説明

不均一な細胞集団中の小さな細胞集団を決定するための方法および装置

本発明は、液体サンプル中の1種以上の細胞結合分析物(cellularly bound analytes)を決定する方法であって、液体サンプルを適用するための、少なくとも1つの供給ゾーン(5)と、細胞成分を透過させるのに適しており、少なくとも1つの指標ゾーンを膜上に含み、前記指標ゾーンが、細胞結合分析物と相互作用でき、細胞結合分析物に対する少なくとも1種の結合要素を含む、多孔質膜(2)と、液体が指標ゾーンを通過した後に液体を吸収する、膜上の少なくとも1つの吸収領域(3)とを含んでなる装置を用いて実施される方法に関する。少なくとも1つの指標ゾーンは、供給ゾーン(5)と吸収領域(3)間にある。本方法は、例えば、胎児母体間出血の場合において、またはキメラにおいて、不均一な細胞集団中の小さい細胞集団を濃縮および定量するために、細胞上に低濃度で提供される分析物を検出するために、ヘマトクリット値を決定するために、および/またはmixed−field反応において細胞結合分析物を同時に決定するために実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一な細胞集団中の小さい細胞集団を決定する(determine)方法に関する。前記方法は、例えば、胎児母体間出血の場合において、不均一な細胞集団中の小さな細胞集団を濃縮および定量するために;細胞結合分析物(cellularly bound analytes)を同時に決定するために;従って、輸血後のmixed−field反応、胎児母体間出血の場合、あるいはキメラにおいて、両細胞集団を決定するために;細胞上に低濃度で存在する分析物を検出するために;および/または、ヘマトクリット値を決定するために適している。本発明はさらに、前記方法に適した装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
FMH
妊娠の間に、血液は、通常、胎児循環から母体循環へ通過する(胎児母体間出血、FMH)。文献によれば、これは、およそ0.1ml〜30mlに達する。妊娠の96〜98%では、FMHは、<2mlであるが、妊娠の0.3%では、30mlを超える量が移行される。母体血液の量が5000mlと推定されると、これは、0.002%〜0.6%の、母親のものから逸脱する抗原プロフィールを有する第2の型の赤血球が母体循環へ入ったことを意味し、それが免疫化をもたらす場合、これは臨床的に意義があることとなる。最も顕著な例として、D+胎児を妊娠しているD母親がある。母親が抗D抗体を産生する場合、これは、別のD+胎児の妊娠において致命的な結果を有し得る(新生児溶血性疾患、HDN)。このため、これらの状況では、母親に「抗D予防薬」が投与される。しかしながら、例えば、>30mlのFMHでは、標準抗D治療が、もはや十分な保護を与えることができないために、FMHの量を推定できることには大きな関心が寄せられている。したがって、USAでは標準免疫化は、250〜300μgの抗D(IgG)を含んでなり、これは、その循環に、15mlの胎児赤血球、すなわち、25〜30mlの胎児血液が入った妊婦に対して十分な予防を達成する。欧州で投与される標準用量は、より少ない、すなわち、100〜150μgの抗D(IgG)であることが多く、これは8〜10mlのFMHで保護を与える。抗D予防薬を投与する各機関は、通常よりも多量のFMHを検出する方法を使用しなければならない(非特許文献1)。
【0003】
例えば、D抗原を検出するための従来の血液型血清学アッセイは、上記のような少量の第2の集団の検出に近づくことさえもできない。
【0004】
したがって、FMHを検出するために特に開発された、いくつかの別個のアッセイがある。前記アッセイは、胎児赤血球、血液型D抗原またはヘモグロビンFを検出する。
【0005】
FMH検出アッセイ:FMH検出限界
ロゼット試験:約10ml
このアッセイは、赤血球凝集を検出することおよびその顕微鏡的評価に基づいている。胎児D抗原の検出。
(非特許文献2〜4)
【0006】
クライハウエル−ベツケ試験:約5ml
このアッセイは、酸での溶出に対する胎児赤血球の高い抵抗性およびその顕微鏡的評価に基づいている。胎児細胞の検出。
(非特許文献5)
【0007】
フローサイトメトリー 約1ml
D抗原またはヘモグロビンFを対応する抗体で標識し、蛍光二次抗体によって検出する。胎児D抗原/ヘモグロビンの検出。
(非特許文献6および7)
【0008】
抗体消費アッセイ:約15ml
このアッセイは、FMHを決定するための第1のアッセイであり、血液型を決定する常法(ゲル技術)に基づいて設計されている。胎児赤血球による抗D試薬の消費に基づいている。ゲル試験では、反応上清を、D陽性試験細胞とともにインキュベートし、遠心分離する。胎児D抗原の検出。
(非特許文献8および9)
【0009】
これらのアッセイは、赤血球抗原、胎児赤血球または胎児赤血球に特徴的であるヘモグロビンFを検出するために用いられる。これらの方法のすべては、それらを実施するには、多数の試薬並びに時間と労力の両方が必要であるという事実を共有する。さらに、すべての方法は、それらを実施するには、機器が必要であり、そのいくつかは非常に高価である(顕微鏡、遠心機、フローサイトメーター)ということを特徴とする。前記方法はまた、それらを実施するには、特別に訓練されたスタッフが必要であるという事実を共有する。クライハウエル−ベツケアッセイは、結果を評価することが極めて主観的であるというさらなる不利点を有する。
【0010】
弱いD特徴発現((Dweak)、特に、DEL
ドナーおよびレシーバーの血清学のもう1つの課題として、D抗原の弱いまたは部分的な発現がある。特に弱いD発現を有するDEL表現型が記載されるまでは、モノクローナル抗体および間接クームス試験における確認によって、このような弱い血液型でさえ分類することは確実であると思われていた(「正常」D:10〜30000の赤血球あたりの抗原(RBC);D weak:400〜1000;DEL:<30)。
【0011】
血清学的に、DELは、最大10の洗浄ステップを含んでなる非常に複雑な吸着−溶出試験を用いて間接的にのみ検出され得る。DELは、輸血医学と関連性があるが、これは、DELであるヒトの貯蔵血のDレシーバーが、抗D抗体を形成する可能性があるためである。この問題は深刻であり、その結果、現在、すべての(血清学的に)DドナーのD状態を分子的方法で確認すべきかどうかについて専門家の間で議論がある。
(非特許文献10)
【0012】
Mixed−field反応、同種血輸血、血液ドーピング
輸血は、常に、同一または適合するABOおよび適合するDを用いて投与されなければならない。ある場合、例えば、以前輸血された患者に関する場合には、その他の抗原についても同一血液型を輸血するよう臨床的に指示される。しかし、すべての血液型において同一の血液型を輸血することは決して可能ではない(例外:自家輸血)。このことが、通常、あるヒトが、特定の血液型の特徴について診断上陽性かつ陰性であるという輸血後状態をもたらす。診断では、「mixed−field反応」が見られ、例えば、高感度法、特に、検出の間に個々の赤血球および凝集物を空間的に分離できるものによって容易に検出できる。例えば、300ml(67%)の赤血球濃縮物が、循環(45%のヘマクリット)が5000mlの血液を有するK陰性のヒト(血液型kk)に投与され、濃縮物がK+(血液型KkまたはKK)である場合、名目上、前記ヒトの約8%の赤血球がK+であり、赤血球の92%がK−である。
【0013】
このような状態は、例えば、現在広く用いられているDiaMedおよびBio−Rad製のゲルシステムによってさらに検出できる。この技術は、底が閉じられた、種々の特異性を有する抗体試薬を含み得るゲル−クロマトグラフィーカラムを通して決定できる、ヒトの赤血球の希釈懸濁液を遠心分離することを含む。遊離した、凝集していない細胞は、ゲルを通過し、反応容器の底に沈降物を形成することができ、一方で、凝集物はゲル上またはゲル中に保持される(非特許文献11)。例の赤血球が、このような抗K含有カラムを通して遠心分離される場合、細胞のほとんどは、K−であるので底に沈降し、一部がゲル上またはゲル中に保持され(K+)、上記に示されるmixed fieldの検出に対応する。上記のような赤血球がMDmulticard (Medion Diagnostics)に適用されると、抗Kで弱いバンドが同様に検出できる。しかし、ゲル技術とは対照的に、WO2005/005991(特許文献1)に開示される方法では、負に反応する細胞集団を同時に可視化できない。先行技術のすべてのその他の方法は、mixed−field反応を検出するためのゲルシステムおよびMDmulticardに匹敵する特性を全く有さない。
【0014】
同種血輸血および血液ドーピング:
Nelson M.、Popp H.、Sharpe K.、Ashenden M. Haematologica2003年;88:1284頁(非特許文献12)
【0015】
輸血後Mixed−field反応:
Issitt P.D.およびAnstee D.J. In: Applied Blood Group Serology(第4版)、Montgomery Scientific Publications.第3章:Hemolytic disease of the newborn. 1045〜1050頁(非特許文献13)
【0016】
ヘマトクリット
ヘマトクリットまたは赤血球の総容積は、全血の総容積に対する赤血球の容積の割合であり、パーセンテージとして表される。全血に対する赤血球の容積割合は、赤血球の容積および数によって影響を受ける。
【0017】
ヘマトクリットは、遠心分離後、全容積に対する沈降した細胞成分の割合の比が形成されるという点で、通常、血液で満たされた毛細管を遠心分離することによって決定することができる(非特許文献14)。ヘマトクリットはまた、電気インピーダンス法を用いて決定することもできる。ここで、陽極および陰極間の電解質溶液中を流れる電流は、前記電流に入れられている種々の伝導性の粒子によって影響を受ける。電流の変化はパルスとして記録される。特定の粒径、したがって、血液学では、特定の細胞種、例えば、赤血球は、特定のパルス振幅から推測され得る。細胞数およびヘマトクリットは、測定される容積あたりのパルスを合算することによって導くことができる(非特許文献15)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開WO2005/005991号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Applied Blood Group Serology[第4版]、Montgomery Scientific Publications、第41章:Hemolytic disease of the newborn、1045〜1050頁中、Issitt PDおよびAnstee DJ.
【非特許文献2】Jones A.R.、Silver S.Blood 1958年;13:763
【非特許文献3】Sebring E.S.、Polesky H.F.Transfusion 1982年;22:468
【非特許文献4】Hemolytic disease of the newborn中、Sebring E.S. Arlington、VA;Am Assoc Blood Banks 1984年:87
【非特許文献5】Kleihauer E.、Braun H.、Betke K.Klein Wschr 1957年;35:637頁
【非特許文献6】Garratty G.、Arndt P.Transfusion 1995年;35:157頁
【非特許文献7】David B.H.Clin Lab Med 2001年;21:829頁
【非特許文献8】Lapierre Y.、Rigal D.、Adam J.、Josef D.、Meyer F.、Greber S.、Drot C.Transfusion 1990年;30:109頁
【非特許文献9】David M.、Stelzer A.、Wittmann G.、Dudenhausen J.W.、Salama A.Z. Geburtshilfe Neonatol 1999年;203:241頁
【非特許文献10】Wagner T.、Kormoczi G.F.、Buchta C.、Vadon M.、Lanzer G.、Mayr W.R.、Legler T.J.Transfusion 2005年;45:520頁
【非特許文献11】Lapierre Y.、Rigal D.、Adam J.、Josef D.、Meyer F.、Greber S.、Drot C.Transfusion 1990年;30:109頁
【非特許文献12】Nelson M.、Popp H.、Sharpe K.、Ashenden M. Haematologica 2003年;88:1284頁
【非特許文献13】Issitt P.D.およびAnstee D.J. In: Applied Blood Group Serology(第4版)、Montgomery Scientific Publications.第3章:Hemolytic disease of the newborn. 1045〜1050頁
【非特許文献14】Strumia M.M.、Samble A.B.、Hart E.D.、1954年;Am J Clin Path;24:1016頁
【非特許文献15】Sysmex KX−21N Operator’s Manual、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、胎児母体間出血の場合、またはキメラにおけるように、不均一な集団中の小さい細胞集団を決定するために結果を迅速に送達する、簡単な、費用効率が高い、自動化可能な方法を提供することである。本発明はまた、細胞上に低濃度で存在する分析物を検出するための、ヘマトクリット値を決定するための、および/またはmixed−field反応において細胞結合分析物を同時に決定するための、簡単な、迅速で、高感度法を提供することを意図する。前記方法は、好ましくは、既存の方法を超える高い感度を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的は、
−液体サンプルを適用するための、少なくとも1つの供給ゾーン(5)と、
−細胞成分が透過するのに適しており、少なくとも1つの指標ゾーンを膜上に含み、指標ゾーンが、細胞結合分析物と相互作用でき、細胞結合分析物に対する少なくとも1種の結合要素を含む、多孔質膜(2)と、
−液体が指標ゾーンを通過した後に液体を吸収する、膜上の少なくとも1つの吸収領域(3)と
を含んでなる装置を用いて実施され、
少なくとも1つの指標ゾーンが、供給ゾーン(5)と吸収領域(3)の間に位置し、例えば、胎児母体間出血の場合において、またはキメラにおいて、不均一な細胞集団中の小さな細胞集団を濃縮および定量するために、細胞上に低濃度で存在する分析物を検出するために、ヘマトクリット値を決定するために、および/またはmixed−field反応において細胞結合分析物を同時に決定するために実施される、液体サンプル中の1種以上の細胞結合分析物を決定する方法を提供することによって解決される。
【0022】
好ましい実施形態では、本方法は、以下のステップを含んでなる:
a)細胞を含有するサンプルを供給ゾーンに適用するステップと、
b)希釈剤を適用するステップと、
c)アッセイを実施するステップと、
d)細胞が指標ゾーンに結合しているかどうかを決定することによってアッセイを評価するステップ。
【0023】
本方法は、この好ましい実施形態によれば、例えば、胎児母体間出血の場合において、不均一な細胞集団中の小さな細胞集団を濃縮するために、および定量するために、または細胞上に低濃度で存在する分析物を検出するために、実施されることが好ましい。
【0024】
前記実施形態はまた、本明細書において以下「インキュベーション法」と呼ぶ。
【0025】
DE10330982A1およびWO2005/005986には、側方流動装置が開示されている。後者は、それでは、赤血球抗原および血清成分、例えば、抗体を同時に決定するために用いられている。この刊行物に開示される側方流動装置は、本発明に記載される方法に適している。DE10330982A1およびWO2005/005986の開示内容は、その全文が本明細書に組み込まれる。
【0026】
前記側方流動装置は、不均一な細胞混合物中に少量で存在する第2の細胞集団を最大に濃縮できるよう、フローサイトメーターとして本発明に従って利用される。前記濃縮は、血液の最大の総量を使用することによって定量的に、容積の増大によって引き起こされるインキュベーション効果によって定性的に実施されることが好ましい。側方流動装置中の読み取りフィールドは、フローサイトメーター中のフローセルと同様である。バックグラウンドは、高濃度で存在する細胞種を洗い流すことおよび読み取り窓中の低濃度細胞種を固定化することによって低く保たれる。
【0027】
結果として、低い割合の集団でさえ十分に多数が、抗体バンドを通過し、その結果、この集団も目に見えるようになる。これは、著しく高い割合の集団の大部分を洗い流すことによって可能になる。
【0028】
FMHを決定するために適用される本方法は、高度に感受性であり、母体血液中、約0.1%〜0.2%の胎児D+細胞が検出されるのを可能にする。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、本方法に用いられる装置は、サンプル液体が各フロートラックにおいて2以上指標ゾーンを通過するような方法でフローの方向に縦に並んで配置される少なくとも2つの指標ゾーンを含み、指標ゾーンが細胞結合分析物に対する結合要素を含み、本方法は、
a)赤血球を含有する血液サンプルを供給ゾーン適用するステップと、
b)希釈剤を供給ゾーンに適用するステップと、
c)アッセイを実施するステップと、
d)赤血球が指標ゾーン(複数の指標ゾーン)と結合しているかどうかを決定することによってアッセイを評価するステップと
を含んでなり、
本方法は、胎児母体間出血(FMH)の場合に細胞結合分析物を同時に決定するために、Mixed−field反応における決定のために、同種血輸血を検出するために、またはヘマトクリット値を決定するために実施される。
【0030】
この実施形態はまた、本明細書において以下「2指標ゾーン法」と呼ばれる。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、装置は、液体サンプル中の細胞結合分析物を直接決定するために提供され、
−液体サンプルを適用するための、供給ゾーン(5)と、
−細胞成分が透過するのに適しており、少なくとも2つの指標ゾーンを膜上に含み、指標ゾーンが、細胞結合分析物(複数の分析物)と相互作用でき、細胞結合分析物に対する結合要素を含む、多孔質膜と、
−液体が指標ゾーンを通過した後に液体を吸収する、少なくとも1つの吸収領域(3)と
を含んでなり、
指標ゾーンが、供給ゾーン(5)と吸収領域(3)の間に位置し、少なくとも2つの指標ゾーンが、サンプル液体が各フロートラックにおいて2以上指標ゾーンを通過するような方法でフローの方向に縦に並んで配置される。
【0032】
本発明に従って提供される側方流動装置は、本明細書に例示される好ましい実施形態において、本発明に従って、mixed field中の両細胞集団を同時に可視化するのを可能にするように縦に並んで位置づけられた2つの指標ゾーンを有する点で、WO2005/005991のものとは異なる。mixed fieldを検出するための感度は、mixed fieldを検出できる唯一のこれまでの常法、すなわち、ゲル技術(DiaMed)のものよりも高い。本発明の方法の感度によって、小さい細胞集団が、その集団が全集団の約1〜2%である場合も検出することが可能となる。
【0033】
本方法および装置は、mixed−field凝集が高感度で検出されることを可能にする。当業者は、第1の指標ゾーンは、分析物が結合している細胞を結合した後、第2の指標ゾーンとの結合に対する拡散障壁として作用すると考えたであろうから、この有用性は驚くべきことでもある。
【0034】
側方流動装置は、ヘマトクリット測定のために、血液サンプルの赤血球濃度を検出するのを可能にするよう縦に並んで位置づけられた少なくとも2つの指標位置を有するフローサイトメーターとして利用できる。前記濃度が高いほど、ラインのより多くの点が陽性シグナルを示す。本方法は、例えば、各場合において5つの抗赤血球の点を含む複数のフロートラックを並べて置き、個々のフロートラックが漸増または漸減する抗赤血球濃度を有することによって2Dアッセイに広げることができる。
側方流動装置の使用によってまた、血液型およびヘマトクリットを同時に決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】上記のインキュベーション法を実施するのに適した装置の図表示を表す図である。引用符号は、以下の意味を有する;(1)支持層、(2)多孔性膜、(3)吸収領域、(4)密閉要素、(5)供給ゾーンおよび(6)指標ゾーン領域。
【図2】mixed−field反応を検出するための可能性ある適用パターンを図示して表す図である。
【図3】mixed−field反応を検出するための、膜上の図2に記載される適用パターンの可能性ある寸法を表す。
【図4A】本発明の2指標ゾーン法を用いたmixed−field反応の検出を示す図であり、100% A cc D. eeおよび0% B CC D. EEを有する血液サンプルの調査の結果を表す。
【図4B】本発明の2指標ゾーン法を用いたmixed−field反応の検出を示す図であり、98% A cc D. eeおよび2% B CC D. EEを有する血液サンプルの調査の結果を表す。
【図5】本発明の方法を用いたヘマトクリット値の測定を表す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
本発明との関連では、以下の用語は、以下に示されるように理解されなければならない:
用語「不均一な細胞集団中の小さい細胞集団」とは、細胞集団が、同様に不均一な細胞集団中に存在する1種以上のその他の細胞集団と比較して、少量または低濃度で存在することを意味する。不均一な細胞集団全体に基づく、小さい細胞集団の濃度は、これでは、50%未満、好ましくは、10%未満、特に好ましくは、1%未満、特には、0.1%未満である。
【0037】
用語「同種血輸血」とは、本質的特徴において適合している輸血を意味し、このような輸血後により多くの特徴が決定されると、輸血が起こったことをmixed fieldによって検出できる可能性が高い。この可能性は、決定する特徴を選択することによって最大にすることができる。このような決定は、同種血輸血による違法な血液ドーピングを確信するために用いられる。
【0038】
用語「自己輸血」とは、血液の自己提供を意味し、これでは、定義上、ドナーおよびレシーバーはすべての特徴において同一である。
【0039】
用語「mixed field」:輸血は、自己輸血は別として、すべての抗原に関して同一の血液群を有することができないので、mixed fieldは、血清学では、保存血液とレシーバーの間の抗原が異なることに関して生じる。
【0040】
用語「DEL」:これは特に弱く発現されるD特徴であり、<30抗原/細胞である。これは、市販の血清学法によってではもはや検出できない。
【0041】
用語「ヘマトクリット」は、全血液容積の赤血球の割合[%]を意味する。以下の平均が観察される:男性:44〜52%;女性:37〜47%。
【0042】
用語「キメラ」は、細胞が2以上接合子を表す生物に用いられる。
【0043】
側方流動装置の調製
原則として、DE10330982A1およびWO2005/005986に明記される側方流動装置はいずれも適している。
【0044】
本発明に従って用いられる装置の膜は、多孔性膜である。膜材料の好ましい例として、ニトロセルロース(例えば、Sartorius製のUniSarty、Millipore製のHiFlow、Whatman Schleicher & Schuell製のWhatman、AE99およびFF85/100)、ポリエチレン(Porex Corporation製のLateral Floまたはナイロン(CUNO製のNovylon)がある。膜は、極めて大きなポアサイズを有することが好ましいが、これは、膜の高い多孔度が、特に、測定されるサンプルの細胞成分の、例えば、赤血球の、孔構造中への浸透に役立つためである。吸収性膜を使用することが特に有利である。しかし、本発明の装置は、これらの特徴に制限されない。高い毛細管流速(毛細管速度)を有する膜はいずれも好ましく、毛細管流速(毛細管速度)とは、色素溶液が所与の膜上を40mm移動するのに必要なこれは時間である。毛細管流速が<100である膜が特に好ましい。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、密閉要素は、本発明の装置の供給ゾーンの下流の多孔性膜上にフローの方向に配置される。多孔性膜上に置かれ、多孔性膜の残りの表面と分離されるサンプル適用ゾーンを生じさせるために使用される2または3次元密閉要素が使用される。本発明によれば、密閉要素は、主に液体障壁として作用し、サンプル液体および試験試薬が指定の方法で多孔性膜中に分配されることを可能にする。さらに、本発明によれば、密閉要素は、サンプル適用ゾーンを密閉して、側方流動装置のその他の領域への液体の望ましくない移動を防ぐ。
【0046】
好ましい実施形態では、密閉要素は、クモの巣状の形またはおけのような形および/または漏斗の形である。密閉要素は、密閉要素を製造するために用いられる材料からの切断過程によって形成される。密閉要素は、漏斗およびおけの形の場合には、内部の開口部が提供され、その好ましい実施形態変動として、円形、正方形または長方形があり、漏斗の形の場合には、密閉要素の底側(膜接触側)に向かって次第に細くなる。
【0047】
密閉要素の好ましい材料として、水を吸収しない材料(疎水性材料)がある。特定の実施形態では、材料は、一側面が接着フィルム、例えば、加圧接着または粘着アクリレート接着剤で被覆される。したがって、密閉要素は、多孔性膜の表面上に直接接着させることができる。あるいは、密閉要素を、側方流動ハウジングに接続、例えば、結合してもよく、この実施形態では、側方流動ハウジングが、密閉要素を多孔性膜の表面上に押し付け、それによって、前記密閉要素の機能が達成される。
【0048】
二次元密閉要素を製造するのに好ましい材料として、任意の形の接着テープまたは接着フィルム(例えば、Beiersdorf AG製のTesa4124、Adhesives Research製のARcare7815)がある。
【0049】
三次元密閉要素を製造するのに好ましい材料として、種々の材料厚、好ましくは、3〜5mmを有する、可動性の、閉鎖孔の、エラストマー材料または可動性のシリコン材料(例えば、Pitzner製のクローズドセルゴムEPDM140、シリコンゴムまたはCastan製の非セルラーラバー、硬度40°以下)がある。
【0050】
さらなる好ましい一実施形態では、例えば、20個の個々の空洞(おけのような形)を含む1部品からなる複数の密閉要素が膜上に配置されている。
【0051】
本発明によるこの設計のために、本発明の装置は、例えば、白血球などの細胞を含有する液体サンプルを取り込むことができ、前記細胞はこの過程で濾去されない。密閉要素はさらに、大きなサンプル容積が多孔性膜(供給ゾーン)に、多孔性膜(供給ゾーン)が浸水することなく適用されるのを可能にする。したがって、密閉要素は、多孔性膜の吸収特性の利用を支持する。密閉要素はさらに、指定のサンプルフローを保証する。しかし、本発明の装置は、密閉要素があってもなくても上手く働くことができる。
【0052】
本発明の装置の吸収領域(吸収パッド)には、機械的に安定な材料が好ましく、20〜30g/100cmの水吸収能を有することが好ましい(例えば、Wicking Paper、Type300、Whatman Schleicher and Schull)。本発明の装置の吸収パッドおよび側方流動膜の間の接触は、押し下げ、多孔性膜と重なることによって達成される。膜上の吸収パッドの正確な位置は、吸収パッドを、側方流動膜を支持する支持層(裏打ちシート)に結合させることによって達成される。
【0053】
さらなる実施形態では、本発明の装置の構成要素は、機械補強を目的として裏打ちシートまたは支持層に適用される。しかし、本発明の装置は、支持層があってもなくても機能し得る。水を吸収せず、100μm以上の材料厚を有することが好ましく、一側面が、または両面が接着フィルム、例えば、加圧接着または粘着アクリレート接着剤(例えば、0.005’’ポリエステルW/GL−187、G&L)で被覆されている、機械的に安定な材料が好ましい。多孔性膜および吸収パッドは、支持層に固定されている。両面接着支持層の場合には、接着性の第2の面は、積み重なったものをその他の表面、例えば、側方流動ハウジングの内側に固定するために用いられる。
【0054】
さらなる実施形態では、本発明の装置の構成要素が適用された支持層を含むまたは含まない本発明の装置が、ハウジング中に組み込まれ、それによって膜構成要素が、互いに押し付けられ、前記ハウジングが密閉要素機能を支持する。しかし、本発明の装置は、ハウジングを含んでも含まなくても両方で同様に良好に機能し得る。
【0055】
インキュベーション法
好ましい実施形態によれば、本方法は、胎児母体間出血(FMH)を決定するために実施され、これでは、サンプルは、赤血球を含み、指標ゾーンは、抗体または抗体混合物を含むことが好ましい。
【0056】
細胞を含有するサンプルは、いずれのサンプルであってもよい。細胞は、血中に存在する細胞、例えば、赤血球、白血球または血小板であることが好ましい。細胞は赤血球であることが好ましい。ここで、赤血球を含有するサンプルは、全血または血球濃縮物から選択される。ここで、血球濃縮物は、再懸濁された赤血球沈降物であってもよい。
【0057】
側方流動装置に通常適用される細胞数を著しく超える、200μlを超える全血を用いることが好ましい。本システムに利用可能になった多数の細胞のために、フローサイトメーターを通過する小さい細胞集団の総数も増大し、したがって、より良好な検出能がもたらされる。
【0058】
希釈剤は、原則として、先行技術において知られているいずれの希釈剤であってもよい。希釈剤は、生理食塩水、希釈剤1、希釈剤2(DiaMed)、希釈剤F(Medion Diagnostics)から選択されることが好ましい。細胞を、好ましくは、100μl〜200μlの範囲に希釈するために用いられる。これまでに開示された方法とは対照的に、比較的高い細胞濃度および少ない赤血球のフローを達成するよう、総懸濁液の希釈剤の割合は、用いられる全血または赤血球沈降物のものよりも低いことが好ましい。
【0059】
アッセイを実施することは、適用されたサンプルが供給ゾーンから指標ゾーン(複数の指標ゾーン)を通って、吸収領域まで移動するのに十分な期間にわたってインキュベートすることを含んでなる。
【0060】
アッセイは、肉眼によって評価してもよいし、自動化された方法で評価してもよい。
【0061】
本発明の装置の指標ゾーンは、膜上に位置し、サンプル中の決定すべき分析物を捕獲または結合する結合要素を含んでなる。指標ゾーンにおいて、分析物と結合要素の間の結合反応が検出される。多孔性膜に付着されている特に好ましい結合要素として、抗体または抗体断片またはレクチンがある。指標ゾーンは、各場合において、決定すべき分析物に対する結合要素を含んでなることが好ましい。指標ゾーンは、スポット、ラインおよび/または楔の形であり得る。フローの方向のラインの形の構造が好ましい。小さい細胞集団は、優れた認知性を可能にする、楔の形の構造の指標ゾーンによって検出されることが好ましい。
【0062】
さらなる好ましい実施形態によれば、本方法は、細胞上に低濃度で存在する分析物、好ましくは、血液型DELを決定するために実施され、指標ゾーンは、抗体または抗体混合物を含むことが好ましい。
【0063】
本発明の方法は、ステップa)の前に、血液サンプルを遠心分離することによって赤血球沈降物を調製するステップと、沈降物を、ブロメライン、パパインまたはフィシン溶液とともにインキュベートするステップと、酵素処理された沈降物を再懸濁するステップをさらに含む場合もある(例えば、AABB Technical Manual、第14版、2003年、693ffに記載されるように)。インキュベーションは、5〜60分の期間にわたって実施される。使用される酵素は、一般に市販されている。
【0064】
酵素的前処理の利点は、赤血球に対するD抗原のより強力な曝露であり、ひいては、測定のより高い感度である。
【0065】
本発明の方法(変形インキュベーション法)では、ステップa)において、約100μl〜500μlの血液サンプルまたは再懸濁された赤血球沈降物を適用することが好ましい。これは、側方流動装置に通常適用される粒子の量および容積を著しく超える。
【0066】
本発明の方法では、ステップb)において、約100μl〜200μlの希釈剤を適用することが好ましい。液体の容積の拡大は、より遅いフローをもたらし、指標ゾーンでの分析物の準インキュベーションにつながる。
【0067】
指標ゾーンが抗D抗体を含む場合には、抗D抗体は、MilliporeまたはAlba Bioscienceから市販されているような、RUM−1、LDM−3、ESD1M、TH−28、MS−201、MS−26およびLDM−1から選択されることが好ましい。しかしまた、抗体混合物あるいはアフィニティー精製されたポリクローナル抗血清を使用することも可能である。
【0068】
2指標ゾーン法および装置
インキュベーション法に関する上記の説明はまた、特に断りのない限り、2指標ゾーン法にも当てはまる。
【0069】
好ましい実施形態では、本方法は、ヘマトクリット値を決定するために実施され、指標ゾーンは、抗体または抗体混合物を含むことが好ましく、ステップd)において赤血球が指標ゾーンに結合される全体パターンが決定される。
【0070】
本方法のさらに好ましい実施形態では、本装置は、単一のフロートラック中に配置される少なくとも2つの指標ゾーンを含み、指標ゾーンが、同じ細胞結合分析物に対する同一の結合要素を含む。
【0071】
本発明のこの実施形態は、2以上のこのような一連の指標ゾーンを含む。指標ゾーンは、スポット、ラインおよび/または楔の形であり得る。フローの方向の線の形の構造が好ましい。小さい細胞集団は、優れた認知性を可能にする、楔の形の構造の指標ゾーンによって検出されることが有利である。2指標ゾーン法によって、主要な細胞集団に加え、小さい細胞集団が表され、小さい細胞集団に対して向けられる指標ゾーンが供給ゾーンに関して近位にあることが可能になる。各場合において、単一のフロートラック中の2つの指標ゾーンのうち近位指標ゾーンが、フローの方向にラインとして適用され、各場合において遠位の指標ゾーンがスポットとして適用される配置が特に好ましい。
【0072】
好ましい実施形態では、各場合において、異なる結合要素で満たされた少なくとも2つの指標ゾーンを含有する少なくとも2つのフロートラックが、膜上に位置づけられる。
【0073】
本発明のさらに好ましい一実施形態では、装置は、少なくとも2つの指標ゾーンを含有する少なくとも2つのフロートラックを有し、結合要素の濃度が、供給ゾーンに関して近位から遠位に増加または減少する。これによってサンプル中に存在する赤血球の量が、総容積に対して定量的に評価され、それによって、ヘマトクリットをおおよそ決定することが可能となる。
【0074】
さらに、少なくとも2つの指標ゾーンを含有する少なくとも2つのフロートラックを有し、第1のフロートラック中の抗体スポットの濃度が、第2のフロートラック中の濃度と異なる装置が好ましい。
【0075】
さらなる好ましい一実施形態によれば、本発明の方法は、mixed−field反応において細胞結合分析物を同時に決定するために、または同種血輸血を検出するために実施され、これでは、装置は、サンプル液体が、各フロートラック中の2以上指標ゾーンを通過し、指標ゾーンが、異なる細胞結合分析物に対する結合要素を含むような方法でフローの方向に縦に並んで配置される少なくとも2つの指標ゾーンを含む。
【0076】
細胞結合分析物が、A、B、AB、D、C、c、E、e、Cw、K、k、Jkaおよび/またはJkbなどの血液型抗原から選択されることが好ましい。血液型抗原が、反応対A,B;D+,D−;K,k;C,cおよび/またはE,eによって決定されることが好ましい。
【0077】
インキュベーション法について上記で定義されるような、分析物に対する結合要素が、抗体、抗体フラグメント、レクチン、レクチン断片またはそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0078】
本発明のさらなる態様によれば、本装置は、上記の2指標ゾーン法を実施するために提供される。
【実施例1】
【0079】
mixed−field反応の測定
試験ストリップの調製:2種の異なる抗体の各場合における連続適用を行う
試験ストリップは、中央の供給ゾーン、2つの指標ゾーン領域および2つの吸収領域からなる。Millipore HiFlow Plus 075種類の膜を、10対の設計のために大きさ19×75mm(幅/長さ;y/x)のストリップに切断し、支持層(例えば、G&Lによる裏打ちシート)に貼り付ける。中央供給ゾーン(双方向フロー)を用い、それぞれ、種々の血液型特異的モノクローナル抗体の溶液の0.3μlラインおよび0.1μlスポットを、供給ゾーンの両側で平行列の指標ゾーン領域に、ディスペンサー、例えば、AD3200(Biodot)を用いて適用し、各場合において2種の異なる抗体(一方はスポットとして、もう一方はラインとして)の連続適用を行う:
【0080】
抗A−クローン Birma−1(Millipore、TL);抗B−クローン LB−2(Millipore、TN);抗D−クローン LDM3(Alba Bioscience、Z7180100);抗C−クローン MS−24(Millipore、FFMU、KG);抗c−クローン MS−33(Millipore、KN);抗E−クローン MS−80+MS−258(Millipore、TA);クローン抗e MS−21+MS−63(Millipore、FFMU、KL+KQ);抗K−クローン MS−56、(Millipore、KO);抗−k(AlbaClone、Alba Bioscience)。抗RBC(抗ヒトRBCのウサギIgG画分、Rockland、209−4139)。
【0081】
スポットとして適用される抗体は、各場合においてy軸に沿って3mmの間隔で、膜の上側3.5mmを出発して、位置x=22mm(供給ゾーンの左に)または位置x=53mm(供給ゾーンの右に)に位置づける。ラインとして適用される抗体は、各場合においてy軸に沿って3mmの間隔で、膜の上側3.5mmを出発して、位置x=25〜28mm(供給ゾーンの左に)または位置x=37〜50(供給ゾーンの右に)に位置づける。抗体は、15mMリン酸カリウムバッファーpH7.5、10%(v/v)メタノールに以下のとおりに希釈する:抗A抗体1:3、抗B抗体1:2、抗AB抗体1:4、抗D抗体1:4、抗RBC抗体1:3。すべてのその他の抗体溶液は、予備希釈しないが、10%(v/v)にメタノールと混合する。抗体を分配した後、膜を40℃で20分間乾燥させ、次いで、試験を実施するまで一定湿度で保存する。膜と3mm重なる19×20mm吸収バッド(Whatman Schleicher & Schull、300)を、供給ゾーンから遠位の両末端に貼り付ける。位置y=32.5〜37.5mmに、おけのような形の密閉要素(Pitzner製のクローズドセルラバーEPDM140)を貼り付けることによって前記膜の幅全体にわたって、供給ゾーンを残りの膜から分離する。
【0082】
近位(ライン) 遠位(スポット)
供給ゾーンの左に:
抗A → 抗B
抗B → 抗A
抗D → 抗RBC
抗RBC → 抗D
抗K → 抗k
供給ゾーンの右に:
抗C → 抗c
抗c → 抗C
抗E → 抗e
抗e → 抗E
抗k → 抗K
【0083】
図2および3は、mixed−field反応を検出するのに適した側方流動装置の設計を示す。適した寸法は、図3に見ることができるが、これらは例として理解されなければならない。
【0084】
全血試験混合物:
50μlの抗凝固処理全血または新たに採取した未変性血を、200μlの希釈剤F(Medion Diagnostics)と混合する。100μlの得られた懸濁液を供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが「乾いてしまっている(run dry)」場合には、300μlの希釈剤Fを適用する。
赤血球沈降物試験混合物:
50μlの赤血球沈降物(抗凝固処理全血を1500rpmで5分間遠心分離し、赤血球沈降物は、下部の赤い相中に位置する)を、400μlの希釈剤Fと混合する。100μlの得られた懸濁液を、供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが「乾いてしまっている」場合は、300μlの希釈剤Fを適用する。
【0085】
結果は、約5分後に読み取ることができ、わずかに赤色の楔(「半月」−小さい細胞集団)から強力な赤色のバンドまたは強力な赤色のスポット(主要な細胞集団)によって示される。
【0086】
図4Aおよび図4Bは、本発明の2指標ゾーン法を用いるmixed−field反応の検出を示す。これでは、図4Aは、血液サンプルの検査の結果を表し、100%A cc D. eeおよび0%B CC D. EEである。図4Bは、血液サンプルの検査の結果を表し、98%A cc D. eeおよび2%B CC D. EEである。
【0087】
図4Bは、主要な細胞集団の上のわずかな楔(半月)の形の小さい細胞集団の検出を表す。
【実施例2】
【0088】
同種血輸血(血液ドーピング)
試験ストリップを、実施例1と同様の方法で調製した。
【0089】
近位(ライン) 遠位(スポット)
抗D → 抗RBC
抗RBC → 抗D
抗K → 抗k
抗k → 抗K
抗C → 抗c
抗c → 抗C
抗E → 抗e
抗e → 抗E
抗Jka → 抗Jkb
抗Jkb → 抗Jka
抗Cw → 抗RBC
抗RBC → 抗Cw
【0090】
全血試験混合物:
50μlの抗凝固処理全血または新たに採取した未変性血を、200μlの希釈剤Fと混合する。100μlの得られた懸濁液を供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが「乾いてしまっている(run dry)」場合には、300μlの希釈剤Fを適用する。
【0091】
赤血球沈降物試験混合物:
50μlの赤血球沈降物を、400μlの希釈剤Fと混合する。100μlの得られた懸濁液を、供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが「乾いてしまっている」場合は、300μlの希釈剤Fを適用する。
【0092】
結果は、約5分後に読み取ることができ、わずかに赤色の楔(「半月」−小さい細胞集団)から強力な赤色のバンドまたは強力な赤色のスポット(主要な細胞集団)によって示される。
【実施例3】
【0093】
胎児母体間出血(FMH)の検出
試験ストリップを、実施例1におけるように調製し、抗Dのみを適用する。抗体混合物よりも個々の抗体を適用することが好ましい。好ましい抗体:RUM−1(Millipore)、LDM−3(Alba Bioscience)またはESD1M(Alba Bioscience)、TH−28、MS−201、MS−26(Millipore)、LDM−1(Alba Bioscience)。
【0094】
試験混合物a):
400μlの抗凝固処理全血または新たに採取した未変性血を、100μlの希釈剤Fと混合する。300μlの得られた懸濁液を供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが「乾いてしまっている」場合には、400μlの希釈剤Fを適用する。
【0095】
結果は、約20分後に読み取ることができ、わずかに赤色の楔(小さい細胞集団)から強力な赤色のバンドまたは強力な赤色のスポット(主要な細胞集団)によって示される。
【0096】
試験混合物b):a)と同様であるが、血液をブロメラーゼ(Bromelase)で前処理する。
3mlの抗凝固処理全血または新たに採取した未変性血を、1500rpmで3分間遠心分離する。その後、600μlの細胞沈降物を、第2の容器に移し、そこで、600μlの市販のブロメライン溶液(例えば、Medion Diagnostics製のブロメラーゼ(Bromelase))と混合し、37℃で15分間インキュベートする。これに続いて、0.9%NaClで3回洗浄する。
【0097】
実際のアッセイについては、100μlのこのようにブロメライズされ、洗浄された赤血球沈降物を、200μlのAB血漿および200μlの希釈剤F(Medion Diagnostics)と混合する。300μlの得られた懸濁液を、供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが、「乾いてしまっている」場合は、450μlの希釈剤Fを適用する。
【0098】
結果は、約15分後に読み取ることができ、わずかに赤色の楔(小さい細胞集団)から強力な赤色のバンド(主要な細胞集団)によって示される。
【実施例4】
【0099】
極めて低い抗原密度で存在する赤血球の特徴:DELの検出
試験ストリップを、実施例3においてと同様に調製した。混合物よりもむしろ個々の抗体を適用することが好ましい。好ましい抗体:RUM−1(Millipore);LDM−3(Alba Bioscience)。
【0100】
試験混合物a):
400μlの抗凝固処理全血または新たに採取した未変性血を、100μlの希釈剤Fと混合する。300μlの得られた懸濁液を供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが、「乾いてしまっている」場合は、400μlの希釈剤Fを適用する。
【0101】
結果は、約20分後に読み取ることができ、わずかに赤色の楔(小さい細胞集団)から強力な赤色のバンド(主要な細胞集団)によって示される。
【0102】
試験混合物b):a)と同様であるが、血液はブロメラーゼ(Bromelase)で前処理する。
3mlの抗凝固処理全血または新たに採取した未変性血を、1500rpmで3分間遠心分離する。その後、600μlの細胞沈降物を、第2の容器に移し、そこで600μlの市販のブロメライン溶液(例えば、Medion Diagnostics製のブロメラーゼ(Bromelase))と混合し、37℃で15分間インキュベートする。これに続いて、0.9%NaClで3回洗浄する。
【0103】
実際のアッセイについては、100μlのこのようにブロメライズされ、洗浄された赤血球沈降物を、200μlのAB血漿および200μlの希釈剤F(Medion Diagnostics)と混合する。300μlの得られた懸濁液を、供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが、「乾いてしまっている」場合は、450μlの希釈剤Fを適用する。
【0104】
結果は、約15分後に読み取ることができ、わずかに赤色の楔(小さい細胞集団)から強力な赤色のバンド(主要な細胞集団)によって示される。
【実施例5】
【0105】
ヘマトクリット
試験ストリップを、実施例1においてと同様に調製し、各場合において、同一抗体(抗RBC)の少なくとも2の(好ましくは5の)アリコートを連続適用する。変形1:抗体の濃度は、近位から遠位に向けて低下する:変形2:複数のフロートラックがあり、各場合において、2(5)の抗体スポットを有し、抗体濃度はフロートラックからフロートラックへと低下する;変形3:変化1および変化2の組み合わせ;変形4:近位抗体適用はライン、続いて、複数のスポットである:
【0106】
変形2の適用例:
フロートラック1 抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC(c=「1.0」)
フロートラック1:抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC(c=「0.8」)
フロートラック1:抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC(c=「0.6」)
フロートラック1:抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC(c=「0.4」)
フロートラック1:抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC 抗RBC(c=「0.2」)
【0107】
全血試験混合物:
50μlの抗凝固処理全血または新たに採取した未変性血を、200μlの希釈剤Fと混合する。100μlの得られた懸濁液を供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが「乾いてしまっている」場合には、300μlの希釈剤Fを適用する。
結果は、約5分後に読み取ることができる(図5参照)。
【0108】
赤血球沈降物試験混合物:
50μlの赤血球沈降物を、400μlの希釈剤Fと混合する。100μlの得られた懸濁液を供給ゾーンに適用する。供給ゾーンに適用する。供給ゾーンが「乾いてしまっている」場合は、300μlの希釈剤Fを適用する。
結果は、約5分後に読み取ることができる(図5参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体サンプル中の1種以上の細胞結合分析物(cellularly bound analytes)を決定する方法であって、
−液体サンプルを適用するための、少なくとも1つの供給供給ゾーン(5)と、
−細胞成分が透過するのに適しており、少なくとも1つの指標ゾーンを膜上に含み、前記指標ゾーンが、細胞結合分析物と相互作用でき、細胞結合分析物に対する少なくとも1種の結合要素を含む、多孔質膜(2)と、
−液体が前記指標ゾーンを通過した後に液体を吸収する、膜上の少なくとも1つの吸収領域(3)と
を含んでなる装置を用いて実施され、
少なくとも1つの指標ゾーンが、前記供給ゾーン(5)と前記吸収領域(3)の間に位置し、例えば、胎児母体間出血の場合において、またはキメラにおいて、不均一な細胞集団中の小さな細胞集団を濃縮するためおよび定量するために、細胞上に低濃度で存在する分析物を検出するために、ヘマトクリット値を決定するために、および/またはmixed−field反応において細胞結合分析物を同時に決定するために、実施される方法。
【請求項2】
a)細胞を含有するサンプルを前記供給ゾーンに適用するステップと、
b)希釈剤を適用するステップと、
c)アッセイを実施するステップと、
d)細胞が指標ゾーンと結合しているかどうかを決定することによって前記アッセイを評価するステップと
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
胎児母体間出血(FMH)を決定するために実施され、好ましくは、前記サンプルが赤血球を含み、指標ゾーンが抗体または抗体混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞上に低濃度で存在する分析物、好ましくは、血液型Dweak、特に、DELを決定するために実施され、前記指標ゾーンが、抗体または抗体混合物を含むことが好ましい、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)の前に、血液サンプルを遠心分離することによって赤血球沈降物を調製するステップと、沈降物をブロメライン、パパインまたはフィシン溶液とともにインキュベートするステップと、酵素処理した沈降物を再懸濁するステップとをさらに含んでなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
約100μl〜500μlの血液サンプルまたは再懸濁された赤血球沈降物が、ステップa)で適用される、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
約100μl〜200μlの希釈剤が、ステップb)で適用される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
抗D抗体が、RUM−1、LDM−3、ESD1M、TH−28、MS−201、MS−26およびLDM−1から選択される、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記装置が、前記サンプル液体が各フロートラックにおいて2以上指標ゾーンを通過するような方法でフローの方向に縦に並んで配置される少なくとも2つの指標ゾーンを含み、前記指標ゾーンが、細胞結合分析物に対する結合要素を含み、
a)赤血球を含有する血液サンプルを前記供給ゾーンに適用するステップと、
b)希釈剤を前記供給ゾーンに適用するステップと、
c)アッセイを実施するステップと、
d)赤血球が前記指標ゾーン(複数の指標ゾーン)と結合しているかどうかを決定することによって前記アッセイを評価するステップと
を含んでなり、
胎児母体間出血(FMH)の場合に細胞結合分析物を同時に決定するために、Mixed−field反応において決定するために、同種血輸血を検出するために、またはヘマトクリット値を決定するために実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ヘマトクリット値を決定するために実施され、前記指標ゾーンが、抗体または抗体混合物を含むことが好ましく、ステップd)において赤血球が前記指標ゾーンに結合されている全体パターンが決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記装置が、単一のフロートラック中に配置される少なくとも2つの指標ゾーンを含み、前記指標ゾーンが、同じ細胞結合分析物に対する同一の結合要素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記装置が、少なくとも2つの指標ゾーンを含有し、結合要素の濃度が、前記供給ゾーンに関して近位から遠位に増加または減少する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記装置が、少なくとも2つの指標ゾーンを含有する少なくとも2つのフロートラックを有し、第1のフロートラック中の抗体の濃度が、第2のフロートラック中の濃度と異なる、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
mixed−field反応において細胞結合分析物を同時に決定するために、または同種血輸血を検出するために実施され、前記装置が、サンプル液体が各フロートラックにおいて2以上指標ゾーンを通過するような方法でフローの方向に縦に並んで配置される少なくとも2つの指標ゾーンを含み、前記指標ゾーンが異なる細胞結合分析物に対する結合要素を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞結合分析物が、A、B、AB、D、C、c、E、e、Cw、K、k、Jkaおよび/またはJkbなどの血液型抗原から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記血液型抗原が、反応対A,B;D+,D−;K,k;C,cおよび/またはE,eによって決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物に対する結合要素が、抗体、抗体フラグメント、レクチン、レクチン断片またはそれらの混合物から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記膜または複数の膜(2)が、好ましくは、ポリエチレン、ニトロセルロースまたはナイロンからなる、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの密閉要素(4)が、前記供給ゾーン(5)の下流かつ前記膜(2)上の指標ゾーンの上流に配置されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記装置の構成要素が、機械補強のために支持層(1)に適用される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記装置の構成要素が、ハウジングに組み込まれている、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
胎児母体間出血またはキメラにおいて決定するための、細胞上に低濃度で存在する分析物を決定するための、ヘマトクリット値を決定するための、および/または液体サンプル中、mixed−field反応において細胞結合分析物(cellularly bound analytes)を同時に決定するための装置の使用であって、
−液体サンプルを適用するための、少なくとも1つの供給ゾーン(5)と、
−細胞成分が透過するのに適しており、少なくとも1つの指標ゾーンを膜上に含み、前記指標ゾーンが、細胞結合分析物と相互作用でき、細胞結合分析物に対する少なくとも1種の結合要素を含む、多孔質膜(2)と、
−液体が前記指標ゾーンを通過した後に液体を吸収する、前記膜上の少なくとも1つの吸収領域(3)と
を含んでなり、
前記指標ゾーンが、供給ゾーン(5)と吸収領域(3)の間に位置する装置の使用。
【請求項23】
前記装置がFMHを決定するために使用される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
細胞上に低濃度で存在する分析物を決定するために、前記装置が使用される、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記分析物が、血液型Dweak、特に、DELである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記装置が、ヘマトクリット値を決定するために使用される、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
液体サンプル中の細胞結合分析物(cellularly bound analytes)を直接的に決定するための装置であって、
−液体サンプルを適用するための、供給ゾーン(5)と、
−細胞成分が透過するのに適しており、少なくとも2つの指標ゾーンを膜上に含み、前記指標ゾーンが、細胞結合分析物(複数の分析物)と相互作用でき、細胞結合分析物に対する少なくとも1種の結合要素を含む、多孔質膜と、
−液体が前記指標ゾーンを通過した後に液体を吸収する、少なくとも1つの吸収領域(3)と
を含んでなり、
前記指標ゾーンが、前記供給ゾーン(5)と前記吸収領域(3)の間に位置し、少なくとも2つの指標ゾーンが、前記サンプル液体が、各フロートラックにおいて2以上の指標ゾーンを通過するような方法でフローの方向に縦に並んで配置される装置。
【請求項28】
前記細胞結合分析物が、A、B、AB、C、c、E、e、Cw、K、k、Jkaおよび/またはJkbなどの血液型抗原から選択される、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記血液型抗原が、反応対A,B;D+,D−;K,k;C,cおよび/またはE,eによって決定される、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記膜が、各場合において、異なる結合要素で満たされた少なくとも2つの指標ゾーンを含有する少なくとも2つのフロートラックを含む、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記指標ゾーンが、スポット、ラインおよび/または楔の形である請求項28から30のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−515030(P2010−515030A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543363(P2009−543363)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011016
【国際公開番号】WO2008/080544
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506262852)メディオン ダイアグノスティクス アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】