説明

下水汚泥の乾燥方法

【課題】従来よりも低温の熱風によって高水分の下水汚泥を熱効率よく均一乾燥させることができる下水汚泥の乾燥方法を提供する。
【解決手段】水分が70%以上の高水分の下水汚泥を円筒状の回転ドラム1の内部に投入して転動させつつ、回転ドラム1の中心軸上に設置されたヘッダー管2から下方に延びる枝管3を通じて下水汚泥に200〜500℃の熱風を吹き付ける。下水汚泥は解砕されつつ乾燥され、粒径が5〜10mm程度の乾燥粒状体として取り出される。なお、回転ドラム1から取り出された乾燥粒状体の一部をリターンして混合機によりその表面に高水分の下水汚泥をまぶした状態とし、再び回転ドラムの内部に投入することにより、更に乾燥効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高水分の下水汚泥を効率よく乾燥させることができる下水汚泥の乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場などから発生する下水汚泥は、脱水機により脱水されて下水汚泥脱水ケーキとされるが、その含水率は一般に70%以上であり、通常は70〜85%の高水分である。このため、減量や減容して廃棄する場合だけでなく、後工程で焼却したり溶融する場合、あるいは炭化させたりする場合には、さらに乾燥させることが必要となる。
【0003】
下水汚泥の乾燥方法としては熱風を用いる方法が一般的であり、例えば特許文献1、2には、下水汚泥を回転ドラムの内部で回転させながら撹拌翼により撹拌し、回転ドラム内に吹き込まれた熱風によって乾燥させる方法が記載されている。
【0004】
しかしこの方法では、回転ドラムの内部を600〜800℃の高温に保たないと下水汚泥を十分に乾燥させることができず、多くの熱量が必要となって燃費がよくないという問題があった。また下水汚泥が回転ドラム内面のリフターに付着したり、撹拌翼の形状によっては下水汚泥が細かくならないことがあり、熱風と下水汚泥とが直接接触しにくい状況となって、水分蒸発が妨げられるという問題があった。
【0005】
なお、下水汚泥中の水分の蒸発能力は回転ドラムを大型化することにより改善することが可能であるが、大型化により熱ロスの絶対量が増加したり、それによる燃費の悪化が生じたり、回転ドラムの後方部分で過乾燥ゾーンが発生する等の問題を発生させていた。
【0006】
このほか、回転ドラム内部に攪拌翼を持たない直接通気方式(吹込み式ロータリーキルン)も用いられているが、熱風のみによって下水汚泥を解砕することは困難であるため、大きな塊が発生しやすく、その内部の水分蒸発が妨げられるため、下水汚泥全体を均一に乾燥させることはできなかった。
【特許文献1】特開平4−157000号公報
【特許文献2】特開平4−338300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、従来よりも低温の熱風によって高水分の下水汚泥を熱効率よく均一乾燥させることができる下水汚泥の乾燥方法を提供することを目的とするものである。具体的には、高水分の下水汚泥とは含水率が70〜85%の下水汚泥脱水ケーキであり、これを含水率が20%以下になるまで乾燥させる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の下水汚泥の乾燥方法は、高水分の下水汚泥を円筒状の回転ドラムの内部に投入して転動させつつ、回転ドラムの中心軸上に設置されたヘッダー管から下方に延びる枝管を通じて下水汚泥に200〜500℃の熱風を吹き付け、乾燥粒状体として取り出すことを特徴とするものである。なお、高水分の下水汚泥を予備造粒したうえ、円筒状の回転ドラムの内部に投入することが好ましく、また、回転ドラムから取り出された乾燥粒状体の一部をリターンして混合機によりその表面に高水分の下水汚泥をまぶした状態とし、再び回転ドラムの内部に投入することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の下水汚泥の乾燥方法によれば、高水分の下水汚泥を円筒状の回転ドラムの内部に投入して転動させつつ、枝管を通じて下水汚泥内部に直接熱風を吹き付けるので、熱風温度を従来法よりも低温の200〜500℃、より好ましくは300〜350℃としても、下水汚泥中の水分を効率よく蒸発させることができる。下水汚泥は回転ドラムの転動による解砕差用と枝管との接触による解砕作用を受け、さらに枝管の先端から噴出す熱風による乾燥及び解砕作用によって粒径が揃った乾燥粒状体となる。このため、従来よりも低温の熱風によって高水分の下水汚泥を熱効率よく均一乾燥させることができることが可能となり、特に燃費の改善効果は著しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を示す。
図1は本発明の第1の実施形態を示す図であり、1は高水分の下水汚泥が投入される円筒状の回転ドラムであって、1〜10rpm程度の比較的低速で一定方向に回転されている。この回転ドラム1の中心軸線上にはヘッダー管2が設置されており、このヘッダー管2から下方に多数の枝管3が延びている。
【0011】
図2の断面図に示すように、枝管3は回転方向に向かってやや斜めに設けられており、その先端は回転ドラム1の内壁面近傍にまで延び、回転ドラム1の回転に伴って転動する下水汚泥の内部に達している。ヘッダー管2には熱風炉4から熱風が供給されており、各枝管3の先端から下水汚泥中に熱風が吹き込まれる。熱風の温度は200〜500℃、より好ましくは300〜350℃である。
【0012】
高水分の下水汚泥は造粒機5により適宜の粒径に予備造粒したうえ、回転ドラム1の一端からその内部に投入される。投入された下水汚泥は回転ドラム1の内周面に沿って転動しつつ、枝管3の先端から噴出する熱風によって水分が蒸発され、乾燥される。また下水汚泥は各枝管3と衝突することによっても解砕される。このため、下水汚泥に粘性がある場合にも大きな塊となることなく乾燥と解砕とが進行し、粒径が例えば10mm以下の乾燥粒状体として出口6から取り出される。転動中の下水汚泥の解砕を促進するために、回転ドラム1の内周面の枝管3と接触しない位置に図2に示すようなリフター7を突設しておくことが好ましい。
【0013】
回転ドラム1の長さLと直径Dの比L/Dは1〜5が適当であり、入口下水汚泥の水分値が高いほど大きくすることが好ましい。下水汚泥水分は設置される下水処理場によって異なるため、それぞれの立地条件に対応してL/Dを設定すればよい。また熱風温度が高い場合には、L/Dを小さくすることができる。
【0014】
なお熱風の供給量は、回転ドラム1への入口温度が200〜500℃のとき、出口温度が50〜350℃となるように制御することが好ましい。本発明によれば下水汚泥の解砕と、枝管3の先端から噴出される熱風による乾燥とを並行して進行させることができるので、従来の700〜800℃という高温に比較してはるかに低温の熱風によって、含水率が20%以下になるまで乾燥させることができる。従って、下水汚泥乾燥の燃費を大幅に改善することができる。
【0015】
なお、図1では造粒機5による予備造粒を行ったが、造粒機5は省略することもできる。すなわち、高水分の下水汚泥を直接回転ドラム1に投入しても、下水汚泥は解砕されて粒径が10mm以下の乾燥粒状体となる。しかし解砕されるまでの間の乾燥効率は低下するので、予備造粒を行う方が好ましい。いずれの場合にも、乾燥粒状体として取り出すことができるのでハンドリング性が向上し、微粉は飛散する懸念がない。
【0016】
図3は本発明の第2の実施形態を示す図であり、回転ドラム1から取り出された乾燥粒状体の一部を返送経路8により混合機9に返送し、高水分の下水汚泥と混練する。これにより乾燥粒状体の表面に高水分の下水汚泥がまぶされた、粒径が5〜10mm程度の粒状体となるので、これを再び回転ドラムの内部に投入する。
【0017】
このように乾燥粒状体の表面に高水分の下水汚泥をまぶすことにより、見掛け水分が40〜60%の均一な粒状体を得ることができる。この粒状体は蒸発されるべき水分が表面層に存在するため、回転ドラム1に投入された後の乾燥効率をより一層向上させることができる。混合機9のみによっても十分な均一化が可能であるが、図3に示すようにその後段に造粒機5を設置すれば、20〜30mmのサイズのRDF状としたり、3〜10mmの粒径の豆球状としたりすることができ、有効利用し易い形状の乾燥粒状体を得ることができる。
【実施例1】
【0018】
図1の第1の実施形態に示した方法で、水分が75%の下水汚泥を乾燥した。下水汚泥投入量は27kg/hである。300℃の熱風を11m3/minの風量で供給した。その結果、粒径が5〜10mmで水分が14%の乾燥粒状体を得ることができた。熱風の出口温度は120℃であった。このように、300℃の熱風によって、水分が75%の下水汚泥を水分14%にまで効率よく乾燥させることができた。なお従来法により同様の乾燥を行わせる場合には、700〜800℃の熱風を使用する必要があり、本発明の利点が明らかである。
【実施例2】
【0019】
図3の第2の実施形態に示した方法で、水分が75%の下水汚泥を乾燥した。下水汚泥投入量は75kg/hである。乾燥粒状体の一部をリターンしてその表面に混合機で下水汚泥をまぶすことにより、回転ドラムへ投入される下水汚泥の水分を50%〜60%とした。300℃の熱風を11m3/minの風量で供給した結果、粒径が5〜10mmで水分が15%の乾燥粒状体を得ることができた。熱風の出口温度は85℃であった。
【0020】
このように、300℃の熱風によって、水分が75%の下水汚泥を水分15%にまで効率よく乾燥させることができた。また第2の実施例では、熱風の温度及び供給量は第1の実施例とほぼ同一であるにもかかわらず、乾燥機容積に対する水分負荷である乾燥速度を1.5〜2.0倍に大幅に向上させることができた。さらに乾燥粒状体の出口温度と入口温度の差を小さくすることができるのでむだな持ち出し熱量を減少させ、燃費を一段と向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】軸線に垂直な拡大断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 回転ドラム
2 ヘッダー管
3 枝管
4 熱風炉
5 造粒機
6 出口
7 リフター
8 返送経路
9 混合機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高水分の下水汚泥を円筒状の回転ドラムの内部に投入して転動させつつ、回転ドラムの中心軸上に設置されたヘッダー管から下方に延びる枝管を通じて下水汚泥に200〜500℃の熱風を吹き付け、乾燥粒状体として取り出すことを特徴とする下水汚泥の乾燥方法。
【請求項2】
高水分の下水汚泥を予備造粒したうえ、円筒状の回転ドラムの内部に投入することを特徴とする請求項1記載の下水汚泥の乾燥方法。
【請求項3】
回転ドラムから取り出された乾燥粒状体の一部をリターンして混合機によりその表面に高水分の下水汚泥をまぶした状態とし、再び回転ドラムの内部に投入することを特徴とする請求項1記載の下水汚泥の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−142616(P2008−142616A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332001(P2006−332001)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(591079018)株式会社大和三光製作所 (8)
【Fターム(参考)】