説明

不安障害の処置および予防への光学的に純粋な(R)−トフィソパムの使用およびその組成物

【課題】副作用の低減した抗不安薬、不安障害予防薬を提供する。
【解決手段】Sエナンチオマーを実質的に含まず、Rエナンチオマーを含むトフィソパムを不安または不安障害の処置または予防に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、光学的に純粋なトフィソパムを用いる、不安および不安障害の処置および方法、並びに該方法用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
2.1 薬理学におけるキラリティ
キラリティの概念は、有機化学および生化学の基本を成すものであり、薬理学的成分の作用を決定する重要なファクターとなっている。ある原子、特に炭素原子は、それが四面体配置にある4つの異なる原子または基と結合している場合、キラルであるまたはステレオジェニックであるという。中心原子をキラル中心とするためには、4つの原子の全てまたは基の全てが異なるものでなければならない。このことの重要性は、このような配置は、結合をどのように回転させても、分子の位置をどのようにとってもその鏡像上に重ね合わせることができないということである。これらの2分子は、同じ実験式を有しているが、それらは同一ではなく、切断して再結合する以外にはそれらを同一にすることができない異性体である。
【0003】
各原子の空間的配置は異なるが同じ結合点を有する分子は、立体異性体といわれる。エナンチオマー(鏡像異性体)は、立体異性体のサブグループであり、重ね合わせることができない鏡像である。ステレオジェニックなまたはキラルな中心を含有する全ての分子は、必らずエナンチオマーを有する。もし、ある分子を、結合形成および切断以外の何らかの回転または移動によって、その鏡像に重ね合わせることができれば、それらは同一でありエナンチオマーではない。1以上のキラル中心を有する分子は、複数の立体異性体を生じ得るものであり、それらはジアステレオマーといわれる。
【0004】
エナンチオマーは、キラル中心の周りで可能な2種の基の配置に、絶対指標RまたはSを割り当てる常法によって示される。Cahn R.S., Ingold C.R., Prelog V. Angew. Chem. (Int Ed.), 5, 385-415 (1966)。エナンチオマーは、類似のまたは同一の物理化学的特性を有している。しかし、溶液状態において、平面偏光の面を回転させる能力が異なる。エナンチオマーは、平面光を同程度であるがそれぞれ反対の方向に回転させるものであり、それゆえに光学異性体といわれる。偏光面を回転させる能力は、エナンチオマーの特定によく用いられる。もし、異性体が平面偏光を右に回転させる場合は、それは右旋性であり、化合物名の前に(+)で示される。光を左に回転させる異性体は左旋性といわれ、(-)の接頭辞で示される。異性体が光面を回転させる能力から、物質の物理的性質についての情報が得られるが、それは接頭辞RおよびSで示すような三次元空間的配置または分子の絶対配置に関する情報を与えるものではない。異性体の完全な名称はその光学的性質を示す(+)または(-)を含み、かつ該分子の絶対配置を表すRまたはSを含む。
【0005】
立体異性体およびエナンチオマーにおいて表わされる絶対配置の変化は、自然界において極めて重要である。これは、天然に存在する分子においてはエナンチオマーの1種が他方に対して通常、例えば、L-アミノ酸、D-グルコース、L-ペプチド、D-リボヌクレオチドのように、優勢であることで示される。対照的に、キラルでない先駆物質から合成的に調製した化学物質は、一般に、ラセミ体であるか、ほぼ等量づつの両エナンチオマー混合物である。
【0006】
歴史的事実として、ヒトの疾患の処置に使用する薬物の大多数は、ほとんどがラセミ形態で製造され治療において使用されてきた。現在市販されている全薬物の25%がキラル分子であり、約80%がラセミ体として使用されていると算定されている。Lehmann, F.P.A. (1986), Trends Pharmacol. Sci., 7, 281-285。
【0007】
ある種の治療薬においては、キラリティは重要ではない。しかしながら、薬物の薬物動態学または薬力学における、エナンチオマー的な相違または立体選択性の効果について、最近までほとんど知られていなかった。過去10-15年にわたって、医薬の立体化学への関心が増加してきた。現在では、ある薬物のエナンチオマーは、生体系において際だって異なる特性を有し得ることが知られている。これらの異なる作用は、タンパク質の結合、貯蔵、輸送、代謝、またはクリアランスでの効果などの、薬物動態学的な違いによるものかもしれない。エナンチオマーは、異なる薬理活性も示すことがあり、そしてレセプターに結合し活性化させる場合における立体選択性を示す。天然のリガンドの多く(例えば、神経伝達物質、ホルモン、内因性ペプチドなど)は、それら自体がキラルであるので、この選択性は、薬物レセプター相互作用において期待されるべきものである。加えて、ラセミ混合物の成分として存在する立体異性体は、複雑なそしてほとんど分かっていない道筋で互いに相互作用するのであろう。
【0008】
最近の、医薬立体化学における興味と注意の高まりは、エナンチオマーの独自の特性の理解の増大と、不斉合成およびキラル分離技術の幅広い発達に起因する。キラルな出発物質あるいはキラルな試薬または触媒を使用する新規な合成技術が発達し、エナンチオ選択的合成を促進している。大規模クロマトグラフ再結晶技術および酵素反応により、現在では、製薬企業が単一のエナンチオマーを費用効率よく、大規模に製造することを可能にしている。
薬物作用におけるキラリティの効果は複雑であり、キラル分子と不斉的なまたはエナンチオ選択的な方法で反応できる体内の何れかのまたは全てのシステムに関係し得る。
何れの活性プロセスでも鏡像異性の選択性または特異性を示すことが期待できる。活性プロセスは、レセプター相互作用、酵素作用、または結合特異性を伴うであろう。実際、エナンチオ選択性を伴い得るプロセスには、吸収、タンパク質および組織結合を含む分布、貯蔵および輸送、代謝、胆汁および腎クリアランス、およびレセプター結合および活性化が含まれる。これらの活性プロセスは、何れか単独でまたは組合せで、インビボでの立体異性体の医療的作用に 影響するのであろう。
【0009】
2.2 薬物動態学におけるエナンチオ選択性
薬物のエナンチオ選択性吸収は、(a)活性吸収;(b)腸または腸壁での特異的代謝;(c)溶解性の相違;(d)再吸収後のエナンチオ選択性胆汁排出;または(e)薬理学的活性の相違、がある場合に起こり得る。
エナンチオ選択性活性吸収は、L-アミノ酸、D-グルコース等の天然に存在する異性体では広く知られている。エナンチオ選択性アミノ酸ポンプは、L-ドーパなど、構造的に類似する薬物を選択的に輸送する。Wade et al. (1973), Nature, 242, 463-465。このような選択的活性吸収はL-メトトレキサートおよびL-セファレキシンについても起こり、後者はエナンチオ選択性ジペプチド輸送システムによって行なわれる。Tamai et al. (1988), J. Pharm. Pharmacol., 40,320-324。
エナンチオ選択性腸代謝はある種の薬物に対して起こり得る。Borgstrom et al. (1989), Br. J. Clin. Pharmacol., 27,49-56。エナンチオマー間で溶解性が相違することは稀であるが吸収が異なる原因となり得る、例えば;ラセミ体サリドマイドは、その別の異性体より10倍難溶性であり、腸からのその吸収に影響する。Hague et al. (1988), Br. J. Clin. Pharmacol., 26, 623P。
【0010】
薬物がヒト血清アルブミン(HSA)またはα-l-酸 糖タンパク質(AAG)と結合する度合いは、それらの薬物動態学に大いに影響を及ぼし得る。薬物が結合していないフラクションは、薬物の活性およびクリアランスを大きく左右する。しかしながら、結合の違いが大きい場合は、分布容積、定常状態における最大および最小非結合レベル、定常状態に達する時間、および総腎クリアランスが変化することがある。
【0011】
一般に、薬物とHSA(酸性薬物)またはAAG(塩基性薬物)の何れかとの結合は、エナンチオ選択性ではないが、重要な例外が幾つか存在する。ほとんどの薬物はワルファリン部位(部位I)またはベンゾジアゼピンおよびインドール部位(部位II)の何れかでHSAと結合する。L-トリプトファンは、HSAの部位IIとの親和性がD-エナンチオマーの約100倍あることが判明した。 McMenamy et al. (1958), J. Biol. Chem., 233:1436-37。D-オキサゼパムはHSAの部位IIに対して、L-エナンチオマーと比べて約40倍の親和性を有する。Muller WE, Wollert U (1975), Mol. Pharmacol., 11:52-60。他のキラルなベンゾジアゼピン誘導体(トフィソパムを含む)でも、同様の、HSAの部位IIに対するエナンチオ選択性結合がみられた。 Alebic-Kolbah et al. (1979), Biochem. Pharmacol., 28:2457-64. Simongi M, Fitos 1. (1983), Biochem. Pharmacol., 32:1917-20。
【0012】
塩基性薬物のα-l-酸 糖タンパク質(AAG)への結合が、プロプラノロールに対してエナンチオ選択性であることも示されている。Albani et. al. (1984), 18:244-46; Disopyramide, Giacormini et al. (1986), J. Pharmacol. Bionharm., 14:325-56; Verapamil, Eichelbaum et al. (1984), Br. J. Clin. Pharmacol., 17:450-8およびMethadone, Romach et al.(1981), Clin. Pharmacol., Ther. 29:211-17。
【0013】
エナンチオ選択性血漿タンパク質結合は、薬物の薬理活性に、エナンチオマーとレセプターとの間の立体選択的相互作用ほど顕著には効果を引き起こさないであろう。しかしながら、選択的結合は、総量と遊離薬物濃度の割合に影響を及ぼし、そして各エナンチオマーは互いに他を置換し、イブプロフェンでみられるのと同様の、動力学的相互作用を導くであろう。Lee et al. (1985), Br. J. Clin. Pharmacol., 19:669-674。
【0014】
薬物の組織結合の大きさは、脂質溶解性に主として依存しており、そして脂質溶解性との血漿タンパク質結合は、最も重要な因子である。エナンチオマーは、通常、同程度の脂質溶解性を有しており、従って、組織取り込みにおけるエナンチオ選択性は、特異的な取り込みプロセスが存在しない限りは小さいようである。これは、β-レセプター類によって特異的に取り込まれ、それらの対掌体より高度に心臓組織に結合する、プロプラノロールおよびチモロールのS(-)エナンチオマーによって示されている。Kawashima et al. (1976), J. Pharmacol., Exp. Ther. 196, 517520, Tocco et al. (1976), Drug Metab. Dispos. 4, 323-329。
【0015】
薬物が処理されていゆく最も重要なエナンチオ選択性プロセスは、エナンチオ選択性代謝である。全てのキラルな薬物の75%はある程度のエナンチオ選択性代謝を示すと予測されている。Cambell O.B. (1990), Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet., 15:109-125。この機構は、初期認識結合段階および一旦結合した酵素のその後の活性化の速度の違いとの両方を含み得る。Testa B. (1989), Chirality, 1, 7-9.
【0016】
多くの薬物について肝臓での代謝が立体選択性である証拠が存在する。エナンチオ選択性初回通過代謝は、経口投与と静脈経由投与との間で、血漿濃度の実質的な違いを生ずるであろう。Testa B. Jenner P. Concepts in Drug Metabolism New York; Marcel Dekker, 1980:55-176; Echizen et al. (1985), Am. Heart J., 109:210-217。
【0017】
この、初回通過代謝におけるエナンチオ選択性は、臨床的な重要性が大きい。血漿濃度のみに基づくと、ラセミ体のベラパミルは、ピット間隔(PR-interval)の延長に関して、経口投与後より静脈投与後のほうがはるかに効力が強い。同じ"総"薬物血漿濃度で、用量応答性曲線は、経口投与後に静脈投与と比べて右へシフトしている。S-エナンチオマーは、R-ベラパミルより、血管拡張、(筋肉収縮力の)ネガティブな変力作用、房室伝導の遅延、および周期変動性作用において2.5から20倍効力が強い。Eichelbaum, M. Biochem. Pharmacol. 1988:37:93-6。より効力が強く、かつ毒性も強いエナンチオマーのエナンチオ選択性初回通過代謝は、総血漿薬物濃度が等しい場合、経口投与と比較して静脈投与後に、2.5倍高いS-ベラパミルの濃度をもたらす。
【0018】
代謝クリアランスに関わる多くの酵素がエナンチオ選択性作用を示している。これには、混合機能の酸化酵素、エポキシドヒドラーゼ、エステラーゼ、グルタチオントランスフェラーゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼおよびドーパ脱炭酸酵素が含まれる。ワルファリンの代謝は高度にエナンチオ選択性であり、薬物のエナンチオマーは、2種の異なる代謝経路によって、および異なる代謝酵素によって、代謝される。S-エナンチオマーは、主としてシトクロムP-450IIC9による酸化によって代謝され、環ヒドロキシル化を経由して7-ヒドロキシ-S-ワルファリンを形成する。これに反して、R-ワルファリンは、シトクロムP-450IIIA4による酸化によって6-ヒドロキシ-R-ワルファリンに代謝され、そしてケトン官能基の還元によってR,S ワルファリンアルコールを形成する。Rettie et al. (1992) Chem Res Toxicol 5:54-59; Lewis RJ, Trager WF (1970), J. Clin. Invest., 49:907-13。
【0019】
これは、薬物のエナンチオマーを身体で取り扱う場合における、ラジカル相違の類いのものであって、研究者に"ワルファリンエナンチオマーは2つの薬物として取り扱うべきである"等といわせたものである。Hignite et al. (1980), Clin. Pharmacol. Ther., 28, 99。
【0020】
胆汁排泄は、酸および塩基に対して異なる能動的輸送成分を有しており、そのためエナンチオ選択性である筈である。
薬物の腎クリアランスは、腎糸球体濾過、受動的再吸収、能動的分泌および能動的再吸収および腎代謝を含む、能動的および受動的プロセスの両方を組合せている。管の分泌物と活性再吸収は、両方共、潜在的にエナンチオ選択性である可飽和担体介在プロセスを含む。
【0021】
2.3 薬力学におけるエナンチオ選択性
薬物の不斉分子の絶対配位は、レセプターとの薬物相互作用に対して絶大なる効果を有し得る。これは、今世紀の前半に(-)ヒヨスチアミンの効能がその(+)エナンチオマーと比較して大きいことが示されて以来、知られている。Cushing AR. Biolocical relations of optically isomeric substances, London. Bailliere, Tendall and Cox, 1926。その後10年も経ないで、単純であるが有用なエナンチオマー間の薬力学的活性の違いを説明するためのモデルが提唱された。Easson LH, Stedman, E. (1933) Biochem. J. 27, 1257-66。このモデルは、活性が強い方のエナンチオマーはレセプターと3点で相互作用が可能であるが、他方活性が低い方の異性体は、2つの部位でのみ相互作用が可能である、というものである。このモデルは、薬物とレセプターの両巨大分子の立体配置的柔軟性を考慮に入れていないという点で、過度に単純すぎるものである。
【0022】
高度なレセプター親和性または活性を有するエナンチオマーはeutomerと命名され、一方、活性の低いエナンチオマーはdistomerと命名されている。2つのエナンチオマーの親和性または活性の比率は、系のエナンチオ選択性の尺度であり、eudismic比と呼ばれている。
【0023】
2つのエナンチオマー間のレセプター親和性または活性の違いは極めて大であることがあり、その場合、2つの異性体は効果的に別々の薬物となり、異なる治療的効能を表示して市販され得る。例えばデキストロプロポキシフェン(DarvonTM, Lilly U.S.)は鎮痛薬として使用され、そのエナンチオマー、レボプロポキシフェン(NovradTM, Lilly, U.S.) は鎮咳薬として使用されている。Hutt et al. (1996) Drugs 52, suppl. 5:1-12。
【0024】
ある場合には、両エナンチオマーは反対の薬理学的作用をもつことがある。ピセナドールの(+)エナンチオマーはオピオイドレセプターにおけるアゴニストであるが、一方、(-)エナンチオマーは同じレセプターにおいてアンタゴニストとして作用する。Powell et al. Wainer IW, Drager DE, editors, Drug Stereochemistry Analytical Methods and Pharmacology. New York, Marcel Dekker 1988: 245-70。数種のキラルなジヒドロピリジンカルシウムチャンネルブロッカーの両エナンチオマーもまたレセプターに対して反対の作用を有する。S-エナンチオマーは、L-型電圧依存性カルシウムチャンネルで強力なアクチベーターであるのに対して、R-エナンチオマーはアンタゴニストである。Triggle, D.J. Chirality, 1994: 6:58-62。
【0025】
薬理学的特性がラセミ体のものと大きく異なるために、純粋な異性体が新たな効能価値を有するに至るような単独の異性体の例が、幾つか知られている。Verpamilは、ある種の多重薬物抵抗性腫瘍細胞ラインからの、一部の細胞毒性薬物の流出を抑制することができ、そして、これらの細胞ラインの、アドリアマイシンなどの細胞毒性成分に対する感受性を増強することができた。本目的でのベラパミルの使用は、その望まざるまたは有害でさえあり得る心血管性作用に限定される。しかしながら、心血管への作用はSエナンチオマーに優勢に存在しているので、ラセミ体を使用した場合に有毒であり得る濃度で純粋なR-ベラパミルを使用して、多重薬物抵抗性腫瘍の処置に役立てることが可能であろう。Gottesman, M.M., Parton I Trend Pharmacol. Sci. 1988; 9:54-8; Plumb et al., Biochem. Pharmacol. 1990; 39:787-92。
ラセミ体の薬物ではなく、純粋なエナンチオマーを使用することの臨床的価値は、他のファクター、例えば疾患状態、年齢、性別、および遺伝的要因など、によっても変わる。
【0026】
2.4 トフィソパムの化学および薬物動態学
トフィソパムは、1-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-4-メチル-5-エチル-7,8-ジメトキシ-5H-2,3-ベンゾジアゼピンであり、下記の式で表される:
【化1】


トフィソパムの合成は、米国特許第3,736,315号(Korosi J., et al)に記載されている。トフィソパムは、商品名Grandaxin(登録商標)のラセミ混合物をマイナートランキライザーとしてヨーロッパで販売されている2,3ベンゾジアゼピン化合物である。トフィソパムは、環構造内の窒素原子の位置が、1,4位ではなく2,3位である点で、ジアゼパム様のベンゾジアゼピン類とは異なる。
【0027】
トフィソパムは、C-5炭素にキラル中心があり、その結果2種のエナンチオマーが存在する。加えて、トフィソパムは、窒素含有ベンゾジアゼピン環から想定できる2つの立体配置に基づく、2種の安定な立体配置で存在し得る。2種の立体配置の血清アルブミンとの立体選択的結合が、異なっていると報告されている。Simongi, M. and Fitos, I., "Stereoselective Binding Of A 2,3 Benzodiazepine To Human Albumin," Biochemical Pharmacology 32:(12):1917-20 (1983)。
【0028】
トフィソパム(ラセミ混合物として)は、ヨーロッパで、長年抗不安薬として臨床上で使用されている。トフィソパムと従来の1,4-ベンゾジアゼピン類(BDZ)、例えばジアゼパムなど、とは構造上類似しているが、トフィソパムのベンゾジアゼピン環上の窒素の位置の違いが、従来のBDZ類と大きく異なる薬理学活性を与えている。
【0029】
従来の1,4 BDZ類は、CNS中に特異的な高親和性結合部位を有している。Mohler, H. and Okada, T., Benzodiazepine receptors: demonstration in the central nervous system, Science, (1977) 198:849-851; Squires, R.F. and Braestrap, C., Benzodiazepine receptors in rat brain, Nature 266:732-734, 1977。これらの特異的結合部位は、現在、GABAAレセプターのサブタイプとして知られている。Tallman et al., GABA ergic modulation of Benzodiazepine binding site sensitivity, Nature 1978:274:383-385; Tallman et al., Receptors for the age of anxiety: pharmacology of the Benzodiazepines, Science 1980:207:274-281。GABAAレセプターと関連する、離れたかつ明瞭な認識部位は、幾つかの痙攣性化合物、例えばピクロトキシンおよびペンチレンテトラゾリンと結合する。Paul, S.M., GABA and Glycine in Psychopharmacology: The Fourth Generation of Progress, ed. Bloom and Kupfu p. 87-94, Raven Press Ltd., New York。GABAAレセプターのアゴニストによる活性化は、レセプター作動型イオンチャンネルまたは孔を介するClイオン伝導性の増強をもたらす。Clイオン伝導性の活性化はニューロンの過分極をもたらし、そして興奮性神経伝達物質への感受性を減少させる。これは、この作用によって効能を及ぼす、阻害性神経伝達物質GABAおよび従来のBDZ(ジアゼパムなど)の作用のメカニズムである。
【0030】
トフィソパムは、臨床的に有効な1,4-BDZとは対象的に、ベンゾジアゼピンレセプターと結合しない。トフィソパムは、胃管を介した投与後はそれらのレセプター((インビトロ)または(インビボ))から[3H]-BDZ類の結合を置換せず、そしてこのレセプターにおいて逆アゴニスト(例えば、Bカルボリン類)も置換しない。Saano, V. and Urtti, A., Pharmacol. Biochem. Behav., 17:367-369, 1982; Saano, V., Pharmacol. Res. Commun., 14:971-981, 1982。しかしながら、トフィソパムは、急性的および慢性的の何れの処置の後でも、BDZ類とそれらのレセプター((インビトロ)および(インビボ)両方)との結合を増強する。Saano, V. and Urtti, A., Pharmacol. Biochem. Behav. 17:367-369 (1982). Mennini et al., Naunyn Schmiedaberg Arch. Pharmocol., 321:112-115, (1982)。この効能はレセプターのBDZに対する親和性の増加の結果であり、レセプターの数の増加によるものではない。ジアゼパムとその代謝物デスメチルジアゼパムの脳内レベルはトフィソパムによって修飾されていないので、BDZの結合を増強するトフィソパムの能力は、単純に薬物動態学的要因によるものではない。Pellow S. and File SE, Neuroscience & Biabehavorial Reviews 10:221-227, 1986。
【0031】
ドーパミン系におけるトフィソパムの効能は、従来の1,4BDZ類のものと大きく異なっている。低用量で、トフィソパムは、脳ドーパミン作動系においてアゴニスト様の効能を有することを示す。Szentendrei, T. et al., Catecholamines and Stress: Recent Advances:中、出版者:E. Usdin, R. Kvetnanstig and I.J. Kopen, Amsterdam: Elsevier 1980, pp. 161-166。しかしながら、トフィソパムは高用量では、神経遮断薬様のドーパミン遮断効能を有している。Pellow, s. and File S., Neuroscience & Biobehavorial Review, 10:221-227 (1986)。トフィソパムが、ハロペリドールによる慢性処置後の観察と匹敵する、ドーパミンレセプターの急速過敏化を引き起こし、同時にアンタゴニストに対するドーパミンレセプターの親和性を増強するものであることが提唱されている。Chopin, P. et al., J. Pharm. Pharmacol. 37:917919 (1985)。ドーパミン系へのトフィソパムのこの二相性作用は、従来の1,4-BDZのものとの顕著な相違である。これらの化合物は脳ドーパミン作動系のインヒビターとしてのみ作用し、低用量でのアゴニスト様作用はもっていない。
【0032】
2.5 ラセミ体のトフィソパムの治療的効力
極めて多くの臨床研究により、トフィソパムがヒトに対して有効な抗不安薬であることを示している。325人の患者を有するある大規模複合施設治験で、トフィソパムを150-1300mg/日の用量範囲で3週間投与した。この薬物は有効な抗不安薬であり、そして1,4BDZで観察される鎮静の副作用がないことが分かった。実際、最も顕著な副作用は、興奮薬様副作用であった。Varady, G. et al., Ther. Hung 23:153-158, 1975。不安抑うつ混合シンドロームの30人の患者による一般試験において、トフィソパムは、平均用量 158mg/日で有効であることが分かった。Molcan, J.V., Aggressologie 22D:23-24, 1980。トフィソパムは、神経緊張(nervous tension)、被刺激性、および閉経期症候群に伴う患者の睡眠妨害パターンの処置で効果的であることが分かった。Csillag, M.G., Ther Hung 23:164-169, 1975。本研究において、用量は3-4週間の期間、150-300mg/日であった。
【0033】
トフィソパムは、不安障害と診断された50人の外来患者の処置に効果的であることが分かった。眠気および疲労を含む幾つかの有害な副作用が示された。この研究で、トフィソパムはHamilton不安スケールに基づく"恐怖"因子に対する特異的な効能を有し得ることも提唱された。これは抗恐怖的効能の前兆であり得る。トフィソパムとプラセボを比較する二重盲検試験(用量は報告されていない)を不安および抑うつである57人の外来患者について、4週間行なわれた。Goldberg, H.L. and Finnerty, R.J., Am. J. Psychiatry 136:196-199 (1979)。この研究で、Hamilton不安スケールと症候の悩みのチェックリスト(The Symptom Distress Checklist)の両方で評価したとき総体症状の減少においてトフィソパムはプラセボより顕著に効果的であることが分かった。トフィソパムは、Hamiltonスケールにおいて顕著な身体的心配を有している患者に、非常に効果的であることが分かった。しかしながら、処置中の副作用報告がプラセボを投与された者では10パーセントしかなかったのと比較して、トフィソパムを投与された患者では21パーセントであった。ラセミ体のトフィソパムを投与された1人の患者は、直後に興奮、混乱、失神、および眩暈を含む激烈な反応を示し、それは7日以上続いた。この患者は研究から除外せざるを得なかった。これは、ラセミ体のトフィソパムが有害な刺激性作用を引き起こし得るという先の報告と首尾一貫している。Varody et al., Ther. Hung 23:153-158, 1975。他の二重盲検試験で、不安の処置におけるトフィソパムの効力が確認された。Slodka, R. et al., Ther. Huna. 27:3-.7, 1979。
【0034】
トフィソパムは、手術前に与えると顕著な抗不安薬作用があることも示され、この作用は従来の1,4BDZニトラゼパムより優れていることが判明した。Pakkanen, A. et al Br. J. Anaesth. 52:1009-1012, 1980。トフィソパムを前投与薬として使用する別の研究において、100mgの連続経口投与で、鎮静を伴わない抗不安作用を生じるが、望ましくない興奮の副作用を伴うことが判明した。Kanto, J. et al., Int. J. Clin. Pharmacol. Ther. Toxicol. 20:309-313, 1982。トフィソパムは、重症筋無力症の患者の不安の処置に有効でもあるが、この場合1,4BZD類の筋肉弛緩剤の作用はこの疾患の症状を悪化させ得ることも判明している。
【0035】
トフィソパムは、不安患者の認識能力を精神運動性障害を伴わずに改善することも判明している。しかしながら、トフィソパムを夕方に投与した場合に睡眠妨害が示され、不眠症が進行した。Maier, K., Curr. Ther. Res 35:541-548 (1984)。
全てが抗痙攣特性を有している1,4 ベンゾジアゼピン類とは対照的に(Lister, R.G., Neurosci. Biobehav. Rev. 9:87-94, 1985)、トフィソパムは抗痙攣性、筋弛緩または鎮静の作用を有しないと報告されている。Gerevich, J. Ther. Hungar. 23:143-146, 1975. Petocz, L. and Kosoczky, I. Ther. Huncar. 23:143-138, 1975。
しかしながら、トフィソパムの投与は痙攣に対するジアゼパムの作用を増強し(Briley, M., Br J. Pharmacol. 82: 300P, 1984; Mennini, T., Naugn-Schmiedeberg's Arch. Pharmacol. 321:112-115, 1982)、そして腫瘍に対するジアゼパムの作用も増強した。Saano, V. Pharmacol. Biochem. Behav. 17:367369, 1982; Saano, V. Med. Biol. 61:49-53, 1983。トフィソパムのこの作用は、ベンゾジアゼピン抗痙攣薬に特異的であり、そしてフェニトイン、バルプロ酸ナトリウム、またはカルバマゼピンではみられなかった。Saano, V., Med. Biol. 64:201-206, 1986。
【0036】
2.6 トフィソパムエナンチオマー
トフィソパムの分子構造および立体配置的特性がNMR、CD、およびX線結晶グラフィック方法で測定されている。Visy, J. and Simongi, M., Chirality 1:271-275 (1989)。2,3ジアゼピン環には2種類の舟形立体配置が存在する。メジャーな配座異性体(+)-Rおよび(-)Sでは、不斉中心C-5に結合したエチル基は準エクアトリアル配向性であるが、マイナーな配座異性体(-)Rおよび(+)Sでは、この基は準アキシャル的に位置している。その結果、溶液中のラセミ体トフィソパムは、4つの分子種、すなわち、それぞれが2種のキラルな立体配置を有する2種のエナンチオマーを含有している。光学回転の様子はジアゼピン環が逆になると逆になる。結晶形態では、トフィソパムはメジャーな立体配置である、(S)絶対配置の左旋性のトフィソパム、としてのみ存在する。Toth, G. et al., J. Heterocyclic Chem. 20:709-713, 1983. Fogassy, E. et al., Bio-Oroanic Heterocycles, Van der Plas, H.C., Otvos, L., Simongi, M., 発行:中. Budapest Amsterdam: Akademia; Kiado-Elsevier, 1984, 229:233。
【0037】
Fogassy et al. は、Petocz et al.による1980年の会議の抜粋にはマウスの薬理学的試験で立体異性体について異なる生物学的活性を示したことが記載されていると述べており、これにはラセミ体のトフィソパムの活性がそのエナンチオマーの活性の合計と対応しないという観察も含まれている。Id. at 230。しかしながら、Fogassy et al.は、Petocz et al.による生物学的アッセイまたは達成された特定の結果については記載していない。そのうえ、先行技術の調査ではPetocz et al.のこのような抜粋は得られなかった。従って、Petocz et al. が存在すること、またはそれがR-トフィソパムおよびその予想外の特性に関係するものであるとする形跡は、現在全くない。
【0038】
加えて、トフィソパムエナンチオマーとヒト血清アルブミンとの結合が立体選択的であり、各立体配置との相互転換によって影響されることが示されている。Simonyi M. and Fitos, I. Biochem Pharmacology 32(12):1917-1920 (1983)。
【0039】
2.7 不安障害
不安障害は、支配的な症候が不安であることにより特徴付けられる精神障害の異種のグループの部分である。The American Psychiatric Association, 1994, Washington, DCにより発行されたThe Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Edition (DSMIV)は、12の異なるタイプの不安障害を列記している。それらは以下の通りである:広場恐怖症を伴わないパニック障害;広場恐怖症を伴うパニック障害;パニック障害の病歴のない広場恐怖症;特定の恐怖症;社会恐怖症;強迫性障害;外傷後ストレス障害;急性ストレス障害;全般性不安障害;一般身体疾患による不安障害;物質誘発性不安障害;および特定不能の不安障害。
【0040】
パニック障害は、再発性の突然のパニック発作、パニック発作の可能性のある影響または結果についての心配に加えて、続く少なくとも1ヶ月の他のパニック発作に関する持続性の懸念の存在、またはパニック発作に関連した顕著な行動変化により特徴付けられる。パニック発作は4種またはそれ以上の下記の症状が突然発症し、10分以内にピークに達する、激しい恐怖または不安の分離した期間である。それらの症状とは、動悸、発汗、震え、息切れ、息苦しい感覚、胸痛、吐き気、ふらふらする感覚、現実感消失、離人症、コントロールを失うことへの恐怖、死への恐怖、知覚異常および寒気または火照りである。
【0041】
パニック発作は突然発症し、急速にピークになり、しばしば直ぐの危険または切迫した破滅の感覚を伴い、逃避に駆り立てられる。パニック発作は、パニック発作に関連する不安が断続性であり、性質において激動であり、より重症である点で全般性不安と異なる。パニック発作は、パニック障害、多くの異なる不安障害、社会恐怖症、特定の恐怖症、外傷後ストレス障害および急性ストレス障害を含む多くの異なる不安障害で発症し得る。
【0042】
パニック障害において、パニック発作の頻度および重症度は広く変化し得る。ある個体は、例えば、毎日または毎週、間に発作の無い期間を挟んで頻繁な発作を起し得る。他の個体は、時々のパニック発作のみであり得る。
【0043】
パニック障害は広場恐怖症を伴うまたは伴わないものとに分類される。広場恐怖症は、逃避が困難であるか、困りさえする、または個体が助けを得ることができないであろう状況に関する不安である。
【0044】
広場恐怖症はまたパニック障害の病歴なしに発症し得る。この恐怖症において、恐怖の焦点は、完全な型通りのパニック発作よりも、ひどいパニック様症候群または当惑をこれらの症候群の結果起すことである。広場恐怖症に罹患している個体の大半がまた現にパニック障害の診断または病歴を有する。しかし、パニック障害の病歴のない広場恐怖症は、広場恐怖症を伴うパニック障害と同程度一般的であると報告されている。
【0045】
特定の恐怖症は明確に定義された限局されたものまたは状況への持続性のひどい恐れにより特徴付けられる。これらの特定の物または状況への曝露は、殆ど不変に直ぐの不安、反応を起し、これはパニック発作の形を取り得る。子供において、不安はかんしゃく、泣くまたはしがみつくことにより現され得る。診断基準はまた、恐れが過度、または常軌を逸していると認識することも要求する。子供において、この特性はなくてよい。
【0046】
社会恐怖症の必須の特性は、当惑が起こり得る社会的状況への著しい、そして持続した恐れである。この特定の社会的状況への曝露は、殆ど不変に直ぐの不安反応を起し、これは状況的に素因のあるパニック発作の形を取り得る。特定の恐怖症のように、本異常の青年および成人は、恐れが過度、または常軌を逸していると認識するが、子供では当て嵌まらない。社会恐怖症の個体は、当惑を非常に懸念し、しばしば、他人が心配症と、もしくは狂気または愚かとさえ判断しないかと恐れる。これは、他人が、心配症であることに気付くか、または彼等が明瞭に話すことができないと気付くという懸念により、人前で話すことへの恐れをもたらし得る。この異常の個体は、困惑への恐れから、人前での食事、飲むことまたは書くことを避け得る。社会恐怖症の個体は、事実上、恐れている社化的状況において常にある不安の症候群を経験しており、その状況に曝されたとき、パニック発作を起し得る。
【0047】
強迫性障害は、著しい、または、1日あたり1時間を超える苦悩をもたらすか、または通常の日常業務、職業上、または学術的職務または通常の社会活動または関係で他人と著しく衝突する、再発性の妄念または強迫により特徴付けられるシンドロームである。
【0048】
妄念は、侵入的で、不適切なある時点で経験する、そして著しい不安および苦悩をもたらし、現実の問題に関する単純な過剰な心配ではない、繰り返し、持続する考え、衝動またはイメージである。人は、このような考え、衝動またはイメージを無視し、または抑制しようと、またはある他の考えまたは行動によりそれを中和しようと試み、人は、この考え、衝動またはイメージが彼または彼女自身の心の産物であり、外から課されたものでないことを認識する。
【0049】
強迫は、人が妄念に応答して、または厳格に当てはめなければならないルールに従って行動する衝動に駆られる、手洗いまたは確認のような繰り返す行動、または黙って数を数えたり、単語を繰り返すような精神的行動である。個体は、これらの行動または精神的行動が、苦悩またはある恐れる事件または状況を防止することを意図するが、これらの行動または精神的行動は、彼等が中和し、または防止し、または確実に排除するために設計した現実的方法に連結していない。
【0050】
外傷後ストレス障害(PTSD)は、社会的および職業的機能不全の無力化を1ヶ月以上の期間もたらす、臨床的に明らかな苦悩により特徴付けられるシンドロームである。PTSDの必須の特性は、直接の自分の死またはひどい怪我の現実または脅威、または身体的無傷への他の脅威が関与する経験;または他人の死、傷害、または身体的無傷への脅威の目撃;または予期しない、または激しい死、ひどい傷害、または家族の一員または他の親しい仲間が経験した死または損傷への恐れの学習が関与する激しい外傷性ストレッサーへの曝露に続く、特徴的症候群の発症である。
【0051】
患者の事件への応答は、一般に混乱したまたは興奮した行動を含む。激しい外傷への曝露によりもたらされる特徴的症候群は、持続性の外傷事件の再経験、外傷に関連する刺激への持続する回避および一般的感応性の麻痺、ならびに外傷体験の前に患者が現していなかった上昇した覚醒および不安の持続する症候群を含む。
【0052】
外傷事件は、最も一般に、事件の持続性の侵入的な回想または持続性の苦悩を与える夢の方法で再経験する。PTSDは、それ自体、3ヶ月またはそれ以上の期間の症候群の完全な補足の存在として定義される慢性的に、意識に現れ得、または各症状の発現が3ヶ月より短く続く、急性に現れ得る。時々、遅延発症PTSDが起こり、外傷的事件と上記の症候群の発症の間に少なくとも6ヶ月経過している。
【0053】
更に、PTSDに罹患した患者は、パニック障害、広場恐怖症、強迫性障害、社会恐怖症、大鬱病性障害および薬物乱用を含む、他の衰弱性精神異常のリスクが増加する。PTSDはまた自滅的、自傷的、そして衝動的行動を頻繁に伴い、頭部外傷または熱傷のような傷害を患者にもたらす。
【0054】
急性ストレス障害の必須の特性は、非常に外傷性のストレッサーに曝された後、1ヶ月以内の、特徴的不安、解離および、他の症候群の発症である。関与するストレッサーのタイプはPTSDの発症に関与するものと類似である。外傷事件を経験している間またはその事件の後、個体は少なくとも3つの以下の解離的症候群を発症する:感情的反応の麻痺、分離または喪失;彼または彼女の周囲への認識の減少;現実感消失;離人症または解離性健忘症。外傷に続いて、その事件は持続性に再経験され、個体は外傷の想起を刺激し得る刺激からの著しい逃避を示し、不安または増加した覚醒の著しい症候群を示す。
【0055】
この症候の必須の特性は、外傷事件に曝された結果としてのPTSDと類似の症候群に加えて、解離性症候群の発症である。急性ストレス障害の個体は、基本的な健康および安全性の必要性を無視することがあり、PTSDおよび大鬱病の発症のリスクが増大している。
【0056】
全般性不安障害の必須の性質は、多くの事件または行動から少なくとも6ヶ月の期間を超えないで発症する過度の不安および心配である。全般性不安障害の個体は、心配ならびに、落ち着きのなさ、興奮性、筋肉の緊張および睡眠障害を含み得る他の症候群をコントロールすることが困難であることがわかる。この異常の個体は、常に心配を“過度”と同定していないが、実体のない悩みを持ち、心配をコントロールするのが困難であり、社会的、職業的または機能するための他の重要な領域での関連する欠陥を経験し得る。
【0057】
この異常は子供と成人の両方で発症し、以前は子供の過剰不安障害と呼ばれていた。この異常の子供は、能力や行動の質に関して過剰に心配する傾向があり、過度に従順であり、完全主義者であり、不安定である。
【0058】
全般性不安障害は、しばしば大鬱病性障害または気分変調性障害または他の不安障害または物質関連異常を併発する。この障害の個体はしばしば頭痛または過敏性大腸症候群のような付随する体の症候群も罹患している。
【0059】
一般身体疾患による不安障害の必須の特性は、一般的身体疾患の直接の生理学的作用であると判断される臨床的に明確な不安である。この症候群は、全般性不安障害、パニック発作または妄念および強迫を含み得る。この症候群は、不安症候群の性質ではなく、根本にある病状の直接の結果であるという医者の判断により特徴付けられる。このような病状の多くの例は医者により知られており、甲状腺疾患、低血糖、肺塞栓症、心不整脈、COPD、ビタミンB12欠乏症および脳炎を含む。
【0060】
物質誘発性不安障害は、薬物濫用、投薬または毒素曝露のような物質の直接の生理学的作用であると判断される顕著な不安症候群により特徴付けられる。症候群は顕著な不安、パニック発作、恐怖症または妄念および強迫を含み得、中毒の間または解脱の間に発症し得る。症候群は、臨床的に顕著な悩みまたは、社会的、職業的または機能するための他の重要な領域での欠陥をもたらすのに十分ひどい。この病気は、不安症候群が中毒または離脱に通常伴うよりも過剰であり、独立した臨床的注意の根拠に十分なほどひどい場合にのみ診断される。多くの薬物療法および薬物が、中毒の間に不安症状をもたらし得る:カフェイン、コカイン、幻覚剤、抗コリン作用薬、甲状腺製剤、抗精神病約および種々の毒素を含む。不安症候群はまた、アルコール、鎮静剤、不安緩解剤またはコカインのような多くのクラスの物質からの離脱に伴って起こり得る。
【0061】
特定不能の不安障害は、特定される不安障害のいずれの基準にも合わない、顕著な不安または恐怖症候群の異常を含む。
【0062】
2.8 不安および不安障害の処置
不安および不安障害の慣用の処置は、心理療法のような心理学的治療および薬理学的行為の両方を含む。F. E. Bloom and D. J. Kupfer編, Michelo, R. J. Clin. Psychiatry; 58(Suppl)3):30-32; Anxiety Disorders Chap. 109125, Raven Press, Ltd., New York 1995。
【0063】
ベンゾジアゼピンは、単独または他の精神薬理学的薬剤と組合わせて、不安および不安障害の処置の頼みの綱の一つのままである。Woods, J. H. et al. Pharmacol Rev. 1992:44:151-347, Shoder R. I. and Greenblatt D. J. N. Engl. J. Med. 1993:328:1398-1405。Hollister et al. J. Clin. Psychopharmacol. 1993; 13(suppl.):15-1695。
【0064】
ベンゾジアゼピンは、同時罹患(comorbied)した鬱および不安の処置のために、抗うつ剤と組合わせて頻繁に使用される。研究および臨床的観察は、これらの二つの別の異常に実質的な重なりがあることを示している。鬱および不安障害は、各々8%および15%の生涯罹患率の一般的な病気である。加えて、鬱病患者の約60%がある不安症候群を有し、これらの患者の20%から30%がパニック発作を有する。Lydiard RB J. Clin. Psychiatry 1991; 52(6, Suppl.): 48-54。同時罹患大鬱病の高い割合は、広場恐怖症(65%)、パニック障害(69%)および社会恐怖症(94%)の患者で見られる。Stein MB, Uhde TW, Psychiatric Clin. North AM 1988; 11(2):441-461。
【0065】
多くの鬱患者が、処置が必要な重症の不安症候群を有しているという事実に加えて、不安症候群および特に、パニック発作の新しい病歴の存在は、鬱病患者における自殺のリスクの前兆であった。Fawcett J. J. Clin. Psychiatry 1988;49 (10, Suppl):7-8。
【0066】
不安症候群および不安障害は、それらが単独であれ、または鬱病のような他の異常と組み合わさって発症しているのであれ、積極的に処置すべきである。Keller, M. B. and Hantis, D. L. J. Clin. Psychiatry 1995; 56 (Suppl 16):22-29。
【0067】
不安の症候群および不安障害はしばしば長期になり、したがってこれらの病気の処置において徐放性医薬製剤の使用が有利であり得る。全ての徐放性医薬製剤が、非徐放性の対応物により達成されるものを超える薬物療法の改善を共通のゴールとする。理想的には、薬物療法において最適に設計された徐放性製剤の使用が、最短の時間で、病気を治療またはコントロールするのに用いる医薬物質が最小であることにより特徴付けられる。
【0068】
利用可能な精神治療学的および医薬的行為の限定のため、効果がより大きく、副作用がより少ない、不安および不安障害の別の処置が現在探求されている。
【発明の開示】
【0069】
3.発明の概要
本明細書中に開示する組成物および方法の有効成分化合物は、トフィソパム(tofisopam)のRエナンチオマーである。ラセミ体トフィソパムの調製は、Korosi J. et al.の米国特許No.3736315に記載されている。R―トフィソパムの化学式は、R―1−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−エチル―7,8−ジメトキシ―4−メチル―5H−2,3−ベンゾジアゼピンである。
【0070】
本発明は、不安および不安障害の処置における、R―トフィソパムまたはR―トフィソパム組成物の使用を包含する。従って、本発明の一実施態様は、トフィソパムのラセミ混合物およびS−トフィソパムより予想外に良好な活性を有する、R―トフィソパムまたはその医薬的に許容し得る塩を、治療的有効量投与することによる、不安および不安障害の処置に関する。
【0071】
本発明はまた、不安および不安障害を予防するために、それらの疾患の発症リスクがある個体に、R―トフィソパムまたはR―トフィソパム組成物を単独でまたは心理療法との併用で投与することによる、それらの使用をも包含する。従って、本発明はまた、R―トフィソパムまたはその医薬的に許容し得る塩を治療的有効量ヒトに投与することによる、該ヒトにおける不安および不安障害を予防する方法をも包含する。
【0072】
本発明はまた、R―トフィソパムを、他の既知精神病薬例えば、三環式抗うつ剤、セロトニン再取込み阻害剤、非典型的抗うつ剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、1,4−ベンゾジアゼピン例えば、ジアゼパム、ロラザパムまたはアルプラゾラム、またはメジャートランキライザー例えば、ハロペリドールまたはクロルプロマジンの投薬との併用で投与することによる、R―トフィソパムの使用をも包含する。
【0073】
本発明はさらに、ヒトにおける不安および不安障害を治療または予防するために、該ヒトに心理療法による介入前に、介入中にまたは、介入後に、R―トフィソパムまたは医薬的に許容できるその塩を投与することによる、在来の心理療法との併用での、R―トフィソパムの使用をも包含する。
本発明はさらに、男性、女性、子供および老年者を含む、すべての可能性のあるヒト患者集団における不安および不安障害を治療または予防するための、R―トフィソパム単独または心理療法との併用での使用をも包含する。
【0074】
本発明はまた、R―トフィソパムまたはその医薬的に許容できる塩の治療的有効量を、1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る担体(群)、希釈剤(群)および/または添加物とともに含み、実質的にそのS−エナンチオマーは含まない、医薬組成物をも包含する。
本発明はさらに、不安および不安障害の治療用に適用する放出制御医薬組成物、およびその投与不法をも包含する。
【0075】
3.図面の簡単な説明
図1.は、ChirobioticVカラムを使用する、R―トフィソパムの予備的分割を示すクロマトグラムである。第1ピーク、フラクション1は、R(+)―トフィソパムを含有し、それは部分的にR(―)―トフィソパムに変換し、さらにその後(R+/R―)が80/20で平衡になって存在するようになる。第2ピーク、フラクション2は、R(―)―トフィソパム、S(+/―)―トフィソパム、および残留R(+)―トフィソパムを含有する。
【0076】
図2.は、ChirobioticVカラムおよびシェイブリサイクル(shave recycling)技法を使用する、S―トフィソパムの予備的分割を示すクロマトグラムである。記号“R”はリサイクルしたフラクションを指す。記号“C”は集めたフラクションを指す。第3リサイクル後の言葉の下に指示しているように溶出した材料、S―トフィソパム(ピークBおよびB’)を、分析および生物学的アッセイ用に集めた。
【0077】
図3.3Aおよび3Bは、トフィソパムのエナンチオマーの、最終調製物のクロマトグラムである。図3Aは、R―トフィソパムの最終調製物を示し、それはR(+)―トフィソパム(ピークA)およびR(―)―トフィソパム(ピークA’)を含有する。図3Bは、S―トフィソパムの最終調製物を示し、それはS(−)―トフィソパム(ピークB)およびS(+)―トフィソパム(ピークB’)を含有する。
【0078】
4.発明の詳細な説明
本発明は、トフィソパムのR−エナンチオマーまたはその医薬的に許容し得るその塩の治療的有効量、該量はヒトにおける不安および不安障害を軽減するに充分な量であって、実質的にそのS−エナンチオマーは含まない、をヒトに投与することを含む、ヒトにおける不安および不安障害の処置方法を包含する。さらに本発明は、光学的に純粋なR―トフィソパムまたはその医薬的に許容し得るその塩による不安の処置を包含するものであり、他方、ラセミ体トフィソパムでは随伴する副作用は減少または回避させたものである。
【0079】
本発明はまた、R―トフィソパムまたはその医薬的に許容し得る塩を不安および不安障害を軽減するに充分な量含み、実質的にそのS−エナンチオマーは含まない、不安および不安障害に罹っているヒトの処置用医薬組成物を包含する。さらに本発明は、光学的に純粋なR―トフィソパムまたはその医薬的に許容し得るその塩を含む、不安および不安障害に罹っているヒトの処置用医薬組成物であって、該組成物が不安および不安障害を軽減するには有効である一方、ラセミ体トフィソパムでは随伴する副作用を減少または回避したものである、組成物をも包含する。
【0080】
本発明のさらなる態様は、R−トフィソパムまたは医薬的に許容し得るその塩の治療的有効量、該量はヒトにおける不安および不安障害を軽減するに充分な量であって、実質的にそのS−エナンチオマーは含まない、を、抑うつ症状に併在する不安を含む不安および不安障害を発症するリスクのあるヒトに、単独でまたは心理療法との併用で投与することを含む、ラセミ体トフィソパムの投与に関連する副作用の随伴傾向を実質的に減少または回避する一方で、ヒトにおける不安および不安障害を予防する方法を包含する。さらに本発明は、光学的に純粋なR―トフィソパムによる不安の予防を包含するものであり、他方で、ラセミ体トフィソパムの投与に関連する副作用を減少または回避するものである。
【0081】
さらに本発明は、ヒトにおける不安および不安障害の予防用組成物を包含し、該組成物は、R−トフィソパムまたは医薬的に許容し得るその塩を、該不安および不安障害を軽減するに充分な量含み、実質的にそのS−エナンチオマーは含まないものである。さらに本発明は、光学的に純粋なR―トフィソパムを含む一方、ラセミ体トフィソパムの投与では随伴する副作用を減少または回避した、ヒトにおける不安および不安障害の予防または処置用組成物をも包含する。
【0082】
入手可能なトフィソパムのラセミ混合物(Grandaxin登録商標)は、抗不安活性を有し、不安および不安障害の治療法および症候群の軽減を提供する。しかしながら、このラセミ混合物は、過剰刺激、精神障害、および不眠を含む(それらに限られない)副作用を引き起こす。本発明は、実質的にそのS−エナンチオマーは含まない、トフィソパムのR−エナンチオマーを使用して、副作用を消滅させ、従って、治療係数を改善させることを包含する。
“R−トフィソパム”または“光学的に純粋なR−トフィソパム”の用語は、実質的にその左旋性(S)エナンチオマーを含まない、固体の右旋性R−トフィソパムを意味する。
【0083】
“実質的にそのSエナンチオマーを含まない”の用語は、本明細書中で使用するとき、該組成物が少なくとも90重量%のR−トフィソパムと10重量%またはそれ以下のS−トフィソパムを含有していることを意味する。好ましい実施態様では、“実質的にそのSエナンチオマーを含まない”の用語は、該組成物が少なくとも95重量%のR−トフィソパムと5%またはそれ以下のS−トフィソパムを含有していることを意味する。最も好ましい実施態様では、“実質的にそのSエナンチオマーを含まない”の用語は、該組成物が少なくとも99重量%のR−トフィソパムと1%またはそれ以下のS−トフィソパムを含有していることを意味する。これらのパーセンテイジは、組成物中のトフィソパム総量に基づくものである。
【0084】
トフィソパムのラセミ混合物の化学的合成は、その開示を参照して本明細書の一部としている、米国特許No.3736315に記載の方法で実施できる。トフィソパムのRエナンチオマーは、そのラセミ混合物から常法により、例えば分割試薬光学活性酸でのエナンチオマー分割により取得できる。例えば、"Enantiomers, Racemates and Resolutions" by J.A. Collet and S.H. Wilen, (Wileg-Interscience, New York, 1981); S.H. Wilen and J.A. Collet, Tetrahedrn, 33,2725 (1977) and "Stereochemistry of Carbon Compounds" by E.L. Eliel (McGrawHill, N.Y. 1962 and S.H. Wilen "Tables of Resolving Agents and Optical Resolution", E.L. Eliet, Ed. Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, Ind. 1972 参照。T8th G. et al. J. Heterocgelic Chem; 20: 709-713 (1983)も参照。合成の別法は、Korosiの米国特許No.4423044に記載されている。この特許は参照して本明細書の一部としてある。
【0085】
不安および不安障害の処置および予防における、有効成分(例えば、R−トフィソパム)の予防的または治療的用量は、患者の苦悩の重篤度および投与ルートに応じて変動する。用量および投薬頻度は、年齢、体重、各個体の応答性によっても変動する。本明細書に記載した諸症状に対する一般的に推奨される用量範囲は、1日当たり約10mgないし約1200mgの範囲内にあり、一般的には1日1回ないし4回に分けて各等量を投与する。好ましくは、毎日用量の範囲を1日当たり50mgないし600mgとし、通常1日2回ないし4回に各等量に分けて投薬する。最も好ましくは、毎日用量の範囲を1日当たり100mgないし400mgとし、通常1日2回ないし4回に各等量に分けて投薬する。ある場合には、これらの範囲外の用量が必要となるかもしれないが、処置医には、患者の応答に応じてどのように増量、減量または処置を中断すべきか承知できるはずである。前記した各種の用語、例えば、“治療的有効量”には、上記各用量および投薬頻度スケジュールを包含している。
【0086】
不安および不安障害の処置および予防における使用のために、医師は一般に、患者ごとにR−トフィソパム処置期間および投薬頻度を処方する。しかしながら、一般に、R−トフィソパムによる不安および不安障害の処置および予防は、それが必要とされる期間中は、単一の、分断のない期間で、または分断した期間で実施する。最も好ましくは、R−トフィソパム療法は、4ないし18週の期間実施する。R−トフィソパムは、他の向精神活性化合物、特に抗うつ活性を有する化合物の投薬前、投薬中または投薬後に投与してもよい。それらの化合物には、3環系抗うつ剤、例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン、およびプロトリプチリン;セロトニン―再吸収阻害剤、例えば、ラセミ体フルオキセチンおよびそのエナチオマー、フラボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、および(±)―ベンラファクシン;代表的抗うつ剤、例えば、ブプロピオン、ネファゾドン、およびトラゾドン;および他のモノアミンオキシダーゼ阻害剤、例えば、フェネルジン、トラニルシプロミン、および(−)−セルギリンが、単独でまたは組合わせで、含まれる。特に本発明は、トフィソパムを他の向精神活性薬と併用して使用することを包含する。
【0087】
R−トフィソパムは、在来の心理療法の前に、と並行してまたは、の後に投与することもできる。従って、本発明によりR−トフィソパムは、在来の行動療法または心理療法の補助として利用することもできる。
【0088】
R−トフィソパムの有効用量を患者に与えるために適した任意の投与ルートを採用できる。例えば、経口、直腸、非経口、経皮、皮下、舌下、鼻内、筋肉内、包膜内および類似のルートが適するものとして採用できる。投与形態には、錠剤、被覆錠剤、カプレット、カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセル剤)、トロ−チ、糖衣錠、分散剤、懸濁剤、溶液剤、パッチおよび類似物が含まれ、当技術分野で周知の持続放出性製剤も含まれる。例えば、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 1985, Ansel, H. C., Lea and Febiger, Philadelphia, PA; Remington's Pharmaceutical Sciences, 1995, Mack Publ. Co., Easton, PA.参照。
【0089】
本発明の組成物は、有効成分としてR−トフィソパムまたは医薬的に許容し得るその塩を含むものであり、また、さらに医薬的に許容できる担体、および所望により他の治療的成分をも含み得る。「医薬的に許容できる塩」なる用語は、医薬的に許容できる非―毒性の無機酸および有機酸を含む酸から調製した塩を意味する。
【0090】
本発明の化合物が塩基性であることから、塩は、非―毒性の無機酸および有機酸を含む酸から調製できる。それらの酸には、マレイン酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート)、安息香酸、カンファースルホン酸、くえん酸、エテンスルホン酸、フマール酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、りんご酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸および類似物が含まれる。特に好ましいのは、臭酸、塩酸、マレイン酸、リン酸および硫酸である。
【0091】
本組成物は、経口、直腸、経皮、舌下、および非経口(経皮、筋肉内、包膜内および静脈内を含む)投与に適した組成物を含むが、いずれの与えられた場合においても、最も適するルートは処置する症状の性質や重篤度によって変わる。最も好ましい本発明の投与ルートは、経口ルートである。組成物は、投薬ユニット形態で好適に提供でき、調剤技術分野で周知の任意の方法で調製できる。
【0092】
経口組成物を採用する場合、使用に好適な用量範囲は、例えば、1日当たり約10mgないし約1200mgであり、一般的には等分割して1日当たり1回ないし4回用量とし、好ましくは1日当たり約50mgないし約600mgであり、通常は等分割して2回ないし4回毎日投与とし、最も好ましくは1日当たり約100mgないし約400mgであり、通常は等分割して2回ないし4回毎日投与とする。患者を低い方から評価し、この用量範囲内になるまで上方向に投薬量を定めてゆき、症候の満足すべきコントロールまたは適当な予防を達成する
【0093】
実際の使用に当たっては、R−トフィソパムは、在来の医薬調剤技術に従い、製薬用担体との緊密混合物中の有効成分として組合わせて使用することができる。担体は、所望の投与剤形、例えば、経口または非経口(静脈内注射または注入を含む)投与形態、に応じて広い範囲で各種の形態のものを採用できる。経口投与形態の調製に際しては、任意の通常の製薬用媒体、例えば、水、グリコール、オイル類、アルコール類、芳香料、保存剤、着色剤および類似物を、経口液剤、例えば、懸濁剤、エリキシル類および溶液剤;またはエアゾル剤の場合に採用でき;また、澱粉、砂糖、微結晶セルロース、安定化剤、希釈剤、造粒剤、滑択剤、結合剤、充填剤、崩壊剤および類似物のような担体を、粉剤、カプセル剤および錠剤のような経口固形製剤の場合に採用できる(固形経口製剤の方が液剤より好ましい)。好ましい固形経口製剤は、錠剤である。最も好ましい固形経口製剤は、被覆錠剤である。投与が容易なことから、錠剤およびカプセル剤が最も便利な投薬ユニットの代表であり、それらの場合、言うまでもなく、固形の製薬用担体が採用される。所望であれば、錠剤を標準的な水性または非水性技術により被覆する。
【0094】
本発明の医薬的組成物は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロースを、他のポリマー物質、ゲル類、浸透膜、等張システム、多重コーティング、微粒子化、リポソームおよび/またはミクロスフィアと、所望の放出プロフィールを与える各種の割合で使用して、有効成分の遅延または制御放出を与えるように製剤化することもできる。
一般に、放出制御製剤は、所定の速度で有効成分を所望の期間放出させ、一定の薬理学的活性を維持することができる医薬的組成物である。そのような投薬形態は所定の期間中身体に薬物を供給するものであり、かくして在来の非制御製剤と比較して薬物レベルをより長期間医療的範囲内に維持するものである。
【0095】
米国特許第5,674,533号は、強い末梢鎮咳剤であるモグイステインの投与のための、液体形の放出制御医薬組成物を記載する。
【0096】
米国特許第5,059,595号は、胃耐性錠剤を使用することによる、有機金属障害の治療のための活性剤の制御放出を記載する。
【0097】
米国特許第5,591,767号は、強力な鎮痛特性を有する非ステロイド性抗炎症剤であるケトロラックの制御された投与のための、液体貯蔵経皮パッチを記載する。
【0098】
米国特許第5,120,543号は、膨張性ポリマーから成る、放出制御医薬送達デバイスを記載する。
【0099】
米国特許第5,073,543号は、ガングリオシド−リポソームビークルによりトラップされた栄養因子を含む放出制御製剤を記載する。
【0100】
米国特許第5,639,476号は、疎水性アクリル酸ポリマーの水性分散から誘導されたコーティングを有する安定な固体放出制御製剤を記載する。
【0101】
生物分解可能な微粒子は徐放性製剤への使用が既知である。
米国特許第5,454,566号は、活性成分を含む放出制御粉末を記載する。
【0102】
米国特許第5,733,566号は、駆虫組成物を放出する重合微粒子の使用を記載する。R−トフィソパムの放出制御製剤における使用は、先に記載されていなかった。
【0103】
活性成分の制御放出は、種々のインデューサー、例えば、pH、温度、酵素、水または他の生理学的条件もしくは化合物により刺激され得る。医薬放出の種々の機構が存在する。例えば、一つの態様において、患者への投与後に放出制御成分が膨張し、活性成分の放出に十分に大きい多孔性開口を形成する。“放出制御成分”なる用語は、本明細書の内容において、医薬組成物における活性成分(即ち、R−トフィソパム)の制御放出を助ける、ポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、リポソームおよび/またはマイクロスフェアのような化合物または化合物群と定義される。他の態様において、放出制御成分は生物分解可能であり、体内の水性環境、pH、温度、または酵素に曝されることにより誘導される。他の態様において、ゾル−ゲルを使用し得、活性成分は室温で固体のゾル−ゲルに包含されている。このマトリックスを、ゾル−ゲルマトリックスのゲル形成を誘導し、それにより患者内に活性成分を放出するのに十分高い体温を有する患者、好ましくは哺乳類にインプラントする。
【0104】
医薬的安定化剤はまたトフィソパムまたはその塩を含む組成物の安定化にも使用し得る;許容可能な安定化剤はL−システイン塩酸塩、グリシン塩酸塩、リンゴ酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸およびL−システイン二塩酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0105】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、カプセル、カシェ剤、または錠剤またはエアロゾルスプレーのような別個の単位として存在し得、各々予定された量の活性剤を粉末または顆粒として、または水性液体、非水性液体、または水中油型エマルジョン、または油中水型エマルジョン中の溶液または懸濁液として含む。このような組成物は、薬学の任意の方法で製造し得るが、全ての方法が、活性剤と、1個またはそれ以上の必要な成分を含む担体を会合させる段階を含む。一般に、組成物は、活性成分と、液体担体または細かく分散させた固体担体または両方と、均質にそして完全に混合し、次いで、必要であれば、生産物を所望の見かけに成型することにより製剤する。例えば、錠剤は、所望により1個またはそれ以上のアクセサリー成分との、圧縮または成型により製剤し得る。圧縮錠剤は、粉末または顆粒のような自由に流動する形の活性成分を、所望により1個またはそれ以上の結合剤、充填剤、安定化剤、滑沢剤、不活性希釈剤、および/または界面活性または分散剤と混合して、適当な機械で圧縮することにより製剤し得る。望ましくは、各錠剤は約10mgから約100mgの活性成分を含み各カシェ剤またはカプセルは約10mgから約200mgの活性成分を含む。好ましい態様において、錠剤、カシェ剤またはカプセルは4種の用量の一つを含む:約10mg、約50mg、約100mgおよび約150mgの活性成分。
【0106】
例えば、20mgの活性剤(例えば、光学的に純粋なR−トフィソパム)を含む錠剤は、当分野で既知の方法で製剤し得る。このような錠剤の一つは下記の通りである;
【表1】

【0107】
数種の動物モデルが、ヒトの不安の処置におけるトフィソパムの光学的に純粋なRおよびSエナンチオマーおよびラセミ体トフィソパムの相対的活性の測定に適している。組成物の評価は、新しい状況により生じた不安の測定のために設計された試験における相対的効果に基づく。“高架式迷路”試験において、動物を、二つの開いたアームと二つの閉じたアームの二つの十字(または“プラス”)の形をした装置の上昇させた開口アームに動物を置くことにより、不安を生じさせる。試験動物は全てのアームに自由に近づける。不安緩解作用を、動物が開口アーム上で過ごす時間の割合と、開口アームへの全ての侵入の割合により決定する。この試験はラットおよびマウスにおいて行動的および生理的に確認されている。Pellow, S. et al. (1985) J. Neurosci. Methods, 14, 149-167; Lister, R. G. (1987) Psychopharmacology, 92, 180-185。
【0108】
不安緩解活性の他のアッセイも使用でき、当分野の技術者に既知である。他のアッセイの例は、Geller-Seifter Test、Vogelテストおよび社会的相互作用試験である。更に別のアッセイは、首振り反応アッセイである(Moser, P. C., "The Effect of Novel Axiolytics on the Head-Twitch Response in Mice," British J. Pharmacol. Suppl. 99:248P(1990))。
【0109】
ドーパミンレセプターの遮断のモニターのためのアッセイは当分野で既知であり、本発明に有用である(例えば、Bunzow, J. R., et al., "Cloning and Expression of Rat D2 Dopamine Receptor cDNA," Nature 336:783-787 (1988); Grandy, et al., "Cloning of the cDNA and Gene for a Human D2 Dopamine Receptor," PNAS U.S.A. 86:9762-9766 (1989); Hayes, G., et al., "Structural Subtypes of the Dopamine D2 receptor are Functionally Distinct: Expression of the Clone D2A and D2B Subtypes in a Heterologous Cell Line," Mol. Endocrin. 6:920-926 (1992)。予備的結果は、R−トフィソパムはドーパミン(D2L)レセプターへの結合に関する副作用を現すことができないことを示す。
【0110】
本明細書および特許請求の範囲を通して、“含む”、またはその語尾変化“含み”または“含んで”なる用語は、記載の整数または整数のグループを包含するが、他の整数または整数のグループを排除しないことを意味することは理解されよう。
【0111】
本発明をより詳細に理解するために、以下に実施例を記載する。これらの実施例は説明のみの目的であり、本発明の範囲を如何なる方法でも限定するものと解釈されるべきではない。
【0112】
5.実施例
5.1 トフィソパムエナンチオマーの分割
トフィソパムのエナンチオマーはキラルクロマトグラフィーにより分割された。例えば、トフィソパム(アセトニトリルに42.8mg溶解)をChirobiotic Vカラム(ASTEC, Whippany, NJ)に充填した。化合物のMTBE/ACN 90/10(v/v)、40ml/分での溶出を310nm、2mm通路でモニターした。R(+)エナンチオマーがカラムから溶出する最初の化合物であった。図1、フラクション1参照。R(+)エナンチオマーを回収し、乾燥させ、生物学的アッセイに使用するために貯蔵した。R(−)−トフィソパム(“A'")、S(−/+)トフィソパム(“B”および“B'")および残りのR(+)−トフィソパム(“A”)は共溶出し、次のフラクションとして回収した(例えば、図1、フラクション2)。フラクション1中の約20%のR(+)−トフィソパムが、溶液中で24時間放置した場合、R(−)−トフィソパムに変換する。MTBE/ACN(90/10)溶液中で、室温で、80/20の安定な平行(R+/R−)が、二つの配座異性体の間で観察された。
【0113】
S(−)エナンチオマーをフラクション2から以下のプロトコールにより単離した。フラクション2を乾燥させ、1mlのアセトニトリルに再溶解し、Chirobiotic Vカラムに充填した。ピークBおよびB'をChirobiotic Vカラム上で、更に2回、かすって、再利用した(MTBE/CAN 90/10(v/v)、40ml/分、310nm、2mm通路でモニター)。例えば、図2、リサイクル1−3参照。S(−)−トフィソパムを含むピークを第3リサイクルから回収し、乾燥させ、生物学的アッセイに使用するために貯蔵した(図2、ピークB、第3リサイクル)。
【0114】
出発物質、およびR−およびS−トフィソパムの最終調製物の分析的評価を、Chiral Tech OD GH060カラムを使用して行った(Diacel)(ヘキサン/IPA 90/10、25℃、310nmで検出)。図3aおよび3b参照。R−トフィソパムの最終製品は、分析的クロマトグラフィーで98%純粋であった。S−トフィソパムの最終製品は分析的クロマトグラフィーで95%純粋であった。
【0115】
5.2 不安緩解活性
a.試験物質
盲検定における経口投与のために、トフィソパム、R−トフィソパムまたはS−トフィソパムの乾燥製品を2%トゥイーン80/5%DMSOに溶解した。ジアゼパム(Sigma, U.S.A.)を同様にDMSO(Merck, Germany)、蒸留水およびトゥイーン80(和光純薬工業株式会社、日本)に溶解した。
【0116】
b.動物
MDS Panlabs Taiwan, Ltd.の動物繁殖センターから提供された雄ロング・エバンスラットを使用した。動物の空間の割り当ては下記の通りであった:6匹のラットで45×23×15cm。ラットを、陽圧アイソレーター(NuAire(登録商標), Mode: Nu-605, 気流速度50±5ft/分, HEPA Filter)中のAPEC(登録商標)(Allentown Gaging, Allentown, NJ 0851, U.S.A.)ケージに飼った。全ての動物を、MDS Panlabs Taiwan Laboratoryで、12時間明暗サイクルの制御された温度(22℃−24℃)と湿度(60%−80%)の環境で少なくとも1週間、使用前に維持した。ラットのための標準実験用飼料(Fwusow Industry Co., Limited, Taiwan)と水道水への自由な接近を認めた。動物の飼育、実験および処分を含む本実験の全ての態様は、一般に、International Guiding Principles for Biomedical Research Involving Animals (CIOMS Publication NO. ISBN 92 90360194, 1985)にしたがって行った。
【0117】
C.アッセイプロトコール
ジアゼパムのようなベンゾジアゼピンは、直接5−ヒドロキシトリプタミン(5-HT)レセプターアゴニスト5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン(5-MeODMT)により誘導される首振りを強めることが示されている。Moser, P. C., "The Effect of Novel Axiolytics on the Head-Twitch Response in Mice," British J. Pharmacol. Suppl. 99:248P(1990)。これらのアッセイを基にして、3mg/kg 5−MeODMTの腹腔内注射1時間前に、ラットに試験物質を経口投与した。注射後、1−5分の期間の首振りの数を記録した(表1)。
【0118】
【表2】

【0119】
試験投与量が増えるにつれて、トフィソパムおよびR−トフィソパムを投与したラットで観察された首振りの数は、用量依存的に増加する。
【0120】
上記の本発明の態様は、単に例示を意図するものであり、本明細書に記載の具体的な方法の多くの相同物を認識するか、当業者は慣用に過ぎない実験を使用して確認できる。このような相同物の全てが本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲によりカバーされる。他の態様は特許請求の範囲内である。
本明細書に記載の全ての引用文献は、引用により本明細書に包含させる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】ChirobioticVカラムを使用する、R―トフィソパムの予備的分割を示すクロマトグラムである。
【図2】ChirobioticVカラムおよびシェイブリサイクル(shave recycling)技法を使用する、S―トフィソパムの予備的分割を示すクロマトグラムである。
【図3A】トフィソパムのエナンチオマーの、最終調製物のクロマトグラムである。
【図3B】トフィソパムのエナンチオマーの、最終調製物のクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不安または不安障害の処置を必要とするヒトに、実質的にそのSエナンチオマーを含まない、治療的有効量のR−トフィソパムまたは医薬的に許容されるその塩を投与することを含む、ヒトにおける不安または不安障害を処置する方法。
【請求項2】
不安または不安障害の予防を必要とするヒトに、実質的にそのSエナンチオマーを含まない、R−トフィソパムまたは医薬的に許容されるその塩を、該不安または不安障害の予防に十分な量投与することを含む、不安または不安障害を発症するリスクのあるヒトにおける、不安または不安障害を予防する方法。
【請求項3】
R−トフィソパムを静脈内輸液で、経皮送達でまたは、錠剤、カプセルまたは液体懸濁剤として経口で投与する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
投与するR−トフィソパムまたは医薬的に許容されるその塩の量が約10mgから約1200mgである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
投与する量が約50から約600mgである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
投与する量が約100から約400mgである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
該量を一日当たり1回から4回の単位用量で投与する、請求項4記載の方法。
【請求項8】
該量を一日当たり1回から2回の単位用量で投与する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
R−トフィソパムまたは医薬的に許容されるその塩の量が、トフィソパムの総重量の約90重量%よりも大きい、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項10】
実質的にそのSエナンチオマーを含まない該R−トフィソパムまたは医薬的に許容されるその塩の所定量を、医薬的に許容される担体と共に投与する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項11】
更に該ヒトを不安または不安障害を緩解、最小化または予防するために設計された心理療法で処置することを含む、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項12】
更に該ヒトを抗うつ剤で処置することを含む、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項13】
抗うつ剤が三環系抗うつ剤である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
三環系抗うつ剤がアミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、(+)−トリミプラミン、アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリンおよびプロトリプチリンからなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
抗うつ剤が、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、(±)−ベンラファキシン、ブプロピオン、ネファゾドン、トラゾドン、フェネルジン、トラニルシプロミン、(−)−セレジリンおよびモクロベミドからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
更に該ヒトを1,4−ベンゾジアゼピンで処置することを含む、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項17】
1,4−ベンゾジアゼピンがジアゼパム、ロラゼパムおよびアルプラゾラムからなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
更に該ヒトを抗精神病薬で処置することを含む、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項19】
R−トフィソパムを持続性または放出制御製剤で投与することを含む、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項20】
該投与を一日当たり1回から4回行う、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項21】
不安障害が広場恐怖症を伴わないパニック障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項22】
不安障害が広場恐怖症を伴うパニック障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項23】
不安障害がパニック障害の病歴のない広場恐怖症である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項24】
不安障害が特定の恐怖症である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項25】
不安障害が社会恐怖症である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項26】
不安障害が強迫性障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項27】
不安障害が外傷後ストレス障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項28】
不安障害が急性ストレス障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項29】
不安障害が全般性不安障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項30】
不安障害が一般身体疾患による不安障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項31】
不安障害が物質誘発性不安障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項32】
不安障害が特定不能の不安障害である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項33】
不安障害が鬱病と共存する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項34】
R−トフィソパムの該治療的有効量が、ラセミ体トフィソパムの使用に随伴する副作用を引き起こすには至らない量である、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項35】
有効量のR−トフィソパムまたは医薬的に許容できるその塩(実質的にそのSエナンチオマーは含まない)を、1種またはそれ以上の医薬的担体、希釈剤、および/または添加剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項36】
該組成物が制御放出医薬組成物である、請求項35記載の組成物。
【請求項37】
該組成物が不安および不安障害の処置用に適合させたものである、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
ヒトにおける不安または不安障害の処置用医薬組成物の製造のための、R−トフィソパムの使用。
【請求項39】
不安または不安障害を発症するリスクのあるヒトにおける不安または不安障害の予防用医薬組成物の製造のための、R−トフィソパムの使用。
【請求項40】
R−トフィソパムまたは医薬的に許容されるその塩を約10mgから約1200mg投与する、請求項38または請求項39記載の使用。
【請求項41】
投与するR−トフィソパムの量が約50から約600mgである、請求項40記載の使用。
【請求項42】
投与するR−トフィソパムの量が約100から約400mgである、請求項40記載の使用。
【請求項43】
該量を一日当たり1から4の単位で投与する、請求項40記載の使用。
【請求項44】
R−トフィソパムまたは医薬的に許容されるその塩の量が、トフィソパムの総重量の約90重量%よりも大きい、請求項40記載の使用。
【請求項45】
該医薬組成物が更に抗うつ剤、ベンゾジアゼピンまたは抗精神病薬を含む、請求項38または請求項39記載の使用。
【請求項46】
不安障害が、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、社会恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、一般身体疾患による不安障害、物質誘発性不安障害および特定不能の不安障害からなる群から選択される、請求項38または請求項39記載の使用。
【請求項47】
R−トフィソパムを、R(+):R(−)エナンチオマーが80:20の比率で投与する、請求項35から請求項37のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項48】
R−トフィソパムを、R(+):R(−)エナンチオマーが80:20の比率で投与する、請求項38から請求項46のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2007−211028(P2007−211028A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136619(P2007−136619)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【分割の表示】特願2000−578009(P2000−578009)の分割
【原出願日】平成11年10月27日(1999.10.27)
【出願人】(500083684)ベラ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】VELA PHARMACEUTICALS INC.
【Fターム(参考)】