説明

一液型湿気硬化性ウレタン系組成物

【課題】特に難接着性の塗装鋼板に対する接着性を改善せしめ、自動車窓ガラスの接着に使用できる一液型湿気硬化性ウレタン系組成物を提供する。
【解決手段】一液型湿気硬化性ウレタン系組成物は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを主成分とし、溶解度パラメーター値6.0〜9.0の化合物、代表的にはポリブテン、ポリイソブテン(溶解度パラメーター値7.7)等の脂肪族炭化水素化合物を適量添加したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一液型湿気硬化性ウレタン系組成物、更に詳しくは、分子末端にイソシアネート基を含有するイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを主成分とし、該ウレタンプレポリマーに対し比較的相溶しない特定の化合物を添加することにより、特に難接着性の塗装鋼板に対する接着性を改善せしめ、自動車窓ガラスの接着に使用できる一液型湿気硬化性ウレタン系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車窓ガラスの接着には、上述のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを主成分とし、これに概して、可塑剤、充填剤、硬化触媒等を配合した一液型湿気硬化性ウレタン系組成物が使用されている。しかし、一般にガラスや塗装鋼板に直接適用することは困難なため、プライマー処理が行われているが、工程簡略化や作業環境改善の観点からもノンプライマー化が求められている。
【発明の開示】
【0003】
本発明者らは、様々な塗装鋼板に対するノンプライマー接着性を得るため鋭意検討を進めたところ、主成分のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに対して比較的非相溶性の化合物を添加すれば、塗装鋼板への接着に際し所望のノンプライマー化を果しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0004】
すなわち、本発明は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを主成分とする一液型湿気硬化性ウレタン系組成物において、
溶解度パラメーター値6.0〜9.0の化合物を添加したことを特徴とする自動車窓ガラスの接着に用いる一液型湿気硬化性ウレタン系組成物を提供するものである。
【0005】
本発明において主成分として用いる上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下、NCO末端プレポリマーと称す)は、種々のポリオールに対して過剰量のポリイソシアネート化合物(通常、OH/NCO=1/1.5〜1/4.0)を、常法により反応させることによって製造される。
上記ポリオールとしては、例えばポリオキシアルキレンポリオール(PPGと称す)、ポリエーテルポリオール変性体、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール;縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールなどのポリエステルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などの主鎖がC−C結合よりなるポリオール;その他難燃化用ポリオール、含リンポリオール、含ハロゲンポリオールなどが挙げられる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添XDIなどが挙げられる。
【0006】
本発明において上記溶解度パラメーター値(SP値)6.0〜9.0、好ましくは7.0〜8.0の化合物(以下、所定SP化合物と称す)としては、たとえば脂肪族炭化水素化合物、具体的にはポリブテン,ポリイソブチレン(SP値7.7);アルコキシシリル基含有イソブチレン系ポリマー[鐘淵化学工業(株)製の「エピオン」シリーズ、たとえば「エピオンEP505S」(分子量約20000)等](SP値7.8〜8.0);パラフィンオイル(SP値6.0〜8.0)などが挙げられる。
本発明において、所定SP化合物は、NCO末端プレポリマーとの相溶関係を表わすものであり、本発明の基本的な技術思想の特徴はNCO末端プレポリマーと所定SP化合物のSP値が近似しないようにしたことにある。
【0007】
本発明は、塗装鋼板に対する接着性に優れ、自動車窓ガラスの接着に有用である一液型湿気硬化性ウレタン系組成物であって、室温で高粘度ペースト状の性状にしたり、あるいは室温で流動しない見掛け上固形状の性状にし加熱して流動させる、いわゆるホットメルト型で用いることもできる。
【0008】
本発明に係る一液型湿気硬化性ウレタン系組成物は、上述のNCO末端プレポリマーを主成分とし、これに概して可塑剤、充填剤、硬化触媒を配合し、さらに上述の所定SP化合物を加えた系で構成される。ここで、NCO末端プレポリマー(主成分)の含有量は通常、組成物全量中20〜60%(重量%、以下同様)の範囲で選定すればよい。
【0009】
一方、上記所定SP化合物の添加量は、組成物全量中0.5〜20%、好ましくは2〜10%の範囲で選定すればよい。0.5%未満では、塗装鋼板に対するノンプライマー接着性が低下し、また20%を越えると、組成物の作業性および硬化物性が低下する傾向となる。
【0010】
上記可塑剤としては、たとえばジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、トリオクチルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、アルキルベンゼン、エポキシ化大豆油などが挙げられ、配合量は通常、組成物全量中0〜50%の範囲で選定されてよい。
【0011】
上記充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、生石灰、カオリン、ゼオライト、珪藻土などが挙げられ、配合量は通常、組成物全量中0〜50%の範囲で選定されてよい。
【0012】
上記硬化触媒としては、たとえば有機錫化合物(ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫マレエート、オクチル酸錫など);2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、ジ(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル;カルボン酸ビスマス(2−エチルへキサン酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなど);カルボン酸(安息香酸、フタル酸、2−エチルへキサン酸、オクチル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸など)が挙げられ、配合量は通常、組成物全量中0.0001〜5%の範囲で選定されてよい。
【0013】
さらに必要に応じて、密着剤[分子量1000未満のポリイソシアネート化合物変性体(たとえばヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパン変性体など);前記ポリイソシアネート化合物とアルコキシシリル基含有化合物(メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシランなど;さらにアルコキシシリル基含有ポリウレタン系ポリマー、アルコキシシリル基含有ポリエーテル系ポリマー、アルコキシシリル基含有ビニル系ポリマー、アルコキシシリル基含有ポリエステル系ポリマー、アルコキシシリル基含有ジエン系ポリマー、アルコキシシリル基含有ポリアルキレン系ポリマー等)の反応生成物;および該アルコキシシリル基含有化合物から選ばれる1種または2種以上が挙げられ、配合量は通常組成物全量中0.1〜10%の範囲で選定]が配合されてよく、さらに溶剤(キシレン、トルエンなど);その他老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料等を適量加えてもよい。
【実施例】
【0014】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例1
(1)NCO末端プレポリマーの合成
水酸基価25.0のポリオキシプロピレントリオール3000gに4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)350gを加え、窒素雰囲気下に80℃で3時間反応させて、遊離NCO基含有量1.90%および粘度50000mPa・S(20℃)のNCO末端プレポリマーを得る。
【0015】
(2)一液型湿気硬化性ウレタン系組成物の調製
上記(1)のNCO末端プレポリマー500部(重量部、以下同様)に、ジイソノニルフタレート300部、乾燥したカーボンブラック350部、炭酸カルシウム250部、SP値7.7のポリブテン75部、ヘキサメチレンジイソシアネートビュレット変性体30部、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル1部およびジブチル錫ジラウレート0.3部を加え、減圧脱泡下で撹拌混合して、一液型湿気硬化性ウレタン系組成物を得る。
【0016】
比較例1
実施例1/(2)において、SP値7.7のポリブテン75部を省略する以外は、同様にして一液型湿気硬化性ウレタン系組成物を得る。
【0017】
接着試験
実施例1および比較例1のウレタン系組成物について、2種の自動車用焼付塗料を塗装した鋼板に直接、該ウレタン系組成物をビード状に塗布し、これに離型紙を重ね接着剤厚さが3mmとなるように圧着した後、20℃、65%RHにて72時間放置する。硬化後、ナイフカットによる剥離試験を行ない、ノンプライマー接着性を評価する。結果を下記表1に示す。
【0018】
【表1】

表中、
CF:接着剤の凝集破壊
AF:塗板表面と接着剤間の界面破壊
数字は面積比率を表わす。
【0019】
表1の結果から、本発明は、難接着性の塗装鋼板に対してノンプライマー接着性に優れることが認められる。
本発明の一液型湿気硬化性ウレタン系組成物は、特に自動車窓ガラスの接着に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを主成分とする一液型湿気硬化性ウレタン系組成物において、
溶解度パラメーター値6.0〜9.0の化合物を添加したことを特徴とする自動車窓ガラスの接着に用いる一液型湿気硬化性ウレタン系組成物。
【請求項2】
溶解度パラメーター値6.0〜9.0の化合物が、脂肪族炭化水素化合物である請求項1に記載の一液型湿気硬化性ウレタン系組成物。
【請求項3】
溶解度パラメーター値6.0〜9.0の化合物の添加量が、組成物全量中0.5〜20重量%である請求項1または2に記載の一液型湿気硬化性ウレタン系組成物。
【請求項4】
硬化触媒として有機錫化合物;および密着剤として分子量1000未満のポリイソシアネート化合物変性体、ポリイソシアネート化合物とアルコキシシリル基含有化合物の反応生成物、およびアルコキシシリル基含有化合物から選ばれる1種または2種以上を配合した請求項1に記載の一液型湿気硬化性ウレタン系組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の一液型湿気硬化性ウレタン系組成物を用い、自動車窓ガラスを車体の塗装鋼板に対しノンプライマー接着することを特徴とする自動車窓ガラスの接着工法。

【公開番号】特開2006−233218(P2006−233218A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62877(P2006−62877)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【分割の表示】特願2001−306318(P2001−306318)の分割
【原出願日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】