り返され、それによってカテーテルの周囲の周辺部114を開放し、カテーテルの穿刺遠位先端を露出させる。側方部材の長さは、好ましくは、カテーテルよりも約30%〜50%長いが、或いは特定の用途によっては、より短くとも、又はより長くともよい。少なくとも1つの側方部材140は、カテーテルが患者に挿入された深さを示す、定規と同様の目盛を含むことができる。側方部材は、押出し成形された可撓性ポリマーをある長さに切断し、ハブの一方又は両方に成型して作成されるが、適切な任意の製造工程及び/又は適切な任意の材料で作成することもできる。
【0026】
第1の好ましい実施例では、1対の側方部材は、管状側方部材140’、及び中実側方部材140”を含む。管状側方部材は、医療用管等、概ねまっすぐで、柔軟、且つ可撓性のある中空路であることが好ましいが、流路150の一部分を収容する内部流体通路を備えた適切な任意の構造であってもよい。管状側方部材は、枠110に構造的支持を与えられるほどの剛性を有するものの、カテーテルの挿入中に、その長さにわたって、破損することなく折り曲げ、折り返せるほど可撓であることが好ましい。管状側方部材は、破損せずに折れ曲がる能力を高める追加の機構を含むことができる。一実例として、管状側方部材は、その長さに沿ってテーパを付け、第2のハブ130の折曲げ応力点付近でより厚い壁及び/又はより大きい外径を含むことができる。別の実施例として、管状側方部材は、折曲げによる破損に対してより耐性のある楕円形の断面を有することができる。別の実例として、第1の側方部材の少なくとも一部分に、より少ない折曲げ応力で側方部材の湾曲を可能とする、アコーディオンに類似した延伸可能且つ折畳み可能なひだを含めることができる。
【0027】
図2に示すように、第1の好ましい実施例では、中実側方部材は、好ましくは、形状及び寸法が第1の側方部材と同様であり、したがって枠110は構造的には対称であるが、中実側方部材は、流路150の一部分を収容しないという点において「模造(dummy)」構造であることが好ましい。中実側方部材140”は、可撓性及び強度において、管状側方部材140’とほぼ同じであることが好ましい。しかし、中実側方部材140”は、第1のハブ120の第2のハブに対する安定性を更に高めるように、異なる形状を有してもよい(例えば、直径がより大きい、又は厚さがより厚いなど)。管状側方部材140’と同様に、中実側方部材140”も、破損せずに折れ曲がる能力を高める機構を更に含むことができる。
【0028】
図3に示すように、第2の好ましい実施例では、1対の側方部材は、第1の好ましい実施例の管状側方部材と同様に、2つの管状側方部材140’を含む。この実施例では、これらの管状側方部材140’は、好ましくは同一であり、ハブ間で第1及び第2の流体流れを送る2つの別個の流路を収容する。しかし、これらの管状側方部材は、異なる目的を果たすように異なっていてもよい。例えば、2つの管状側方部材140’は、異なる種類の(例えば、異なる濃度の)流体を搬送するように適合された2つの別個の流路を収容することができ、これら管状側方部材は、異なる流体に対処し、且つ枠の構造の対称性を実現するように、異なる壁厚を有することができる。別の実施例として、これらの管状側方部材は、異なる寸法の内空を有することができる。
【0029】
いくつかの代替実施例では、枠110は、2つよりも少ない、又は2つよりも多くの側方部材を含むことができ、それらの側方部材は、管状側方部材と中実側方部材との適切な任意の組合せ及び置換でよい。側方部材の全てが中実、管状、若しくは中空でも、又はそれらの任意の組合せでもよい。いくつかの代替実施例では、側方部材は、上流及び/又は下流で、合流及び/又は分岐していてもよい。例えば、ある代替実施例では、側方部材は、挿入位置の近位及び遠位で合流する、可撓性のある薄いシート部分を含むことができ、したがってカテーテル先端が、合流部分間のスロット状開口を貫通することになる。
【0030】
このシステムの流路150は、流体供給部からカテーテルに流体を搬送する働きをし、いくつかの実施例では、流体をカテーテルへ、あるいはカテーテルから搬送する働きをする。流路150は、更に、且つ/又はその代わりに、カテーテルを介して、患者から取り出された流体を外部の貯蔵部に搬送する等、カテーテル170から流体を搬送することができる。図2に示すように、流路150は、好ましくは、ハブの少なくとも一方、及び/又は管状側方部材140’内に固定された少なくとも1つの部分を含む。より好ましくは、流路150は、第1のハブ120内に固定された第1の部分152と、管状側方部材140’中を貫通する第2の部分154と、第2のハブ130内に固定された転向部分156とを含む。第1の変形例では、流路150は、第1のハブ内に固定され、管状側方部材140’中を貫通し、又は管状側方部材140’として働き、第2のハブ130内に固定され、カテーテルに流体結合された単一片の管等、一続きの長さのものでよい。第2の変形例では、流路150は、個々の管の区画等、個々の長さのものを、様々な点で熱融着、他のプラスチック溶接法、又は流体結合等によって接合したものを含む。第3の変形例では、流路150は、ハブの一方又は両方において管状の孔を含み、そこに、管状の区画が第2の変形例と同様の工程によって接合される。第3の変形例では、第1及び/又は第2のハブにある管状の孔は、成型、穿孔、レーザ切断、又は適切な任意の製造工程によって形成することができる。第4の変形例では、流路150は、ハブ及び側方部材の1つ又は複数の外部にあってもよく、したがって流路の少なくとも一部分が、ハブ又は側方部材の外面に取り付けられ、外面上を通ることになる。流路の他の変形例には、上記変形例のあらゆる組合せ及び置換が含まれる。
【0031】
図2に示すように、流路150の第1の部分152は、好ましくは、患者の正中線に対して、第1のハブの近位側中央線に配置された入口と、第1のハブの遠位側に配置された出口とを含む。しかし、内部路の入口及び出口は、第1のハブにおいて適切な任意の位置に配置することができる。流路150の第1の部分の入口は、好ましくは、延長管180から流体を受け取り、内部路の出口は、好ましくは、流体を枠110の側方部材の少なくとも1つに搬送するが、流体は、逆の順序で流れてもよい。流路150の第1の部分は、好ましくは、第1のハブの中央線から、枠の側方に配置された管状側方部材140’に流体を送るように直角を含む。しかし、流路の第1の部分は、湾曲していても(図3及び図4に示す)、曲線でも、又は流体が第1のハブ120を通過して側方部材に流れることができる適切な任意の形状でよい。流路の第1の部分は、第1のハブ内の流路と位置合せされた中空凹部に延長管を挿入し、その凹部の縁部をエポキシで封止することによって延長管に連結することができるが、第1のハブは、第1のハブの凹部内に延長管を圧入し、突合せ接合部をエポキシで封止することによって結合できるし、適切な任意の結合工程によって延長管に結合することができる。
【0032】
図2に示すように、流路150の第2の部分154は、好ましくは、第1のハブ120内の第1の部分と、第2のハブ130内の転向部分との間の管状側方区画中を通る。
【0033】
図2に示すように、流路150の転向部分156は、好ましくは、流体流れを、カテーテル170内部の流体流れとは異なる方向に送る形で固定される。転向部分は、好ましくは、流体流れを、カテーテル内部の流体流れとは逆向きに、又は約180度転回させて送る。転向部分156は、直角、楕円状転回、又は環状転回を含むことができる。流路の転向部分は、好ましくは、第2のハブ130(患者の正中線に対して遠位)に固定されるか、又はそこに埋め込まれる。カテーテルは、典型的には、穿刺端部が患者の心臓の方に近位に向くように患者に挿入されるので、流体の流れが内部路内で約180度転回することにより、延長管を、挿入位置112の、患者の正中線に対して近位に置くことが可能となる。流体供給路がこの位置にあるため、患者の治療において要望されて実施されているように、IV袋又は他の流体供給部を支持するスタンドを、ベッド頭部付近に、又は患者の正中線に対して挿入位置の近位に保持することが可能となる。内部を通る流体の流れが、流路150の転向部分で転向することもやはり有利である。なぜなら、付近の障害物に当たったり引っ掛かったりして、IV設定を動かしてしまう恐れのある外部機構が減少するからである。転向部分の別の効果として、流体供給部からの延長管及び/又は追加の管が引っ張られた、又は当たった場合に、この転向部分のため、カテーテルが患者に更に引き込まれることになり、枠によってカテーテルをより効果的に安定させることができる点がある。例えば、カテーテルが、前腕に、その遠位先端を患者の肘屈曲部の方に向けて近位に配置される、一般的なカテーテルの配置では、延長管が偶発的に患者の後方に引っ張られた場合でも、管が流路の転向部分及び遠位の第2のハブ130を後方に引っ張ることになり、それによってカテーテル先端が近位に引っ張られ、患者の血管中に更に入り込むことになる。
【0034】
別の好ましい実施例では、図3〜図4に示すように、このシステムは、好ましくは、第1の流路150と同様の第2の流路150を含むが、第1の流路の変形例の任意のものでよい。第2の流路は、好ましくは、第2の管状側方部材140’中を通る。第2の流路は、好ましくは、第2の流体を受け入れ、この第2の流体は、第1の流路に供給される第1の流体と同じでも、又は異なってもよい。図4A〜図4Cに示す実施例では、システムは、第2の流体を第2の流路に供給する第2の延長管180を更に含むことができる。しかし、図4Dに示すように、このシステムは、流路の一方又は両方に流体を供給する延長管を唯1つしか含まなくてもよい。流路は、第1のハブに別個の入口を有しても、又は第1のハブに同じ入口を共有してもよく、その場合弁又は他の流体制御手段を用いて流量を調整することができる。一変形例では、第1及び第2の流路は、好ましくは、第2のハブ130内で同じカテーテルと流体連通し、同じ点(図4D)で、又は異なる点(図4C)で、カテーテル長に沿ってカテーテルに結合される。この変形例では、システムは、好ましくは、流体の一方又は両方の、カテーテルへの流量、したがって患者への流量を選択的に制限する流量制御システム160を含む。流量制御システムは、延長管の所に(図4A〜図4B)、カテーテル170との接合部に(図4C〜図4D)、又は適切な任意の位置等に、1つ又は複数の弁162を含むことができる。流量制御システム162は、更に、且つ/又はその代わりに、圧力降下、ベント、又は流路及びカテーテル内の流体流量を制御する適切な任意の技術を使用することができる。流量制御システム162はまた、1つの流路しか含まない実施例にも設けることができる。別の変形例では、第1及び第2の流路は、好ましくは、双内空を用いてカテーテルと流体連通し、一方のカテーテルの内空が第1の流路に結合され、もう一方のカテーテルの内空が第2の流路に結合される。更に別の変形例では、第1及び第2の流路は、別個のカテーテルと流体連通する。追加の変形例は、上記変形例に3つ以上の流路が備わったものにまで及ぶ。
【0035】
更に、第1のハブ120及び/又は第2のハブ130は、下流で合流する複数の内部路を含むことができ、したがってハブの入口数は出口数よりも多くなる。いくつかの変形例では、ハブの一方は、下流で分岐する1つ又は複数の内部路を含むことができ、したがって入口数は、出口数よりも少なくなる。ハブの一方は、第1のハブ内で分岐する内部路、及び合流する内部路両方の、1つ又は複数を含むことができる。複数の内部路により、流体を複数のカテーテル、又はカテーテルの複数の内空に搬送することができる。
【0036】
いくつかの実施例では、このシステムは、枠の一部分に、より好ましくは第1又は第2のハブ130に埋め込まれた近位部分を有するカテーテル170を更に含む。一体型脈管システムのカテーテル170は、IV治療用の流体を患者に投与する働きをする。カテーテル170は、好ましくは、患者の血管に挿入可能な導管であるが、適切な任意の種類のカテーテルでよい。図1〜図4に示すように、カテーテルは、好ましくは、流路の転向部分に流体連結され、患者の正中線に対して第2のハブ130の近位側にある中央線に配置される。カテーテル170は、延長管と位置合せされることが好ましく、したがって付近の障害物に触れたり、引っ掛かったりする恐れのある、患者に痛みが伴い、危険となる外付けの外部管、及び他の連結部が減少し、合理化されている。しかし、カテーテルは、第2のハブ内の適切な任意の位置に配置することができる。いくつかの実施例では、カテーテルは、その近位端を、第1の、すなわちより近位のハブに流体連結して、システムに流路の転向部分がないように向けて配置することもできる。例えば、カテーテルは、患者により近位の第1のハブに流体連結することができる。このカテーテルは、好ましくは、柔軟な可撓性ポリマーで作成されるが、適切な任意の材料で作成することができる。長さ、直径、及びカニューレ寸法を含めて、カテーテルの寸法は、特定の用途に依存することになる。米国特許第5,358,493号明細書、名称「Vascular access catheter and methods for manufacture thereof」に記載されているもの等のカテーテルが、当技術分野で知られ、使用されており、上記特許の全体が参照により本明細書に組み込まれる。カテーテルは、カテーテルが患者に挿入された深さを示す、定規にあるものと同様の目盛をその長さに沿って含むことができる。
【0037】
2.一体型脈管搬送システムの使用方法
図5A〜図5Fに示すように、一体型脈管搬送システムの方法200は、好ましくは、周辺部を形成する枠であって、周辺部内に包囲された(contained)遠位端を有するカテーテルを受けるように構成され、第1のハブと、第2のハブと、流路とを含む枠を設けるステップS210と、枠を折り返して、枠の周辺部を変形し、それによってカテーテルの遠位端を枠の周辺部から解放するステップS220と、カテーテルを挿入位置で患者に挿入するステップS230と、枠を戻して、カテーテルの遠位端及び挿入位置の周囲で枠の周辺部を復元するステップS240と、挿入位置の周囲に分散配置された複数の定着点で、枠を患者に固定し、それによってカテーテルを挿入位置に対して安定させるステップS250と、カテーテルと患者との間で流体が流れることを可能とするステップS260とを含む。この方法200は、静脈(IV)治療を受けている患者等の、患者の血管へのアクセスを得るために実施することができる。この方法はまた、薬剤、抗生物質、食塩水、血液、又は適切な任意の流体を患者に投与し、且つ/又は患者から流体を取り出すために使用することができる。この方法はまた、腕、手、若しくは脚等の末梢静脈又は動脈上の挿入位置において、或いは頸部、胸部、若しくは腹部の中心静脈からのアクセス、又は適切な任意のIV位置において、IVラインを構築し、安定させ、維持するために使用することができる。更に、この方法は、脳脊髄液を搬送するカテーテル等、適切な任意のカテーテルに基づいた患者へのアクセスを構築し、安定させ、且つ維持するために使用することができる。
【0038】
図5Aに示すように、枠を設けるステップS210は、好ましくは、上述のもの等の一体型脈管搬送システムを設けるステップを含む。しかし、一体型脈管搬送システムは、枠と、第1のハブ及び第2のハブと、枠を折り返して、第1のハブを第2のハブの方に通過させることができる流路とを備える適切な任意のシステムであってもよい。例えば、周辺部を形成する枠は、ヒンジ接合された第1のハブ及び第2のハブを含むことができる。更に、一体型脈管搬送システムは、より少ない、又はより多くのハブを含むことができる。
【0039】
枠を折り返すステップS220は、カテーテルの挿入可能な端部を露出させ、挿入位置に配置すべきカテーテルを見やすくし、挿入位置に物理的にアクセスしやすくする働きをする。図5B及び図6Aに示すように、枠を折り返すステップは、好ましくは、枠の第1のハブを、枠の第2のハブ上を第1の方向に通過させるステップを含む。枠の第1のハブは、好ましくは、患者の正中線に対して枠の近位部分であり、枠の第2のハブは、好ましくは、患者の正中線に対して枠の遠位部分であるが、第1のハブ及び第2のハブは、枠の適切な任意の部分であってもよい。例えば、図5Fに示すように、患者の肘屈曲部の挿入位置に対して、第1のハブは、好ましくは、肘により近く、第2のハブは、好ましくは、手により近い。したがって枠を折り返すステップでは、第1のハブを患者から離れるように、典型的には、患者の前に立ってそのシステムを使用している医療介護者の方に折り返すことになる。
【0040】
カテーテルを挿入位置で患者に挿入するステップS230は、カテーテルに針を挿入するステップと、挿入位置を針で穿刺するステップと、挿入位置内にカテーテルを配置するステップと、カテーテルから針を抜くステップとを含む。カテーテルを患者に挿入するステップは、流体を患者に投与することができる導管を構築する働きをする。挿入位置を針で穿刺するステップを実施する際、針は、好ましくは、患者の正中線に対して近位に向ける。カテーテルに針を挿入するステップは、好ましくは、枠の第2のハブから針を挿入するステップを含み、ここで挿入位置を穿刺して、カテーテルを挿入するように適合された穿刺具を導入する。挿入位置を穿刺するステップ、カテーテルを配置するステップ、及び針を抜くステップは、当業者に知られ、使用されている。図5Cに示すように、第1の変形例では、カテーテルに針を挿入するステップは、枠の第1のハブの上から針をカテーテルに通すステップS232を含み、それによってカテーテルの挿入中に、枠が折り返された向きのまま維持され、第1のハブを定位置に保持して、第1のハブによって、針が第2のハブへアクセスするのを妨げられるのを防止する助けとなる。図6A〜図6Cに示すように、第2の変形例では、カテーテルに針を挿入するステップは、枠の第1のハブの下から針をカテーテルに通すステップS234を含む。この第2の変形例では、第1のハブは、好ましくは、針収容部等の追加の機構内に据えられるか、又は他の形でそこに結合される。
【0041】
枠を展開するステップS240は、カテーテルの遠位端及び挿入位置の周囲で枠の周辺部を復元する働きをする。図5Dに示すように、枠を展開するステップは、好ましくは、枠の第1のハブを、枠の第2のハブ上に第2の方向に通過させるステップを含む。第2の方向は、好ましくは第1の方向とは逆であるが、適切な任意の方向であってもよく、挿入位置の周囲で枠周辺部を復元する。枠を展開するステップは、カテーテルから針を抜くステップによって容易になる。なぜなら、針、又は第1のハブが結合されていた他の機構がもはや存在しないので、第1のハブが定位置に保持されなくなるからである。
【0042】
挿入位置の周囲の複数の定着点で、枠を患者に定着するステップS250は、カテーテルを挿入位置に対して安定させる働きをする。図5Eに示すように、枠を患者に定着するステップは、挿入位置に隣接した第1の定着点で、枠の第1のハブを患者に定着するステップと、挿入位置を挟んで第1の定着点と対向する第2の定着点で、枠の第2のハブを患者に定着するステップとを含む。複数の定着点は、好ましくは、互いにほぼ対向した少なくとも2つの定着点を含み、より好ましくは、挿入位置の周囲にほぼ等間隔で分散配置された定着点を含む。特に、患者に対して、第1の定着点は、好ましくは、挿入位置の遠位側にあり、第2の定着点は、好ましくは、挿入位置の近位側にある。挿入位置の両側2カ所で枠を患者に定着するステップは、カテーテルが静脈内で動くのを効果的に低減又は排除し、カテーテルのずれ、浸潤、及び静脈炎を含めて、痛みを伴い、患者を危険にさらす合併症の発生を低減又は排除する働きをする。いくつかの変形例では、枠を定着するステップは、1つの定着点、又は3つ以上の定着点において適切な任意の数のハブを定着するステップを含む。第1の定着点は、好ましくは、患者の正中線に対して挿入位置の近位側にあり、第2の定着点は、好ましくは、患者の正中線に対して挿入位置の遠位側にあるが、第1の定着点及び第2の定着点は、挿入位置に対して適切な任意の位置であってもよい。各定着ステップは、枠をテープで患者に付けるステップ、枠を接着剤で患者に接着するステップ、枠を紐で患者に縛るステップ、又は適切な任意の定着機構を含むことができる。
【0043】
カテーテルと患者との間で流体が流れることを可能とするステップS260は、患者に流体を投与し、且つ/又は患者から流体を取り出す働きをする。図5Fに示すように、流体が流れることを可能とするステップは、好ましくは、流路を流体供給部又は貯蔵部に連結するステップを含む。流路は、好ましくは、当技術分野で周知のように、流路を延長管に流体連結することによって、流体供給部又は貯蔵部に連結されるが、流路は、枠の適切な任意の部分を、適切な任意の方法によって連結することによって、流体供給部に連結することもできる。流体供給部は、好ましくは、IV袋であるが、適切な任意の流体供給部であってもよい。一体型脈管搬送システムが複数の流路を含むいくつかの変形例では、流体が流れることを可能とするステップは、第2の流路を第2の流体供給部又は貯蔵部に連結するステップを含む。
【0044】
この方法は、挿入位置及び枠上に包帯を付着させるステップを更に含むことができる。包帯を付着させるステップは、挿入位置を細菌、ウイルス、及び他の病原体から保護する働きをする。包帯は、好ましくは、当業者に知られ、使用されているテガダーム(Tegaderm、登録商標)等の通気性のある滅菌包帯である。図5Fに示すように、包帯は、好ましくは、挿入位置が見えるように透明であり、患者の皮膚に付着させ、枠の固定を実現する接着剤を含む。しかし、包帯は、挿入位置の保護を支援する適切な任意の装置又は方法を含むことができる。
【0045】
前述の詳細な説明、並びに図及び特許請求の範囲から当業者には認識されるように、本発明の好ましい実施例には、以下の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱せずに改変及び変更を行うことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への挿入位置の周囲に配置されるように適合された一体型脈管搬送システムであって、前記一体型脈管搬送システムが、枠と流路とを含み、
前記枠は、流体を搬送するために前記挿入位置で前記患者に挿入可能なカテーテルを支えるように構成され、
前記枠は、
前記患者に対する第1の定着点となる第1のハブ、
前記患者に対する第2の定着点となる第2のハブ、及び、
管状側方部材を含み、前記第1及び第2のハブ間に延在し、かつ、前記カテーテルから間隔を置いて配置されるように構成された、1対の可撓性の側方部材を有し、
前記第1及び第2の定着点が、前記枠を前記患者に定着させるように前記挿入位置の周囲に分散配置され、それによって前記カテーテルを安定させるようになっており、
前記流路は、前記カテーテルと流体連通して、前記流路が、前記第1及び第2のハブの少なくとも一方及び前記管状側方部材を通り、前記カテーテル内部の流れとは異なる方向に流体が流れる固定された転向部分を含む、一体型脈管搬送システム。
【請求項2】
前記カテーテルをさらに備え、前記カテーテルに相対的に、前記カテーテルの近位部分が、前記枠の一部分に埋め込まれる、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項3】
前記カテーテルの前記近位部分が、前記第1又は第2のハブに埋め込まれる、請求項2に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項4】
前記患者に相対的に、前記第1の定着点が前記挿入位置の遠位側にあり、前記第2の定着点が前記挿入位置の近位側にある、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項5】
前記1対の可撓性の側方部材が、前記第1及び第2のハブの一方を他方のハブ上に折り返すように裏返して折曲げ可能である、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項6】
前記一対の可撓性側方部材が実質的に平行であり、前記枠が前記挿入位置の周囲に略長方形の周辺部を形成する、請求項5に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項7】
前記流路の前記転向部分が前記第1及び第2のハブの一方に固定される、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項8】
前記流路の前記転向部分が、流体の流れを前記カテーテル内部の流体の流れとは逆方向に方向付ける、請求項7に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項9】
前記第1及び第2のハブの少なくとも一方が、生体測定パラメータ又は流体パラメータを測定するセンサを含む、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項10】
前記1対の可撓性の側方部材が中実側方部材を含む、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項11】
前記1対の可撓性の側方部材が第2の管状部材を含み、前記一体型脈管搬送システムが、前記カテーテルと流体連通するとともに前記第1及び第2のハブの少なくとも一方及び前記第2の管状部材を通る第2の流路をさらに備える、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項12】
前記第2の流路が第2の流体を受け入れる、請求項11に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項13】
前記第2の流体が前記第1の流体とは異なる流体である、請求項12に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項14】
第1の流体を前記第1の流路に搬送する第1の延長管と、前記第2の流路に結合され、第2の流体を前記第2の流路に搬送する第2の延長管とを備える、請求項12に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項15】
前記カテーテルを流れる前記流体の流量を選択的に制限する流量制御システムをさらに備える、請求項1に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項16】
前記流量制御システムが少なくとも1つの弁を含む、請求項15に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項17】
前記カテーテルが、前記第1の流路に結合された第1の内空と、前記第2の流路に結合された第2の内空とを含む双内空カテーテルである、請求項11に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項18】
患者に配置されるように適合された一体型脈管搬送システムであって、
前記一体型脈管搬送システムは、カテーテルと枠と流路とを含み、
前記カテーテルは、流体を受ける近位端と、前記流体を挿入位置で前記患者に搬送する遠位端とを有し、 前記枠は、前記挿入位置を取り囲む、略長方形の周辺部を成し、
前記枠は、
前記患者に対する第1の定着点となる第1のハブ、
前記患者に対する第2の定着点となる第2のハブ、及び、
前記ハブ間に延在し且つ前記カテーテルの両側に前記カテーテルから間隔を置いて配置された管状側方部材を含む1対の可撓性の側方部材、を有し、
前記第1及び第2の定着点が、前記枠を前記患者に定着させるように前記挿入位置の両側にあり、それによってカテーテルを安定させ、前記1対の可撓性の側方部材が、前記第1及び第2のハブの一方を、他方のハブ上に折り返すように裏返して折曲げ可能であるようになっており、
前記流路は、前記カテーテルと流体連通して、前記第1及び第2のハブの少なくとも一方及び前記管状側方部材を通り、前記カテーテル内部の流れとは逆方向に流体が流れる固定された転向部分を含む、一体型脈管搬送システム。
【請求項19】
前記1対の可撓性の側方部材が中実側方部材を含む、請求項18に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項20】
前記1対の可撓性の側方部材が第2の管状部材を含み、前記一体型脈管搬送システムが、前記カテーテルと流体連通するとともに前記第1及び第2のハブの少なくとも一方及び前記第2の管状部材を通る第2の流路をさらに備える、請求項18に記載の一体型脈管搬送システム。
【請求項21】
一体型脈管搬送システムの使用方法であって、
周辺部を形成する枠であって、前記周辺部内に包囲された遠位端を有するカテーテルと、第1のハブ及び第2のハブと、流路とを含む、枠を設けるステップと、
前記枠を折り返すステップであって、前記枠の前記周辺部を変形し、それによって前記カテーテルの前記遠位端を前記枠の前記周辺部から解放する、折り返すステップと、
前記カテーテルを挿入位置で前記患者に挿入するステップと、
前記枠を展開するステップであって、前記カテーテルの前記遠位端及び挿入位置の周囲に前記枠の前記周辺部を戻す、展開するステップと、
前記挿入位置の周囲に分散配置された複数の定着点で、前記枠を前記患者に定着するステップであって、それによって前記カテーテルを前記挿入位置に対して安定させる、定着するステップと、
前記カテーテルと前記患者との間で流体が流れることを可能とするステップと
を含む、一体型脈管搬送システムの使用方法。
【請求項22】
前記枠を折り返すステップが、前記側方部材を折り曲げて前記第1のハブを前記第2のハブ上を通過させるステップを含む、請求項21に記載の一体型脈管搬送システムの使用方法。
【請求項23】
前記カテーテルを挿入するステップが、前記第1のハブの上から針を前記カテーテルに通すステップを含む、請求項22に記載の一体型脈管搬送システムの使用方法。
【請求項24】
前記カテーテルを挿入するステップが、前記第1のハブの下から針を前記カテーテルに通すステップを含む、請求項22に記載の一体型脈管搬送システムの使用方法。
【請求項25】
前記枠を定着するステップが、前記挿入位置の遠位側にある第1の定着点で前記第1のハブを定着するステップと、前記挿入位置の近位側にある第2の定着点で前記第2のハブを定着するステップとを含む、請求項21に記載の一体型脈管搬送システムの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2013−501595(P2013−501595A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524895(P2012−524895)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/045426
【国際公開番号】WO2011/019985
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(507238218)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (4)
【Fターム(参考)】