説明

下水汚泥焼却処理装置に対する灰付着性予測方法及び該方法を用いた下水汚泥焼却方法

【課題】下水汚泥を焼却処理する際に、焼却炉等への灰付着の発生状況をより正確に予測するための灰付着発生予測方法、及びその予測結果に基づき灰付着の発生を抑制するための下水汚泥焼却方法を提供することを目的とする。
【解決手段】処理される下水汚泥を焼却することにより得られる焼却灰中のFe、CaO、NaO、KO、MgO、SiO、Al、TiO、及びPの成分それぞれの含有量を予め特定し、特定された各焼却灰成分の組成に基づき算出される特定の指標を求めることによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥を焼却処理する際に、焼却炉等の処理装置に付着する汚泥焼却灰の付着性を予測するための灰付着性予測方法及び該方法を用いた下水汚泥焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場により下水を浄化処理する際に発生する下水汚泥は、一般的に、焼却炉で焼却されたり、溶融されたりして処理される。焼却処理においては、例えば、下水処理場から発生した下水汚泥は、凝集、乾燥、及び脱水等のプロセスを経て、乾燥された状態で焼却処理される。
【0003】
図5に、一般的な下水汚泥の焼却プロセスの概略を説明するプロセス図、図6に、下水汚泥の焼却に用いられる焼却設備の構成の概略を説明する模式図を示す。図5に示すように、下水処理槽から回収され、乾燥された下水汚泥101は、図6に示すような汚泥焼却炉110(図6においては循環流動層汚泥焼却炉)に搬送され、焼却炉内で流動砂(図示せず)とともに撹拌され焼却処理されて汚泥焼却灰102にされる。そして、汚泥焼却炉110から排出される排ガス103は、熱交換器113により廃熱を回収するとともに、排ガス処理設備111において、バグフィルター114により焼却時に発生する飛灰が回収される。
【0004】
上記のように下水汚泥を焼却処理する場合、図6のA〜Fで示すような、汚泥焼却炉110において内容物を循環させるための配管120a、汚泥焼却炉110から排ガス処理設備111に排ガスを輸送するための配管120b等の接続部や折れ曲がり部、熱交換器113、ダクト、その他の機器類等に灰が付着して、灰の塊やクリンカが発生するという問題があった。このような灰が焼却設備に大量に付着した場合、灰を除去するために焼却設備のメンテナンスが頻繁に必要になる等、連続操業を妨げる原因になるという問題があった。
【0005】
従来、焼却設備への灰の付着は、焼却の際に低融点の灰が生成して焼却設備の配管壁面等に付着し、この付着した低融点の灰が溶融することをきっかけとして灰の塊やクリンカに成長すると考えられていた。
【0006】
ところで、従来から焼却灰の溶融温度を予測する方法としては、特許文献1に示されるような塩基度という概念が広く用いられていた。塩基度は、処理対象物を焼却したときの焼却灰の組成に基づき、酸化カルシウム(CaO)及びシリカ(SiO)の質量割合から、[CaO]/[SiO](w/w)から算出される指標であり、この指標が、ある値よりも高すぎる場合や低すぎる場合には融点が高くなるとされている。そして、塩基度を調整するために、水酸化カルシウム(Ca(OH))やシリカなどを添加する方法が知られている。
【特許文献1】特許第3620965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、下水汚泥に対して、上記塩基度により灰の発生状況を予測しても、焼却の実操業においてはあまり有効な指標にならず、灰の発生及び抑制に有効な指標にはならなかった。また、灰の溶融軟化特性の測定方法としては、「JIS M 8801−2004(石炭類−試験方法)、12.灰の溶融性試験方法」に規定されているように、固めた灰が加熱した際に溶融することによりその形態をどの程度変えるかを判定指標として特定される「溶融点」や「軟化点」といった指標も知られている。しかしながら、このような「溶融点」や「軟化点」も灰付着性とは殆ど明確な相関がなく、灰付着性予測に有効に利用できるものではなかった。
【0008】
本発明は、下水汚泥を焼却処理する際に、焼却炉等処理装置に対する灰の付着性をより正確に予測するための灰付着性予測方法、及びその予測結果に基づき灰の発生を抑制するための下水汚泥焼却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、下水汚泥に対して、従来から知られた塩基度、溶融点、軟化点等が灰付着性の予測に有効でないために、新たな指標を創出することを試み、その過程において、下水汚泥には他の一般的な焼却処理物に比べて、リン化合物が多く含まれている等の成分組成に特徴があることに着目した。そして、下水汚泥の焼却処理において、灰付着性の予測が可能となる指標を確立すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の下水汚泥焼却における灰付着性予測方法は、焼却処理される下水汚泥を酸化雰囲気下で焼却することにより得られる焼却灰中のFe、CaO、NaO、KO、MgO、SiO、Al、TiO、及びPの成分それぞれの含有量を予め特定し、特定された各焼却灰成分の組成に基づき、下記式(1)で算出される指標A:([Fe]+[CaO]+[NaO]+[KO]+[MgO])/([SiO]+[Al]+[TiO])×[P]/100・・・(1)(式(1)中、各要素は、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)である)を求めることを特徴とするものである。上記のように求められた指標Aによれば、指標Aが低い場合、具体的には、例えば、0.3以下のような場合には得られる灰が溶融軟化しにくくなるために、灰が配管や設備内面に付着しにくくなることが予測できる。このようにして得られる指標Aにより、連続操業される焼却装置において、操業を中断して付着する灰を除去するための時期を見極めたり、焼却装置における単位時間当たりの下水汚泥の処理量を調整することにより灰付着を抑制することができる。さらに、得られた指標に基づいて、処理される下水汚泥の組成を調整することにより、灰付着を抑制することができる。
【0011】
また、上記灰付着性予測方法において、さらに該焼却灰中のSOの含有量を予め特定し、下記式(2)で算出される指標B:
([Fe]+[CaO]+[NaO]+[KO]+[MgO])/([SiO]+[Al]+[TiO])×[P]/100×[SO]×0.4・・・(2)(式(2)中、各要素は、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)である)を求めることが好ましい。この指標は、上記式(1)の指標に対して、さらに、該焼却灰中の硫黄分のファクタとして、「[SO]×0.4(Sの原子量(32)/SOの分子量(80))」を乗じたものであり、本指標によれば、特に、硫黄分の多い下水汚泥を処理する場合における灰付着性予測の確度をより高くすることができる。
【0012】
そして、上記指標を用いた本発明の下水汚泥焼却方法は、上記指標Aに基づき、指標Aが0.3以下となるように、及び/または指標Bに基づき、指標Bが0.4以下となるように、例えばSiOを前記処理される下水汚泥に添加することにより、下水汚泥焼却の際の灰付着を有効に抑制することができる。このような方法によれば、灰付着の発生抑制に有効な量のSiOを過不足なく添加することができるので、下水汚泥焼却の際の灰付着を有効に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により求められる指標によれば、下水汚泥の焼却処理の際の処理装置に対する灰付着性の程度を有効に予測することができる。また、このような指標を用いて、下水汚泥に得られた指標が所定値以下になるような量のシリカを添加することにより、灰の付着を有効に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の下水汚泥焼却処理装置に対する灰付着性予測方法は、焼却処理される下水汚泥を酸性雰囲気下で焼却することにより得られる焼却灰中のFe、CaO、NaO、KO、MgO、SiO、Al、TiO、及びPの成分それぞれの含有量を予め特定し、特定された各焼却灰成分の組成に基づき、下記式(1)で算出される指標A:([Fe]+[CaO]+[NaO]+[KO]+[MgO])/([SiO]+[Al]+[TiO])×[P]/100・・・(1)(式(1)中、各要素は、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)である)を求めることを特徴とする。
【0015】
本発明者らは後述する実施例において詳述するように、焼却処理される下水汚泥を酸化雰囲気下で焼却して得られる焼却灰中に含まれる成分と、該焼却灰の溶融軟化性との関係を鋭意検討した結果、溶融軟化しやすい組成を有する焼却灰と溶融軟化しにくい組成を有する焼却灰とを上記指標Aの大小により明確にグループ化できることを見出した。
【0016】
本発明の灰付着性予測方法においては、予め、焼却処理される下水汚泥を酸化雰囲気下で焼却処理して得られる焼却灰中の上記各成分量を特定する。具体的には、予め焼却処理しようとする下水汚泥をサンプリングし、乾燥後、800〜900℃程度の有機物を完全燃焼させうる温度で、得られた下水汚泥を酸化雰囲気下で焼却処理することにより、焼却灰を得る。そして得られた焼却灰の焼却灰組成(質量割合)を特定する。そして、得られた各成分の含有量に基づき、各成分の合計量を100%として、各構成成分の質量割合を求め、上記式(1)により指標Aを算出する。
【0017】
後述する実施例の結果を示す図1のグラフに示すように、指標Aが相対的に小さい場合には焼却灰が溶融軟化しにくく、大きい場合には焼却灰が溶融軟化しやすくなる。具体的には、指標Aが0.3以下、さらには0.25以下であれば溶融軟化が殆ど発生せず、0.35以上であれば溶融軟化が発生しやすくなる。従って、下水汚泥焼却において、指標Aが0.3以下の焼却灰を生成するような下水汚泥を焼却処理する場合には灰付着が発生しにくいことが予測され、指標Aが0.35以上の焼却灰を生成するような下水汚泥を焼却処理する場合には灰付着が発生しやすいと予測することができる。
【0018】
焼却灰組成の分析方法は特に限定されないが、JIS M 8815−1976(石炭灰及びコークス灰の分析方法)で規定された、酸化第2鉄の定量方法、酸化カルシウムの定量方法、酸化ナトリウムの定量方法、酸化カリウムの定量方法、酸化マグネシウムの定量方法、二酸化ケイ素の定量方法、酸化アルミニウムの定量方法、二酸化チタンの定量方法、及び五酸化リンの定量方法に準じて行うことが好ましい。
【0019】
また、本発明者らは更に予測の確度を高めるべく、処理される下水汚泥の各成分組成のうち、硫黄分に着目した。そして、上記指標Aに加えて、上記灰付着発生予測方法において、さらに該焼却灰中のSOの含有量を予め特定し、下記式(2)で算出される指標B:([Fe]+[CaO]+[NaO]+[KO]+[MgO])/([SiO]+[Al]+[TiO])×[P]/100×[SO]×0.4・・・(2)(式(2)中、各要素は、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)である)を求めることにより、より確度の高い灰付着性予測が可能であることを見出した。これは、焼却灰中のSO成分が焼却灰の溶融軟化性に比較的高い影響を与えるという本発明者らの知見に基づき、上記指標Aを算出する要素に、さらに([SO]×Sの原子量(32)/SOの分子量(80))のファクタを組み込むことにより、より正確に灰付着性を予測できる上記指標Bが得られた。なお、この際に用いられるSOの定量もJIS M 8815−1976(石炭灰及びコークス灰の分析方法)で規定された、三酸化硫黄の定量方法に準じて行うことが好ましい。
【0020】
後述する実施例の結果を示す図2のグラフに示すように、指標Aと同様に、指標Bが相対的に小さい場合には焼却灰が溶融軟化しにくく、大きい場合には焼却灰が溶融軟化しやすくなる。具体的には、指標Bが0.4以下であれば溶融軟化が殆ど発生せず、0.6以上であれば溶融軟化が発生しやすくなる。従って、下水汚泥焼却において、指標Bが0.4以下の焼却灰を生成するような下水汚泥を焼却処理する場合には灰付着が発生しにくいことが予測され、指標Bが0.6以上の焼却灰を生成するような下水汚泥を焼却処理する場合には灰付着が発生しやすいと予測することができる。このように上記指標Aを算出する要素に硫黄分のファクタを組み込んで得られた指標Bを用いることにより、溶融軟化しやすい組成を有する焼却灰と溶融軟化しにくい組成を有する焼却灰とが、指標Bの大きさにより、より明確に区別されるために、灰付着性予測の確度がより高くなる。
【0021】
上記のように得られた指標Aまたは指標Bは、灰付着性予測に有効に用いられる。そして、得られた指標は、連続操業される焼却装置において、操業を中断して付着した灰を除去するための時期を見極めたり、焼却装置における単位時間当たりの下水汚泥の処理量を調整することにより灰付着の発生を未然に低減することができる。
【0022】
また、灰付着を抑制するためのより有効な方法としては、得られた指標に基づいて、下水汚泥の組成を調整する方法が挙げられる。具体的には、得られた指標が大きすぎる場合には、処理される下水汚泥にSiO、Al、TiO等を添加して低い指標を示すように調整することにより灰付着の発生を低下、具体的には、指標Aが0.3以下となるように、及び/または指標Bが0.4以下となるような量のSiO、Al、TiO等を添加して組成を調整することにより、灰の付着量を低下させることができる。特に、指標Aが0.3以下で、且つ指標Bが0.4以下となるように、下水汚泥の組成を調整することにより、より、有効に灰の付着を抑制することができる。なお、SiO、Al、TiOの中では、コストの点からSiOまたはSiOを主成分とする組成物等を添加することが好ましい。また、さらには、予め貯蔵しておいた、指標が低い下水汚泥を、処理される下水汚泥に配合して指標を低下させることにより灰付着の発生を低下させることもできる。
【0023】
上記SiO、Al、TiOや、指標が低い下水汚泥等の添加は、下水汚泥から、焼却灰を得る工程の何れの工程において添加してもよい。具体的には、例えば、乾燥、脱水前の下水汚泥に添加したり、乾燥、脱水直後の下水汚泥に添加したり、汚泥焼却炉中へ逐次添加する等の方法が挙げられる。汚泥焼却炉に添加する方法においては、汚泥焼却炉に下水汚泥を搬送する際に混合するような工程を設けたり、汚泥焼却炉に下水汚泥を搬送した後、汚泥焼却炉に備えられた供給口から流動空気に乗せて供給したりしてもよい。
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
採取場所の異なる8種類の下水汚泥A〜Hをそれぞれ850℃の燃焼炉で完全燃焼させて焼却灰1〜8を得た。そして各焼却灰1〜8中のSiO、CaO、MgO、Al、Fe、NaO、KO、P、SO及びTiOの含有量を「JIS M 8815−1976(石炭灰及びコークス灰の分析方法)」の規定に準じた方法により特定した。そして、各焼却灰1〜8について、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)を求め、指標A及び指標Bを算出した。また、従来から知られた指標であるCaOとSiOとの質量比(CaO/SiO)である塩基度も算出した。
【0026】
また、焼却灰1〜8のそれぞれについて、「JIS M 8801−2004(石炭類−試験方法)、12.灰の溶融性試験方法」の規定に準じて、ステンレス板上に各20〜30gの焼却灰で試験錐を作成し、900℃に加熱した電気炉に収納し5℃/分の速度で昇温したときに、試験錐の頂部が溶融したときの温度を軟化点、試験錐が溶融してその高さが底部の見かけ上の幅の1/2になったときの温度を溶融点として、軟化点及び溶融点を測定した。
【0027】
また、焼却灰1〜8のそれぞれを、粒径0.5mm以下にすりつぶし、すりつぶした焼却灰を成形圧2tで圧粉することにより固形化して得られた直径10mm、高さ3〜5mmの円柱状のブリケットを1100℃で10分間加熱したときに角が取れる程度に溶融したか否かを目視で判定し、角が全く溶けていない場合を「○」、角が取れて溶融した部分ができた場合を「×」と判定した。なお、ブリケット試験は、灰表面の溶融軟化性を評価するための試験であり、灰の付着性を評価するための試験である。
【0028】
結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果に基づき、実施例1として、焼却灰1〜8に対して指標Aをプロットした結果を図1に、実施例2として、焼却灰1〜8に対して指標Bをプロットした結果を図2に、比較例1として、焼却灰1〜8に対して塩基度をプロットした結果を図3に、比較例2として、焼却灰1〜8に対して軟化点及び溶融点をプロットした結果を図4に示す。
【0031】
図1〜図4中、グループIは、ブリケット試験で「○」が得られた焼却灰1〜5、グループIIは、ブリケット試験で「×」が得られた焼却灰6〜8をそれぞれグループ化したものである。
【0032】
図1の結果から、グループIに属する焼却灰の指標Aは何れも0.24以下であり、グループIIに属する焼却灰の指標Aは何れも0.35以上であり、指標Aにより両グループを明確に分けることができた。この結果から、指標Aにより灰付着性が予測できることがわかる。
【0033】
また、図2の結果から、グループIに属する焼却灰の指標Bは何れも0.36以下であり、グループIIに属する焼却灰の指標Bは何れも0.58以上であり、指標Bにおいて両グループをより明確に分けることができた。この結果から、指標Bにより、さらに正確に灰付着性が予測できることがわかる。
【0034】
一方、図3の結果から、グループIに属する焼却灰の塩基度の範囲と、グループIIに属する焼却灰の塩基度の範囲は重なり、塩基度によっては両グループを明確に分けることができず、塩基度と溶融軟化性については相関関係が見られなかった。この結果から、塩基度では灰付着性が予測できないことがわかる。
【0035】
また、図4の結果から、グループIに属する焼却灰の軟化点及び溶融点の範囲と、グループIIに属する焼却灰の軟化点及び溶融点の範囲とは重なり、軟化点及び溶融点によっても両グループを明確に分けることができず、軟化点及び溶融点についても相関関係が見られなかった。この結果から、軟化点及び溶融点では灰付着性が予測できないことがわかる。
【0036】
なお、実証実験として、下水汚泥B、D、及びHを用いて、実機レベルの焼却炉を用いて下水汚泥の焼却処理を長時間連続して行った。その結果、下水汚泥B及びDを焼却した場合には、下水汚泥Hを焼却した場合に比べて灰の付着量が著しく少なく、予測結果と一致することが分かった。
【0037】
[実施例3]
実施例1で溶融が見られたグループIIに属する焼却灰6を焼却する前の汚泥Fにシリカを汚泥全量に対して0.2質量%、又は0.5質量%混合した。そして、実施例1と同様の方法によりブリケット試験を行った。なお、シリカを0.2質量%混合したときの指標Aは0.24、指標Bは0.36、塩基度は0.24であり、シリカを0.5質量%混合したときの指標Aは0.17、指標Bは0.24、塩基度は0.17であった。
【0038】
その結果、指標Aを0.24まで、または指標Bを0.36まで低下させるのに適した量以上のシリカを添加することにより、ブリケット試験の判定結果は何れも「○」が得られ、軟化溶融が抑制されることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1の焼却灰1〜8に対して、指標Aをプロットしたグラフを示す。
【図2】実施例1の焼却灰1〜8に対して、指標Bをプロットしたグラフを示す。
【図3】比較例1の焼却灰1〜8に対して、塩基度をプロットしたグラフを示す。
【図4】比較例2の焼却灰1〜8に対して、軟化点及び融点をプロットしたグラフを示す。
【図5】下水汚泥の焼却プロセスを説明するプロセス図を示す。
【図6】下水汚泥の焼却に用いられる焼却設備の構成を示す模式図を示す。
【符号の説明】
【0040】
101 下水汚泥
102 汚泥焼却灰
103 排ガス
110 汚泥焼却炉
111 排ガス処理設備
113 熱交換器
114 バグフィルター
120a、120b 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥焼却の際の処理装置に対する灰付着性を予測する方法であって、
焼却処理される下水汚泥を酸化雰囲気下で焼却して得られる焼却灰中のFe、CaO、NaO、KO、MgO、SiO、Al、TiO、及びPの成分それぞれの含有量を予め特定し、特定された各焼却灰成分の組成に基づき、下記式(1)で算出される指標A:
([Fe]+[CaO]+[NaO]+[KO]+[MgO])/([SiO]+[Al]+[TiO])×[P]/100・・・(1)
(式(1)中、各要素は、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)である)
を求めることを特徴とする下水汚泥焼却処理装置に対する灰付着性予測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の灰付着性予測方法において、さらに該焼却灰中のSOの含有量を予め特定し、下記式(2)で算出される指標B:
([Fe]+[CaO]+[NaO]+[KO]+[MgO])/([SiO]+[Al]+[TiO])×[P]/100×[SO]×0.4・・・(2)
(式(2)中、各要素は、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)である)
を求めることを特徴とする下水汚泥焼却処理装置に対する灰付着性予測方法。
【請求項3】
請求項1で得られた指標Aに基づき、指標Aが0.3以下となるように、及び/または請求項2で得られた指標Bに基づき、指標Bが0.4以下となるように、前記処理される下水汚泥の組成を調整することにより、下水汚泥焼却処理装置に対する灰付着を抑制することを特徴とする下水汚泥焼却方法。
【請求項4】
請求項1で得られた指標Aに基づき、指標Aが0.3以下となるような量のSiOを、及び/または請求項2で得られた指標Bに基づき、指標Bが0.4以下となるような量のSiOを、前記処理される下水汚泥に添加することにより、下水汚泥焼却処理装置に対する灰付着を抑制する請求項3に記載の下水汚泥焼却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12425(P2010−12425A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175530(P2008−175530)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】