説明

下地調整材組成物

【課題】硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れる下地調整材組成物の提供。
【解決手段】ウレタン系防水材の下地調整材組成物であって、合成樹脂エマルジョンを含有する硬化剤成分と、ウレタンプレポリマーを含有する主剤成分と、珪砂、セメントおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する粉体成分とを含有し、前記ウレタンプレポリマーの含有量が、前記合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対して10〜1100質量部であり、前記粉体成分の含有量が、前記合成樹脂エマルジョンの固形分と前記ウレタンプレポリマーとの合計100質量部に対して15〜1500質量部である下地調整材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系防水材の下地調整材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や一般の建築物等の屋上や屋根は、施工後外気に曝されるため、防水性、耐候性が要求され、更にその建築物の外観の一部をなすために、意匠性も要求されることが多い。
そのため、屋上等をモルタル製やコンクリート製の無機材で施工する場合は、通常、表面を防水材で被覆することが行われている。
例えば、防水材としてウレタン系樹脂を被覆する方法が知られており、具体的には、ウレタン系防水材の2液型のものを現場で混合し、撹拌した後に塗布する方法や、1液型のものを塗布後、湿気で硬化させる方法が採られている。
【0003】
しかしながら、このようなウレタン系防水材をコンクリート等の下地の上に被覆した場合、硬化物の表面にピンホールやふくれを生じたり、下地材であるコンクリート等から生じる水分を吸収して防水材層の表面にふくれが生じたりすることにより、防水材層の接着不良を起こすことがあった。
【0004】
そこで、下地材であるコンクリート等と防水材層であるウレタン系防水材との間に、アクリル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン、エチレン酢酸ビニル系エマルジョン、エポキシ系エマルジョン等の水系エマルジョンと所謂セメントとを混合した下地調整材組成物を介在させることによって、これらの問題点を解決しようとする試みがなされてきた。
また、特許文献1には、本出願人により、「防水材層であるウレタン系樹脂防水材と下地材層であるコンクリートの中間に用いる屋上用の下地調整剤組成物であって、エポキシ樹脂とポルトランドセメントを質量比で1.0:1.0〜3.0で混合してなる下地調整剤組成物。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−59051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等に記載の従来公知の下地調整剤組成物は、硬化物の耐溶剤性に劣り、使用する水系エマルジョンの種類によっては硬化物の柔軟性が劣る場合もあることが分かった。
そこで、本発明は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れる下地調整材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定のエマルジョンを含有する硬化剤成分に対して、ウレタンプレポリマー(主剤)を特定量含有する組成物が、硬化後の耐溶剤性および柔軟性に優れることを見出した。
また、本願発明者らは、(1)上記組成物がさらに潜在性硬化剤を含有する場合、接着性、特に、アスファルトに対する接着性が向上すること、(2)上記組成物がさらに樹脂バルーンを含有する場合、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れ、さらに耐発泡性、耐粉体沈降性が向上すること、(3)上記組成物がさらにシランカップリング剤を含有する場合、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れ、さらに耐水接着性、特に粘着シートとの耐水接着性が向上すること、(4)上記組成物がさらにシランカップリング剤および水溶性セルロース化合物を含有する場合、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れ、さらに耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)が向上し、厚い下地調整材層を得ることができることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記1〜13を提供する。
【0008】
1. ウレタン系防水材の下地調整材組成物であって、
合成樹脂エマルジョンを含有する硬化剤成分と、
ウレタンプレポリマーを含有する主剤成分と、
珪砂、セメントおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する粉体成分とを含有し、
前記ウレタンプレポリマーの含有量が、前記合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対して10〜1100質量部であり、
前記粉体成分の含有量が、前記合成樹脂エマルジョンの固形分と前記ウレタンプレポリマーとの合計100質量部に対して15〜1500質量部である下地調整材組成物。
2. 前記合成樹脂エマルジョンは、アクリル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1に記載の下地調整材組成物。
3. 更に、潜在性硬化剤を含有する上記1または2に記載の下地調整材組成物。
4. 更に、樹脂バルーンを含有し、前記樹脂バルーンの量は、前記粉体成分100質量部に対して20質量部以下である上記1〜3のいずれかに記載の下地調整材組成物。
5. 更に、シランカップリング剤を含有し、前記シランカップリング剤の量は、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して1質量部以上である上記1〜4のいずれかに記載の下地調整材組成物。
6. 更に、水溶性セルロース化合物を含有する上記5に記載の下地調整材組成物。
7. 前記潜在性硬化剤が、オキサゾリジン化合物である上記3〜6に記載の下地調整材組成物。
8. 前記オキサゾリジン化合物が、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとポリイソシアネート化合物との反応物である上記7に記載の下地調整材組成物。
9. 前記潜在性硬化剤の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.5〜10質量部である上記3〜8のいずれかに記載の下地調整材組成物。
10. 前記樹脂バルーンを構成する樹脂は、アクリルニトリル系コポリマーである上記4〜9のいずれかに記載の下地調整材組成物。
11. 前記シランカップリング剤は、ビニルシラン、エポキシシランおよびメルカプトシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記5〜10のいずれかに記載の下地調整材組成物。
12. 前記水溶性セルロース化合物は、アルキルエーテルを有するセルロースおよび/またはヒドロキシアルキルエーテルを有するセルロースである上記6〜11のいずれかに記載の下地調整材組成物。
13. 前記水溶性セルロース化合物の量は、前記粉体成分100質量部に対して0.03質量部以上である上記6〜12のいずれかに記載の下地調整材組成物。
【発明の効果】
【0009】
以下に説明するように、本発明によれば、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れる下地調整材組成物を提供することができる。
そのため、本発明の下地調整材を使用した場合、耐溶剤性に優れることから、有機溶剤を含有しているプライマー、防水材、トップコートまたは塗料を塗布してもその溶剤に侵されることはなく、また、柔軟性に優れることから、下地の動きに対し追従可能であり、さらに、硬化前は流動性を有するため、下地(例えば、コンクリート等)の構造が複雑であっても容易に施工することができるため、非常に有用である。
【0010】
本発明の下地調整材組成物がさらに潜在性硬化剤を含有する場合、接着性、特に、アスファルトに対する接着性が良好となるので好ましい。
本発明の下地調整材組成物がさらに樹脂バルーンを含有する場合、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れ、さらに耐発泡性、耐粉体沈降性に優れるので好ましい。
本発明の下地調整材組成物がさらにシランカップリング剤を含有する場合、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れ、さらに耐水接着性、特に粘着シートとの耐水接着性に優れるので好ましい。
本発明の下地調整材組成物がさらにシランカップリング剤および水溶性セルロース化合物を含有する場合、硬化物の耐溶剤性および柔軟性に優れ、さらに耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れ、得られる下地調整材層を厚くできるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の下地調整材組成物を用いた屋上用の防水構造体の一例を示す断面的な断面図である。
【図2】図2は、本発明の下地調整材組成物を用いた屋上用の防水構造体の別の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の下地調整材組成物(以下、「本発明の下地調整材」ともいう。)は、合成樹脂エマルジョンを含有する硬化剤成分と、ウレタンプレポリマーを含有する主剤成分と、珪砂、セメントおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する粉体成分とを含有するウレタン系防水材の下地調整材組成物である。
次に、本発明の下地調整材に含有する硬化剤成分、主剤成分および粉体成分について詳述する。
【0013】
<硬化剤成分>
本発明の下地調整材に用いる硬化剤成分は、合成樹脂エマルジョンを含有するものである。
合成樹脂エマルジョンは特に制限されない。例えば、アクリル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンが挙げられる。なかでも作業性に優れるという観点から、アクリル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
本発明においては、この(これらの)エマルジョンの含有量は、硬化剤成分の全質量に対して40質量%以上であるのが好ましい。また、硬化剤成分としてこのエマルジョンのみを用いるものであってもよい。
なお、本発明においては、上記含有量の算出に関して、硬化剤成分として別添加しうる水は、このエマルジョンを構成する水分として扱うものとする。
【0014】
(アクリル系エマルジョン)
上記アクリル系エマルジョンは、特に限定されず、従来公知のアクリル系エマルジョンを用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを乳化分散剤を用いて共重合(乳化重合)して得られる水性エマルジョン等を好適に用いることができる。
なお、上記共重合において、必要に応じて、他のモノマーを共重合させてもよい。
【0015】
上記アクリル系エマルジョンとしては、具体的には、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/プロピルアクリレート/アクリル酸共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0016】
上記アクリル系エマルジョンの平均粒子径は、50〜450nmであるのが好ましく、90〜400nmであるのがより好ましい。
また、上記アクリル系エマルジョンは、固形分が30〜70質量%であるのが好ましく、35〜65質量%であるのがより好ましい。
ここで、平均粒子径は、粒度径分布測定機(Nanotrac UPA−EX150、日機装社製)を用いて測定した値である。なお、後述するスチレン−ブタジエン系エマルジョンの平均粒子径の測定についても同様である。
【0017】
上記アクリル系エマルジョンとして市販品を用いてもよく、その具体例としては、旭化成ラテックス(A1500、固形分:45質量%、平均粒子径:190nm、旭化成ケミカルズ社製)、旭化成ラテックス(Z871、固形分:49質量%、平均粒子径:220nm、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0018】
(スチレン−ブタジエン系エマルジョン)
上記スチレン−ブタジエン系エマルジョン(以下、「SBR系エマルジョン」という。)は、特に限定されず、スチレンおよびブタジエンを主成分とする合成高分子水分散体である従来公知のSBR系エマルジョンを用いることができる。
なお、上記共重合において、必要に応じて、他のモノマーを共重合させてもよい。
【0019】
上記SBR系エマルジョンの平均粒子径は、50〜450nmであるのが好ましく、90〜400nmであるのがより好ましい。
また、上記SBR系エマルジョンは、固形分が30〜70質量%であるのが好ましく、35〜65質量%であるのがより好ましい。
【0020】
上記SBR系エマルジョンとして市販品を用いてもよく、その具体例としては、旭化成ラテックス(L3200、固形分:48質量%、平均粒子径:201nm、旭化成ケミカルズ社製)、旭化成ラテックス(A7689、固形分:50質量%、平均粒子径:167nm、旭化成ケミカルズ社製)、旭化成ラテックス(A6500、固形分:50質量%、平均粒子径:220nm、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、上述した合成樹脂エマルジョンのうち、本発明の下地調整材を下地に塗布する際の作業性に優れる理由から、アクリル系エマルジョンを用いるのが好ましい。
【0022】
また、本発明においては、硬化剤成分の全質量に対して10質量%未満の量で、エチレン酢酸ビニル系エマルジョンやエポキシ系エマルジョン等の他のエマルジョンや、活性水素基を有するポリエーテルポリオールやアミン等を硬化剤として含有していてもよい。
【0023】
<主剤成分>
本発明の下地調整材に用いる主剤成分は、ウレタンプレポリマーを含有するものである。
本発明においては、このウレタンプレポリマーの含有量は、主剤成分の全質量に対して80質量%以上であるのが好ましい。また、主剤成分としてこのウレタンプレポリマーのみを用いるものであってもよい。
【0024】
(ウレタンプレポリマー)
主剤成分に含有されるウレタンプレポリマーは、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、ヒドロキシ基(OH基)に対してイソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
また、ウレタンプレポリマーは、0.5〜5質量%のNCO基を分子末端に含有することができる。
【0025】
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0026】
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、トリレンジイソシアネート(TDI)であるのが、得られるウレタンプレポリマーが低粘度となり、このウレタンプレポリマーを含む主剤の取り扱いが容易となる理由から好ましい。
【0027】
一方、ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、これらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0028】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも1種に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリオキシテトラメチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。具体的には、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールが好適に例示される。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびその他の低分子ポリオールからなる群から選択される少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸およびその他の脂肪族カルボン酸、ひまし油およびその他のヒドロキシカルボン酸ならびにオリゴマー酸からなる群から選択される少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられる。
【0030】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオール;等が挙げられる。
【0031】
このようなポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、ポリプロピレンエーテルポリオール、特に、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールであるのが、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、このウレタンプレポリマーを含む主剤の取り扱いが容易となり、この主剤を用いて得られる本発明の下地調整材の硬化物の柔軟性が適当となる理由から好ましい。
【0032】
本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との組み合わせとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される少なくとも1種と、ポリプロピレンエーテルジオールおよび/またはポリプロピレンエーテルトリオールとの組み合わせが好適に例示される。
【0033】
また、本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との量は、NCO基/OH基(当量比)が、1.2〜2.5となるのが好ましく、1.5〜2.2となるのがより好ましい。当量比がこのような範囲である場合、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、また、このウレタンプレポリマーを含む主剤成分の貯蔵安定性が良好となる。
【0034】
更に、本発明においては、ウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、上述の当量比のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50〜130℃で加熱かくはんすることによって製造することができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0035】
本発明においては、上記ウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記ウレタンプレポリマーの含有量は、合成樹脂エマルジョンの固形分(上記アクリル系エマルジョンおよび/または上記スチレン−ブタジエン系エマルジョンの固形分)100質量部に対して10〜1100質量部であり、15〜1000質量部であるのが好ましく、20〜800質量部であるのがより好ましい。
ここで、上記アクリル系エマルジョンおよび/または上記スチレン−ブタジエン系エマルジョンの固形分100質量部とは、上記アクリル系エマルジョンおよび上記スチレン−ブタジエン系エマルジョンをいずれも含有する場合は、これらの固形分の合計量をいう。
上記ウレタンプレポリマーの含有量が上述した範囲であると、得られる本発明の下地調整材の硬化物の耐溶剤性および柔軟性が良好となる。
これは、上記ウレタンプレポリマーが、上記アクリル系エマルジョン等と完全に相溶しないことにより、本発明の下地調整材を塗布して形成される塗膜の骨格を形成するためであると考えられる。また、通常、ウレタンプレポリマーと水とを混合すると、これらの反応に伴い発生する二酸化炭素により発泡が生じるが、上記ウレタンプレポリマーは、硬化剤成分として用いるエマルジョンの水分と急激には反応せず、発泡も生じないことから意外な効果である。
【0036】
また、本発明においては、主剤成分の全質量に対して10質量%未満の量で、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を主剤として含有していてもよい。
【0037】
<粉体成分>
本発明の下地調整材に用いる粉体成分は、硬化剤成分として用いるエマルジョンと主剤成分として用いるウレタンプレポリマーとの分離を抑え、下地調整材を補強する成分であり、珪砂、セメントおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものである。
ここで、セメントとは、ポルトランドセメントが一般的であり、CaO、Al23、SiO2等を主成分とする石灰質成分や粘度質成分などの粉体を適切な割合で混合したもので、水と反応して水和物を形成することによって硬化するセメントである。また、セメントには、メサライト、アサノライト、エフェイライト等の人工軽量骨材を混在させるのが好ましい。
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸で表面処理された表面処理炭酸カルシウムであってもよい。
【0038】
本発明においては、本発明の下地調整材を下地に塗布する際の作業性に優れる理由から、珪砂、セメントおよび炭酸カルシウムの混合物を用いるのが好ましい。
【0039】
また、本発明においては、上記粉体成分の含有量は、合成樹脂エマルジョンの固形分(上記アクリル系エマルジョンおよび/または上記スチレン−ブタジエン系エマルジョンの固形分)と上記ウレタンプレポリマーとの合計100質量部に対して15〜1500質量部であり、20〜1200質量部であるのが好ましく、25〜1000質量部であるのがより好ましい。
ここで、上記アクリル系エマルジョンおよび/または上記スチレン−ブタジエン系エマルジョンの固形分とは、上記アクリル系エマルジョンおよび上記スチレン−ブタジエン系エマルジョンをいずれも含有する場合は、これらの固形分の合計量をいう。
上記粉体成分の含有量が上述した範囲であると、得られる本発明の下地調整材の硬化剤成分として用いるエマルジョンと主剤成分として用いるウレタンプレポリマーとの分離が抑えられ、硬化物の表面の割れが発生しにくくなる。
【0040】
<潜在性硬化剤>
本発明の下地調整材は、接着性、特に、アスファルトに対する接着性が良好となる理由から、潜在性硬化剤を含有するのが好ましい。
潜在性硬化剤としては、例えば、以下に示すオキサゾリジン化合物および/またはケチミン化合物が挙げられる。
【0041】
(オキサゾリジン化合物)
オキサゾリジン化合物は、酸素と窒素を含む飽和5員環の複素環を有する化合物で、湿気(水)の存在下で開環するオキサゾリジン環を有する化合物である。
オキサゾリジン化合物としては、例えば、特開2005−281617号公報に記載された、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネートオキサゾリジン、エステルオキサゾリジン、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとポリイソシアネート化合物との反応物(以下、「イソシアネートオキサゾリジン化合物」ともいう。)等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、活性水素との反応部位を有し、硬化の際に高分子量化が可能となる理由から、イソシアネートオキサゾリジン化合物であるのが好ましい。
また、イソシアネートオキサゾリジン化合物の生成に用いるポリイソシアネート化合物としては、例えば、上述したウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物として例示した化合物や、上述したウレタンプレポリマーのうちイソシアネート基を2個以上残存するウレタンプレポリマー等が挙げられる。
また、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとしては、特開2005−281617号公報に記載された2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン等以外に、例えば、3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジン等が挙げられる。
【0043】
(ケチミン化合物)
ケチミン化合物は、アルデヒドまたはケトン化合物とアミン化合物とから導かれるケチミン(C=N)結合を有する化合物であり、加水分解により1級アミノ基を生起しうる化合物である。
【0044】
上記ケチミン化合物の合成に用いられるアルデヒドまたはケトン化合物やアミン化合物としては、それぞれ、例えば、特開2005−281617号公報に記載された化合物が挙げられる。
【0045】
上述したオキサゾリジン化合物およびケチミン化合物のうち、潜在性硬化剤を主剤成分に含有させた場合の主剤成分の貯蔵安定性に優れ、反応性も良好である理由から、オキサゾリジン化合物を用いるのが好ましい。
【0046】
本発明においては、潜在性硬化剤を含有させる場合、上述した主剤成分および粉体成分のいずれにも含有させることができるが、主剤成分に含有させるのが好ましい。
なお、潜在性硬化剤を主剤成分に含有させる場合、上述したウレタンプレポリマーの硬化剤成分における含有量(質量%)の算出においては、潜在性硬化剤の含有量は含まないものとする。
【0047】
また、本発明においては、潜在性硬化剤の含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.5〜10質量部であるのが好ましく、0.8〜8.0質量部であるのがより好ましい。
【0048】
本発明の下地調整材組成物は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐発泡性、耐粉体沈降性に優れるという観点から、さらに樹脂バルーンを含有するのが好ましい。耐粉体沈降性が優れることによって、施工前に下地調整材組成物中の粉体を均一に分散させれば、施工のたびに下地調整材組成物を撹拌する必要がなく作業性に優れ、均一な下地調整材層を得ることができる。
樹脂バルーンは、バルーン(中空体)の外殻が樹脂によって構成されているものであれば特に制限されない。
【0049】
樹脂バルーンの外殻を構成する材料としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
外殻に使用される熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;ベンジルアクリレート、ノルボルナンアクリレートのようなアクリレート化合物;メチルメタクリレート、ノルボルナンメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなメタクリレート化合物;スチレン系モノマー;酢酸ビニル;ブタジエン;ビニルピリジン;クロロプレンのホモポリマー、これらのコポリマーが挙げられる。
このうち、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐発泡性、耐粉体沈降性に優れ、耐候性、耐熱性の観点から、アクリルニトリル系コポリマー、塩化ビニリデン重合体が好ましい。アクリルニトリル系コポリマーは、モノマーとしてアクリルニトリルを使用する共重合体であれば特に制限されない。アクリルニトリル系コポリマー(アクリロニトリル共重合体)としては、例えば、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの共重合体;アクリロニトリルと、アクリロニトリルと共重合可能なブタジエン、スチレンのようなビニル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0050】
また樹脂バルーンとして、例えば無機フィラー、表面処理剤でコーティングされているものを使用することができる。
樹脂バルーンをコーティングするために使用される無機フィラーは特に限定されず、その具体例としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、カーボンブラック等が挙げられる。
【0051】
樹脂バルーンをコーティングするために使用される表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、樹脂酸および脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐発泡性、耐粉体沈降性に優れるという観点から、脂肪酸が好ましい。
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸のような直鎖飽和脂肪酸;セトレイン酸、ソルビン酸のような不飽和脂肪酸;安息香酸、フェニル酢酸のような芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0052】
樹脂バルーンの平均粒子径は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐発泡性、耐粉体沈降性に優れるという観点から10〜70μmであるのが好ましい。
本発明において、樹脂バルーンの平均粒子径は、レーザー回折式に基づき、測定装置としてマイクロトラック粒度分布計(日機装株式会社製)を使用して測定された。
【0053】
樹脂バルーンはその製造について特に制限されない。例えば従来公知の方法によって製造することができる。樹脂バルーンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
樹脂バルーンの量は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐発泡性、耐粉体沈降性に優れ、粘度が適切なものとなるという観点から、粉体成分100質量部に対して20質量部以下であるのが好ましく、1〜15質量部であるのがより好ましく、3〜10質量部であるのがさらに好ましい。
樹脂バルーンの量が粉体成分100質量部に対して3質量部以上の場合、耐発泡性、耐粉体沈降性が特に良好なものとなる。樹脂バルーンの量が粉体成分100質量部に対して20質量部を超える場合、粘度が高くなって作業の際組成物が流れにくくなり作業性が低くなる。
樹脂バルーンは、硬化剤成分、主剤成分、粉体成分のうち、分散性に優れるという観点から、粉体成分に含有されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0055】
本発明の下地調整材組成物は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れるという観点から、さらに、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
本発明の下地調整材組成物がさらに含有することができるシランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアネートシラン、ケチミンシランもしくはこれらの混合物もしくはこれらの反応物、または、これらとポリイソシアネートとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0056】
なかでも、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れるという観点から、シランカップリング剤は、ビニルシラン、エポキシシランおよびメルカプトシランからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
また、ウレタンプレポリマーと合成樹脂エマルジョンとの分散を促進させることができるという観点から、ビニルシランが好ましい。ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシランが挙げられる。
【0057】
アミノシランとしは、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシランが挙げられる。
エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランが挙げられる。
メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
シランカップリング剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
シランカップリング剤の量は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して1質量部以上であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましく、1〜3質量部であるのがさらに好ましい。
シランカップリング剤は、硬化剤成分、主剤成分、粉体成分のうち、貯蔵安定性に優れるという観点から、主剤成分に含有されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0059】
本発明の下地調整材組成物は、さらに、水溶性セルロース化合物を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、本発明の下地調整材組成物がシランカップリング剤を含有する場合、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れ、得られる下地調整材層を厚くすることができるという観点から、さらに、水溶性セルロース化合物を含有するのが好ましい。
【0060】
本発明の下地調整材組成物がさらに含有することができる水溶性セルロース化合物は、水溶性であり、セルロースの骨格を有する化合物であれば特に制限されない。
本発明の下地調整材組成物がさらに含有することができる水溶性セルロース化合物としては、例えば、メチルセルロースのようなアルキルエーテルを有するセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルエーテルを有するセルロース;カルボキシメチルセルロースのようなカルボキシアルキルエーテルを有するセルロース;セルロースエーテルエステルが挙げられる。
なかでも、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れ、得られる下地調整材層を厚くすることができるという観点から、アルキルエーテルを有するセルロース、ヒドロキシアルキルエーテルを有するセルロースが好ましく、メチルセルロース(セルロースメチルエーテル)、エチルセルロースがより好ましい。
【0061】
水溶性セルロース化合物の数平均分子量は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れ、得られる下地調整材層を厚くすることができるという観点から、400〜8000の範囲が好ましく、2000〜6000の範囲がより好ましい。
水溶性セルロース化合物は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れ、得られる下地調整材層を厚くすることができるという観点から、水溶性セルロース化合物を0.03質量%含有する水溶液について、B型粘度計により測定した20℃における粘度が、10〜200Pa・sを満足するものが好ましい。
水溶性セルロースはその製造について特に制限されず、例えば、セルロースに水溶性を付与するための処理を施すことによって製造することができる。水溶性セルロース化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
水溶性セルロース化合物の量は、硬化物の耐溶剤性および柔軟性により優れ、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に優れ、得られる下地調整材層を厚くすることができるという観点から、粉体成分100質量部に対して0.03質量部以上であるのが好ましく、0.03〜0.5質量部であるのがより好ましく、0.05〜0.1質量部であるのがさらに好ましい。
水溶性セルロース化合物は、硬化剤成分、主剤成分、粉体成分のうち、分散性に優れるという観点から、粉体成分に含有されるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0063】
本発明の防水材組成物は、上述した各成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、可塑剤、消泡剤、硬化助剤、着色剤、難燃剤、防かび剤、触媒等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、テトラヒドロフタル酸、アゼライン酸、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸およびこれらの誘導体;ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系、パラフィン系、ナフテン系および芳香族系のプロセスオイル;等が挙げられる。
消泡剤としては、具体的には、例えば、オクチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、シリコーンエマルジョン、リン酸トリブチル、2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられ、中でもアクリル系、ビニル系のものが好ましい。
硬化助剤としては、具体的には、例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤が挙げられ、中でもアミノシラン系カップリング剤が好ましい。
着色剤としては、具体的には、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック等が挙げられる。
難燃剤としては、具体的には、例えば、リン酸トリクレシル、塩素化パラフィン、三酸化アンチモン等が挙げられる。
防かび剤としては、具体的には、例えば、o−フェニルフェノール、テトラメチルチウレムジスルフィド等が挙げられる。
触媒、接着付与剤として、ジメチルアニリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)等の三級アミンが挙げられる。
【0064】
本発明においては、これらの各種添加剤を含有させる場合、上述した硬化剤成分、主剤成分および粉体成分のいずれにも含有させることができる。
なお、このように添加剤を含有させる場合、上述した合成樹脂エマルジョンの硬化剤成分における含有量(質量%)および上述したウレタンプレポリマーの主剤成分における含有量(質量%)の算出においては、これらの各種添加剤の含有量は含まないものとする。
【0065】
本発明の下地調整材の製造方法は特に限定されないが、例えば、上述した硬化剤成分、主剤成分および粉体成分ならびに所望により配合する添加剤を施工時に混合して調製する方法;上述した主剤成分および粉体成分ならびに所望により配合する添加剤を予め混合し、施工時に上述した硬化剤成分を混合して調製する方法;等が挙げられる。
【0066】
本発明の下地調整材組成物の初期粘度(混合直後の粘度)は、作業性に優れるという観点から、1〜10Pa・sであるのが好ましい。本発明において下地調整材組成物の初期粘度は、BL型粘度計の3号ロータを用い20℃、50RH%の条件下において回転速度10rpmで測定された。
【0067】
本発明の下地調整材組成物がさらにシランカップリング剤および水溶性セルロース化合物を含有する場合、組成物を混合してから10分後の粘度を40Pa・s以上とすることができる。このため、下地調整材層の厚さが5mm以上であることを必要とする厚塗りの仕様に対して、さらにシランカップリング剤および水溶性セルロース化合物を含有する下地調整材組成物を用いることができる。
組成物を混合してから10分後の粘度は、作業性に優れるという観点から、10〜50Pa・sであるのが好ましい。本発明において混合してから10分後の下地調整材組成物の粘度は、BL型粘度計の3号ロータを用い20℃、50RH%の条件下において回転速度10rpmで測定された。
【0068】
次に、添付の図面(図1、図2)を用いて、本発明の下地調整材を用いた屋上用の防水構造体の一例を説明する。
図1で示されるとおり、屋上防水構造体1は、下地材からなる下地材層2と防水材からなる防水材層4との間に、少なくとも、下地調整材層3を有する。
また、下地調整材層3と防水材層4との間にウレタン系樹脂プライマーからなるプライマー層(図示せず)が存在していてもよい。
【0069】
下地材層2は、下地となるコンクリートからなり、建築用のセメント、セメントモルタル等に水を添加して混練した後、成形して硬化させたもので、通常の建築用に用いられるセメントやモルタルであればいずれの成分配合のものでもよい。
このコンクリートの下地材層2の表面には、凸凹が生じることがある。この凸凹があると、コンクリート製の下地材層2を防水材で被覆しても、防水材が硬化した後に防水材の表面にピンホールやふくれが生じる場合がある。
【0070】
下地調整材層3は、本発明の下地調整材からなり、上記の下地材層2の建築物の外側になる側の表面に塗布して、下地に生じた凸凹やピンホールを平滑に調整する。したがって、本発明の下地調整材組成物は、下地材層2の凸凹の影響を防水材層4に与えず、かつ、下地から生じる水分を吸収して防水材層4に水分が達するのを抑えることで、防水材層4のふくれを防止することができる。
【0071】
防水材層4は、下地調整材層3を被覆し、硬化後に水または水蒸気を透過させない層を形成するウレタン樹脂組成物からなり、0.5〜3.5mmの厚みで塗布するのが好ましい。
防水材は、通常使用されるウレタン系樹脂の防水材であれば1液型ものでも2液型のものでもよく、汎用のウレタン系樹脂の屋上用の防水材(溶剤(トルエン、キシレン、ミネラルスピリット等)3〜10重量%を含有)などの市販品を使用してもよい。
また、防水材には、ウレタン樹脂にカーボンブラック、酸化チタン、シスアゾ系オレンジ、シアニンブルーなどの着色剤を添加してもよい。
【0072】
図2は、本発明の下地調整材組成物を用いた屋上用の防水構造体の別の一例を模式的に示す断面図である。
図2において、屋上用の防水構造体20(以下これを「屋上防水構造体20」という。)は、下地材からなる下地材層22と、下地材層22の上の下地調整材層23と、下地調整材層23の上の粘着シート25と、粘着シート25の上の、防水材からなる防水材層24とを少なくとも有する。粘着シート25は基材シート26と粘着層27とを有し、基材シート26と粘着層27とは一体的に構成されている。粘着シート25は下地調整材層23と粘着層27において接している。下地調整材層23は本発明の下地調整材組成物を用いて構成される。
粘着シートが有する粘着層の材質は特に制限されない。例えば、アクリル系粘着剤、フタル酸系粘着剤が挙げられる。
粘着シートの粘着層と下地調整材層とが接着することによって、粘着シートを下地調整材層の上に貼りあわせることができる。
【0073】
本発明の下地調整材を用いた防水施工法の一例としては、図1に示すとおり、まず、コンクリート等の下地を施工し、次いで、乾燥させた下地材層2の建築物の屋外になる側の面に本発明の下地調整材を塗布して下地調整材層3を形成し、更にその上に防水材を塗布して防水材層4を形成し、屋上防水構造体1を得る方法が挙げられる。
また、屋上用の防水構造体が粘着シートを有する場合、図2に示すとおり、まず、コンクリート等の下地を施工し、次いで、乾燥させた下地材層22の建築物の屋外になる側の面に本発明の下地調整材を塗布して下地調整材層23を形成し、更にその上に粘着シート25を配置し、さらにその上に防水材を塗布して防水材層24を形成し、屋上防水構造体20を得る方法が挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0075】
<主剤成分>
(ウレタンプレポリマー1)
まず、数平均分子量4000のポリプロピレンエーテルトリオール(EXCENOL 4030、旭硝子社製)1500gと、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール(EXCENOL 2020、旭硝子社製)1400gとを反応容器に入れて、減圧下で110℃に加熱し、6時間脱水処理した。
次いで、脱水処理後の反応容器内に、トリレンジイソシアネート(コスモネートT80、三井化学ポリウレタン社製)をNCO基/OH基の当量比が1.95となるように、かくはんしながら添加した。
その後、反応容器内を80℃に加熱し、窒素雰囲気下で更に24時間混合、かくはんし、ウレタンプレポリマー1を調製した。
得られたウレタンプレポリマー1のNCO基の含有量(NCO%)は、ウレタンプレポリマー1の全質量に対して3.0質量%であった。
【0076】
(ウレタンプレポリマー2)
まず、数平均分子量4000のポリプロピレンエーテルトリオール(EXCENOL 4030、旭硝子社製)1000gと、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール(EXCENOL 2020、旭硝子社製)1500gと可塑剤(フタル酸系可塑剤、フタル酸ジイソノニル、ジェイプラス社製)150gとを反応容器に入れて、減圧下で110℃に加熱し、6時間脱水処理した。
次いで、脱水処理後の反応容器内に、トリレンジイソシアネート(コスモネートT80、三井化学ポリウレタン社製)384.9g(NCO基/OH基の当量比:1.95)をかくはんしながら添加した。
その後、反応容器内を80℃に加熱し、窒素雰囲気下で更に24時間混合、かくはんし、ウレタンプレポリマー2を調製した。
得られたウレタンプレポリマー2のNCO基の含有量(NCO%)は、ウレタンプレポリマー2の全質量に対して3質量%であった。
【0077】
<硬化剤成分>
(SBR系エマルジョン1)
旭化成ラテックス(L3200、固形分:48質量%、平均粒子径:201nm、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
(SBR系エマルジョン2)
旭化成ラテックス(A7689、固形分:50質量%、平均粒子径:167nm、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
(SBR系エマルジョン3)
旭化成ラテックス(A6500、固形分:50質量%、平均粒子径:220nm、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
(アクリル系エマルジョン1)
旭化成ラテックス(A1500、固形分:45質量%、平均粒子径:190nm、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
(アクリル系エマルジョン2)
旭化成ラテックス(Z871、固形分:49質量%、平均粒子径:220nm、旭化成ケミカルズ社製)を用いた。
【0078】
<潜在性硬化剤>
(オキサゾリジン化合物1)
3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジン(5BO、東洋合成製)を用いた。
(オキサゾリジン化合物2)
3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジン(5BO、東洋合成製)とキシリレンジイソシアネート(XDI)とをモル比が2:1となるように反応させ、イソシアネートオキサゾリジン化合物を調製した。
【0079】
<粉体成分>
ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)100質量部と、7号珪砂(秩父7号珪砂、ニッチツ社製)700質量部と、炭酸カルシウム(ミクロカル#250、有恒鉱業社製)200質量部とを混合したものを使用した。
【0080】
<樹脂バルーン>
樹脂バルーン1:バルーンの外殻を形成する樹脂がアクリルニトリル系コポリマーであり、その表面が無機樹脂によって処理されているバルーン、平均粒子径10−70μm(商品名松本油脂製薬社製)
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤1:ビニルシラン(商品名A−171、モメンティブ社製)
<水溶性セルロース化合物>
水溶性セルロース1:メチルセルロース、数平均分子量4000(商品名MCE−4000、信越化学工業社製)
【0081】
<実施例I(実施例1〜23)、比較例I(比較例1〜9)>
下記第1表に示す成分を第1表に示す量比(質量部)で使用し、これらを電動かくはん機等を用いて十分に混合して下地調整材用組成物を調製した。
なお、第1表における実施例1〜23を以下実施例I−1〜23という。第1表における比較例1〜9を比較例I−1〜9という。
【0082】
得られた下地調整材用組成物について、粉体成分の混練性、混合後の硬化剤成分の分離の有無、接着性、柔軟性、耐溶剤性および作業性を以下に示す方法により測定し、評価した。これらの結果を下記第1表に示す。
【0083】
(1)粉体成分の混練性
下地調整材用組成物を調製した際に、混合物がだま状となり、混合物の表面が粉体成分により粉をふいた状態のものを混練性に劣るものとして「×」と評価し、液状ないしゲル状の混合物となったものを混練性が良好なものとして「○」と評価した。
【0084】
(2)混合後の硬化剤成分の分離の有無
下地調整材用組成物を調製後に、スレート板に約2mm程度の厚さで塗布して表面状態を観察し、硬化剤成分(エマルジョン)が他の成分から分離して浮いてくるものを硬化剤成分の相溶性に劣るものとして「×」と評価し、分離してこないものを硬化剤成分の相溶性に優れるものとして「○」と評価した。
なお、下記第1表中、粉体成分の混練性に劣る比較例9については、評価を行わなかったため「−」としている。
【0085】
(3)接着性
被着体(コンクリートまたはアスファルト)に得られた各組成物を厚さ約2mmとなるように塗布し、23℃、50%相対湿度の条件下で24時間養生させた後、ナイフカットによる手はく離試験を行い、接着界面の状態を目視により観察し、接着性を評価した。
第1表中、接着性においては、剥離の状態をCF(凝集破壊)、AF(界面剥離)で示し、CFおよびAFの右横の数字は、接着界面において界面剥離した割合を示す。
なお、下記第1表中、粉体成分の混練性に劣る比較例9については、評価を行わなかったため「−」としている。
【0086】
(4)柔軟性
得られた各組成物を23℃、50%相対湿度の条件下で24時間養生させて硬化物(サイズ:50mm×50mm×2mm)を得た。
得られた硬化物を指で180度程度湾曲させた(長辺の中心で半分に折り曲げた)際に、容易に折れてしまうものを柔軟性に劣るものとして「×」と評価し、折れずに湾曲したものを柔軟性に優れるものとして「○」と評価した。
なお、下記第1表中、粉体成分の混練性に劣る比較例9については、評価を行わなかったため「−」としている。
【0087】
(5)耐溶剤性
被着体(コンクリートまたはアスファルト)に得られた各組成物を厚さ約2mmとなるように塗布し、5℃の環境下で16時間放置した後に、5℃環境下で各組成物の硬化物(塗膜)上にキシレンを刷毛を用いて塗布した。キシレン塗布後、更に5℃の環境下で1時間養生させ、キシレンを乾燥した後の状態を目視により観察した。
その結果、塗膜の一部が被着体表面から浮き上がった状態となったものを耐溶剤性に劣るものとして「×」と評価し、塗膜に変化が見られなかったものを耐溶剤性に優れるものとして「○」と評価した。
なお、下記第1表中、粉体成分の混練性に劣る比較例9については、評価を行わなかったため「−」としている。
【0088】
(6)作業性
得られた各組成物を、23℃、50%相対湿度の条件下でポリカップに移し、静置させた。
ポリカップに移した後、20分経過後の各組成物の表面を目視により観察し、膜が張っているものを作業性に劣るものとして「×」と評価し、膜がはっていないものを作業性に優れるものとして「○」と評価した。

【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
第1表に示す結果から明らかなように、ウレタンプレポリマーを用いずに調製した比較例I−1〜5の下地調整材組成物は、いずれも耐溶剤性に劣り、また、比較例I−1〜5で調製した下地調整材組成物は、更に柔軟性にも劣ることが分かった。
また、ウレタンプレポリマーの含有量が少なすぎると、耐溶剤性の改善効果がなく、ウレタンプレポリマーの含有量が多すぎると、接着性に悪影響を与えることが分かった(比較例I−6および7)。
また、粉体成分の含有量が少なすぎると、硬化剤成分が分離してしまうことが分かり、粉体成分の含有量が多すぎると、粉体成分の混練性に劣ることが分かった(比較例I−8および9)。
【0094】
一方、硬化剤成分に対して、ウレタンプレポリマーおよび粉体成分を所定量配合して調製した実施例I−1〜23の下地調整材組成物は、いずれも耐溶剤性および柔軟性が良好であることが分かった。
特に、オキサゾリジン化合物を併用して調製した実施例I−10〜23の下地調整材組成物は、アスファルトに対する接着性が改善されることが分かった。
【0095】
<実施例II>
下記第2表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で使用し、これらを電動かくはん機等を用いて十分に混合して下地調整材用組成物を調製した。
【0096】
得られた下地調整材用組成物について、粉体成分の混練性、混合後の硬化剤成分の分離の有無、接着性、柔軟性、耐溶剤性、耐粉体沈降性、耐発泡性および初期粘度を測定し評価した。結果を下記第2表に示す。なお、粉体成分の混練性、混合後の硬化剤成分の分離の有無、接着性、柔軟性および耐溶剤性について、その評価方法および評価基準は上記と同様である。耐粉体沈降性、耐発泡性および初期粘度の評価方法および評価基準を以下に示す。
【0097】
(耐粉体沈降性)
耐粉体沈降性の評価方法としては、上記のようにして得られた組成物を十分に混合した後容器に入れ、容器を20℃の条件下に静置し、静置から1時間後に組成物をへらで混合することによって組成物の状態を確認した。
評価基準としては、粉体が沈降していてもへらで容易に混合できる場合は「○」、粉体が固くへらで容易に混合できない場合は「×」とした。
【0098】
(耐発泡性)
耐発泡性の評価方法としては、被着体(コンクリート)に得られた各組成物を厚さ約2mmとなるように塗布し、5℃の環境下で16時間放置した後、下地調整材層の状態を目視により観察した。
耐発泡性の評価基準としては、下地調整材層に発泡(ふくれ)がなければ「○」、あれば「×」とした。
【0099】
(初期粘度)
上記のようにして得た直後の下地調整材組成物について、BL型粘度計の3号ロータを用い、20℃、50RH%における、回転速度10rpmで計測される粘度(Pa・s)を測定した。
得られた粘度が30Pa・s以下である場合初期粘度に優れるとする。
【0100】
【表5】

【0101】
第2表に示す結果から明らかなように、ウレタンプレポリマーを含有しない比較例II−1〜2の下地調整材組成物は、いずれも耐溶剤性に劣り、更に柔軟性にも劣ることが分かった。
これに対して、実施例IIの実施例はいずれも耐溶剤性および柔軟性が良好であることが分かった。さらに潜在性硬化剤を含有する実施例II−1〜6はアスファルトの接着性に優れる。
また、ウレタンプレポリマーを含有しない比較例II−1〜2の下地調整材組成物は、粉体成分の混練性、耐粉体沈降性、耐発泡性に劣り、初期粘度が高くなりすぎることが分かった。粉体成分の含有量が多すぎると、粉体成分の混練性、耐粉体沈降性、耐発泡性に劣り、初期粘度が高くなりすぎることが分かった(比較例II−3)。樹脂バルーンの含有量が多い場合、初期粘度が高くなることが分かった(実施例II−9)。
これに対して、粉体剤成分に対して樹脂バルーンなることが分かった。
【0102】
<実施例III>
下記第3表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で使用し、これらを電動かくはん機等を用いて十分に混合して下地調整材用組成物を調製した。
【0103】
上記のようにして得られた下地調整材用組成物について、粉体成分の混練性、混合後の硬化剤成分の分離の有無、接着性、柔軟性、耐溶剤性および耐水接着性を測定し評価した。結果を下記第3表に示す。なお、粉体成分の混練性、混合後の硬化剤成分の分離の有無、接着性、柔軟性、耐溶剤性について、その評価方法および評価基準は上記と同様である。耐水接着性の評価方法および評価基準を以下に示す。
【0104】
(耐水接着性)
耐水接着性の評価方法としては、上記のようにして得られた下地調整材用組成物、縦15cm、横30cm、厚さ5cmのコンクリートブロックおよび粘着シート(商品名UMシート、横浜ゴム社製、粘着剤の成分はアクリル系粘着剤である。)を準備し、下地調整材用組成物をコンクリートの表面に1.5mmの厚さで塗布し、下地調整材組成物の上に、粘着シートを粘着シートの粘着層が下向きになるように配置して5℃の環境で16時間養生し、得られた防水構造体を試験体とした。試験体を20℃の水に7日間浸漬した後、試験体を水から引き揚げて、ナイフカットによる手はく離試験において粘着シートを試験体からはがし、はく離状態を評価した。
評価基準としては、凝集破壊(下地調整材層が破壊した。)を「CF」、粘着シートと下地調整材組成物との界面で破壊した場合を「AF」、コンクリートと下地調整材組成物との界面で破壊した場合を「AF」とした。
【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
第3表に示す結果から明らかなように、ウレタンプレポリマーを含有しない比較例III−1〜2の下地調整材組成物は、いずれも耐溶剤性に劣り、更に柔軟性にも劣ることが分かった。
これに対して、実施例IIIの実施例はいずれも耐溶剤性および柔軟性が良好であることが分かった。さらに潜在性硬化剤を含有する実施例III−1〜7、12、13はアスファルトの接着性に優れる。
また、ウレタンプレポリマーを含有しない比較例III−1〜2、ウレタンプレポリマーの量が少なすぎる比較例III−3、粉体成分の含有量が多すぎる比較例III−4は、粘着シートとの耐水接着性に劣ることが分かった。シランカップリング剤を含有しない実施例III−10〜12、シランカップリング剤の量が少ない実施例III−13は、粘着シートとの耐水接着性が低くなることが分かった。
これに対して、ウレタンプレポリマーに対してシランカップリング剤を所定量含有する実施例III−1〜9の下地調整材組成物はいずれも、耐水接着性、特に粘着シートとの耐水接着性に特に優れることが分かった。
【0108】
<実施例IV>
下記第4表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で使用し、これらを電動かくはん機等を用いて十分に混合して下地調整材用組成物を調製した。
【0109】
上記のようにして得られた下地調整材用組成物について、柔軟性、耐溶剤性、粘度および耐水接着性を測定し評価した。結果を下記第4表に示す。なお、柔軟性、耐溶剤性、耐水接着性について、その評価方法および評価基準は上記と同様である。粘度の評価方法および評価基準を以下に示す。
【0110】
(粘度)
上記のように得られた下地調整材組成物について、混合直後と混合から10分後において、BL型粘度計の3号ロータを用い、20℃、50RH%における、回転速度10rpmで計測される粘度(Pa・s)を測定した。
得られた粘度が30Pa・s以下である場合初期粘度に優れる。
また、下記第5表において、下地調整材組成物を特定の仕様(薄塗り、中塗り、厚塗り)とする際に必要な下地調整材組成物の粘度を示す。下地調整材組成物の粘度が40Pa・s以上の場合下地調整材組成物を厚塗りすることが可能である。
【0111】
【表8】

【0112】
【表9】

【0113】
第4表に示す結果から明らかなように、ウレタンプレポリマーの量が少ない比較例IV−1〜2の下地調整材組成物は、いずれも耐溶剤性に劣り、更に柔軟性にも劣ることが分かった。
これに対して、実施例IVの実施例はいずれも耐溶剤性および柔軟性が良好であることが分かった。
また、ウレタンプレポリマーの量が少ない比較例IV−1は混合から10分後の粘度が低く薄塗りまたは中塗りにしか使用できないことが分かった。シランカップリング剤および水溶性セルロース化合物を含有しない実施例IV−5、水溶性セルロース化合物の量が少ない実施例IV−6は薄塗りの仕様に用いることができる。
また、ウレタンプレポリマーの量が少ない比較例IV−1は耐水接着性が低かった。
これに対して、シランカップリング剤および水溶性セルロース化合物を所定の量で含有する実施例IV−1〜4の下地調整材組成物はいずれも、耐水接着性(特に粘着シートとの耐水接着性)に特に優れ、中塗りまたは厚塗りの仕様に用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
1、20 屋上防水構造体
2、22 下地材層
3、23 下地調整材層
4、24 防水材層
25 粘着シート
26 基材シート
27 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン系防水材の下地調整材組成物であって、
合成樹脂エマルジョンを含有する硬化剤成分と、
ウレタンプレポリマーを含有する主剤成分と、
珪砂、セメントおよび炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含有する粉体成分とを含有し、
前記ウレタンプレポリマーの含有量が、前記合成樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対して10〜1100質量部であり、
前記粉体成分の含有量が、前記合成樹脂エマルジョンの固形分と前記ウレタンプレポリマーとの合計100質量部に対して15〜1500質量部である下地調整材組成物。
【請求項2】
前記合成樹脂エマルジョンは、アクリル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンおよびエチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の下地調整材組成物。
【請求項3】
更に、潜在性硬化剤を含有する請求項1または2に記載の下地調整材組成物。
【請求項4】
更に、樹脂バルーンを含有し、前記樹脂バルーンの量は、前記粉体成分100質量部に対して20質量部以下である請求項1〜3のいずれかに記載の下地調整材組成物。
【請求項5】
更に、シランカップリング剤を含有し、前記シランカップリング剤の量は、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して1質量部以上である請求項1〜4のいずれかに記載の下地調整材組成物。
【請求項6】
更に、水溶性セルロース化合物を含有する請求項5に記載の下地調整材組成物。
【請求項7】
前記潜在性硬化剤が、オキサゾリジン化合物である請求項3〜6に記載の下地調整材組成物。
【請求項8】
前記オキサゾリジン化合物が、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとポリイソシアネート化合物との反応物である請求項7に記載の下地調整材組成物。
【請求項9】
前記潜在性硬化剤の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.5〜10質量部である請求項3〜8のいずれかに記載の下地調整材組成物。
【請求項10】
前記樹脂バルーンを構成する樹脂は、アクリルニトリル系コポリマーである請求項4〜9のいずれかに記載の下地調整材組成物。
【請求項11】
前記シランカップリング剤は、ビニルシラン、エポキシシランおよびメルカプトシランからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5〜10のいずれかに記載の下地調整材組成物。
【請求項12】
前記水溶性セルロース化合物は、アルキルエーテルを有するセルロースおよび/またはヒドロキシアルキルエーテルを有するセルロースである請求項6〜11のいずれかに記載の下地調整材組成物。
【請求項13】
前記水溶性セルロース化合物の量は、前記粉体成分100質量部に対して0.03質量部以上である請求項6〜12のいずれかに記載の下地調整材組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−32155(P2011−32155A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55824(P2010−55824)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)