説明

三相モータの制御装置と制御方法

【課題】PMSM(永久磁石同期モータ)の制御装置において、インバータのシャント抵抗を流れる直流母線電流を用いて三相の巻線電流を再現する際、高速・高性能のAD変換器やMPUを用いることなく、簡易な回路のみでその巻線電流を再現すること。
【解決手段】検出可能範囲巻線電流再現部34は、MPU1のPWM信号生成部12のPWM Dataから生成した正又負検出可能期間信号UP〜WNを用いて、インバータ2のシャント抵抗Rsを流れる直流母線電流Isをサンプル&ホールドし、そのサンプリングして保持した電流値を用いて検出不可能期間の巻線電流を補間して検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを生成し、推定巻線生成部35は、その検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを用いて検出不可能範囲の巻線電流を推定して推定巻線電流^iu〜^iwを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、1シャント抵抗電流検出方式を用いて三相の巻線電流を再現し、その再現した巻線電流によって、永久磁石同期モータ、三相誘導モータ、三相ステッピングモータ、シンクロナスモータ、リラクタンスモータ、三相リニアモータ等の三相モータ(三相巻線を有するモータ)を制御する三相モータの制御装置と制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来提案されている1シャント抵抗電流検出方式を用いた永久磁石同期モータ(以下PMSMと呼ぶ)の制御装置のブロック図を示す(例えば非特許文献1参照)。
PMSMのU相、V相、W相の巻線電流iu,iv,iwは、インバータ66から供給する。インバータ66の上アーム3個と下アーム3個の計6個のMOSFETは、PWM Dataのスイッチング信号Uup,Vup,Wupとスイッチング信号Udown,Vdown,Wdownに制御されてON,OFFする。PWM Dataは、MPU61のPWM信号生成部62において、三角波キャリア比較方式で生成する。
MPU61のサンプリング部63は、PWM信号に基づくタイミング信号TSに制御されてインバータ66のシャント抵抗Rsを流れる直流母線電流isをサンプリングする。MPU61のAC電流演算部64は、サンプリング部63のサンプルをAD変換し、そのサンプルのデジタル信号を用いて、PWM信号生成部62のPWM信号に従って巻線電流iu〜iwを演算し、生成する。MPU61の制御部65は、AC電流演算部64の巻線電流iu〜iwを用いて電圧指令vu,vv,vwを生成し、その電圧指令vu,vv,vwをPWM信号生成部62へ供給する。
【0003】
【非特許文献1】福本哲哉、渡邊幸恵、濱根洋人、林洋一:「三相PWMインバータの直流電流検出による交流電流演算の一手法」、電気学会論文誌D、127巻2号、2007:pp.181−188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の1シャント抵抗電流検出方式は、巻線電流iu〜iwを生成するとき、キャリア一周期に数回、直流母線電流isを取出し、その直流母線電流をAD変換し、MPU内で巻線電流iu〜iwを演算しなければならない。そのため高速、高分解能のADコンバータが必要になり、かつ高速演算が可能なMPUが必要になるから、ADコンバータやMPUのコストが高くなる。
本願発明は、従来の1シャント抵抗電流検出方式の前記問題点に鑑み、従来のように直流母線電流を直接AD変換してMPU内で三相の巻線電流を再現することなく、直流母線電流をアナログ量のまま簡易な回路を用いて三相の巻線電流を再現することにより、三相の巻線電流の再現時に高速、高分解能のADコンバータや高速演算の可能なMPUが必要でない三相モータの制御装置と制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、その目的を達成するため、請求項1に記載の三相モータの制御装置は、PWM信号によりスイッチング素子を制御して三相の巻線に電流を供給するインバータを備え、そのインバータの母線に接続されているシャント抵抗に流れる直流母線電流からPWM信号に基づいて検出可能期間の各相の巻線電流を検出し、その検出した巻線電流を用いて各相の巻線電流を連続して再現し、その再現した巻線電流を制御に用いる三相モータの制御装置において、巻線電流の検出可能期間と検出不可能期間からなる検出可能範囲において検出可能期間に検出した各相の巻線電流を用いて検出不可能期間の巻線電流を補間して検出可能範囲の各相の巻線電流を再現する検出可能範囲巻線電流再現部、検出可能範囲の各相の巻線電流とその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の巻線電流を時系列的に合成して検出可能範囲及び検出不可能範囲の全範囲の巻線電流を連続して再現する推定巻線電流生成部を備えていることを特徴とする。
請求項2に記載の三相モータの制御装置は、請求項1に記載の三相モータの制御装置において、前記三相モータは、永久磁石同期モータであることを特徴とする。
請求項3に記載の三相モータの制御装置は、請求項1又は請求項2に記載の三相モータの制御装置において、前記検出可能範囲巻線電流再現部は、PWM信号から生成した正検出可能期間信号と負検出可能期間信号に制御されて直流母線電流から検出可能期間の巻線電流値を検出して保持する複数のサンプル&ホールド回路からなり、前記推定巻線電流生成部は、前記正検出可能期間信号と負検出可能期間信号からなる正負検出可能期間信号が検出されたとき生成する検出可能範囲信号が検出されているとき検出可能範囲の各相の巻線電流を選択し、検出可能範囲信号が検出されていないとき、その相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の巻線電流を選択するスイッチ回路からなることを特徴とする。
請求項4に記載の三相モータの制御装置は、請求項3に記載の三相モータの制御装置において、前記正負検出可能期間信号が検出されるとPWM周期相当のパルス信号を発生させて検出可能範囲信号を生成する検出可能範囲信号生成部を備え、その検出可能範囲信号生成部によって前記スイッチ回路を制御することを特徴とする。
【0006】
請求項5に記載の三相モータの制御方法は、PWM信号によりスイッチング素子を制御して三相の巻線電流を供給するインバータの母線に接続されているシャント抵抗に流れる直流母線電流からPWM信号に基づいて検出可能期間の各相の巻線電流を検出し、その検出した巻線電流を用いて各相の巻線電流をして再現し、その再現した巻線電流を制御に使用する三相モータの制御方法において、検出可能期間と検出不可能期間からなる検出可能範囲において検出可能範囲の検出可能期間に検出した各相の巻線電流を用いて検出不可能期間の巻線電流を補間して検出可能範囲の各相の巻線電流を再現し、検出可能範囲の各相の巻線電流とその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の各相の巻線電流を時系列的に合成して検出可能範囲及び検出不可能範囲の全範囲の巻線電流を連続して再現し、その再現した巻線電流を制御に使用することを特徴とする。
請求項6に記載の三相モータの制御方法は、請求項5に記載の三相モータの制御方法において、前記三相モータは、永久磁石同期モータであることを特徴とする。
請求項7に記載の三相モータの制御方法は、請求項5又は請求項6に記載の三相モータの制御方法において、前記補間は、PWM信号から生成した正検出可能期間信号と負検出可能期間信号によりサンプル&ホールド回路を制御して直流母線電流から検出可能期間の巻線電流値を検出し保持して検出可能範囲の各相の巻線電流の再現を行い、前記検出可能範囲の各相の巻線電流とその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の各相の巻線電流の時系列的合成は、前記正検出可能期間信号と負検出可能期間信号からなる正負検出可能期間信号が検出されるとPWM周期相当のパルス信号を発生させて検出可能範囲信号を生成し、その検出可能範囲信号が検出されているとき検出可能範囲の各相の巻線電流を選択し、検出可能範囲信号が検出されていないときはその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の各相の巻線電流を選択して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、直流母線電流から検出可能範囲の巻線電流を再現し、その検出可能範囲の巻線電流を用いて巻線電流を連続して再現することにより、巻線電流の検出可能範囲及び検出不可能範囲の全範囲の巻線電流を再現している。そしてその再現の過程において、直流母線電流から検出した巻線電流は、AD変換することなくアナログ量のまま用いて、簡易な回路で連続して全範囲の巻線電流を再現できる。即ち本願発明は、直流母線電流から全範囲の巻線電流を再現するとき、直流母線電流をデジタル量に変換してMPUに取り込むことなく簡易な回路で処理して巻線電流を再現できる。そして各相の巻線電流を再現する簡易な回路は、汎用の演算増幅器やロジック回路等によって構成することができる。したがって本願発明は、直流母線電流から三相の巻線電流を再現するために高速、高分解能のAD変換器を用いる必要がなく、かつ高速処理が可能なMPUを用いる必要もないから、三相モータの制御装置は、安価に作製することができ、三相モータの制御方法は、簡単になる。
【0008】
本願発明は、直流母線電流から検出可能範囲の巻線電流を再現する過程、及び検出可能範囲の巻線電流から全範囲の巻線電流を再現する過程に用いる制御信号は、スイッチング信号(PWM信号)に基づいて生成するから、簡単に生成することができる。
本願発明は、巻線電流の検出可能期間に検出したサンプル電流値を用いて、検出不可能期間の巻線電流を補間して再現することができ、その補間には、直流母線電流をサンプリングしてサンプル電流値を保持するサンプル&ホールド回路を用いるだけでよいから、補間回路は簡単になる。
本願発明は、検出不可能範囲の各相の巻線電流は、その相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流を用いて推定し再現することができ、検出可能範囲の電流か検出不可能範囲の電流かを選択する回路を設けるだけでよいから、推定巻線電流の生成回路は簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図6により本願発明の実施例を説明する。なお各図に共通の部分は、同じ符号を使用している。
【実施例】
【0010】
まず図1のブロック図を用いて三相モータの一つである永久磁石同期モータ(以下PMSMと呼ぶ)の制御装置の全体の構成を説明し、次に図2〜図6を用いて各部の詳細を説明する。
図1において、1は、MPU、2は、インバータ、PMSMは、永久磁石同期モータ、3は、三相の巻線電流再現部である。MPU1は、PWM信号生成部12、三相の電圧指令生成部13、三角波(キャリア信号)生成部14を備えている。インバータ2は、上アーム211、下アーム212、直流電源22、シャント抵抗Rs等を備え、上アーム3個と下アーム3個の計6個のMOSFET(パワーデバイス)からなる。PMSMは、図1(b)のようにU相、V相、W相の三相の巻線と永久磁石のロータ(図示せず)からなる。巻線電流再現部3は、スイッチング信号生成部30、正又負検出可能期間信号生成部31、正負検出可能期間信号生成部32、検出可能範囲信号生成部33、検出可能範囲巻線電流再現部34、推定巻線電流生成部35等からなる。
【0011】
PWM信号生成部12は、電圧指令生成部13の三相の電圧指令(正弦波)と三角波生成部14の三角波に基づき、三角波比較方式によってPWM Dataを生成し、インバータ2とスイッチング信号生成部30へ供給する。PWM Dataは、インバータ2の上アーム211のスイッチングを制御するスイッチング信号Uup,Vup,Wupと、下アーム212のスイッチングを制御するスイッチング信号Udown,Vdown,Wdownからなる。
インバータ2は、スイッチング信号Uup〜Wup,Udown〜Wdownに制御されて、PMSMの巻線に三相の巻線電流iu,iv,iwを供給する。
【0012】
スイッチング信号生成部30は、PWM Dataから、上アーム211のスイッチング信号(上アームのPWM信号)Uup〜Wupを抽出し、正又負検出可能期間信号生成部31は、スイッチング信号Uup〜Wupを用いて、各相の巻線電流が検出可能範囲(後述する)において検出可能な期間を表す正検出可能期間信号UP,VP,WP,負検出可能期間信号UN,VN,WNを生成し、正負検出可能期間信号生成部32は、正検出可能期間信号UP〜UN、負検出可能期間信号UN〜WNに基づいて、各相の正負検出可能期間を表す正負検出可能期間信号UPN,VPN,WPNを生成し、検出可能範囲信号生成部33は、正負検出可能期間信号が検出されるとPWM周期相当のパルス信号を発生させて検出可能範囲信号UON,VON,WONを生成する。
【0013】
検出可能範囲巻線電流再現部34は、シャント抵抗Rsを流れる直流母線電流isから検出可能範囲の巻線電流を再現するため、正検出可能期間信号UP〜WP、負検出可能期間信号UN〜WNを用いて、直流母線電流isから検出可能期間の巻線電流を検出し、その検出した巻線電流を用いて検出不可能期間の巻線電流を補間して検出可能範囲の巻線電流ius,ivs,iwsを生成する。
【0014】
推定巻線電流生成部35は、検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを用いて検出不可能範囲(後述する)の巻線電流を生成(再現)するとともに、その検出不可能範囲の巻線電流と検出可能範囲の巻線電流を、相毎に、時系列的に合成して推定巻線電流^iu,^iv,^iw(ハットiu,ハットiv,ハットiw)を生成する。その推定巻線電流^iu〜^iwの生成には、検出可能範囲信号UON〜WONにより制御されるスイッチ回路を用いる。また検出不可能範囲の巻線電流の生成には、巻線電流の総和は0(キルヒホッフの法則)の関係を利用する。
例えばU相の場合、検出可能範囲信号UONが生成しているとき、^iu=iusとなり、検出可能範囲信号UONが生成していないとき、^iu=−(ivs+iws)となり、iusと−(ivs+iws)が時系列的に合成されて推定巻線電流^iuを生成する。したがって巻線電流の検出可能範囲及び検出不可能範囲、即ち全範囲の巻線電流^iuは、^iu=UON×ius−バーUON×(ivs+iws)となる。V相、W相についても同様である。
【0015】
以上のように検出可能範囲巻線電流再現部34は、巻線電流の検出可能範囲について、正検出可能期間信号UP〜WP、負検出可能期間信号UN〜WNを用いて直流母線電流isから検出可能期間の巻線電流を検出し、その検出した巻線電流を用いて検出不可能期間の巻線電流を補間して検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを再現する。一方推定巻線電流生成部35は、巻線電流の検出不可能範囲について、検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを用いて検出不可能範囲の巻線電流を再現するとともに、その巻線電流と検出可能範囲の巻線電流を時系列的に合成して推定巻線電流^iu〜^iwを生成する。
再現した推定巻線電流^iu〜^iwは、AD変換してMPU1へ取り込みPMSMの制御に使用する。
なお図1は、巻線電流の再現にインバータ2の上アーム211のスイッチング信号Uup〜Wupを用いたが、下アーム212のスイッチング信号Udown〜Wdownを用いてもよい。またインバータ2の上下アームのMOSFETは、他のスイッチング素子でもよい。
【0016】
ここで巻線電流の検出可能範囲、検出不可能範囲、検出可能期間、検出不可能期間、正検出可能期間信号、負検出可能期間信号、正負検出可能期間信号について簡単に説明する。詳細については、後述する。
三相の巻線に流れる巻線電流iu,iv,iwは、インバータからモータ(巻線)方向(正方向と呼ぶ)への流れと、モータ(巻線)からインバータ方向(負方向と呼ぶ)への流れとを繰り返す。またスイッチング信号(PWM信号)Uup〜Wupに基づいて、直流母線電流isから各相の巻線電流を検出する場合、正方向の巻線電流及び負方向の巻線電流には、検出できる範囲と検出できない範囲がある。前者の範囲を検出可能範囲と呼び、後者の範囲を検出不可能範囲と呼ぶ。また検出可能範囲であっても、巻線電流が検出できる期間と検出できない期間がある。前者の期間を検出可能期間と呼び、後者の期間を検出不可能期間と呼ぶ。また正検出可能期間信号と負検出可能期間信号及び正負検出可能期間信号は、ともに検出可能期間を表す信号であるが、正検出可能期間信号と負検出可能期間信号は、正方向又は負方向の巻線電流の検出可能期間を表し、正負検出可能期間信号は、正方向及び負方向(正負両方向)の巻線電流の検出可能期間を表す。
【0017】
次に図2〜図6を用いて各部の詳細を説明する。
図2は、スイッチング信号(PWM信号)Uup〜Wupと巻線電流iu〜iw、直流母線電流isの関係を示す。
図2において、イ、ニは、三相の巻線に流れる電流の方向を示し(巻線は省略してある)、ロ、ホは、スイッチング関数(論理関数)f(Uup,Vup,Wup)の状態、即ちインバータ2の上アーム211のMOSFETのスイッチングの状態を示し、ハ、ヘは、巻線電流iu〜iwと直流母線電流isの関係を示す。また正検出可能期間信号UP,VP,WPは、直流母線電流is(巻線電流iu,iv,iw)が正であるとき、インバータからモータ方向(正方向)へ電流が流れている期間(或いは状態)、また直流母線電流isが負であるとき、モータからインバータ方向(負方向)へ電流が流れている期間(或いは状態)を示し、負検出可能期間信号UN,VN,WNは、直流母線電流isが正であるとき、モータからインバータ方向(負方向)へ電流が流れている期間(或いは状態)、また直流母線電流isが負であるとき、インバータからモータ方向(正方向)へ電流が流れている期間(或いは状態)を示す。
【0018】
図2の(1)〜(6)は、スイッチング関数f(Uup,Vup,Wup)の状態変数が次の場合を示す。なお状態変数1はONの状態を、状態変数0はOFFの状態を表す。
(1)f(Uup,Vup,Wup)=(1,0,0)の期間
u=isのときUP=1、それ以外のときUP=0
(2)f(Uup,Vup,Wup)=(0,1,1)の期間
u=−isのときUN=1、それ以外のときUN=0
(3)f(Uup,Vup,Wup)=(0,1,0)の期間
v=isのときVP=1、それ以外のときVP=0
(4)f(Uup,Vup,Wup)=(1,0,1)の期間
v=−isのときVN=1、それ以外のときVN=0
(5)f(Uup,Vup,Wup)=(0,0,1)の期間
w=isのときWP=1、それ以外のときWP=0
(6)f(Uup,Vup,Wup)=(1,1,0)の期間
w=−isのときWN=1、それ以外のときWN=0
【0019】
次に図3により、図1の電圧指令生成部13の三相の電圧指令(正弦波)と三角波生成部14の三角波を用いて、図1のPWM信号生成部12において生成するスイッチング信号(上アームのPWM信号)Uup〜Wupについて説明する。
スイッチング信号Uup〜Wupには、図3(a)の三相の電圧指令vu,vv,vwと三角波を用いて三角波比較方式によって生成する。図3(a)の時刻TAにおけるスイッチング信号Uup〜Wupは、図3(b1)のようになり、時刻TBにおけるスイッチング信号Uup〜Wupは、図3(b2)のようになる。
図3(b1),(b2)において、(イ)は、電圧指令vu〜vwの瞬時値と三角波の関係を示し、(ロ)は、スイッチング信号の出力電圧(PWM出力電圧)を示し、(ハ)は、スイッチング信号パターン(PWMパターン)、直流母線電流isと検出できる巻線電流を示す。またスイッチング信号パターンは、スイッチング信号Uup〜Wupにより制御されるインバータの上アームのON(1)、OFF(0)状態を表しており、直流母線電流isは、それらのON、OFF状態において検出できる巻線電流を表す。
【0020】
図3(b1)の場合、電圧指令vu〜vwの瞬時値は三相とも相違し、(b2)の場合、電圧指令vv,vwの瞬時値は同じで、電圧指令vuの瞬時値は他の二相と相違している。そして図3(b1)の場合、(Uup,Vup,Wup)=(1,0,0)の期間はis=iu、(Uup,Vup,Wup)=(1,1,0)の期間はis=−iwとなり、それらの期間は、直流母線電流isから巻線電流iu,iwの検出が可能である。一方(Uup,Vup,Wup)=(0,0,0),(1,1,1)の期間は、巻線電流の検出が不可能である。
【0021】
図3(b2)の場合、(Uup,Vup,Wup)=(0,1,1)の期間はis=−iu、(Uup,Vup,Wup)=(1,0,0)の期間はis=iuとなり、それらの期間は、直流母線電流isから巻線電流iuの検出が可能である。一方(Uup,Vup,Wup)=(0,0,0)の期間は、巻線電流の検出が不可能である。したがって直流母線電流isからスイッチング信号Uup〜Wupに基づいて巻線電流iu〜iwを検出する場合、三角波の一周期の間には、巻線電流の検出が可能な相と不可能な相、及び検出が可能な期間と検出が不可能な期間がある。
以上のように三角波の一周期の間に検出できる巻線電流は、図3(b1)の場合iuとiw、図3(b2)の場合iuのみである。即ち図3(b1)のように、電圧指令vu,vv,vwの瞬時値が三相とも異なる場合は、二相の巻線電流を検出でき、図3(b2)のように、電圧指令vu,vv,vwの二相(vv,vw)の瞬時値が同じ場合は、一相の巻線電流を検出できる。
【0022】
次に巻線電流の検出可能範囲と検出不可能範囲について説明する。
三角波の一周期の間に巻線電流iuの検出可能期間が一度でもある場合、巻線電流iuが検出可能範囲と定義する。巻線電流iv,iwについても同様に定義する。例えば、図3(b1)のように電圧指令vu,vv,vwの瞬時値が三相とも相違するときは、そのときの瞬時値が最大のU相と最小のW相の二相の巻線電流iu,iwが検出可能範囲と定義する。また図3(b2)のように電圧指令vu,vv,vwの内、二相の電圧指令vv,vwの瞬時値のみが同じであるときは、残りの一相の巻線電流iuが検出可能範囲と定義する。ここで図3(b2)のように一相の巻線電流のみが検出可能な条件は、二相の電圧指令vv,vwが同じになる瞬間だけであるから、一相の巻線電流のみの検出可能範囲は考慮しなくてもよい。
【0023】
以上の定義により巻線電流の検出可能範囲を表すと図4のようになる。
図4(a)は、電圧指令vu,vv,vwの瞬時値の中で最大と最小の範囲を示し、図4(b)は、巻線電流iu,iv,iwの検出可能範囲を示す。
図4(a)において、例えば、U相最大は、電圧指令vu〜vwの内U相の瞬時値が他の二相より大きい範囲を示し、U相最小は、U相の瞬時値が他の二相の振幅よりも小さい範囲を示す。V相、W相についても同様である。
図4(a)のU相最大とU相最小の範囲は、直流母線電流isから巻線電流iuの検出が可能な範囲で、その検出可能範囲は、図4(b)のようになる。V相、W相についても同様である。図4(a)のU相最大とU相最小の範囲の間、及び図4(b)の巻線電流iuが検出可能範囲でない間(巻線電流iuと巻線電流iuの間)は、巻線電流iuの検出不可能範囲である。V相、W相についても同様である。そして巻線電流の検出不可能範囲は、各相の電圧指令の瞬時値が、その相の他の二相の電圧指令の瞬時値の間に位置する範囲である。例えば、U相の場合、電圧指令vuの瞬時値が、電圧指令vvの瞬時値より大きく電圧指令vwの瞬時値よりも小さい範囲、及び電圧指令vuの瞬時値が、電圧指令vvの瞬時値より小さく電圧指令vwの瞬時値よりも大きい範囲である。
【0024】
検出可能範囲では、図4(b)のときに巻線電流iu〜iwを検出できるが、その検出可能範囲であっても、前述したように巻線電流の検出可能期間(図3(b1)の(1,0,0)等)と検出不可能期間(図3(b1)の(0,0,0)等)が存在する。そこで検出不可能期間の巻線電流は、検出可能期間に検出した巻線電流を用いて補間することにより、検出可能範囲の巻線電流を連続的に再現する。ここで補間して再現した巻線電流を検出可能範囲の巻線電流と呼ぶ。
検出可能範囲の巻線電流は、図1の検出可能範囲巻線電流再現部34において、サンプル&ホールド回路(以下S&Hと呼ぶ)を用いて生成する。検出可能範囲巻線電流再現部34は、正検出可能期間信号UP〜WP、負検出可能期間信号UN〜WNを用いてS&Hを制御し、直流母線電流isをサンプリングしてその値を保持し、その保持した電流値(サンプル電流値)を用いて検出可能範囲の巻線電流を生成する。なお検出可能範囲巻線電流部34の構成は、後述する。
【0025】
ここで図1の正又負検出可能期間信号生成部31において生成する正検出可能期間信号UP〜WP、負検出可能期間信号UN〜WNについて説明する。
まずU相を例に、正検出可能期間信号UPと負検出可能期間信号UNについて説明する。
図2(1)の場合、スイッチング関数f(Uup,Vup,Wup)=(1,0,0)となり、この期間の直流母線電流isと巻線電流iuは、is=iuとなるから、直流母線電流isから巻線電流iuを検出することができる。そしてこの期間は、直流母線電流isが正の時に巻線電流iuが正方向に流れる期間であり、直流母線電流isが負の時に巻線電流iuが負方向に流れる期間であるから、この期間を表す正検出可能期間信号UPは、式(1)で表すことができる。
同様に図2(2)の場合は、スイッチング関数f(Uup,Vup,Wup)=(0,1,1)となり、この期間は、直流母線電流isが正の時に巻線電流iuが負方向に流れる(is=−iuとなる)期間であり、直流母線電流isが負の時にiuが正方向に流れる期間であるから、この期間を表す負検出可能期間信号UNは、式(2)で表すことができる。
以下同様にV相、W相の巻線電流ivが正又負方向に流れる期間を表す正検出可能期間信号VP,WP、及び負検出可能期間信号VN,WNは、式(3)〜(6)で表すことができる。
【0026】
【数1】

【0027】
次に式(1)〜(6)の論理に基づいて、検出可能範囲の巻線電流を再現する方法について説明する。
式(1)〜(6)で表される正又負検出可能期間信号UP〜WNと直流母線電流is及び巻線電流iuとの関係は、図2において説明したように、UP=1の場合is=iu、UN=1の場合is=−iuとなる。同様にVP=1の場合is=iv、VN=1の場合is=−iv、WP=1の場合is=iw、WN=1の場合is=−iwとなる。
したがってU相の場合、正検出可能期間信号UPによって直流母線電流isをサンプリングし、その電流値を保持し、その保持した電流値(サンプル電流値)iupを用いて検出不可能期間の巻線電流を補間し、負検出可能期間信号UNによって直流母線電流isをサンプリングし、その電流値を保持し、その保持した電流値iunを用いて検出不可能期間の巻線電流を補間することにより、保持した電流値を合成して検出可能範囲のU相の巻線電流値iusを再現することができる。V相、W相についても同様である。
【0028】
そこで正又負検出可能期間信号UP〜WNにより直流母線電流isをサンプリングし、保持されている電流値をiup,ivp,iwp,iun,ivn,iwnとし、検出可能範囲の巻線電流をius,ivs,iwsとすると、検出可能範囲の巻線電流ius,ivs,iwsは、式(7)〜(9)によって求めることができる。
us=iup−iun (7)
vs=ivp−ivn (8)
ws=iwp−iwn (9)
【0029】
図5は、式(7)〜(9)で表される検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを生成する検出可能範囲巻線電流再現部34の構成と検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsの波形を示す。
図5(a)において、直流母線電流isは、ローパスフィルタ341を介してS&H3421〜3426へ供給される。S&H3421〜3426は、正又負検出可能期間信号UP〜WNにより制御され、直流母線電流isをサンプリングして保持した電流値をiup〜iwnとする。保持した電流値iup〜iwnは、相毎に合成して検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを生成する。
例えばU相の場合、S&H3421は、正検出可能期間信号UPに制御されてサンプリングした電流値を保持して電流値iupを生成し、S&H3422は、負検出可能期間信号UNに制御されてサンプリングした電流値を保持して電流値iunを生成する。保持した電流値iup,iunは、合成されて検出可能範囲の巻線電流iusを生成する。V相,W相も同様に検出可能範囲の巻線電流ivs,iwsを生成する。
検出可能範囲巻線電流再現回路34によって再現した検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsの波形は、インダクタンス成分による電流の遅れがない場合図5(b)のようになる。即ち検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsは、二相分が連続して再現される。
したがって検出可能範囲の巻線電流は、巻線電流ius〜iwsにより再現できる。
【0030】
次に巻線電流の検出不可能範囲の巻線電流を再現する方法について説明する。
検出不可能範囲の巻線電流は、正検出可能期間信号UP〜WP、負検出可能期間信UN〜WNを用い、iu+iv+iw=0(巻線電流の総和は0:キルヒホッフの法則)の関係を利用し、検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを用いて推定、再現する。即ち検出不可能範囲の巻線電流は、検出可能範囲で再現した巻線電流ius〜iwsを用いて再現する。
【0031】
検出不可能範囲の巻線電流の再現には、まず三相の正負検出可能期間信号UPN〜WPNを生成する。正負検出可能期間信号UPN〜WPNは、巻線電流iu,iv,iwの正方向及び負方向の期間(正負両方向の期間)を表し、検出可能期間を表す信号である。正負検出可能期間信号UPN〜WPNは、正検出可能期間信号UP〜WP、負検出可能期間信号UN〜WNを用いて、次の論理式で表すことができる。
PN=UP+UN (10)
PN=VP+VN (11)
PN=WP+WN (12)
【0032】
次に正負検出可能期間信号UPN〜WPNが検出されているとき、その正負検出可能期間信号が検出されるとPWM周期相当のパルス信号を発生させて検出可能範囲信号UON〜WONを生成する(生成方法は後述する)。
検出不可能範囲の巻線電流は、検出可能範囲信号UON〜WONと検出可能範囲の各相の巻線電流ius〜iwsを用いてさらにiu+iv+iw=0(iu=−(iv+iw))の関係を利用して推定する。推定巻線電流^iu,^iv,^iwは、次の式で表すことができる。
【0033】
【数2】

ここで式(13)の場合、iusは、巻線電流の検出可能範囲のU相の巻線電流であり、−(ivs+iws)は、巻線電流の検出不可能範囲のU相の巻線電流である。V相の式(14)、W相の式(15)についても同様である。したがって式(13)〜(15)の推定巻線電流^iu,^iv,^iwは、巻線電流の検出可能範囲及び検出不可能範囲(即ち全範囲)の再現された巻線電流を表している。
【0034】
図6は、検出可能範囲信号生成部33、推定巻線電流生成部35の構成を示す。
図6(a1)において、検出可能範囲信号生成部33は、三相の正負検出可能期間信号の検出信号生成器331〜333からなる。図6(a2)は、U相の検出可能範囲信号生成器331の具体例を示す。V相、W相も同様に構成する。
U相の場合、検出信号生成器331は、正負検出可能期間信号UPNが検出されるとPWM周期相当のパルス信号PPを発生させて検出可能範囲信号UONを生成し、検出可能範囲信号UONが検出されない(生成されない)ときは、検出不可能範囲信号バーUONを生成する。V相、W相についても同様である。
【0035】
図6(b)において、推定巻線電流生成部35は、検出可能範囲の巻線電流ius,ivs,iwsを用い、式(13)〜(15)に基づいて推定巻線電流^iu,^iv,^iwを生成する。
例えばU相の場合、図6(a1),(a2)の正負検出可能期間信号の検出信号生成器331において、検出可能範囲信号のU相の検出可能範囲信号UONが生成されているとき、スイッチSWuは、UON側に切り換わり、検出可能範囲信号UONが生成されていないとき(バーUONが生成されているとき)、バーUON側に切り換わる。即ちスイッチSWuは、検出可能範囲信号UONが検出されているときは、UON側に切り換わり、検出可能範囲信号UONが検出されていないときは、バーUON側に切り換わる。そしてUON側には、検出可能範囲の巻線電流iusが現れ、バーUON側には、検出可能範囲の巻線電流ivsとiwsから求めた検出不可能範囲の巻線電流が現れている。したがってスイッチSWuがUON側に切り換わっているとき、^iu=iusとなり、バーUON側に切り換わっているとき、^iu=−(ivs+iws)となり、iusと−(ivs+iws)が時系列的に合成されて推定巻線電流^iuとなる。即ち推定巻線電流^iuは、検出可能範囲信号UONが検出されているときのU相の検出可能範囲の巻線電流iusと、検出可能範囲信号UONが検出されていないときのV,W相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の巻線電流である−(ivs+iws)とからなる。そしてiusは、巻線電流の検出可能範囲の再現された巻線電流であり、−(ivs+iws)は、巻線電流の検出不可能範囲の再現された巻線電流である。V相の推定巻線電流^iv、W相の推定巻線電流^iwについても同様である。
【0036】
以上のように図6(b)の推定巻線電流生成部35は、巻線電流の検出可能範囲及び検出不可能範囲の全範囲の巻線電流を再現して生成する。
なお検出可能範囲信号生成部33、検出可能範囲信号生成器331は、図6(a1),(a2)の構成に限らず、検出可能範囲の信号UONが検出されているとき、U相の場合、スイッチSWuをUON側へ切り換え、検出可能範囲の信号UONが検出されていないとき、スイッチSWuをバーUON側へ切り換える構成のものであればよい。V相、W相についても同様である。
【0037】
本実施例は、式(7)〜(9)により直流母線電流isから検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを再現し、最終的に式(13)〜(15)により検出可能範囲の巻線電流ius〜iwsを用いて検出可能範囲及び検出不可能範囲(全範囲)の巻線電流^iu〜^iwを再現する。そしてそれらの再現の過程において、直流母線電流isをAD変換することなくアナログ量のまま用いて、アナログ量の推定巻線電流^iu〜^iwを再現している。即ち本実施例は、直流母線電流isから推定巻線電流^iu〜^iwを再現する際、直流母線電流isをMPUに取り込む必要がないのでデジタル量に変換することなくアナログ量のまま簡易な回路で処理できる。そして巻線電流推定回路は、汎用の演算増幅器やロジック回路等によって構成することができる。したがって本実施例は、高速、高分解能のAD変換器を用いる必要がなく、かつ高速処理が可能なMPUを用いる必要もないから、PMSMの制御装置を安価に作製することができる。
【0038】
本実施例によって得られた推定巻線電流を検証するため、図7の実験装置を用いて、推定巻線電流^iu,^ivと電流センサを用いて検出した巻線電流iu,ivとを比較した。
図7において、51は、PWM Dataを生成するPWM信号生成部を有するMPU、52は、インバータ、53は、本実施例の巻線電流再現部、54は、供試モータ(PMSM)、55は、エンコーダ、56は、負荷とイナーシャ、57は、カップリング、58は、CPLDである。
なお実験装置の仕様は、次の通りである。
試供モータは、ポール数:4、スロット数:6、トルク定数:0.44N・m/A、巻線抵抗:0.94Ω、d軸インダクタンス:4.7mH、q軸インダクタンス:4.7mHである。インバータは、PWM周波数:10kHz、デッドタイム:1μsec、シャント抵抗Rs:1Ω、供給電圧:60V、パワーデバイス:MOSFETである。
【0039】
図8は、図7の実験装置によって得られた検出巻線電流iu,iv(太い線)と推定巻線電流^iu,^iv(細い線)の波形を示す。図8(a)は、PMSMの回転速度が1000min-1のとき、図8(b)は、PMSMの回転速度が500min-1のときのU相,V相の検出巻線電流波形と推定巻線電流波形を示す。検出巻線電流と推定巻線電流の波形は、図8(a)、図8(b)いずれ場合も略一致している。
【0040】
前記実施例は、PMSM(永久磁石同期モータ)について説明したが、PMSMの外、三相誘導モータ、三相ステッピングモータ、シンクロナスモータ、リラクタンスモータ、三相リニアモータ等の三相モータであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本願発明の実施例のPMSMの制御装置の構成を示す。
【図2】本願発明の実施例に係るスイッチング信号(PWM信号)と巻線電流、直流母線電流の関係を示す。
【図3】本願発明の実施例に係る各相の電圧指令と三角波(キャリア信号)によって生成するスイッチング信号(PWM信号)と巻線電流の関係を示す。
【図4】本願発明の実施例に係る巻線電流の検出可能範囲を示す。
【図5】本願発明の実施例に係る検出可能範囲巻線電流生成部の構成と検出可能範囲の電流巻線電流の波形を示す。
【図6】本願発明の実施例に係る検出可能範囲信号生成部と、推定巻線電流生成部の構成を示す。
【図7】本願発明の実施例に係る推定巻線電流を検証するための実験装置の構成を示す。
【図8】図7の実験装置によって検出した巻線電流と推定巻線電流の波形を示す。
【図9】従来のPMSMの制御装置の構成を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 MPU
12 PWM信号生成部(PWM Data生成部)
13 電圧指令生成部
14 三角波生成部
2 インバータ
211 上アーム
212 下アーム
22 直流電源
3 巻線電流再現部
30 スイッチング信号(PWM信号)生成部
31 正又負検出可能期間信号生成部
32 正負検出可能期間信号生成部
33 検出可能範囲信号生成部
34 検出可能範囲巻線電流再現部
35 推定巻線電流生成部
PMSM 永久磁石同期モータ
s シャント抵抗
PWM Data Uup〜WupとUdown〜Wdown
up〜Wup,Udown〜Wdown 上下アームのスイッチング信号
P〜WN 正又負検出可能期間信号
PN〜WPN 正負検出可能期間信号
ON〜WON 検出可能範囲信号
s 直流母線電流
u,iv,iw U相,V相,W相の巻線電流
up〜iwn サンプリングして保持した電流値
us,ivs,iws 検出可能範囲の巻線電流
^iu,^iv,^iw 推定巻線電流
u,vv,vw 電圧指令

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM信号によりスイッチング素子を制御して三相の巻線に電流を供給するインバータを備え、そのインバータの母線に接続されているシャント抵抗に流れる直流母線電流からPWM信号に基づいて検出可能期間の各相の巻線電流を検出し、その検出した巻線電流を用いて各相の巻線電流を連続して再現し、その再現した巻線電流を制御に用いる三相モータの制御装置において、巻線電流の検出可能期間と検出不可能期間からなる検出可能範囲において検出可能期間に検出した各相の巻線電流を用いて検出不可能期間の巻線電流を補間して検出可能範囲の各相の巻線電流を再現する検出可能範囲巻線電流再現部、検出可能範囲の各相の巻線電流とその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の巻線電流を時系列的に合成して検出可能範囲及び検出不可能範囲の全範囲の巻線電流を連続して再現する推定巻線電流生成部を備えていることを特徴とする三相モータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三相モータの制御装置において、前記三相モータは、永久磁石同期モータであることを特徴とする三相モータの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の三相モータの制御装置において、前記検出可能範囲巻線電流再現部は、PWM信号から生成した正検出可能期間信号と負検出可能期間信号に制御されて直流母線電流から検出可能期間の巻線電流値を検出して保持する複数のサンプル&ホールド回路からなり、前記推定巻線電流生成部は、前記正検出可能期間信号と負検出可能期間信号からなる正負検出可能期間信号が検出されたとき生成する検出可能範囲信号が検出されているとき検出可能範囲の各相の巻線電流を選択し、検出可能範囲信号が検出されていないとき、その相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の巻線電流を選択するスイッチ回路からなることを特徴とする三相モータの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の三相モータの制御装置において、前記正負検出可能期間信号が検出されるとPWM周期相当のパルス信号を発生させて検出可能範囲信号を生成する検出可能範囲信号生成部を備え、その検出可能範囲信号生成部によって前記スイッチ回路を制御することを特徴とする三相モータの制御装置。
【請求項5】
PWM信号によりスイッチング素子を制御して三相の巻線電流を供給するインバータの母線に接続されているシャント抵抗に流れる直流母線電流からPWM信号に基づいて検出可能期間の各相の巻線電流を検出し、その検出した巻線電流を用いて各相の巻線電流を連続して再現し、その再現した巻線電流を制御に使用する三相モータの制御方法において、検出可能期間と検出不可能期間からなる検出可能範囲において検出可能範囲の検出可能期間に検出した各相の巻線電流を用いて検出不可能期間の巻線電流を補間して検出可能範囲の各相の巻線電流を再現し、検出可能範囲の各相の巻線電流とその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の各相の巻線電流を時系列的に合成して検出可能範囲及び検出不可能範囲の全範囲の巻線電流を連続して再現し、その再現した巻線電流を制御に使用することを特徴とする三相モータの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の三相モータの制御方法において、前記三相モータは、永久磁石同期モータであることを特徴とする三相モータの制御方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の三相モータの制御方法において、前記補間は、PWM信号から生成した正検出可能期間信号と負検出可能期間信号によりサンプル&ホールド回路を制御して直流母線電流から検出可能期間の巻線電流値を検出し保持して検出可能範囲の各相の巻線電流の再現を行い、前記検出可能範囲の各相の巻線電流とその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の各相の巻線電流の時系列的合成は、前記正検出可能期間信号と負検出可能期間信号からなる正負検出可能期間信号が検出されるとPWM周期相当のパルス信号を発生させて検出可能範囲信号を生成し、その検出可能範囲信号が検出されているとき検出可能範囲の各相の巻線電流を選択し、検出可能範囲信号が検出されていないときはその相の他の二相の検出可能範囲の巻線電流から求めた検出不可能範囲の各相の巻線電流を選択して行うことを特徴とする三相モータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−118568(P2009−118568A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286239(P2007−286239)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年8月3日 社団法人電気学会発行の「電気学会研究会資料 回転機研究会RM−07−49〜69」に発表
【出願人】(595106947)
【出願人】(592026473)株式会社昭和電業社 (6)
【Fターム(参考)】