説明

不織布および該不織布からなる下敷き材

【課題】剛性と表面平滑性に優れ、電子部品の切断工程における下敷き材等の用途に好適に用いることができる不織布を提供する。
【解決手段】目付が50〜400g/m、充填密度が0.4〜0.8であって、かつ通気量が0.2〜15.0cc/cm/secであり、かつ、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることを特徴とする不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性と表面平滑性に優れた不織布に関するものであって、電子部品の切断工程における下敷き材等の用途に好適に用いることができる不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会において、情報端末等の電気製品は軽量化、小型化の一途を辿っており、それにともない回路基板やディスプレイ用パネル、フィルムなどの各種電子部品の小型化もますます進行しつつある。シート状電子部品の小型化については、原材料コストは抑えられる一方、マザーシート等の名称で呼ばれる大型のシートを小片に切断する工程が必要であり、生産性向上には自動化、さらには自動機の処理能力アップにより短時間で大量に切断処理することが求められている。
【0003】
このようなシート状電子部品の切断加工方法としては、例えば、セラミックグリーンシートの切断加工方法では、通気性を有する弾性材からなる下敷きシートを介して切断テーブル下からの吸引圧によりセラミックグリーンシートを固定し切断する加工方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、該加工方法では通気性を有する弾性材を下敷き材として用いているものの、下敷き材としてどのようなものが好適か知見はなく、用いる下敷き材によっては切断不良等の加工性悪化を引き起こす恐れがあった。通気性を有する弾性材としては発泡体や編織物が思い起こされるが、発泡体は一般的に柔らかいため、切断刃を押し込んだ際に変形し、特に積層したフィルムからなる電子部品等ではバリと呼ばれる切断面不良が発生する恐れがあった。一方、編織物であれば発泡体に比べ一般的に剛性が高いため、切断の際の変形量は小さいと考えられるが、編目や織目が表面凹凸となって現れ、やはり切断不良に繋がる恐れがあった。
【0004】
また、セラミックシート積層体の切断方法としては、下敷き材シートを用いた切断方法が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、該発明では下敷き材の一例としてクリーン紙が挙げられているが、剛性や表面平滑性、さらには密度、通気性、シートを構成する繊維の繊度など、下敷き材として重要な因子についてなんら知見がないため、誰もが良好な切断性を得られるものではなかった。
【0005】
一方、表面平滑性に優れた不織布としては、5%伸長時の縦方向(MD)および横方向(CD)の裂断長の平均値が4.0km以上であり且つ通気度が0.2〜10.0cc/cm・秒である不織布からなることを特徴とする半透膜支持体が知られている(特許文献3参照)。しかしながら、該発明では剛性についてなんら限定されていないため、下敷き材として用いたときに切断不良を引き起こす恐れがあった。
【0006】
また、剛性に優れた不織布としては、単糸繊度0.1〜1.2dの熱可塑性繊維のスパンボンド不織布からなり、目付50〜300g/m、引張強力5kg/5cm以上、引裂強力1.0kg以上、剛軟度50mg以上、平均孔径10〜30μであるフィルター濾材が知られている(特許文献4参照)。しかしながら、該発明では密度、通気量、さらには表面平滑性などについてなんら限定されていないため、下敷き材として用いたときにやはり切断不良を引き起こす恐れがあった。
【特許文献1】特開2004−160739号公報
【特許文献2】特開2002−134356号公報
【特許文献3】特許第3153487号公報
【特許文献4】特開平07−060033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、剛性と表面平滑性に優れた不織布に関するものであって、電子部品の切断工程における下敷き材等の用途に好適に用いることができる不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)目付が50〜400g/m、充填密度が0.4〜0.8であって、かつ通気量が0.2〜15.0cc/cm/secであり、さらに低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることを特徴とする不織布。
【0009】
(2)不織布の表面平均粗さが2〜9μmであることを特徴とする上記(1)に記載の不織布。
【0010】
(3)不織布を構成する繊維の繊度が0.1〜5.0dtexであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の不織布。
【0011】
(4)不織布を構成する繊維の原料がポリエステル系樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の不織布。
【0012】
(5)不織布を構成する繊維の原料が生分解性樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の不織布。
【0013】
(6)不織布を構成する繊維の原料がポリ乳酸樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の不織布。
【0014】
(7)不織布がスパンボンド不織布であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の不織布。
【0015】
(8)不織布を構成する繊維が滑剤を含むことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の不織布。
【0016】
(9)不織布の少なくとも片面に離型剤が付与されていることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の不織布。
【0017】
(10)不織布の水接触角が、100°〜160°であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の不織布。
【0018】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の不織布からなる下敷き材。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、剛性と表面平滑性に優れ、電子部品の切断工程における下敷き材等の用途に好適に用いることができる不織布を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の不織布は、目付が50〜400g/mであることが重要であり、80〜350g/mであることが好ましく、100〜300g/mであることがより好ましい。目付が50g/m未満の場合、下敷き材として使用した際に切断刃が下敷き材を通過し切断テーブルに衝突し、切断刃もしくは切断テーブルが損傷する恐れがある。一方、目付が300g/mより大きいと、通気性が低下し、下敷き材として使用した際に切断対象物を吸引固定できなくなる。ここで、所望の目付を得るためには、複数の不織布を積層した積層不織布であっても良い。なお、本発明の不織布の目付は、例えば後記実施例(4)に記載の方法などにより測定したものをいう。
【0021】
本発明の不織布は、充填密度が0.4〜0.8であることが重要であり、0.5〜0.8であることが好ましく、0.6〜0.8であることがより好ましい。充填密度が0.4よりも小さい、すなわち不織布内部の空隙が多すぎると、下敷き材として使用した際に切断刃の圧力で変形し良好な切断性が得られない。一方、充填密度が0.8より大きいと不織布の通気性が著しく低下し、下敷き材として使用した際に切断対象物を吸引固定できなくなる。なお、本発明の不織布の充填密度は、例えば後記実施例(6)に記載の方法などにより測定したものをいう。
【0022】
本発明の不織布は、通気量が0.2〜15.0cc/cm/secであることが重要であり、0.3〜12.0cc/cm/secであることが好ましく、0.4〜9.0cc/cm/secであることがより好ましい。通気量が0.2cc/cm/secより小さいと下敷き材として使用した際に切断対象物を吸引固定できなくなる。一方、通気量が15.0cc/cm/secより大きいと不織布の緻密さが失われ、表面平滑性や剛性の低下に繋がる。なお、本発明の不織布の通気量は、例えば後記実施例(7)に記載の方法などにより測定したものをいう。
【0023】
本発明の不織布は、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることが重要であり、0.00〜0.02mmであることが好ましく、0.00〜0.01mmであることが更に好ましい。ここで、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量とは、加圧子で低荷重(荷重2kPa)をかけたときの厚さと、高荷重(荷重200kPa)をかけたときの厚さとの差をいう。本発明の目的とする主な用途は電子部品の切断工程における下敷き材であるが、下敷き材に必要な硬さとは切断刃で押し切ったときに変形しないための硬さであり、低荷重時と高荷重時との厚さ変化量が小さければ所望の硬さと言え、下敷き材として好適であることを見出した。低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.03mmを超えると、下敷き材として使用した際に切断刃の圧力で変形し良好な切断性が得られない。本発明の不織布の低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は、例えば後記実施例(5)に記載の方法により測定したものをいう。
【0024】
本発明の不織布においては、表面平均粗さは2〜9μmであることが好ましく、2〜8μmであることがより好ましく、2〜7μmであることがさらに好ましい。表面平均粗さが2μm以上であれば不織布表面が極端に緻密化されて通気性の低下に繋がることが少なく、表面平均粗さが9μm以下であれば下敷き材として使用した際に不織布表面の凹凸による切断不良が発生する恐れがない。ここで、表面粗さは後記実施例(9)に記載の方法により測定したものをいう。
【0025】
本発明の不織布は、原料、製法等についてはなんら限定されるところではないが、下敷き材等の用途により好適に用いられるためには、以下の原料、製法等が好ましく用いられる。
【0026】
すなわち、不織布を構成する繊維の原料については、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂あるいはこれらの混合物が挙げられるが、得られる繊維、ひいては不織布は高剛性であることが重要であることから、ポリエステル系樹脂が好ましく用いられる。本発明で用いられるポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂等が挙げられ、またこれらのポリエステル系樹脂の共重合体も挙げられる。
【0027】
さらに、下敷き材等として使用する場合には使い捨てとすることもあるため、使用した後に廃棄する際、廃棄が容易であり環境負荷が小さいことから、生分解性樹脂も不織布を構成する繊維の原料として好ましく用いられる。本発明で用いられる生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート系樹脂等が挙げられる。
【0028】
さらに、石油資源を枯渇させない植物由来の樹脂であり、力学特性や耐熱性も比較的高く、製造コストの低い生分解性樹脂として近年脚光を浴びている、でんぷんの発酵で得られる乳酸を原料としたポリ乳酸樹脂は、不織布を構成する繊維の原料として好ましく用いられる。本発明で用いられるポリ乳酸樹脂としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体が好ましいものである。
【0029】
なお、本発明の不織布を構成する繊維には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤や艶消し剤、滑剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤等を添加してもよい。特に本発明の目的とする主な用途である下敷き材として用いた際、切断刃との摩擦抵抗を低減させることで毛羽の発生を抑制でき、切断対象物が粘性の高い物質を含む場合であっても同物質に対する離型効果を発現でき、繰返し使用時の長寿命化に繋がる効果があることから、滑剤を添加することが好ましい。本発明の滑剤としては、切断刃との摩擦抵抗低減効果や、切断対象物に対する離型効果など、いわゆる滑り性を向上させる効果のあるものであればなんら限定されるところではないが、繊維表面の摩擦抵抗を低減する効果があり、不織布の製造時にも安定的に紡糸可能であることから、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドが好ましく用いられる。さらに滑剤の添加量としては、求める効果を得ることができればなんら限定されるところではないが、0.05〜5.0wt%の範囲であることが好ましく、0.1〜4.0wt%の範囲であることがより好ましく、0.2〜3.0wt%であることがさらに好ましい。0.05wt%以上であれば、滑り性を向上させる効果を得ることができ、5.0wt%以下であれば不織布の製造時に安定的に紡糸可能である。また、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドは、不織布の熱接着成形の際、熱接着ロールとウェブ間の離型性を増すことで熱接着安定性を向上させる効果があることからも、好ましく用いることができる。さらに、脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドは、繊維表面に存在することが必要であるから、芯鞘型繊維において鞘成分のみにそれを含有する形態も好ましいものである。本発明において芯鞘型繊維を採用し、鞘成分のみに脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを含有させる形態は、芯成分にそれらを含有させる必要がないことから、生産安定性や製造コスト面から好ましい形態である。一方、酸化チタン等の金属酸化物も、不織布の熱接着成形の際、熱伝導性を増すことで不織布の熱接着性を向上させる効果があることから、添加することが好ましい。
【0030】
本発明の不織布を構成する繊維は、単成分の樹脂からなるものであっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。複合繊維としては、例えば同心芯鞘繊維、偏心芯鞘繊維、海島繊維、分割繊維等が挙げられ、単成分繊維、複合繊維のいずれに関わらずその形状としては、例えば円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面、中空断面等が挙げられる。なかでも熱接着により不織布を成形する場合、熱接着性を向上させ不織布をより高密度化、高剛性化することが可能となることから、芯成分の樹脂より融点が20〜100℃低い樹脂を鞘成分とした芯鞘繊維を用いることが好ましい。このときの繊維中に含まれる鞘成分の割合は、5〜50wt%であることが好ましく、10〜40wt%であることがより好ましい。鞘成分の割合が5wt%未満であると、熱接着性向上効果が小さくなり、また50wt%を超えると、不織布の剛性が低下する恐れがあるためである。
【0031】
本発明の不織布の製法については、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、ニードルパンチ法、水流交絡法、エアレイド法、サーマルボンド法、レジンボンド法、湿式法等、なんら限定されるところではないが、長繊維フィラメントから構成されると毛羽立ちが少なく、得られる不織布の強力および剛性、さらには製造コストにも優れることからスパンボンド法が好ましく用いられる。
【0032】
不織布の製法はいずれであっても、目付が50〜400g/m、充填密度が0.4〜0.8であって、かつ通気量が0.2〜15.0cc/cm/secであり、かつ低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることを特徴とする不織布を得ることが重要であり、例えば、スパンボンド不織布の場合は、溶融したポリマーをノズルから押し出し、これを高速吸引ガスにより吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集してウェブとし、さらに連続的に熱接着、絡合等を施すことにより一体化してシートとなす、いわゆるスパンボンド法などにより製造することができるが、構成する繊維をより高度に配向結晶化させるため、紡糸速度は2000m/分以上であることが好ましく、3000m/分以上であることがより好ましく、4000m/分以上であることがさらに好ましい。
【0033】
さらに、繊度が大きすぎると得られる不織布に目付斑が発生し密度斑や剛性斑が生じやすくなり、さらには表面平滑性が劣る傾向にある一方、繊度が小さすぎると紡糸性が悪化し糸切れ等のトラブルに繋がる恐れがあることから、不織布を構成する繊維の繊度は0.1〜5.0dtexであることが好ましく、0.3〜3.0dtexであることがより好ましく、0.5〜2.0dtexであることがさらに好ましい。ここで、繊度は後記実施例(3)に記載の方法で測定したものをいう。
【0034】
さらに、下敷き材として好適に用いられる不織布を得るために充填密度、通気性、厚さ変化量、表面平滑性をコントロールするには、熱接着によるシート一体化が好ましく、上下1対のフラットロールにより熱接着し一体化することがより好ましく、また表面の毛羽立ちを抑制する点で、上下ともに加熱可能なフラットロールにより一体化することがさらに好ましい。該熱フラットロールの温度としては、不織布を構成する繊維の融点より60〜20℃低いことが好ましく、50〜30℃低いことがより好ましい。ここで上下ロールとも加熱する場合、加工性の観点から上下のロール間で温度差をつけることは構わないが、該温度差が大きいと得られる不織布の表裏面で一方の面が毛羽立ちやすくなるなどの差が生じる恐れがあるため、該温度差は0〜20℃であることが好ましい。一方、該熱フラットロールの線圧としては、20kg/cm以上であることが好ましく、50kg/cm以上であることがより好ましい。また、1対の熱フラットロールのみで熱接着するのではなく、より精密に不織布の特性をコントロールするために、1対のロールでシートを仮接着状態した後に、インライン、あるいはオフラインでさらにもう1度フラットロールで接着するような2段階接着方式を用いても良い。また、1対のロールで仮接着状態にした別々の複数のシートを、インライン、あるいはオフラインでさらにもう1度フラットロールで接着するような積層方式を用いた積層体であっても良い。
【0035】
本発明の不織布は、本発明の目的とする主な用途である下敷き材として用いた際に、切断刃との摩擦抵抗を低減させることで毛羽の発生を抑制でき、切断対象物が粘性の高い物質を含む場合であっても同物質に対する離型効果を発現でき、繰返し使用時の長寿命化に繋がる効果を与えるため、不織布の少なくとも片面に離型剤が付与されていることが好ましい。切断刃との摩擦抵抗を低減させる効果や、離型効果などのいわゆる滑り性を向上させる効果を有する離型剤としては、長鎖アルキル基含有ポリマー、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマーなどのポリマーや、界面活性剤などが好ましく用いられ、これらの離型剤を混合して用いても良い。また、不織布表面の繊維同士の接着強力を向上させることでも毛羽の発生を抑制できることから、接着効果を有するアクリル系樹脂やウレタン系樹脂などの、いわゆるバインダー樹脂も、離型剤として用いることができる。離型剤の付与量は、本発明の効果を損なわない範囲であればなんら限定されるところではないが、0.05〜2.0wt%であることが好ましく、0.1〜1.5wt%であることがより好ましく、0.2〜1.0wt%であることがさらに好ましい。離型剤の付与量が0.05wt%以上であれば、それぞれ目的とする効果を得ることができ、離型剤の付与量が2.0wt%以下であれば、不織布の通気性を確保することができる。離型剤の付与方法についても、本発明の効果を損なわない範囲であればなんら限定されるところではないが、グラビアロール、キスロールなどを用いたコーティング法や、含浸法、噴霧法などが好ましく用いられる。
【0036】
本発明の不織布の水接触角は、100°〜160°であることが好ましく、105°〜150°であることがより好ましく、110°〜140°であることがさらに好ましい。水接触角が100°以上であれば、滑り性を向上させる効果を得ることができ、水接触角が160°以下であれば滑り性が高すぎるために取り扱いが困難になる恐れがない。ここで、不織布の水接触角は、例えば後記実施例(10)に記載の方法などにより測定したものをいう。
【0037】
本発明の不織布のテープ剥離強度は、0.3〜2.0N/18mmであることが好ましく、0.4〜1.8N/18mmであることがより好ましく、0.5〜1.6N/18mmであることがさらに好ましい。テープ剥離強度が0.3N/18mm以上であれば、滑り性が高すぎるために取り扱いが困難になる恐れがなく、剥離強度が2.5N/18mm以下であれば、滑り性を向上させる効果を得ることができ、粘着性の物質を含む切断対象物を切断する際の下敷き材として用いても同物質に対する離型効果を得ることができる。ここで、不織布のテープ剥離強度は、例えば後記実施例(11)に記載の方法などにより測定したものをいい、粘着性の物質を含む切断対象物の離型のしやすさ(粘着のしにくさ)を表すものである。
【0038】
本発明の不織布の用途についてはなんら限定されるところではないが、例えば、フィルター、フィルター基材、電線押え巻材等の工業資材、壁紙、透湿防水シート、屋根下葺材、遮音材、断熱材、吸音材等の建築資材、ラッピング材、袋材、看板材、印刷基材等の生活資材、防草シート、排水材、地盤補強材、遮音材、吸音材等の土木資材、べたがけ材、遮光シート等の農業資材、天井材、スペアタイヤカバー材等の車輌資材等に用いることができる。
【0039】
なかでも、下敷き材として好適に用いることができるが、本発明の下敷き材としては、筆記あるいは描画の際にそれらの対象物の下に敷く下敷き材や、堅固な面に脆い対象物を置く際に該対象物の下に敷く下敷き材や、耐熱性の低い面に高温物を置く際に該高温物の下に敷く下敷き材等が挙げられる。特に、シート状物を該シート状物を載せたテーブルの下部から吸引圧により固定し切断する際に、切断刃がテーブルに直接当たることによる切断刃あるいはテーブルの損傷を防ぎ、かつ良好な切断性を得るために該シート状物とテーブルの間に敷く下敷き材として好適に用いることができる。ここでシート状物とは、フィルム、偏光板、セラミックシート、基板、あるいはそれら複合体等の電子部品や、不織布、紙、発泡体シート、フィルム、樹脂シート等、なんら限定されるところではないが、本発明の不織布は特に、シート状の電子部品の切断加工時の下敷き材として好適である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づき本発明につき具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。なお、前記した不織布の各特性値、および下記実施例における各特性値は、次の方法で測定したものである。
【0041】
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
【0042】
(2)固有粘度
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは以下の方法で測定した。
オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを下記式により求めた。
η=η/η=(t×d)/(t×d
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
:オルソクロロフェノールの密度(g/cm
ついで、相対粘度ηから下記式、
IV=0.0242η+0.2634
により固有粘度IVを算出した。
【0043】
(3)繊度(dtex)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値を、ポリマーの密度で補正し、小数点以下第二位を四捨五入して求めた。
【0044】
(4)目付(g/m
30cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
【0045】
(5)厚さ(mm)
A.通常荷重時
JIS L 1906(2000年版)の5.1に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点を0.01mm単位で測定、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
B.低荷重時
直径16mmの加圧子を使用し、荷重2kPaで、30cm×50cmの不織布において任意の15点について0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
C.高荷重時
直径16mmの加圧子を使用し、荷重200kPaで、3030cm×50cmの不織布において任意の15点について0.01mm単位で測定し、その平均値の小数点以下第三位を四捨五入した。
【0046】
(6)充填密度
上記(4)、(5)A.でそれぞれ求めた目付(g/m)、通常荷重時の厚さ(mm)、およびポリマー密度から、下記式を用いて算出し、小数点以下第二位を四捨五入した。
【0047】
充填密度=目付(g/m)÷厚さ(mm)÷10÷ポリマー密度(g/cm
(7)通気量(cc/cm/sec)
JIS L 1906(2000年版)の4.8(1)フラジール形法に基づいて、気圧計の圧力125Paで、30cm×50cmの不織布において任意の45点について測定した。ただし、その平均値は小数点以下第二位を四捨五入した。
【0048】
(8)低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量(mm)
上記(4)B.で求めた低荷重時の厚さ(mm)から、上記(4)C.で求めた高荷重時の厚さ(mm)を差し引いた値を、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量とした。
【0049】
(9)表面平均粗さ(μm)
JIS B 0601(1994年版)の3.1に記載の定義に基づきRa(算術平均粗さ)を求めた。測定は株式会社小坂研究所製のサーフコーダSE−40Cを用いて、カットオフ値2.5mm、評価長さ12.5mm、送り速さ0.5mm/sの条件で、30cm×50cmの不織布の、不織布長さ方向を評価長さ方向とした場合(タテ)、および不織布幅方向を評価長さ方向とした場合(ヨコ)についてそれぞれ表裏各10点、合計40点の測定を行い、その平均値を有効数字一桁となるよう四捨五入した値を表面平均粗さ(μm)とした。
【0050】
(10)水接触角(°)
JIS R 3257(1999年版)に記載の試験方法を参考に、試料から採取した3cm×3cmの試験片を、協和界面科学株式会社製FACE接触角計CA−Dの試料台にセットし、その直上5mmの位置から、注射器を用いて2μlの蒸留水を滴下し接触角を測定した。30cm×50cmの不織布の10点で測定を行い、その平均値の小数点以下第一位を四捨五入し、水接触角とした。
【0051】
(11)テープ剥離強度(N/18mm)
試料から採取した不織布長さ方向25cm×不織布幅方向5cmの短冊状の試験片を、平らな台上に固定し、その上に長さ方向15cm×幅方向1.8cmのニチバン株式会社製“セロテープ”(登録商標)を、不織布長さ方向とテープ長さ方向を合わせて、テープ長さ方向10cmの部分のみ、テープと不織布の間に空気が入らないように貼り付けた。テープの不織布に貼り付けていない長さ方向5cm部分を不織布面と垂直方向に立ち上げ、その先端をばねばかりのフック部分に固定し、ばねばかりを垂直方向に引き上げ、テープが完全に剥がれるまでの間にかかった最大荷重を測定し、不織布長さ方向の剥離強度とした。不織布幅方向の剥離強度についても、不織布長さ方向5cm×不織布幅方向25cmの試験片について、テープ長さ方向を不織布幅方向に合わせた他は不織布長さ方向の剥離強度と同様に測定を行った。30cm×50cmの不織布の、不織布長さ方向、不織布幅方向各2点、合計4点について測定を行い、その平均値の小数点以下第二位を四捨五入し、剥離強度とした。
【0052】
(実施例1)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで温度190℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度1.7dtex、目付180g/m、厚さ0.22mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.6、通気量は1.1cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは4μm、水接触角は93°、テープ剥離強度は2.6N/18mmであった。
【0053】
(実施例2)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4200m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで温度200℃、線圧50kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度1.2dtex、目付200g/m、厚さ0.24mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.6、通気量は0.6cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは4μm、水接触角は98°、テープ剥離強度は3.0N/18mmであった。
【0054】
(実施例3)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を、295℃で溶融し、口金温度300℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3800m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで温度180℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度2.4dtex、目付80g/m、厚さ0.11mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.5、通気量は3.6cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは4μm、水接触角は90°、テープ剥離強度は2.1N/18mmであった。
【0055】
(実施例4)
重量平均分子量が15万でQ値(Mw/Mn)が1.51、融点が168℃であるポリ乳酸樹脂を、230℃で溶融し、口金温度235℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集したウェブを、上下1対のフラットロールで温度130℃、線圧60kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度1.6dtex、目付150g/m、厚さ0.19mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.6、通気量は1.2cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.02mm、表面平均粗さは4μm、水接触角は88°、テープ剥離強度は2.7N/18mmであった。
【0056】
(実施例5)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.60、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を、295℃で溶融し、口金温度300℃で細孔より紡出した後、1600m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。続いて、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール系延伸機を用いて延伸倍率3.0倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、繊度3dtex、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られた繊維を水槽の中で分散させ、次いで繊維と水の混合溶液をメッシュのドラムを用いて、このドラムを回転させつつ、繊維と水を分離し、湿式不織布を漉き上げた。これを2つのロールを用いて搾水し、次いで、150℃の表面温度のドラムドライヤーの表面で乾燥を行い、さらに、210℃の表面温度のフラットロールを用い、線圧200kg/cmで熱プレスし未延伸糸を融着させ、単繊維繊度2.5dtex、目付190g/m、厚さ0.23mmの湿式短繊維不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.6、通気量は0.3cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.03mm、表面平均粗さは5μm、水接触角は80°、テープ剥離強度は2.1N/18mmであった。
【0057】
(実施例6)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで温度180℃、線圧50kg/cmで熱圧着した後、さらに連続して圧着面積率25%、彫刻深さ0.3mm、彫刻ピッチ2.0mmの糸目柄エンボスロールとフラットロールで温度200℃、線圧50kg/cmで熱圧着し単繊維繊度1.4dtex、目付160g/m、厚さ0.20mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.5、通気量は2.4cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.03mm、表面平均粗さは10μm、水接触角は93°、テープ剥離強度は2.9N/18mmであった。
【0058】
(実施例7)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=70:30の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4700m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで温度200℃、線圧70kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度0.7dtex、目付100g/m、厚さ0.12mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.6、通気量は0.3cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは1μm、水接触角は99°、テープ剥離強度は3.3N/18mmであった。
【0059】
(実施例8)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂にエチレンビスステアリン酸アミド(以下EBA、日本油脂株式会社製アルフローH−50T)を1.0wt%添加し水分率50ppm以下に乾燥したものを、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4200m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで温度190℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度1.8dtex、目付150g/m、厚さ0.20mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.5、通気量は1.3cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.02mm、表面平均粗さは4μm、水接触角は111°、テープ剥離強度は1.4N/18mmであった。
【0060】
(実施例9)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4400m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで温度190℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度1.7dtex、目付180g/m2、厚さ0.22mmのスパンボンド不織布を製造した。製造したスパンボンド不織布の片面に、グラビアコーティング法により長鎖アルキルペンダントポリマーの10wt%トルエン/メタノール混合溶液(一方社油脂工業株式会社製ピーロイル1050)を溶質分の付与量が0.1wt%となるようにコーティングした。得られた不織布の充填密度は0.6、通気量は1.1cc/cm2/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.01mm、表面平均粗さは4μm、水接触角は122°、テープ剥離強度は1.1N/18mmであった。
【0061】
【表1】

【0062】
得られた不織布の特性は、表1に示したとおりであるが、実施例1〜9の不織布は、いずれも充填密度が0.3〜0.8であって、かつ通気量が0.2〜15.0cc/cm/secであり、かつ低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmである剛性に優れる不織布であり、下敷き材等の用途に好適なものであった。さらに実施例1〜5、7〜9の不織布は、表面平均粗さも2〜9μmと、表面平滑性にも優れる不織布であり、下敷き材等の用途に好適なものであった。さらに実施例8〜9の不織布は、水接触角も100〜160°、テープ剥離強度も0.3〜2.0N/18mmと、滑り性にも優れる不織布であり、下敷き材等の用途に好適なものであった。
【0063】
(比較例1)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=80:20の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、圧着面積率25%、彫刻深さ0.3mm、彫刻ピッチ2.0mmの糸目柄エンボスロールとフラットロールで温度170℃、線圧50kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度1.8dtex、目付100g/m、厚さ0.27mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.3、通気量は20.8cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.05mm、表面平均粗さは13μm、水接触角は95°、テープ剥離強度は2.6N/18mmであった。
【0064】
(比較例2)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.60、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を、295℃で溶融し、口金温度300℃で細孔より紡出した後、1600m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。続いて、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール系延伸機を用いて延伸倍率3.0倍で延伸し、捲縮を付与してカットし、繊度3dtex、繊維長6mmのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られた繊維を水槽の中で分散させ、次いで繊維と水の混合溶液をメッシュのドラムを用いて、このドラムを回転させつつ、繊維と水を分離し、湿式不織布を漉き上げた。これを2つのロールを用いて搾水し、次いで、150℃の表面温度のドラムドライヤーの表面で乾燥を行い、さらに、180℃の表面温度のフラットロールを用い、線圧100kg/cmで熱プレスし未延伸糸を融着させ、単繊維繊度2.8dtex、目付95g/m、厚さ0.18mmの湿式短繊維不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.4、通気量は7.9cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.04mm、表面平均粗さは6μm、水接触角は78°、テープ剥離強度は2.0N/18mmであった。
【0065】
(比較例3)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=60:40の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで上下ロールともに温度220℃、線圧80kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度1.2dtex、目付170g/m、厚さ0.14mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.9、通気量は0.0cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.00mm、表面平均粗さは3μm、水接触角は98°、テープ剥離強度は3.0N/18mmであった。
【0066】
(比較例4)
水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート樹脂と、水分率50ppm以下に乾燥した固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率11モル%で融点230℃の共重合ポリエステル樹脂を、それぞれ295℃と280℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレート樹脂を芯成分、共重合ポリエステル樹脂を鞘成分とし、口金温度300℃、芯:鞘=60:40の重量比率で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3700m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に繊維ウェブとして捕集した。捕集した繊維ウェブを、上下1対のフラットロールで上下ロールともに温度170℃、線圧50kg/cmで熱圧着し、単繊維繊度1.3dtex、目付300g/m、厚さ0.43mmのスパンボンド不織布を製造した。得られた不織布の充填密度は0.5、通気量は0.5cc/cm/sec、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量は0.05mm、表面平均粗さは7μm、水接触角は99°、テープ剥離強度は2.9N/18mmであった。
【0067】
得られた不織布の特性は、表1に示したとおりであるが、比較例1の不織布は、充填密度が0.3と低く、かつ表面平均粗さも13μmと大きいため、切断性に劣り、下敷き材には不適なものであった。また比較例2および比較例4の不織布は、低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量がそれぞれ0.04mmおよび0.05mmと大きく、切断性に劣り下敷き材には不適なものであった。また比較例3の不織布は、充填密度が0.9と大きく、通気量が0.0cc/cm/secと小さいため、通気性に劣り下敷き材には不適なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の不織布は、剛性と表面平滑性に優れるため、電子部品の切断工程における下敷き材等の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の下敷き材の使用方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1:切断刃
2:切断対象物
3:切断テーブル
4:下敷き材
5:吸引圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付が50〜400g/m、充填密度が0.4〜0.8であって、かつ通気量が0.2〜15.0cc/cm/secであり、さらに低荷重時に対する高荷重時の厚さ変化量が0.00〜0.03mmであることを特徴とする不織布。
【請求項2】
不織布の表面平均粗さが2〜9μmであることを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
不織布を構成する繊維の繊度が0.1〜5.0dtexであることを特徴とする請求項1または2に記載の不織布。
【請求項4】
不織布を構成する繊維の原料がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
不織布を構成する繊維の原料が生分解性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不織布。
【請求項6】
不織布を構成する繊維の原料がポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の不織布。
【請求項7】
不織布がスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の不織布。
【請求項8】
不織布を構成する繊維が滑剤を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の不織布。
【請求項9】
不織布の少なくとも片面に離型剤が付与されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の不織布。
【請求項10】
不織布の水接触角が、100°〜160°であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の不織布。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の不織布からなる下敷き材。

【図1】
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【公開番号】特開2007−284859(P2007−284859A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66240(P2007−66240)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】