説明

三軸試験装置および三軸試験装置用プログラム

【課題】 簡易な構成で、不飽和土などに対しても液状化試験を行うことができる三軸試験装置を提供する。
【解決手段】 被試験体Mに垂直方向の応力を繰返し載荷する繰返し軸荷重載荷シリンダ23と、被試験体Mに水平方向の応力を載荷する作用水22と、被試験体Mに作用している実応力値を一定時間間隔毎に測定する測定ユニット3と、作用水22による静水圧を制御する側圧制御ユニット4とを備える。測定ユニット3によって測定された垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とに基づいて、被試験体Mに作用している平均主応力が一定であるか否かを演算し、一定でない場合には平均主応力が一定になるように側圧制御ユニット4によって作用水22の静水圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の液状化特性などを評価するために、被試験体に繰返し応力を与える三軸試験装置に関し、特に、被試験体が不飽和土などであっても適用可能な三軸試験装置および、三軸試験装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の液状化特性などを評価するための試験装置として、地盤のモデルである被試験体に繰返し応力を与える動的(繰返し)三軸試験装置が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。この動的三軸試験装置は、完全飽和状態である飽和土(土粒子骨格とその間隙を満たす水とからなる二相媒体構成の土)を被試験体とし、等方な拘束圧によって被試験体を圧密させた後に、非排水状態で垂直方向に一定振幅の応力(以下、適宜「軸載荷応力」という)を繰返し与える。これにより、被試験体内にせん断応力を作用させて、被試験体を液状化させるものである。ところで、実際の地震などにおいては、地盤中の平均主応力が一定である。これに対し、上記のような動的三軸試験装置による試験では、載荷中の平均主応力が絶えず変動することになるが、被試験体がほぼ完全飽和状態であれば、軸載荷応力はほぼ間隙水に伝わり被試験体中の有効応力は変化しない、と想定することが可能である。すなわち、上記のような動的三軸試験装置による試験では、軸載荷応力は液状化現象には無関係な応力成分とみなし、被試験体内の45度面上に加わる同じ大きさのせん断応力のみによって液状化現象が生じる、と想定しているものである。
【非特許文献1】「(社)地盤工学会編 土質試験の方法と解説」、2001年、p.635−657
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、従来は液状化の範囲外(対象外)と考えられていた密な材料や不飽和土(土粒子骨格とその間隙を満たす水と空気とからなる三相媒体構成の土)などについても、液状化特性に着目した研究が行われている。このような密な材料や不飽和土などを被試験体として液状化現象を上記のような動的三軸試験装置によって再現しようとする場合、次のような問題が生じる。すなわち、密な材料においては、低拘束圧(破壊時の最大応力傾角面の垂直応力、平均主応力または最小主応力)下での圧縮応力が有効拘束圧を上回る場合に、被試験体に絶対的な引張応力が作用するため、実験が困難になる場合が多い。また、不飽和土では、軸載荷応力が完全に間隙水圧に転化されずに有効応力が変化し、液状化が軸載荷応力による繰返しせん断応力のみによって生じているのか否かが判断できない。
【0004】
このため、密な材料や不飽和土などの液状化特性を評価するには、繰返し載荷中の平均主応力を一定に保つ必要がある。そして、平均主応力を一定に保ちながら軸載荷応力を繰返し与える方法として、例えば、被試験体への軸載荷応力と側圧(水平方向の応力)とを同時に変動させて、繰返し載荷中の平均主応力を一定に保つ試験方法が考えられるが、一般に大規模な油圧システムなどを必要とし、試験装置が複雑で高価となる。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成で、不飽和土などに対しても液状化試験を行うことができる三軸試験装置および三軸試験装置用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、被試験体の液状化特性などを評価するために、前記被試験体に繰返し応力を与える三軸試験装置であって、前記被試験体に垂直方向の応力を繰返し載荷する軸圧載荷手段と、前記被試験体に水平方向の応力を載荷する側圧載荷手段と、前記被試験体に作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とを一定時間間隔毎に測定する応力測定手段と、前記応力測定手段によって測定された前記垂直方向の実応力値と前記水平方向の実応力値とに基づいて前記被試験体に作用している平均主応力が一定であるか否かを演算し、一定でない場合には前記平均主応力が一定になるように前記側圧載荷手段による応力を制御する演算制御手段と、を備えたことを特徴としている。
(作用)
応力測定手段によって、被試験体に作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とが一定時間間隔毎に測定され、被試験体に作用している平均主応力が一定でない場合には、演算制御手段によって、側圧載荷手段による被試験体への水平方向の応力が制御され、被試験体に作用する平均主応力が一定となる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の三軸試験装置において、前記演算制御手段は、前記垂直方向の実応力値に対して前記平均主応力が一定になるのに要する水平方向の理論応力値を演算し、この理論応力値と前記水平方向の実応力値とが同値でない場合にその応力差を前記側圧載荷手段による応力に加減して制御することを特徴としている。
(作用)
演算制御手段によって、垂直方向の実応力値に対する水平方向の理論応力値が演算され、この理論応力値と水平方向の実応力値とが同値でない場合には、その応力差が側圧載荷手段による応力に加減制御され、被試験体に作用する平均主応力が一定となる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の三軸試験装置において、前記演算制御手段による演算、制御の時間間隔が、前記応力測定手段による測定時間間隔以上でありかつ選択可能であることを特徴としている。
(作用)
応力測定手段によって測定された実応力値のなかから、選択された時間間隔で測定された実応力値に基づいて演算制御手段による上記のような演算、制御が行われる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、被試験体に垂直方向と水平方向との応力を与える三軸試験装置を制御するための三軸試験装置用プログラムであって、コンピュータを、前記被試験体に作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とを一定時間間隔毎に前記三軸試験装置から取得する応力取得手段と、取得した前記垂直方向の実応力値と前記水平方向の実応力値とに基づいて前記被試験体に作用している平均主応力が一定であるか否かを演算し、一定でない場合には前記平均主応力が一定になるように前記三軸試験装置による前記被試験体への水平方向の応力を制御する演算制御手段として機能させるための三軸試験装置用プログラムである。
(作用)
応力取得手段によって、被試験体に作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とが一定時間間隔毎に三軸試験装置から取得され、被試験体に作用している平均主応力が一定でない場合には、演算制御手段によって、三軸試験装置による被試験体への水平方向の応力が制御され、被試験体に作用する平均主応力が一定となる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、被試験体に作用する平均主応力が一定となるため、飽和土のみならず不飽和土などに対しても液状化試験を行うことができる。また、軸圧載荷手段は、従来の動的三軸試験装置と同様に、被試験体に応力を繰返し載荷するだけであり、演算制御手段によって応力が制御されるのは側圧載荷手段による応力のみである。すなわち、被試験体への垂直方向の応力と水平方向の応力とを同時に制御(変動)させる必要がないため、構成が簡易となり(単純化され)安価となる。しかも、従来の動的三軸試験装置に演算制御手段を設けることで本発明の三軸試験装置を構成することができるため、従来の動的三軸試験装置を不飽和土などの液状化試験に使用することが容易に可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、演算制御手段が、平均主応力が一定になるのに要する水平方向の理論応力値を演算し、この理論応力値と水平方向の実応力値との応力差だけ側圧載荷手段を制御すればよいため、早期に(瞬時に)平均主応力を一定にすることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、被試験体の材質や大きさなどに応じて演算制御手段による演算、制御の時間間隔を選択することで、応力測定手段による測定時間間隔を変更することなく、被試験体の材質や大きさなどに応じて適正に演算、制御すること、すなわち平均主応力を一定にするができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に、被試験体に作用する平均主応力が一定となるため、飽和土のみならず不飽和土などに対しても液状化試験を行うことができる。また、従来の動的三軸試験装置に本プログラムを設けるだけで、不飽和土などに対しても液状化試験を行うことができるため、構成が簡易で安価であり、しかも、従来の動的三軸試験装置を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係わる三軸試験装置1を示す概略構成図である。この三軸試験装置1は、被試験体Mの液状化特性などを評価するために被試験体Mに繰返し応力を与える装置であって、主として、装置本体2と、測定ユニット3(応力測定手段)と、側圧制御ユニット4(側圧載荷手段)と、ホストコンピュータ5(演算制御手段)とを備えている。
【0016】
装置本体2は、広く一般に使用されている動的三軸試験装置と同等の構成であるため、ここでは詳細な説明を省略するが、概略以下のような構成である。すなわち、容器状のセル21内の中央部に、ゴムスリーブ(図示せず)で覆われた被試験体Mが配設され、この被試験体Mとセル21との間に作用水22が満たされている。そして、この作用水22に圧力が加えられ、その静水圧によって被試験体Mに水平方向の応力が載荷されることで、側圧載荷手段が構成されている。セル21の上方には、繰返し軸荷重載荷シリンダ23(軸圧載荷手段)が配設され、そのロッド231が一定振幅で上下動することで、被試験体Mに垂直方向の振幅応力が繰返し載荷されるものである。また、装置本体2による載荷方法は空圧式で、載荷条件は繰返し非排水正弦波載荷である。
【0017】
測定ユニット3は、軸荷重計31と、側圧計32と、動ひずみアンプ33とを備えている。軸荷重計31は被試験体Mの垂直方向のひずみを測定し、側圧計32は被試験体Mの水平方向のひずみを測定するものであり、測定されたひずみにより、後述するようにして被試験体Mに作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とが算出される。動ひずみアンプ33は、軸荷重計31と側圧計32とによる測定結果をアナログ信号として増幅する増幅器であり、その増幅結果がホストコンピュータ5のA/Dボード(アナログ/デジタル変換ボード)に転送されるようになっている。また、このような測定ユニット3による測定(サンプリング)は一定時間間隔毎に行われ、本実施形態では、1チャネル(1測定)当り10μ秒間隔という高速で測定される。
【0018】
側圧制御ユニット4は、電気空圧変換器41(EP変換器)と圧力変動水槽42とを備えている。電気空圧変換器41は、ホストコンピュータ5からの制御情報である電気信号を空気圧信号に変換する信号変換器であり、圧力変動水槽42は、電気空圧変換器41からの空気圧信号に基づいて水圧が変動する水槽であり、装置本体2のセル21(作用水22)と接続されている。そして、ホストコンピュータ5から電気空圧変換器41に電気信号が送られると、電気空圧変換器41から圧力変動水槽42に空気圧信号が送られて圧力変動水槽42の水圧が変動する。この変動に伴って作用水22の静水圧が変動し、被試験体Mに作用する水平方向の応力が変動する(制御される)ものである。
【0019】
ホストコンピュータ5は、被試験体Mに作用する平均主応力が一定になるように演算、制御する演算制御手段としての演算制御タスク51(三軸試験装置用プログラム)を備えている。この演算制御タスク51は、測定ユニット3によって測定された垂直方向の実荷重値を被試験体Mの断面積で除した実応力値(ひずみ)と水平方向の実応力値(ひずみ)とに基づいて被試験体Mに作用している平均主応力が一定であるか否かを演算し、一定でない場合には平均主応力が一定になるように装置本体2の作用水22の静水圧を制御するものであり、図2に示すフローチャートに基づいている。まず、測定ユニット3による測定結果を上記の一定時間間隔毎にA/Dボードから読み取る(応力取得手段として測定結果を取得する)ことで高速データサンプリングし(ステップS1)、演算制御タイミングであるか否かを判断する(ステップS2)。ここで演算制御タイミングとは、演算、制御を行う時間間隔であり、測定ユニット3による測定時間間隔以上であり、かつ後述するように試験員などによって選択、設定された値である。つまり、1チャネル当り10μ秒間隔という高速でデータサンプリングされ、そのサンプリング間隔のうちの一定時間間隔が演算制御タイミングとなる。そして、演算制御タイミングでない場合には、ホストコンピュータ5のハードディスクに測定データを記憶し(ステップS3)、演算制御タイミングである場合には、被試験体Mに作用している応力状態等を演算する(ステップS4)。
【0020】
この演算は、次のようにして行われる。まず、測定結果である垂直方向のひずみと水平方向のひずみとに基づいて、被試験体Mに作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とを算出する。すなわち、垂直方向のひずみと水平方向のひずみとを主軸の方向の主ひずみとし、三軸方向の主応力状態における主ひずみと主応力との関係式から、垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とを算出する。次に、算出した垂直方向の実応力値に対して、平均主応力が一定になるのに要する水平方向の理論応力値を算出する。例えば、図3に示すように、垂直方向の実応力値がσ(図3(a)参照)からσ+σ/2(図3(b)参照)に変動した場合には、その変動分であるσ/2を減じた値であるσ−σ/2が理論応力値となる。同様に、垂直方向の実応力値がσからσ−σ/2(図3(c)参照)に変動した場合には、その変動分であるσ/2を加えた値であるσ+σ/2が理論応力値となり、これにより平均主応力が一定値σに保たれる。
【0021】
続いて、これらの演算結果をメモリに記憶し(ステップS5)、被試験体Mに作用する平均主応力が一定となる条件を満たすか否かを判断する(ステップS6)。すなわち、ステップS4で算出した水平方向の実応力値と理論応力値とが同値である場合には平均主応力一定の条件を満たし、同値でない場合には条件を満たさないと判断する。そして、条件を満たす場合には、ハードディスクに演算結果を記憶し(ステップS8)、ステップS9に進む。一方、条件を満たさず水平方向の実応力値が理論応力値よりも小さい場合(ステップS7で「Yes」の場合)には、理論応力値から実応力値を減じた応力差を加える指令の電気信号を電気空圧変換器41に送信(出力)する(ステップS10)。これにより、圧力差だけ圧力変動水槽42が加圧され、作用水22の静水圧が上昇して、被試験体Mに作用する水平方向の応力が上がる。また、水平方向の実応力値が理論応力値よりも大きい場合(ステップS7で「No」の場合)には、実応力値から理論応力値を減じた応力差を減じる指令の電気信号を電気空圧変換器41に送信する(ステップS11)。これにより、圧力差だけ圧力変動水槽42が減圧され、作用水22の静水圧が降下して、被試験体Mに作用する水平方向の応力が下がる。そして、ステップS10またはステップS11が完了した後にステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0022】
一方、ステップS3またはステップS8からステップS9に進むと、試験の終了条件(被試験体Mに液状化現象が発生した場合など)を満たすか否かを判断し、終了条件を満たす場合には本タスク51を終了する。また、終了条件を満たさない場合には、測定ユニット3による測定結果や、被試験体Mに作用している実応力値や平均主応力値などの物理値をホストコンピュータ5のディスプレイに表示する(ステップS12)。その後、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返すものである。
【0023】
以上、図2に示すフローチャートに基づいて演算制御タスク51の処理フローを説明したが、この演算制御タスク51は、ホストコンピュータ5のCPU(Central Processing Unit)のメインプログラムによって一定時間間隔毎に起動されるサイクルタスクとなっている。すなわち、10μ秒毎に起動され、起動されると上記ステップS1の測定結果の読み取りを行い、続く処理(ステップS2〜S12)が終了すると本タスク51を終え、次の起動を待って同様の処理を繰り返すものである。
【0024】
また、ホストコンピュータ5は、上記の演算制御タイミングや試験条件などのパラメータを選択、設定可能となっており、選択、設定されたパラメータに基づいて、装置本体2や演算制御タスク51などが駆動、制御されるようになっている。
【0025】
次に、このような構成の三軸試験装置1の作動などを図4に基づいて説明する。
【0026】
まず、ホストコンピュータ5に対して、制御条件の設定と、校正係数の読込みとが行われる(ステップS21)。すなわち、試験員などによってホストコンピュータ5に、被試験体Mに作用する平均主応力を一定にして動的三軸試験(平均主応力一定繰返し非排水三軸試験)を行うことが設定されるとともに、測定ユニット3の校正係数(測定データの変換定数)などが入力される。次に、ホストコンピュータ5に、繰返し軸荷重載荷シリンダ23による振幅周波数(載荷周波数f)などの制御パラメータと、演算制御タイミングとが設定、入力される(ステップS22)。続いて、ホストコンピュータ5に対して試験開始が指示される(ステップS23)と、試験開始時における被試験体Mの物理値や作用水22による静水圧値などの試験初期値が収録(記憶)され(ステップS24)、その後、上記の演算制御タスク51が起動される(ステップS25)。そして、演算制御タスク51によって上記のようにして、被試験体Mに作用する平均主応力が一定になるように作用水22による静水圧(被試験体Mへの水平方向の応力)が制御され、動的三軸試験が行われるものである。
【0027】
以上のように、本三軸試験装置1によれば、被試験体Mに作用する平均主応力が一定となるため、被試験体Mが飽和土に限らず不飽和土や密な材料などであっても、液状化試験を行うことができる。すなわち、被試験体Mへの水平方向の応力が制御されず当該応力が一定であると、例えば、図5に示すように、垂直方向の実応力値がσ(図5(a)参照)からσ+σ/2(図5(b)参照)に変動した場合、被試験体Mに作用する平均主応力はσ+σ/2となる。一方、垂直方向の実応力値がσからσ−σ/2(図5(c)参照)に変動した場合、被試験体Mに作用する平均主応力はσ−σ/2となり、垂直方向の実応力値の変動に伴って平均主応力が変動することになる。これに対し、本三軸試験装置1によれば、垂直方向の実応力値の変動に応じて被試験体Mへの水平方向の応力が制御され、上記のようにして(図3参照)、平均主応力が一定に保たれるものである。
【0028】
ここで、本三軸試験装置1によって平均主応力が一定に保たれることを示す試験結果について説明する。図6は、密な材料である豊浦砂を被試験体Mとして、載荷周波数fを変えて以下の条件で三軸試験を行った際の平均主応力の測定結果を示す。
・被試験体Mの相対密度D:70%
・被試験体Mの作成方法:空中落下(AP)法
・有効拘束圧σ:49kPa
・脈動圧(変動圧)σ/2:0.013σ
・バックプレッシャーBP:196kPa
・載荷周波数f:0.025Hz、0.05Hz、0.1Hz
この測定結果から、載荷周波数fが変化しても、平均主応力がほぼ一定に保たれることが確認される。また、図7は、載荷周波数fを0.05Hzとし、上記の条件で三軸試験を行った際の偏差応力(垂直方向の実応力値から拘束圧を減じた応力)と、制御された水平方向の応力(側圧)との測定結果を示す。この測定結果から、側圧がほぼ理論値に近く、かつ偏差応力と側圧との位相差がほとんどないことが確認される。
【0029】
さらに、図8は、飽和状態である飽和豊浦砂を被試験体Mとして、本三軸試験装置1による平均主応力一定三軸試験と、JGS(社団法人地盤工学会)に規定されている側圧一定三軸試験とによって得られた液状化強度曲線(液状化現象が発生する繰返し載荷回数Nと繰返し応力比σ/2σとの関係を示す曲線)を示す。ここで、被試験体Mが飽和状態であるため、両液状化強度曲線は近似すべきである。これに対し、本三軸試験装置1による平均主応力一定三軸試験での液状化強度が、JGS規定の側圧一定三軸試験による液状化強度に近く(近似し)、かつJGSで規定する範囲内に収まっていることが確認される。
【0030】
また、装置本体2は従来から既存の動的三軸試験装置と同等の構成であり、演算制御タスク51によって応力が制御されるのは水平方向の応力である静水圧のみである。すなわち、被試験体Mへの垂直方向の応力と水平方向の応力とを同時に制御(変動)させる必要がないため、構成が簡易となり(単純化され)安価となる。しかも、従来の動的三軸試験装置に側圧制御ユニット4と演算制御タスク51とを設けることで本三軸試験装置1を構成することができる。このため、従来の動的三軸試験装置を不飽和土などの液状化試験にも活用することが容易に可能となる。
【0031】
さらに、演算制御タスク51では、平均主応力が一定になるのに要する水平方向の理論応力値を算出し、この理論応力値と水平方向の実応力値との応力差だけ圧力変動水槽42(作用水22の静水圧)を制御する。このため、例えば圧力変動水槽42を一定応力毎に段階的に制御(ステップ制御)する場合に比べて、早期に(瞬時に)平均主応力を一定にすることが可能となる。また、演算制御タイミングや試験条件などのパラメータを選択、設定可能なため、被試験体Mの材質や大きさなどに応じてパラメータを選択、設定することで、測定ユニット3による測定時間間隔などを変更することなく、被試験体Mの材質や大きさなどに応じた適正で、かつ高速、高精度な演算、制御を行い、平均主応力を一定にするができる。さらには、装置本体2が従来の動的三軸試験装置と同等の構成であるため、繰返し中空ねじりせん断試験装置とは異なり、れき(小石)などを含む大きな被試験体Mに対しても、試験を行うことができる。
【0032】
以上、この発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、本実施形態では、電気空圧変換器41および圧力変動水槽42を介して作用水22の静水圧を変動させて、被試験体Mに作用する水平方向の応力を制御しているが、セル21内の空圧(作用水22への作用圧)を直接制御するようにしてもよい。また、電気空圧変換器41の動作遅れを補正することで、より精度高くかつ高速に平均主応力を一定にすることが可能となる。
【0033】
ところで、上記のような演算制御タスク51を三軸試験装置用プログラムとして記憶媒体に記憶させてもよい。そして、この三軸試験装置用プログラムを従来の動的三軸試験装置にインストールし、側圧制御ユニット4を設けることで、従来の動的三軸試験装置を用いて不飽和土などに対しても液状化試験を行うことができる。しかも、三軸試験装置用プログラムをインストールし、側圧制御ユニット4を設けるだけでよいため、構成が簡易であり、費用も低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係わる三軸試験装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる三軸試験装置の演算制御タスクのフローチャートである。
【図3】垂直応力と水平応力とを変化させた場合における被試験体内の応力状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わる三軸試験装置の作動フローを示すフローチャートである。
【図5】水平応力を一定とし、垂直応力のみを変化させた場合における被試験体内の応力状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態において、豊浦砂を被試験体として、載荷周波数を変えて三軸試験を行った際の平均主応力の測定結果を示す図であり、(a)は載荷周波数が0.025Hz、(b)は載荷周波数が0.05Hz、(c)は載荷周波数が0.1Hzの場合を示す。
【図7】本発明の実施の形態において、載荷周波数を0.05Hzとして三軸試験を行い、経過時間毎の偏差応力と側圧とを測定した結果を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態において、飽和豊浦砂を被試験体として、平均主応力一定三軸試験と側圧一定三軸試験とによって得られた液状化強度曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 三軸試験装置
2 装置本体
21 セル
22 作用水
23 繰返し軸荷重載荷シリンダ(軸圧載荷手段)
231 ロッド
3 測定ユニット(応力測定手段)
31 軸荷重計
32 側圧計
33 動ひずみアンプ
4 側圧制御ユニット(側圧載荷手段)
41 電気空圧変換器
42 圧力変動水槽
5 ホストコンピュータ(演算制御手段)
51 演算制御タスク(三軸試験装置用プログラム)
M 被試験体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体の液状化特性などを評価するために、前記被試験体に繰返し応力を与える三軸試験装置であって、
前記被試験体に垂直方向の応力を繰返し載荷する軸圧載荷手段と、
前記被試験体に水平方向の応力を載荷する側圧載荷手段と、
前記被試験体に作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とを一定時間間隔毎に測定する応力測定手段と、
前記応力測定手段によって測定された前記垂直方向の実応力値と前記水平方向の実応力値とに基づいて前記被試験体に作用している平均主応力が一定であるか否かを演算し、一定でない場合には前記平均主応力が一定になるように前記側圧載荷手段による応力を制御する演算制御手段と、を備えたことを特徴とする三軸試験装置。
【請求項2】
前記演算制御手段は、前記垂直方向の実応力値に対して前記平均主応力が一定になるのに要する水平方向の理論応力値を演算し、この理論応力値と前記水平方向の実応力値とが同値でない場合にその応力差を前記側圧載荷手段による応力に加減して制御することを特徴とする請求項1に記載の三軸試験装置。
【請求項3】
前記演算制御手段による演算、制御の時間間隔が、前記応力測定手段による測定時間間隔以上でありかつ選択可能であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の三軸試験装置。
【請求項4】
被試験体に垂直方向と水平方向との応力を与える三軸試験装置を制御するための三軸試験装置用プログラムであって、コンピュータを、
前記被試験体に作用している垂直方向の実応力値と水平方向の実応力値とを一定時間間隔毎に前記三軸試験装置から取得する応力取得手段と、
取得した前記垂直方向の実応力値と前記水平方向の実応力値とに基づいて前記被試験体に作用している平均主応力が一定であるか否かを演算し、一定でない場合には前記平均主応力が一定になるように前記三軸試験装置による前記被試験体への水平方向の応力を制御する演算制御手段として機能させるための三軸試験装置用プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−225405(P2007−225405A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46139(P2006−46139)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【出願人】(000210908)中央開発株式会社 (25)
【Fターム(参考)】