説明

不織布構造体、シートクッション材及びそれからなる車両用シート

【課題】 座り心地と耐久性に優れる不織布からなるシートクッション材を提供する。
【解決手段】 シートクッション材を構成する不織布構造体の不織布がソフトな不織布、ハードな不織布よりなり、不織布表皮材で包み込まれ、座部上側には表皮材、さらには、前記ハードな不織布の溝部が、相対する溝部の略中間に互い違いとなるように形成している不織布構造体からなることを特徴とするシートクッション材により解決され、座り心地と耐久性に優れるクッションが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反発性に富み、ヘタリが少なくクッション材や緩衝材用途に適した不織布構造体、シートクッション材及びそれからなる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布はその応用範囲が広く、比較的薄手のものは紙などの代替用途としても用いられている一方、積層を重ねることで数十cmの厚さの物も知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような数cm〜数十cmの厚さの不織布あるいはその構造体は、主にクッションなどの緩衝材用途、防音材用途として利用される。
【0004】
車両シートなどのクッション材原料は、現在はウレタンフォームが主流である。これは、安価で加工性に優れ、耐久性もあることから採用されているが、通気性が悪いこと、リサイクル性に乏しいことなど問題点も抱えている。
【0005】
このため、従来から不織布構造体、ウレタンフォームを繊維に、特にポリエステル繊維を用いたものに置き換える研究開発が広く進められている(例えば、特許文献2或は特許文献3)。しかしながら、繊維を用いた材料を長時間座るようなクッション材用途へ利用することは、耐久性の点で進んでいない。
【0006】
また、長時間座るクッションでは、単に従来の不織布を用いたものを用いると座り心地も良しくない。
【0007】
そこで、座り心地が良好となるように不織布にもソフトなすなわち柔らかい物性を持たせるべく、短繊維からなる繊維塊を多数接着させて構成された不織布構造体であって、前記繊維塊がマトリックス繊維とバインダー繊維とからなり、かつ前記繊維塊が相互の接触部の一部で実質的に接着し、かつ繊維塊を構成する短繊維が繊維塊の少なくとも2面の面内においてランダムな方向に配列することが開示されている(例えば、特許文献4)。
【0008】
また、不織布にハードなすなわち硬い物性を持たせるべく、クッション材の表裏に縦方向に複数の溝部を形成したものであって、該裏溝部を、表と相対する位置、または表と相対する位置が略中間になるように間隔を置いて左右それぞれ2本以上、横方向の両端から1/8〜1/3の距離にそれぞれ形成させたマットレスが開示されている(例えば、特許文献5)。
【特許文献1】特開平6−146148号公報(段落〔0017〕、〔実施例1−7〕参照)
【特許文献2】特開平8−164038号公報(段落〔0007〕−〔0009〕、段落〔0024〕および〔実施例〕参照)
【特許文献3】特開平5−269264号公報(段落〔0003〕、段落〔0021〕参照)
【特許文献4】特開2000−355865号公報
【特許文献5】特開平7−265176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、座り心地と耐久性に優れる不織布からなるシートクッション材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、シートクッション材を構成する不織布構造体の不織布がソフトな不織布とハードな不織布よりなる不織布構造体で解決されるものであり、不織布構造体がソフトな不織布とハードな不織布構造体よりなり、ハードな不織布において、ウェブの層がシート平面に対し垂直であり、ハードな不織布の両側に縦方向に溝部を形成したことを特徴とする不織布構造体、あるいは前記ハードな不織布の溝部が相対する溝部の略中間に互い違いとなるように形成している不織布構造体により解決される。
【0011】
また、シートクッション材を構成する前記不織布構造体の不織布がマトリックス繊維とバインダー繊維からなり、その組成が、マトリックス繊維:バインダー繊維=97:3〜50:50であり、加熱による自己接着により一体接合されたことを特徴とするシートクッション材、あるいはシートクッション材を構成する不織布構造体のソフトな不織布においてウェブの層がシート平面に対し水平であり密度がハードな不織布の40〜90%であることを特徴とするシートクッション材により解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば座り心地と耐久性に優れるクッションが得られる。また、不織布の素材をポリエステルに限定することで、リサイクル性を向上させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の不織布構造体となる不織布の原料は短繊維である。短繊維の素材としては、(1)合成繊維:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTTP)、ポリ乳酸などのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、この他アクリル繊維など、(2)レーヨンなどの再生繊維、(3)天然繊維:絹、綿、ウール、麻など、が挙げられる。
【0014】
用いる繊維に適宜加工処理を施すのも任意である。耐光処理や耐熱処理、難燃処理、抗菌処理を適宜施すことで、必要な機能を付与することが出来る。
【0015】
本発明においては、不織布構造体の強度を十分に保つために不織布を構成する繊維同士・積層するウェブ同士の接着性を上げるために、マトリックス繊維よりも融点(または軟化点)の低い物質を一部に、または全部に含むバインダー繊維を一部に、用いることが必要である。
【0016】
マトリックス繊維とバインダー繊維を混ぜてウェブを作る場合、マトリックス繊維とバインダー繊維の混率は97:3〜50:50が好ましく、さらには90:10〜70:30が好ましい。その理由は、バインダー繊維の比率が少ない場合は耐久性に乏しく、多すぎると座り心地が悪くなりコストも経済的でない。
【0017】
このようなバインダー繊維の例としては次のようなものが挙げられる。すなわち、(1)イソフタル酸などを共重合したPETからなる繊維、(2)オレフィンからなる繊維、(3)これら共重合PET、オレフィンを一部の成分として含む複合繊維、などである。(3)の例としては芯がPETで、鞘がイソフタル酸共重合PETからなる芯鞘複合繊維がある。
【0018】
また、ポリ乳酸は他のPET等の芳香族ポリエステルに較べて融点が低いので、PET繊維と混用してバインダー繊維として利用することが出来る。
【0019】
耐久性、耐熱性の点から、これらのバインダー繊維は融点の高いものが好ましく、また溶融接着点の剥離抑制には熱可塑性弾性バインダー繊維が好ましい。
【0020】
環境問題が重要視される昨今、使用済み製品を処分する際の環境負荷などをないがしろにすることは出来ない。本発明においても、原料をポリ乳酸などの生分解性素材とすることで、廃棄後の環境負荷を小さくすることが出来る。また、ウレタン発泡体とは異なり、原料をポリエステル系素材に限定することで、リサイクルが容易になるというメリットも生じる。
【0021】
本発明に用いるハードな不織布とは、以下に説明する方法によって得ることができるものであり、その密度が35〜50kg/m3のものである。
【0022】
本発明に用いるハードな不織布は、短繊維を薄く積層したウェブを何重にも重ね合わせた積層構造を有する。この時、ウェブの層がシート平面に対し垂直であることが特徴である。通常、ウェブを積層する場合は垂直方向に積み重ねていく。ウェブを水平方向に重ねて不織布構造体を製造する方法は実用的ではない。このため、本発明のウェブの層がシート平面に対し垂直である不織布構造体のハードな不織布を製造する方法は、例えば次の方法によることができる。
【0023】
すなわち、本発明に用いるハードな不織布は、(A)ポリエステル繊維と(B) 鞘に芯より融点が低い低融点成分を使用した芯鞘型複合繊維を、混綿したカードウエブを、遠赤外線又は熱風ヒータで仮融着し、所定の密度及び厚さに応じて積層し、この積層体を熱処理して、積層体を形成する各層間を相互に融着するという方法において、上記熱処理を、上記積層体を上下2枚のプレート間に圧縮保持させ、蒸気釜に入れ、蒸気を導入するという方法で実施するものであり、この際、上記積層体が起立した状態で、熱処理を受けることを特徴とする超嵩高繊維集合体の製造方法で製造できる。
【0024】
本発明に用いるハードな不織布は、縦方向に溝部が形成されていることも特徴である。この溝部は、例えば次の方法等により設けることが出来る。
【0025】
すなわち、例えば高融点ポリエステル短繊維(繊度15dtex、長さ51mm)と低融点ポリエステル短繊維(繊度3.3dtex、長さ51mm)を80:20の割合で混合し、開繊後カーディングして薄いシート状とする。
【0026】
そのシートをクロスラッパー方式にて積層し、得られたウェブを熱処理して、更にこれらを積層したものを所定の間隔で縦および横方向に板状の突起を突設した金属板で上下から挟み込み、スチームで型押し熱処理して、本発明のハードな不織布を得ることができる。
【0027】
上述の金属板で挟み込むに際しては、図4に示すように金属板に突設した板状の突起を設定することにより、溝部を形成することができる。
【0028】
このように熱成形、あるいは一体成形によって溝部を設けることで、溝部表面付近の密度が局部的に高くなる。この状態が、本発明の不織布構造体をシート用途に用いたときの高弾性・耐久性を生む。
【0029】
さらに、図4に示すように金属板に突設した板状の突起が上下互いに交互になるように
設定することにより、相対する溝部の略中間に互い違いに溝部を形成して製造できる。相対する溝部の略中間に互い違いに溝部を形成することにより、密度が局部的に高くなる部分を分散し、座り心地の良いものとすることができる。
【0030】
上述の方法で得られた溝部を有する不織布構造体はマットレス状であり、ベッドマット用途に主として用いられるが、本発明のために製作しても良い。さらには、ベッドマット生産時の耳部をカットした部分を利用すれば、より経済的である。
【0031】
上述の方法により溝部を設ける場合、積層方向の厚みが100mmのものであれば、その深さは15〜45mmが好ましく、20〜30mmがさらに好ましい。また、溝部の間隔は20〜100mmが好ましく、40〜70mmがさらに好ましい。
【0032】
溝部は不織布構造体の少なくともいずれか1つの側面から設ければ十分であるが、相対する面に設け、一方の側面に設けた溝部が、相対する溝部の略中間に互い違いになるように形成することが好ましい。
【0033】
本発明に用いるソフトな不織布とは、以下に説明する方法によって得ることができ、その密度が5〜45kg/m3のものである。
【0034】
本発明に用いるソフトな不織布は、通常の工程、すなはちマトリクス繊維とバインダー繊維を混綿、開繊、クロスレイヤー、カードを通したウェブの層がシート平面に対し水平であり、その熱成形品の密度がハードな不織布の40〜90%であること、さらには45〜85%であること、さらには50〜80%であることが好ましい。この範囲であれば、座った時の座り心地、耐久性が良好なシートクッション材が得られる。
【0035】
また、本発明に用いるソフトな不織布は、バインダー繊維を含む玉綿より構成されてもよい。例えば、次に記載の方法により設けることが出来る。
【0036】
すなわち、本発明に用いるソフトな不織布は、基体繊維であるポリエステル系繊維と、この基体繊維よりも融点の低い低融点成分を含むポリエステル系バインダー繊維とを開繊機により均一に混合して、開繊したウエブを風送ラインに供給するとともに、この風送ラインにポリエステル系繊維から得られた玉綿状繊維を供給し、前記基体繊維とバインダー繊維と玉綿状繊維とが前記風送ラインにおいて均一に配合されたウエブを成型枠内へ送り込み、その後に前記バインダー繊維の低融点成分の融点以上の温度により熱処理して、この低融点成分の熱融着により前記繊維どうしを一体化させる方法で製造できる。
【0037】
あるいは、本発明のソフトな不織布は、予備開繊機により短繊維を予備開繊し、次いで、空気流を用いて垂直方向に堆積レベルが低い部分へ自動的に積み上げるようにして短繊維を堆積した後、熱融着処理により第1次熱融着を行い不織布とし、前記不織布を少なくとも前記不織布よりも小さい繊維塊とし、その繊維塊を所望の形状とした後に、熱融着処理により第2次融着を行うことにより製造できる。
【0038】
このように熱成形によってソフトな不織布が得られる。その密度は、上述の理由によりハードな不織布の40〜90%であることが好ましい。
【0039】
本発明に用いる不織布表皮材とは、マトリックス繊維とバインダー繊維からなり、加熱による自己接着、又は、ニードルパンチにより交絡された不織布、又は、ニードルパンチにより交絡された後に、加熱による自己接着により一体接合された不織布であり、その厚さが3〜20mm、密度が10〜40kg/m3のものである。そして、ハードな不織布とソフトな不織布を双方とも含め不織布構造体全体を覆い、それら表面を一まとめにする
ものである。
【0040】
本発明に用いる不織布表皮材は、マトリックス繊維とバインダー繊維からなり、その組成が、マトリックス繊維:バインダー繊維=90:10〜50:50であり、加熱による自己接着により一体接合された不織布である。シートクッション材に成形する際に、この不織布表皮材で包んだ後に成形することにより、耐久性の高いシートクッション材が得られる。
【0041】
前記不織布表皮材において、それを構成するバインダー繊維の比率が10未満の場合不織布の強度が弱いため成形時の作業性が悪く、51以上の場合不織布の剛性が高いため表面の仕上がりに皺がはいったりする。
【0042】
また、不織布表皮材を、マトリックス繊維とバインダー繊維からなりその組成がマトリックス繊維:バインダー繊維=90:10〜50:50であり、ニードルパンチにより交絡したのみの不織布、又はニードルパンチにより交絡された後に、加熱による自己接着により一体接合された不織布とすることにより、より耐久性の高いものとなり、耐久性の高いシートクッション材を得ることができる。
【0043】
更に、耐久性を持たせるために上述の不織布表皮材にプリプレグ材、例えば洗濯用ネットのようなものをサンドイッチしても良い。(図3 参照)
本発明の不織布構造体は、シートクッション用途に適するが、中でも車両用のシートクッション用途に最適である。本願発明の不織布構造体は、貫通気孔構造を有しているので、従来のウレタンフォームに較べて通気性に優れ、車両シートのクッションに用いた場合、長時間の座り続けていても蒸れる事がない。
【0044】
本発明のシートクッション材の座部上側には、肌触りを良くするために通常の化粧布や人工皮革、編物、メッシュ等の表皮材で覆うが、不織布表皮材(5)との間にホットメルト不織布を配置し、プレスして不織布と表皮材を密着させても良い。このことにより、表皮材はより強固に不織布に密着され剥がれにくくなる。
【0045】
例えば、メス型金型へホットメルト不織布、不織布表皮材(5)、ソフトな不織布(2)、ハードな不織布(3)、裏面凸部不織布(4)、面ファスナー(6)の順番に積層して、上部からオス金型にてプレスしてセットすることが挙げられる。プレスされた時に、ソフトな不織布の密度がハードな不織布の40〜90%となるのがより良い。この金型全体を蒸気釜内部に入れ、蒸気釜内部の空気を真空ポンプで抜いて減圧した後、蒸気釜内部に蒸気を吹き込んで熱処理して不織布の形状を固定することが挙げられる。
【0046】
本発明のシートクッション材の下側に面ファスナーを設置し、車体本体にも設置することにより、汚れたりした場合に車体本体から容易に取り外すことができ、新品に交換したり、再度の熱処理によりリニューアルしたシートクッション材に取り替えることができる。
【0047】
本発明は、シートクッション材として好適に用いられるものであるが、その他の用途にも利用可能である。例えば、緩衝材用途、断熱材用途、防音材用途、フィルター用途などである。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
カネボウ合繊(株)製ギャッチ付きベッドマット(特許文献5)(密度40kg/m3)を長辺に並行に幅80mmにカットして、カット断面を天あるいは地として図2の如く
並べてハードな不織布(3)を得た。このときに用いたベッドマットのギャッチは、図4に示すような相対する溝部の略中間に互い違いに溝部7が形成された不織布を用いた。
【0049】
カネボウ合繊(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維H588(15dtex、51mm)を80%、バインダー繊維としてユニチカファイバー(株)製共重合PET短繊維4080(3.3dtex、51mm)20%を開繊、混綿し、カード機、クロスレイヤー処理を行った。引続き試料の両面側から140〜200℃加熱処理を施し、さらに加熱処理ゾーン出口にてローラで不織布を圧縮して厚さを調節して目付け600g/m2、厚さ100mmの不織布(ソフトな不織布(2))を得た。
【0050】
カネボウ合繊(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維310(2.2dtex、51mm)を80%、バインダー繊維としてユニチカファイバー(株)製共重合PET短繊維4080(3.3dtex、51mm)20%を開繊、混綿し、カード機、クロスレイヤー処理を行い、ニードルパンチ処理にて交絡させた後に、試料の両面側から140〜200℃加熱処理を施し、さらに加熱処理ゾーン出口にてローラで不織布を圧縮して厚さを調節して目付け500g/m2、厚さ10mmの不織布(不織布表皮材(5))を得た。
【0051】
また、裏面凸部不織布(4)は、座席の取り付け台にフィットさせるため、カネボウ合繊(株)製ギャッチ付きベッドマットの耳部をプレスして密度55kg/m3で作製した。
【0052】
最小約150mm深さの座席シート用のメス金型をシート上部側を下にして用意し、表皮材(厚み10mmのポリエステル製編み物で目付155g/m2)、ホットメルト不織布(ポリエステル系融点110℃目付15g/m2)、不織布表皮材(5)、ソフトな不織布(2)、ハードな不織布(3)、裏面凸部不織布(4)、面ファスナー(6)の順番に投入して、メス金型の上からオス金型を重ねてプレスしてセットした。この時、ソフトな不織布の密度がプレスされた時にハードな不織布の約60%となるように充填した。
【0053】
この金型全体を蒸気釜内部に入れ、蒸気釜内部の空気を真空ポンプで抜いて減圧した後、蒸気釜内部に3kg/cm2の蒸気を吹き込んで135℃にて15分間熱処理した。得られたシートクッション材は非常に座り心地がよく、耐久性にも優れたものであった。
【0054】
(実施例2)
実施例1のバインダー繊維を帝人ファイバー株式会社製熱可塑性弾性バインダー繊維エルク(6.6dtex、51mm)に置き換えて、実施例1と同様に金型にセットした。
【0055】
この金型を蒸気釜内部に入れ、蒸気釜内部の空気を真空ポンプで抜いて減圧した後、蒸気釜内部に10kg/cm2の蒸気を吹き込んで175℃にて15分間熱処理した。得られたシートクッション材は非常に座り心地がよく、耐久性にも優れたものであった。
【0056】
(実施例3)
カネボウ合繊(株)製ギャッチ付きベッドマット(特許文献5)(密度40kg/m3)の耳部を三力製作所製のロータリー式万能粉砕機にて適度な条件で破砕し、未開繊の繊維塊部分の径が1mm〜30mm程度の玉綿と開繊された繊維が混在するウエブを得た。このウェブを実施例1のソフトな不織布部分に置き換えて、上述と同様に金型にセットした。
【0057】
この金型を蒸気釜内部に入れ、蒸気釜内部の空気を真空ポンプで抜いて減圧した後、蒸気釜内部に10kg/cm2の蒸気を吹き込んで175℃にて15分間熱処理し、シート
クッション材を得た。得られたシートクッション材は非常に座り心地がよく、耐久性にも優れたものであった。
【0058】
(比較例1)
カネボウ合繊(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維H588(15dtex、51mm)を80%、バインダー繊維としてユニチカファイバー(株)製共重合PET短繊維4080(3.3dtex、51mm)20%を開繊、混綿し、カード機、クロスレイヤー処理を行った。引続き試料の両面側から140〜200℃加熱処理を施し、さらに加熱処理ゾーン出口にてローラで不織布を圧縮して厚さを調節して目付け600g/m2、厚さ100mmの不織布を得た。
【0059】
最小約150mm深さの座席シート用のメス金型をシート上部側が下となる様にして配置し、表皮材(厚み10mmのポリエステル製編み物で目付155g/m2)を投入し、次にホットメルト不織布(ポリエステル系融点110℃目付15g/m2)を、さらに上記目付け600g/m2、厚さ100mmの不織布を8枚重ね順番に投入して、上部からオス金型にてプレスしてセットした。得られたシートクッション材は実施例に比較して座り心地が悪く、耐久性も良くなかった。
【0060】
(比較例2)
シートクッションの形状に成形された発泡性ウレタンに、表皮材を設けたシートクッション材を入手した。
【0061】
実施例、比較例で得られたシートクッション材を、以下のモニターによる官能試験と揺動試験で評価した。尚性能評価方法は以下の方法による。
【0062】
座り心地:○は良、△は普通、×は悪い
蒸れ感:○は良、△は普通、×は悪い
耐熱ヘタリ性:70℃雰囲気中で50%圧縮した状態で22時間放置した後の厚みの保持率で○は70%以上の保持率、△は50%以上の保持率、×は50%を下回るものの3水準で評価した。
【0063】
揺動試験ヘタリ:600Nの荷重をかけた状態で、8の字状に20万回繰返し圧縮した後の厚みの保持率で○は85%以上の保持率、△は70%以上の保持率、×は70%を下回るものの3水準で評価した。
【0064】
揺動試験状態変化:シートクッション材内部の剥離、表皮材との剥離、車体との設置状態等の総合評価を行なった。得られた結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明はクッション材、緩衝材、防音材、断熱材などさまざまな用途に利用可能である。中でもクッション材用途は有望である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のシートクッション材の断面図である。それぞれの不織布構造体、表皮材等でシートクッション材が構成されることを示す。
【図2】ハードな不織布の形態を示した斜視図である。これにおいて、ウェブの層がシート平面に対し垂直であり、不織布の両側に縦方向に溝部を形成したことをも示す。
【図3】プリプレグ材の一例を示した写真である。
【図4】金属板に突設した板状の突起を有する治具で圧力をかけることで、ハードな不織布の溝部が、相対する溝部の略中間に互い違いに形成されるようにする方法の一例である。
【符号の説明】
【0068】
1.表皮材
2.ソフトな不織布
3.ハードな不織布
4.裏面凸部不織布
5.不織布表皮材
6.面ファスナー
7.溝部
8.金属板に突設した板状の突起を有する治具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布構造体がソフトな不織布とハードな不織布構造体よりなり、ハードな不織布において、ウェブの層がシート平面に対し垂直であり、ハードな不織布の両側に縦方向に溝部を形成したことを特徴とする不織布構造体。
【請求項2】
前記ハードな不織布の溝部が、相対する溝部の略中間に互い違いとなるように形成している請求項1記載の不織布構造体。
【請求項3】
ソフトな不織布とハードな不織布よりなる請求項1記載の不織布構造体が、不織布表皮材で包み込まれ、座部上側には表皮材からなることを特徴とするシートクッション材。
【請求項4】
シートクッション材を構成する不織布構造体の不織布が、マトリックス繊維とバインダー繊維からなり、その組成が、マトリックス繊維:バインダー繊維=97:3〜50:50であり、加熱による自己接着により一体接合されたことを特徴とする請求項3記載のシートクッション材。
【請求項5】
シートクッション材を構成する不織布構造体のソフトな不織布において、ウェブの層がシート平面に対し水平であり、密度がハードな不織布の40〜90%であることを特徴とする請求項3記載のシートクッション材。
【請求項6】
シートクッション材を構成する不織布構造体のソフトな不織布が、バインダー繊維を含む玉綿を、加熱による自己接着により一体接合された不織布であり、密度がハードな不織布の40〜90%であることを特徴とする請求項1記載のシートクッション材。
【請求項7】
不織布表皮材が、マトリックス繊維とバインダー繊維からなり、その組成が、マトリックス繊維:バインダー繊維=90:10〜50:50であり、加熱による自己接着により一体接合された不織布であることを特徴とする請求項3記載のシートクッション材。
【請求項8】
不織布表皮材が、マトリックス繊維とバインダー繊維からなり、その組成が、マトリックス繊維:バインダー繊維=90:10〜50:50であり、ニードルパンチにより交絡された不織布、又は、ニードルパンチにより交絡された後に、加熱による自己接着により一体接合された不織布であることを特徴とする請求項3記載のシートクッション材。
【請求項9】
不織布構造体がポリエステル繊維のみからなる、請求項1記載のシートクッション材。
【請求項10】
請求項1乃至2いずれかに記載の不織布構造体からなることを特徴とする、車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−223707(P2006−223707A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43546(P2005−43546)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】