説明

下地構造の止水板及び止水システム

【課題】 外装材の取付けが簡単で目地の止水性を有する下地構造の止水板及び止水システムを提供する。
【解決手段】 外壁材12の取付けにより形成される縦の目地18aは、左右に隣り合う2つの外壁材12のパネル本体12aの側面部と、外壁材12の第二差込み部12dとで形成される。第二差込み部12dは、第一ハゼ部12cに当接している。縦の目地18aに降り注ぐ雨水22は、目地18aに沿って下方に落下する。また、雨水22が第二差込み部12dと第一ハゼ部12cの当接部分から浸入した場合、その浸入した雨水22は、第二差込み部12d、第一ハゼ部12cおよび導水部12fにより形成される隙間24を流れ下方に落下する。また、隙間24に浸入した雨水22が、第二差込み部12dと導水部12fの当接部分から浸入した場合は、その雨水22は、止水板14により下方に流される。止水板14に流出する雨水22は、止水板14の導水部14a、14bに遮られるため、外装材12間からの雨水22の浸入を阻止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁材の目地の止水性を確保するための下地構造の止水板及び止水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁工事では、建築物を風雨から守る外装用パネル等の外装材を下地に取り付ける工事が行われる。下地は、アングル材(山形鋼)等の下地金属を縦横に組んだ骨組みであり、格子状に組まれる。外装材は、縦横に組んだ下地金属により形成される格子の枠にビスを用いて固定し取り付けられる。従来、外装材の継ぎ目(以下、「目地」という。)には、ビスを隠し又止水性を確保するためにシーリング材が充填されている。シーリング材には、断熱材、モルタル、シール、パテ等が使用されている。
【0003】
しかし、シーリング材の充填は手間がかかり、コスト高となるという問題があった。また、シーリング材の劣化により止水性が低下するという問題もあった。そこで、近年では、目地にシーリング材を充填しない構造が提供されている(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4248596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の外装構造は、アルミ合金の押出形材で一体成形された見付け片と見付け片の左右方向中央部より躯体側に突出する見込み片と、見込み片の左右両側に設けた止水ゴムとを有する目地棒を目地に取り付けるものである。止水ゴムは、左右に隣接する外装パネルの側面壁にそれぞれ当接しており、見付け片により止水ゴムが隠蔽されている。これにより、外装パネルを上下面を互いに当接させながら下のものから順番に配置し、取付片を縦樋兼下地材の側壁と目地棒取付部との間の底壁にビス止めすることで、外装パネルを1枚ずつ簡単に取付けでき、目地棒は見込み片の先端部に設けた係合部を縦樋兼下地材の目地棒取付部に屋外側から係合するだけで簡単に取付けできるので、施工が容易となる。また、目地棒の見付け片と止水ゴムにより左右の外装パネル間からの雨水の浸入を阻止できる。
【0006】
特許文献1の外装構造は、従来のシーリング材に代えて、止水ゴム等からなる止水手段を使用する目地棒を用いるものである。
しかし、目地棒は、外装材と材料が異なる止水手段(止水ゴム等)を使用することから、コスト高となる。また、外装材の取付け後に目地棒の取付作業を行わなければならず、外装材の取付け以外の作業が必要となることから、コストを軽減できるものではなかった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであって、外装材の取付けが簡単で目地の止水性を有する下地構造の止水板及び止水システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の下地構造の止水板は、矩形の鋼板の表面にその鋼板の左右の長辺部分を折り曲げて導水部を形成し、下部の先端にテーパー状の挿入部を形成したものであって、縦材の下地金属のフランジに裏面を当接させてビスを用いて固定するようにしたものである。
【0009】
本発明の下地構造の止水システムは、前記止水板と外壁材とからなるものであって、前記外壁材は、略筺体のパネル本体と、パネル本体上部側面の底部から張り出す第一差込み部と、パネル本体右側面又は左側面の底部に形成される第一ハゼ部と、パネル本体左側面又は右側面の底部から張り出す第二差込み部と、パネル本体下部側面の底部に形成される第二ハゼ部とを有し、横材の下地金属のフランジに第一差込み部を固定し、縦材の下地金属のフランジに第一ハゼ部を固定し、当該固定した外壁材の上方の下地の枠に固定する他の外壁材の第二ハゼ部に前記固定した外壁材の第一差込み部を挿入して他の外壁材の第一差込み部および第一ハゼ部を横材および縦材に固定し、また、前記固定した外壁材の右方向又は左方向の下地の枠に固定する他の外壁材の第二差込み部を前記固定した外壁材の第一ハゼ部に挿入して他の外壁材の第一差込み部および第一ハゼ部を横材および縦材に固定するようにしたものである。
また、前記第一ハゼ部の先端部を折り曲げて導水部を形成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の下地構造の止水板は、目地の背面に設けられるものであり、目地から浸入する雨水を建築物の下方に導く構造となっている。これにより、外壁材間から浸入する雨水を止水することができる。
【0011】
本発明の下地構造の止水システムは、外壁材とその外壁材と同一の材料で形成される上記止水板とから構成されるものである。外壁材と異なる素材からなる止水手段を使用する特許文献1の外装構造では、異なる素材を用いるためコスト高となるが、本発明の止水システムは、同一素材で止水手段を形成するため、コストを軽減することができる。
また、本発明の止水システムは、下地金属のフランジにビスを用いて止水板および外壁材を取り付ける簡単な作業で組み立てることができる。これにより、外装工事の作業効率を向上させることができる。
また、外壁材の連結部にハゼ(馳)構造を設けることにより、外壁材の取付作業の容易となるとともに、止水性の優れた外装工事を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の下地構造の止水システムを用いて外壁材を取り付けた建築物の外壁を表わす図である。
【図2】図1の止水板を表わす図である。
【図3】図1の外壁材を表わす図である。
【図4】図3のA−A線端面図である。
【図5】図3のB−B線端面図である。
【図6】図1のC−C線端面図である。
【図7】図1のD−D線端面図である。
【図8】図7の差込み(取り付け)状態を表わす斜視図である。
【図9】図6のE−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、外壁材と同一の素材を用いて止水性を有する外壁材の取付けを行うことを実現するものである。
【実施例1】
【0014】
本発明の下地構造の止水板および止水システムを図に基づいて説明する。図1は、本発明の下地構造の止水システムを用いて外壁材を取り付けた建築物の外壁を表わす図である。図2は、図1の止水板を表わす図であり、図(a)は平面図、図(b)は正面図である。図3は、図1の外壁材を表わす図である。図4は図3のA−A線端面図、図5は図3のB−B線端面図、図6は図1のC−C線端面図、図7は図1のD−D線端面図、図8は図7の差込み(取り付け)状態を表わす斜視図、図9は図6のE−E線断面図である。
図1の下地構造の止水システム10は、外装材(外装パネル)12と、外装材12の背面に設ける止水板14とから形成されるものである。すなわち、止水板14は、下地構造を形成する縦横に組まれた下地金属(アングル材)16の縦材のフランジに沿って取り付けられ、その止水板14の上に外装材12が取り付けられる(図9)。
なお、外装材12のパネル本体12a間には、目地18a、18bが縦横に形成されている。
【0015】
本発明の止水板14は、外装材12と同一素材の矩形の鋼板の表面にその鋼板の左右の長辺部分を折り曲げて形成される導水部14a、14bを有するものである(図2(a))。また、止水板14の下部先端部14cには、導水部14a、14bを有せず、テーパー状の挿入部が形成されている(図2(b))。
止水板14は、縦材の下地金属のフランジ16aに裏面を当接させてビスを用いて固定する(図9)。止水板14同士を連結する場合は、止水板14の上部(頭部)14d(図2(a))の導水部14a、14bの隙間に止水板14の下部14cを挿入する(図9)。
なお、止水板の幅は、下地金属のフランジの幅より広く形成されている。
【0016】
外装材12は、略筺体のパネル本体12aと、パネル本体12a上部側面の底部から張り出す第一差込み部12bと、パネル本体12a右側面の底部に形成される第一ハゼ(馳)部12cと、パネル本体12a左側面の底部から張り出す第二差込み部12dと、パネル本体12a下部側面の底部に形成される第二ハゼ(馳)部12eとを有する外装パネルである。上記外装材12の構成部は一体形成されており、外装材12は、1枚の鋼板の板金加工により成型できる量産可能なものである(図4、図5)。
第一ハゼ部12cには、他の外装材12の第二差込み部12dを挿入できるようになっている(図6)。第二ハゼ部12eには、他の外装材12の差込み部12bを挿入できるようになっている(図7、図8)。
また、第一ハゼ部12cは、その先端部を折り曲げて、止水板14の導水部14a、14bと同様に形成する導水部12fを有する。
なお、外装材12において、第一ハゼ部12cと第二差込み部12dを左右逆の位置に形成してもよい。
【0017】
第一ハゼ部12cには、下地金属の縦材16aのフランジに外装材12を固定するビス20を打ち込むための穴部12gが設けられている。
また、穴部12gに打ち込まれたビス20は、第一ハゼ部12cに他の外装材12の第二差込み部12dを挿入した際、第二差込み部12dによって覆われるため、目地18に現れることはない(図6)。
【0018】
第一差込み部12bには、下地金属の横材16bのフランジに外装材12を固定するビス20を打ち込むための穴部12gが設けられている。
また、第二ハゼ部12eには、既に取り付けられた外装材12の差込み部12bを他の外装材12の第二ハゼ部12eに挿入させる際(既に固定されている外装材12の上方の枠に他の外装材12を取り付ける際)、固定された外装材12の穴部12gに打ち込まれているビス20が挿入される位置に切欠部12hが設けられている(図3、図7、図8)。切欠部12hを設けることにより、固定された外装材12の第一差込み部12bを次に取り付ける外装材12の第二ハゼ部12eに確実に挿入させることができ、当該2つの外装材12を連結することができる。
なお、第一差込み部12bの穴部12gは、その第一差込み部12bが他の外装材12の第二ハゼ部12eに挿入された際、打ち込まれたビス20が第二ハゼ部12eに収納される位置に設けられている(図7、図8)。これにより、第一差込み部12bの穴部12gに打ち込まれたビス20は目地18に現れないようにすることができる(図7、図8)。
【0019】
次に、本発明の止水システムを用いた外装工事の手順について、図を用いて説明する。
(止水板の取付け)
下地を形成する縦材16a(アングル材)のフランジに止水板14の背面(導水部14a、14bが形成されていない面)を当接させ、ビス20を用いて固定し取り付ける(図9)。
(外壁材の取付け)
下地構造の左下の枠を形成する縦材16aのフランジに外壁材12の第一ハゼ部12cを、外壁材12の横材16bのフランジに外壁材12の第一差込み部12bをそれぞれビス20を用いて固定する(図6、図7、図8)。
上記固定した外壁材12の上方の下地の枠に固定する他の外壁材12の第二ハゼ部12eに前記固定した外壁材12の第一差込み部12bを挿入して、他の外壁材12の第一差込み部12bおよび第一ハゼ部12cをそれぞれ横材16bおよび縦材16aに固定し、下地に他の外壁材12を固定し取り付ける。また、前記固定した外壁材12の右方向の下地の枠に固定する他の外壁材12の第二差込み部12dを前記固定した外壁材12の第一ハゼ部12cに挿入して他の外壁材12の第一差込み部12bおよび第一ハゼ部12cを横材16bおよび縦材16aに固定し取り付ける。上記外壁材12の取付作業を繰り返すことにより、下地全体に外壁材12を取り付けることができる。
【0020】
本発明では、下地金属のフランジにビスを用いて止水板および外壁材を取り付ける簡単な作業で外壁材を取り付けることができることから、本発明により、外装工事の作業効率を向上させることができる。
また、本発明は、外壁材と同一の材料で形成される止水板とを用いて止水手段を形成するものであるため、異なる材料を用いて止水手段を形成する従来の技術に比べてコストを軽減することができる。
【0021】
次に、本発明の止水システムの止水性について、図を用いて説明する。
外壁材12の取付けにより形成される縦の目地18aは、左右に隣り合う2つの外壁材12のパネル本体12aの側面部と、外壁材12の第二差込み部12dとで形成される(図6)。図6において、第二差込み部12dは、第一ハゼ部12cに差し込まれている。縦の目地18aに降り注ぐ雨水22は、目地18aに沿って下方に流れる。その際、雨水22の一部は、第二差込み部12dと第一ハゼ部12cの隙間24を通るが、導水部12fにより遮られ下方に流れる。また、導水部12fから漏れる雨水22は、止水板14により下方に流される。止水板14に漏れた雨水22は、止水板14の導水部14a、14bに遮られるため、外装材12間からの雨水22の浸入を阻止できる。
【0022】
外壁材12の取付けにより形成される横の目地18bは、上下2つの外壁材12のパネル本体12aの側面部と、外壁材12の第一差込み部12bとで形成される(図7、図8)。図7において、第一差込み部12bは第二ハゼ部12eに当接している。また、第二ハゼ部12eは目地18bの上方に位置するため、目地18bに降り注ぐ雨水22がハゼ部12eを通り下地構造に浸入し難い構造となっている。
【0023】
なお、本発明の止水システムでは、上下左右の4つの外壁材12で囲まれる領域、すなわち縦の目地18aと横の目地18bとが交差する部分26(隙間)は、第一差込み部12b又は第二差込み部12dで覆われないため、交差する部分26の隙間から雨水22が浸入するおそれがある。しかし、交差する部分26の隙間から浸入した雨水22は、止水板14に遮られ下地には浸入しないため、止水性は確保される。
【0024】
以上のように、本発明によると、外壁材の連結部にハゼ構造を設けることにより、外壁材の取付作業の容易となるとともに、止水性の優れた外装工事を提供することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 止水システム
12 外壁材
12a パネル本体
12b 第一差込み部
12c 第一ハゼ部
12d 第二差込み部
12e 第二ハゼ部
12f 導水部
14 止水板
14a、14b 導水部
14c 挿入部
16 下地金属
16a 縦材
16b 横材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の鋼板の表面にその鋼板の左右の長辺部分を折り曲げて導水部を形成し、下部の先端にテーパー状の挿入部を形成したものであって、縦材の下地金属のフランジに裏面を当接させてビスを用いて固定することを特徴とする下地構造の止水板。
【請求項2】
請求項1記載の止水板と外壁材とからなるものであって、前記外壁材は、略筺体のパネル本体と、パネル本体上部側面の底部から張り出す第一差込み部と、パネル本体右側面又は左側面の底部に形成される第一ハゼ部と、パネル本体左側面又は右側面の底部から張り出す第二差込み部と、パネル本体下部側面の底部に形成される第二ハゼ部とを有し、横材の下地金属のフランジに第一差込み部を固定し、縦材の下地金属のフランジに第一ハゼ部を固定し、当該固定した外壁材の上方の下地の枠に固定する他の外壁材の第二ハゼ部に前記固定した外壁材の第一差込み部を挿入して他の外壁材の第一差込み部および第一ハゼ部を横材および縦材に固定し、また、前記固定した外壁材の右方向又は左方向の下地の枠に固定する他の外壁材の第二差込み部を前記固定した外壁材の第一ハゼ部に挿入して他の外壁材の第一差込み部および第一ハゼ部を横材および縦材に固定することを特徴とする下地構造の止水システム。
【請求項3】
前記第一ハゼ部の先端部を折り曲げて導水部を形成することを特徴とする請求項2記載の下地構造の止水システム。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21327(P2012−21327A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160243(P2010−160243)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(595073498)勝又金属工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】