説明

一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物

【課題】貯蔵安定性に優れる一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するチオール化合物(B)と、下記式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物によってイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物が包接されている包接体(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1〜R8は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂の硬化剤としてチオール化合物とイミダゾール化合物とを併用した組成物が提案されている。エポキシ樹脂の硬化剤としてチオール化合物とイミダゾール化合物とを併用した組成物は低温硬化性に優れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者は、チオール化合物とイミダゾール化合物とをエポキシ樹脂の硬化剤として用いて一液型の組成物とする場合、そのような組成物は貯蔵安定性に劣るという問題があることを見出した。
そこで、本発明は、貯蔵安定性に優れる一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するチオール化合物(B)と、特定の式で表されるテトラキスフェノール系化合物によってイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物が包接されている包接体(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は、下記1〜3を提供する。
1. エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するチオール化合物(B)と、下記式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物によってイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物が包接されている包接体(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1〜R8は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示す。)
2. 前記イミダゾール化合物が、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、イミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールおよび4-ヒドロキシメチル-2-フェニルイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
3. 前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する前記メルカプト基の比(前記メルカプト基のモル数/前記エポキシ基のモル数)が、0.5〜1.2であり、前記包接体(C)の量が、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部である上記1または2に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、
エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するチオール化合物(B)と、下記式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物によってイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物が包接されている包接体(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物である。
【化2】

(式中、R1〜R8は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示す。)
本発明の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。
【0008】
エポキシ樹脂(A)について以下に説明する。
本発明の組成物に含まれるエポキシ樹脂(A)は、1分子中平均してエポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸と、エピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル;エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、環式脂肪族エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、4,4ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂(A)は、貯蔵安定性により優れ、高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、硬化性に優れるという観点から、ビスフェノールA、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、4,4ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂(A)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0009】
チオール化合物(B)について以下に説明する。
本発明の組成物に含まれるチオール化合物(B)は、分子内にメルカプト基(−SH)を2個以上有する化合物である。
本発明においてチオール化合物(B)はエポキシ樹脂(A)の硬化剤として使用される。
【0010】
1分子のチオール化合物(B)が有するメルカプト基の数は、貯蔵安定性により優れ、高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、硬化性に優れるという観点から、2〜20個であるのが好ましく、3〜10個であるのがより好ましい。
チオール化合物としては、例えば、分子内にメルカプト基(−SH)を2個以上有するメルカプト基含有炭化水素化合物、分子内にメルカプト基(−SH)を2個以上有するメルカプト基含有シリコーンが挙げられる。
【0011】
分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有シリコーンは、その主鎖がシリコーンである。
メルカプト基含有シリコーンにおいてメルカプト基は、メルカプト基含有シリコーンの主鎖に直接結合することができる。また、メルカプト基は、メルカプト基含有シリコーンの主鎖に有機基を介して結合することができる。
【0012】
メルカプト基とメルカプト基含有シリコーンの主鎖とを介する有機基は、2価の炭化水素基であれば特に制限されない。2価の炭化水素基は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。2価の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は不飽和結合を含むことができる。)、脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基は不飽和結合を含むことができる。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせによる炭化水素基が挙げられる。なかでも、硬化性に優れるという観点から、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、炭素原子数1〜6であるものが挙げられる。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。
【0013】
メルカプト基含有シリコーンの主鎖は、メルカプト基以外に、例えば、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基;メチル基、エチル基のようなアルキル基を有することができる。
【0014】
メルカプト基含有シリコーンとしては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。メルカプト基含有シリコーンは、貯蔵安定性により優れ、高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、硬化性に優れるという観点から、式(1)で表される化合物であるのが好ましい。
【化3】

式中、R1はアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、R2はアルキル基またはアルコキシ基であり、R3はアルキル基であり、nは2以上の整数である。
【0015】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
アルキレン基としては、炭素原子数2〜6のものが挙げられ、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。
2であるアルキル基またはアルコキシ基としては、例えば、メチル基またはメトキシ基が挙げられる。R3であるアルキル基としては、例えば、メチル基が挙げられる。
nは2以上の整数であり、硬化物のガラス転移温度(ガラス転移点)が高く、速硬化性に優れ、貯蔵安定性により優れるという観点から、5〜10であるのが好ましく、6〜8であるのがより好ましい。
【0016】
式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。式(1)で表される化合物は、貯蔵安定性により優れ、高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、硬化性に優れるという観点から、式(2)で表される化合物が好ましい。
【化4】

式中、R1はアルキル基であり、R2はアルキル基またはアルコキシ基であり、R3はアルキル基であり、nは2以上の整数である。R1、R2、R3、nは、それぞれ上記と同義である。
メルカプト基含有シリコーンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
メルカプト基含有シリコーンはその製造について特に制限されない。例えば、メルカプト基含有アルキコシシラン化合物を縮合させることによって製造することができる。
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物は、少なくとも1個のメルカプト基と少なくとも2個のアルコキシ基とを有するシラン化合物である。メルカプト基含有アルコキシシラン化合物は、メルカプト基およびアルコキシ基以外に、例えばメチル基、エチル基のようなアルキル基を有することができる。
メルカプト基は、有機基を介してケイ素原子に結合することができる。有機基は上記と同義である。
【0018】
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

式中、R1、R4はそれぞれ独立にアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、mは2または3であり、nは1または2であり、m+nは3または4である。
1、Rは、それぞれ上記と同義である。R4としてのアルキル基は例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0019】
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランのような3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランのような3−メルカプトプロピルアルキルジアルコキシシランが挙げられる。
【0020】
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物を縮合させる方法は特に制限されない。例えば、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物を少なくとも含む組成物を加水分解し縮合する方法が挙げられる。
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物を少なくとも含む組成物は、メルカプト基含有アルコキシシラン以外のアルコキシシランを含むことができる。メルカプト基含有アルコキシシラン以外のアルコキシシランは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0021】
分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有炭化水素化合物は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有炭化水素化合物としては、例えば、下記式(4)、(5)、(6)、(7)、(8)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化6】

式(4)中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2〜R7はそれぞれ炭素原子数1〜10のアルキレン基を示す。
【化7】

式(5)中、nは1以上の整数である。
【化8】

式(6)中、R1〜R8はそれぞれ炭化水素基(例えば、アルキレン基)を示す。
【化9】

式(7)中、R1〜R12はそれぞれ炭化水素基(例えば、アルキレン基)を示す。
【化10】

式(8)中、R1〜R6はそれぞれ炭化水素基(例えば、アルキレン基)を示す。
【0023】
分子内にメルカプト基を2個以上有する炭化水素化合物は、貯蔵安定性により優れ、硬化性に優れるという観点から、式(4)で表される化合物が好ましい。
【化11】

式(4)中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R2〜R7はそれぞれ炭素原子数1〜10のアルキレン基を示す。
【0024】
式(4)で表される化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネートが挙げられる。
式(4)で表される化合物は、貯蔵安定性により優れ、硬化性に優れるという観点から、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネートが好ましい。
分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有炭化水素化合物はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0025】
チオール化合物(B)の量は、貯蔵安定性により優れ、高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、硬化性、低温硬化性に優れるという観点から、エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する、チオール化合物(B)が有するメルカプト基の比(メルカプト基のモル数/前記エポキシ基のモル数)が、0.5〜1.2となる量であるのが好ましく、0.7〜0.9であるのがより好ましい。
【0026】
包接体(C)について以下に説明する。
本発明の組成物に含まれる包接体(C)は、下記式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物によってイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物が包接されている化合物である。
【化12】

(式中、R1〜R8は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示す。)
本発明において、包接体(C)は硬化促進剤として使用される。
【0027】
アルキル基としては、例えば炭素原子数1〜6のものが挙げられる。具体的には例えば、メチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。
フェニル基は無置換であるか置換されているフェニル基であり、フェニル基が有することができる置換基としては例えばハロゲン原子、アルキル基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1〜6のものが挙げられる。具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。
【0028】
包接体(C)の製造の際に使用されるテトラキスフェノール系化合物は、式(I)で表される化合物であれば特に制限されない。具体的には例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス[(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル]エタンが挙げられる。
【0029】
なかでも、貯蔵安定性により優れるという観点から、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
テトラキスフェノール系化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
包接体(C)の製造の際に使用されるイミダゾール化合物は、イミダゾール環を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、2−ウンデシル−1H−イミダゾール、2−ヘプタデシル−1H−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール、4−メチル−2−フェニル−1H−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−ウンデシルイミダゾリル−)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4−イミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−ヒドロキシメチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール塩酸塩、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイトが挙げられる。
【0031】
なかでも、低温硬化性に優れ、貯蔵安定性により優れるという観点から、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
包接体(C)の製造の際に使用されるアミン系化合物としては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アルキル-t-モノアミン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、ジメチルアミノヘキサノールなどの脂肪族アミン類、ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N−アミノエチルピペラジン、N,N−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセンなどの脂環式および複素環式アミン類が挙げられる。
なかでも、低温硬化性に優れ、貯蔵安定性により優れるという観点から、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンが好ましい。
アミン系化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物とイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物との組合せとしては、貯蔵安定性により優れるという観点から、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンからなる群から選ばれる少なくとも1種と、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、イミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-ヒドロキシメチル-2-フェニルイミダゾールおよびDBU(ジアザビシクロウンデセン)からなる群から選ばれる少なくとも1種との組合せが好ましい。
【0034】
包接体(C)の量は、貯蔵安定性により優れ、低温硬化性に優れるという観点から、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部であるのが好ましく、5〜15質量部であるのがより好ましい。
【0035】
包接体(C)はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
包接体(C)について添付の図面を用いて以下に説明する。なお、本願発明は添付の図面に制限されない。
図1は、包接体(C)の一例を模式的に表す概略図である。
図1において、包接体(C)1は、ホスト分子としての式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物2と、ゲストとしてのイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物3とを有する。
式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物2は分子間で式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物2が有するヒドロキシ基(図示せず。)によって水素結合(図示せず。)をすることによって、ホスト分子による結晶格子空孔4を形成する。そして結晶格子空孔4内にイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物3が包接されている。
【0036】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂(A)、チオール化合物(B)および包接体(C)のほかに、必要に応じて添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウムなど)、希釈剤、溶剤、顔料、可撓性付与剤、カップリング剤、酸化防止剤、チキソ性付与剤、分散剤が挙げられる。
【0037】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂(A)、チオール化合物(B)および包接体(C)、ならびに必要に応じて使用することができる添加剤を、撹拌装置を使用して均一に混合することによって、一液型のエポキシ樹脂組成物として製造することができる。
【0038】
本発明の組成物は熱硬化性であり、本発明の組成物は100〜200℃の条件下において硬化することができる。本発明の組成物を加熱すると、加熱によって包接体(C)中の式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物間の水素結合が解離し、包接体(C)からイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物が放出されると同時に式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物が触媒として作用するという効果によって、チオール化合物(B)が有するメルカプト基が活性化されチオール化合物(B)とエポキシ樹脂(A)とが反応することによって、本発明の組成物は硬化することができる。
また、本発明の組成物は上記のような温度で硬化することができるので低温硬化性に優れる。
【0039】
本発明の組成物は、例えば、接着剤用、塗料用、土木建築用、電気用、輸送機用、医療用、包装用、繊維用、スポーツ・レジャー用として使用することができる。
本発明の組成物を適用することができる被着体としては、例えば、金属、ガラス、プラスチック、モルタル、コンクリート、ゴム、木材、皮、布、紙が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
下記のようにして得られた組成物について、貯蔵安定性、硬化性を以下に示す方法で評価した。結果を第1表、第2表に示す。
【0041】
(1)貯蔵安定性
下記のようにして得られた組成物を25℃の恒温槽に保存し、組成物に流動性がなくなるまでの日数を測定した。
(2)硬化性
JIS C2161:1997の熱板法に準じて、150℃および180℃でのゲルタイムをホットプレート上で測定した。
【0042】
2.組成物の製造
第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で使用し撹拌機で撹拌して均一に混合し組成物を製造した。
なお、チオール化合物(B)のかっこ内の数値は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基に対する、チオール化合物(B)が有するSH基(メルカプト基)の当量比である。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・エポキシ樹脂(A)1:商品名EP4100E、ADEKA社製エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/mol
・チオール化合物(B)1:下記式で表されるトリメチロールプロパントリスチオグリコレート(TMTG)、淀化学社製
【化13】

・チオール化合物(B)2:商品名Z6062H、東レダウコーニング社製、下記式で表される、メルカプト基含有シラン化合物の縮合物、SH当量139g/mol
【化14】

式中、nは6-8である。
・包接体(C)1:商品名TEP-2E4MZ、日本曹達社製包接硬化促進剤、2-エチル-4-メチルイミダゾールが1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)エタンで包接されている、下記式で表される化合物
【化15】

・包接体(C)2:商品名TEP-2MZ、日本曹達社製包接硬化促進剤、2-メチルイミダゾールが1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)エタンで包接されている化合物
・包接体(C)3:商品名TEP-2P4MHZ、日本曹達社製包接硬化促進剤、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)エタンで包接されている化合物
・包接体(C)4:商品名TEP-1B2MZ、日本曹達社製包接硬化促進剤、1-ベンジル-2-メチルイミダゾールが1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)エタンで包接されている化合物
・包接体(C)5:商品名TEP-DBU、日本曹達社製包接硬化促進剤、ジアザビシクロウンデセンが1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)エタンで包接されている化合物
【0046】
第2表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・エポキシ樹脂(A)1:第1表と同様
・エポキシ樹脂(A)2:商品名YX-4000H、ジャパンエポキシレジン社製ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量196g/mol
・チオール化合物(B)1:第1表と同様
・フェノールノボラック樹脂:商品名H-1、明和化成社製フェノールノボラック樹脂
・フェノールアラルキル樹脂:商品名XL-225、三井東圧化学社製
・イミダゾール化合物1:商品名2E4MZ、四国化成社製キュアゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール
・イミダゾール化合物2:商品名2MZ、四国化成社製キュアゾール、2-メチルイミダゾール
・包接体(C)1:第1表と同様
【0047】
第1表および第2表に示す結果から明らかなように、包接体(C)を含まず代わりにイミダゾール化合物を含む比較例1〜4は、貯蔵安定性に劣った。
チオール化合物(B)を含まず代わりにフェノール樹脂を含む比較例5、6はゲルタイムが長く硬化性に劣った。
これに対して、実施例1〜9は、貯蔵安定性、硬化性に優れた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、包接体(C)の一例を模式的に表す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 包接体(C)
2 式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物
3 イミダゾール化合物および/またはアミン系化合物
4 結晶格子空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するチオール化合物(B)と、下記式(I)で表されるテトラキスフェノール系化合物によってイミダゾール化合物および/またはアミン系化合物が包接されている包接体(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1〜R8は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、ハロゲン原子またはアルコキシ基を示す。)
【請求項2】
前記イミダゾール化合物が、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、イミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールおよび4-ヒドロキシメチル-2-フェニルイミダゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する前記メルカプト基の比(前記メルカプト基のモル数/前記エポキシ基のモル数)が、0.5〜1.2であり、前記包接体(C)の量が、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、1〜20質量部である請求項1または2に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−90329(P2010−90329A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263754(P2008−263754)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】