説明

三次元形状測定用プローブ装置およびプローブの干渉検知方法

【課題】接触式プローブを用いた多関節アーム型三次元形状測定装置において、目視で確認できない部位における接触子の接触不良による誤測定を回避することができる三次元形状測定装置提供する。
【解決手段】接触式プローブは、接触子1aと接触子1aを除くプローブ構成部品1b、1cとが電気的に絶縁され、接触子1aを除くプローブ構成部品1b、1cと被測定対象物5との間に通電する導通チェック機構3を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状測定装置の計測技術に係り、接触式プローブの接触子以外のプローブ構成部品と被測定対象物との干渉検知に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用のポンプ、圧縮機や送風機のインペラ等、三次元的にねじれた構造物の表面形状或いはその変形量を精度良く定量的に計測する現場計測向きの三次元形状測定装置としては、図3に示されたものがある。
【0003】
三次元形状測定装置本体31は複数のエンコーダを搭載した多関節アーム型で、測定装置本体は支持部32、上腕33a、前腕33b、関節に内蔵されたエンコーダ34a、34b、34c、ハンドル35、先端に球状或いは針状の接触子36aを設けた接触式プローブ36および測定開始/終了釦が設置されているプローブアダプタ37で構成される。接触式プローブ36は着脱式で要求精度や形状に応じてレーザスキャン式の非接触プローブに交換可能である。電源は商用交流電源の他に専用バッテリ38を測定装置本体31に接続することにより電源コードレスを実現することができる。
【0004】
測定装置本体31を制御するために、制御端末39を測定装置本体31に接続するが、この制御端末39に大容量バッテリを搭載したノート型パソコンを採用することにより、電源の調達が難しい現場での使用に適したシステムが構築できる。制御端末39には、測定用ソフトウェアと取得した座標点群データの加工、解析、評価および3DCADとの連携が可能な3Dソフトウェアがインストールしてある。
【0005】
この構成において、被測定対象物40の測定が可能な位置に測定装置本体31を設置し、測定者はハンドル35を片方の手で把持し、必要ならばプローブアダプタ37辺りにもう一方の手を添えた状態で接触子36aを被測定対象物40の測定点に押し当て、その状態を保持したままプローブアダプタ37に設置されている測定開始/終了釦を押下し座標情報を取得する。
【0006】
接触子36aを正確に被測定対象物40の測定点に接触させるには、測定装置本体31やハンドル35を把持する測定者の手や腕の他、特に接触子36aを除くプローブ構成部品が、被測定対象物40と干渉(接触)しないことが必要である。しかし、上記の多関節アーム型の接触式三次元形状測定装置31において、ポンプ、圧縮機や送風機などの構造物の表面形状を測定する場合、例えばクローズ型インペラの流路部にある羽根のように覆い隠されている部分は目視で測定点を確認することはできない。
【0007】
この場合、プローブ36を開口部から挿入して、測定者の手の感覚だけで接触子36aを測定点に押し当てなければならないが、挿入したプローブの接触子36a以外の構成部品が見えないところで被測定対象物と干渉している場合、その感触が接触子36aを押し当てたものか接触子36a以外の構成部品の干渉によるものかを判断するのは困難であり、接触子36aが測定点に正しく接触されていない状態で座標情報を取得してしまう可能性がある。結果として、測定精度の低下による誤評価、更には再測定による作業工程の遅延を招いたりするという問題が生ずる。
【0008】
この測定精度の低下を防止するため、特開平6−297290号公報(特許文献1)に計測用プローブの干渉防止に関する技術が示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−297290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に示されるものは、予め被測定対象物とプローブ形状とを登録しておき、被測定対象物の計測面に一定間隔の計測点を設定し、この計測点を測定するためにプローブが通るプローブパス上の計測点対応位置ごとに、プローブ形状範囲内のワークの部分形状を呼び出してシュミレーションにより干渉チェックを行い、干渉がある場合、干渉を避けるためのプローブの傾斜角と位置変更量を求めて、この変更量に基いてプローブの姿勢制御を行うことにより自動的に干渉防止を図るものであるため、構成が大掛かりでコストアップになる。
【0011】
本発明は上記課題を解決するもので、極めて簡単な構成により接触式プローブの接触子を除いたプローブ構成部品が、被測定対象物と干渉していることを検知することができる接触式プローブによる三次元形状測定用プローブ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために本発明は、プローブ先端の接触子を被測定対象物に接触させて形状を測定する三次元形状測定用プローブ装置において、前記プローブは先端の接触子とこの接触子を支えるプローブ構成部品で構成され、前記プローブ構成部品が被測定対象物に接触していることを検知する干渉検知手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記プローブの接触子は電気的絶縁材料で製作または表面処理され、前記プローブ構成部品は導電材料で製作または表面処理され、前記干渉検知手段は前記プローブ構成部品と被測定対象物との電気的導通を検知する導通チェック装置であることを特徴とする。また、前記導通チェック装置は、プローブ構成部品と被測定対象物が電気的に接触したとき、ブザーまたはランプ点灯により導通状態であることを報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、前記導通チェック装置は、前記プローブ構成部品と被測定対象物とに、着脱式に電線で接続されたことを特徴とする。また、前記導通チェック装置は、被測定対象物の電気抵抗率に応じて検出抵抗値を任意に調整する調整手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、プローブ先端の接触子を被測定対象物に接触させて形状を測定するに際し、前記プローブは先端の接触子とこの接触子を支えるプローブ構成部品で構成され、干渉検知手段により前記プローブ構成部品と被測定対象物との接触を検知することを特徴とする。また、前記プローブ構成部品は導電材料で製作または表面処理され、干渉検知手段により前記プローブ構成部品と被測定対象物との電気的導通で両者の接触を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導通チェック装置により接触子以外のプローブ構成部品と被測定対象物との干渉を検知し、その状態における測定を回避することにより、接触子の接触不良による誤測定を防止し測定結果の信頼性を高めることができる。特に測定者の感覚に頼らざるを得ない、覆い隠されて目視では確認できない部位に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明実施例の三次元形状測定装置について図面を参照して詳述する。図1は本発明の一実施形態の接触式プローブを備えた多関節アーム型三次元形状測定装置の構成図である。図2は被測定対象物として、クローズ型インペラの開口部を測定する時の接触式プローブの説明図である。
【0018】
接触式プローブ1は、セラミック等の絶縁材料で製作、或いは絶縁材料により表面処理等を施した接触子1aと、導電材料で製作或いは導電テープ等により表面に導電性を持たせたシャフト1b、並びに接続用スレッド1cが一体化した構造に構成されている。接触子1aと、シャフト1bと接続用スレッド1c(プローブ構成部品)とは、電気的に絶縁され、接続用スレッド1cには電線接続用の端子1dが設けられている。
【0019】
この端子1dは、電線2aを介して導通チェック装置3の一方の電極端子3aと接続され、導通チェック装置3の他方の電極端子3bは、電線2bを介して被測定対象物5に接続されている。このとき被測定対象物5は導電材料で製作された物とするが、絶縁物製でも一時的にプローブが干渉しそうな部分に導電テープ等を貼って導電性を持たせても良い。また、作業性を考慮して、端子1dと被測定対象物5への電線2a、2bの接続はワニ口クリップ4a、4b等の着脱が容易な端子形状となっている。
【0020】
導通チェック装置3は、被測定対象物5の電気抵抗率に応じて検出抵抗値を任意に調整できる調整手段3d、および導通状態を検知した時にブザー或いはLED点灯により測定者に導通状態であることを知らせる警報手段3cを備えている。導通チェック装置3の検出抵抗値は、被測定対象物5の電気抵抗率に応じて調整手段3dにより最適な値に調整される。この調整により、被測定対象物5の電気抵抗率に応じた抵抗値を検知したとき、被測定対象物5とプローブ構成部品が接触したと判断し、警報手段3cを動作させる。
【0021】
多関節アーム型三次元形状測定装置6は、制御端末39、バッテリー38、支持部32、上腕33a、前腕33b、関節部に内蔵されたエンコーダ34a、34b、34c、ハンドル35、測定開始/終了釦37aが設置されているプローブアダプタ37で構成される。プローブ本体1は、接続用スレッド1cをプローブアダプタ37に接続して取り付けられる。支持部32は、被測定対象物5との位置関係が変化しないように図示しない専用固定治具で固定してある。
【0022】
以下、上記した構成における操作と作用を説明する。測定に先立ち、接触式プローブ1の校正、および座標軸の作成を、三次元形状測定装置6の操作手順に従い実施する。
【0023】
測定時は測定者がハンドル35を片方の手で把持し、必要ならばプローブアダプタ37辺りにもう一方の手を添えた状態で接触子1aを被測定対象物5の測定点に押し当て、その状態を保持したままプローブアダプタ37に設置されている測定開始/終了釦37aを押下し座標情報を取得する。取得された座標情報は、制御端末39の座標点群として記憶される。
【0024】
測定点が目視可能でプローブ干渉の心配が無い範囲の測定においては、導通チェック装置3を使用する必要性は無く、作業性を考慮して端子1dから導通チェック装置を外した状態で測定を行う。
【0025】
一方、測定点を目視で確認することができない、例えばクローズ型インペラの流路部にある羽根5aの奥を測定する場合、導通チェック装置3を取付け稼動状態とする。測定者はプローブシャフト1bを開口部から挿入し、手の感覚で接触子1aを測定点に押し当てプローブアダプタ37に設置されている測定開始/終了釦37aを押下し、座標情報を取得する。
【0026】
この際、接触子1a以外のプローブ構成部品1b、1cが測定点のある羽根以外の羽根5b或いは側板5cと干渉(接触)すると、プローブ構成部品1b、1cと被測定対象物5が導通チェック装置3を介して閉回路が構成されて導通状態となる。導通チェック装置3にある報知手段3dのブザー或いはLEDが点灯し、測定者は接触子1aを除くプローブ構成部品1b、1cと被測定物5が干渉(接触)状態にあることを知ることができる。
【0027】
したがって、測定者は目視で確認することができない測定点においても、ブザー或いはLED点灯により、プローブ構成部品1b、1cの干渉によって接触子1aが測定点に正しく接触されていない状態での測定を回避することができる。
【0028】
上記実施例の接触式プローブ1は、接触子1aの表面に絶縁性を持たせて、手の感覚で接触子1aが被測定対象物の測定点に接触していることを確認しているが、接触子1aにも導電性をもたせ、導通状態となったことで測定点に接触していることを確認しても良い。この場合、接触子1a用の導通チェック装置を新たに設けて、接触子1aと被測定対象物の電気的導通を検知するように、別個の導通回路が構成される。そして形状測定時には、プローブ構成部品1b、1cが被測定対象物と非導通状態でかつ、接触子1aが被測定対象物と電気的導通状態のとき、プローブアダプタ37に設置されている測定開始/終了釦37aを押下し、座標情報を取得する。この構成によれば、手の感覚に頼らずに接触子1aが測定点に接触していることを確認することができ、熟練者でなくても正確な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明実施形態の接触式プローブと多関節アーム型三次元形状測定用プローブ装置の構成図である。
【図2】被測定対象物を測定する時の接触式プローブの説明図である。
【図3】従来の多関節アーム型三次元形状測定装置の構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1…接触式プローブ、1a…接触子、1b…シャフト、1c…接続用スレッド、1b、1c…プローブ構成部品、1d…端子、2a、2b…電線、3…導通チェック装置、3a、3b…電極端子、3c…報知手段、3d…調整手段、4a、4b…ワニ口クリップ、5…被測定対象物、5a、5b…羽根、5c…側板、6…多関節アーム型三次元形状測定装置、31…測定装置本体、32…支持部、33a…上腕、33b…前腕、34a、34b、34c…エンコーダ、35…ハンドル、36…接触式プローブ、36a…接触子、37…プローブアダプタ、38…バッテリー、39…制御端末、40…被測定対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ先端の接触子を被測定対象物に接触させて形状を測定する三次元形状測定用プローブ装置において、
前記プローブは先端の接触子とこの接触子を支えるプローブ構成部品で構成され、前記プローブ構成部品が被測定対象物に接触していることを検知する干渉検知手段を備えたことを特徴とする三次元形状測定用プローブ装置。
【請求項2】
前記プローブの接触子は電気的絶縁材料で製作または表面処理され、前記プローブ構成部品は導電材料で製作または表面処理され、前記干渉検知手段は前記プローブ構成部品と被測定対象物との電気的導通を検知する導通チェック装置であることを特徴とする請求項1記載の三次元形状測定用プローブ装置。
【請求項3】
前記導通チェック装置は、プローブ構成部品と被測定対象物が電気的に接触したとき、ブザーまたはランプ点灯により導通状態であることを報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の三次元形状測定用プローブ装置。
【請求項4】
前記導通チェック装置は、前記プローブ構成部品と被測定対象物とに、着脱式に電線で接続されたことを特徴とする請求項2または3に記載の三次元形状測定用プローブ装置。
【請求項5】
前記導通チェック装置は、被測定対象物の電気抵抗率に応じて検出抵抗値を任意に調整する調整手段を備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の三次元形状測定用プローブ装置。
【請求項6】
プローブ先端の接触子を被測定対象物に接触させて形状を測定するに際し、前記プローブは先端の接触子とこの接触子を支えるプローブ構成部品で構成され、干渉検知手段により前記プローブ構成部品と被測定対象物との接触を検知することを特徴とするプローブの干渉検知方法。
【請求項7】
前記プローブ構成部品は導電材料で製作または表面処理され、干渉検知手段により前記プローブ構成部品と被測定対象物との電気的導通で両者の接触を検知することを特徴とする請求項6記載のプローブの干渉検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−192401(P2009−192401A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34256(P2008−34256)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】