説明

一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法および組立装置

【課題】 一方向クラッチを組み込んだ後のラジアルスキマの測定を可能とした一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法および組立装置を提供する。
【解決手段】 玉軸受5および一方向クラッチ4が内輪2と外輪3との間に組み込まれた状態で玉軸受5のラジアルスキマを測定するスキマ測定装置11を備えており、スキマ測定装置11は、駆動手段13によって回転させられる駆動軸14と、駆動軸14に内輪2を結合する内輪クランプ手段15と、駆動軸14の位相角度を検出する位相角度検知手段16と、外輪3を保持する外輪クランプ手段17と、外輪クランプ手段17を支持して移動可能な可動テーブル19と、可動テーブル19に荷重を負荷する荷重負荷手段21と、荷重が負荷された際の外輪の移動量を検知する外輪移動量検出手段22と、外輪の移動量から玉軸受のラジアルスキマを求める演算手段23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト駆動スタータやオルタネータなどに使用される一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法および組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、軸とプーリとの間のトルク伝達をロック状態またはフリー状態とする一方向クラッチが設けられ、この一方向クラッチを挟んでころ軸受および玉軸受が設けられている一方向クラッチ付きプーリユニットは、従来より知られている(特許文献1)。
【0003】
このような一方向クラッチ付きプーリユニットは、プーリと軸との間に、一方向クラッチおよび2つの転がり軸受を軸方向一方から順番に組み込んでいる。
【特許文献1】特開2001−208100号公報(段落番号0047)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転がり軸受については、通常、そのラジアルスキマが規格範囲内にあるかどうかを測定することでその保証を行っており、この種の一方向クラッチ付きプーリユニットで使用されている転がり軸受についても、同様の保証が求められる。ラジアルスキマは、内輪および外輪のいずれか一方に対して他方を径方向に移動させ、その移動量を測定することで得ることができる。しかしながら、一方向クラッチ付き軸受ユニットの場合、一方向クラッチがプーリ(外輪)と軸(内輪)との間に介在させられていることで、内輪および外輪のいずれか一方に対して他方を径方向に移動させることができなくなっており、一方向クラッチを組み込む前のラジアルスキマは測定できるが、一方向クラッチを組み込んだ後のラジアルスキマは測定できないという問題があった。
【0005】
この発明の目的は、一方向クラッチを組み込んだ後のラジアルスキマの測定を可能とした一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法および組立装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法は、内輪と外輪との間に両輪間のトルク伝達をロック状態またはフリー状態とする一方向クラッチが設けられ、この一方向クラッチに隣り合って転がり軸受が設けられている一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法であって、転がり軸受および一方向クラッチが内輪と外輪との間に組み込まれた状態で転がり軸受のラジアルスキマを測定するスキマ測定工程を備えており、スキマ測定工程は、外輪に所定荷重を付与して内輪を一方向クラッチのフリー方向に予備回転させる工程と、予備回転後に第1の位置において軸方向に対して直角方向に外輪を移動させて外輪移動量を測定する工程と、第1の位置から所定角度内輪が回転した第2の位置において軸方向に対して直角方向に外輪を移動させて外輪移動量を測定する工程と、同様にして第3から第nまでの位置において外輪移動量を測定する工程と、第1から第nまでの位置における外輪移動量から転がり軸受のラジアルスキマを求める工程とを含んでいることを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明による一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置は、内輪と外輪との間に両輪間のトルク伝達をロック状態またはフリー状態とする一方向クラッチが設けられ、この一方向クラッチに隣り合って転がり軸受が設けられている一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置であって、転がり軸受および一方向クラッチが内輪と外輪との間に組み込まれた状態で転がり軸受のラジアルスキマを測定するスキマ測定装置を備えており、スキマ測定装置は、駆動手段によって回転させられる駆動軸と、駆動軸に内輪を結合する内輪クランプ手段と、駆動軸の軸線回りの位相角度を検出する位相角度検知手段と、外輪を保持する外輪クランプ手段と、外輪クランプ手段を支持して軸線方向と直交する方向に移動可能な可動テーブルと、可動テーブルに軸線方向と直交する方向の荷重を負荷する荷重負荷手段と、可動テーブルに荷重が負荷された際の外輪の移動量を検知する外輪移動量検出手段と、外輪の移動量から転がり軸受のラジアルスキマを求める演算手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
転がり軸受は、例えば玉軸受とされるが、これに限定されるものではない。一方向クラッチ付き軸受ユニットは、例えば、一方向クラッチの一側に玉軸受が設けられたもの(他側に軸受無し)とされていることがあり、また、一方向クラッチの一側に玉軸受、他側にころ軸受が設けられたものとされていることがある。
【0009】
一方向クラッチ付き軸受ユニットは、アッセンブリ状態において、一方向クラッチが内外輪に張り付いているため、内輪と外輪とが相対的に径方向に移動することができなくなっており、この状態のままでは、内輪および外輪のいずれか一方を所定荷重に到達するするまで移動させることで得られるラジアルスキマは測定できないものとなっている。そこで、一方向クラッチが内外輪に張り付いている状態を解除して、軸受によって荷重が負荷されている状態を得ることが必要となる。そのためには、一方向クラッチのフリー方向に内輪と外輪とを相対的に回転させればよい。この際、無負荷であれば、両輪は共回りするので、径方向に荷重を負荷する必要があり、この負荷荷重(測定荷重)は、一方向クラッチが離脱する荷重以上の大きさ(ばねタイプの一方向クラッチの場合、ばね荷重よりも大きい荷重)とされる。ラジアルスキマの検出前に、一方向から測定荷重をかけながら予備回転(フリー方向回転)を行うことにより、転がり軸受の転動体が軌道底に移動する。このためには、転動体の軸方向移動抵抗力:R>外輪(負荷輪)の固定力:Pの条件が成立している必要がある。
【0010】
位相角度検知手段は、例えば、ロータリーエンコーダを有しているものとされる。
【0011】
外輪移動量検出手段は、例えば、差動トランスを有しているものとされる。差動トランスは、外輪の移動量を直接検出する以外に、外輪を保持している外輪クランプ手段の移動量(外輪の移動量に等しいとみなされる)を検出するものであってもよい。ただし、可動テーブルの移動量を外輪の移動量と等しいとみなすことは避ける方が好ましい。
【0012】
外輪クランプ手段は、例えば、相互に接近離隔可能な1対のアームを有しているものとされ、このアームの移動方向(外輪をクランプする方向)と可動テーブルの移動方向とは、互いに平行とされることが好ましい。
【0013】
荷重負荷手段は、一方向にだけ荷重を負荷することが可能なものとされてもよいが、好ましくは、逆方向にも荷重を負荷することが可能なものとされる。内輪は、外輪に荷重が負荷された状態で回転させられる。逆方向にも荷重を負荷することが可能な場合、予備回転後には、内輪を1ピッチ=360°/(2m+1),m:自然数ずつ回転可能とし、一方向に荷重を負荷して外輪移動量を測定した後は、逆方向に荷重を負荷して内輪を1ピッチだけ回転させて、外輪移動量を測定し、次いで、正方向に荷重を負荷して内輪を1ピッチだけ回転させて、外輪移動量を測定し、これを繰り返すことで第1から第nまでの位置における外輪移動量を得ることがより好ましい。そして、同じ位置で一方向と逆方向に荷重を負荷したときのそれぞれの外輪移動量から1つのラジアルスキマ(移動量の絶対値の和)を求め、他の位置でも同様にしてラジアルスキマを求め、少なくとも計(2m+1)個のラジアルスキマを平均することでラジアルスキマが求められる。こうして、1回転360°を奇数回に分割して等角度ずつ回転させるとともに、負荷の方向を交互に変更していくことにより、負荷回数に対するサイクルタイムの影響を小さくすることができる。
【0014】
3等配の箇所でのラジアルスキマの測定は、具体的には、例えば、外輪クランプ手段の移動量を検出する差動トランスを使用して、次の順序で行われる。
【0015】
(a)外輪をクランプした後、+方向に負荷をかけ、内輪をフリー方向に回転(予備回転)させる。
【0016】
(b)予備回転後のある位置の差動トランス値を記憶。
【0017】
(c)次いで、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0018】
(d)次いで、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0019】
(e)次いで、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0020】
(f)次いで、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0021】
(g)次いで、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0022】
(h)次いで、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0023】
(i)次いで、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0024】
(j)次いで、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値を記憶。
【0025】
(k)A〜C各位置の+方向変位と−方向変位の差(移動量の和)が各位置でのラジアルスキマとなるので、転動体の位置関係のばらつきを考慮して、|(h)−(e)|,|(e)−(b)|,|(i)−(f)|,|(f)−(c)|,|(j)−(g)|および|(g)−(d)|の6データの平均値をラジアルスキマとする。また、これらの6データの最大値を最大ラジアルスキマ、最小値を最小ラジアルスキマとして記録する。
【発明の効果】
【0026】
この発明の一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法および組立装置によると、一方向クラッチを組み込んだ後においても、軸受のラジアルスキマを測定することができる。
【0027】
また、1回転360°を奇数回に分割して等角度ずつ回転させるとともに、負荷の方向を交互に変更していくことにより、負荷回数に対するサイクルタイムの影響を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、図1の上下を上下といい、図1および図2の左を前、同右を後というものとする。
【0029】
図1および図2は、この発明による一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置を示している。
【0030】
この発明による組立方法および装置が対象としている一方向クラッチ付き軸受ユニット(1)は、詳細説明を省略するが、エンジンの駆動部とオルタネータやスタータモータの回転軸とを連結する部分などにおいて使用されるもので、オルタネータなどの回転軸(図示略)に嵌められる中空軸(2)とこれと同心に配置されたプーリ(3)との間に設けられた一方向クラッチ(4)と、一方向クラッチ(4)の両側に配置された玉軸受(5)およびころ軸受(6)とを有している。そして、プーリ(3)が一方向クラッチ(4)の外輪と軸受(5)(6)の外輪とを兼ねる一体品とされるとともに、中空軸(2)が一方向クラッチ(4)の内輪と軸受(5)(6)の内輪とを兼ねる一体品とされていることにより、部品点数の減少が図られている。中空軸(2)には、その開口部に工具が嵌め合わせられる六角柱状の工具嵌合部が設けられ、同部に連なってオルタネータなどの回転軸のおねじ部がねじ合わされるめねじ部(2a)が形成されている。
【0031】
一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置は、玉軸受(5)、一方向クラッチ(4)およびころ軸受(6)をこの順でプーリ(以下では「外輪」と称す)(3)と中空軸(以下では「内輪」と称す)(2)との間に挿入していく挿入装置(図示略)と、2つの軸受(5)(6)および一方向クラッチ(4)が内輪(2)および外輪(3)間に組み込まれた状態で玉軸受(6)のラジアルスキマを測定するスキマ測定装置(11)とを備えている。
【0032】
スキマ測定装置(11)は、従来、一方向クラッチ(4)を挿入する前においてしか側適できなかった玉軸受(5)のラジアルスキマを一方向クラッチ(4)の挿入を含む挿入工程終了後に測定可能とするもので、ケーシング(12)内に回転自在に支持されて駆動手段(13)によって回転させられる上下方向にのびる駆動軸(14)と、駆動軸(14)に内輪(2)を結合する内輪クランプ手段(15)と、駆動軸(14)の軸線回りの位相角度を検出する位相角度検知手段(16)と、前後1対のアーム(18)を有し外輪(3)を保持する外輪クランプ手段(17)と、外輪クランプ手段(17)を支持して前後方向(軸線方向と直交する方向)に移動可能な可動テーブル(19)と、可動テーブル(19)を案内する前後方向にのびる1対のガイドレール(20)と、可動テーブル(19)に前後方向の荷重を負荷する荷重負荷手段(21)と、可動テーブル(19)に荷重が負荷された際の外輪(3)の移動量を検知する外輪移動量検出手段(22)と、外輪(3)の移動量から玉軸受(5)のラジアルスキマを求める演算手段(23)とを備えている。
【0033】
駆動手段(13)は、駆動軸(14)に固定された従動プーリ(31)と、従動プーリ(31)とベルト(32)によって結合された駆動プーリ(図示略)と、駆動プーリを駆動するモータ(33)とを有している。
【0034】
内輪クランプ手段(15)は、中空状とされた駆動軸(14)の内部に挿通されて先端部を駆動軸(14)から突出させた支持軸(34)と、内輪(2)に予め形成されているめねじ部(2a)に対応するおねじ部(35a)が支持軸(34)の先端部に設けられることで形成された内輪クランプ用軸部(35)とを有している。内輪クランプ用軸部(35)の先端には、おねじ部材(36)がねじ合わされており、内輪(2)に予めめねじ部(2a)が形成されていない場合には、内輪クランプ用軸部(35)に嵌め合わせられて内輪(2)に上方(軸方向先端側)から当てがわれた環状の内輪クランプ治具をおねじ部材(36)を締め付けて内輪(2)に一体化することによって、内輪(2)を保持することができる。
【0035】
位相角度検知手段(16)は、ロータリーエンコーダ(38)と、ロータリーエンコーダ(38)の入力軸(38a)と駆動軸(14)とを結合するギヤ(39)(40)とを有している。
【0036】
外輪クランプ手段(17)は、前後アーム(18)がそれぞれ取り付けられた前後1対のスライダ(41)と、スライダ(41)を案内するガイドレール(42)と、各スライダ(41)を互いに接近または離隔する方向に移動させるスライダ駆動手段(43)とを有している。外輪(3)は、前後アーム(18)によって径方向対称位置から挟持され、この状態で、可動テーブル(19)が前後方向に移動させられることで、外輪(3)に荷重が負荷される。外輪(3)をクランプする方向と可動テーブル(19)の移動とは、いずれも前後方向(互いに平行)とされている。
【0037】
荷重負荷手段(21)は、前後方向にのびるシリンダーロッド(45)を前進・後退させる流体圧シリンダー(44)と、可動テーブル(19)に固定されてシリンダーロッド(45)を挿通させるばね受け部材(46)と、シリンダーロッド(45)の基端部とばね受け部材(46)との間に配置された前進方向負荷ばね(47)と、シリンダーロッド(45)の先端部とばね受け部材(46)との間に配置された後退方向負荷ばね(48)とを有している。したがって、シリンダーロッド(45)を前進(左方に移動)させると、可動テーブル(19)は、前進方向負荷ばね(47)によって前進方向(以下では「+方向」と称す)に付勢され、また、シリンダーロッド(45)を後退(右方に移動)させると、可動テーブル(19)は、後退方向負荷ばね(48)によって後退方向(以下では「−方向」と称す)に付勢される。測定荷重は、フリー方向に回転させたときに一方向クラッチ(4)が離脱して、軸受(5)(6)だけで荷重を負荷できるように設定される。
【0038】
外輪移動量検出手段(22)は、外輪(3)の前後方向移動量=前後アーム(18)の前後方向移動量であることに基づいて、外輪(3)の前後方向移動量を求めるもので、装置に固定されている支持ブラケット(49)に支持されて前後アーム(18)の前後方向移動量を検出する差動トランス(50)を有している。
【0039】
図3を参照して、上記の一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置におけるスキマ測定装置(11)を使用して玉軸受(5)のラジアルスキマを測定するステップを説明する。ここで、駆動軸(14)は、回転角度にして120°ずつ回転させられ、荷重負荷手段(21)は、この間に、+方向または−方向のいずれかに移動させられる。
【0040】
まず、玉軸受(5)の玉を軌道底に移動させるために、図3(a)に示すように、外輪(3)をクランプした状態で、+方向に負荷をかけ、内輪(2)をフリー方向に回転(予備回転)させる。
【0041】
次いで、図3(b)に示すように、予備回転後のある位置の差動トランス値<+A>を記憶させる。
【0042】
次いで、図3(c)に示すように、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<−B>を記憶する。
【0043】
次いで、図3(d)に示すように、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<+C>を記憶する。
【0044】
次いで、図3(e)に示すように、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<−A>を記憶する。
【0045】
次いで、図3(f)に示すように、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<+B>を記憶する。
【0046】
次いで、図3(g)に示すように、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<−C>を記憶する。
【0047】
次いで、図3(h)に示すように、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<+A>を記憶する。
【0048】
次いで、図3(i)に示すように、−方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<−B>を記憶する。
【0049】
次いで、図3(j)に示すように、+方向負荷に変更し内輪が120°回転時の差動トランス値<+C>を記憶する。
【0050】
上記(b)〜(j)の操作において、A〜C各位置の+方向変位と−方向変位の差(移動量の和)が各位置でのラジアルスキマとなり、演算手段(23)においては、|(h)−(e)|=<+A>−<−A>,|(e)−(b)|=<+A>−<−A>,|(i)−(f)|=<+B>−<−B>,|(f)−(c)|=<+B>−<−B>,|(j)−(g)|=<+C>−<−C>および|(g)−(d)|=<+C>−<−C>の6データが得られる。したがって、これらの平均値を玉軸受(5)のラジアルスキマとすればよい。また、これらの6データの最大値を最大ラジアルスキマ、最小値を最小ラジアルスキマとして、これが最大または最小ラジアルスキマの基準値を超えたものについては、ラジアルスキマ異常として排除される。
【0051】
こうして、1回転360°を奇数回(3回)に分割して等角度(120°)ずつ回転させるとともに、負荷の方向を交互に変更していくことにより、負荷回数に対するサイクルタイムの影響を小さくすることができる。
【0052】
参考のために、図4を参照して、1回転360°を偶数回(4回)に分割して等角度(90°)ずつ回転させるとともに、負荷の方向を交互に変更していく場合の玉軸受(5)のラジアルスキマを測定するステップを説明する。
【0053】
まず、玉軸受(5)の玉を軌道底に移動させるために、図4(a)に示すように、外輪(3)をクランプした状態で、+方向に負荷をかけ、内輪(2)をフリー方向に回転(予備回転)させる。
【0054】
次いで、図4(b)に示すように、予備回転後のある位置の差動トランス値<+A>を記憶させる。
【0055】
次いで、図4(c)に示すように、−方向負荷に変更し内輪が90°回転時の差動トランス値<−B>を記憶する。
【0056】
次いで、図4(d)に示すように、+方向負荷に変更し内輪が90°回転時の差動トランス値<+C>を記憶する。
【0057】
次いで、図4(e)に示すように、−方向負荷に変更し内輪が90°回転時の差動トランス値<−D>を記憶する。
【0058】
次いで、同様にすると、図4(f)に示すように、差動トランス値は、+方向負荷の<+A>を検出することになる。この<+A>は、図4(b)で得られており、求めたいのは<−A>である。
【0059】
そこで、図4(g)に示すように、内輪は回転させずに、−方向負荷に変更し差動トランス値<−A>を記憶する。
【0060】
次いで、図4(h)に示すように、+方向負荷に変更し内輪が90°回転時の差動トランス値<+B>を記憶する。
【0061】
以下、同様の操作を繰り返し、演算手段(23)においては、<+A>−<−A>,<+B>−<−B>,<+C>−<−C>および<+D>−<−D>が求められ、これらを平均することで玉軸受(5)のラジアルスキマが求められる。
【0062】
この偶数回に分割した場合、図4(f)のように調整が必要なステップが入ることになり、この点、同様の操作を繰り返せばよい図3に示した奇数回の等配の方がサイクルタイム減少の点から有利となっている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、この発明による一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置の1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、同平面図である。
【図3】図3は、この発明による一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法の1実施形態を示す縦断面図である。
【図4】図4は、この発明による一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法の他の実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
(1) 一方向クラッチ付き軸受ユニット
(2) 中空軸(内輪)
(3) プーリ(外輪)
(4) 一方向クラッチ
(5) 玉軸受
(11) スキマ測定装置
(13) 駆動手段
(14) 駆動軸
(15) 内輪クランプ手段
(16) 位相角度検知手段
(17) 外輪クランプ手段
(19) 可動テーブル
(21) 荷重負荷手段
(22) 外輪移動量検出手段
(23) 演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と外輪との間に両輪間のトルク伝達をロック状態またはフリー状態とする一方向クラッチが設けられ、この一方向クラッチに隣り合って転がり軸受が設けられている一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法であって、
転がり軸受および一方向クラッチが内輪と外輪との間に組み込まれた状態で転がり軸受のラジアルスキマを測定するスキマ測定工程を備えており、スキマ測定工程は、外輪に所定荷重を付与して内輪を一方向クラッチのフリー方向に予備回転させる工程と、予備回転後に第1の位置において軸方向に対して直角方向に外輪を移動させて外輪移動量を測定する工程と、第1の位置から所定角度内輪が回転した第2の位置において軸方向に対して直角方向に外輪を移動させて外輪移動量を測定する工程と、同様にして第3から第nまでの位置において外輪移動量を測定する工程と、第1から第nまでの位置における外輪移動量から転がり軸受のラジアルスキマを求める工程とを含んでいることを特徴とする一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法。
【請求項2】
逆方向にも荷重を負荷可能とするとともに、内輪を1ピッチ=360°/(2m+1),m:自然数ずつ回転可能とし、一方向に荷重を負荷して外輪移動量を測定した後は、内輪を1ピッチだけ回転させるとともに、逆方向に荷重を負荷して外輪移動量を測定し、次いで、内輪を1ピッチだけ回転させるとともに、正方向に荷重を負荷して外輪移動量を測定し、これを繰り返すことで第1から第nまでの位置における外輪移動量を得ることを特徴とする請求項1の一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立方法。
【請求項3】
内輪と外輪との間に両輪間のトルク伝達をロック状態またはフリー状態とする一方向クラッチが設けられ、この一方向クラッチに隣り合って転がり軸受が設けられている一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置であって、
転がり軸受および一方向クラッチが内輪と外輪との間に組み込まれた状態で転がり軸受のラジアルスキマを測定するスキマ測定装置を備えており、スキマ測定装置は、駆動手段によって回転させられる駆動軸と、駆動軸に内輪を結合する内輪クランプ手段と、駆動軸の軸線回りの位相角度を検出する位相角度検知手段と、外輪を保持する外輪クランプ手段と、外輪クランプ手段を支持して軸線方向と直交する方向に移動可能な可動テーブルと、可動テーブルに軸線方向と直交する方向の荷重を負荷する荷重負荷手段と、可動テーブルに荷重が負荷された際の外輪の移動量を検知する外輪移動量検出手段と、外輪の移動量から転がり軸受のラジアルスキマを求める演算手段とを備えていることを特徴とする一方向クラッチ付き軸受ユニットの組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−240770(P2008−240770A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78310(P2007−78310)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】