説明

不溶性剤を送達するための組成物

リキシバプタンのin vivo送達を必要とする被験体に、リキシバプタンをin vivo送達するための組成物、および該組成物を作製する方法を記載する。組成物は、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤(例えばリキシバプタン)および実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料(例えばビタミンEセミエステル)を含み、ここで薬理学的活性剤は、前記マトリックス形成材料中に分散され、そして組成物は、生理学的媒体に曝露された際、前記の実質的に水不溶性である薬理学的活性剤を送達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の請求
[0001]本出願は、2009年8月25日出願の米国特許出願第61/236,865号に優先権を請求し、該出願はその全体が本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
[0002]本発明は、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤を送達するための組成物、該組成物を作製する方法、および該組成物を使用した送達法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]不溶性薬理学的活性剤、例えばイトラコナゾール、プロゲステロン、シクロスポリン、カルバマゼピン、フェノフィブレート、アンホテリシンB、ナプロキセン、およびグリブリドは、水性溶媒における溶解度が低いため経口吸収が困難である。Noyes−Whitney等式(Alfred Martinら, Physical Pharmacy, 第3版, 575ページ)によると、薬剤溶解速度は、その溶解度に正比例し、そしてしたがって、不溶性薬剤は、本質的に溶解が遅い。多くの不溶性薬理学的活性剤は、薬剤溶解にさらなるエネルギー障壁となりうる結晶型で存在する。
【0004】
[0004]薬理学的活性剤(例えば薬剤)が、経口投与後に、ヒト胃腸管に移動するにつれて、胃、腸および結腸における典型的な滞留時間は、それぞれ、約30分、3時間および30時間である。薬理学的活性剤は、吸収を可能にするため、これらの時間枠で溶解されなければならない。遅い溶解速度を有する薬理学的活性剤、すなわち剤のかなりの部分が胃腸管の通過中に溶解されない剤は、単純に、完全には吸収されないであろう。
【0005】
[0005]溶解が遅いことが、不溶性薬理学的活性剤が経口吸収されない主な理由であり、そしてそうでなければ有望である薬剤候補化合物が、さらなる薬剤開発に行き詰まる原因となりうることがよく理解される。緩慢な溶解はまた、しばしば、患者間で吸収変動性が高く、吸収に対する食べ物の影響が大きく、そして用量−曝露関係が存在しないことにも関連する。これらは各々、薬剤の成績が最適以下になることにも寄与しうる。発見される薬剤物質の40〜60%は不溶性であると概算されており、そしてこれらの多くは経口吸収の問題に悩まされている。
【0006】
[0006]不溶性薬理学的活性剤の溶解度および/または溶解速度を改善するために、いくつかのアプローチが発展してきている。共通のアプローチには:不溶性薬理学的活性剤を、非晶質型を含む、より可溶性である塩または結晶型に変換すること;より迅速な溶解のため、不溶性薬理学的活性剤の粒子サイズを減少させること;水溶性構成要素、例えば溶媒および界面活性剤等を含む液体媒体中に不溶性薬理学的活性剤を溶解して、「液体配合物」(例えばエマルジョンなど)を形成すること;ならびに水溶性または親水性構成要素、例えば固形ポリマーまたは脂質を含む固形マトリックス中に不溶性薬理学的活性剤を溶解するかまたは分散させて、「固形分散配合物」を形成することが含まれる。
【0007】
[0007]上記アプローチは、いくつかの成功した薬剤産物を調製するかまたは配合する際に適用されてきている。不溶性ナプロキセンは、ナトリウム塩を形成することによって可溶性になり、これは、薬剤ナプロシン(登録商標)の活性成分である。マイクロ化によるサイズ減少は、薬剤プロメトリウム(登録商標)(マイクロ化プロゲステロン)およびミクロナーゼ(登録商標)(マイクロ化グリブリド)を導いた。水溶性液体組成物中の薬剤の溶解は、例えば、サンディミュン(登録商標)(シクロスポリン・エマルジョン)およびネオーラル(登録商標)(シクロスポリン・マイクロエマルジョン)などの薬剤の基礎である。水溶性ポリマー、プロピレングリコール(PEG)を含む固形分散マトリックス中の不溶性グリセオフルビンの分散は、薬剤Gris−PEG(登録商標)を生じた。
【0008】
[0008]上記アプローチは、薬剤溶解度および溶解の物理化学理論に基づく。例えば、薬理学的活性剤の塩または非晶質型は、一般的に、非修飾薬理学的活性剤自体よりも、より可溶性であり、そしてより迅速に溶解されることが知られる。粒子サイズ減少によって、より大きい表面積が生じ、そしてより大きい表面積は、Noyes−Whitney等式(Alfred Martinら, Physical Pharmacy, 第3版, 575ページ)によって予測されるように、より迅速な溶解速度を導く。液体配合物はまず、薬理学的活性剤の結晶を水溶性溶媒中に溶解することによって、これを破壊し、そして次いで、こうした水親和性(water−liking)溶液は、溶解した薬理学的活性剤を運び、胃液などの別の水性環境内に容易に混合可能であり、迅速な溶解を達成する。同様に、固形分散配合物において、不溶性薬理学的活性剤を、やはりまず、可溶性成分、例えばPEGまたはPVPで形成された固形マトリックス中に溶解するかまたは分散し、次いで、マトリックス形成成分が親水性であるために、該マトリックスを水性生物学的環境内に容易に混合して、溶解した薬理学的活性剤の迅速な溶解を提供可能である。
【0009】
[0009]本質的に、液体配合物および固形分散配合物は、同じ原理に基づき、すなわち(1)まず水溶性または親水性マトリックス(液体または固形)中に不溶性薬理学的活性剤を溶解して、薬理学的活性剤の結晶構造を破壊し、そして(2)すでに溶解されたかまたは分散した薬理学的活性剤を含む水親和性マトリックスと生物学的水性環境(胃液または腸液)を迅速に混合して、迅速な溶解を可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Alfred Martinら, Physical Pharmacy, 第3版, 575ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0010]実際には、これらのアプローチは、いくつかの不都合な点を有する。いくつかの不溶性薬理学的活性剤、特にイオン化可能な基を欠くものは、より可溶性である塩または結晶型に変換不能である。マイクロ化またはナノ化による粒子サイズ減少は、プロセシングおよび安定性の問題とともに、溶解限界を提示し、これはマイクロサイズまたはナノサイズ薬理学的活性剤がなお、高い度合いの結晶化度を所持しうるためである。液体配合物は、溶媒蒸発のため、薬剤沈降およびパッケージングの問題を提示する。さらに、非固形配合物は、化学的に不安定である傾向があり、そしてカプセル−シェル不適合性を示し、これは貯蔵の際、漏れる可能性につながる。固形分散配合物は、しばしば、長期に渡って、不溶性薬理学的活性剤の再結晶化を被り、溶解減少を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0011]慣用的方法において用いられる水溶性マトリックス材料の代わりに、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料を使用することによって、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤を迅速に溶解するようにし、そして/または該活性剤に、改善された生物学的利用能を与えることも可能であり、これは直感とは相容れないように見える。にもかかわらず、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤の溶解および経口吸収の驚くべき増進は、顕著に広い有用性を提供することが立証されてきている。
【0013】
[0012]明確にするために、組成物は、徐放配合物に関するのではない。水不溶性マトリックス形成材料を用いて、特定の薬剤の溶解を遅延させる配合物とは異なり、本明細書に記載する組成物および方法は、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤の迅速な溶解を達成するためである。さらに、本明細書記載の組成物は、溶解増進が典型的には必要とされない水溶性薬理学的活性剤に関するのではない。
【0014】
[0013]1つの側面において、薬学的組成物には、油不含および実質的に水不含の固形分散物を含む単一経口投薬型が含まれ、分散物は、療法的に有効な量のリキシバプタン、および重量50%またはそれより多いビタミンEセミエステル、例えばコハク酸ビタミンE(VES)を含む。
【0015】
[0014]1つの側面において、組成物はさらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、硫酸アルキル塩、例えばラウリル硫酸ナトリウムなどである。分散物は、実質的に結晶リキシバプタンを含まないことも可能であり、そして重量60%またはそれより多い、重量70%またはそれより多い、あるいは重量80%またはそれより多いビタミンEセミエステルを含むことも可能である。さらに別の側面において、組成物はさらに崩壊剤を含んでもよい。崩壊剤は架橋ポリ(ビニルピロリドン)であってもよく、そして分散物はさらに、ポリマー、または植物タンパク質、例えばゼインなどを含んでもよい。
【0016】
[0015]別の側面において、薬学的組成物を作製する方法は、非水性溶媒中に、ある量のリキシバプタンを溶解し、該非水性溶媒中に、ある量のビタミンEセミエステルを溶解し、そして該溶媒を除去し、それによってリキシバプタンおよびビタミンEセミエステルを含む固形分散物を形成する工程を含む。この側面において、分散物は、結晶リキシバプタンを実質的に含まない。
【0017】
[0016]1つの側面において、方法は、固形分散物を崩壊剤と混合する工程もまた含む。方法は、固形分散物を界面活性剤と混合する工程もまた含む。別の側面において、方法は、非水性溶媒中に、ある量の水溶性タンパク質を溶解し、そしてスプレー乾燥によって溶媒を除去する工程を含む。
【0018】
[0017]1またはそれより多い態様の詳細を、付随する図および以下の説明に示す。他の特徴、目的、および利点は、説明および図から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】[0018]図1A〜1Bは、保存条件に対する曝露後のリキシバプタン配合物の溶解プロファイルを例示する。
【図2】[0019]図2は、リキシバプタンおよびリキシバプタン配合物の試料に関するX線粉末回折スペクトルを示す。
【図3】[0020]図3A〜3Bは、保存条件に対する曝露後のリキシバプタン配合物のTGAおよびDSC結果を示す。
【図4】[0021]図4は、リキシバプタン配合物の溶解プロファイルを示す。
【図5】[0022]図5は、リキシバプタン配合物のTGAおよびDSC結果を示す。
【図6】[0023]図6は、リキシバプタンおよびリキシバプタン配合物のDTA結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0024]固形分散配合物は、ときに、調製プロセスに応じて、異なる名称で呼ばれる。例えば、固形分散物は、まず、融解したポリマーまたは脂質中に薬理学的活性剤を溶解し、そして次いで融解した溶液を冷却して、半固形マトリックスを形成することによって調製された場合、「熱融解(hot melt)」配合物と称されうる。水溶性界面活性剤、例えばビタミンE TPGS、あるいは水溶性または親水性ポリマー、例えば低融点(<60℃)のポリエチレングリコール(PEG)またはその混合物が、一般的に熱融解配合物中で用いられる。
【0021】
[0025]他の場合、固形分散物は、まず、薬理学的活性剤および水溶性または親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンまたはHPMCを、溶媒(エタノール等)に溶解し、そして次いで、溶液をスプレー乾燥して固形分散物を得ることによって調製された場合、「スプレー乾燥非晶質配合物」と呼ばれる。あるいは、融解脂質またはポリマー中に薬理学的活性剤を溶解し、そして次いで、スプレー凝固させて粒子を形成することによって、固形分散物を調製する。調製プロセスまたは名称の相違には関わらず、固形分散配合物は、同じ組成特徴、すなわち、水溶性成分によって形成されたマトリックス中に溶解されたかまたは分散した不溶性薬理学的活性剤、および溶解増進の同じ概念、すなわち不溶性薬理学的活性剤は、水溶性または親水性マトリックス形成成分を用いることによって迅速に溶解されるようになるという概念を共有する。
【0022】
[0026]ほとんど水溶性でない薬理学的活性剤の溶解速度および生物学的利用能を増加させる手段として、過去40年間、固形分散系に非常に関心が持たれてきたが、その商業的適用は非常に限定されており、これは主に、製造および薬剤安定性に伴う問題のためであった。薬理学的活性剤の固形分散物は、一般的に、熱融解法によって産生された。通常は半固形である材料は、冷却することによって硬化する。これらは次いで、微粉砕され、篩に掛けられ、比較的多量の賦形剤と混合され、そして硬ゼラチンカプセル内に被包されるか、または圧縮されて錠剤になる。これらの操作は、投薬型製造のためのスケールアップが困難であった。固形分散配合物は、熱融解プロセスにおいて、薬理学的活性剤の潜在的な分解を受け、そして自由に流動する特性が欠けているため、慣用的なカプセル充填剤または錠剤プレス機を用いた被包または錠剤圧縮が妨げられる。さらに、「固形分散物」または「熱融解物」は、ほぼ独占的に、150℃未満の温度で融解する、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはポリビニルピロリドン酢酸ビニルコポリマー(PVPVA)などの合成ポリマーを用いて調製される。安全性の限界のため、ヒト被験体に経口投与可能なこうしたポリマーの量は、非常に限定される可能性もあり、それによって、ヒト消費、特に慢性使用に関する消費のために設計される産物において、その使用が妨げられる。
【0023】
[0027]本明細書において、用語「水不溶性」は、水溶液(例えば水、生理学的食塩水、注射可能デキストロース溶液等)における薬理学的活性剤の限定された溶解度を指す。米国薬局方/米国医薬品集(USP/NF)は、一般的に、溶解度を、特定する温度で、1グラムの薬理学的活性剤を溶解するのに必要な溶媒の体積に関して表す(例えば、25℃での、300mL水または5mLエタノール中の1gアスピリン)。他の参考文献は、溶解度を記載するのにより主観的な用語を用いる可能性もあり、例えばJoseph RemingtonおよびAlfonso Gennaro: Mack Publishing, 1995によるRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa.由来の以下の表に示されるものがある。
【0024】
【表1】

【0025】
したがって、本明細書において、「水不溶性薬理学的活性剤」には、水を溶媒として用いた際の、最後の4つの溶解度カテゴリー、すなわち「難溶性」、「溶けにくい」、「非常に溶けにくい」、および「実質的に不溶性または不溶性」が含まれる。したがって、句「実質的に水不溶性である活性剤」は、上記表1に提供する溶解度の定義にしたがって、こうした剤が、難溶性であるか、溶けにくいか、または非常に溶けにくいか、あるいは実質的に不溶性であることを意味する。
【0026】
[0028]本明細書において、用語「水不溶性」は、疎水性、脂溶性、親油性、および類似の用語と交換して使用可能である。
[0029]本明細書において、用語「実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料」は、実質的に水不溶性である固形材料であって、好ましくは乾燥し、非粘着性であり、自由に流動し、そして/または特に、こうした材料が、その中に分散した、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤を含有する場合、非吸湿性である、固形粒子または顆粒を形成可能である前記材料を指す。実質的に水不溶性である固形材料は、例えば、1.0g未満/100g水、0.1g未満/100g水、0.01g未満/100g水、0.001g未満/100g水、または0.0001g未満/100g水の溶解度を有してもよい。実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料中で分散させた際、薬理学的活性剤が、実質的に非晶質型で存在するか、あるいは例えば示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析装置(DTA)またはX線粉末回折(XRPD)を含んでもよい適切な方法によって決定されるように、元来の結晶型を含まないことが好ましい。本明細書において、用語「実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料」には、いかなる水溶性液体または半固形材料も含まず、特にPEG、PVP、HPMC、HPC、クレモホール、ゲルシア(gelucire)、ビタミンE TPGS、水溶性ワックス、界面活性剤などの材料、あるいはその水溶性賦形剤、塩、または添加物を含まない。
【0027】
[0030]好ましい実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料は、水不溶性栄養分(単数または複数)を含む。本明細書において、用語「栄養分(単数または複数)」は、ヒト食餌で見られる天然供給源由来であり、そしてヒト消化系によって消化可能であり、栄養上の利点を提供する、すなわち酵素的に消化可能である、成分を指す。本明細書で使用するように意図される栄養分は、伝統的に、食品添加物、栄養補助剤として、あるいは薬理学的活性剤またはマトリックス形成材料以外の目的のための薬剤成分として用いられる。驚くべきことに、これらの不溶性栄養分は、溶解を増進し、そして実質的に水不溶性である薬理学的活性剤の経口吸収を増加させる。
【0028】
[0031]任意の理論または機構によって束縛されることなく、水不溶性である栄養分が、以下の機構の1またはそれより多くによって、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤の溶解および経口吸収の改善を提供することが提唱されている:
[0032]まず、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤は、本明細書記載のプロセスにしたがって、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料(例えば栄養分)中に分散し、ここで、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤は、非晶質、部分的結晶、または結晶型で存在し、これは、取り巻くマトリックスが取り除かれた際、溶解のため、エネルギー的により好ましい。
【0029】
[0033]水性環境(例えば胃腸液)に曝露された際、水不溶性マトリックスは、不溶性の性質のため、薬理学的活性剤をマトリックス中に保持し続ける。これによって、薬理学的活性剤が、水性環境内に直ちに放出される(「投げ捨てられる」)ことが防止される。即時放出は、水性環境において、溶解度を超える迅速な濃度増加を導く可能性もあり、これは続いて、薬理学的活性剤が、例えば腸における潜在的な吸収部位に到達する前に、薬理学的活性剤の迅速な沈降を導きうるため、好ましくない。こうした未成熟な薬剤放出は、非常に水溶性であるマトリックス中の不溶性薬剤が水性環境への曝露に際して即時放出される、他のアプローチと共通である。
【0030】
[0034]本明細書記載の水不溶性マトリックスを、局所放出されるさらなる外因性因子が存在する場合にのみ、薬剤を放出するように設計することも可能である。局所放出される外因性因子は、例えば、水不溶性消化可能マトリックスを消化する胃腸酵素、あるいは水不溶性マトリックスを溶解する胆汁酸塩または界面活性剤であってもよい。マトリックスには、所望の外因性因子によって消化されるかまたは溶解されるように選択された栄養分が含まれていてもよい。酵素または胆汁が誘導するこの局在化された放出によって、捕捉された薬理学的活性剤の放出前に、マトリックス粒子がまず、吸収部位に到達することが可能となり、放出は、栄養分の天然消化/吸収速度と類似の速度で起こるであろう。
【0031】
[0035]特定の態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、脂質、リン脂質、ビタミン、補酵素またはその組み合わせを含む、固形で不溶性であり、そして酵素的に消化可能な栄養分である。
【0032】
[0036]別の態様において、マトリックス形成材料は、合成ポリマーおよび天然存在セルロースを含み、腸溶コーティングポリマー、例えばポリメタクリレートまたはフタレートを除く、固形で、実質的に水不溶性であり、そして酵素的に消化可能であるかまたは胆汁可溶性物質である。腸溶コーティングポリマーは、中性pHで水溶性である。
【0033】
[0037]さらに別の特定の態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料は、固形で、実質的に水不溶性であり、そして消化可能である植物タンパク質、ミルクタンパク質および動物タンパク質である。
【0034】
[0038]好ましい態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料は、ゼイン、カゼイン、乳清、コラーゲン、ゼラチン、不溶性アミノ酸、タンパク質加水分解物、またはその組み合わせである。
【0035】
[0039]別の好ましい態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料には、ビタミンE誘導体、例えばビタミンEセミエステル誘導体であり、ここで、「ビタミンE」は、トコフェロール、トコトリエノール、およびその混合物を指す。トコフェロールは、その多くがビタミンE活性を有する、多様なメチル化フェノールの化学的化合物種である。トコトリエノールは、イソプレノイド・テール中の不飽和によって異なる、関連化合物種である。トコフェロールおよびトコトリエノールには、アルファ、ベータ、ガンマおよびデルタ類似体が含まれる(スキーム1)。
【0036】
[0040]スキーム1.トコフェロールおよびトコトリエノールの化学的構造
【0037】
【化1】

【0038】
[0041]トコフェロールセミエステル誘導体は、一般式I
【0039】
【化2】

【0040】
または一般式II
【0041】
【化3】

【0042】
のトコトリエノールセミエステル誘導体によって与えられ、式中、R、R、およびRは、各々独立に−Hまたは−CHであり、そしてnは0〜7の範囲の整数である。
[0042]本明細書において、用語「ビタミンEセミエステル」には、短鎖ジカルボン酸とアルファトコフェロール(または他のトコフェロールまたはトコトリエノール)のヘミエステルである、ビタミンE誘導体が含まれ、ここで、ジカルボン酸は、一般的なタイプの式:
HOOC−(CH−COOH
を有する。短鎖ジカルボン酸は、シュウ酸(n=0)、マロン酸(n=1)、コハク酸(n=2)、グルタル酸(n=3)、アジピン酸(n=4)、ピメリン酸(n=5)、スベリン酸(n=6)、およびアゼライン酸(n=7)を含む(スキーム2)。
【0043】
スキーム2:アルファ−トコフェロールセミエステル誘導体:
【0044】
【化4】

【0045】
[0043]ラセミ体アルファトコフェロールの化学名は、(±)−2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)−6−クロマノール(CAS登録番号、10191−41−0)。これは3つのキラル中心を含有し、8つの異性体を生じる。天然存在d−異性体型は、(2R,4’R,8’R)−アルファ−トコフェロールまたはRRR−アルファ−トコフェロールを表す。
【0046】
[0044]本明細書において、アルファ−コハク酸トコフェロールは、好ましくは、d−アルファ−酸性コハク酸トコフェロール(CAS番号4345−03−3)である。アルファ−コハク酸トコフェロールは、場合によって、dl−アルファ−酸性コハク酸トコフェロールなどの異性体を含んでもよい。これはさらに、ベータ酸性コハク酸トコフェロール、デルタ酸性コハク酸トコフェロール、ガンマ酸性コハク酸トコフェロール、アルファ−コハク酸トコトリエノール、ベータ−コハク酸トコトリエノール、ガンマ−コハク酸トコトリエノール、デルタ−コハク酸トコトリエノール、またはその異性体を含んでもよい。用語コハク酸ビタミンE(VES)またはアルファ−コハク酸トコフェロール(ATS)は、d−アルファ酸性コハク酸トコフェロールを指し、そして交換可能に使用される。
【0047】
[0045]本明細書において、アルファ−トコフェロールセミエステル誘導体の「塩」は、薬学的に許容されうる無機対イオンのイオン性塩、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等、ならびに有機対イオン、例えばアミン、リジン、アルギニン等を含む。
【0048】
[0046]特定の態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料として用いられるビタミンEセミエステルは、アルファ−コハク酸トコフェロール、その塩または溶媒和物を含む。
【0049】
[0047]ビタミン活性を持つアルファ−コハク酸トコフェロールを含む上記トコフェロール誘導体はすべて、正確には「ビタミンE」として称されうる。酸化防止剤として、そしてビタミンE欠乏の食餌補助剤として用いられる「ビタミンE」の最も一般的な型は、トコフェロールおよび酢酸トコフェロールである。可溶化剤または乳化剤として、ビタミンE TPGS(コハク酸トコフェロールポリエチレングリコール)が、経口および非経口薬剤配合物において、主に界面活性剤として用いられる。
【0050】
[0048]アルファ−トコフェロールセミエステル誘導体は、ビタミンE誘導体の他の3つの一般的なタイプ、すなわちトコフェロール、トコフェロールモノエステル(例えば酢酸エステル)、およびコハク酸トコフェロールポリエチレングリコール(また、トコフェロールPEGエステルまたはビタミンE TPGSとも称される)とは構造的および機能的に異なる。セミエステルは、オープンな(エステル化されていない)カルボン酸基を含有し、そしてイオン化可能であり、一方、すべての他の型のビタミンEはイオン化不能である。したがって、配合物中の構成要素として含まれる場合、セミエステルは、モノエステルまたは親トコフェロールとは異なって振る舞う。モノエステルまたは親トコフェロールは、親油性であり、そして油可溶性であるが、セミエステルは水または油のどちらにも不溶性であり、そしてしたがって、親水性または疎水性薬理学的活性剤いずれにとっても劣った溶媒である。外見上、アルファ−コハク酸トコフェロールは、75℃の融点を持つ、結晶、水不溶性固体であり、一方、トコフェロールおよび酢酸トコフェロールは、油性液体であり、そしてビタミンE TPGSは、約50℃の融点を持つ、水溶性半固体である。明確にするため、トコフェロール、トコフェロールモノエステル(例えば酢酸エステル)およびビタミンE TPGSは、用語「実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料」に含まれない。
【0051】
[0049]別の態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料は、マトリックス組成物の重量10%〜95%の範囲を含み、好ましくは25%〜90%の範囲内、そしてより好ましくは重量約50%〜80%である。
【0052】
[0050]別の態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料は、25%を超えない重量濃度で、ポビドンと組み合わせてアルファ−コハク酸トコフェロールを含む。
【0053】
[0051]さらに別の態様において、組成物は、前記マトリックス形成材料の非存在下で、前記薬理学的活性剤に比較して、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤の改善された生物学的利用能を提供する。
【0054】
[0052]さらに別の態様において、組成物は、水性媒体中、前記マトリックス形成材料の非存在下での水不溶性薬理学的活性剤に比較して、より迅速な溶解を示す。
[0053]特定の態様において、組成物には、(1)実質的に水不溶性である薬理学的活性剤および(2)アルファ−コハク酸トコフェロールが含まれ、ここで組成物は、前記の実質的に水不溶性である薬理学的活性剤の生物学的利用能を改善し、そして前記組成物は、自由に流動する、圧縮可能で、そして非流体(non−hydroscopic)粉末の形である。
【0055】
[0054]別の態様において、組成物には、(1)実質的に水不溶性である薬理学的活性剤および(2)アルファ−コハク酸トコフェロールが含まれ、ここで薬理学的活性剤は、非修飾薬理学的活性剤に比較して、より迅速な溶解を示し、そして総マトリックス形成成分は、固形組成物重量の20%〜95%の範囲である。
【0056】
[0055]本明細書において、用語「粉末化された自由に流動する固体」または「乾燥した自由に流動する固形粒子」は、60度未満の安息角によって定義されるような、自由に流動する特性を有する、標準的10メッシュ篩(2mm)を通過可能な小粒子の固体塊を指す。バルクの固形材料を水平表面上に注ぐと、円錐形の山が形成されるであろう。山の表面および水平表面の間の内角は、「安息角」として知られ、そして材料の密度、表面積、および摩擦係数に関連する。低い安息角を持つ材料は、高い安息角を持つ材料よりも、より平らな山を形成する。言い換えると、安息角は、山が地面と形成する角度である。
【0057】
[0056]本明細書において、用語「非晶質」は、材料が、原子の位置の長距離秩序を欠いており、そして温度に応じて、固形または液体の(例えば自由に流動する)物理的特性を示しうる状態を指す。典型的には、こうした材料は、特徴的なX線回折パターンを生じず、そして示差走査熱量測定(DSC)によって調べた際、明確な融解事象を欠く。結晶サイズが非常に小さい場合は、真に非晶質な固体および結晶固体の間の区別を行うことは困難でありうる。非晶質材料であっても、化学結合の性質のため、原子長のスケールで、ある程度の短距離秩序を有する。したがって、マトリックス中の薬理学的活性剤は、重量約50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%、または99.99%またはそれよりも多くが非晶質であってもよい。
【0058】
[0057]本明細書において、用語「溶解」は、溶媒内に固形物質を溶解して、溶液を得るプロセスを指す。薬学的慣例において、溶解は、通常、速度、動力学、および薬理学的活性剤が、投薬型から、試験容器中の選択された溶解媒体内に(in vitro溶解)または体内の胃液などの生物学的環境内に(in vivo溶解)溶解される度合いを指す。溶解は、標準的USP溶解装置(1型または2型)によって試験された、典型的なin vitro溶解媒体、例えば水、何らかの界面活性剤を含む水、シミュレーションされた胃液、USPまたはシミュレーションされた腸液、USPの中の薬理学的活性剤のin vitro溶解速度を指す。一般的に、迅速でそして完全なin vitro溶解は、in vivoでの薬理学的活性剤のより優れた吸収の指標である。
【0059】
[0058]組成物は、場合によって、1またはそれより多い、ときに賦形剤と称される添加物と組み合わされてもよい。粉末化自由流動非晶質薬学的組成物の錠剤化または被包または溶解特性を改善するかまたは制御するために組み合わせてもよい賦形剤には、限定されるわけではないが、(1)結合剤、(2)充填剤、(3)湿潤剤、(4)崩壊剤、(5)徐放マトリックス形成剤、(6)潤滑剤または流動促進剤、(7)酸化防止剤、(8)緩衝剤、(9)着色剤またはフレーバー剤、(10)コーティング剤が含まれうる。あるいは、薬学的組成物中に添加剤が含有されてもよい。これらの添加剤の機能および選択は、当該技術分野に周知であり、そして本明細書にその全体が援用される、Herbert LiebermanらによるPharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol.1−3などの参考文献にさらに記載される。
【0060】
[0059]別の態様において、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤を、必要とする被験体に送達するための方法であって、前記被験体に有効量の組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0061】
[0060]さらに別の態様において、実質的に水不溶性であるマトリックス中に分散される実質的に水不溶性である薬理学的活性剤を含む迅速溶解粒子であって、自由に流動し、圧縮可能でありそして非流体である粉末の形である、前記粒子を提供する。
【0062】
[0061]実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料中に分散された、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤あるいはその塩または溶媒和物を含む固形マトリックスを調製するためのプロセスもまた提供する。該プロセスには:(a)実質的に水不溶性である薬理学的活性剤あるいはその塩または溶媒和物、および実質的に水不溶性であるそのマトリックス形成材料を、1またはそれより多い溶媒中に溶解し;そして(b)適切な条件下で溶媒(単数または複数)を除去する工程が含まれる。特定の態様において、工程(b)は、適切な手段、例えば真空乾燥、空気乾燥またはスプレー乾燥によって実行される。他の態様において、工程(b)は、直径約1μm〜約1mmの範囲のサイズの粒子を形成するよう実行される。別の態様において、プロセスはさらに、微粉砕するか、ボールミル粉砕するか、粉末状にするかまたはジェットミル粉砕して、自由に流動し、圧縮可能でありそして非流体である粉末を形成する工程を含む。
【0063】
[0062]特定の態様において、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤を、必要とする被験体にin vivo送達するための組成物を調製するためのプロセスには:(a)実質的に水不溶性である薬理学的活性剤あるいはその塩または溶媒和物、および実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料を、少なくとも1またはそれより多い溶媒中に溶解し;そして(b)適切な条件下で前記溶媒(単数または複数)を除去する工程が含まれる。特定の態様において、工程(b)は、適切な手段、例えば真空乾燥、空気乾燥またはスプレー乾燥によって実行される。他の態様において、工程(b)は、直径約1μm〜約1mmの範囲のサイズの粒子を形成するよう実行される。別の態様において、プロセスはさらに、微粉砕するか、ボールミル粉砕するか、粉末状にするかまたはジェットミル粉砕して、自由に流動し、圧縮可能でありそして非流体である粉末を形成する工程を含む。
【0064】
[0063]一般的に、組成物は、(1)同時溶解、(2)乾燥、および(3)粉末化によって調製される。同時溶解は、実質的に水不溶性である薬理学的活性剤、および実質的に水不溶性であるマトリックス形成材料、例えばコハク酸ビタミンEを、揮発性溶媒または揮発性溶媒混合物中に溶解して、溶液を形成することである。揮発性溶媒は一般的な乾燥法によって除去可能な溶媒を指す。揮発性溶媒には、水、およびFDAによってクラス3およびクラス2溶媒として定義されるもの(本明細書にその全体が援用される、FDAの産業界のためのガイダンス、Q3C)などの薬学的溶媒が含まれてもよい。最も好ましいクラス3溶媒の例は以下の通りである:
[0064]表2. GMPまたは他の品質に基づく要件によって限定されるべきクラス3溶媒
【0065】
【表2】

【0066】
[0065]揮発性溶媒中の薬理学的活性剤およびマトリックス形成材料の溶液を、続いて減少させて、溶媒を取り除き、そして乾燥した固体塊を産生する。乾燥法には、真空乾燥、回転乾燥、ドラム乾燥、スプレー乾燥、凍結乾燥(freeze−drying、lyophilization)、薬剤重層、スプレー顆粒化、または他の乾燥法が含まれてもよい。薬剤重層工程は、不活性コア(例えば糖球体または微結晶セルロース球体)上に溶液をスプレーし、そして製粉工程を回避して、カプセル内に直接充填するかまたは加圧して錠剤にする工程を含む。スプレー顆粒化は、不活性薬学的賦形剤の粉末上に溶液をスプレーして顆粒を形成し、これを次いで、製粉工程を回避して、カプセル内に充填するかまたは加圧して錠剤にする工程を含む。乾燥質量での溶媒残渣レベルは、好ましくは10%未満であり、より好ましくは5%未満であり、そして最も好ましくは1%未満である。
【0067】
[0066]粉末化法によって、乾燥した固体塊のサイズをさらに減少させて、粉末化された自由に流動する非晶質薬学的組成物を産生してもよい。粉末化は、固体の粒子サイズを減少させるプロセスを指す。粉末化に用いられる装置には、ジョー・クラッシャー、コーンおよびジャイレトリー・クラッシャー、ローラー・クラッシャー、インパクト・クラッシャー、チューブミル、ボールミル、オートジニアスミル、垂直ローラーミル、およびローラープレスが含まれてもよい。当該技術分野で見られる一般的な粉末化装置には、ボールミル、Fitzmill、およびQuadro Comil等が含まれる。粉末化には、最後に、粉末化された自由に流動する非晶質薬学的組成物の粒子サイズを制御するための篩工程が含まれてもよい。
【0068】
[0067]いくつかの組成物は、融解顆粒化または熱融解押出による製造に適している。融解顆粒化は、キャリアーを融解し、そして生じた融解物中に活性薬学的成分を溶解することを伴う。融解物を、微結晶セルロースなどの希釈剤とともに顆粒化して、次いで他の賦形剤とブレンドし、そしてカプセル内に充填するかまたは加圧して錠剤にしてもよい。同様に、熱融解押出は、キャリアーを融解し、そして生じた融解物中に活性薬学的成分を溶解し、その後、ブレンドし、そして押出を行ってもよい。
【0069】
[0068]粉末化された自由に流動する組成物を含む最終投薬型を、カプセル、錠剤、移植物、トローチ、ロゼンジ、一時的または永続的懸濁物、膣坐剤(ovule)、坐剤、ウェーハ、咀嚼錠、急速または高速溶解錠、発泡錠、頬側または舌下固体、顆粒剤、フィルム、スプリンクル、ペレット、ビーズ、丸剤、粉末、倍散剤、プレートレット、ストリップまたはサシェの形で提供してもよい。組成物はまた、「乾燥粉末」として投与されてもよく、ここで、最終投薬型を舌上に直接乗せ、そして飲み込むか、あるいは飲み物または飲料を続けて飲む。これらの型は、当該技術分野で周知であり、そして適切にパッケージングされる。経口、鼻、頬、目、尿道、経粘膜、膣、局所または直腸送達のため、組成物を配合してもよいが、経口送達が、現在、好ましい。
【0070】
[0069]最終投薬型を1またはそれより多い腸溶コーティング、シールコーティング、フィルムコーティング、バリアコーティング、圧縮コーティング、迅速崩壊コーティング、または酵素分解可能コーティングでコーティングしてもよい。所望の性能のため、多数のコーティングを適用してもよい。さらに、即時放出、拍動性放出、制御放出、長期放出、遅延放出、ターゲティング化放出、同調放出、またはターゲティング化遅延放出のために、最終投薬型を設計してもよい。放出/吸収制御のため、ポリマーマトリックス組成物、コーティングマトリックス組成物、多粒子組成物、コーティングした多粒子組成物、イオン交換樹脂に基づく組成物、浸透圧に基づく組成物、または生物分解性ポリマー組成物によって、放出プロファイルを達成してもよい。
【0071】
[0070]薬学的組成物には、水不溶性活性薬学的成分およびキャリアーを含む、油不含固形分散物が含まれてもよい。
[0071]組成物は固形分散物であってもよい。言い換えると、分散物は、例えばコロイド状分散物、エマルジョン、または溶液とは対照的に、固形状態にある、化学的に別個の化合物の、分子的に単層である混合物であってもよい。固形分散物はまた、物理的混合物とは異なる。物理的混合物においては、2またはそれより多い固形構成要素が組み合わされ、そして混ざるようになるが、化学的レベルでは実質的に相互作用しない。物理的混合物中の個々の粒子は、出発材料の1つに存在する化合物で実質的に構成される。しかし、固形分散物においては、個々の粒子は、異なる出発材料中に存在する化合物で構成される。物理的混合物は、例えば、容器中で、2つの(またはそれより多い)異なる固形成分を合わせ、そして2つの固体を混合することによって作製可能である。固形分散物は、例えば、共通の溶媒中に2つ(またはそれより多い)異なる固形成分を溶解し、そして次いで溶媒を取り除く(例えば蒸発による)ことによって作製可能である。固形分散物は、固形溶体であってもよい。
【0072】
[0072]固形分散物は、油不含であってもよい。言い換えると、固形分散物は、生理学的に適切な温度(例えば0℃〜40℃;4℃〜37℃;10℃〜30℃、または15℃〜25℃;あるいは例えば室温)で液体である疎水性材料を含まなくてもよい。キャリアー自体は、純粋な状態にある際に、疎水性液体であってもよい。しかし、固形分散物は、他の油を含まない。キャリアーは固形分散物中、多い割合で材料を占めてもよい。キャリアーは、固形分散物中、いかなる他の成分よりもより多い割合で材料を占めてもよい。例えば、固形分散物は、重量少なくとも40%、重量少なくとも50%、重量少なくとも60%、重量少なくとも70%、重量少なくとも80%、または重量少なくとも90%のキャリアーを含んでもよい。
【0073】
[0073]キャリアーは水不溶性であってもよく;例えばキャリアーは、水不溶性マトリックス形成材料であってもよい。一般的に、水不溶性活性薬学的成分を伴う配合物中では、水不溶性キャリアーが好ましい可能性もある。
【0074】
[0074]キャリアーは水分散可能であってもよい。言い換えると、キャリアーは、水性媒体に、例えばコロイドとして分散するようになってもよい。いくつかの状況において、適切な界面活性剤および水非混和性溶媒が存在する場合、キャリアー、溶媒および界面活性剤は、一緒に作用して、エマルジョン(例えば水中油エマルジョン)を提供する。しかし、エマルジョンの形成は常に好ましいわけではなく;いくつかの状況において、キャリアーは、さらなる構成要素の補助なしに、水性媒体中に分散可能である。キャリアーの水分散性は、活性薬学的成分が生物学的に利用可能であることを確実にするために重要である可能性もある。
【0075】
[0075]キャリアーは、酵素的に分解可能である。水性媒体中に分散されると、キャリアーは分解されて、キャリアーから活性薬学的成分が遊離するようになる。所望の生理学的媒体中、すなわち被験体中でのみ起こるため、酵素分解が望ましい。
【0076】
[0076]固形分散物中の活性薬学的成分対キャリアーの相対量は、1:1000〜2:1の範囲、例えば1:20〜1:1の範囲、または1:9〜1:2の範囲であってもよい。
[0077]薬学的組成物には、リキシバプタン、またはその薬学的に許容されうる誘導体が含まれる。リキシバプタンはまた、5−フルオロ−2−メチル−N−[4−(5H−ピロロ[2,1−c]−[1,4]ベンゾジアゼピン−10(11H)−イルカルボニル)−3−クロロフェニル]ベンズアミド、およびVPA−985を含む、他の名称によってもまた知られる。
【0077】
[0078]リキシバプタンは、水に非常に不溶性である(20ng/mL未満)。塩形成(水溶解度を増加させるためにしばしば用いられるアプローチ)は不可能であった。リキシバプタンの生物学的利用能は、慣用的な投薬型(すなわち賦形剤とブレンドし、そして圧縮して錠剤にするかまたはカプセルに充填する)では非常に低いものでありうる。
【0078】
[0079]多量のポリエチレングリコール(PEG)を取り込む、液体または半固形ビヒクル中にリキシバプタンを溶解することによって、生物学的に利用可能な配合物が調製された。しかし、PEGに基づく配合物は、非常に流体性である(特に、より低い分子量のPEG、例えばPEG400またはPEG1000の場合)。配合物内に湿気が吸収されると、リキシバプタン結晶化が誘発される。結晶リキシバプタンの生物学的利用能は劣っている。湿気はまた、リキシバプタンの化学的分解も増加させうる。したがって、許容されうる保存可能期間を提供するため、PEGに基づく配合物は、ホイルまたはホイルブリスター内にパッケージングし、そして/または乾燥剤を用いることによる、湿気からの防御を必要とする。さらに、PEGは、不純物として、少量の反応性過酸化物を含有する。これらの不純物は、この投薬型において、リキシバプタンのかなりの分解を引き起こしうる。不純物によって引き起こされる分解は、許容されうる化学的安定性を維持するため、酸化防止剤を含むことによって軽減可能である。
【0079】
[0080]ビタミンEセミエステル(例えばコハク酸ビタミンE、VES、またはアルファ−コハク酸トコフェロール、ATS)に基づくリキシバプタン配合物は、リキシバプタンに驚くほど高い生物学的利用能を提供する。例えば、生物学的利用能は、PEGに基づく配合物よりも3倍高いものでありうる。これは非流体性であり、そして活性薬学的成分分解を増加させずに、不活性賦形剤を用いる。VESに基づく配合物は、酸化防止剤の使用を伴わない場合であってさえ、優れた化学的安定性を提供する。さらに、配合物は、加速された安定性条件にさらされた際であってさえ、優れた物理的安定性を有する(活性成分の結晶化はまったく観察されない)。VESに基づく配合物は、適切な方法、例えば示差走査熱量測定(DSC)またはX線粉末回折(XRPD)などの適切な方法によって決定した際、25%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満の結晶リキシバプタンを含有する場合は、リキシバプタンの元来の結晶型を実質的に含まないことも可能である。
【0080】
[0081]予期せぬことに、VES配合物中のリキシバプタンの生物学的利用能は、in vitro溶解単独から予測されるであろうものよりもはるかに高い。PEGに基づく配合物は、VESに基づく配合物と類似であるかまたはさらにそれよりわずかに優れたin vitro溶解特性を有するが、VES配合物F−130(以下を参照されたい)は、PEGに基づく配合物のものの3倍高い生物学的利用能を有した。
【0081】
[0082]驚くべきことに、VES配合物は、個々の構成要素が水溶液に容易に可溶性でない場合であってさえ、迅速な溶解特性を有する(リキシバプタンは、可溶性が非常に劣っており、そしてVESもまた水不溶性である)。
【0082】
[0083]VESは結晶であり、そして配合物中で結晶化度を維持しうる。したがって、配合物は結晶マトリックスであり、そしてリキシバプタンは、VES結晶内に分散されるかまたは溶解される。VESマトリックスは、リキシバプタン分子の凝集を防止し、固形分散物中のリキシバプタンの結晶化度を制限する。対照的に、活性薬学的成分の大部分の非晶質分散物は、活性剤を溶解し、そして非晶質に維持するために、非晶質ポリマーを使用する。
【0083】
[0084]ポリマーに基づかない結晶マトリックス(例えばVESによって提供されるようなもの)は、非流体性でありうる。リキシバプタンの場合、非流体性キャリアーは、薬剤の化学的安定性増加を補助しうる。
【0084】
[0085]望ましくは、リキシバプタンおよびVES配合物は、自由に流動可能であり、そして容易に錠剤に配合可能である。
[0086]リキシバプタン−VES配合物中にゼインを含めると、慣用的なスプレー乾燥装置中でのスプレー乾燥が促進されうる。いかなる抗粘着剤(anti tacking agent)も存在しないと、VESおよびリキシバプタン溶液を含む溶液は、粘着状になる可能性があり、そしてスプレー乾燥が困難になりうる。コロイド状二酸化ケイ素およびタルクなどの粒子状抗粘着剤を流体床スプレー顆粒化または流体床薬剤重層プロセスにおいて用いてもよい;が、これらの剤は、一般的にスプレー乾燥と適合しない。ゼインは、アセトン中、高濃度で溶解され、そしてVESおよびリキシバプタン両方を含む溶液中に取り込まれうる。VES、ゼイン、およびリキシバプタンを含む溶液は、一般的に非粘着性であり、そして容易にスプレー乾燥可能である。スプレー乾燥された際、一般的に容易に配合される、乾燥した、自由に流動する粉末が生じる。
【0085】
[0087]リキシバプタン−VES配合物には、さらに、さらなる成分、例えば:充填剤または希釈剤、例えば糖(例えばラクトース、マンニトール)、微結晶セルロース、修飾デンプン、リン酸二カルシウム、またはデキストリン;結合剤、例えばポビドン、メチルセルロース、ヒプロメロース、デンプン、ゼラチン、またはPEG;崩壊剤、例えばクロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、またはあらかじめゼラチン化されたデンプン;抗接着剤(抗粘着剤)、例えばタルク、コロイド状二酸化ケイ素、ポリエチレングリコール(PEG)3350、PEG6000、またはPEG8000;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、または没食子酸プロピル;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;および界面活性剤、例えばポロキサマー、ポリソルベート80、またはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)が含まれてもよい。
【0086】
[0088]リキシバプタン−VES配合物の製造には、活性薬学的成分およびキャリアーを共通の溶媒中に溶解し、そして次いで、溶媒を蒸発させる工程が含まれる。このプロセスは、キャリアーマトリックス中の活性剤の取り込みを生じる。
【0087】
[0089]活性薬学的成分が、キャリアー中に取り込まれた際、活性薬学的成分の結晶化が防止される。キャリアーが純粋な状態の結晶である場合、これは主に、固形分散物中で結晶構造を維持する。キャリアーが純粋状態において非晶質である場合、これは主に、固形分散物中で非晶質特性を維持する。
【0088】
[0090]溶媒は、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、DMSO、ペンタン、ヘキサン、または他の溶媒、あるいはその組み合わせであってもよい。いくつかの場合、無水溶媒、すなわち溶媒が水を厳密に含まないことを確実にする条件下で処理され、そして維持されてきた溶媒を用いることが望ましい。いくつかの場合、少量の水の存在(例えば溶媒を空気に曝露することから生じる量)が許容されうる。他の場合、溶媒中に、ある量の水を含むことが望ましい可能性もある。溶媒は、活性薬学的成分およびキャリアーの両方を望ましい濃度で同時に溶解する能力に関して選択される。
【0089】
[0091]溶媒を蒸発によって取り除く。いくつかの場合、例えば加熱、真空蒸発、スプレー乾燥、または流体床プロセス(流体床顆粒化または流体床重層)によって、迅速な蒸発を促進することが望ましい可能性もある。好ましくは、蒸発プロセスは、慣用的でありそして拡大可能な薬学的プロセスであり、そして薬剤のcGMP産生において一般的に用いられるものである。
【0090】
[0092]流体床顆粒化製造プロセスにおいて、活性薬学的成分およびキャリアー溶液を、不活性薬学的賦形剤(充填剤または希釈剤)上にスプレーして、顆粒化を生じる。顆粒は、後に、圧縮されて錠剤になるか、またはカプセル内に充填される。一般的に用いられる抗接着剤(抗粘着剤)、例えばタルクまたはコロイド状二酸化ケイ素を溶液中に懸濁して、溶液の望ましくないいかなる粘着性も克服可能である。あるいは、活性薬学的成分およびキャリアー溶液を、添加した抗付着剤とともに、小さい不活性ビーズ(例えば糖球体または微結晶セルロース球体)上にスプレーすることを伴う薬剤重層プロセスを用いて、薬剤ペレットまたはビーズを生じることも可能である。次いで、必要であれば、これらのビーズを湿った保護性フィルムでコーティングして、そしてカプセル内に充填してもよいし、あるいは、さらなる賦形剤とブレンドした後、これらを圧縮して錠剤にしてもよい。
【0091】
[0093]組成物には、二次キャリアー材料が含まれてもよい。二次キャリアー材料は、一次キャリアーの特性を補う、望ましい特性を提供するように選択される(この文脈において、「一次キャリアー」および「二次キャリアー」は、組成物中の重量による材料の相対量を示す)。例えば、一次材料が、活性薬学的成分の優れた溶解を提供するが、乾燥特性が理想的ではない場合、二次キャリアーは、固形組成物の乾燥特性を改善させるように選択される。
【0092】
[0094]二次キャリアーとして有用な材料には、例えば、ゼイン、カゼイン、乳清、コラーゲン、ゼラチン、不溶性アミノ酸、タンパク質加水分解物、またはその組み合わせが含まれる。ゼインはアセトン中で可溶性であり、そして活性薬学的成分および一次キャリアーの溶液をスプレー乾燥させるのに望ましい、抗粘着特性を有する。生じる材料は、自由に流動する乾燥粉末であり、他の成分とブレンドした後、これを圧縮して錠剤にするか、またはカプセル内に充填することも可能である。乾燥顆粒化法、例えばローラー・コンパクションを用いて、錠剤圧縮またはカプセル充填前に、粉末のかさ密度を増加させることも可能である。
【実施例】
【0093】
実施例1 配合物F−130
[0095]配合物F−130は、リキシバプタンのVESに基づく固形分散物である。F−130は、2つの段階で調製される。第一の段階は、VESおよびリキシバプタンの固形分散物または固形溶体(F−126)を形成する工程を含む。第二の段階では、F−126固体を他の賦形剤と合わせて、そしてカプセル内に装填する。以下の表は、F−126およびF−130中の材料の相対量を記載する。
【0094】
【表3】

【0095】
実施例2 F−126Cの調製
[0096]F−126の粗い粒子(F−126C)を調製するため、1L丸底フラスコの風袋重量を記録した。10g部分のリキシバプタンおよび86g部分のVESをフラスコに添加した。次に、400mLアセトンを添加し、そして50℃で攪拌して透明溶液を得た。溶液を0.8μmフィルター膜に通過させた。フラスコを追加の100mLアセトンでリンスし、これをろ液と合わせた。残渣溶媒が3%未満になるまで、回転蒸発によって、アセトンを取り除いた。混合物を−30℃で一晩インキュベーションして固化させた。生じた固体を小さいピースに割り、そして完全に製粉して60メッシュ篩を通過するように十分にサイズを減少させた。残渣溶媒が0.5%(熱重量測定分析(TGA)によって決定した際)未満になるまで、固体を40℃でオーブン乾燥させて、F−126Cを得た。
【0096】
実施例3 F−130Cの調製
[0097]3.84gのF−126、0.04gのSDSおよび0.12gのクロスポビドンXL−10を合わせることによって、F−130Cを調製した。20rpmで30分間の回転によってこれらを混合した。
【0097】
実施例4 微粒子化F−126(F−126M)
[0098]F−126C(9.6g)およびSDS(0.1g)を合わせ、そしてよく混合した。粒子サイズが100μm未満になるまで、ジェットミルによって混合物を処理した。
【0098】
実施例5 F−130Mの調製
[0099]F−126M(3.88g)およびクロスポビドンXL−10(0.12g)を合わせ、そして20RPMで30分間の回転によって、よく混合した。以下の表は、いくつかの配合物の物理的特性を要約する。
【0099】
【表4】

【0100】
実施例6 安定性
[00100]カプセルあたり50mgリキシバプタンを提供するように、固形リキシバプタン配合物を硬ゼラチンカプセル(CapsuGel 00CS)中に重量によって装填した。以下の表は、時間ゼロ(T)および異なる保存条件下での、F−130中のリキシバプタンの純度(クロマトグラフィーによって決定)を記載する。これらの試料の溶解プロファイルもまた測定した(図1Aおよび1B)。
【0101】
【表5】

【0102】
実施例7 薬物動態
[00101]以下の表は、サルにおける薬物動態試験の結果を示す。
【0103】
【表6】

【0104】
実施例8 リキシバプタン配合物の物理的特性
[00102]図2は、リキシバプタン、F−126、およびF−130の3つの異なる調製物(F−130−a、F−130−b、およびF−130−cと示される)の試料に関するX線粉末回折スペクトルを示す。
【0105】
[00103]図3Aは、40℃に置いた製造6ヶ月後のF−130の試料に関する熱重量測定分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す。TGAは、120℃で1.15%の重量喪失を示し、これは水蒸発に対応する。DSCは、リキシバプタンの融解吸熱を伴わない、結晶マトリックスの証拠を示した。
【0106】
[00104]図3Bは、25℃に置いた製造6ヶ月後のF−130の試料に関するTGAおよびDSCの結果を示す。TGAは、120℃で1.24%の重量喪失を示し、これは水蒸発に対応する。DSCは、リキシバプタンの融解吸熱を伴わない、結晶マトリックスの証拠を示した。
【0107】
実施例9 さらなる配合物
[00105]以下の表は、さらなる配合物の組成を記載する:
【0108】
【表7】

【0109】
[00106]F−130、F−150およびF−152を調製するため、3.88gのF−126Cおよび0.12gの崩壊剤(F−130、F−150およびF−152に関して、それぞれ、ポリプラスドン(登録商標)XL−10、Ac−Di−Sol、Explore−Tab)を合わせ、そしてよく混合した。
【0110】
[00107]F−168を調製するため、1.88g F−126M、0.019g Cab−O−Silおよび0.0097g Ac−Di−Solを合わせ、そしてよく混合した。
【0111】
[00108]F−307を調製するため、250mLガラス瓶中の1gのリキシバプタンに、120mLの水中の75%アセトンを添加した。完全に溶解するまで、材料を約60℃で加熱した。この溶液に、6gのVESおよび3gのゼインを添加し、そして完全な溶解が観察されるまで、溶液を混合した。
【0112】
[00109]以下の条件下で溶液をスプレー乾燥に供した:溶液温度、55〜60℃;フィード速度4〜5mL/分;乾燥気流速度0.3〜0.4m3/分;入口空気温度、120℃;出口空気温度、75〜80℃。スプレー乾燥した粉末をトレイに移し、そして残渣溶媒が重量2%未満になる(TGAによって決定)まで、真空オーブン中、50℃で乾燥させた。固体を70メッシュ篩に通過させて、F−307を得た。
【0113】
[00110]F−314を調製するため、F−307、SDS、およびAc−Di−Solを適切な比で合わせ、そしてよく混合した。
[00111]図4は、F−130、F−168、またはF−314いずれかを充填した00CSカプセルに関する溶解時間プロファイルを比較する。
【0114】
実施例10 配合物F−315およびF−316
F−315およびF−316の調製
【0115】
【表8】

【0116】
[00112]スプレー乾燥装置を用いて、60g F−315のバッチを調製した。スプレー乾燥産物を、溶媒残渣が2%未満になるまで、オーブン中、40〜50℃でさらに乾燥させた。粉末を70メッシュ篩に通過させ、そしてSDSおよびAc−Di−Solとよく混合して、F−316粉末ブレンドを得た。
【0117】
[00113]図5は、F−315に関するTGAおよびDSC結果を示す。
実施例11 酸化防止剤
[00114]以下の表は、リキシバプタンの安定性に関する酸化防止剤包含の効果を試験するため、経年劣化を加速する条件(60℃、周囲RH、空気に対してオープン、60時間)下で試験した、いくつかの配合物を記載する。
【0118】
【表9】

【0119】
[00115]0.26%BHAおよび0.02%BHT(配合T−2)は、用いた条件下で、F−126のリキシバプタン安定性増加を示した。
【0120】
【表10】

【0121】
実施例12 ゼイン含有配合物
[00116]以下の表は、一連のゼイン含有リキシバプタン配合物の組成を記載する。
【0122】
【表11】

【0123】
[00117]1gリキシバプタンを250mLガラス瓶に量り取ることによって、これらの配合物を調製した。100mL〜120mLの間の水中の75%アセトンを添加し、そして約60℃で加熱してすべてを溶解した。ゼインおよびVESを適切な量で溶液に添加し、そしてよく混合した。以下の状態を用いて、溶液をスプレー乾燥した:溶液温度55〜60℃;フィード速度4〜5mL/分;乾燥気流速度0.3〜0.4m3/分;入口空気温度、120℃;出口空気温度、75〜80℃。
【0124】
[00118]スプレー乾燥した粉末をトレイに移し、そしてTGAによって決定されるように、残渣溶媒含量が重量4%未満になるまで、真空オーブン中、50℃で乾燥させた。生じた固体を70メッシュ篩に通過させた。
【0125】
【表12】

【0126】
[00119]図6は、リキシバプタン、F−128、F−304、F−305、F−306およびF−307に関する示差熱量分析(DTA)結果を示す。60%またはそれより高いゼイン濃度に関しては、VESに関連するDTAピーク(約80℃)は観察されなかった。3つの組成物(F−305、F−306およびF−307)は、スプレー乾燥によって成功裡に調製された。これらの組成物はまた、DSCによって決定されるように、結晶リキシバプタンも含まず、そしてリキシバプタンに関する適切な溶解度レベルを提供した。
【0127】
配合表(450mLを含有する容器あたりのmg)
【0128】
【表13】

【0129】
対照
**3%Ac−Di−Solおよび35%MCCを顆粒外で(extragranularly)添加する。37%MCCは、体積によって許容される最大値である。
【0130】
***5%Ac−Di−Solを顆粒外で添加する。
****流動のためにCab−O−Silをまったく必要としない。
【0131】
【表14】

【0132】
[00120]本明細書に言及するかまたは引用する論文、特許、および特許出願、ならびにすべての他の文書および電子的に入手可能な情報の内容は、各個々の刊行物が、特に、そして個々に援用されると示されるのと同じ度合いまで、その全体が本明細書に援用される。本出願者らは、本出願内に、任意のこうした論文、特許、特許出願、または他の文書由来のあらゆる材料および情報を物理的に取り込む権利を保持する。
【0133】
[00121]他の態様が以下の請求項内に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油不含および実質的に水不含の固形分散物を含む単一経口投薬型を含む薬学的組成物であって、分散物が、療法的に有効な量のリキシバプタン、および重量50%またはそれより多いビタミンEセミエステルを含む、前記薬学的組成物。
【請求項2】
分散物がさらに界面活性剤を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
界面活性剤が硫酸アルキル塩である、請求項2の組成物。
【請求項4】
硫酸アルキル塩がラウリル硫酸ナトリウムである、請求項3の組成物。
【請求項5】
分散物が実質的に結晶リキシバプタンを含まない、請求項1の組成物。
【請求項6】
分散物が重量60%またはそれより多いビタミンEセミエステルを含む、請求項1の組成物。
【請求項7】
分散物が重量70%またはそれより多いビタミンEセミエステルを含む、請求項1の組成物。
【請求項8】
分散物が重量80%またはそれより多いビタミンEセミエステルを含む、請求項1の組成物。
【請求項9】
崩壊剤をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項10】
崩壊剤が架橋ポリ(ビニルピロリドン)である、請求項9の組成物。
【請求項11】
分散物がさらに水溶性ポリマーを含む、請求項1の組成物。
【請求項12】
分散物がさらに植物タンパク質を含む、請求項1の組成物。
【請求項13】
植物タンパク質がゼインである、請求項12の組成物。
【請求項14】
界面活性剤をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項15】
界面活性剤が硫酸アルキル塩である、請求項14の組成物。
【請求項16】
硫酸アルキル塩がラウリル硫酸ナトリウムである、請求項15の組成物。
【請求項17】
ビタミンEセミエステルがアルファ−コハク酸トコフェロールである、請求項1の組成物。
【請求項18】
薬学的組成物を作製する方法であって:
非水性溶媒中に、ある量のリキシバプタンを溶解し;
該非水性溶媒中に、ある量のビタミンEセミエステル誘導体を溶解し;そして
該溶媒を除去し、それによってリキシバプタンおよびビタミンEセミエステル誘導体を含む固形分散物を形成する
工程を含む、前記方法。
【請求項19】
ビタミンEセミエステル誘導体がアルファ−コハク酸トコフェロールである、請求項18の方法。
【請求項20】
固形分散物を崩壊剤と混合する工程をさらに含む、請求項18の方法。
【請求項21】
固形分散物を界面活性剤と混合する工程をさらに含む、請求項20の方法。
【請求項22】
非水性溶媒中に、ある量の水溶性タンパク質を溶解する工程をさらに含む、請求項18の方法。
【請求項23】
溶媒を除去する工程がスプレー乾燥を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
分散物が結晶リキシバプタンを実質的に含まない、請求項18の方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−503166(P2013−503166A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526904(P2012−526904)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/046452
【国際公開番号】WO2011/025771
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512046981)カーディオカイン・バイオファーマ・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】