説明

下水管路

【構成】 下水管路10は、マンホール12に接続された下水管14を含み、下水管14は、既設管16とそれの内部に独立して設けられる更生管18を含む。合成ゴムからなるフランジ20は、径方向の一部に蛇腹のような伸張可能部を有し、そのフランジ20の径小側は拡径リング24によって、更生管16の端部内面に固着される。フランジ20の径大側は、伸張可能部22より外側でかつ既設管16とマンホール12との接続部分(モルタル部分)より外側で、マンホールの内壁12aにたとえばアンカ26で固着される。地盤変動によって更生管が軸方向に変位したとき、それに追従してフランジが伸張する。
【効果】 更生管の軸方向に変位に追従してフランジが伸張するので、止水性を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は下水管路に関し、特にたとえば、マンホールと既設管との接続部分において地震などによる地盤変動が生じたときでも止水性能を確保できるように耐震化した、下水管路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の耐震化方法の一例が特許文献1および特許文献2に提案されている。特許文献1および2のいずれにおいても、弾性継手を用いてマンホールと下水管とを接続する。地震が発生したときに地盤変動によって既設管がマンホールから離脱しても、弾性継手が伸縮することによって止水性を維持するものである。
【特許文献1】特開2003−105788号公報[E02D 29/12 F16L 41/08]
【特許文献2】特開2006−307540号公報[E02D 29/12 F16L 41/08]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1および特許文献2で提案された背景技術は、既設管だけの場合、もしくは更生管が一体化した既設管の場合には適用可能であるが、たとえば形成工法によって既設管内に別の更生管を設けた下水管路には適用が極めて困難である。形成工法で設けた更生管は地盤変動の際、既設管とは別の挙動をすると考えられているからである。このことに加えて、既設管と更生管との間の空隙については止水性が維持できていないためである。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、下水管路を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、別の更生管で更生してしかも耐震化した、下水管路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、マンホールとマンホールに接続された既設管とを有する下水管路であって、径方向に伸張できる伸張可能部が一部に形成されたフランジを有する止水部材を備え、フランジの径大側をマンホールの内壁に固着し、フランジの反対側を既設管の端部に固着した、下水管路である。
【0007】
請求項1の発明では、下水管路(10:実施例で相当する部分を例示するとしたときの参照番号。以下同様。)において、マンホール(12)間に下水管(14)が接続される。フランジ(20)は、たとえば合成ゴムで作られ、径方向に伸張できる、たとえば蛇腹のような伸張可能部(22)が形成される。このフランジの径大側がマンホールの内壁に固着され、反対側が既設管の端部内壁に固着される。地震による地盤変動があったとき、既設管の軸方向変位に追随してフランジが伸張可能部で伸張するため、この下水管路から漏水することはなく、地震直後でも使用可能である。なお、「フランジの反対側」とは、フランジの径小側、またはフランジの径小側に短管部がある場合にはその短管部を指す概念である。
【0008】
請求項2の発明は、既設管の内部に設置されて既設管を更生する更生管をさらに備える、請求項1記載の下水管路である。
【0009】
請求項2の発明では、下水管は既設管(16)とその内部にたとえば形成工法によって設けられた更生管(18)を含む。そして、地震による地盤変動があったとき、既設管の軸方向変位に追随してフランジが伸張するため、止水性が維持される。
【0010】
請求項3の発明は、マンホール、マンホールに接続された既設管および既設管の内部に設置されて既設管を更生する更生管を有する下水管路であって、径方向に伸張できる伸張可能部が一部に形成されたフランジを有する止水部材を備え、フランジの径大側をマンホールの内壁に固着し、フランジの反対側を更生管の端部に固着した、下水管路である。
【0011】
請求項3の発明では、下水管路(10)において、マンホール(12)間に下水管(14)が接続される。下水管は既設管(16)とその内部にたとえば形成工法によって設けられた更生管(18)を含む。フランジ(20)は、合成ゴムで作られ、たとえば蛇腹のような径方向に伸張できる伸張可能部(22)が形成される。そして、このフランジの径大側がマンホールの内壁に固着され、反対側は、その更生管の端部内壁に固着される。地震による地盤変動があったとき、更生管の軸方向変位に追随してフランジが伸張可能部で伸張するため、止水性が維持される。
【0012】
請求項4の発明は、マンホール、マンホールに接続された既設管および既設管の内部にこの既設管と一体に設けられるかつ既設管を更生する更生部材を有する下水管路であって、径方向に伸張できる伸張可能部が一部に形成されたフランジを有する止水部材を備え、フランジの径大側をマンホールの内壁に固着し、フランジの反対側を更生部材に固着した、下水管路である。
【0013】
請求項4の発明では、下水管路(10)において、マンホール(12)間に下水管(14)が接続される。下水管は既設管(16)とその内部にこの既設管と一体に設けられた更生部材(18A)を含む。フランジ(20)は、合成ゴムで作られ、たとえば蛇腹のような径方向に伸張できる伸張可能部(22)が形成される。そして、このフランジの径大側がマンホールの内壁に固着され、反対側は、その更生部材の端部内壁に固着される。地震による地盤変動があったとき、既設管と更生部材との一体物の軸方向変位に追随してフランジが伸張可能部で伸張するため、止水性が維持される。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、地震などの地盤変動で既設管や更生管(更生部材)が変位しても、止水性能を維持することができる。
【0015】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1を参照して、この発明の一実施例の下水管路10は、土中に埋設され、その上端入口が地上に露出して設けられるマンホール12を含み、マンホール12同士が土中に敷設された下水管14で接続される。下水管14は、マンホール12の流入側では流入管と呼ばれ、流出側では流出管と呼ばれることがある。また、図1では明示していないが、この実施例の下水管路10は自然流下式の下水管路であるので、下水管14は勾配を有して設置される。さらに、図1では省略しているが、マンホール12内には人間が出入りするためのはしごまたはステップが設置されている。
【0017】
下水管14は、たとえば、コンクリート管や陶管などのような既設管16とその内部に、この既設管16とは別に設置された更生管18を含む。更生管18は、たとえば、塩ビ管であり、EX工法(更生工法の名称)などの形成工法によって既設管16内に設けられる。形成工法では更生管18と既設管16との間にはモルタルのような裏込め材が注入されることはないので、更生管18は既設管16内において既設管16とは独立して変位する。つまり、更生管18と既設管16とは異なる挙動をする。この発明は、このような既設管とは独立した(一体でない)更生管を有する下水管路に適用するように意図されている。
【0018】
ただし、図1では各部が細かくなりすぎるので、実施例の全体構成を明確にする目的で、主として、マンホール12および下水管14を図示している。
【0019】
図2は図1に示す実施例のマンホール12と下水管14との接続部分を拡大したもので、この図2に示すように、既設管16をマンホール12の壁に形成した孔に挿入した後、既設管16の外面とその孔の内面との隙間にはたとえばモルタル13を充填することによって、既設管16がマンホール12に接続される。そして、たとえば、水膨張ゴムやSBR(スチレン・ブタジエン・ゴム)のような合成ゴムで形成されるフランジ20を用いる。このフランジ20は、たとえば、平板ドーナツ形状に形成され、その径大側から径小側に至る径方向の一部に形成された、径方向に伸張可能な、たとえば蛇腹のような伸張可能部22を有する。
【0020】
フランジ20の径小側は、更生管18の端部内壁に、たとえば、拡径リング24によって固着される。拡径リングとは、たとえばSUSのような金属の平板を円形にしたものを拡径装置などで強制的に拡径させる、そのような装着具である。フランジ20の径小側端部の内面に拡径リング24を重ね、上記拡径装置(図示せず)を操作して拡径リング24を拡径する。そうすると、拡径リング24がフランジ20の径小側を更生管18の端部内面に押し付けることになり、結果的に、フランジ20の径小側端部を更生管18の内面端部に固着する。
【0021】
フランジ20の径大側は、蛇腹すなわち伸張可能部22より外側において、取り付け手段の一例であるアンカ26によって、マンホール12の内壁12aに固着される。このとき、フランジ20の大きさは、アンカ26による固着部が、既設管16とマンホール12との接続部分(モルタル13の部分)より外側になるような大きさとされる。
【0022】
この実施例において、地震によって地盤変動が生じた場合、極端な場合には、既設管16がマンホール12から脱落するとともに、更生管18の管端18aがマンホール12から遠ざかる方向に、更生管18が軸方向に変位する。しかるに、図3に示すように、この変位に追従してフランジ20の伸張可能部22が伸張するので、更生管18の管端の止水性は維持される。ただし、既設管16が完全にマンホール12から離脱しない状態でもモルタル13が破損した場合は漏水があるが、そのような場合でも、止水部材(フランジ)20によって止水できるので、地震直後であってもこの下水管路は使用可能であり、完全な復旧は後日の修理を待てばよい。
【0023】
なお、図1および図2の実施例では、止水部材つまりフランジ20の径大側をマンホール内壁12aに取り付け、反対側、実施例ではフランジ20の径小側を更生管18の端部内壁に固着した。しかしながら、図4に示すように、更生管がないものにも使用できる。この場合には、フランジ20の反対側は既設管16の管端(管端部)に固着するようにしてもよい。この場合にも、拡径リング24を用いて、フランジ20の径小側を既設管16の端部内面に固着することができる。この図4の実施例でも、地震によって地盤変動が生じた場合、図5に示すように、既設管16の軸方向変位に追従してフランジ20の伸張可能部22が伸張するので、既設管16の管端での止水性は維持される。
【0024】
図4の実施例では、フランジ20を既設管16に取り付けるために拡径リング24を用い、フランジ20の端部を既設管16の内面に装着した。しかしながら、図6に示すように、フランジ20の端部を、径大側と同様に、アンカ26Aで既設管16の端面に固着するようにしてもよい。図6実施例ではすべてマンホール12内で工事できるので、拡径リングを用いるより、施工性がよい。
【0025】
そして、各実施例の更生管は塩ビ管をEX工法で既設管内に配置したものを想定した。しかしながら、更生管は、塩ビ管に限らず、FRPなどの反転工法によるもの、さらには製管工法で既設管を更生することによって、既設管の内面に既設管と一体的に更生部材を設けたような下水管路にもこの発明は適用できる。製管工法での製管の方法としては、長尺の更生部材をらせん状に巻回する方法や、板状部材を周方向や長手方向に貼り付ける方法など、色々な方法があるが、この発明は、いずれの方法によって更生された下水管路にも適用できるものである。
【0026】
図7はこの発明のさらに他の実施例を示す図解図であり、この実施例では、下水管14は、既設管16と、その既設管16の内面に配置された更生部材18Aと、既設管16と更生部材18Aとの間に注入される裏込め材19とを含む。そして、フランジ20の径大側がマンホール12の内壁12aにアンカ26によって固着され、その径小側(反対側)が拡径リング24によって更生部材18Aの端部に取り付けられる。
【0027】
図7実施例では、地震によって地盤変動が生じた場合、既設管16が軸方向に変位し、それと一体的に更生部材18Aも変位する。したがって、既設管16すなわち更生部材18Aがマンホール12から脱落するか、脱落しないまでも既設管16とマンホール12との間に隙間ができる。しかしながら、既設管16すなわち更生部材18Aの変位に追従してフランジ20の伸張可能部22が伸張するので、地震が起きても漏水することはなく、既設管18の管端の止水性は維持される。
【0028】
ただし、図7の実施例においても、図5の実施例と同様に、フランジ20の径小側を既設管16の端面に固着するようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施例ではフランジの反対側(径小側)を既設管または更生管の端部またはは端面に固着したが、フランジの径小側に短管部を設けた止水部材を用い、この短管部を既設管または更生管の端部または端面に固着するようにしてもよい。したがって、「フランジの反対側」とは、フランジの径小側を意味することもあれば、その短管部を指すこともあることを留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1はこの発明の一実施例の下水管路を示す図解図である。
【図2】図2は図1に示す下水管路の要部を拡大して示す図解図である。
【図3】図3は図1および図2に示す実施例の下水管路に対して地盤変動を生じた際の挙動の一例を示す図解図である。
【図4】図4はこの発明の他の実施例を示し、図2に相当する要部を示す図解図である。
【図5】図5は図4実施例の下水管路に対して地盤変動を生じた際の挙動の一例を示す図解図である。
【図6】図6は図4実施例の変形例を示し、図2に相当する要部を示す図解図である。
【図7】図7はこの発明のその他の実施例を示し、図2に相当する要部を示す図解図である。
【符号の説明】
【0031】
10 …下水管路
12 …マンホール
14 …下水管
16 …既設管
18 …更生管
18A …更生部材
20 …フランジ(止水部材)
22 …伸張可能部
24 …拡径リング
26,26A …アンカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールと前記マンホールに接続された既設管とを有する下水管路であって、
径方向に伸張できる伸張可能部が一部に形成されたフランジを有する止水部材を備え、前記フランジの径大側を前記マンホールの内壁に固着し、前記フランジの反対側を前記既設管の端部に固着した、下水管路。
【請求項2】
前記既設管の内部に設置されて前記既設管を更生する更生管をさらに備える、請求項1記載の下水管路。
【請求項3】
マンホール、前記マンホールに接続された既設管および前記既設管の内部に設置されて前記既設管を更生する更生管を有する下水管路であって、
径方向に伸張できる伸張可能部が一部に形成されたフランジを有する止水部材を備え、前記フランジの径大側を前記マンホールの内壁に固着し、前記フランジの反対側を前記更生管の端部に固着した、下水管路。
【請求項4】
マンホール、前記マンホールに接続された既設管および前記既設管の内部にこの既設管と一体に設けられるかつ前記既設管を更生する更生部材を有する下水管路であって、
径方向に伸張できる伸張可能部が一部に形成されたフランジを有する止水部材を備え、前記フランジの径大側を前記マンホールの内壁に固着し、前記フランジの反対側を前記更生部材に固着した、下水管路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−248602(P2008−248602A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92331(P2007−92331)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(503315702)クボタシーアイプラテック株式会社 (16)
【Fターム(参考)】