説明

一方向回転ダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構及びレンジフード

【課題】急激な速度で開口せずに減速された状態で自重により開口し、作業者が手動により開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向へは抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどが可能とする。
【解決手段】ラチェット軸10の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチ(爪部材12、ばね13及びベースプレート15)と、ベースプレート15の外周面と内周面で接するように配置された軸受け16と、軸受け16とベースプレート15の接触圧力を自在に調整する締め付け部材(軸受けハウジング17、18、ボルト20、21)とを備え、回転不能な方向に所定以上の力が作用したときに、ベースプレート15の外周面及び軸受け16の内周面の一方が他方の面上を摺動し、ベースプレート15及び軸受け16の一方が他方に対して相対的に回転する一方向回転ダンパ1を備えたレンジフード31。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に摩擦摺動抵抗を有するダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構、及び煙吸引部の整流板に該開閉機構を採用したレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厨房や家庭の台所において、コンロ等から生じる調理の際の煙を換気扇によって吸引し屋外へ排出するにあたり、効果的に煙を吸引して排煙する目的でレンジフードが使用される。一般的には、このレンジフードの内部にフィルターが配され、吸引した煙の中の油分等を付着させ、油の飛散を抑えるように構成されている。
【0003】
フィルターには煙中の油分が付着するため、レンジフードの吸引力の低下を防ぐ意味でも、フィルターは定期的に交換することが求められており、一般的には調理器具の上方に位置しているレンジフード内にある汚れたフィルターを取り出し、新規のフィルターに交換することが余儀なくされていた。
【0004】
また、レンジフードへの煙の吸入を効率よく行うため、レンジフードの開口部に整流板を配する構成が用いられている場合には、その整流板を脱着して該フィルターを交換する必要があった。
【0005】
整流板を取り外す場合には、レンジフードに取付ねじで固定されている整流板を落下しないように抑えながら、取付ねじを外す必要があり、一人での作業は困難であった。また、整流板の一方を回転支持するようにし、他方を取付ねじ又は嵌め込み等による固定手段で取り付けた構成も提供されているが、固定手段を解放すると整流板の自重により急激に下方に回動し作業者に当たる虞があるため、整流板を手で支持しながらでなければ開放できなかった。
【0006】
整流板の開放方向への速度を抑制する手段として、特許文献1には、閉状態から開状態となる開動作中において、煙吸引部が所定の距離以上下方に達したときにその開動作を減速させ、所定位置に達すると開動作を止めてその状態を保持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−300353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1は、煙吸引部(本願発明における整流板)が所定の距離以上下方に達したときに開動作を減速させるようにステー内にトーションスプリングが配されている構成であるために、煙吸引部を開放した瞬間はトーションスプリングの付勢力が小さいため開放時の速度は減速されず、煙吸引部の自重とトーションスプリングの弾性力が釣り合った後は、煙吸引部はそれ以上回転できないため開口状態をさらに大きくすることはできないため、作業者が開口の程度をさらに大きくすることが困難であった。
【0009】
このように、特許文献1はトーションスプリングのような弾性部材を配しているため、開口具合により付勢力が異なり、開放時の速度を減速させると、自重と釣り合う位置が開口具合の小さい位置となり、開口具合を大きくしようとすると、開放時の開放速度が減速されず、作業者に当たる虞があり、トーションスプリングの調整が非常に難しかった。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、一方の端面がヒンジ機構で支持され、他方の端面がヒンジ機構部を中心に上下方向に回動する整流板を開放する場合等において、急激な速度で開口することなく減速された状態で自重により開口することができ、さらに開口具合を必要に応じて、作業者が手動により、開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向への作動においては抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどを可能とする一方向回転ダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構及びレンジフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、一方向回転ダンパであって、軸の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチと、該一方向クラッチの外周面と内周面で接するように配置された筒状摩擦材とを備え、前記軸に、該軸の回転不能な方向に所定以上の力が作用したとき、又は前記一方向クラッチに、前記軸を該軸の回転不能な方向に回転させようとする所定以上の力が作用したときに、前記一方向クラッチの外周面及び前記筒状摩擦材の内周面の一方が他方の面上を摺動し、前記一方向クラッチ及び筒状摩擦材の一方が他方に対して相対的に回転することを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、一方の回転方向に対しては軽々と回動でき、他方の回転方向に対しては摩擦力を付与した状態で摺動できるため、他方の回転方向には所定の作用力以上の入力が働かない限り不動に固定でき、摩擦係数から定まる摩擦力以上の力が作用すると動き始め、さらに該摩擦力以上の力が作用している間だけ回動するという一種のトリガー機能を有する一方向回転ダンパを提供することができる。
【0013】
上記一方向回転ダンパにおいて、前記筒状摩擦材の内周面と前記一方向クラッチの外周面との接触圧力を自在に調整する締め付け部材を備えることができ、これによれば、摩擦摺動面へ与える圧力を変化させ、摺動に要する摩擦力を所望の大きさにすることができる。
【0014】
上記一方向回転ダンパにおいて、前記一方向クラッチが、前記軸に設けられる歯車と、該歯車と歯合する、弾性部材で付勢された爪部材とからなり、該爪部材が前記歯車のいずれか一つの歯と歯合することにより前記一方向と反対方向への前記軸の回転を制止することができる。
【0015】
上記一方向回転ダンパにおいて、前記一方向クラッチが、前記爪部材を複数備え、該複数の爪部材によって、前記歯車の歯のピッチ角を該爪部材の数で除した大きさ毎に、該歯車の回転を制止可能なように構成することができる。これにより、軸を一方の回転方向に回動させる際に軸の固定位置を細かく調整することができる。そして、一方向クラッチの軸に設けられる歯車の歯に対し、複数設けた爪部材の位相差は、歯のピッチ角を爪部材の数で除した大きさにしているため、歯車の歯と爪部材の歯合が、複数設けた爪部材のいずれかの位置で生じ歯合する位置を細かく設定できる。
【0016】
上記一方向回転ダンパにおいて、前記筒状摩擦材が、金属製の裏金と、該裏金の表面に形成された多孔質青銅焼結層と、該多孔質青銅焼結層の孔隙及び表面に充填被覆された合成樹脂組成物のすべり層とからなり、該すべり層を内側にして円筒状に捲回された複層巻き軸受けとすることができる。これによれば、筒状摩擦材に必要な強度を確保しつつ、一方向クラッチの外周面との間で適切な摩擦力を発揮することができる。
【0017】
また、本発明は、ヒンジ機構であって、上記いずれかに記載の一方向回転ダンパを備え、前記軸に連結された第1の部材と、該一方向回転ダンパの前記軸以外の部分に連結された第2の部材との間でヒンジ機能を発揮させることを特徴とする。このヒンジ機構によれば、上述のように、一方の回転方向に対しては軽々と回動でき、他方の回転方向には所定の作用力以上の入力が働かない限り不動に固定でき、トリガー機能を有することなどの特徴を備えたヒンジ機構を提供することができる。
【0018】
さらに、本発明は、開閉機構であって、上記ヒンジ機構を備え、前記第1及び第2の部材のいずれか一方が開閉対象物への取付部を備えることを特徴とする。
【0019】
この開閉機構によれば、前記発明と同様、一方の回転方向に対しては、開閉対象物を軽々と回動することができ、他方の回転方向に対しては、摩擦力により生じる抵抗力を発揮させながら回動することができる。また、他方の回転方向へ作用する外力の方向に重力を利用する場合には、開閉対象物の自重により生じる下方への回転モーメントによる回転力と、筒状摩擦部材及び一方向クラッチ間の摩擦力との釣り合いが取れた位置で、筒状摩擦部材又は一方向クラッチの回転を停止させることができるため、予め摩擦面へ与えられる摩擦力を所定の値に設定することで、摩擦力付与機構を介して回転する他方の回動角度を所望の角度に定めることができる。
【0020】
また、前記複数の爪部材を備えた一方向クラッチを用いることで、摩擦力付与機構で付与する摩擦力が回動しようとする回転モーメントから生じる回転力以上で固定されている場合において、蓋や扉の係止位置を歯車と爪部材の歯合により細かく設定することもできる。
【0021】
さらにまた、本発明は、レンジフードであって、上記開閉機構を備え、前記開閉対象物が整流板であることを特徴とする。このレンジフードによれば、整流板を開放する場合、急激な速度で開口することなく減速された状態で自重により開口することができ、さらに開口具合を必要に応じて、作業者が手動により、開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向への作動においては抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、急激な速度で開口することなく減速された状態で自重により開口することができ、さらに開口具合を必要に応じて、作業者が手動により、開口状態を整流板の自重とダンパ抵抗力で定まる所定位置以上に自在に調整することができ、閉鎖方向への作動においては抵抗力を生じることなく閉鎖作動を行うことなどを可能とする一方向回転ダンパ並びに該ダンパを備えたヒンジ機構、開閉機構及びレンジフードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる一方向回転ダンパ(又はヒンジ機構)を備えた開閉機構の一実施の形態を示す図であって、(a)は分解斜視図、(b)は装置側組立体を示す斜視図、(c)は扉側組立体を示す斜視図である。
【図2】図1の開閉機構をレンジフードの整流板の開閉に利用した場合の動作説明図である。
【図3】図2のレンジフードにおける開閉機構の動作を説明するための図である。
【図4】図1に示した開閉機構のベースプレートの他の例を示す平面図である。
【図5】図4に示したベースプレートに爪部材とばねを収容した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明にかかる一方向回転ダンパ(又はヒンジ機構)を備えた開閉機構の一実施の形態を示し、この開閉機構1は、大別して、第1ブラケット2と、トルク軸6と、カバープレート8と、ラチェット軸10と、爪部材12と、ばね13と、ベースプレート15と、軸受け16と、軸受けハウジング17、18と、第2ブラケット22等で構成される。
【0026】
第1ブラケット2は、装置や建物等への取付部2aと、軸受け2bとを備え、軸受け2bには、トルク軸6の小径部6bが収容され、ボルト3及びナット4によって締結されて保持される。トルク軸6は、大径部6aの両側に小径部6bと、挿通孔6cを備える。
【0027】
カバープレート8は、矩形板状の基部8aに円形の開口部8bと、2箇所にスリット8c、8dを備える。
【0028】
ラチェット軸10は、円筒部10aの軸方向中央部に歯車10bが設けられ、後述するように、開閉機構1を組み立てた状態でベースプレート15に収容された爪部材12と噛み合う。尚、ラチェット軸10の円筒部10aにトルク軸6の大径部6aを挿入することで、ラチェット軸10とトルク軸6が連結されるが、ラチェット軸10の内側でトルク軸6が回転するのを防止するため、円筒部10aの内周面及び大径部6aの外周面には、セレーション加工が施される。
【0029】
ベースプレート15は、円板状の基部15aに、同芯状に設けられた円形孔15bと、爪部材収容部15cと、ばね収容部15dとを備える。爪部材12は、円板状の基部12aから爪部12bが突設され、ベースプレート15の爪部材収容部15cに収容される。また、ばね13は、ベースプレート15のばね収容部15dに収容され、爪部材12を一方向に付勢する。これによって、ベースプレート15の円形孔15bに挿入されたラチェット軸10の歯車10bに対して一方向のみの回転を許容する一方向クラッチが構成される。
【0030】
軸受け16は、金属製の裏金と、該裏金の表面に形成された多孔質青銅焼結層と、該多孔質青銅焼結層の孔隙及び表面に充填被覆された合成樹脂組成物のすべり層とからなり、該すべり層を内側にして円筒状に捲回された複層巻き軸受けである。この軸受け16は、ベースプレート15の外周表面に装着されるとともに、軸受けハウジング17、18との間の開口部19に収容され、ボルト20、21によって締付力が加えられる。
【0031】
軸受けハウジング17は、軸受けハウジング18とで軸受け16の取付ハウジングを構成し、扉等への取付部17aには、扉等に締結手段を介して軸受けハウジング17を固定するための貫通孔17cを備える。取付部17aには、軸受け座を備えた立設部17bが設けられ、立設部17bにはスリット17dが穿設される。
【0032】
軸受けハウジング18は、軸受け座を備えた本体18aに、ボルト20、21によって軸受けハウジング17と接続するための挿通孔18cと、スリット18bが形成される。
【0033】
第2ブラケット22は、矩形板状の基部22aに円形の開口部22bを有し、基部22aの側面縁部に係止爪22c、22dを備える。
【0034】
次に、上記各部品の組立要領について説明する。
【0035】
第1ブラケット2の軸受け2bにトルク軸6の小径部6bを収容し、第1ブラケット2の挿通孔2c及びトルク軸6の挿通孔6cにボルト3を挿通させ、ナット4で締めることで図1(b)に示すように、装置側組立体24が完成する。
【0036】
一方、ベースプレート15の爪部材収容部15c及びばね収容部15dに各々爪部材12とばね13とを収容し、円形孔15bにラチェット軸10の歯車10bを収容し、ベースプレート15の外周部に軸受け16を装着し、これらを軸受けハウジング17と軸受けハウジング18とで形成される開口部19に収容し、ボルト20、21で締め付ける。ラチェット軸10の左側の円筒部10aにカバープレート8の開口部8bを挿通させ、ラチェット軸10の右側の円筒部10aに第2ブラケット22の開口部22bを挿通させ、係止爪22c、22dを各々軸受けハウジング18のスリット18b、軸受けハウジング17のスリット17d及びカバープレート8の2つのスリット8c、8dに各々挿通させ、最後に係止爪22c、22dの先端部を曲折させて、図1(c)に示すように、扉側組立体25が完成する。
【0037】
次に、上記装置側組立体24と、扉側組立体25とをレンジフードの整流板の開閉に用いた場合について図2及び図3を参照しながら説明する。
【0038】
図2に示したレンジフード31は、本体32の下部に整流板33を備え、上部に排気ダクト34を備える。図1に示した装置側組立体24を、図2(a)に示すように、本体32の下部に固定し、装置側組立体24と扉側組立体25とを組み合わせ、扉側組立体25の軸受けハウジング17の取付部17aに整流板33の左端部を固定する。
【0039】
尚、上記のレンジフード31では、装置側組立体24を本体32に取り付けるため、図3(a)に示すように、トルク軸6及びこれに連結されたラチェット軸10は回転せず、ラチェット軸10の外側に位置するベースプレート15が回転する。この構成において、ベースプレート15は、歯車10b、爪部材12及びばね13から形成される一方向クラッチの機能により、矢視B方向にのみ回転が許容され、反対方向へは回転することができない。
【0040】
また、ベースプレート15と軸受け16の間では、それらの接触面で構成される摩擦力付与機構により両者の動きが規制され、軸受け16は、所定の作用力以上の入力が矢視A方向に働かない限り、ベースプレート15に対して不動に固定される。尚、矢視B方向に関しては、ベースプレート15の回転に伴い、ベースプレート15と一体となって回転する。そして、所定の作用力以上の入力が矢視A方向に働くと、軸受け16の内周面がベースプレート15の外周表面上を摺動し、軸受け16が矢視A方向に回転する。
【0041】
図2(a)の状態から整流板33を開ける場合、整流板33を矢視A方向に回動させようとすると、最初は、ベースプレート15が回転しないため、整流板33は開かないが、所定の作用力以上の入力を加えると、軸受け16の内周面がベースプレート15の外周表面上を摺動し、軸受け16が回転する。これに伴って、軸受けハウジング17及び取付部17aが回転し、その結果、整流板33が矢視A方向に回動して整流板33を開けることができる。
【0042】
ここで、扉側組立体25においては、図1に示すように、ボルト20、21を用いてベースプレート15の外周表面と軸受け16の内周面との接触圧力を自在に調整することができるため、ベースプレート15及び軸受け16の表面材質やその表面状態により適宜ボルト20、21による締付力を調整し、摩擦摺動面へ与える圧力を変化させ、摺動に要する摩擦力を所望の大きさにすることができる。この際、軸受け16の合わせ目にある隙間が縮小し、換言すれば軸受け16が縮径できるため、締め付け部材により締め付けた力は、ベースプレート15の外周表面との接触圧力として無駄なく作用する。
【0043】
図2に戻り、整流板33が所望の位置まで来ると、整流板33への入力を弱めれば、ベースプレート15及び軸受け16からなる摩擦力付与機構により、軸受け16の摺動が規制されるため、整流板33の回動が停止し、整流板33を所望の位置で停止させることができる。整流板33が停止した状態では、ベースプレート15と軸受け16との間の摩擦力により整流板33がさらに下降したり、上昇することなく停止した状態を維持することができる。
【0044】
次に、整流板33を閉める場合には、図2(c)において矢視B方向に整流板33を回転させると、扉側組立体25内の一方向クラッチの機能により、ベースプレート15が矢視B方向に回転可能であるため(図3(a)参照)、僅かな力で整流板33を回転させて閉めることができる。
【0045】
また、この際、重力を利用し、整流板33の自重により生じる下方への回転モーメントによる回転力と、ベースプレート15及び軸受け16の間の摩擦力との釣り合いが取れた位置で、ベースプレート15及び軸受け16の摩擦力付与機構部分の回転を停止させることができるため、予めこの摩擦力を所定の値に設定することで、摩擦力付与機構を介して回動する整流板33の回動角度を所望の角度に定めることができる。換言すれば、整流板33の開口具合を所望の位置に調整することができる。
【0046】
尚、図2に示すレンジフード31においては、装置側組立体24を本体32に取り付けるとともに、扉側組立体25を整流板33に取り付けたが、装置側組立体24と扉側組立体25の位置を反転させ、扉側組立体25を本体32に取り付け、装置側組立体24を整流板33に取り付けてもよい。
【0047】
この場合、軸受け16が不動に固定される一方で、トルク軸6が回転可能な状態で取り付けられるため、図3(b)に示すように、ベースプレート15の内側でトルク軸6及びラチェット軸10が回転し、また、そのときの回転許容方向は、歯車10b、爪部材12及びばね13から形成される一方向クラッチの機能により、矢視B’方向への一方向のみとなる。そして、矢視A’方向への所定の作用力以上の入力が働くと、ベースプレート15の外周表面が軸受け16の内周面上を摺動し、トルク軸6、ラチェット軸10及びベースプレート15が一体となって矢視A’方向に回転する。
【0048】
次に、上記開閉機構1における一方向クラッチの改変例について図4及び図5を参照しながら説明する。
【0049】
図4は、改変例におけるベースプレート45を示し、このベースプレート45は、開閉機構1におけるベースプレート15に相当するものである。このベースプレート45は、円板状の基盤45aに、円形孔45bと、3つの爪部材収容部45cと、3つのばね収容部45dとを備える。
【0050】
図5は、図4に示したベースプレート45の円形孔45bに、図1に示したラチェット軸10の歯車10bを収容するとともに、爪部材収容部45cの各々に爪部材12を、ばね収容部45dの各々にばね13を収容し、一方向クラッチが構成された状態を示す。
【0051】
図5に示した一方向クラッチにおいて、歯車10bは矢視C方向へは回転自在であるが、矢視D方向へは、ばね13によって付勢された爪部材12によって回転できないようになっている。
【0052】
また、爪部材12と歯車10bの歯との位相差が歯のピッチ角を爪部材12の数(3個)で除した大きさとなっており、そのため、3つの爪部材12のすべてが同時に歯車10bの歯と噛み合うことがなく、複数の爪部材12によって、歯車10bの歯のピッチ角を3で除した大きさ毎に、歯車10bの回転を制止することができる。
【0053】
これにより、歯車10bを一体化したラチェット軸10を矢視D方向に回動させる際(図1のベースプレート15及び軸受け16間の摩擦力付与機構によってラチェット軸10をベースプレート15との関係における回転不能方向に回動させる際)に、ラチェット軸10の固定位置を細かく調整することができ、より具体的には、摩擦力付与機構で付与する摩擦力が回動しようとする回転モーメントから生じる回転力以上で固定されている場合において、扉や図2に示した整流板33の係止位置を歯車10bと爪部材12の歯合により細かく設定できる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施の形態においては、軸受け16を軸受けハウジング17、18(締め付け部材)を介してボルト20、21により締め付ける構成としたが、二つ割りされた締め付け部材を用い、二つ割りされた部材の一方の対峙面をヒンジ等により回転自在に固定し、他方の対峙面をボルト・ナットにより締め付ける構成として、軸受け16とベースプレート15の外周表面との接触圧力付与を行ってもよい。また、ベースプレート15の外周表面から締め付け部材の外側表面に至るスリットを設けた構成とし、該スリットの隙間をボルト・ナットにより狭めることにより軸受け16とベースプレート15の外周表面との接触圧力付与を行ってもよい。
【0056】
二つ割りされた締め付け部材を用い、二つ割りされた部材をボルト・ナットにより締め付ける構成とする場合は、二つ割りされた部材の対峙する二つの面のいずれか一方の位置と、また、二つ割りされ該二つ割部材の一方の対峙面をヒンジ等により回転自在に固定し、他方の対峙面をボルト・ナットにより締め付ける構成とする場合は他方の位置と、さらに、ベースプレート15の外周表面から締め付け部材の外側表面に至るスリットを設けた構成とする場合は該スリットの位置と、前記筒状摩擦材に用いられる軸受け16の合わせ目の位置が各々において略々同一であることが望ましく、このような構成をとれば、締め付け部材により加えられる締付力がさらに無駄なく作用させることができる。
【0057】
また、上記実施の形態においては、摩擦力付与機構に用いる筒状摩擦材を、合わせ目を有する軸受け(複層巻き軸受け)16により構成したが、他の構成をとる筒状摩擦材であってもよく、締め付け部材により外周方向からの圧力が無駄なくベースプレート15の外周表面に作用するように縮径可能な構成であればよい。具体的には、軸方向に複数のスリットを設けて縮径可能な構成とした筒状摩擦部材であっても、網目構造例えばエキスバンドメタルからなる部材を用いた筒状摩擦部材であってもよい。
【0058】
さらに、摩擦力付与機構に用いる筒状摩擦材を締め付け部材により締め付ける構成に代えて、締め付け部材の内周表面自体を摩擦摺動に適した状態として用いることもできる。具体的には、締め付け部材の内周表面に摩擦摺動に適した樹脂等をコーティング又は焼付塗装する構成や、締め付け部材の内周表面に固体潤滑剤等の摩擦摺動に適した部材を埋め込む構成、さらに、締め付け部材自体を摩擦摺動に適した合金、焼結合金、樹脂からなる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 開閉機構
2 第1ブラケット
2a 取付部
2b 軸受け
2c 挿通孔
3 ボルト
4 ナット
6 トルク軸
6a 大径部
6b 小径部
6c 挿通孔
8 カバープレート
8a 基部
8b 開口部
8c スリット
8d スリット
10 ラチェット軸
10a 円筒部
10b 歯車
12 爪部材
12a 基部
12b 爪部
13 ばね
15 ベースプレート
15a 基部
15b 円形孔
15c 爪部材収容部
15d ばね収容部
16 軸受け
17 軸受けハウジング
17a 取付部
17b 立設部
17c 貫通孔
17d スリット
18 軸受けハウジング
18a 本体
18b スリット
18c 挿通孔
19 開口部
20 ボルト
21 ボルト
22 第2ブラケット
22a 基部
22b 開口部
22c 係止爪
22d 係止爪
24 装置側組立体
25 扉側組立体
31 レンジフード
32 本体
33 整流板
34 排気ダクト
45 ベースプレート
45a 基盤
45b 円形孔
45c 爪部材収容部
45d ばね収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の軸線回りの一方向の回転のみを許容する一方向クラッチと、
該一方向クラッチの外周面と内周面で接するように配置された筒状摩擦材とを備え、
前記軸に、該軸の回転不能な方向に所定以上の力が作用したとき、又は前記一方向クラッチに、前記軸を該軸の回転不能な方向に回転させようとする所定以上の力が作用したときに、前記一方向クラッチの外周面及び前記筒状摩擦材の内周面の一方が他方の面上を摺動し、前記一方向クラッチ及び筒状摩擦材の一方が他方に対して相対的に回転することを特徴とする一方向回転ダンパ。
【請求項2】
前記筒状摩擦材の内周面と前記一方向クラッチの外周面との接触圧力を自在に調整する締め付け部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の一方向回転ダンパ。
【請求項3】
前記一方向クラッチは、前記軸に設けられる歯車と、該歯車と歯合する、弾性部材で付勢された爪部材とからなり、該爪部材が前記歯車のいずれか一つの歯と歯合することにより前記一方向と反対方向への前記軸の回転を制止することを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向回転ダンパ。
【請求項4】
前記一方向クラッチは、前記爪部材を複数備え、該複数の爪部材によって、前記歯車の歯のピッチ角を該爪部材の数で除した大きさ毎に、該歯車の回転を制止可能であることを特徴とする請求項3に記載の一方向回転ダンパ。
【請求項5】
前記筒状摩擦材は、金属製の裏金と、該裏金の表面に形成された多孔質青銅焼結層と、該多孔質青銅焼結層の孔隙及び表面に充填被覆された合成樹脂組成物のすべり層とからなり、該すべり層を内側にして円筒状に捲回された複層巻き軸受けであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の一方向回転ダンパ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の一方向回転ダンパを備え、前記軸に連結された第1の部材と、該一方向回転ダンパに連結された第2の部材との間でヒンジ機能を発揮させることを特徴とするヒンジ機構。
【請求項7】
請求項6に記載のヒンジ機構を備え、前記第1及び第2の部材のいずれか一方が開閉対象物への取付部を備えることを特徴とする開閉機構。
【請求項8】
請求項7に記載の開閉機構を備え、前記開閉対象物が整流板であることを特徴とするレンジフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7403(P2011−7403A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150462(P2009−150462)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】