説明

下水処理場リン除去装置

【課題】雨天時などで有機物濃度が低下した場合でも、生物学的に安定して下水からリンを除去することができる下水処理場リン除去装置を提供する。
【解決手段】下水処理場リン除去装置は嫌気槽10と、酸素槽11と、好気槽11とを備えている。有機物供給槽21がポンプ19を介して嫌気槽10に接続されている。UV計25により下水中の有機物濃度が求められる。コントローラ101によりUV計25からの信号に基づいて、有機物濃度が低くなったときポンプ19を作動させて、嫌気槽10内に有機物を補充する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水処理場リン除去装置に係り、とりわけリンを効果的に除去することができる下水処理場リン除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の下水処理場では、活性汚泥法と呼ばれるプロセスにより有機物除去を主におこなっていたが、近年、湖沼、湾などの閉鎖性水域で富栄養化が進行してきていることから、有機物除去のみならず富栄養化の原因物質である窒素、リン除去も行う下水高度処理の要求が増大してきている。
【0003】
有機物・窒素・りんの同時除去を行うプロセスの代表プロセスとして、嫌気−無酸素−好気プロセス(AOプロセス)を含む下水処理場が参照されている(例えば特許文献1および2参照)。
【0004】
以下、簡単にこのプロセスにおける窒素・リン除去のメカニズムを示す。
【0005】
窒素除去は次のようにして行われる。まず下水が嫌気槽、無酸素槽および好気槽を経て順次処理される。
【0006】
この間、好気槽において、曝気装置により供給される酸素を利用して、硝化菌がアンモニア性窒素(NH−N)を亜硫酸性窒素(NO−N)および硝酸性窒素(NO−N)に酸化する。
【0007】
好気槽内の水は循環ポンプにより無酸素槽に送り込まれる。無酸素槽内に送られた亜硝酸性窒素(NO−N)および硝酸性窒素(NO−N)は、無酸素条件下で流入下水中の有機物を栄養源とする脱窒細菌による硝酸性呼吸あるいは亜硝酸性呼吸により、窒素ガス(N)へと還元され、系外に除去される。
【0008】
窒素除去反応を化学式で表現すると、好気槽内で行われる硝化反応は、以下のとおりである。
NH+2O→NO+2H
NO+1/2O→NO
【0009】
無酸素槽内で行われる脱窒反応として、有機物としてメタノールが使われた場合の反応を記すと、
6NO+5CHOH→3N+5CO+7HO+6OH
となる。
【0010】
リン除去は次のような機構で行われる。
【0011】
まず嫌気槽内で、活性汚泥中のリン蓄積細菌が、酢酸などの有機酸を体内に蓄積し、リン酸(PO)に放出する。この過剰放出したリン酸態のリンについては、無酸素槽の後段に配置された好気槽においてリン蓄積細菌のリン過剰摂取作用を利用して、嫌気槽で放出された以上のリン酸態のリンを活性汚泥に吸収させることによりリン除去が行われる。
【0012】
すなわち、この反応を進行させるためには、嫌気槽内において、酢酸などの有機酸が必要となる。雨水流入時には有機酸濃度が薄くなり、リン蓄積菌が利用できる有機物が減少することから、十分なリンの吐き出し反応が十分に行われなくなる。このため後に続くリンの過剰摂取反応も不十分となる場合があり、生物学的リン除去のみでは目標となる水質を得られない場合がある。
【0013】
このように雨水流入時に有機物濃度が薄くなった場合の有機物の補填手段としては、嫌気槽に有機物を投入する方法、および最初沈殿池をバイパスし有機物濃度の高い下水を直接嫌気槽に流入させる方法、最初沈殿池の汚泥を投入する方法、最初沈殿池の汚泥を発酵させたりオゾンにて溶解し投入する方法などがある。
【0014】
また、生物学的りん除去以外に化学的にりんを除去する方法もある。この方法はポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄などの凝集剤を貯える凝集剤貯留槽を設け、これら凝集剤を注入してリン酸アルミニウムやリン酸鉄の形でリン成分を以下の式で沈殿させることによりリンを除去する方法である。
Al3++3PO→Al(PO
【0015】
りん除去を促進するにはこのように凝集剤を注入する方法もあるが、凝集剤の使用はコストがかかり、またアルミ系の凝集剤はアルツハイマー病の原因物質となることからできるだけ生物学的にりんを取るほうが望ましい。
【特許文献1】特開2001−87793
【特許文献2】特開平11−290888
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように従来の下水処理場では、
(1)雨天などの影響により、有機物濃度が低下する際にリン蓄積細菌が利用する有機物量が少なくなり、リン除去が悪化する問題がある。
(2)また凝集剤を使うことによりリン除去を促進させることができるが、コストがかかり、凝集剤中の成分が環境に影響を及ぼす可能性もある。
【0017】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、下水処理場において、雨天時などの有機物濃度低下時にも生物学的作用により、安定してりんを除去することができる下水処理場リン除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、最初沈殿池と、最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度を計測するセンサを設け、センサからの信号に基づいて、コントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0019】
本発明は、有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さい場合にポンプを運転し、有機物濃度が基準値より大きい場合にポンプを停止するようポンプの制御を行なうことを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0020】
本発明は、有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さい場合に開閉弁を開とし、有機物濃度が基準値より大きい場合に開閉弁を閉とするよう開閉弁の制御を行なうことを特徴とする下水処理場のリン除去装置である。
【0021】
本発明は、最初沈殿池と、最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度を計測するセンサを設け、嫌気槽内のORPを計測するORP計測器を設け、センサおよびORP計測器からの信号に基づいて、コントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0022】
本発明は、有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、コントローラはセンサとORP計測器からの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さいか、もしくはORPが基準値より大きい場合のいずれか一方の場合にポンプを運転し、それ以外の場合にポンプを停止することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0023】
本発明は、有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、コントローラはセンサとORP計測器からの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さいか、もしくはORPが基準値より大きい場合のいずれか一方の場合に開閉弁を開とし、それ以外の場合に開閉弁を閉とすることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0024】
本発明は、最初沈殿池と、最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度および流入流量を計測するセンサを設け、センサからの信号に基づいて、コントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0025】
本発明は、有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度と基準値との偏差および流入流量から必要となるポンプ流量を求めてポンプを制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0026】
本発明は、有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度と基準値との偏差および流入流量から必要となるバイパス流量を求めて開閉弁を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0027】
本発明は、最初沈殿池と嫌気槽との間に配管もしくは混合槽を設け、嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度を計測するセンサは配管または混合槽に設けられていることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0028】
本発明は、有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さい場合に開閉弁を開とし、有機物濃度が基準値より大きい場合に開閉弁を閉とするよう開閉弁の制御を行なうことを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0029】
本発明は、センサは配管に設けられ、バイパス配管の下流側の接続位置はセンサの前段に位置することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0030】
本発明は、好気槽にリン酸計を設け、コントローラはリン酸計からの信号を考慮して、ポンプの制御を行なうことを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0031】
本発明は、好気槽にリン酸計を設け、コントローラはリン酸計からの信号を考慮して、開閉弁の制御を行なうことを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0032】
本発明は、最初沈殿池と、最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度および流入流量を計測するセンサを設け、センサからの信号に基づいて、有機物濃度と基準値の偏差および流入流量から不足している有機物量を演算する不足有機物演算部を有するコントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0033】
本発明は、有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、コントローラは不足有機物量に基づいて、ポンプを制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0034】
本発明は、有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、コントローラは不足有機物量に基づいて開閉弁を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0035】
本発明は、最初沈殿池と、最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、過去の情報に基づいて、下水の流入量、有機物濃度、リン濃度を予測する流入予測部を設け、この流入水予測部からの予測結果に基づいて、不足している有機物量を演算する不足有機物演算部を有するコントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0036】
本発明は、有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、コントローラは不足有機物量に基づいてポンプを制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0037】
本発明は、有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、コントローラは不足有機物量に基づいて開閉弁を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0038】
本発明は、好気槽に凝集剤注入ポンプを有する凝集剤注入設備が接続され、コントローラは凝集剤注入ポンプを制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0039】
本発明は、最初沈殿池と、最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、最終沈殿池内の固形物を嫌気槽へ返送する返送ポンプを設け、嫌気槽に流入する流入水中の流入リン濃度および流入流量を計測するセンサを設け、嫌気槽から流出する流出リン濃度を測定する流出リン濃度計を設け、返送ポンプにより返送される返送流量を測定する返送流量計を設け、センサ、流出リン濃度計および返送流量計からの信号に基づいてコントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0040】
本発明は、有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給する有機物供給ポンプとを有することを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0041】
本発明は、コントローラはセンサ、流出リン濃度計および返送流量計からの信号に基づいて、嫌気槽へ流入する流入リン濃度と流入流量との積から流入リン量を求め、嫌気槽へ流入する流入流量と返送流量の和に嫌気槽からの流出リン濃度を乗じて流出リン量を求め、この流出リン量と流入リン量との差からリン吐出し量を求め、リン吐出し量が所定値以下の場合に有機物供給ポンプを作動させることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0042】
本発明は、コントローラにより求めたリン吐出し量を複数日分記憶する計測値記憶部が設けられ、計測値記憶部からのリン吐出し量の平均値が制御目標設定部に伝送され、コントローラはこの制御目標設定部で設定された目標値を基準として有機物供給ポンプを作動させることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0043】
本発明は、好気槽内の固形物濃度を測定する第1固形物濃度計を設け、返送ポンプにより返送される固形物濃度を測定する第2固形物濃度計を設けるとともに、嫌気槽から流出する追加流出リン濃度を測定する追加流出リン濃度計を設け、コントローラはセンサ、流出リン濃度計、返送流量計からの信号に加えて、追加流出リン濃度計、第1固形物濃度計、および第2固形物濃度計からの信号に基づいて、嫌気槽から流出する流出リン濃度と好気槽から流出する追加流出リン濃度の差を好気槽内の固形物濃度で割って、固形物中に含まれるリン濃度を求め、返送ポンプにより返送される固形物濃度と固形物中に含まれるリン濃度と返送流量とによって嫌気槽へ返送されるリン量を求め、嫌気槽へ流入する流入リン濃度と流入流量との積から流入リン量を求め、嫌気槽へ流入する流入流量と返送流量の和に嫌気槽からの流出リン濃度を乗じて流出リン量を求め、この流出リン量と流入リン量との差からリン吐出し量を求め、リン吐出し量を嫌気槽に返送されたリン量で割った値が所定値以下の場合に有機物供給ポンプを作動させることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0044】
本発明は、最初沈殿地に引抜ポンプを介して汚泥を引き抜く汚泥配管が接続され、この汚泥配管に有機物供給槽が連結され、この有機物供給槽は汚泥の発酵機能を有する可溶化槽からなることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0045】
本発明は、最初沈殿地に引抜ポンプを介して汚泥を引き抜く汚泥配管が接続され、この汚泥配管に有機物供給槽が連結され、この有機物供給槽はオゾン注入部を有する可溶化槽からなることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0046】
本発明は、最終沈殿地に余剰ポンプを介して余剰汚泥を引き抜く余剰汚泥配管が接続され、この余剰汚泥配管に有機物供給槽が連結され、この有機物供給槽は汚泥の発酵機能を有する可溶化槽からなることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【0047】
本発明は、最終沈殿地に余剰ポンプを介して余剰汚泥を引き抜く余剰汚泥配管が接続され、この余剰汚泥配管に有機物供給槽が連結され、この有機物供給槽はオゾン注入部を有する可溶化槽からなることを特徴とする下水処理場リン除去装置である。
【発明の効果】
【0048】
以上のように本発明によれば、雨天時などで有機物濃度が低下した場合でも、生物学的に安定して下水からリンを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明による下水処理場リン除去装置の第1の実施の形態を示す図である。
【0050】
図1に示すように、下水処理場リン除去装置は、最初沈殿池2と、最初沈殿池2の下流側に接続された嫌気槽10と、嫌気槽10の下流側に接続された無酸素槽11と、無酸素槽11の下流側に接続された好気槽12と、好気槽12の下流側に接続された最終沈殿池13とを備えている。
【0051】
また嫌気槽10には、ポンプ19を介して炭素源貯留槽(有機物供給層)21が接続され、さらに好気槽12と無酸素槽11との間には循環ポンプ14が設けられた循環配管53が接続されている。さらに最終沈殿池13と嫌気槽10との間には、最終沈殿池13内の固形物(汚泥)を嫌気槽10へ戻す返送ポンプ15が取付けられた返送配管54が接続されている。
【0052】
また好気槽12には、曝気装置9から酸素が送られるようになっている。
【0053】
さらに最初沈殿池2の上流側の配管50と嫌気槽10との間には、最初沈殿池2をバイパスするバイパス配管59が設けられ、このバイパス配管59には電磁弁からなるバイパス弁(開閉弁ともいう)23が取付けられている。
【0054】
なお、ポンプ19と炭素源貯留槽21とによって有機物供給手段が構成されるが、この有機物供給手段をバイパス配管59とバイパス弁23とによって構成してもよい。
【0055】
また最初沈殿池2と嫌気槽10との間の配管51には、嫌気槽10内へ流入する有機物濃度を測定するUV計25が設けられている。さらに最初沈殿池2および最終沈殿池13には、固形物(汚泥)を引抜く汚泥配管58,55が各々接続され、汚泥配管58,55には引抜ポンプ18と余剰ポンプ17が各々設けられている。
【0056】
なお、ポンプ19と炭素源貯留槽21とによって有機物供給手段が構成されるが、この有機物供給手段をバイパス配管59とバイパス弁23とによって構成してもよい。
【0057】
そして汚泥配管58,55は、各々汚泥貯留槽20に接続されている。
【0058】
また、好気槽12には、凝集剤貯留槽22が凝集剤注入ポンプ16を介して接続されている。
【0059】
またUV計25からの信号はコントローラ101に送られ、このコントローラ101により流入有機物濃度基準値100を用いて、ポンプ19を制御して、嫌気槽10内に炭素源貯留槽21から炭素源を供給するようになっている。
【0060】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0061】
まず下水1は配管50を通って最初沈殿池2へ流入し、最初沈殿池2からの水澄み水が嫌気槽10、無酸素槽11および好気槽12に送られて順次処理され、その後最終沈殿池を通って配管60から処理水3として放出される。
【0062】
この間のプロセスにおける窒素・リン除去のメカニズムを以下説明する。
【0063】
窒素除去は次のようにして行われる。
【0064】
好気槽12において、曝気装置9により供給される酸素を利用して、硫化菌がアンモニア性窒素(NH−N)を亜硝酸性窒素(NO−N)および硝酸性窒素(NO−N)に酸化する。
【0065】
好気槽12から循環ポンプ14により無酸素槽11に送り込まれた亜硝酸性窒素(NO−N)および硝酸性窒素(NO−N)は、無酸素条件下で流入下水中の有機物を栄養源とする脱窒細菌による硝酸性呼吸あるいは亜硝酸性呼吸により、窒素ガス(N)へと還元され、系外に除去される。
【0066】
窒素除去反応を化学式で表現すると、
硝化反応は、
NH+2O→NO+2H
NO+1/2O→NO により行われる。
【0067】
脱窒反応として、有機物としてメタノールが使われた場合の反応を記すと、
6NO+5CHOH→3N+5CO+7HO+6OH となる。
【0068】
他方、リン除去は次のような機構で行われる。
【0069】
無酸素槽11の前段に配置された嫌気槽10において、活性汚泥中のリン蓄積細菌は、酢酸などの有機酸を体内に蓄積し、リン酸(PO)を放出する。この過剰放出したリン酸態のリンについては、無酸素槽11の後段に配置された好気槽12において、リン蓄積細菌のリン過剰摂取作用を利用して、嫌気槽10で放出された以上のリン酸態のリンを活性汚泥中に吸収させることによりリン除去を行う。
【0070】
この反応を進行させるためには、嫌気槽10内において、酢酸などの有機酸が必要となる。雨水流入時には有機酸濃度が薄くなり、リン蓄積菌が利用できる有機物が減少することから、十分なリンの吐き出し反応が十分に行われなくなるため、後に続くリンの過剰摂取反応も不十分となることがあり、生物学的リン除去のみでは目標となる水質を得られない場合がある。このように雨水流入時に有機物濃度が薄くなった場合は、以下のような作用により嫌気槽10内に有機物を供給する。
【0071】
まず嫌気槽10内へ流入する有機物濃度をUV計25の計測値と有機物濃度の代表指標であるCOD(化学的酸素要求量)は一般に相関があることが知られており、その関係は(1)式のように示される。
COD=a・UV+b (1)式
COD:COD濃度、UV:UV計の計測値、a、b:相関係数
【0072】
そこで、UV計25の計測値から(1)式により演算された有機物濃度が、設定された有機物濃度基準値より低い場合に、コントローラ101はポンプ19を運転して嫌気槽10に炭素源貯留槽21から炭素源を供給する。他方、有機物濃度が高い場合はポンプ19を停止する。
【0073】
有機物濃度の設定値の目安としては、流入水のリン濃度に対して、約20倍程度の有機物濃度があれば、安定したリン除去が行える。
【0074】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく有機物を嫌気槽10内に投入することができる。
【0075】
なお、UV計25の設置位置は嫌気槽10の上流側であれば、最初沈殿池の内部などいずれの位置でも良い。
【0076】
プロセスは図1に示すAOプロセスに限らず、AOプロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスであってもよい。
【0077】
第2の実施の形態
次に図2により本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0078】
図2において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0079】
図2に示す下水処理場リン除去装置は嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるAOプロセスを含む。
【0080】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25が設置され、最初沈殿池2をバイパスするバイパス配管59に電磁弁からなるパイパス弁(開閉弁)23が設置されている。
【0081】
図2において、UV計25の計測値と有機物濃度の代表指標であるCOD(化学的酸素要求量)は一般に相関があることが知られており、その関係は前記の(1)式のように示される。
【0082】
コントローラ102は、UV計25の計測値から(1)式により演算された有機物濃度が、設定された有機物濃度基準値より低い場合に、最初沈殿池2をバイパスするバイパス弁23を開き、有機物濃度が有機物濃度基準値より高い場合はバイパス弁23を閉とする。
【0083】
有機物濃度の設定値の目安としては、流入水のリン濃度に対して、約20倍程度の有機物濃度があれば、安定したリン除去が行える。
【0084】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく制御が可能である。また、嫌気槽10に有機物として、有機物濃度が高い最初沈殿池前の下水を供給することができ、炭素源を貯留する施設の必要がなく、また、炭素源の薬品費もいらない。
【0085】
なお、UV計25の設置位置は嫌気槽10の上流側であれば、最初沈殿池2の内部などいずれの位置でも良い。
【0086】
また、プロセスはAOプロセスに限らず、AOプロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0087】
第3の実施の形態
次に図3により本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0088】
図3において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0089】
図3に示す下水処理場リン除去装置は嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるAOプロセスを含む。
【0090】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25が設置され、嫌気槽10内にORP計27が設置されている。
【0091】
図3において、UV計25の計測値と有機物濃度の代表指標であるCOD(化学的酸素要求量)は一般に相関があることが知られており、その関係は(1)式のように示される。
COD=a・UV+b (1)式
COD:COD濃度、UV:UV計計測値、a、b:相関係数
【0092】
ORP計(酸化還元電位計)27は嫌気槽10の嫌気度を示す指標を示す。嫌気槽10のORPが高い場合(−250mV以上)では、リンの吐出が十分行われないため、リン除去が悪化する場合がある。
【0093】
コントローラ101aは、UV計25の計測値から(1)式により演算された有機物濃度が、設定された有機物濃度基準値100より低い場合に、ポンプ19を運転して嫌気槽10に炭素源を供給し、高い場合にポンプ19を停止する。
【0094】
また、コントローラ101aは、UV計25から計算される有機物濃度が、設定された有機物濃度基準値100より高い場合でも、嫌気槽10のORPが高い場合はポンプ19を運転して炭素源を嫌気槽10内に投入し、ORPが低い場合はポンプ19を停止する。
【0095】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく有機物の投入が可能である。またORPが高い場合にも有機物を投入することにより、嫌気槽10の嫌気度を低く保つことができるため、より安定的にリン除去を行うことが可能となる。
【0096】
なお、UV計25の設置位置は嫌気槽10の上流側であれば、最初沈殿池2の内部などいずれの位置でも良い。
【0097】
また、プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0098】
第4の実施の形態
次に図4により本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0099】
図4において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0100】
図4に示す下水処理場リン除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0101】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25が設置され、嫌気槽10にORP計27が設置されている。
【0102】
また最初沈殿池2をバイパスするバイパス配管59にバイパス弁(電磁弁)23が設置されている。
【0103】
図4において、UV計25の計測値と有機物濃度の代表指標であるCOD(化学的酸素要求量)は一般に相関があることが知られており、その関係は前記の(1)式のように示されている。
【0104】
コントローラ102はUV計25の計測値から(1)式により演算された有機物濃度が、設定された有機物濃度基準値100より低い場合に、最初沈殿池2をバイパスするバイパス配管59のバイパス弁23を開き、高い場合はバイパス弁23を閉とする。
【0105】
有機物濃度の設定値の目安としては、流入水のリン濃度に対して、約20倍程度の有機物濃度があれば、安定したリン除去が行える。
【0106】
また、UV計25から計算される有機物濃度が設定された有機物濃度基準値100より高い場合でも、コントローラ102は嫌気槽10のORPが高い場合は最初沈殿池2をバイパスするバイパス配管59のバイパス弁23を開とし、低い場合は閉とする。
【0107】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく制御が可能である。また、嫌気槽10に有機物として、有機物濃度の高い最初沈殿池前の下水を供給することができ、炭素源を貯留する施設の必要がなく、また、炭素源の薬品費もいらない。
【0108】
またORPが高い場合にも有機物を投入することにより、嫌気槽の嫌気度を低く保つことができるため、安定的にリン除去を行うことが可能となる。
【0109】
なお、UV計25の設置位置は嫌気槽10の上流側であれば、最初沈殿池2の内部などいずれの位置でも良い。
【0110】
また、プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0111】
第5の実施の形態
次に図5により本発明の第5の実施の形態について説明する。
【0112】
図5において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0113】
図5に示す下水処理場リン除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0114】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25及び流量計25aが設置されている。炭素源注入ポンプ19はインバータの回転数を制御することにより、流量を調整できる。
【0115】
図5において、UV計25の計測値と有機物濃度の代表指標であるCOD(化学的酸素要求量)は一般に相関があることが知られており、その関係は前記の(1)式のように示される。
【0116】
コントローラ103により、(1)式により導出された有機物濃度と、設定された有機物濃度基準値100と、流量計25aの計測値より、設定された有機物濃度基準値を保つのに必要な炭素源の流量が(2)式により求められる。
Qcar(t)=(Csv−Cin(t))/(Ccarbon−Csv)*Qin(t) (2)式
ただし、Qcar(t)<=0のときはQcar(t)=0
Qcar(t):炭素源の流量演算値(m3/h)、Csv:有機物濃度基準値(mg/L)、Cin(t):流入有機物濃度(UV計計測値から換算)(mg/L)、Ccarbon:炭素源濃度(mg/L)、Qin(t):流入流量
【0117】
コントローラ103は(2)式にて求められる流量となるよう炭素源注入ポンプの回転数を制御する。
【0118】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく制御が可能である。
【0119】
また有機物濃度基準値となるための炭素源の必要量を演算するため、不必要な有機物投入がなくなり、有機物投入量の削減により運転コストの削減ができる。また、必要な場合はより多くの有機物を投入することから、流入有機物濃度の安定化が可能となり、より安定的にリン除去を行うことが可能となる。
【0120】
なお、UV計25の設置位置は嫌気槽10の上流側であれば、最初沈殿池2の内部などいずれの位置でも良い。
【0121】
また、プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0122】
炭素源の流量のコントロール方法はポンプ19の回転数制御によるものでなく、配管57上に調整弁を設置し、弁の開度調整により流量制御を行う方法を用いてもよい。
【0123】
第6の実施の形態
次に図6により本発明の第6の実施の形態について説明する。
【0124】
図6において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0125】
図6に示す下水処理場リン除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0126】
最初沈殿池2に流入する前の配管50に有機物濃度計として、UV計26が設置され、最初沈殿池2の後段の配管51上に有機物濃度計としてUV計25が設置されている。
【0127】
最初沈殿池59をバイパスするバイパス配管59にバイパス弁(電動弁)23が設置されている。
【0128】
図6において、UV計21の計測値と有機物濃度の代表指標であるCOD(化学的酸素要求量)は一般に相関があることが知られており、その関係は前記の(1)式のように示される。
【0129】
コントローラ104により、UV計25,26の測定値から(1)式により導出された有機物濃度(最初沈殿池2の前後)と設定された有機物濃度基準値100と流量計25aの計測値より、設定された有機物濃度を保つのに必要なバイパス流量が(3)式により求められる。
Qbyp(t)=(Csv−Cin1(t))/(Cin2(t)−Cin1(t))*Qin(t) (3)式
ただし、Qbyp(t)<=0のときはQbyp(t)=0
Qbyp(t):バイパス流量演算値(m3/h)、Csv:有機物濃度基準値(mg/L)、Cin1(t):嫌気槽流入有機物濃度(UV計25の計測値から換算)(mg/L)、Cin2(t):初沈前の流入有機物濃度(UV計26の計測値から換算)(mg/L)、Qin(t):流入流量
【0130】
コントローラ104は(3)式にて求められる流量となるようバイパス弁23の弁開度を制御する。
【0131】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25,26を使用することにより、時間遅れがなく制御が可能である。
【0132】
また、有機物濃度基準値となるために必要となるバイパス流量を演算し、バイパス流量を最適化することから、流入有機物濃度の安定化が可能となり、より安定的にリン除去を行うことが可能となる。
【0133】
なお、UV計25,26の設置位置は嫌気槽10に流入する前であれば、いずれでもよい。
【0134】
また、プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0135】
第7の実施の形態
次に図7により本発明の第7の実施の形態について説明する。
【0136】
図7において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0137】
図7に示す下水処理場リン除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0138】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25が設置されている。
【0139】
最初沈殿池2をバイパスするバイパス配管59は、その配管の下流側の接続先がUV計25より前段部の配管51となっている。
【0140】
バイパス配管59には、バイパス弁(電動弁)23が設置されている。
【0141】
図7において、UV計25の計測値と有機物濃度の代表指標であるCOD(化学的酸素要求量)は一般に相関があることが知られており、その関係は前記の(1)式のように示される。
【0142】
コントローラ104は、(1)式により導出された有機物濃度と設定された有機物濃度基準値100の偏差により例えば(4)式に示すような汎用コントローラの一つであるPIコントローラにより、流入する有機物濃度を一定に保つようバイパス流量を演算する。
【数1】

ただし、Qbip(t)<=0の時はQbip(t)=0
Qbip(t):時刻tにおけるバイパス流量演算値(m/h) 、Qair:バイパス流量初期値(m/h) 、Kp:比例ゲイン(m/g・h)、Ti:積分定数(h) 、e(t):偏差(mg/L)
Cin(t):嫌気槽流入有機物濃度(UV値より換算)(mg/L)、有機物濃度基準値(mg/L)
【0143】
コントローラ104は(4)式にて求められる流量となるようバイパス弁23の弁開度を制御する。
【0144】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく制御が可能である。
【0145】
またバイパス配管59の下流側の接続位置がUV計25の前段の配管51となったことにより、PIコントローラによるフィードバック制御が可能となり、UV計25が1台ですむ。
【0146】
なお、UV計25の設置位置は、最初沈殿池2と嫌気槽10の間に混合層51Aを設け、その混合層51A内に設置してもよい。
【0147】
また、プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0148】
第8の実施の形態
次に図8により本発明の第8の実施の形態について説明する。
【0149】
図8において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0150】
図8に示す下水処理場リン除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0151】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25及び流量計25aが設置されている。このうちUV計25及び流量計25aによりセンサが構成されている。
【0152】
炭素源注入ポンプ19はインバータの回転数を制御することにより、流量を調整できる。
【0153】
最初沈殿池2をバイパスするバイパス配管59は、その配管の接続先がUV計25より前段部の配管59となっている。バイパス配管59には、バイパス弁(電動弁)23が設置されている。
【0154】
図8において、コントローラ104は(4)式で演算された注入量Qbip(t)を嫌気槽10内に設定されたORP計27の計測値と嫌気槽ORP基準値との偏差に応じて、例えば(5)式のような演算式で補正する。
【数2】

Qbip(t):時刻tにおけるバイパス流量演算値(m/h)、Qbip(t)’:時刻tにおけるバイパス流量補正値(m/h)、K:定数、
ORP(t):嫌気槽ORP値(mV)、ORPsv:嫌気槽ORP基準値(mV)
【0155】
次にコントローラ104は、(5)式で求めたバイパス流量補正値を用いて、バイパス弁23を制御する。
【0156】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく制御が可能である。
【0157】
また嫌気槽10に設置されたORP計27を使うことにより、ORPが高い場合にバイパス量を増加するよう制御が働き、有機物濃度の高い下水を嫌気槽に投入することにより、ORP値を下げることが可能となり、リン除去をより安定化させることが可能となる。
【0158】
なおUV計25の設置位置は、最初沈殿池2と嫌気槽10との間に混合槽を設け、その混合槽内に設置してもよい。
【0159】
また、プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0160】
第9の実施の形態
次に図9により本発明の第9の実施の形態について説明する。
【0161】
図9において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0162】
図9に示す下水処理場リン除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0163】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25及び流量計25aが設置されている。好気槽12にリン酸計28が設置されている。このうちUV計25及び流量計25aによりセンサが構成されている。
【0164】
炭素源注入ポンプ19はインバータの回転数を制御することにより、流量を調整できる。
【0165】
図9において、コントローラ103は(3)式で演算された注入量Qcar(t)をリン酸濃度基準値とリン酸計28からのリン酸濃度の偏差に応じて例えば(6)式のような式にて補正する。
【数3】

Qcar(t):時刻tにおける炭素源の流量演算値(m/h)、Qbip(t)’:時刻tにおける炭素源の流量補正値(m/h)、K:定数、
PO4(t):好気槽リン酸濃度(mg/L)、PO4sv:好気槽リン酸基準値(mV)
【0166】
次にコントローラ103は、(6)式で求めた炭素源の流量補正値に基づいて、ポンプ19を制御する。
【0167】
第10の実施の形態
次に図10により本発明の第10の実施の形態について説明する。
【0168】
図10において図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0169】
図10に示す下水処理場リン酸除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0170】
最初沈殿池2の後段の配管51に有機物濃度計としてUV計25及び流量計4が設置されている。このうちUV計25および流量計4によりセンサが構成されている。
【0171】
最初沈殿池2の出口の配管51に全リン計29が設置されている。
【0172】
炭素源注入ポンプ19はインバータの回転数を制御することにより、流量を調整できる。
【0173】
図10においてコントローラ103は不足有機物量演算部105を含み、この不足有機物量演算部105において、不足有機物量が例えば、(7)式のような演算式により演算される。
【数4】

CA:不足有機物量(g/h)、Pin(t):全リン計29による時刻tにおける流入リン濃度(mg/L)、Psv:処理水リン濃度目標値、Cin(t):UV計25からの時刻tにおける流入有機物濃度(mg/L)、Qin(t):流量計4からの時刻tにおける流入流量(m/h)、a:定数
【0174】
時刻tにおける炭素源流量Qcar(t)は、
Qcar(t)=CA/Qin(t)にて求まる。
【0175】
コントローラ103は不足有機物量演算部105で求めた炭素源流量に基づいてポンプ19を制御する。
【0176】
本実施の形態によれば、BOD計、COD計、有機酸計に比べてオンライン性の高いUV計25を使用することにより、時間遅れなく制御が可能である。
【0177】
また、流入リン濃度と、流入有機物濃度とから不足有機物量を演算するため、流入負荷の変動に応じた注入量制御が可能となり、リン除去をより安定化させることが可能となる。
【0178】
なお、不足有機物量演算部105における演算方法では、データベースにデータを蓄積し、蓄積されたデータから上記(7)式のaを求めてもよい。
【0179】
また、不足有機物量演算部105における演算方法は(7)式に限らず、例えば活性汚泥モデルのような生物反応モデルを参照し、演算してもよい。
【0180】
さらに、不足有機物量演算部105における演算にあたっては、降雨情報・気象情報110をもとに流入流量、流入水質を予測し、その予測結果をもとに不足有機物量を演算してもよい(図12参照)。
【0181】
プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0182】
第11の実施の形態
次に図12により本発明の第11の実施の形態について説明する。
【0183】
図12において、図1に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0184】
図12に示す下水処理場リン除去装置は、嫌気槽10と、無酸素槽11と、好気槽12とからなるA20プロセスを含む。
【0185】
最初沈殿池2の後段の配管51上に有機物濃度計としてUV計25及び流量計25aが設置されている。このうちUV計25及び流量計25aによりセンサが構成されている。
【0186】
炭素源注入ポンプ19はインバータの回転数を制御することにより、流量を調整できる。
【0187】
好気槽12にリン酸濃度計28が設置され、凝集剤貯留槽22が凝集剤注入ポンプ16を介して好気槽12に接続され、ポンプ16は凝集剤コントローラ16aによりインバータ回転数により、流量を制御される。
【0188】
炭素源注入ポンプ19はコントローラ103により(2)式にて求められる流量となるよう炭素源注入ポンプの回転数を制御する。
【0189】
一方で凝集剤注入ポンプ16は、例えば(8)式のような演算式により、凝集剤コントローラ16aにより流量が制御される。
【数5】

Qpac(t):時刻tにおける凝集剤の流量演算値(m/h)、K:定数、PO4(t):好気槽リン酸濃度(mg/L)、PO4sv:好気槽リン酸基準値(mV)
【0190】
本実施の形態によれば、毒物の流入などにより生物活性が落ちている場合などにおいては、いくら有機物を投入してもリン除去ができない場合があるが、このように凝集剤を補助的に利用することにより、常に安定的にリン除去を行うことが可能となる。
【0191】
なお、プロセスはA20プロセスに限らず、A0プロセス(嫌気−好気プロセス)、ステップ流入式嫌気好気プロセスなど、嫌気槽、好気槽を有するプロセスであれば、どのようなプロセスを用いてもよい。
【0192】
凝集剤コントローラ16aによる凝集剤注入量の演算方法は(8)式に限らず、リン酸濃度基準値とリン酸計28からの計測値の偏差を用いるものであればどのようなものでもよい。
【0193】
第12の実施の形態
次に図13により本発明の第12の実施の形態について説明する。
【0194】
図13に示すように、下水処理場リン除去装置は、最初沈殿池2と、最初沈殿池2の下流側に接続された嫌気槽10と、嫌気槽10の下流側に接続された無酸素槽11と、無酸素槽11の下流側に接続された好気槽12と、好気槽12の下流側に接続された最終沈殿池13とを備えている。
【0195】
また嫌気槽10には、ポンプ19を介して炭素源貯留槽(有機物供給層)21が接続され、さらに好気槽12と無酸素槽11との間には循環ポンプ14が設けられた循環配管53が接続されている。さらに最終沈殿池13と嫌気槽10との間には、最終沈殿池13内の固形物(汚泥)を嫌気槽10へ戻す返送ポンプ15が取付けられた返送配管54が接続されている。
【0196】
また好気槽12には、曝気装置9から酸素が送られるようになっている。
【0197】
また、返送配管54には流量計54aが設置されている。さらに、嫌気槽10にはリン酸計10aが設置され、好気槽12にはリン酸計12aが設置されている。さらに配管51には全リン計29が設置されている。
【0198】
次にこのような構成からなる実施の形態の作用について説明する。
【0199】
まず下水は最初沈殿池2に流入した後、嫌気槽10に入る。
【0200】
嫌気槽10に流入する下水は、流量計4により流入流量(Qとする)が測定され、全リン計29により流入リン濃度(Cとする)が測定される。流量計4および全リン計29はセンサを構成し、これら流量計4および全リン計29からの信号はコントローラ101に入力される。
【0201】
コントローラ101ではこれら値の積により、嫌気槽10に流入するリン量が計算される。
【0202】
またコントローラ101では嫌気槽10のリン酸計(流出リン酸計)10aにて測定されるリン酸濃度(Cとする)と、流量計4で測定される流量と、流量計54aにて測定される流量(Qとする)の和との積により、嫌気槽10から流出するリン酸量が計算される。
【0203】
この嫌気槽10から流出するリン酸量と、嫌気槽10に流入するリン酸量の差がリン蓄積菌から吐き出されるリン酸量となる。
【0204】
計算式としては下記のように示される。
リン吐き出し量=C×(Q+Q)−C×Q
【0205】
雨天時等の流入有機物濃度の減少により、嫌気槽10におけるリン除去細菌のリン吐出し量が低下した場合、吐き出されるリン酸量が制御目標値設定部120で設定した閾値以下となるため、有機物の不足状況を把握することが可能となる。有機物が不足した際、コントローラ101はポンプ19を作動させて有機物供給槽21から有機物を嫌気槽10へ供給する。このように嫌気槽10へ有機物を供給することにより、嫌気槽10におけるリン蓄積菌のリン吐き出し阻害を防止できる。
【0206】
本実施の形態によれば、雨天時等の流入有機物濃度の減少により、嫌気槽10におけるリン除去細菌のリン吐出し量の低下を防止することが可能となり、放流水質の悪化を防止することが可能となる。
【0207】
第13の実施の形態
次に図14により本発明の第14の実施の形態について説明する。
【0208】
図14において、図13に示す第12の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0209】
図14において、嫌気槽10に流入する下水は、流量計4により流入流量(Qとする)が測定され、全リン計29により流入リン濃度(Cとする)が測定される。流量計4および全リン計29からの信号はコントローラ101に入力される。コントローラ101ではこれら値の積により、嫌気槽10に流入するリン量が計算される。またコントローラ101では嫌気槽10のリン酸計(流出リン酸計)10aにて測定されるリン酸濃度(Cとする)と、流量計4で測定される流量と、流量計54aにて測定される流量(Qとする)の和との積により、嫌気槽10から流出するリン酸量が計算される。
【0210】
この嫌気槽10から流出するリン酸量と、嫌気槽10に流入するリン酸量の差がリン蓄積菌から吐き出されるリン酸量となる。
【0211】
またコントローラ101は、嫌気槽10のリン酸計10aの測定値と好気槽12のリン酸計(追加流出リン酸計)12aの測定値(Cとする)の差を好気槽12に設置された汚泥濃度計12bの測定値(Mとする)で割ることにより固形物中に含まれるリン酸濃度を計算する。この値は、リン蓄積菌が蓄積したリン量を示している。
【0212】
コントローラ101は次に、返送配管54に設置された返送汚泥濃度計54bで測定された返送汚泥濃度(M2とする)と、前記固形物中に含まれるリン酸濃度と、流量計54aにて測定される流量の積により、返送される固形物中のリン酸量を計算する。
【0213】
次にコントローラ101は、リン蓄積菌から吐き出されるリン酸量を返送される固形物中のリン酸量で割ることにより、リン蓄積菌が蓄積したリン量に対する吐出し量を計算し、リン蓄積菌の活性を推定する。
【0214】
リン蓄積菌が蓄積したリン量に対する吐出し量は以下の式で表される。
リン蓄積菌が蓄積したリン量に対する吐出し量
=(C×(Q+Q)−C×Q)÷((C−C)÷M×M×Q
【0215】
雨天時等の流入有機物濃度の減少により、嫌気槽10におけるリン除去細菌のリン吐出し量が低下した場合、吐き出されるリン酸量が制御目標値設定部120で設定した閾値以下となる。しかしながら流入するリン負荷の長期的な低下により、リン蓄積菌内に蓄積されたリン量が減少した際にもリン吐出し量が低下し、吐き出されるリン酸量が閾値以下となる場合がある。本発明はこのような状態を防止するためのものであり、リン蓄積菌からのリン吐き出しの割合を計算することにより、リン蓄積菌の活性を把握し、有機物の不足状況を把握することが可能となる。有機物が不足した際、コントローラ101はリン吐出し量と、その目標値との差をとり、この差分に比例させて有機物の添加量を決定する。次に、ポンプ19を作動させて有機物供給槽21から有機物を嫌気槽10へ供給する。このように有機物を添加することにより、嫌気槽10におけるリン蓄積菌のリン吐き出し阻害を防止できる。
【0216】
本実施の形態によれば、雨天時等の流入有機物濃度の減少により、嫌気槽10におけるリン除去細菌のリン吐出し量の低下を防止することが可能となり、放流水質の悪化を防止することが可能となる。
【0217】
第14の実施の形態
次に図15により本発明の第14の実施の形態について説明する。
【0218】
図15において、図13に示す第12の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0219】
図15において、計測値記憶部124により第12の実施の形態で説明したリン吐出し量、あるいは第13の実施の形態で説明したリン蓄積菌が蓄積したリン量に対する吐出し量が、その複数日分だけ計測値記憶部124に記憶され、その平均値が閾値として制御目標設定部120に伝送される。
【0220】
図15において水質成分の季節変動による影響を防止することが可能となり、放流水質の悪化を防止することが可能となる。
【0221】
第15の実施の形態
次に図16により本発明の第15の実施の形態について説明する。図16に示す第15の実施の形態は炭素源貯留槽21の代わりに、オゾン注入部31aが取付けられた可溶化槽31を設置したものであり、他の構成は図7に示す第7の実施の形態と略同一である。
【0222】
図16において、図7に示す第7の実施の形態と同一部分には同一符号を符して詳細な説明は省略する。
【0223】
図16に示すように、最初沈殿池2に引抜ポンプ18を介して汚泥を引き抜く汚泥配管58が接続されている。また最終沈殿池13に余剰ポンプ17を介して余剰汚泥を引き抜く余剰汚泥配管55が接続されている。
【0224】
これら汚泥配管58および余剰汚泥配管55は、いずれも汚泥貯留槽20および連結管20aを介して可溶化槽31に連結されている。
【0225】
可溶化槽31はオゾン注入部31aを有し、内部に貯留された汚泥をオゾン注入部31aから供給されたオゾンによって可溶化して供給用の有機物を生成する。このため可溶化槽31は、汚泥から有機物を生成し嫌気槽10へ有機物を供給する有機物供給槽として機能する。
【0226】
なお、可溶化槽31にオゾン注入部31aを設けることなく、可溶化槽31内の汚泥を発酵させて供給用の有機物を生成してもよい。
【0227】
さらに可溶化槽31には、最初沈殿池2からの汚泥または最終沈殿池13からの余剰汚泥のうち、いずれか一方のみを供給してもよい。
【0228】
本実施の形態によれば、最初沈殿池2からの汚泥または最終沈殿池13からの余剰汚泥を用いて可溶化槽31内で可溶化して供給用の有機物を生成するので、供給用有機物を別個に外部から購入する必要はなく、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】本発明による下水処理場リン除去装置の第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明による下水処理場リン除去装置の第2の実施の形態を示す構成図。
【図3】本発明による下水処理場リン除去装置の第3の実施の形態を示す構成図。
【図4】本発明による下水処理場リン除去装置の第4の実施の形態を示す構成図。
【図5】本発明による下水処理場リン除去装置の第5の実施の形態を示す構成図。
【図6】本発明による下水処理場リン除去装置の第6の実施の形態を示す構成図。
【図7】本発明による下水処理場リン除去装置の第7の実施の形態を示す構成図。
【図8】本発明による下水処理場リン除去装置の第8の実施の形態を示す構成図。
【図9】本発明による下水処理場リン除去装置の第9の実施の形態を示す構成図。
【図10】本発明による下水処理場リン除去装置の第10の実施の形態を示す構成図。
【図11】本発明による下水処理場リン除去装置の第11の実施の形態を示す構成図。
【図12】本発明による下水処理場リン除去装置の第11の実施の形態を示す変形図。
【図13】本発明による下水処理場リン除去装置の第12の実施の形態を示す構成図。
【図14】本発明による下水処理場リン除去装置の第13の実施の形態を示す構成図。
【図15】本発明による下水処理場リン除去装置の第14の実施の形態を示す構成図。
【図16】本発明による下水処理場リン除去装置の第15の実施の形態を示す構成図。
【符号の説明】
【0230】
1 下水
2 最初沈殿池
3 処理水
9 曝気装置
10 嫌気槽
11 無酸素槽
12 好気槽
13 最終沈殿池
14 循環ポンプ
15 返送ポンプ
16 凝集剤注入ポンプ
17 余剰ポンプ
19 炭素源供給ポンプ
21 炭素源貯留槽
22 凝集剤貯留槽
23 バイパス弁
25 UV計
59 バイパス配管
101 コントローラ
101a コントローラ
102 コントローラ
103 コントローラ
104 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初沈殿池と、
最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、
嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、
嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、
嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度を計測するセンサを設け、
センサからの信号に基づいて、コントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置。
【請求項2】
有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、
コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さい場合にポンプを運転し、有機物濃度が基準値より大きい場合にポンプを停止するようポンプの制御を行なうことを特徴とする請求項1記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項3】
有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、
バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、
コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さい場合に開閉弁を開とし、有機物濃度が基準値より大きい場合に開閉弁を閉とするよう開閉弁の制御を行なうことを特徴とする請求項1記載の下水処理場のリン除去装置。
【請求項4】
最初沈殿池と、
最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、
嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、
嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、
嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度を計測するセンサを設け、嫌気槽内のORPを計測するORP計測器を設け、
センサおよびORP計測器からの信号に基づいて、コントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置。
【請求項5】
有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、
コントローラはセンサとORP計測器からの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さいか、もしくはORPが基準値より大きい場合のいずれか一方の場合にポンプを運転し、それ以外の場合にポンプを停止することを特徴とする請求項4記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項6】
有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、
コントローラはセンサとORP計測器からの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さいか、もしくはORPが基準値より大きい場合のいずれか一方の場合に開閉弁を開とし、それ以外の場合に開閉弁を閉とすることを特徴とする請求項4記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項7】
最初沈殿池と、
最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、
嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、
嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、
嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度および流入流量を計測するセンサを設け、
センサからの信号に基づいて、コントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置。
【請求項8】
有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、
コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度と基準値との偏差および流入流量から必要となるポンプ流量を求めてポンプを制御することを特徴とする請求項7記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項9】
有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、
コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度と基準値との偏差および流入流量から必要となるバイパス流量を求めて開閉弁を制御することを特徴とする請求項7記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項10】
最初沈殿池と嫌気槽との間に配管もしくは混合槽を設け、
嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度を計測するセンサは配管または混合槽に設けられていることを特徴とする請求項1記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項11】
有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、
コントローラはセンサからの信号に基づいて、有機物濃度が基準値より小さい場合に開閉弁を開とし、有機物濃度が基準値より大きい場合に開閉弁を閉とするよう開閉弁の制御を行なうことを特徴とする請求項10記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項12】
センサは配管に設けられ、バイパス配管の下流側の接続位置はセンサの前段に位置することを特徴とする請求項11記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項13】
好気槽にリン酸計を設け、
コントローラはリン酸計からの信号を考慮して、ポンプの制御を行なうことを特徴とする請求項2、5または8のいずれかに記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項14】
好気槽にリン酸計を設け、
コントローラはリン酸計からの信号を考慮して、
開閉弁の制御を行なうことを特徴とする請求項3、6、9、11または12のいずれかに記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項15】
最初沈殿池と、
最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、
嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、
嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、
嫌気槽に流入する流入水中の有機物濃度および流入流量を計測するセンサを設け、
センサからの信号に基づいて、有機物濃度と基準値の偏差および流入流量から不足している有機物量を演算する不足有機物演算部を有するコントローラにより、有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置。
【請求項16】
有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、
コントローラは不足有機物量に基づいて、ポンプを制御することを特徴とする請求項15記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項17】
有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、
コントローラは不足有機物量に基づいて開閉弁を制御することを特徴とする請求項15記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項18】
最初沈殿池と、
最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、
嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、
嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、
過去の情報に基づいて、下水の流入量、有機物濃度、リン濃度を予測する流入予測部を設け、
この流入水予測部からの予測結果に基づいて、不足している有機物量を演算する不足有機物演算部を有するコントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置。
【請求項19】
有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給するポンプとを有し、
コントローラは不足有機物量に基づいてポンプを制御することを特徴とする請求項18記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項20】
有機物供給手段は、最初沈殿池の上流側と下流側とを接続するバイパス配管と、バイパス配管に取付けられた開閉弁とを有し、
コントローラは不足有機物量に基づいて開閉弁を制御することを特徴とする請求項18記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項21】
好気槽に凝集剤注入ポンプを有する凝集剤注入設備が接続され、
コントローラは凝集剤注入ポンプを制御することを特徴とする請求項1、4、7、15または18のいずれか記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項22】
最初沈殿池と、
最初沈殿池の下流側に接続された嫌気槽と、
嫌気槽の下流側に接続された好気槽と、
嫌気槽に有機物を供給する有機物供給手段とを備え、
最終沈殿池内の固形物を嫌気槽へ返送する返送ポンプを設け、
嫌気槽に流入する流入水中の流入リン濃度および流入流量を計測するセンサを設け、
嫌気槽から流出する流出リン濃度を測定する流出リン濃度計を設け、
返送ポンプにより返送される返送流量を測定する返送流量計を設け、
センサ、流出リン濃度計および返送流量計からの信号に基づいてコントローラにより有機物供給手段を制御することを特徴とする下水処理場リン除去装置。
【請求項23】
有機物供給手段は、有機物供給槽と、有機物供給槽と嫌気槽との間に設けられ、有機物供給槽からの有機物を嫌気槽へ供給する有機物供給ポンプとを有することを特徴とする請求項22記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項24】
コントローラはセンサ、流出リン濃度計および返送流量計からの信号に基づいて、嫌気槽へ流入する流入リン濃度と流入流量との積から流入リン量を求め、嫌気槽へ流入する流入流量と返送流量の和に嫌気槽からの流出リン濃度を乗じて流出リン量を求め、この流出リン量と流入リン量との差からリン吐出し量を求め、リン吐出し量が所定値以下の場合に有機物供給ポンプを作動させることを特徴とする請求項23記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項25】
コントローラにより求めたリン吐出し量を複数日分記憶する計測値記憶部が設けられ、
計測値記憶部からのリン吐出し量の平均値が制御目標設定部に伝送され、
コントローラはこの制御目標設定部で設定された目標値を基準として有機物供給ポンプを作動させることを特徴とする請求項23または24のいずれか記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項26】
好気槽内の固形物濃度を測定する第1固形物濃度計を設け、
返送ポンプにより返送される固形物濃度を測定する第2固形物濃度計を設けるとともに、嫌気槽から流出する追加流出リン濃度を測定する追加流出リン濃度計を設け、
コントローラはセンサ、流出リン濃度計、返送流量計からの信号に加えて、追加流出リン濃度計、第1固形物濃度計、および第2固形物濃度計からの信号に基づいて、嫌気槽から流出する流出リン濃度と好気槽から流出する追加流出リン濃度の差を好気槽内の固形物濃度で割って、固形物中に含まれるリン濃度を求め、返送ポンプにより返送される固形物濃度と固形物中に含まれるリン濃度と返送流量とによって嫌気槽へ返送されるリン量を求め、
嫌気槽へ流入する流入リン濃度と流入流量との積から流入リン量を求め、嫌気槽へ流入する流入流量と返送流量の和に嫌気槽からの流出リン濃度を乗じて流出リン量を求め、この流出リン量と流入リン量との差からリン吐出し量を求め、
リン吐出し量を嫌気槽に返送されたリン量で割った値が所定値以下の場合に有機物供給ポンプを作動させることを特徴とする請求項23記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項27】
最初沈殿地に引抜ポンプを介して汚泥を引き抜く汚泥配管が接続され、この汚泥配管に有機物供給槽が連結され、
この有機物供給槽は汚泥の発酵機能を有する可溶化槽からなることを特徴とする請求項2、5、8、16、19、23のいずれか記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項28】
最初沈殿地に引抜ポンプを介して汚泥を引き抜く汚泥配管が接続され、この汚泥配管に有機物供給槽が連結され、
この有機物供給槽はオゾン注入部を有する可溶化槽からなることを特徴とする請求項2、5、8、16、19、23のいずれか記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項29】
最終沈殿地に余剰ポンプを介して余剰汚泥を引き抜く余剰汚泥配管が接続され、この余剰汚泥配管に有機物供給槽が連結され、
この有機物供給槽は汚泥の発酵機能を有する可溶化槽からなることを特徴とする請求項2、5、8、16、19、23のいずれか記載の下水処理場リン除去装置。
【請求項30】
最終沈殿地に余剰ポンプを介して余剰汚泥を引き抜く余剰汚泥配管が接続され、この余剰汚泥配管に有機物供給槽が連結され、
この有機物供給槽はオゾン注入部を有する可溶化槽からなることを特徴とする請求項2、5、8、16、19、23のいずれか記載の下水処理場リン除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−859(P2007−859A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86030(P2006−86030)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】