説明

三脚脚立及び脚立用補助具

【課題】従来の三脚脚立に若干の改良工夫を加えるだけで、作業対象物により近い位置で適切に作業が行えるようにした、使い勝手に優れた三脚脚立を提供する。
【解決手段】はしご部1と、このはしご部1の上端側に位置する頂部2と、この頂部2からはしご部1とは異なる方向に延びる支柱3とを備え、支柱3がはしご部1に対して折り畳み、展開可能に構成された脚立本体Aに対して、頂部2に、支柱3をはしご部1側へ折り畳んだ状態若しくは折り畳む方向に移動させた状態で作業対象物に優先的に係り合う係合部42を設け、この係合部42を介してはしご部1を作業対象物に少なくとも横ずれしないように立て掛け得るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置状態をより適正化ならしめた三脚脚立及び脚立用補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、脚立として四脚脚立や三脚脚立などが広く知られている。そのなかでも、特に三脚脚立は、3本の脚で自立するため、庭園内の不陸地や、庭石、庭木などの障害が多く混在する箇所での安定設置に優れ、植木職人などの高所作業用道具として広く利用されている。
【0003】
従来の三脚脚立は、図4に例示するように、脚柱11、11間に桟12を架設して構成されるはしご部1と、このはしご部1の上端側に取り付けた頂部2と、この頂部2からはしご部1とは異なる方向に延びる支柱3とを備え、支柱3がはしご部1に対して折り畳み、展開可能に構成されている。そして、支柱3を開いて設置することにより3点で接地して、本来の目的に沿って立てた姿は、三角錐の形状を成すものとなっている。
【0004】
この三脚脚立の使用方法について説明すると、例えば植木や果樹などの剪定時には、図5に示すように支柱3側を作業対象物である樹木B等に向けて設置する。そして、作業者が、必要な高さまではしご部1を伝い登り、任意の高さではしご部1上に立った状態で枝br等に対して剪定作業を行う。はしご部1に登った作業者は、作業の進捗に合わせ、はしご部1上を上下、左右に移動しながら作業のための足場を確保するが、通常の姿勢で樹木Bの幹bに向かって対峙することになるため、正面に対する作業のほか、体の向きを変えれば左右方向を含めて3方に広角の作業範囲を確保することができるものである。
【0005】
この種の三脚脚立の構造は例示するまでもなく周知であるが、敢えて近時の文献を例示するとするならば、設置状態の安定化を図った特許文献1のようなものが挙げられる。
【特許文献1】特開2002−309878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、作業目的によっては、足場となるはしご部1を作業対象物に極力近づけたい場合がある。しかしながら、図5に示したように、はしご部1とは異なる方向に延びる支柱3を幹bの根元と干渉する位置を越えて近づけることはできないため、樹木B等との間に必要以上に間合いが開くことが避けがたい場合がある。
【0007】
このような場合には、図6に示すように三脚脚立をほぼ90度横向きに配置してはしご部1を幹bに近づけることなども行われている。しかしながら、このようにすると、図7に示すようにはしご部1を登るにつれて幹bに対する作業者Wの位置が変化する上に、体を幹bに対峙させるためには90°横を向かなければならないため、不自然な作業姿勢を強いられ、さらに三方向に対する広角の作業が難しくなるとともに、はしご部1や支柱3、作業者が枝brと干渉し易くなる点も新たな不都合となる。特許文献1のものは、本発明とは別異の目的でなされているものではあるが、支柱以外に補助のための支持杆を用いることから、幹などとより干渉し易いものになっている。
【0008】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、従来の三脚脚立に若干の改良工夫を加えるだけで、作業対象物により近い位置で適切に作業が行えるようにした、使い勝手に優れた三脚脚立及びそのための脚立用補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の三脚脚立は、はしご部と、このはしご部の上端側に位置する頂部と、この頂部からはしご部とは異なる方向に延びる支柱とを備え、支柱がはしご部に対して折り畳み、展開可能に構成された脚立本体に対して、前記頂部に、支柱をはしご部側へ折り畳んだ状態若しくは折り畳む方向に移動させた状態で作業対象物に優先的に係り合う係合部を設け、この係合部を介してはしご部を作業対象物に少なくとも横ずれしないように立て掛け得るように構成したことを特徴とする。
【0011】
このように構成すると、はしご部を作業対象物に対峙させるように配置しても支柱が作業対象物と干渉することが回避されるため、はしご部を作業対象物に適度に近づけて、はしご部に登った際に適切な間合いを確保することができる。しかも、左右を含めて三方への作業範囲が確保され、下の枝が邪魔になる設置状態となることも有効に回避することが可能となる。
【0012】
通常の使用の態様と、はしご的な使用の態様とを選択的にとり得るようにするためには、係合部を備えた脚立用補助具を、頂部の一部に脱着可能に取り付け可能としておくことが望ましい。
【0013】
作業対象物との間合いを適正化するためには、頂部に対する脚立用補助具の取付位置が可変であって、頂部から脚立用補助具の係合部までの距離を調節可能としていることが好ましい。
【0014】
取り扱いの便をより向上させるためには、係合部が頂部に一体に組み込まれ、通常の脚立として使用する際は邪魔にならない部位に位置し、必要に応じて頂部の側方に持ち出し得るように構成しておくことが便利である。
【0015】
具体的な実施の態様としては、作業対象物が樹木であり、係合部が樹木の幹の外周に沿って一部抱くように添接する湾曲状もしくは屈曲状をなしているものが挙げられる。この場合の湾曲や屈曲の度合いは、幹の太さが多少異なっても一部に係合させれば横ずれ防止効果は有効に働かせることができる。但し、幹の径よりも大きい湾曲や屈曲であると横ずれが発生し得るので、通常取り扱う範囲で想定される比較的小さめの幹の径に対して適切な湾曲や屈曲となるように設定しておくことが望ましい。
【0016】
また、本発明の脚立用補助具は、脚立本体の頂部に対して脱着可能であり、頂部から側方に延びて作業対象物に優先的に係り合う係合部を有するものであり、既存の脚立本体の頂部にそのまま、或いは若干の改良を施した上で取り付けることにより、本発明の三脚脚立を有効に構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上説明した構成であるから、三脚脚立本来の使用状態とはしご的な使用状態とを選択的に利用することができ、これにより現場における設置状態に一層の自由度をもたせて、植木職人などの行う高所作業に係る作業性を飛躍的に高めるた優れた三脚脚立及び脚立用補助具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
この実施形態は、図4に示した従来の三脚脚立を脚立本体Aとし、この脚立本体Aに図1に示す脚立用補助具4を取り付けて構成される。
【0020】
脚立本体Aは図4に基づいて説明したと同様、はしご部1と、このはしご部1の上端側に設けた頂部2と、この頂部2からはしご部1とは異なる方向に延びる支柱3とを備えている。
【0021】
はしご部1は、一対の脚柱11、11間に複数の桟12を所定間隔で架設したものであり、作業者が昇り降りして剪定作業等を行う際の足場を提供する。
【0022】
頂部2は、図1に拡大図示するように、枠フレーム21の内側に桟12と平行な架材22を掛け渡したもので、この頂部2ははしご部1の上端側に一体的に設けられており、作業者が腰を降ろして作業を行う利用形態が可能である。
【0023】
これらのはしご部1や頂部2には、図示しない補強パイプ等を用いて適宜の補強がなされている。
【0024】
一方、支柱3は、頂部2の枠フレーム21の一部に嵌合パイプ31を介して回転可能に取り付けたもので、はしご部1に対して折り畳み、展開可能とされており、この支柱3をはしご部1に対し開脚して設置した状態で、脚立全体が図4に示す概略三角錐の形状を成すものとなっている。なお、一定以上の開脚を防止するストッパーを始め、自立に必要な適宜の構造を備える点は従来と同様である。
【0025】
このような脚立本体Aに対して、本実施形態は、図1及び図2に示すように、その頂部2の下方に、架材22と直交する方向に2本のパイプ材23を嵌合パイプ31の挙動を妨げない状態で一体的に取り付けている。このパイプ材23は、頂部2の枠フレーム21の下に一方の開口端23aが位置するように設けられ、長手方向の間欠位置に下方に開口するピン穴23bを有している。そして、その開口端23aに脚立用補助具4を着脱可能に取り付けるようにしている。
【0026】
脚立用補助具4は、二股に分岐した基端側に前記パイプ材23の開口端23aに嵌入可能な差込部41を有し、先端側に平面視ほぼY字をなすように部分円弧状に拡開する係合部42を有したもので、その差込部41に、前記パイプ材23のピン穴23bと同一ピッチのピン穴41aが開口し、係合部42の外面には連続的な波状ないし鋸歯状の凹凸部42aが形成されている。勿論、凹凸部は横ずれを防止できればこのような形状に限られるものではない。
【0027】
そして、この脚立用補助具4の差込部41をパイプ材23の開口端23aより内部に差込み、所要の差込深さでピン穴41a、23bに図示しないピンを差し込むことによって、図1に示すように、はしご部1から離れる方向に向けて脚立用補助具4をほぼ水平に突出させて取付、固定し得るようにしている。突出量はどの位置のピン穴41a、23b同士を合致させるかによって調整可能であり、ピン穴の数を増やせばより多段階な調節が可能になる。
【0028】
このようにして脚立本体Aに脚立用補助具4を取り付け、支柱3をはしご部1側へ折り畳んだ状態若しくは折り畳む方向に移動させた状態で、この脚立を作業対象物である樹木B等に近づけると、図3に示すように係合部42が作業対象物である樹木B等の幹bに優先的に係り合い、この係合部42を介してはしご部1を、作業対象物である樹木B等の幹bに少なくとも横ずれしないように立て掛けることが可能となる。
【0029】
このように、はしご部1を作業対象物である樹木B等に対峙させて配置しても支柱3が樹木B等と干渉することが回避されるため、図5のものに比してはしご部1を樹木B等により適度に近づけて配置することができ、はしご部1に登った際に樹木Bの幹b等との間に適切な間合いを確保して作業を行うことができる。しかも、はしご部1に登った作業者は幹bと対峙する姿勢をとるため、図6の状態とは異なり正面及び左右の三方に広角に作業範囲が確保されることになり、また図7に示したように登るにつれて作業者の体が幹bから外れる不都合や、下の枝brが邪魔になる不都合も有効に回避することができる。
【0030】
特に、係合部42を備えた脚立用補助具4を、頂部2の一部に脱着可能に取り付け得るようにしているので、不要なときは脚立用補助具4を撤去して脚立本体Aを図4及び図5に示した通常の三脚脚立として使用し、必要な時は脚立本体Aに脚立用補助具4を取り付けて図3に示したようにはしご的に使用することができる。また、頂部2の構造が同じであれば、高さの異なる三脚脚立をそれぞれ脚立本体Aとして同じ脚立用補助具4を使い回すことも可能となる。
【0031】
その際、はしご的に立て掛ける場合は、自立させる場合とは異なりそのままでは作業対象物との間合いを調整できないが、本実施形態では頂部2に対する脚立用補助具4の取付け位置を可変としていて、頂部2から脚立用補助具4の係合部42までの水平方向の距離を調節可能としているので、現場にて適切な間合いを確保することができる。
【0032】
とりわけ、作業対象物が樹木B等であり、係合部42が樹木B等の幹bの外周に沿って一部抱くように添接する湾曲状のものであるので、立て掛けた際の脚立全体の横ずれを適切に防止して、安定した使用状態を確保することができる。
【0033】
そして、この脚立用補助具4が、脚立本体Aの頂部2に対して脱着可能であり、頂部2から側方に延びて作業対象物に優先的に係り合う係合部42を有するものであるので、既存の脚立本体Aの頂部2にパイプ材23のような取付部が存する場合にはそのまま取り付ければよく、そのような部位が存しない場合にはパイプ材23などの取付部を付加するといった若干の改良を施した上で脚立用補助具4を取り付けることにより、本発明の三脚脚立を有効に構成することができる。
【0034】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0035】
例えば、脚立用補助具4の着脱構造は、パイプ同士の嵌合構造の他に、クランプやベルト等の固定具を用いた固定構造にしても構わない。
【0036】
また、係合部が頂部に一体に組み込まれ、通常の脚立として使用する際は邪魔にならない部位に位置し、必要に応じて頂部の側方に持ち出し得るように構成することも有効である。以下、図8、図9に基づいて説明するが、これらの図においては、後述する図10を含めてはしご部が図示省略してある。
【0037】
例えば、図8に示すものは、枠フレーム21のうち2辺を枠から突出させて開口端21pとし、この開口端21pに、湾曲する係合部142の両端から同じ方向に屈曲させた基端142aを差し込むようにしたもので、必要に応じて同図(a)から同図(b)に示すように係合部142を引き出し、所定の引き出し位置に固定できるようにしている。このような一体組み込み式のものは、常に係合部142が脚立本体に付帯するため、取り扱いに便利となる。
【0038】
図9は、一体組み込み式の他の変形例を示すものである。この三脚脚立は、頂部2を構成する枠フレーム21の一部21xが架材22xとともに同図(a)→同図(b)、同図(b)→同図(a)のように回転可能となっており、架材22xは通常位置で枠フレーム21の内側に邪魔にならないように収まって作業者が腰を下ろすことができる環境を与えるが、架材22xを回転させると、ほぼ180°回転した際に適宜のロック構造あるいはラッチ構造によりその位置に固定されるようにしている。架材22xの一部は湾曲した係合部22yを兼ねており、上記の回転によりこの係合部22yが頂部2の側方に持ち出されて、上記実施形態と同様に幹に係合してはしご部を横ずれしないように立て掛け得るようにしている。この場合も、図(b)に想像線で示すように、係合部22yの位置を突没動作等を通じて可変とすることによって幹との間合いを調整できるように構成しておくことが望ましい。この係合部21yにも凹凸部を設けておくことが好ましいのは言うまでもない。
【0039】
さらに、図10に示すように、頂部を構成する枠フレーム21それ自体の一部を支柱3の回転動作を妨げないように変形させて係合部21zとし、はしご的に使用する際にその係合部21zを優先的に幹などに係合させるようにすることも有効となる。この係合部21zにも凹凸部を設けておくことが望ましいのは上記と同様である。
【0040】
その他、各部の具体的な形状や構造、大きさなども、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の頂部付近を示す部分底面図。
【図3】同実施形態の使用状態を示す側面図。
【図4】従来の三脚脚立を示す斜視図。
【図5】同三脚脚立の使用状態を示す側面図。
【図6】同三脚脚立の他の使用状態を示す図。
【図7】同三脚脚立の他の使用状態を示す図。
【図8】本発明の他の実施形態を示す図。
【図9】本発明のさらに他の実施形態を示す図。
【図10】本発明の上記以外の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1…はしご部
2…頂部
3…支柱
4…脚立用補助具
42、22y、21z…係合部
A…脚立本体
B…作業対象物(樹木)
b…幹


【特許請求の範囲】
【請求項1】
はしご部と、このはしご部の上端側に位置する頂部と、この頂部からはしご部とは異なる方向に延びる支柱とを備え、支柱がはしご部に対して折り畳み、展開可能に構成された脚立本体に対して、前記頂部に、支柱をはしご部側へ折り畳んだ状態若しくは折り畳む方向に移動させた状態で作業対象物に優先的に係り合う係合部を設け、この係合部を介してはしご部を作業対象物に少なくとも横ずれしないように立て掛け得るように構成したことを特徴とする三脚脚立。
【請求項2】
係合部を備えた脚立用補助具を、頂部の一部に脱着可能に取り付け得るようにしている請求項1記載の三脚脚立。
【請求項3】
頂部に対する脚立用補助具の取付位置が可変であって、頂部から脚立用補助具の係合部までの距離を調節可能としている請求項2記載の三脚脚立。
【請求項4】
係合部が頂部に一体に組み込まれ、通常の脚立として使用する際は邪魔にならない部位に位置し、必要に応じて頂部の側方に持ち出し得るようにしている請求項1記載の三脚脚立。
【請求項5】
作業対象物が樹木であり、係合部が樹木の幹の外周に沿って一部抱くように添接する湾曲状若しくは屈曲状のものである請求項1〜4何れかに記載の三脚脚立。
【請求項6】
請求項2又は3記載の三脚脚立を構成するものであって、脚立本体の頂部に対して脱着可能であり、頂部から側方に延びて作業対象物に優先的に係り合う係合部を有することを特徴とする脚立用補助具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−303694(P2008−303694A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154532(P2007−154532)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(507193467)
【Fターム(参考)】