説明

上階側床パネル配置用位置決め部材及びこれを用いた上階側床組構造

【課題】上階側床パネルの配置時に、上階側床パネルを下階壁組の隅部に精度良く直角配置でき、しかも床パネル配置に要する作業時間を短縮することができる上階側床パネル配置用位置決め部材及びこれを用いた上階側床組構造を得る。
【解決手段】上階側床パネル24が配置される前に、第1の壁パネル12と第2の壁パネル14とが直角に配置されて構成された外壁隅部10の上端部に直角パーツ40を予め固定しておき、これを基準として上階側床パネル24を配置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上階側床パネル配置用位置決め部材及びこれを用いた上階側床組構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラットホーム工法によってスチールハウス等の建物を構築する場合、下階側壁パネルを組み立てた後に上階側床パネルを据付け、この上階側床パネルを作業床にして上階側壁パネルを組み立てていく手順になる。
【0003】
この場合、上階側床パネルの配置時に、重量物である上階側床パネルをクレーンで吊り上げた状態で、下階側の外壁隅部の直角度を調整しながら、上階側床パネルを配置していく必要がある。このため、上階側床パネルの配置作業に長時間を要していた。
【特許文献1】特開平7−317278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、上階側床パネルの配置時に、上階側床パネルを下階壁組の隅部に精度良く直角配置でき、しかも床パネル配置に要する作業時間を短縮することができる上階側床パネル配置用位置決め部材及びこれを用いた上階側床組構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る上階側床パネル配置用位置決め部材は、上階側床パネルが配置される前に、下階側の外壁を構成する第1の壁パネルと第2の壁パネルとが直角に配置される壁隅部の上端部に予め固定され、第1の壁パネルの上端部に水平に配置される第1の構造材の外側縁又は内側縁に沿って配置される第1の位置決め部材と、この第1の位置決め部材と直角に配置された状態で連結されると共に第2の壁パネルの上端部に水平に配置される第2の構造材の外側縁又は内側縁に沿って配置される第2の位置決め部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載の上階側床パネル配置用位置決め部材において、前記第1の位置決め部材及び前記第2の位置決め部材は、前記上階側床パネルの根太を兼ねている、ことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2記載の上階側床パネル配置用位置決め部材において、前記上階側床パネルの根太は、フランジ幅が略同一に設定された一対の根太材を背中合わせに配置した側根太と、一本の根太材を使って構成された端根太と、を含んで構成されており、前記第1の位置決め部材は側根太を構成する一対の根太材の一方の端部に形成された第1の切除部に相対的に挿入されると共に、前記第2の位置決め部材は端根太を構成する一本の根太材の端部に形成された第2の切除部に相対的に挿入される、ことを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3記載の上階側床パネル配置用位置決め部材において、前記第2の位置決め部材における第1の位置決め部材と反対側の端部には、当該第2の位置決め部材と前記端根太を構成する根太材とを接合する接合部材が予め収納されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明に係る上階側床組構造は、下階側の外壁を構成する第1の壁パネルと第2の壁パネルとが直角に配置される壁隅部の上端部に固定された請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載された上階側床パネル配置用位置決め部材と、この上階側床パネル配置用位置決め部材を床根太として用いた上階側床パネルと、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、第1の壁パネルと第2の壁パネルを用いて下階側の外壁(下階壁組)が構成された後に上階側床パネルが配置される。
【0011】
ここで、本発明では、上階側床パネルが配置される前に、第1の壁パネルと第2の壁パネルとが直角に配置されることにより形成された壁隅部の上端部に上階側床パネル配置用位置決め部材が予め固定される。固定に際しては、上階側床パネル配置用位置決め部材の第1の位置決め部材が第1の壁パネルの上端部に配置される第1の構造材の外側縁又は内側縁に沿って配置される。同様に、第2の位置決め部材が第2の壁パネルの上端部に配置される第2の構造材の外側縁又は内側縁に沿って配置される。これにより、第1の壁パネルと第2の壁パネルとの直角度を精度良く出すことができる。なお、上階側床パネル配置用位置決め部材は上階側床パネルに比べれば非常に軽量なので、上階側床パネル配置用位置決め部材の取付作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0012】
上記の如くして壁隅部の上端部に固定された上階側床パネル配置用位置決め部材を基準にして上階側床パネルを壁隅部から順次配置していけば、第1の壁パネルと第2の壁パネルとの直角度を調整する手間を大幅に省くことができるので、非常に短時間で上階側床パネルの配置作業を完了することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、上階側床パネル配置用位置決め部材を構成する第1の位置決め部材及び第2の位置決め部材が上階側床パネルの根太を兼ねている。つまり、本発明の上階側床パネル配置用位置決め部材は位置決め金物ではなく建物を構築するための構造材であり、言い換えると、本発明は構造材を使って上階側床パネル配置用位置決め部材を成立させたものといえる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、上階側床パネルの根太は一対の根太材を背中合わせに配置した側根太と一本の根太材を使って構成された端根太とを含んで構成されており、側根太に形成された第1の切除部に第1の位置決め部材が相対的に挿入されると共に、端根太に形成された第2の切除部に第2の位置決め部材が相対的に挿入される。
【0015】
このように予め第1の切除部及び第2の切除部を設けておくことにより、第1の切除部と第1の位置決め部材とを対応させると共に第2の切除部と第2の位置決め部材を対応させながら上階側床パネルをクレーンで吊りながら降ろせば、上階側床パネルを配置した時点で上階側床パネルの位置決め作業が完了すると共に、根太材と第1の位置決め部材、第2の位置決め部材との連続性も担保される。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、上階側床パネルが配置された後、第2の位置決め部材における第1の位置決め部材と反対側の端部に予め収納された接合部材を用いて、第2の位置決め部材と端根太の根太材とを接合することができる。
【0017】
請求項5記載の本発明によれば、下階側の外壁を構成する第1の壁パネルと第2の壁パネルとが直角に配置される壁隅部の上端部に請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載された上階側床パネル配置用位置決め部材が固定された後、上階側床パネル配置用位置決め部材を基準にして上階側床パネルを容易かつ正確に配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る上階側床パネル配置用位置決め部材は、上階側床パネルの配置時に、上階側床パネルを下階壁組の隅部に精度良く直角配置でき、しかも床パネル配置に要する作業時間を短縮することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明に係る上階側床パネル配置用位置決め部材は、元々必要な構造材を使って上階側床パネル配置用位置決め部材を構成したので、部材に無駄が無く、経済的であるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明に係る上階側床パネル配置用位置決め部材は、上階側床パネルを吊り降ろすと同時に上階側床パネルの位置決め作業が完了すると共に根太材と第1の位置決め部材、第2の位置決め部材との連続性を担保することができ、その結果、上階側床パネルの配置に要する作業時間を更に短縮することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4記載の本発明に係る上階側床パネル配置用位置決め部材は、第2の位置決め部材と端根太の根太材とを迅速かつ容易に接合することができ、作業効率の向上及び床パネル配置に要する作業時間の更なる短縮を図ることができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5記載の本発明に係る上階側床組構造は、上階側床パネルの配置時に、上階側床パネルを下階壁組の隅部に精度良く直角配置でき、しかも床パネル配置に要する作業時間を短縮することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る上階側床パネル配置用位置決め部材及びこれを用いた上階側床組構造の一実施形態について説明する。
【0024】
(本実施形態の全体構成)
図1には、上階側床パネルを下階側の外壁の隅部に組み付ける前の状態が斜視図で示されている。また、図2には、上階側床パネルを下階側の外壁の隅部に組み付けた状態が斜視図で示されている。さらに、図3には、上階床配置図が示されている。
【0025】
図1(及び図2)に示されるように、下階側の外壁隅部10は、第1の壁パネル12と第2の壁パネル14とを直角に配置することにより構成されている。第1の壁パネル12は、壁パネル上縁側に配置された上枠ランナー16と、壁パネル下縁側に配置された下枠ランナー(図示省略)と、上枠ランナー16と下枠ランナーとを壁パネル高さ方向に繋ぐ複数本のスタッド(図示省略)と、を構造材として備えている。なお、一例として、上枠ランナー16及び下枠ランナーはいずれも溝形鋼で構成されており、スタッドはリップ付き溝形鋼で構成されている。また、上記第1の壁パネル12の屋外側の面には、外壁面材である合板18が取り付けられている。
【0026】
第2の壁パネル14も第1の壁パネル12と同様に構成されており、上枠ランナー20、下枠ランナー(図示省略)、複数本のスタッド(図示省略)、及び合板22といった構成要素を備えている。
【0027】
一方、上階側床パネル24は、所定の間隔で平行に配置された複数本の側根太26と、これらの側根太26の長手方向の端部側を塞ぐように直角に配置された端根太28と、を構造材として備えている。なお、一例として、側根太26は、二本のリップ付き溝形鋼30、32を背中合わせに配置して、双方のウェブ同士をビスで接合することにより構成されている。また、側根太26の長手方向の適宜位置には、リップ付き溝形鋼によって構成された補強金物34が立設状態で配置されている。これに対し、端根太28は、一本の溝形鋼36によって構成されている。さらに、上記構成の上階側床パネル24の上面側には、上階側床面材であるパーチクルボード38が取り付けられている。
【0028】
図3に示されるように、本実施形態では、上記構成の上階側床パネル24が合計6枚配置されている。なお、図3の紙面左右方向(矢印A方向)が上階側床パネル24の長辺方向であり、又図3の紙面上下方向(矢印B方向)が上階側床パネル24の短辺方向である。
【0029】
(本実施形態の要部構成)
上述した下階側の三箇所(上階側床パネル24を配置する際の位置決め基準となる箇所)の外壁隅部10には、上階側床パネル配置用位置決め部材としての直角パーツ40が配置されており、以下に詳細に説明する。
【0030】
図1及び図2に示されるように、直角パーツ40は、第1の壁パネル12の上枠ランナー16上に設置される第1パーツ部42と、この第1パーツ部42と直角に配置されて第2の壁パネル14の上枠ランナー20上に設置される第2パーツ部44と、によって構成されている。第1パーツ部42は、第1の壁パネル12の上枠ランナー16の屋外側の端縁(外側縁)に沿って配置されている。同様に、第2パーツ部44は、第2の壁パネル14の上枠ランナー20の屋外側の端縁(外側縁)に沿って配置されている。
【0031】
第1パーツ部42は、リップ付き溝形鋼で構成された第1支持体46と、この第1支持体46の長手方向の両端部に立設状態で配置された一対の補強体48と、によって構成されている。なお、第1支持体46は、ウェブ46A、上フランジ46B、下フランジ46C、上リップ46D、及び下リップ46Eによって構成されており、屋外側が開放側となるように配置されている。補強体48も、ウェブ48A、左フランジ48B、右フランジ48C、左リップ48D、及び右リップ48Eによって構成されたリップ付き溝形鋼で構成されている。補強体48の左リップ48D及び右リップ48Eが第1支持体46のウェブ46Aに接合されており、又補強体48のウェブ48Aの上端部及び下端部が第1支持体46の上リップ46D、下リップ46Eに接合されている。
【0032】
一方、第2パーツ部44は、溝形鋼で構成された第2支持体50と、この第2支持体50の長手方向の一端部に開閉可能に収納された接合部材52と、によって構成されている。第2支持体50は、ウェブ50A、上フランジ50B、及び下フランジ50Cによって構成されている。第2支持体50の長手方向の他端部は、第1パーツ部42の第1支持体46の長手方向の端部に重合されて接合されている。これにより、平面視で見ると、第1パーツ部42及び第2パーツ部44によってアングル形状を成す直角パーツ40が形成されている。
【0033】
図4にも示されるように、接合部材52は、ウェブ52A、上フランジ52B、下フランジ52C、上リップ52D、及び下リップ52Eによって構成されたリップ付き溝形鋼で構成されている。因みに、図4(A)に示される状態が接合部材52の収納状態(図1図示状態)であり、図4(B)に示される状態が接合部材52の使用状態(図2図示状態)である。接合部材52の上フランジ52B及び下フランジ52Cの片側の端部は平面視で三角形状に形成されており、この部分が第2支持体50の上フランジ50B及び下フランジ50Cに支軸54(図1、図2参照)回りに回動可能(開閉可能)に支持されている。
【0034】
また、図1に示されるように、外壁隅部10に配置される上階側床パネル24の側根太26における屋外側に位置するリップ付き溝形鋼30の長手方向の端部は、第1パーツ部42の長手方向寸法分だけ切除されている(以下、この切除された部分を「第1切除部56」という)。当該上階側床パネル24が外壁隅部10の上端部に組み付けられた状態では、第1切除部56に第1パーツ部42が相対的に挿入されて納まるようになっている。すなわち、一対のリップ付き溝形鋼30、32から成る側根太26の幅方向寸法Xは第1の壁パネル12の上枠ランナー16の幅方向寸法Yに略一致されており、その1/2の長さが第1パーツ部42の幅方向寸法Z(=リップ付き溝形鋼30、32のそれぞれの幅方向寸法)に設定されている。なお、第1パーツ部42における第1支持体46のウェブ46Aと屋内側に配置されたリップ付き溝形鋼32のウェブとがビス締めされることにより、両者は接合されている。
【0035】
同様に、外壁隅部10に配置される上階側床パネル24の端根太28の長手方向の端部は、第2パーツ部44の長手方向寸法分だけ切除されている(以下、この切除された部分を「第2切除部58」という)。当該上階側床パネル24が外壁隅部10の上端部に組み付けられた状態では、第2切除部58に第2パーツ部44が納まるようになっている。すなわち、リップ付き溝形鋼36の幅方向寸法Pは、第2パーツ部44の幅方向寸法Qに略一致されている。なお、第2パーツ部44の第2支持体50のウェブ50Aに接合部材52が支軸54回りに180度回動されることにより、接合部材52のウェブ52Aとリップ付き溝形鋼36のウェブとが面接触状態で重なり、この状態でビス締めされることにより、接合部材52を介して第2パーツ部44とリップ付き溝形鋼36(端根太28)とが接合されている。
【0036】
上記により、第1パーツ部42は側根太26の屋外側のリップ付き溝形鋼30に長手方向に連続して配置され、側根太26の一部を兼ねている。また、第2パーツ部44は端根太28を構成するリップ付き溝形鋼36に長手方向に連続して配置され、端根太28の一部を兼ねている。そして、上階側床パネル24が外壁隅部10に組み付けられた状態では、第1パーツ部42及び第2パーツ部44から成る直角パーツ40も含めて上階側床組60が形成される構成である。
【0037】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0038】
プラットホーム工法で住宅等の建物を建てる場合、まず基礎及び土台を構築した後、一階床組を組立て、これをプラットホーム(作業台)として、一階壁組を建て起こす。次に、二階床組を組立て、これをプラットホーム(作業台)として、二階壁組を建て起こす。その後、天井枠組を組立て、小屋組を設置するといった手順になる。
【0039】
ここで、本実施形態では、第1の壁パネル12及び第2の壁パネル14によって構成された外壁隅部10を含む一階壁組を組み立てた後、上階側床パネル24を配置する前に、直角パーツ40が外壁隅部10の上端部に設置される。なお、この時点では、接合部材52は第2パーツ部44内に収納された状態(図1及び図4(A)図示状態)とされる。直角パーツ40が設置された状態では、直角パーツ40の第1パーツ部42が第1の壁パネル12の上枠ランナー16の外側縁に沿って配置され、第2パーツ部44が第2の壁パネル14の上枠ランナー20の外側縁に沿って配置される。逆に言えば、直角パーツ40を壁パネルの直角度の基準として用い、第1の壁パネル12と第2の壁パネル14との直角配置の精度が調整される。なお、直角パーツ40は上階側床パネル24に比べれば非常に軽量な部材であるので、取付作業を容易かつ安全に行うことができる。
【0040】
次に、外壁隅部10の上端部に設置された直角パーツ40を位置決めの基準として上階側床パネル24をクレーンで吊り込んで配置していく。本実施形態では、図3に示されるように、三箇所の出隅に直角パーツ40が予め設置されるので、まずこの三箇所の出隅に上階側床パネル24が配置される。上階側床パネル24が配置された後、第2パーツ部44内に収納されていた接合部材52を支軸54回りに回動させて、端根太28を構成するリップ付き溝形鋼36に密着した使用状態(図2及び図4(B)図示状態)とし、ビス締めすることにより両者が接合(連結)される。これにより、三箇所の出隅に上階側床パネル24が精度良く位置決めされた状態で配置される。その後、直角パーツ40を用いて配置された三枚の上階側床パネル24を新たな基準として、残りの上階側床パネル24が配置されていく(なお、本実施形態では、上階側床パネル24は、一例として図3に付記した(1)から(6)の順に配置される)。
【0041】
以上により、本実施形態によれば、上階側床パネル24の配置時に、上階側床パネル24を下階壁組の外壁隅部10に精度良く直角配置でき、しかも床パネル配置に要する作業時間を短縮することができる。
【0042】
また、本実施形態では、直角パーツ40を予め設置した後、図1図示の上階側床パネル24を組み付けると、直角パーツ40を構成する第1パーツ部42が側根太26の第1切除部56に相対的に進入し、第1パーツ部42のリップ付き溝形鋼30を側根太26の屋内側に配置されたリップ付き溝形鋼32にビス締めすることにより、第1パーツ部42が側根太26の屋外側に配置されたリップ付き溝形鋼30と長手方向に連続して一体を成し、側根太26の一部となる。同様に、直角パーツ40を構成する第2パーツ部44が端根太28を構成するリップ付き溝形鋼36の第2切除部58に相対的に進入し、接合部材52を介して相互に接合(連結)されることにより、第2パーツ部44が端根太28と長手方向に連続して一体を成し、端根太28の一部となる。つまり、直角パーツ40は、位置決め金物ではなく建物を構築するための構造材として機能する。言い換えると、本実施形態の直角パーツ40は、(上階側床パネル24の)構造材を使って上階側床パネル配置用位置決め部材を成立させたものといえる。その結果、本実施形態によれば、部材に無駄が無く、経済的であるというメリットが得られる。
【0043】
さらに、前記のように、側根太26、端根太28に第1切除部56、第2切除部58を予め設けておくことにより、上階側床パネル24をクレーンで吊り降ろすと同時に上階側床パネル24の位置決めがなされると共に側根太26及び端根太28と直角パーツ40との連続性も確保される。よって、この点(つまり、上階側床パネル24の配置と同時に第1切除部56、第2切除部58が第1パーツ部42、第2パーツ部44によって埋められるので、上階側床パネル24の配置作業と直角パーツ40を基準とした位置決め作業とが同時になされるという点)からも、上階側床パネル24の配置に要する作業時間を更に短縮することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上階側床パネル24の配置後に、接合部材52を第2パーツ部44内への収納状態から使用状態にしてビス締めすれば、第2パーツ部44と端根太28を構成するリップ付き溝形鋼36とを接合することができる。このため、第2パーツ部44と端根太28とを迅速かつ容易に接合することができ、この点からも、作業効率の向上及び床パネル配置に要する作業時間の短縮を図ることができる。
【0045】
なお、上述した本実施形態では、図3に示されるような上階側床パネル24の配置を採ったが、これに限らず、図5に示されるように、建物にキャンチ部(張り出し)62がある場合には、当該キャンチ部62がない長辺側の両端部に直角パーツ40を配置すればよい。この場合、図5に付記した(1)から(6)の順に上階側床パネル24を配置するようにすれば、床全体の矩(かね)を出すことができる。
【0046】
〔開示例〕
以下、図6〜図8を用いて、上記実施形態とは異なる床構造を開示を目的として説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0047】
図6〜図8に示されるように、この開示例では、建物にキャンチ部(張り出し)62がある場合において、当該キャンチ部62がない長辺上に長尺状の床梁を兼ねたガイドレール70を、上階側床パネル24の配置前に予め設置し、このガイドレール70を基準にして上階側床パネル24を図6に付記した(1)から(7)の順に配置するようにすれば、上階側床パネル24を精度良く短時間で配置することができる、というものである。
【0048】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した本実施形態では、直角パーツ40の第1パーツ部42の外側縁と第1の壁パネル12の上枠ランナー16の外側縁とが一致するように配置すると共に、第2パーツ部44の外側縁と第2の壁パネル14の上枠ランナー20の外側縁とが一致するように配置する構成を採ったが、これに限らず、第1パーツ部42の内側縁と第1の壁パネル12の上枠ランナー16の内側縁とが一致するように配置すると共に、第2パーツ部44の内側縁と第2の壁パネル14の上枠ランナー20の内側縁とが一致するように配置する構成を採ってもよい。
【0049】
また、上述した本実施形態では、第1パーツ部42及び第2パーツ部44が上階側床パネル24の構造材である側根太26及び端根太28を兼ねる構成を採ったが、請求項1記載の本発明には、直角パーツの第1の位置決め部材及び第2の位置決め部材が上階側床パネルの構造材としての機能を持たない構成も含まれる。
【0050】
さらに、上述した本実施形態では、接合部材52が第2パーツ部44に支軸54回りに回動可能とされることで接合部材52が第2パーツ部44に予め一体的に設けられていたが、これに限らず、接合部材を反転させた状態(図2図示状態の向き)でかつスライド可能に第2パーツ部44に支持することで接合部材を第2パーツ部44に予め収納可能とする構成にしてもよい。また、接合部材は必ずしも第2パーツ部に一体化されている必要はなく、建築地で取り付けてもよい。
【0051】
また、上述した本実施形態では、スチールハウスをプラットホーム工法で構築することを想定して説明したが、これに限らず、外壁隅部上に上階側床パネルをクレーン等で吊り上げて配置していくものであれば本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態に係り、外壁隅部の上端部に直角パーツ設置後、上階側床パネルを配置する前の状態を示す要部拡大斜視図である。
【図2】図1に示される状態から上階側床パネルを配置した組付後の状態を示す要部拡大斜視図である。
【図3】上階側床パネルのパネル配置図である。
【図4】直角パーツに設けられた接合部材を単品で示す斜視図であり、(A)は収納時の斜視図、(B)は使用時の斜視図である。
【図5】上階側床パネルのパネル配置の変形例を示すパネル配置図である。
【図6】開示例に係り、上階側床パネルの長辺側に長尺状のガイドレールを配置した構成のパネル配置図である。
【図7】図6に示されるガイドレールを使った上階側床パネルの位置決めの仕方を示す要部拡大斜視図である。
【図8】(A)は上階側床パネルの組付後の状態を示す側面図であり、(B)は上階側床パネルの組付前の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 外壁隅部
12 第1の壁パネル
14 第2の壁パネル
16 上枠ランナー(第1の構造材)
20 上枠ランナー(第2の構造材)
24 上階側床パネル
26 側根太(根太)
28 端根太(根太)
30 リップ付き溝形鋼
32 リップ付き溝形鋼
36 リップ付き溝形鋼
40 直角パーツ(上階側床パネル配置用位置決め部材)
42 第1パーツ部(第1の位置決め部材)
44 第2パーツ部(第2の位置決め部材)
52 接合部材
54 支軸
56 第1切除部
58 第2切除部
60 上階側床組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階側床パネルが配置される前に、下階側の外壁を構成する第1の壁パネルと第2の壁パネルとが直角に配置される壁隅部の上端部に予め固定され、
第1の壁パネルの上端部に水平に配置される第1の構造材の外側縁又は内側縁に沿って配置される第1の位置決め部材と、この第1の位置決め部材と直角に配置された状態で連結されると共に第2の壁パネルの上端部に水平に配置される第2の構造材の外側縁又は内側縁に沿って配置される第2の位置決め部材と、を有することを特徴とする上階側床パネル配置用位置決め部材。
【請求項2】
前記第1の位置決め部材及び前記第2の位置決め部材は、前記上階側床パネルの根太を兼ねている、
ことを特徴とする請求項1記載の上階側床パネル配置用位置決め部材。
【請求項3】
前記上階側床パネルの根太は、フランジ幅が略同一に設定された一対の根太材を背中合わせに配置した側根太と、一本の根太材を使って構成された端根太と、を含んで構成されており、
前記第1の位置決め部材は側根太を構成する一対の根太材の一方の端部に形成された第1の切除部に相対的に挿入されると共に、前記第2の位置決め部材は端根太を構成する一本の根太材の端部に形成された第2の切除部に相対的に挿入される、
ことを特徴とする請求項2記載の上階側床パネル配置用位置決め部材。
【請求項4】
前記第2の位置決め部材における第1の位置決め部材と反対側の端部には、当該第2の位置決め部材と前記端根太を構成する根太材とを接合する接合部材が予め収納されている、
ことを特徴とする請求項3記載の上階側床パネル配置用位置決め部材。
【請求項5】
下階側の外壁を構成する第1の壁パネルと第2の壁パネルとが直角に配置される壁隅部の上端部に固定された請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載された上階側床パネル配置用位置決め部材と、
この上階側床パネル配置用位置決め部材を床根太として用いた上階側床パネルと、
を有することを特徴とする上階側床組構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−150873(P2008−150873A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340432(P2006−340432)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】