説明

上皮分化マイクロRNAシグネチャーとその使用

本発明は、ヒト上皮のサンプル中のヒト角化細胞の上皮分化の状態を決定するための方法であって、前記角化細胞中のhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを決定し、選択したmiRNAの発現レベルを、好ましくは同一の株又は同一の集団から得る、未分化角化細胞、又は分化上皮角化細胞中で選択されたmiRNAの発現の平均レベルと比較することを含む方法に関する。本発明はまた上皮分化の状態を決定するための方法並びに薬学的又は化粧品組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品の分野に関連し、皮膚に関する。より一般的には、皮膚の上皮分化の状態の特徴付けと上皮分化に関連する疾患、病気又は病状の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮は、環境と負荷に対する保護障壁として機能する多層上皮である。それは主として上皮の最深層で増殖し、次いで分化を開始し、上皮の深部から表面に移動する角化細胞からなる。上皮の表面において、角質細胞として知られる最も分化した角化細胞は、高度に保護的な角質層を構成する。このように、上皮は、基底層の中に置かれる細胞増殖のシートと、また、結果として高分化保護構造である角質層を形成する、中間層における細胞分化シートの双方である。完全な周期は約20日間である。そのプログラムは、逐次的、協調的な様式で、連続的に活性化し次いで阻害した多数の特定の遺伝子の発現に対応する。そのプログラムは、多数の転写因子、酵素、脂質及び構造タンパク質を含む。多数の増殖因子、カルシウム、ビタミンA及びD3誘導体は、角化細胞増殖と分化の重要なレギュレータである。特定の生理学的又は病理学的状態、及び皮膚の表面に対する又は血液循環を介した特定の負荷でさえ、一時的に空間的に調整された上皮分化のプロセスの脱制御につながる。
【0003】
上皮分化プログラムの修正に関する皮膚病において、乾癬、アトピー性皮膚炎、座瘡、魚鱗癬、ネザートン症候群、毛孔性紅色粃糠疹、毛状角化症、ダリエー病、掌蹠角皮症及び汗孔角化症のように遺伝的であってもなくてもよい[14−15]、多くの疾患が観察されている。
【0004】
上皮分化の修正に関連する更なる生理学的状況の例は、最終分化における例外を伴う年齢、及び障壁機能の減少[17]、上皮の恒常性の修正の段階によって特徴付けられる瘢痕化(過剰増殖、移動、再上皮化及び最終分化の復元)、及び加齢又は冬期乾燥(乾燥皮膚、扁平蓄積過程)[18]である。
【0005】
言及され得る[19]上皮分化プロセスの障害を引き起こす外部因子による摂動の例は、太陽UV照射、熱、剥離剤、落屑剤、脱脂剤、又は機械的負荷への露出である。
【0006】
わずかな障害の場合、皮膚軟化剤と角質溶解薬が好ましい。このような治療は、増殖/分化のバランスに作用しないが、患者の病変を正常にすることを意図し、それらは通常不安定な効果のみを有する。
【0007】
更に深刻な障害については、角化細胞の増殖と分化を制御し得るレチノイン酸とその誘導体ビタミンD3が数年間使用されている。幾つかの場合、メトトレキサートとシクロスポリンがまた好ましい。このような治療の全ては主要な副作用を有し、患者にとって非常に負担となる。
【0008】
皮膚の上皮分化又は「再構築皮膚」の培養上皮の状態を特徴付けるためか又は上皮分化プロセスを調節し得る分子の評価を可能にするためのに、以下の技術ツールが現在利用可能である:
上皮分化の段階の形態的分析と生化学的マーカー(免疫組織化学)。この技術は、非常に一般的に(局所組織学)、又はマーカーによるマーカー(免疫組織化学)によって、分化における既知のタンパク質主働筋を、分析するためだけに使用され得る。肌の状態のシグネチャーを産生し得る。それは扱いにくく、調査におけるマーカーに特異的な抗体のような利用可能な特定のツールを有する必要とするが、必ずしもそうではない。更に、即時定量的な技術ではない;
トランスクリプトーム解析:この方法は健常又は疾患粗スキーの分子シグネチャーを得るために広く使用される。この技術は、サンプルのmRNA転写物の発現解析に基づく。それは、12000遺伝子までを含み得るDNAチップを使用し、非常に一般的であり得る。しかし、それは、特に高価な装置(アフィメトリクス(商標)システム)を必要とし、幾つかの欠点があるが、何よりもしばしば扱いが困難で、高性能のバイオインフォマティクスサービスによって処理しなければならない非常に膨大な量のデータを生じる;
プロテオーム解析:これは、組織に存在する全てのタンパク質の一般的な位置の広範囲の画像を提供する。それは複数の二次元電気泳動ゲル技術を使用し、したがって、非常に実行しづらい。更に、タンパク質の正確な同定は、補足の工程を必要とし、特殊技術と操作の専門性を要する非常に高価な装置を必要とする。
【0009】
このように、皮膚の上皮分化と培養上皮の状態を速やかに簡便に特徴付けることができる方法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、上皮分化の状態を特徴付けるために使用され得るだけでなく、前記分化の状態の脱制御に関連する疾患の種々の治療を構想するために使用し得る、上皮分化のマイクロRNAシグネチャーの存在を完全に予想外に明らかにしている。
【0011】
1993年に発見されが、マイクロRNA(miRNA)は、RNA干渉に含まれる短い内在性RNAである:それらはメッセンジャーRNA(mRNA)を標的化し得、それらを分解し、その翻訳を阻害する。このようなマイクロRNAは従って細胞における非常に重要な制御機能を担っている。更に、それらは、調節分子の最も豊富なクラスの1つを形成する。それらの起源は内在性であり、ゲノムにコードされたpri−miRNAに由来する。今日までに、約700個のヒトマイクロRNAが同定されている。それらの機能と標的は全てが明らかにされ、報告されているわけではない。
【0012】
それらは種々の細胞型路の調節に決定的な役割を果たし、ヒトの病理に含まれ得る。マイクロRNAは、発生、分化、増殖及びアポトーシスにおいて不可欠の役割を担う(総説については、[1]と[3]を参照されたい)。例として、ヒトにおいて、miR−17−5pとmiR−20は、増殖のレギュレータである[4];miR−223は、下流旧形成に含まれる[5]。
【0013】
miRNA発現の脱制御は、ヒト病理に寄与し得る。腫瘍サプレッサーとして、特定のmiRNAは機能し;他は癌遺伝子として機能する。
【0014】
現在皮膚、より好ましくはヒトの皮膚におけるmiRNAの研究は非常に少ない。
【0015】
動物の皮膚においては、発現したmiRNAは、マウスにおいてクローン化されている。それらは、上皮と毛皮の形態に重要な役割を果たす[8]。より最近では、miRANはヤギとヒツジにおける毛皮成長に含まれることが示されている[10]。非常に最近では、マウスの皮膚において、miRNAのmiR203は、細胞増殖能を減少することにより、上皮分化の誘導に重要な役割を果たすことが判明している[11]。
【0016】
ヒトにおいて、miRNAの発現は、正常皮膚において研究され、乾癬の皮膚と湿疹の皮膚と比較されている。miRNAのmiR203は、皮膚で高度に発現しており(他の組織と比較して)、角化細胞によってのみである。乾癬の皮膚で過剰発現しているmiRNAの1つとして判明している[12]。
【0017】
最終的に、ヒトにおいて、特定のmiRNA(miR−221とmiR−222)がメラノーマ進行の調節に含まれることが示されている[13]。
【0018】
幾つかのmiRNAについて、数十の標的遺伝子が存在することを想定して、本発明者は、
分化のマーカーとしてmiRNAを使用すること。メッセンジャーRNAと比較してそれらは非常に少数であることは、miRNAプロファイルが、慣例的な一般的なトランスクリプトーム方法よりもより単純、迅速及び安価に、位置について、又は組織について得ることができる;
上皮分化の障害に関連する良性又は深刻な疾患の治療の目的でモジュレータを同定するための上皮分化のmiRNA分子シグネチャーの使用。「モジュレータ」なる用語は、化学物質又は天然抽出物、複合体製剤、siRNA、antagomirのようなmiRNA阻害剤由来の物質だけでなく、光、皮膚における機械的効果、又は注射を用いた計測システムを意味する;
上皮分化又は増殖の疾患の美容又は治療的処置の目的でmiRNA又は前記miRNAのモジュレータの使用;
上皮分化の美容又は治療的処置の効果を評価するための前記miRNAシグネチャーの使用;
正常又は病的上皮の診断を実施するための上皮分化のmiRNA分子シグネチャーの使用
を提案する。
【0019】
この目的のため、発明者は特定の同定されたmiRNAの発現のアッセイを用いることを提案する。
【0020】
驚くべきことに、上皮角化細胞中のmiRNAの発現の系統的解析により、本発明者は上皮分化過程により、角質層の形成の結果となった場合、ヒトmiRNAのmiRNA−141、miR−148a、miR−182、miR−224、miR−26a、miR−26b、miR−361−5p、miR−425、miR−455−3p、miR−92bは、既知の上皮分化マーカーを発現せず、角質細胞を形成しない増殖性の未分化角化細胞と比較して分化上皮の角化細胞で過剰発現している。これらの10個のmiRNAは従って角化細胞分化の分子シグネチャーを表す。
【0021】
対照的に、高度未分化増殖性の角化細胞では、ヒトmiRNAのlet−7i、miR−22、miR−221、miR−222、miR−29a、miR−29b、miR−663、miR−30a、miR−30cが、分化上皮と比較して未分化角化細胞において過剰発現している。これらの9個のmiRNAは、対照的に著しい増殖に関連する上皮の分化の状態を表す。
【0022】
このように、本発明は、特に上皮分化の状態を評価又は特定するための、生理学的又は病理学的分化障害の新規な診断ツールとして、上皮分化の欠陥を訂正するための標的として又は上皮分化調節剤を評価するためのバイオマーカー及びスクリーニングツールとしての、上皮分化の前記miRNAシグネチャーと前記シグネチャーの種々の使用に関する。本発明はまた治療的及び化粧品適用における、特に組成物形態の前記シグネチャーのmiRNA、又は前記miRNAのモジュレータの使用に関する。
【0023】
より具体的には、本発明の文脈では、下の用語は以下の意味を有する:
マイクロRNA(又はマイクロRnA又はmiRNA):マイクロRNAは、約20から25ヌクレオチド長、より一般的には21から24ヌクレオチドの一本差RNAである。miRNAは遺伝子からmRNA転写後に作用するリプレッサーであり:実際、メッセンジャーRNAと対になって、タンパク質への翻訳を阻害又は抑制する。
【0024】
miRNAの産生は転写及び転写後調節の厳格な制御下にある。miRNAの遺伝子はRNAポリメラーゼIIによって「プリmiRNA」として知られる長い第一転写物又は前駆体の形態として転写される。前駆体miRNAは、クラス2RNAアーゼII(Drosha)によって細胞核中で酵素で切断され「プレmiRNA」を形成する。「プレmiRNA」は、約70ヌクレオチド長のRNAであり、配列の前半と後半の間の塩基対によって不完全なステムループに折りたたまれる。プレmiRNAは次いで別のヌクレアーゼ(Dicer)とTRBP(トランス活性化応答RNA結合タンパク質)とAgo2(Argonaute2)を含むRISC複合体(RNA誘導サイレンシング複合体)に結合する細胞質へ輸送される。結合の際、タンパク質Ago2は、miRnA前駆体の3’末端を切断し、これにより成熟miRNA二本鎖を生成する。miRNAの標的mRNAの特定の鎖のみが複合体中で維持される(熱動力学的反応);他方の鎖は除去され、分解される。
標的miRNAは次いでRISC複合体に搭載され、分解される。
【0025】
翻訳抑制は動物細胞で最も観察されるサイレンシング経路であり、近年の研究はmiRNAが標的RNAの量にまた影響を及ぼすことを示す。
【0026】
hsa−miRxx:これはヒトで同定されるmiRNAの命名である(hsaはホモサピエンスを意味する)。既知miRNAの全てについての配列は、miRBase又はマイクロRNAdbのようなベースに記録されており、それらはその固有のアクセス番号(xx)によって同定される。下のリストにおいて、hsa−miRxxの番号は、成熟miRNA配列を言及するために使用される。
【0027】
特に下のmiRNAは以下の配列を有する:
hsa−miR−141:成熟miRNA:UAACACUGUCUGGUAAAGAUGG(配列番号N°1)
hsa−miR−148a:成熟miRNA:UCAGUGCACUACAGAACUUUGU(配列番号N°2)
hsa−miR−182:成熟miRNA:UUUGGCAAUGGUAGAACUCACACU(配列番号N°3)
hsa−miR−224:成熟miRNA:CAAGUCACUAGUGGUUCCGUU(配列番号N°4)
hsa−miR−26a(hsa−miR−26a−1及びhsa−miR−26a−2):成熟miRNA:UUCAAGUAAUCCAGGAUAGGCU(配列番号N°5)
hsa−miR−26b:成熟miRNA:UUCAAGUAAUUCAGGAUAGGU(配列番号N°6)
hsa−miR−361−5p:成熟miRNA:UUAUCAGAAUCUCCAGGGGUAC(配列番号N°7)
hsa−miR−425:成熟miRNA:AAUGACACGAUCACUCCCGUUGA(配列番号N°8)
hsa−miR−455−3p:成熟miRNA:GCAGUCCAUGGGCAUAUACAC(配列番号N°9)
hsa−miR−92b:成熟miRNA:UAUUGCACUCGUCCCGGCCUCC(配列番号N°10)
hsa−let−7i:成熟miRNA:UGAGGUAGUAGUUUGUGCUGUU(配列番号N°11)
hsa−miR−22:成熟miRNA:AAGCUGCCAGUUGAAGAACUGU(配列番号N°12)
hsa−miR−221:成熟miRNA:AGCUACAUUGUCUGCUGGGUUUC(配列番号N°13)
hsa−miR−222:成熟miRNA:AGCUACAUCUGGCUACUGGGU(配列番号N°14)
hsa−miR−29a:成熟miRNA:UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA(配列番号N°15)
hsa−miR−29b:成熟miRNA:UAGCACCAUUUGAAAUCAGUGUU(配列番号N°16)
hsa−miR−663:成熟miRNA:AGGCGGGGCGCCGCGGGACCGC(配列番号N°17)
hsa−miR−30a:成熟miRNA:UGUAAACAUCCUCGACUGGAAG(配列番号N°18)
hsa−miR−30c:成熟miRNA:UGUAAACAUCCUACACUCUCAGC(配列番号N°19)
【0028】
「hsa」なる接頭辞は、時折本明細書の文脈で省略されている。しかし、上に記載の19個の同一のmiRNAを指定する。
【0029】
上皮分化(角質化又は角化):ヒト皮膚の連続再生を提供する上皮の現象。上皮分化は上皮分化の種々の段階を通過する、無核角膜細胞又は角質細胞への上皮の幹細胞の変形をを提供する全ての分子、生化学及び形態的現象を扱う。
【0030】
前記最終分化は環境に対する効果的な障壁を有する組織を提供する角質層のような特別な構造の構築を可能にする。上皮分化の間、上皮の最深層の角化細胞は、分割して2つの同一の娘細胞を生じ、形態的及び生化学的修飾を受ける間に、一方は他方がより上層である分化層に移動する間その場に残る。
【0031】
未分化(Non-differentiated)角化細胞(又は未分化(undifferentiated)角化細胞)、又は基底角化細胞(又は基底層):有糸分裂活性を有する、ケラチンK5とK14を発現する角化細胞
【0032】
分化角化細胞:有糸分裂活性をもはや有さず、特にケラチンK1とK10の誘導により最終分化を開始している角化細胞。
【0033】
Antagomir:これは新しいクラスの化学的に合成されたオリゴヌクレオチドである。それらは内在性miRNAの作用を不活化するために使用される。antagomirはAgo2による切断を阻害するための一以上の塩基修飾を伴う標的miRNAに完全に相補的な短い合成RNAである(antagomirがより分解に耐性であるために、別の修飾もまたさらに導入される)。
【0034】
Antagomirは頻繁に特定のmiRNAの活性を構造的に阻害するために使用される。多数のantagomirが報告されている。全てのmiRNAはantagomirによって特異的に阻害することが可能である。
【0035】
必要とされる唯一の情報は、前記miRNAの活性を阻害することが可能なantagomirを産生するための標的miRNAの配列の配列である。
【0036】
他のmiRNA阻害剤の例は、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiquon)又はキアゲンのmiScirpt miRNA阻害剤である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は上皮分化のmiRNAシグネチャー、したがって、増殖と分化のバランスを表すシグネチャーに関する。
【0038】
第一の態様では、より具体的には、本発明はヒト上皮のサンプル中のヒト角化細胞の上皮分化の状態を決定する方法に関する。このような方法は好ましくは前記角化細胞中の少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを決定するための工程を有する。
【0039】
本発明にしたがって、miRNAは、発明者によって同定された以下のmiRNA、すなわち、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される。これらの19個のmiRANは、本発明において、マイクロRNA又はmiRNAと称する。
【0040】
選択されたmiRNAの発現レベルは、未分化角質細胞、好ましくは培養下の未分化角化細胞、又は分化上皮角化細胞における前記miRNAの平均発現レベルと比較される。
【0041】
miRNAを検出及び定量するための多数の方法があり、当業者によく知られている。実施例3は、最も使用されている技術を詳述する。
【0042】
好ましくは、方法は、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも2個の異なるmiRNAのレベルを決定し、それら2個のレベルを、未分化角質細胞、特に培養下の未分化角化細胞中、又は分化上皮角化細胞中の対応する2個の選択したmiRNAの平均レベルと比較することを含む。
【0043】
その代わりに、方法は、本発明の19個のmiRNAのうち幾つか、例えば、少なくとも3若しくは5個、又は更に8、10、15個の発現レベルを決定するか、又は本発明の19個のmiRNAの発現レベルを決定さえし、そのように決定したレベルを、例えば、培養下の未分化角化細胞中、又は分化した角化細胞中の対応するmiRNA発現の平均レベルと比較することを含み得る。
【0044】
「未分化角化細胞、特に培養下の未分化角化細胞中、又は分化上皮角化細胞中のmiRNAの平均発現レベル」なる用語は、好ましくは培養下の未分化角化細胞数を代表するか、又は分化上皮角化細胞数を代表する、少なくとも5個の異なる角化細胞中で決定される平均の発現レベルに対応する、この型の細胞において一般的に観察される発現レベルを意味する。好ましくは、それは、少なくとも10個の測定、又は更に20又は100個の異なる測定のの平均である。
【0045】
好ましくは、培養下の未分化角化細胞又は問題となっている分化上皮角化細胞は、調査下の角化細胞として、同一の株又は同一の集団に由来する角化細胞である。
【0046】
上述の方法を実施する文脈において、調査下の角化細胞は、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択されるmiRNAの少なくとも1個の発現レベルが、未分化角化細胞、例えば、培養したの未分化角化細胞における前記miRNAの発現の平均レベルよりも大きい場合、分化した又は分化を受けていると考慮される。
【0047】
「統計的により大きい」なる用語は、観察された差異は、統計的な観点から有意であり、特に標準偏差よりも大きい。値は、2点間の差異が測定において存在する不確かさよりも大きい場合、他方よりも統計的に大きいとされる。
【0048】
好ましくは、上限レベルは、平均レベルよりも少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%大きい。特に好ましい実施態様にしたがって、選択したmiRNAの発現レベルは、少なくとも前記miRNAの平均レベルの1.5倍に等しく、好ましくは選択したmiRNAの平均レベルの2倍以上である。
【0049】
好ましくは、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択されるmiRNAの少なくとも1個の発現レベルは、統計的に前記miRNAの平均発現レベルを得るために使用されている培養下の未分化角化細胞の全てにおける前記miRNAの発現レベルの何れよりも大きい。
【0050】
本発明の方法の好ましい実施態様に従って、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される少なくとも2個のmiRNAの平均レベルは、未分化角化細胞中の前記miRNAの平均発現レベルよりも大きい。好ましくは、これは、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−455−3p及びhsa−miR−92bからなるリストからのmiRNAの少なくとも3個、又は更に5又は8個、又は更に全ての場合である。
【0051】
その代わりに、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNAの少なくとも1個の発現レベルが、分化上皮角化細胞中の前記miRNAの発現レベルと実質的に同一である場合、調査している角化細胞は分化した又は分化を受けているとまた結論づけてもよい。好ましくは、これは、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNAの少なくとも2個、又は更に3、5、8又は全ての場合である。
【0052】
「実質的に同一レベル」なる用語は、例えば、前記miRNAの発現レベルの測定における不確かさよりも少ないような、観察されるレベルの差異が統計的に有意でないことを意味する。
【0053】
対照的に、本発明の方法を実施する文脈では、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNAの少なくとも1個の発現レベルが、分化上皮角化細胞中の前記miRNAの平均発現レベルよりも統計的に大きい場合、調査している角化細胞は、未分化又はわずかに分化している状態の角化細胞であると考慮される。
【0054】
好ましい実施態様では、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも2個のmiRNAの平均レベルは、分化上皮角化細胞中の前記miRNAの平均発現レベルよりも大きい。好ましくは、これは、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cからなるリストからのmiRNAの少なくとも3個、又は更に5又は8個、更に全ての場合である。
【0055】
その代わりに、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される少なくとも1個のmiRNAの発現レベルが、未分化上皮角化細胞中の前記miRNAの発現レベルと同一である場合、調査している角化細胞は、未分化(undifferentiated)とも呼ばれる未分化(non-differentiated)状態であるか、又はわずかに分化している状態と結論づけてもよい。好ましくは、これは、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択されるmiRNAの少なくとも2個、又は更に3、5、8個又は全ての場合である。
【0056】
本発明はまたヒト上皮のサンプル中に存在する上皮分化の差異を評価する方法に関する。前記方法を用いて、前記サンプルの分化状態を特徴付けることが可能であり、従って、例えば、正常なヒト上皮について正常な分化であるか、又は病理の特性を示すか決定することが可能である。
【0057】
本発明の方法に従って、前記上皮の角化細胞の2層の間に存在する上皮分化の差異、すなわち、上皮分化に関しこれらの2層に存在する差異を決定することが可能であり、したがって、前記上皮の別の層よりも分化した状態であるか、又は逆により増殖性の状態であるかどうかを定義することが可能である。
【0058】
上皮分化の差異を評価するための発明の方法は、前記上皮中の角化細胞の2層間の、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNAの発現レベルを比較するための工程を含む。
【0059】
実際に、上で定義する通り、本発明者は、高度に分化された角化細胞、及び未分化角化細胞中の本発明のmiRNAと称されるこれらの19個のmiRNA中に存在する発現レベルの主要な差異を明らかにしている。これらのmiRNAの発現レベルの差異の研究は従って調査している上皮の角化細胞の別の層と比較して層の上皮分化のレベルの間に差異が存在することを意味する。
【0060】
2層間の幾つかのmiRNAの発現レベルの差異を確立することができるが、本発明のmiRNAの少なくとも1個について、他方と比較して一方の層で有意な発現レベルの差異が存在するとすぐに、上皮分化の差異が明らかとなる。
【0061】
本発明に従って、特に、他方と比較して一方の層におけるhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択されるmiRNAの少なくとも1個のより大きな発現により、2層間の上皮分化の差異が特徴付けられる。前記の選択されたmiRNAの発現の差異は、この差異が統計的観点から有意であるような桁数でなければならない。
【0062】
好ましくは、選択されたmiRNAの発現レベルの差異は、1.3倍又は、より好ましくは、1.5倍以上、又はさらに2倍以上である。
【0063】
本発明の好ましい実施態様では、上皮の2層間の上皮分化の差異は、他方と比較して一方の層で、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから構成されるリストから選択される少なくとも2個の異なるmiRNAの、好ましくは少なくとも3倍、又はさらに少なくとも5、又は8倍大きな発現、又はこのリストの10個のmiRNAの更に大きな発現によって特徴付けられる。他の層と比較した一方の層におけるmiRNAの発現レベルの差異は、必ずしもリストのmiRNAの全てについて同一の倍数ではない。
【0064】
本方法に従って、2層間の上皮分化の差異は、他方と比較した一方の層におけるhsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNAのより大きな発現によってまた特徴づけられてもよい。再び、言及される発現レベルは、統計的観点から有意である差異を意味する。
【0065】
好ましくは、選択されるmiRNAの発現レベルの差異は、1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2倍以上である。
【0066】
本発明の好ましい実施態様では、上皮の2層間の上皮分化の差異は、他方と比較して一方の層で、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから構成されるリストから選択される少なくとも2個の異なるmiRNAの、好ましくは少なくとも3倍、又はさらに少なくとも5、又は8倍大きな発現、又はこのリストの9個のmiRNAの更に大きな発現によって特徴付けられる。他の層と比較した一方の層におけるmiRNAの発現レベルの差異は、必ずしもリストのmiRNAの全てについて同一の倍数ではない。
【0067】
本発明の文脈では、問題の皮膚又は上皮の上皮サンプルは、異なる供給源からのものであり得る;例えば、「再構築皮膚」型の再構築上皮のような培養下の上皮からのものか、又は、例えば、生検からのような、個体から得たサンプルからのものであり得る。前記サンプルは従ってヒト皮膚由来のものであり得る。
【0068】
本発明のmiRNAの少なくとも1個の発現レベルの比較は、調査している上皮サンプルの2層の間で実施され得る。ヒト皮膚のサンプルの場合、角化細胞の2個の対立した層、例えば、基底層の角化細胞と上皮の角質層の角化細胞の間で、好ましくは実施される。この点から、近年の研究は角質細胞がmiRNAを産生又は含むことを示す。
【0069】
発現レベルの比較は、例えば、分化の種々の段階をまた強調するために、非常に近接した場所のサンプルの2層の間でまた実施され得る。
【0070】
本発明はまた上述の特性付け方法の種々の適用に関し、従って、特に、生理学的又は病理学的分化障害の診断ツールとして、上皮分化の欠損を訂正する標的として又は上皮分化モジュレータ剤を試験するためのスクリーニングツールとしての、本発明者によって強調されるmiRNAシグネチャーの種々の使用に関する。
【0071】
第二の態様では、本発明は、上皮で実施される治療効果の決定方法に関する。このような方法は、治療前後の、上皮の上皮分化のmiRNAシグネチャーの比較を含む。このように、治療前後の、前記上皮の角化細胞中でhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNAの発現レベルの比較を含む。
【0072】
本発明者は、上皮で起きる上皮分化のプロセス中のこれらの19個のmiRNAの発現レベルの変化を実際に発見している。前記miRNAの少なくとも1個のレベルの修正は、したがって、試験治療に応答する分化状態の修正を代表する。もう一度、発現レベルの修正は、統計的観点から有意であり、従って、十分かつ再生可能な強度であり、調査している上皮の代表的な角化細胞の相当数で観察されることを意味する。
【0073】
その代わりに、本発明の文脈において上皮に適用される治療効果の決定方法は、また試験治療前後で、上皮の上皮分化の差異の比較を含み得る。従って、方法の変化に従って、治療前に上皮の2層間に存在する上皮分化の差異と得られた結果を治療後の同一の2層間に存在する上皮分化の差異と比較する。このように、この試験治療が、例えば、2層間の分化状態の差異を減少することにより、すなわち、2層間の本発明のmiRNAの発現のレベルの差異を減少することによるか又は上皮分化の差異を減少することにより、2層間に存在する差異を修正するかしないか決定される。
【0074】
この方法による試験治療は、任意の治療からなり得る。好ましくは、適用又は好ましくは皮下的な注射による分子の局所適用に関する。適用される分子は単純な化学成分又は異なる成分の組み合わせ又は会合であり得、有効成分、天然分子、タンパク質、RNA、DNA、精油、天然抽出物からの化学成分、複合体製剤、DNA分子、miRNA、siRNA、miRNA阻害剤、特にantagomir等に関連し得る。
【0075】
本発明の試験治療の文脈で特に好ましい特定の分子は、RNA、特にmiRNA、又はmiRNA、又は特にantagomirのような天然miRNAの発現を修正する分子である。
【0076】
例えば、可視、UV、IR又はX線のような波長によらない電磁放射の適用にまた関する。本発明の治療はまた種々の機械的効果の適用を含む。
【0077】
本発明の方法は、調査している上皮中で本発明のmiRNAの少なくとも1個の発現レベルの修正を引き起こす場合に、効果的であると考慮される。好ましくは、前記治療は、上皮中の前記miRNAの少なくとも2個又は更に少なくとも5個の発現レベルの修正を引き起こす場合に効果的であると考慮される。前記治療は本発明の少なくとも10、15個又は更に19個のmiRNAの発現レベルの修正を引き起こし得る。本発明のmiRNAの発現レベルの補正は、必ずしもmiRNAの全てについて同程度ではない。
【0078】
好ましくは、本発明の文脈では、試験治療は、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される少なくとも1個のmiRNAの発現レベルの修正を、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNAの上とは逆方向の発現レベルの修正を伴って引き起こす場合に、効果的であると考慮され得る。このように、本発明の文脈における効果的な治療は、例えば、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される少なくとも1個のmiRNAの発現レベルの増加と、同時にhsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNAの発現レベルの減少をまた引き起こし得る。
【0079】
本願の治療効果の決定方法を用いて、薬剤、特に美容製品、例えば、化粧品組成物の、皮膚の上皮分化の状態に対する作用に関して、有益作用の定量がまた可能になる。上記のインビトロ決定方法は、実際に皮膚の角化細胞の増殖又は分化の状態に対する効果を有する薬剤として定量され得る産物を決定するための試験プロトコルにおいて使用され得る。
【0080】
更に、この試験を用いて、本発明に記載の決定方法を用いた製品を用いて得た結果を全面に出すことによって、消費者に製品を宣伝することが可能になる。上皮分化の状態に対する効果の評価は、本発明のmiRNAの発現の研究に基づくであろう。このように、本発明はまた上記の決定方法によって構成される試験プロトコルにおける効果を示すことによって製品を勧めるために使用し得る方法を提供する。このように、本発明はまた上記の通り実施される少なくとも1個の試験によって示される前記製品の効果、作用又は性質の決定で構成される美容製品の促進のための方法に関する。
【0081】
このような製品は、任意の伝達経路を用いて促進され得る。それは、販売場所によって直接販売係によって、又はラジオ及びテレビによって、特に宣伝の文脈で、実施され得る。それはまた印刷メディアを介して又は特に広報目的のための任意の他の書類(見本)によってなされる得る。インターネットを介してか、又は任意の他の適切なコンピュータネットワークを介してまた促進され得る。それはまた、製品、特に、容器又は付随し得る任意の他の説明書に直接なされ得る。
【0082】
第3の態様では、本発明はまた上皮分化プロセスにおける作用について分子をスクリーニングするための種々の方法に関する。
【0083】
特に、本発明は、スクリーニングされるモジュレータの適用前後で、前記上皮中の角化細胞の上皮分化の状態を評価することを含む、上皮中の上皮分化プロセスのモジュレータをスクリーニングするための方法に関する。
【0084】
このようなスクリーニングプロセスは、例えば、培養下のサンプル又は上皮のサンプルで、インビボ、又はエクスビボ、又はインビトロで実施され得る。
【0085】
前記上皮における角化細胞の上皮分化の状態の評価は、本発明の第1の態様に記載の方法の1つを用いて実施される。
【0086】
上記の通り、ここで言及される上皮は、培養下の上皮、例えば、「再構築皮膚」型の再構築上皮、又は例えば生検の間のヒトから得られるサンプルであり得る。
【0087】
その代わりに、本発明はまた、スクリーニングされるモジュレータの適用前後の、前記上皮の上皮分化の差異の評価を含む、上皮の上皮分化プロセスのモジュレータのスクリーニング方法に関する。
【0088】
前記上皮の角化細胞の上皮分化の差異の評価は、本発明の第1の態様に記載の方法の1つを用いて実施される。
【0089】
問題となっているモジュレータは、例えば、天然抽出物由来であるか又は合成される任意の化学成分であり得、それは、複合体製剤、DNA分子、miRNA、siRNA又は例えば、antagomirのようなmiRNA阻害剤であり得る。明らかに、このリストは包括的ではない。
【0090】
その代わりに、モジュレータは、電磁放射、好ましくは、可視、UV、IR又はX照射を用いた計測システム、又は機械的効果を用いたシステムであり得る。
【0091】
第4の態様では、本発明はまた本発明によって発見されるmiRNAシグネチャーの使用による、上皮の状態を診断する方法に関する。このような診断方法は、基底層と角質層の間の前記上皮に存在する上皮分化の差異を決定し、基底層と角質層の間の同一の型の正常上皮中に存在する上皮分化の平均差異の比較を含む。
【0092】
上皮分化の差異の決定は、好ましくは本発明の第1の態様に記載の種々の方法を用いて実施される。好ましくはそれは診断される皮膚の上皮のサンプル上で実施される。
【0093】
同一型の正常上皮に存在する基底層と角質層の間の上皮分化の平均差異は、正常で、診断される上皮のものである、皮膚の同一の型を有する検体からの幾つかの上皮サンプルで実施される種々の測定の平均値に一致する。「同一型」なる用語は、同等の年齢、民族及び同一色を意味する。それは、上皮の病変又は障害がない「正常」又は「健康」な状態に対応する平均値である。
【0094】
この診断方法によって、診断される皮膚のmiRNAプロファイルが作成され、比較することにより、早期老化、紫外線老化又は太陽放射によって引き起こされる損傷、ストレスによって引き起こされる老化又は損傷、座瘡又は任意の他の生理学的又は病理学的疾患。
【0095】
別の態様では、本願は前記角化細胞の上皮分化の状態を決定するためのヒト上皮のサンプル中の角化細胞中のhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNAの少なくとも1個の発現のアッセイの使用にまた関する。
【0096】
本発明者は、実際にこのアッセイが上皮分化のmiRNAシグネチャーへの接近を提供する。
【0097】
特に好ましい使用では、本発明の19個のmiRNAのうちの少なくとも2個、好ましくは、少なくとも5、8、10、12又は15個の別のmiRNAがアッセイされる。例えば、本発明の19個のmiRNAのアッセイを、試験される角化細胞の上皮分化の状態の決定のために使用し得る。
【0098】
更に別の態様では、本願は、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNA、及び/又は前記miRNAの発現の少なくとも1個のモジュレータ、及びより具体的にはantagomirのようなmiRNAの阻害剤の種々の美容及び治療的使用に関する。
【0099】
実際に、肌の上皮分化プロセスにおける前記miRNAの重要性のために、角化細胞中のそれらのレベルの調節は、例えば、角質層更新プロセスを減速又は加速するために、それを減速することによるか、又は逆に加速することにより、上皮分化に影響を与え得る。角化細胞中での本発明のmiRNAのレベルの調節は、より好ましくは、miRNAの内在性の異常調節を校正するためにmiRNAを使用することによって、特に角化細胞中の量を増加するために、本発明のmiRNAの1つ又は別のものを導入することによって実施される。調節はまた、角化細胞中のレベルを低減するために本発明のmiRNAの1個を標的化する、例えば、antagomirのような、前記miRNAのモジュレータを導入することによって、好ましくは、少なくとも1個のmiRNA阻害剤を導入することによって実施され得る。特に本発明の文脈で想定され得る他のmiRNA阻害剤は、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)及びQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0100】
好ましい実施態様では、本発明は本発明の19個のmiRNAから選択されるmiRNA、又は上皮分化プログラム皮膚病を治療するための治療的な使用のための、前記miRNAを標的化する、前記miRNAのモジュレータ、特にantagomirのようなmiRNA阻害剤に関連するに関する。関連する病理は、好ましくは上皮分化における異常を発生させる病理である。
【0101】
より具体的には、本発明の文脈において考慮される病理は、乾癬、アトピー性皮膚炎、座瘡、魚鱗癬、ネザートン症候群、毛孔性紅色粃糠疹、毛状角化症、ダリエー病、掌蹠角皮症及び汗孔角化症である。
【0102】
好ましくは、本発明は、上述の治療適用のための本発明の少なくとも2個、更に3個、好ましくは、少なくとも5、10、15又は等しく19個のmiRNA、又はmiRNAの阻害剤、特にこれらのmiRNAの少なくとも幾つかのantagomirを含む組成物に関する。
【0103】
本発明の治療適用に関し、所望の治療効果が、治療される皮膚の上皮分化の状態の増加からなる場合、好ましい実施態様では、本発明は、治療における使用のための、好ましくは、上皮分化プログラムに関連する皮膚病を治療するための、特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、座瘡、魚鱗癬、ネザートン症候群、毛孔性紅色粃糠疹、毛状角化症、ダリエー病、掌蹠角皮症及び汗孔角化症を治療するための、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される少なくとも1個のmiRNAを含む組成物に関する。本発明はまた前記病理の治療における使用のための、上記のmiRNAに加えて又はの代わりのhsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNAを標的化する、antagomirのような、少なくとも1個のmiRNAの阻害剤を含む組成物に関する。本発明の文脈においてより具体的に予想されるmiRNAの他の阻害剤は、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)とQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0104】
hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bからなるリストからの少なくとも2個のmiRNA、好ましくは少なくとも5、8又は等しく10個のmiRNAが選択され得る。
【0105】
最終分化の刺激を必要とする状況について、言及される治療適用についての組成物又は製品は従って:
少なくとも1個、好ましくは少なくとも2、3、5又は全てのmiRNA hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92b、又はそれらの発現の増加を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータ;及び/又は場合によって、
miRNA hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cの1つを標的化する、例えば、antagomirのようなmiRNAの阻害剤、又はそれらの発現の抑制を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータを含む。
【0106】
本発明の文脈で想定されるmiRNAのより具体的な阻害剤は、antagomir、miRCURY LNA(商標) マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)及びQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0107】
対照的に、所望の治療効果が、別の実施で、例えば、上皮分化を遅延するためか、又は治療される皮膚の角化細胞の増殖能を促進するための場合、本発明は好ましくは上皮分化プログラムに関連する皮膚病を治療するため、特に、乾癬、アトピー性皮膚炎、座瘡、魚鱗癬、ネザートン症候群、毛孔性紅色粃糠疹、毛状角化症、ダリエー病、掌蹠角皮症及び汗孔角化症を治療するための治療的使用のための、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNAを含む組成物に関する。本発明はまた引用されるmiRNAに加えて又はその代わりに、例えば、antagomirのような、前記病理の治療における使用のための、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択されるmiRNAを標的化するmiRNAの少なくとも1個の阻害剤を含む組成物に関する。
【0108】
hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cからなるリストからの少なくとも2個のmiRNA、好ましくは少なくとも4、7又は等しく9個のmiRNAが選択され得る。
【0109】
最終分化の減少を必要とする状況について、言及される治療適用についての組成物又は製品は従って:
少なくとも1個、好ましくは少なくとも2、3、5又は全てのmiRNA hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30c、又はそれらの発現の増加を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータ;及び/又は場合によって、
miRNA hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bの1つを標的化する、例えば、antagomirのようなmiRNAの阻害剤、又はそれらの発現の抑制を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータを含む。
【0110】
本発明の文脈でより具体的に想定されるmiRNAの阻害剤は、antagomir、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)及びQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0111】
好ましくは、治療的使用のための本発明に記載の組成物は、局所適用又は摂取のための薬学的に許容可能な担体と処方される。
【0112】
本発明はまたhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNA、又は前記miRNAのモジュレータ、好ましくは、非病理的ヒト皮膚への化粧品適用のための、前記miRNAの1個を標的化する、antagomirのようなmiRNAの阻害剤の使用を想定する。
【0113】
治療又は化粧品使用のための言及される種々の使用は、好ましくは、miRNA又は、前記miRNA、又は前記miRNAの阻害剤、例えば、antagomirを含む組成物を含むの組成物の局所適用を含む。その小さいサイズから、miRNAとその阻害剤は、角化細胞の膜を通過し、処置される角化細胞中の前記miRNAの質を量を修正することができる。更に、その物理化学的性質から、それらは、皮膚の深層に到達し得、従って上皮に対する作用を制限することはあり得ない。
【0114】
miRNAとその阻害剤、特に、antagomirの安定性は、その作用が一時的であることを示し、従って、本発明は治療される皮膚に対する更新された適用を含む治療又は化粧品における使用を想定する。
【0115】
この理由から、本発明は特にhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNA及び/又はこれらのmiRNAの1個の発現のモジュレータ、好ましくは、例えば、これらのmiRNAの1個を標的化するantagomirのようなmiRNAの阻害剤の個体の皮膚への局所適用を含む生理学的、非病理学的美容状況における上皮分化に関連する疾患の治療方法を想定する。
【0116】
前記方法の好ましい態様に従って、miRNAは、治療される皮膚の角化細胞の上皮分化の状態を増加するために、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される。
【0117】
少なくとも2個のmiRNA、好ましくは少なくとも5、8又は等しく10個のmiRNAが、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−923及びhsa−miR−92bからなるリストから選択され得る。
【0118】
その代わりに又は更に、少なくとも1個、又は更に幾つかの1又は複数のhsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNAを標的化するmiRNAの阻害剤が選択され得る。本発明の文脈でより具体的に想定されるmiRNAの阻害剤は、antagomir、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)及びQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0119】
対照的に、所望の効果が、別の態様に記載の、例えば、上皮分化を遅延するためか、又は治療される皮膚の角化細胞の増殖能を促進するための場合、本発明は前記miRNAがhsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される治療方法に関する。
【0120】
少なくとも2個のmiRNA、好ましくは少なくとも4、7又は等しく9個のmiRNAが、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cからなるリストから選択され得る。
【0121】
その代わりに又は更に、少なくとも1個、又は更に幾つかの1又は複数のhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−923及びhsa−miR−92bから選択されるmiRNAを標的化するmiRNAの阻害剤が選択され得る。本発明の文脈でより具体的に想定されるmiRNAの阻害剤は、antagomir、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)及びQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0122】
美容状況の上皮分化の疾患は、年齢、皮膚日射病、瘢痕化、皮膚乾燥若しくは硬化、又は、特に剥離剤、落屑剤、又は脱脂剤による化学物質負荷、又は機械的負荷を含む生理学的状態に関連する。これらの疾患は、病理学的ではなく、その治療は治療的処置ではなく、単に化粧目的のための治療であると考慮され、このような疾患の治療は皮膚の見た目と個体の利便性を改善することを基本的に目的としている。
【0123】
より具体的には、年齢に関連する疾患は、生活年齢に関連する上皮分化の修正からなる。実際に、加齢の過程において、上皮は上皮分化プロセスと機能的な角質層の形成に影響を及ぼす多くの変化を行う。特定の観察は、より限られた数の基底上層の上皮の菲薄化とクローン化可能細胞、したがってまた上皮の回転数の減少を伴う増殖区画の減少である。若年の、正常皮膚においては観察されないケラチン16と17の発現を伴い、ケラチン発現プロファイルのような慣例的な分化マーカーは修正される。ケラチンK1とK15並びにの網膜核層の主要成分の量は減少する。トランスグルタミナーゼ1の量は年齢に伴いまた減少する。障壁機能は、浸透性の増加と共に変化する。
【0124】
皮膚日射病に関連する疾患、又は「光老化」は、日光への慢性照射を伴う上皮分化における修正まで及ぶ。光老化皮膚は、特になめし革に似ている外見とより顕著な皺によって特徴付けられる;この皮膚はまたケラチンK6、K16、K17の過剰発現とフィラグリンとトランスグルタミナーゼの減少を伴って上皮レベルにおいてまた修正される。これらの変化は、皺の形成と関連している。角質層の形成に含まれるSPRRタンパク質は、またUVによって変化する。太陽への急性照射が障壁機能と上皮のホメオスタシスに影響する上皮の修正の結果になることがまた知られている。
【0125】
瘢痕化に関連する疾患は、瘢痕化と修復のプロセスを伴う上皮分化の修正に及ぶ。負傷後に起きる再上皮化の間、上皮タンパク質の全ての発現パターンを修正する。完全な修復は3つのフェーズ、初期移動フェーズ、次いで増殖フェーズ及び最終的には分化フェーズで起きる。増殖フェーズは創傷を含み、従って、正常な状態で、機能的な角質層を再生するために使用され得る、角化細胞の層化及び分化のプレイヤーを含む上皮の新規形態形成のプロセスに続く。
【0126】
乾燥又は乾燥症に関連する疾患は、原理的には、乾燥皮膚が、上皮の油脂含量の減少と角質層の変化によって基本的には特徴付けられるという事実に起因するものである。ケラチン1と10は減少し、角化細胞K6とK14は増加する。フィラグリンの発現レベルは、インボルクリンのように、不安定である。
【0127】
特に、剥離剤、落屑剤又は脱脂剤による、化学物質負荷と機械的負荷は、上皮ホメオスタシスに対する修正のための要因であり、角質層によって提供される障壁機能の変化を誘導する。正常な上皮分化のプロセスは、上皮のホメオスタシスと正常な障壁機能を再構築し得る。
【0128】
好ましくは局所的な、本発明の少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のmiRNA、又は前記miRNAの特定の阻害剤の適用に際し、化粧品適用のための、種々の上述の非病理的疾患の治療が可能である。
【0129】
このように、本発明はまた皮膚の外見、その粒子、その輝度、その欠陥又はその微小起伏を訂正又は改善するための本発明のmiRNAの1つの発現のための、本発明のmiRNAの少なくとも1個を含むか又は実際に本発明のmiRNAの1個の発現のための、少なくとも1個のモジュレータを含む化粧品組成物又は製品に関する。本発明のmiRNAの1個の発現のモジュレータは、前記miRNAの1個の発現の増加又は抑制を引き起こす有効成分である。miRNAの1個の発現を調節する前記有効成分は、例えば、上述のスクリーニング方法によって同定されるか、又はそれは本発明のmiRNAのantagomirである。
【0130】
問題となっている美容製品又は組成物は、任意の生薬形態であってもよく、例えば、局所投与のための、牛乳、クリーム、ゲル、スプレー又は石鹸に処方され得るか、又は経口で消化され得る形態であり得る。
【0131】
特に、それは種々の活性成分の組み合わせ、例えば、本発明の少なくとも2個のmiRNA、又は本発明のmiRNAと本発明のmiRNAのモジュレータ、又は本発明の2個のmiRNAモジュレータの組み合わせであり得る。それはまた活性成分と機器、特に、機械的、光、又は電気又は電磁気的処理型の機械の組み合わせであり得る。
【0132】
本発明は特に、分化の障害と老化皮膚の皮革様外観に関連する表面欠陥を減少するための「老化防止」製品として知られている美容製品を想定する。本発明のmiRNA又は前記miRNAのモジュレータによる、増殖と上皮分化のバランスの修正によって幾らかの品質を修復するために、太陽に暴露される老化皮膚のための特定の美容製品がまた想定される。
【0133】
日光への急性照射によって誘導される分化の修正を相殺するための美容アフターサン製品にまた関する。上皮分化と角化細胞落屑を刺激することによる着色障害の制御が可能な製品は、着色障害の原因となる過剰メラニンをより速やかに除去するためにまた想定される。
【0134】
他の美容製品はまた、加湿効果を有し、また上皮分化の最終工程を調節する、乾燥肌のために特別に製造された製品である。瘢痕の皮膚修復過程の改善のための修復製品がまた本発明の文脈で想定される。特定の手順(剥離後、レーザー後等)の文脈又は汚染、家庭用品等のような、日常における、惹起皮膚のための製品を処方することがまた可能である。
【0135】
障壁機能と角質層を増加するための、最終分化の刺激を必要とする状況において、本発明の意味における化粧品組成物又は製品は:
少なくとも1個、好ましくは少なくとも2、3、5又は全てのmiRNA hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92b、又はそれらの発現の増加を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータ;及び/又は場合によって、
miRNA sa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cの阻害剤、又はそれらの発現の抑制を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータを含む。本発明の文脈でより具体的に想定されるmiRNAの阻害剤は、antagomir、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)及びQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0136】
最終分化の減少と角質層の形成を減少を必要とする状況において、本発明の意味における化粧品組成物又は製品は:
少なくとも1個、好ましくは少なくとも2、3、5又は全てのmiRNA hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30c、又はそれらの発現の増加を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータ;及び/又は場合によって、
miRNA hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bの阻害剤、又はそれらの発現の抑制を引き起こすこれらのmiRNAのモジュレータを含む。本発明の文脈でより具体的に想定されるmiRNAの阻害剤は、antagomir、miRCURY LNA(商標)マイクロRNAノックダウンプローブ(Exiqon)及びQiagenのmiScript miRNA阻害剤である。
【0137】
本発明はまたhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1個のmiRNAの発現をアッセイするための手段と前記miRNAの参照レベルを提供する情報を含む、ヒト角化細胞の分化状態を決定するためのキットに関する。
【0138】
本発明の文脈における特に好ましいキットは、参照レベルが培養下の非分化角化細胞における前記miRNAの発現の平均レベルである。
【0139】
その代わりに、本発明に記載のキットは、分化上皮角化細胞中の前記miRNAの発現の平均レベルに対応する参照レベルで使用され得る。
【0140】
本発明の一又は他の態様についてより具体的に記載される種々の好ましい実施はまた本発明の他の態様に適用される。特に、本発明の方法、プロセス、キット、組成物及び使用によって記載される通り、それは常に本発明の19個のmiRNAのリストから選択される少なくとも2個のmiRNA、好ましくは、少なくとも3、5、9、10、15又は更に19個の本発明のmiRNA、即ち、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cの発現レベルを決定することが好ましい。
【実施例】
【0141】
材料と方法
ヒト角化細胞の単一層培養
正常ヒト上皮角化細胞は乳房形成に由来し、マイトマイシン処理したスイス3T3繊維芽細胞の栄養層で、Rheinwald及びGreenの方法を用いて慣例的に培養した。
【0142】
再構築皮膚
角質層と生存等量表皮を伴う層化分化上皮を含むインビトロで再構築した皮膚は、正常ヒト角化細胞と正常ヒト皮膚繊維芽細胞と共に産生された。
【0143】
簡潔には、同等の表皮はウシコラーゲンIと100万個のヒト皮膚繊維芽細胞と共に産生された。正常の角化細胞を、500000個の角化細胞の量で、格子の縮小後に播き、慣用的な培地で7日間培養した。培養物を次いで出現フェーズのスクリーン上に搭載した(気相液相界面、7日間)。
【0144】
この期間の終点で、皮膚の形態は、正常のヒト皮膚に非常に類似していた。次いでそれを毛管上昇によって培養した皮膚下の培地を維持しながら種々の実験のために使用し得る。
【0145】
角化細胞からの全RNAの抽出
細胞分解:
単一層培養における角化細胞は、TriReagentバッファーにおける培養皿において分解された。
再構築皮膚からの再構築上皮は、ピンセットを用いて同等の上皮から分離された。この上皮はTriReagent分解バッファーにおけるガラスホモジナイザーにおいて手動で砕いた。
【0146】
全RNAの抽出
全RNAをグアニジンイソチオシアネート溶液ついでフェノール/クロロホルム混合物を用いた抽出の慣例的な技術を用いて抽出した。
【0147】
μParaflo(商標)「MiRHuman10.0」チップ上のmiRNAハイブリダイゼーション
短鎖RNAを全RNA(マイクロコンフィルター、ミリポア)から抽出し、ポリA末端を有する3’末端で延長した。蛍光ラベル化オリゴヌクレオチドを、ポリA末端に付着させた。短鎖ラベル化RNAを次いでμParaflo(商標)「MiRHuman10.0」チップ(Atactic Technologies, LC Sciences)上でハイブリダイズさせた。それらは、miRBase10.0(711個の成熟miRNA)において記録されるヒトmiRNAの全ての相補的な配列を含んでいた。配列は、チップ上で5回沈着させた。蛍光を定量し、シグナルを正規化した。蛍光の量はサンプル中の各miRNAの発現レベルを反映していた。
【0148】
統計的解析
各miRNAの発現は、スチューデントのt検定(p<0.05)を用いて、「培養角化細胞」サンプルと「再構築上皮角化細胞」の間で統計的に比較した。
【0149】
実施例1:非分化単層培養角化細胞と比較した分化再構築上皮角化細胞における過剰発現した10個のmiRNAのリスト
【0150】
乳房形成のヒト原発性正常ヒト角化細胞の3個の株を試験(PH202、PH64及びPH63)において使用した。単層培養角化細胞、即ち、非分化角化細胞(2D)、同時に3個の角化細胞(3D)を伴う再構築上皮サンプルにおける全ての既知のヒトmiRNAの発現を定量した。
【0151】
各miRNAの発現を、確立pを提供するスチューデントのt検定を用いて培養下の「角化細胞」と「再構築上皮角化細胞」サンプルの間で統計的に比較した。表1で引用される各miRNAは、試験される各細胞株について、非分化角化細胞と比較した上皮における統計的により大きなレベル(p<0.05)を有した。発現比3D/2Dを各株について得た。例えば、miR−141は、平均して単層培養角化細胞よりも再構築上皮の角化細胞において2.3倍より豊富であった。
【0152】

表1:単層培養(2D)、すなわち、非分化の角化細胞と比較した再構築上皮(3D)、すなわち、分化した角化細胞中で過剰発現したmiRNA。
【0153】
実施例2:分化再構築上皮角化細胞と比較した単層培養における非分化角化細胞中で過剰発現した9個のmiRNAのリスト。
【0154】
乳房形成の原発性正常ヒト角化細胞の3個の株を、本研究に使用した(PH202、PH64及びPH63)。既知のmiRNAの全ての発現を、単層として培養した角化細胞、すなわち、非分化角化細胞中及び同時にこれらの同一の角化細胞を伴う再構築上皮で定量した。各miRNAの発現は、確率pを生成するスチューデントのt検定を用いて「培養角化細胞」サンプルと「再構築上皮角化細胞」サンプルの間で統計的に比較した。この表で引用した各miRNAは、調査した各細胞株について、再構築上皮角化細胞と比較して非分化角化細胞中で統計的により大きなレベルを有した(p<0.05)。発現比2D/3Dを各株について得た。例として、miR−29bは、平均して、再構築上皮角化細胞中よりも単層培養角化細胞において、6.7倍より豊富であった。
【0155】

表2:再構築上皮(3D)、即ち、分化角化細胞と比較した単層培養(2D)、即ち、非分化において過剰発現しているmiRNA
【0156】
実施例3:miRNAを検出する方法。
ノザンブロット
この慣例的な技術は定性的及び定量的である。それは、1つの実験の間に幾つかのmiRNAを解析することができる。この方法は、5から50μgの全RNAの使用を要する。
【0157】
RT Q−PCR
この方法は、miRNAの前駆体を調査することができ、成熟miRNAを調査するために適用されている。それは商業的な方法であり(アプライド バイオシステムズ タックマン マイクロRNA アッセイ)幾つかの文献で記述されている[23]。
【0158】
miRNAマイクロアッセイ
この方法は、慣例的なmRNAのマイクロアレイのもののように、サンプルのmiRNAの相補的なcDNAの蛍光ラベル、及び既知のmiRNA配列が置かれているスライド上のこれらのラベル化したcDNAのハイブリダイゼーションに基づく[25]。
【0159】
幾つかの著者によれば、miRBase由来のmiRNAの新規の配列を規則的に統合する場合、このmiRNAマイクロアレイ技術は、miRNAの全体の発現プロファイルの解析のための選択肢となる方法であるはずである。
【0160】
更に、本発明としての幾つかの状況において、miRNAの発現プロファイルは、メッセンジャーRNAの発現プロファイルよりも有益である。
【0161】
miRNAのインサイツハイブリダイゼーション
この技術は、慣例的な結合方法を使用することで、短鎖RNAが長鎖RNAより拡散し、ハイブリダイゼーションと洗浄過程において紛失するため、慣例的なmRNAのインサイツハイブリダイゼーションよりも困難である。この問題を克服するために技術は開発されており;更に、miRNAプローブは、商業的に利用可能である(Exiqon、デンマーク)[27]。
【0162】
miRNAレポーター導入遺伝子
この技術では、GFP又はLacZレポーター遺伝子は、miRNAの相補的な3’UTR部分を含むプロモーターのコントロール下に置かれた。
【0163】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト上皮のサンプル中のヒト角化細胞の上皮分化の状態を決定するための方法であって、前記角化細胞中のhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを決定し、選択されたmiRNAの発現レベルを、好ましくは同一の株又は同一の集団から得る、未分化角化細胞又は分化上皮角化細胞中で選択されたmiRNAの発現の平均レベルと比較することを含む方法。
【請求項2】
hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現のレベルが、培養中の未分化角化細胞中の前記RNAの発現の平均レベルよりも統計的に大きい場合、前記角化細胞は分化されたと考慮される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現のレベルが、分化した上皮角化細胞中の前記miRNAの発現の平均レベルよりも統計的に大きい場合、前記角化細胞は未分化であると考慮される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒト上皮のサンプル中に存在する上皮分化の差異を評価する方法であって、前記上皮の角化細胞の2層間で、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現のレベルを比較することを含む方法。
【請求項5】
2層間の上皮分化の差異が、1.3よりも大きい、好ましくは1.5よりも大きい因子で、一方の層におけるhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425及びhsa−miR−92bから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現が他方よりも大きいことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
2層間の上皮分化の差異が、1.3よりも大きい、好ましくは1.5よりも大きい因子で、一方の層におけるhsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現が他方よりも大きいことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルをヒト皮膚又は「再構築皮膚」型培養上皮から得る、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
上皮治療の効能を決定するための方法であって、治療の前後で、前記上皮の角化細胞中のhsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つの発現レベルを比較することを含む方法。
【請求項9】
前記治療が、放射線の適用によるか又は機械的効果の適用による、局所適用又は分子の注射からなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上皮中の前記miRNAの少なくとも1つ、好ましくは、2又は5つのレベルの修正を引き起こす場合、前記治療は効果的であると考慮される、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上皮中の上皮分化プロセスのモジュレータをスクリーニングするための方法であって、スクリーニングするモジュレータの適用前後に、請求項1から3の一項に記載の方法を用いて、前記上皮中の角化細胞の上皮分化の状態を評価することを含む方法。
【請求項12】
前記モジュレータが、天然抽出物、複合体製剤、DNA分子、miRNA、siRNA、miRNA阻害剤、antagomir又は照射、好ましくは可視、UV、IR又はX照射を用いた計測システムから得る化学成分である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上皮中の前記miRNAの少なくとも2つ、好ましくは、5つのレベルの修正を引き起こす場合、モジュレータが同定される、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項4から7の一項に記載の方法を用いて、基底層と角質層の間の前記上皮中に存在する上皮分化の差異を決定し;
それを、基底層と角質層の間の同一の型の正常上皮に存在する上皮分化の平均差異と比較することを含む、上皮の状態を診断するための方法。
【請求項15】
角化細胞の上皮分化の状態を決定するための、ヒト上皮サンプル中の角化細胞における、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現アッセイの使用。
【請求項16】
乾癬、アトピー性皮膚炎、座瘡、魚鱗癬、ネザートン症候群、毛孔性紅色粃糠疹、毛状角化症、ダリエー病、掌蹠角皮症及び汗孔角化症のような、上皮分化プログラムに関連する皮膚病を治療するための治療的使用のための、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNA、又は前記miRNAの1つの阻害剤、好ましくはantagomir。
【請求項17】
非病理的なヒト皮膚への化粧品適用のための、hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a and hsa−miR−30cから選択されるmiRNA、又は前記miRNAの1つのmiRNA阻害剤、好ましくはantagomirの使用。
【請求項18】
hsa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択されるmiRNA、前記miRNAの1つのmiRNA阻害剤、好ましくは、前記miRNAの1つのantagomirの個体の皮膚への局所適用を含む、非病理的美容状況における上皮分化に関連する疾患の治療方法。
【請求項19】
美容状況の上皮分化の前記疾患が、年齢、皮膚日射病、瘢痕化、皮膚乾燥若しくは硬化、又は、特に剥離剤、落屑剤、又は脱脂剤による化学物質負荷、又は機械的負荷を含む生理学的状態に関連する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
sa−miR−455−3p、hsa−miR−141、hsa−miR−148a、hsa−miR−182、hsa−miR−224、hsa−miR−26a、hsa−miR−26b、hsa−miR−361−5p、hsa−miR−425、hsa−miR−92b、hsa−let−7i、hsa−miR−22、hsa−miR−221、hsa−miR−222、hsa−miR−29a、hsa−miR−29b、hsa−miR−663、hsa−miR−30a及びhsa−miR−30cから選択される少なくとも1つのmiRNAの発現をアッセイするための手段を含む、ヒト角化細胞の分化の状態を決定するためのキット。

【公表番号】特表2013−503613(P2013−503613A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527323(P2012−527323)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062891
【国際公開番号】WO2011/026909
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】