説明

不良インレットの処理方法

【課題】 機能不良非接触ICタグの混入を未然防止する不良インレットの処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明の不良インレットの処理方法は、インレットベースフィルム11に形成されたアンテナパターン2にICチップ3が結合された一群の非接触ICタグ用インレット1の製造後の段階において、各インレット単位毎の検査を行い、機能不全が検出された場合は、当該単位不良インレットのICチップ3をアンテナパターン装着部から剥離治具20を用いて剥離するか、ICチップ3を平圧型押圧具またはローラ型押圧具を用いて破壊し機能回復不能とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不良インレットの処理方法に関する。詳しくは、非接触ICタグ用インレットの製造後であって、最終的に非接触ICタグ化する前の段階において、該インレットの検査を行い、機能不全が検出された単位のインレットを回復不能に破壊して処理する方法に関する。従って、本発明の技術分野は非接触ICタグの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICタグは、情報を記録して保持し非接触で外部装置と情報交換できるので、運送や物流等における認識媒体として、あるいは商品の品質管理、在庫管理等の各種目的に多用されるようになってきている。
しかし、このように非接触ICタグが広範に使用されるようになると、出荷した非接触ICタグの中に機能不良品が混入した場合には、情報の書き込みや読み取りが不可能な事態が生じ、却って非接触ICタグを使用するシステムの信頼を失う結果となる。
【0003】
非接触ICタグを製造する場合、ベースフィルムにアンテナパターンを形成し、ICチップを接合してインレット(一般的には「アンテナシート」ともいう。)を製造した後、オーバーシートをラミネートする等して必要な最終製品形態に合わせた加工を施すが、このインレット後の加工工程において、一度機能不全としてチェックされた中間品が、何らかの理由で機能を回復する場合がある。
このような場合は、最終的には良品として出荷されてしまうおそれがある。しかし、このように一度は機能不全を検出されたインレットやICタグは、構造的欠陥を残しており市場での使用過程において不具合を再発することが多い。機能回復することがあることから、ICチップ自体の欠陥というよりは、ICチップとアンテナ間の接続が完全ではないことに起因することが多いと考えられる。
【0004】
本発明は、このような機能不安定な非接触ICタグが製品化され出荷されることを防止することを目的とするものである。非接触ICタグが一個一個の単品の製造物である場合は、不良が検出された時点で除去すれば問題が生じないが、連続した巻き取り状態、あるいは数単位の連接体で製造される場合は、不良品検出の都度、切断して除去する処置を行うと工程が不連続になり、あるいは中断されて円滑な生産ができなくなる問題がある。
そこで、本発明では生産工程の妨げとならない方法で不良インレットを確実に処理する方法を提案するものである。
【0005】
関連する先行技術文献として、特許文献1は、半導体パッケージの製造工程において、回路基板の不良個所に不良識別マークを付与する工程と、当該不良識別マークを付与した部分を除いた箇所にICチップを実装する工程、を含む製造工程を提案している。
また、特許文献2は、ICカードの製造方法において、ICチップの製造時にICが正常に動作するか否かを検査し、検査結果が正常であるICのメモリに特定データの書き込みを行い、最終工程でICチップ内部メモリの内容を読み出して、NG品であるか否かの判定を行うことを記載している。しかし、特許文献1のようにマークを付与するだけでは、マークの脱落や磨滅等により識別が不可能になることが考えられる。また、特許文献2の場合は、メモリに記録されていても視覚では直ちに判別できないので、最終製品として出荷されてしまったり、NG品を使用してしまうことが考えられる。
また、特許文献3は、非接触ICタグの出荷方法等に関するが、本願のようにICチップを剥離したり破壊することまでは記載していない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−338933号公報
【特許文献2】特開2002−042093号公報
【特許文献3】特開2007−026239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の非接触ICタグの出荷方法では、最終的な検品結果が重視され、中間工程の検査結果が確実に出荷製品に反映されない状況があった。しかし、中間工程で不具合が検出されたICタグは構造的な欠陥を残すことが多く、最終製品に含めないことが好ましい。
また、特許文献3の場合は、インレットの不良ICチップ部分にマークを施したり、ICチップ部分を打ち抜きして穿孔を設けることを提案しているが、マークを施すだけの場合はその後の加工で隠れて見えなくなる問題があり、穿孔を設ける場合は当該穿孔部分が変形したり破断したりして、後加工が困難になる問題があった。
そこで、本発明ではインレット製造後の段階における検査で機能不全が検出された場合は穿孔して打ち抜くことをしないで、ICチップを強制剥離するか押し割りして破壊し、機能を回復しないようにすることにより、当該課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、インレットベースフィルムに形成されたアンテナパターンにICチップが結合された一群の非接触ICタグ用インレットの製造後の段階において、各インレット単位毎の検査を行い、機能不全が検出された場合は、当該単位不良インレットのICチップをアンテナパターン装着部から剥離治具を用いて剥離し機能回復不能とすることを特徴とする不良インレットの処理方法、にある。
【0009】
本発明の第2は、インレットベースフィルムに形成されたアンテナパターンにICチップが結合された一群の非接触ICタグ用インレットの製造後の段階において、各インレット単位毎の検査を行い、機能不全が検出された場合は、当該単位不良インレットのICチップを平圧型押圧具を用いて破壊し機能回復不能とすることを特徴とする不良インレットの処理方法、にある。
【0010】
本発明の第3は、インレットベースフィルムに形成されたアンテナパターンにICチップが結合された一群の非接触ICタグ用インレットの製造後の段階において、各インレット単位毎の検査を行い、機能不全が検出された場合は、当該単位不良インレットのICチップをローラ型押圧具を用いて破壊し機能回復不能とすることを特徴とする不良インレットの処理方法、にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の不良インレットの処理方法では、インレット製造後に機能等の検査を行い、その結果により不良インレットのICチップが機能回復不可能な状態にされるので、機能不安定な非接触ICタグを誤って製品化したり出荷することがない。
本発明の不良インレットの処理方法では、インレット製造後の検査において機能不全が検出された単位のインレットのICチップ部分を強制剥離または押し割り破壊するだけなので、簡易な方法で不良品の使用を確実に排除できる。
本発明の不良インレットの処理方法では、不良インレット部分を打ち抜きしないので、その後の非接触ICタグ加工を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は、本発明の不良インレットの処理方法の第1実施形態を説明する図、図2は、同第2実施形態を説明する図、図3は、同第3実施形態を説明する図、図4は、不良インレット処理システムの説明図、図5は、非接触ICタグ用インレットの一般的形態を示す図、図6は、非接触ICタグの一般的形態を示す図、図7は、非接触ICタグの製造工程を示すフローチャート、である。
【0013】
本発明は不良インレットの処理方法に関するが、まず、インレットと非接触ICタグについて説明する。図5は、非接触ICタグ用インレットの一般的形態を示す図であって、図5(A)は、平面図、図5(B)は、図5(A)のICチップ3部分を通る(1単位のインレットの)断面図である。
インレット1は、図5(A)のように、インレットベースフィルム11にアンテナパターン2を形成し、当該アンテナパターン2の両端部2a,2bにICチップ3を接合して固定している。ICチップ3は、制御機能、記憶機能及び入出力機能等を備える非接触ICタグ用のものである。アンテナパターン2は、図5(A)では平面コイル状のものを示しているが、2片のパッチアンテナやダイポールアンテナからなる場合もある。
通常は、インレットベースフィルム11にラミネートした金属箔をエッチングしたり、導電性インキにより印刷したパターンからなっている。
【0014】
インレット1は、図5(A)のように連続した形態にされているのが通常である。一列に限らず、二列または三列以上に連続する場合もある。「一群の」とはこのように連続した状態であることを意味する。インレット1自体も非接触ICタグとして非接触通信機能を有するが、この後、ICチップ3とアンテナパターン2面を保護する表面保護シートをラミネートし、インレットベースフィルム11のICチップ3とは反対側面には粘着剤加工を行って、非接触ICタグとして完成するのが通常である。
本発明の不良インレットの処理方法は、このような最終加工を行う前のインレット1の状態で行われる。
【0015】
図6は、非接触ICタグの一般的形態を示す図であって、図6(A)は、平面図、図6(B)は図6(A)のICチップ3部分を通る(1単位のICタグの)断面図である。
上記のように、インレット1に、表面保護シート4を接着剤層5を介してラミネートする。接着剤層5とアンテナパターン2、またはインレットベースフィルム11間は隙間が空いているように図示しているが、実際は密着しているものである。インレットベースフィルム11のICチップ3とは反対側面に粘着剤層6と剥離紙7を設ける粘着剤加工を行って非接触ICタグ10として完成する。ただし、貼り付け用途でない吊り下げ型等の場合は粘着剤加工は行わない。単位の非接触ICタグ1を分離する切り離し線9を設ける場合は、表面保護シート4をラミネートしてからミシン目線等により形成する。ICチップ3を破壊等した不良タグ部分は打ち抜いて穿孔8にしてもよい。
【0016】
図1は、本発明の不良インレットの処理方法の第1実施形態を説明する図である。
第1実施形態の特徴は、機能不全が検出された不良インレットのICチップ3をアンテナパターン2から強制剥離する特徴がある。強制剥離は、図1(A)のように、例えば、ハンマー形状等の剥離治具20を用いて、ICチップ3を剥離することができる。
この例の剥離治具20は、固定端21に支持されたアーム22を有し、アーム22の先端にはICチップ3の固定部(ICチップ3のパッドとアンテナパターン2の両端部2a,2bの接合部)3kに剪断力を及ぼす刃先23を有している。この刃先23を付勢して固定部3kに衝撃を与えることによりICチップ3が剥離する。刃先23には鋼鉄等の金属材料を使用できる。ICチップ3はアンテナパターン2の両端部2a,2bに2つのパッドが導電性接着剤や導電性接着フィルム等により接着固定しているが、1個のICチップ3の固定部3kに対して、2kg〜5kg/チップ程度の剪断力が働けばICチップ3をアンテナパターン2から剥離できることが確認されている。
【0017】
ICチップ3の固定部3kからの剥離後は、剥離したICチップ3は吸引除去してインレットに残らないようにする。図1(B)は、ICチップ3を強制剥離した後のインレット1を示す図である。ICチップ3は剥離除去されて無くなっている。この後、前記のように他のインレットとともに表面保護シート4のラミネート等を行って非接触ICタグ10にする加工を行う。個片のICタグに切断する場合は、当該部分の不良品は抜き取って除去するが、連接した非接触ICタグとする場合は、ICチップ3を強制剥離した後のものを正常の非接触ICタグと誤って使用しないように、マーク等を施すことが好ましい。後工程でマーキングを検知して除去(当該1単位を除去して前後を再接続。)するか、打ち抜いて穿孔するためである。
【0018】
図2は、本発明の不良インレットの処理方法の第2実施形態を説明する図である。
第2実施形態の特徴は、機能不全が検出された不良インレット1のICチップ3を圧縮してICチップ3を押し割りする特徴がある。押し割りは、図2(A)のように、平圧型押圧具30を用いて、押し当て台31上で圧力をかけてICチップ3を破壊する。
平圧型押圧具30の先端とICチップ3を位置合わせして荷重をかけるようにする。この場合は、インレット1の走行を停止する間欠送りが必要になる。近年のICタグ用ICチップ3は、平面サイズが1mm〜2mm角以内に小型化し、厚みも100μm〜500μm程度に薄層化しているので、1個のICチップ3の平面面積に対して、100N/チップ程度以上の押圧力が働けばICチップ3を押し割り破壊することができる。
平圧型押圧具30や押し当て台31には、ステンレス材料やクロムメッキした鉄材料等の硬質の材料を使用できる。
【0019】
図2(B)は、ICチップ3を押し割り破壊した後のインレットを示す図である。破壊したICチップの破片3hが残っているが、吸引除去してインレット1にはできるかぎり残らないようにする。この後、同様に表面保護シート4のラミネート等が行われるが、ICチップ3を強制剥離した後のものを誤って使用しないように、マーク等を施すことが同様に好ましい。不良インレットの除去は上記と同様に行う。
【0020】
図3は、本発明の不良インレットの処理方法の第3実施形態を説明する図である。
第3実施形態の処理方法の特徴は、機能不全が検出された不良インレットのICチップ3を回転ローラ型押圧具を走行させてICチップ3を押し割りする特徴がある。
押し割りは、図3(A)のように、支柱42の先端にローラ43を有するローラ型押圧具40を用い、押し当て台41とローラ43の間をインレット1のICチップ3を通過させて、押し割り破壊することができる。ICチップ3は微細化しているが、ローラ43を5〜10mm程度の幅にすれば、高い精度で通過させる必要もない。この場合は、ローラ43を間欠的に上下動させ、不良チップ3上でのみ下降させれば、インレット1を、矢印Y方向に連続走行させても機能不全ICチップ3のみを破壊できる。ローラ43や押し当て台41には、ステンレス材料やクロムメッキした鉄材料等を使用できる。
1個のICチップ3の平面面積に対して、100N/チップ程度の圧縮力が働けばICチップ3を破壊することができるのは、前記のとおりである。ICチップ3を押し割り破壊した後の状態は図示してないが、図2(B)と同様の状態になる。
【0021】
図4は、不良インレット処理システムの説明図である。
処理システム100は、インレット検査部50とラインコントローラ60と制御用コントローラ70とICチップ破壊または剥離機構80からなっている。
インレット検査部50は走行するインレット1を検査する部分であり、一般的には、インレット(非接触タグ)1と通信する(1)非接触リーダであるが、非接触リーダ以外に、(2)インレットアンテナの共振周波数を測定するアナライザや、(3)ICチップ3の実装位置を検査する画像処理装置であってもよい。非接触リーダであれば、インレット1から応答の無いことを検知し、アナライザの場合も共振周波数を測定できないことから不良を検知できる。また一般に、ICチップ3とアンテナ端部の位置が正常範囲内にない場合(正常位置からずれている場合)は、ICチップ3とアンテナ間の接合が不良の場合が多い。従って、正常な位置関係を画像処理装置に記憶させておけば、観察した画像の合否によりインレットの良否を判定することができる。
【0022】
ラインコントローラ60は、インレット1を検査するタイミングとICチップ3を破壊(または剥離)するタイミングを制御する部分である。検査及び破壊(または剥離)のタイミングはインレット1の走行速度や連続走行か間欠送り走行かによって調製する。間欠送りの場合は検査停止時間を考慮する。一般的には間欠送り走行させ、1のインレットを検査している停止時間の間に、インレット1の1ピッチ先の位置において不良が検出された先行インレット1のICチップ3を破壊または剥離する動作をさせることができる。
制御用コントローラ70は、チップ破壊または剥離機構80に対して、破壊(または剥離)指令を発する部分である。インレット1の送りピッチが変動する場合は、必要によりチップ破壊または剥離機構80の位置制御等も行う。もちろん、不良が検出されない場合は破壊動作は行わない。チップ破壊または剥離機構80には、既述のように、平圧型押圧具、ローラ型押圧具、剥離治具を採用できる。
【0023】
次に、参考のためではあるが非接触ICタグの製造工程について説明する。
図7は、非接触ICタグの製造工程を示すフローチャートである。各種の製造方法があるが、アンテナパターンをフォトエッチングにより製造する工程を示している。
製造工程のS1は、インレットベースフィルム11の準備工程である。この工程は、基材とするインレットベースフィルム11に金属箔をラミネートして準備する。インレットベースフィルム11には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリ塩化ビニル等の各種フィルム材料を使用できるが、20μmから100μm程度の厚みのものが好ましく使用される。金属箔には銅箔やアルミニウム箔の10μmから40μm程度の厚みのものが、通常使用される。
【0024】
製造工程のS2は、アンテナパターン2の形成工程である。この工程では、上記金属箔面に感光液を塗布し、フォトマスクを使用して露光し、アンテナのレジストパターンを形成する。次いで、フォトエッチングしてアンテナパターン2を残存させる。アンテナパターン2の両端部2a,2bも同時に形成する。感光液によらず、アンテナのレジストパターンを金属箔面に印刷するものであってもよい。
【0025】
製造工程のS3は、ICチップ3の固定工程である。アンテナパターン2の両端部2a,2bに導電性接着剤等を用いてICチップ3を装着する工程である。アンテナパターン2の一端をインレットベースフィルム11の背面を通して、アンテナパターン2の端部2aに導通させる処理も同時に行われる。これによりインレット1が完成する。
【0026】
製造工程のS4は、インレットの機能等の検査である。機能等検査は、JIS等の基準を満たすこと、その他の製造基準等であるが、一般に実用基準を満たすものであれば機能不全とはされない。機能不全の典型的な例は、非接触通信が完全に不可能な場合である。これにはICチップ自体が不良の場合とICチップ3とアンテナパターン2の接続不良に起因することが多い。原因は明らかでないが、一定基準の電磁波を与えても応答しない場合も含まれる。
【0027】
機能等不全の他の例は、非接触通信距離が基準を満たさない場合である。動作範囲70cm以下の近傍型のICカード(ICタグも同様)では、最小動作磁界強度(Hmin )は、150mA/m rmsとされている(JISX6323−2、6.2動作磁界強度)。この試験のためには、市販のリーダライタを用いて、30cmの距離で読み取り書き込みが可能なことが試験される。検査用リーダライタを用いてもよい。前記のように、アナライザや画像処理装置でも一部の機能チェックは可能である。近接型ICカード(動作範囲10cm以下)では、より短距離での性能が試験される。
【0028】
また、交流磁界や交流電界、静電気、静磁界を受けた場合の後の動作試験を含めてもよい。この検査基準は、JISX6323−1(近傍型ICカード)に規定されている。
上記の検査で所定の基準を満たさない場合は、機能不全として、ICチップ3を剥離またはICチップ3を押し割り破壊する。
【0029】
製造工程のS5は、表面保護シート4のラミネート工程である。表面保護シート4は、非接触ICタグ10のアンテナパターン2やICチップ3を保護するもので、インレットベース11と同種の材料を使用することができる。通常はインレットベースフィルム11と同等かそれよりは厚みの薄い基材をラミネートして使用する。紙基材でも良いが耐水性が求められる場合が多いので、プラスチックフィルムを使用するのが好ましい。
【0030】
製造工程のS6は、粘着剤層6の塗工工程である。この工程では、インレットベースフィルム11の下面に粘着剤層を塗工する加工を行う。通常は、剥離紙7に粘着剤を塗工し、インレットベースフィルム11と一体にする。
【0031】
製造工程のS7は、最終製品としての出荷検査である。第2回目の機能等検査を兼ねるものである。インレットシートを最終製品に加工する際の工程でも不具合が発生する場合があるからである。非接触ICタグ10はICカードの製造過程のように熱圧プレスの強圧を受けることはないが、プレスラミネートの工程や、ウェブ状でローラ間を移動する間に屈曲し、不具合が新たに生じる場合がある。
第2回目の機能等検査は第1回目の機能等検査項目、および必要によりそれに付加する項目について行い、機能不全の非接触ICタグ10は、除去するかICチップ3部分またはアンテナパターン2の一部を打ち抜き除去して穿孔8を設ける。一群の連接体にする場合の所定単位の切断や切り離し線9の形成は、その後行われる。
【実施例】
【0032】
以下、実際の実施形態について実施例を用いて説明する。
ICタグ製品のインレットベースフィルム11として、厚み38μmの透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに20μm厚のアルミニウム箔をドライラミネートした基材を使用しこれに感光性レジストを塗布した後、アンテナパターンを有するフォトマスクを露光して感光させた。露光現像後、フォトエッチングして、図5(A)のようなアンテナパターン2を有するインレット1が完成した。なお、1つのアンテナパターン2は外形が、ほぼ45mm×76mmの大きさとなるようにした。
【0033】
上記インレットベースフィルム11のアンテナパターン両端部2a,2bに、平面サイズが1.0mm角、厚み150μmであるICチップ3をフェイスダウンの状態で熱圧をかけて装着した。アンテナパターン2の一端をベースフィルム11の背面を通して、アンテナパターン2の端部2aに導通させる処理も同時に行った。
【0034】
インレット1が完成した段階で機能検査を行った。これには、市販のICタグリーダライタ(株式会社ウェルトキャット製「RCT−200−01」;13.56MHz)を使用し、当該リーダライタから30cmの距離で対象の単位のインレット1から応答が得られるか否かの検査を行った。インレット1は巻き取り状であるので、対象の1個から応答が得られるように周囲のインレットを遮蔽して検査を行う必要がある。応答が得られなかった場合は、ICチップ3を図2の平圧型押圧具30を用い、105N/チップの力を加えて押し割り破壊した。
【0035】
次に、ポリエステル系ホットメルト接着剤を介し、厚み32μmの表面保護シート(PETフィルム)4を積層し熱プレスしてラミネートした。最後にインレットベースフィルム11の背面に、厚み20μmの粘着剤層6を介して剥離紙7を積層する粘着剤加工をし、1単位の大きさ54mm×86mmの非接触ICタグ10が、5単位1列になるように断裁して剥離紙7付き非接触ICタグ製品を完成した。単位の非接触ICタグ間に切り離し線9を設ける加工も行った。
【0036】
最終製品の非接触ICタグ10の完成後に、インレット完成後と同一条件で機能検査を行った。この後の検査の段階と先の検査で検出した機能不全の非接触ICタグに対して、ICチップ3部分を打ち抜きして穿孔8を設けた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の不良インレットの処理方法の第1実施形態を説明する図である。
【図2】同第2実施形態を説明する図である。
【図3】同第3実施形態を説明する図である。
【図4】不良インレット処理システムの説明図である。
【図5】非接触ICタグ用インレットの一般的形態を示す図である。
【図6】非接触ICタグの一般的形態を示す図である。
【図7】非接触ICタグの製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 インレット
2 アンテナパターン
3 ICチップ
4 表面保護シート
5 接着剤層
6 粘着剤層
7 剥離紙
8 穿孔
9 切り離し線
10 非接触ICタグ
11 インレットベースフィルム
20 剥離治具
30 平圧型押圧具
40 ローラ型押圧具
50 インレット検査部
60 ラインコントローラ
70 制御用こんとローラ
80 チップ破壊または剥離機構
100 不良インレット処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレットベースフィルムに形成されたアンテナパターンにICチップが結合された一群の非接触ICタグ用インレットの製造後の段階において、各インレット単位毎の検査を行い、機能不全が検出された場合は、当該単位不良インレットのICチップをアンテナパターン装着部から剥離治具を用いて剥離し機能回復不能とすることを特徴とする不良インレットの処理方法。
【請求項2】
インレットベースフィルムに形成されたアンテナパターンにICチップが結合された一群の非接触ICタグ用インレットの製造後の段階において、各インレット単位毎の検査を行い、機能不全が検出された場合は、当該単位不良インレットのICチップを平圧型押圧具を用いて破壊し機能回復不能とすることを特徴とする不良インレットの処理方法。
【請求項3】
インレットベースフィルムに形成されたアンテナパターンにICチップが結合された一群の非接触ICタグ用インレットの製造後の段階において、各インレット単位毎の検査を行い、機能不全が検出された場合は、当該単位不良インレットのICチップをローラ型押圧具を用いて破壊し機能回復不能とすることを特徴とする不良インレットの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−66874(P2009−66874A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237053(P2007−237053)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】