説明

一方向クラッチユニット

【課題】単一のころを用いた一方向クラッチを基本構成とし、薄型化、高トルク化等を図った一方向クラッチユニットを提供することである。
【解決手段】外輪1の内部に方向性の揃った一方向性の駆動側クラッチ部材2と逆止側クラッチ部材3が軸方向に並列に組み込まれ、逆止側クラッチ部材3によって逆回転を防止しつつ、駆動レバー19の往復揺動により前記駆動側クラッチ部材2のころ11をポケットのクサビ角の方向へ移動させるロック作用と、その逆方向に移動させるロック解除作用を繰り返すことにより前記外輪1を一定方向に間欠回転させるようにした一方向クラッチユニットにおいて、前記駆動側クラッチ部材2と逆止側クラッチ部材3を単一のころ11、11’を用いた一方向クラッチにより構成し、両方のクラッチ部材2、3のころ11、11’に微小のクリアランスをもって回転軸となるボルト16を挿通した構成を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テープの巻取り装置等に用いられる一方向クラッチユニットに関し、幅の狭いテープの巻取りに対応でき、しかも十分大きい許容トルクが得られる一方向クラッチユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
テープの巻取り装置等において用いられる一方向クラッチユニットとして従来から知られているものは、外輪の内部に方向性の揃った一方向性の駆動側クラッチ部材と逆止側クラッチ部材が軸方向に並列に組み込まれ、各クラッチ部材が前記外輪に対し相対回転可能に嵌合された内輪と、その内輪と外輪内径面によって形成されたポケットに組み込まれたころと、該ころをポケットのクサビ角の方向に付勢する付勢ばねとから構成されている。前記駆動側クラッチ部材の内輪が往復揺動する駆動レバーに連結されるとともに、逆止側クラッチ部材の内輪が固定部材に連結され、前記逆止側クラッチ部材によって逆回転を防止しつつ、前記駆動レバーの往復揺動により前記駆動側クラッチ部材のころをクサビ角の方向へ移動させるロック作用と、その逆方向に移動させるロック解除による空転作用とを繰り返すことにより前記外輪を一定方向に間欠回転させるようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、一方向クラッチとして、外輪の内径面に内輪ないし内部部材としての欠円軸を嵌合せしめ、その欠円軸と外輪内径面とによって形成されたポケットに単一のころを収納するとともに、そのころをポケットのクサビ角の方向に付勢する付勢ばねを前記ころの反対側に収納したものが知られている(特許文献2参照)。この一方向クラッチは、ころ径を大きくとれるため、高トルク化が可能であり、またころが1個であることから小型化、組立ての容易化の要請にも応え得るものである。
【特許文献1】特開2001−41265号公報
【特許文献2】特開2003−90357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1に開示された一方向クラッチユニットは、巻取り対象のテープの幅が狭くなった場合はそれに応じてクラッチユニット自体の幅も狭く構成することが要求されるが、クラッチユニットが狭くなるとクラッチ部材を構成するころのサイズ(長さ)も小さくなる。このため、クラッチユニットとしての許容トルクが低下し、テープを巻取れなくなる恐れがあった。
【0005】
一方、特許文献2に開示された一方向クラッチは、小型化、高トルク化に適したものであるが、巻取り装置等の一方向クラッチユニットの一要素として組み込む場合の具体的構成は開示されていない。また、単に同一構造のものを2個併設しても同軸度が保証されないので、回転トルクが高くなりスムーズな巻取りができない問題があった。
【0006】
そこで、この発明は、前記特許文献2の単一ころを用いた一方向クラッチの基本構成を採用しつつ特許文献1の一方向クラッチユニットの薄型化、高トルク化等を図り、さらに部品の共用化によるコストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、この発明は、外輪の内部に方向性の揃った一方向性の駆動側クラッチ部材と逆止側クラッチ部材が軸方向に並列に組み込まれ、各クラッチ部材が前記外輪に対し相対回転可能に嵌合された内輪と、その内輪と外輪内径面によって形成され一方向に狭小となるクサビ角を有するポケットに組み込まれたころと、該ころを前記クサビ角の方向に付勢する付勢ばねとからなり、前記駆動側クラッチ部材の内輪が往復揺動する駆動部材に連結されるとともに、逆止側クラッチ部材の内輪が固定部材に連結され、前記逆止側クラッチ部材によって逆回転を防止しつつ、前記駆動レバーの往復揺動により前記駆動側クラッチ部材のころによるロック作用と、ロック解除による空転作用を繰り返すことにより前記外輪を一定方向に間欠回転させるようにした一方向クラッチユニットにおいて、前記ころとその付勢ばねが各クラッチ部材ごとに1個づつ使用され、前記各クラッチ部材の前記内輪が欠円軸によって形成され、該欠円軸と外輪の内径面とによって前記ポケットが形成され、該ポケットに前記の1個のころと付勢ばねがそれぞれ組み込まれ、前記固定部材が前記外輪の一方の開放端を閉塞するとともにその内径面に嵌合するラジアル受け部を有する逆止側蓋部材と、ケーシングと、該逆止側蓋部材とケーシング部材の間を連結するボルトとからなり、該ボルトが前記各ころを微小クリアランスをもって貫通し、前記駆動部材が前記外輪の他方の開放端を閉塞するとともにその内径面に嵌合するラジアル受け部を有する駆動側蓋部材と、その駆動側蓋部材に取付けられた駆動レバーとからなる構成を採用した。
【0008】
前記構成の一方向クラッチユニットは、駆動レバーが駆動方向へ揺動すると駆動側及び逆止側の各クラッチ部材のころがロックして外輪にトルクが伝達される。次に、駆動レバーが前記と逆方向に揺動すると、駆動側クラッチ部材はころのロックが解除されて空転するが、逆止側クラッチ部材はロック状態が維持され、外輪の逆転が阻止される。したがって、駆動レバーが揺動運動を繰り返すと外輪は逆回転を防止されつつ一定方向に間欠回転され、外輪を介して取付けられたリールにテープが巻取られる。また、各クラッチ部材のころは1個づつ設けられるので、そのころ径を大きくとることができる。このため、テープの幅が狭くなりそれに応じてクラッチ部材が薄く設計されころサイズが小さくなっても、相対的に大きい許容トルクが得られる。
【0009】
また、前記ボルトが、軸部とねじ部との間に段差を有する単体のボルトにより形成され、ボルト頭部から前記段差までの長さにより前記駆動側クラッチ部材と逆止側クラッチ部材の軸方向の配置間隔を確保するようにした構成をとることができる。さらに、前記逆止側蓋部材とこれに挿通された前記ボルトが相対回転不可能に結合された構成をとることによって、逆止側蓋部材が外輪と共回りすることを防止することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明においては、外輪に駆動側クラッチ部材と逆止側クラッチ部材を並列に組み込み、駆動レバーから駆動側クラッチ部材に加えられる揺動運動により、前記逆止側クラッチ部材で逆転を防止しつつ外輪を一定方向に間欠回転させるようにした一方向クラッチユニットにおいて、各クラッチ部材として単一のころを使用する形式の一方向クラッチを採用したので、ころ径を相対的に大きく設計できる。このため、幅の狭いテープ等を巻き取る場合においてころサイズの長さが相対的に短く形成されるときにおいても、高い許容トルクが得られ、確実な巻取りを行うことができる。また、ころ数が少ないので組立ても容易となる。
【0011】
また、前記各クラッチ部材に共通のボルトを微小クリアランスをもって挿通することにより、各クラッチ部材のクラッチ作用に支障を来たすことなく、そのボルトをガイドとして回転するため同軸度が保持される。このため、巻取り時の回転トルクの上昇を抑えることができる。また、各ころのスキューも防止でき、空転時の回転トルクの上昇も抑えることができる。
【0012】
さらに、前記の駆動側蓋部材と逆止側蓋部材は、ともにその内面に外輪内径面に嵌合するラジアル受け部を有するものであり、同一形状に形成することができるので、部品の共用化によるコストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいてこの発明を実施するための最良の形態を説明する。図1から図7に示した実施形態1の一方向クラッチユニットは、外輪1の内部に方向性の揃った一方向性の駆動側クラッチ部材2と逆止側クラッチ部材3が軸方向に並列に組み込まれている。ここに、「方向性の揃った」というのは、両方とも同一回転方向にロック状態となり、その反対回転方向にロックが解除され空転状態となる特性を有することを意味する。前記外輪1は、出力歯車4のボスを構成する外環部材5の内径面に嵌合される。外輪1の外径面に回り止め用の浅い溝10が軸方向に形成され、外環部材5の内径面に前記溝10に合致する軸方向の凸条20が設けられる。これらの溝10と凸条20の嵌合により外輪1の外環部材5に対する回り止め構造となる。
【0014】
外環部材5は、前記駆動側クラッチ部材2を収納した側の外輪1と同じ側の開放端面が駆動側蓋部材6により閉塞され、また逆止側クラッチ部材3を収納した側の外輪1と同じ側の開放端面が駆動側蓋部材6と同一形状の逆止側蓋部材7により閉塞される。
【0015】
駆動側蓋部材6の外周面に切欠き部6a(図5照)が設けられる。また内面の中心部に凸状のラジアル受け部6bが設けられるとともに、中心穴6cが設けられる。この駆動側蓋部材6に駆動レバー19のボス部19aが嵌合され、該ボス部19aの欠円部19bが前記切欠き部6aに嵌合され回り止めが図られる。前記のラジアル受け部6bは外輪1の内端内径面に嵌合される(図1参照)。
【0016】
前記のラジアル受け部6bの周縁に沿って欠円軸8(図2参照)が形成される。欠円軸8は、ラジアル受け部6bを優孤部と劣弧部とに分割した場合の劣弧部に沿った円弧部13と、分割面に一致する欠円面14を有する。
【0017】
逆止側蓋部材7も前記の駆動側蓋部材6と同様に、外周面に切欠き部7a(図5参照)が設けられ、その内面の中心部に凸状のラジアル受け部7bが設けられるとともに、中心穴7cが設けられる。この逆止側蓋部材7の切欠き部7aは駆動側蓋部材6との部品の共用を図るために設けられている。前記のラジアル受け部7bは外輪1の内端内径面に嵌合され(図1参照)、またそのラジアル受け部7bの周縁に沿って欠円軸8’(図3、図5参照)が形成される。欠円軸8’は、ラジアル受け部7bを優孤部と劣弧部とに分割した場合の劣弧部に沿った円弧部13’と、分割面に一致する欠円面14’を有する。
【0018】
前記の駆動側クラッチ部材2は、内輪或いは内部部材としての機能を果たす前記の欠円軸8、その欠円軸8と外輪1の内径面とによって形成されたポケット9(図2参照)に収納された単一のころ11及び単一のU字形付勢ばね12とからなる。ころ11の両側のポケット9の部分は、ころ11の移動方向に狭小となる空所が形成され、その一方の空所に前記の付勢ばね12が収納される。付勢ばね12はころ11を他方の狭小空間の方向に付勢し、作動の安定性を確保する。
【0019】
前記の逆止側クラッチ部材3も同様の構造であり、前記の欠円軸8’と外輪1の内径面とによって形成されたポケット9’(図3参照)に収納された単一のころ11’及び単一のU字形付勢ばね12’とからなる。ころ11’の両側のポケット9’の部分は、ころ11’の移動方向に狭小となる空所が形成され、その一方の空所に前記の付勢ばね12’が収納される。付勢ばね12’はころ11’を他方の狭小空間の方向に付勢し作動の安定性を確保する。両方の付勢ばね12、12’は、このユニットを駆動レバー19側から軸方向に見た場合、いずれも同じ側(右側)に配置される。
【0020】
なお、外輪1の内部において、駆動側クラッチ部材2のころ11と欠円軸8、これに対向した逆止側クラッチ部材3のころ11’と欠円軸8’の間にセパレータの機能をもったワッシャ15が介在される(図1参照)。
【0021】
また、前記逆止側蓋部材7から駆動側蓋部材6まで貫通するボルトとしてのボルト16が独立した部品として使用される。このボルト16は、図5(a)に示したように、ねじ部16aと軸部16bとの間に段差16cが設けられ、ねじ部16aがケーシング17の外側面に突き出し、ナット18でケーシング17に固定される。この場合、ボルト16のねじ頭部16dから段差16cまでの寸法を所定の大きさに設定することにより、駆動側クラッチ部材2及び逆止側クラッチ部材3の軸方向の配置間隔、言い替えれば軸方向の締め付け具合を一定の大きさに設定することができる。
【0022】
前記のボルト16は駆動側蓋部材6の中心穴6cに対し当該駆動側蓋部材6が回転できるように挿通されるが、逆止側蓋部材7に対しては接着、圧入、Dカット面嵌合等により当該逆止側蓋部材7が回転不可能な状態に結合することが望ましい。ここにDカット面嵌合というのは、図5(b)に示したように、ボルト16の首部に大径部16eを設け、その大径部16eにDカット面16fを形成し、逆止側蓋部材7の中心穴7cの形状をこれに合致するDカット形に形成し、逆止側蓋部材7の回転を阻止する結合構造をいう。このような構造をとると、逆止側蓋部材7をボルト16を通じてケーシング17に確実に固定することができる。
【0023】
なお、前記のようにボルト16と逆止側蓋部材7とを一体化する結合構造をとると、ナット18をボルト16に締結する際、逆止側蓋部材7が共回りする可能性があるが、切欠き部7aを所要の工具で掴むことにより共回りを防止することができる。
【0024】
前記のボルト16として独立部品を用いることなく、例えば、逆止側蓋部材7の内面にボルト状のねじ部を有する軸を一体に設ける構造が考えられる。しかし、逆止側蓋部材7は摩擦をうけるため、熱処理が必要であるが、これを熱処理すると前記の軸部もともに熱処理されることになりナット18の締付け時に折損し易い問題がある。しかし、前記のようにボルト16を独立した部品で形成すると逆止側蓋部材7の熱処理時にボルト16が熱処理を受けることがないので、前記の問題が解消される。
【0025】
前記の駆動レバー19は2本のアーム21、22を有し(図4、図5参照)、その一方のアーム21とケーシング17との間にばね23が介在され、駆動レバー19をアーム21側に付勢する。
【0026】
前記の駆動側クラッチ部材2の詳細構造を図6及び図7に基づいて説明する。逆止側クラッチ部材3は同じ構成であるので説明を省略する。
【0027】
まず、前記のころ11、外輪1の内径、ボルト16等の大きさの関係を示すため、図6において付勢ばね12を省略した図を示している。この図に示したように、ころ11の直径hは外輪1の内径Hより若干小さく形成される。その差をδで示す。また、ころ11がボルト16の中心点Oを中心とし欠円面14を基準に直角座標(X軸、Y軸)をとった図6の状態において、ボルト16ところ11の偏芯穴24との間に微小クリアランスΔXがあるように設定される。微小クリアランスΔXはころ11が前記の差δの範囲内で欠円面14上を移動した場合に、ころ11の偏芯穴24がボルト16に干渉することがない最小の大きさに設定される。なお、ころ11の中心点をOで示す。
【0028】
図6の状態からころ11が前記δの範囲内で左右いずれかに移動した場合、ころ11は外輪1の優弧側のY軸左右同一角度の二点A、Bと、また劣孤側のY軸左右同一角度の二点A、Bにおいて噛み込みを生じる。この実施形態1においては、点AとAにおいて噛み込みを生じる場合の点Aにおける接線の欠円面14に対する角度αをクサビ角と称する。クサビ角αにころ11が噛み込む作用をロック、噛み込んだ状態をロック状態と称する。
【0029】
図7は付勢ばね12を追加してころ11をクサビ角αの方向に付勢するとともに、外輪1と欠円軸8との相対回転によりころ11が点AとAに噛み込んでロックした状態を示す。なお、外輪1と欠円軸8の相対回転の方向が前記と逆の場合は、ころ11が点BとBに噛み込んでロックするが、付勢ばね12の付勢力によりロックに至ることが阻止される。従って、ころ11と欠円軸8とが空転状態となる。
【0030】
ころ11の以上の作動は、ボルト16が存在しない従来の場合と変るところがない。即ち、ころ11は微小クリアランスΔXの存在により外輪1に干渉することなく本来の作用を行う。この微小クリアランスΔXは、前記の干渉を生じない範囲で最小限の大きさに設定され、この範囲内で空転時におけるころ11のスキュー等が防止される。
【0031】
前記のクラッチ部材2、3は、図2及び図3に示したように、同一構造であり、通常の状態において、付勢ばね12、12’により、各ころ11、11’が同一方向に付勢される。外輪1と欠円軸8の相対回転によりころ11、11’がボルト16の周りに付勢ばね12、12’の付勢方向に偏芯回転する(矢印A参照)と、ころ11、11’がポケット9のクサビ角αに噛み込みを生じロックする。前記と逆方向に回転するとロックが解除される。このように、クラッチ部材2、3は、回転の同一方向にロックし、その逆方向にはロックが解除される。即ち、方向性が揃っている。
【0032】
なお、前記のケーシング17とこれに連結されたボルト16、逆止側蓋部材7が「特許請求の範囲」にいう「固定部材」を構成している。
【0033】
実施形態1の一方向クラッチユニットは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0034】
図4に示したように、駆動レバー19のアーム22に入力Pが加えられると、ばね23の収縮力に抗して駆動レバー19がロック解除方向に揺動され、駆動レバー19と一体の駆動側クラッチ部材2の欠円軸8が付勢ばね12の付勢力に抗して矢印A(図2参照)と反対方向に回転される。これによってころ11が逆方向、即ち、矢印Bと反対方向に偏芯回転してロックが解除される。このとき、付勢ばね12の付勢力によって付勢ばね12側の狭小空間にころ11が噛み込むことが防止される。
【0035】
前記のロック解除により欠円軸8がころ11と共に空転し、外輪1に対するトルクの伝達が遮断される。このとき巻き取ったテープから出力歯車4を介して外輪1に逆転方向(矢印Cと反対方向)のトルクが作用し、出力歯車4と外輪1を逆転させようとするが、そのトルクによって逆止側クラッチ部材3のころ11’が噛み込んでロックされるため外輪1の逆転が防止される。
【0036】
駆動レバー19のアーム22に作用する入力Pが除去されると、ばね23の力によって前記と反対方向に揺動され、駆動側クラッチ部材2の欠円軸8が矢印A方向に回転され、前記微小クリアランスΔXの範囲内でころ11を矢印B方向に偏芯回転させる。これによりころ11がクサビ角αに噛み込んでロックされる。そのロックにより駆動側クラッチ部材2とともに外輪1及び出力歯車4が矢印C方向に回転され所要の巻取りを行う。このとき、逆止側クラッチ部材3は外輪1の矢印C方向への回転によりころ11’のロックが解除されて空転し、前記の巻取りに支障を来たすことがない。
【0037】
以上のように、駆動レバー19の揺動が繰り返されることによって、出力歯車4を介して巻取りリール等が間欠回転されテープ等を巻き取る。
【0038】
次に、図8から図12に示した実施形態2の一方向クラッチユニットは、基本的には前記の実施形態1と同様であるが、相違する点は、前記実施形態1の場合は外輪1を一体物で構成していたが、この実施形態2の場合は、これを軸方向に2分し外輪1aと外輪1bにより構成し、それらの外径面にそれぞれ回り止め用の溝10a、10bが設けられた点、及び外環部材5の内径面に設けた回り止め用の凸条20a、20bが、外輪1a、1bに対応して軸方向に設けられるとともに、各凸条20a、20bごとに周方向に反ピッチだけずらせて設けた点である。各外輪1a、1bの溝10a、10bを外環部材5の両開口端からそれぞれの凸条20a、20bに嵌合させて挿入すると、各外輪1a、1bは外環部材5の中間で相互に突き合って止まる。これにより、各外輪1a、1bは各凸条20a、20bを越えて反対側に抜け出すことがなく、たとえ抜け出すとしても一方向にしか抜け出さない。
【0039】
その他の構成、作用等は前記の実施形態1の場合と同じであるので、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態1の縦断面図
【図2】図1のX−X線の断面図
【図3】図1のY−Y線の断面図
【図4】図1の一部省略右側面図
【図5】(a)実施形態1の分解斜視図、(b)(a)図の一部変形した場合の部分分解斜視図
【図6】実施形態1の大きさ関係の説明図
【図7】実施形態1のロックとその解除状態の説明図
【図8】実施形態2の断面図
【図9】図8のX−X線の断面図
【図10】図8のY−Y線の断面図
【図11】図8の一部省略右側面図
【図12】(a)実施形態2の分解斜視図、(b)(a)図の一部変形した場合の部分分解斜視図
【符号の説明】
【0041】
1、1a、1b 外輪
2 駆動側クラッチ部材
3 逆止側クラッチ部材
4 出力歯車
5 外環部材
6 駆動側蓋部材
6a 切欠き部
6b ラジアル受け部
7 逆止側蓋部材
7a 切欠き部
7b ラジアル受け部
8、8’ 欠円軸
9、9’ ポケット
10、10a、10b 溝
11、11’ ころ
12、12’ 付勢ばね
13、13’ 円弧部
14、14’ 欠円面
15 ワッシャ
16 ボルト
16a ねじ部
16c 段差
17 ケーシング
18 ナット
19 駆動レバー
19a ボス部
19b 欠円部
20、20a、20b 凸条
21、22 アーム
23 ばね
24 偏芯穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪の内部に方向性の揃った一方向性の駆動側クラッチ部材と逆止側クラッチ部材が軸方向に並列に組み込まれ、各クラッチ部材が前記外輪に対し相対回転可能に嵌合された内輪と、その内輪と外輪内径面によって形成され一方向に狭小となるクサビ角を有するポケットに組み込まれたころと、該ころを前記クサビ角の方向に付勢する付勢ばねとからなり、前記駆動側クラッチ部材の内輪が往復揺動する駆動部材に連結されるとともに、逆止側クラッチ部材の内輪が固定部材に連結され、前記逆止側クラッチ部材によって逆回転を防止しつつ、前記駆動レバーの往復揺動により前記駆動側クラッチ部材のころによるロック作用と、ロック解除による空転作用を繰り返すことにより前記外輪を一定方向に間欠回転させるようにした一方向クラッチユニットにおいて、
前記ころとその付勢ばねが各クラッチ部材ごとに1個づつ使用され、前記各クラッチ部材の前記内輪が欠円軸によって形成され、該欠円軸と外輪の内径面とによって前記ポケットが形成され、該ポケットに前記の1個のころと付勢ばねがそれぞれ組み込まれ、前記固定部材が前記外輪の一方の開放端を閉塞するとともにその内径面に嵌合するラジアル受け部を有する逆止側蓋部材と、ケーシングと、該逆止側蓋部材とケーシング部材の間を連結するボルトとからなり、該ボルトが前記各ころを微小クリアランスをもって貫通し、前記駆動部材が前記外輪の他方の開放端を閉塞するとともにその内径面に嵌合するラジアル受け部を有する駆動側蓋部材と、その駆動側蓋部材に取付けられた駆動レバーとからなることを特徴とする一方向クラッチユニット。
【請求項2】
前記ボルトが、軸部とねじ部との間に段差を有する単体のボルトにより形成され、ボルト頭部から前記段差までの長さにより前記駆動側クラッチ部材と逆止側クラッチ部材の軸方向の配置間隔を確保するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の一方向クラッチユニット。
【請求項3】
前記逆止側蓋部材とこれに挿通された前記ボルトが相対回転不可能に結合されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向クラッチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−300310(P2006−300310A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249529(P2005−249529)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】