説明

不飽和TPSを含むトレッド用ゴム組成物

本発明は、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)、ポリブタジエン(BR)、不飽和熱可塑性スチレン(TPS)コポリマーおよび補強用充填剤を含むゴム組成物に関する。
また、本発明は、そのような組成物の、耐摩耗性に関して改良された性質を、湿潤地面上での極めて良好なレベルのグリップ性を保持しながら有するタイヤトレッドの製造における使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤまたはタイヤ用半製品の製造を意図するゴム組成物に関する;本発明は、さらに詳細には、これらのタイヤのトレッドにおいて使用することのできるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている通り、タイヤトレッドは、低転がり抵抗性、高耐摩耗性および乾燥道路と湿潤道路の双方上での高グリップ性のような多くのしばしば相反する技術的条件を満たさなければならない。
特に転がり抵抗性と耐摩耗性の観点からのこの諸性質の妥協点は、近年において、特に乗用車用に意図する省エネ型の“グリーンタイヤ”に関連して、特に、補強力の観点から通常のタイヤ級カーボンブラックと拮抗し得る補強用充填剤として説明されている特定の無機充填剤によって、特に、高分散性シリカ(HDS)によって主として補強されていることに特徴を有する新規な低ヒステリシスゴム組成物の使用よって改良し得ていた。
しかしながら、タイヤトレッドの耐摩耗特性を増強することは、タイヤ設計者の絶えることのない懸念ごとである。
【0003】
特に、不飽和熱可塑性スチレン(TPS)コポリマーをタイヤトレッドにおいて使用してタイヤトレッドのある種の使用特性、特に、湿潤地面上でのグリップ性、転がり抵抗性および耐摩耗性の各性能を改良することは、例えば、文献US 5756589号、EP 0180716 A1号またはEP 0470693 A1号に記載されているように既知である。
【発明の概要】
【0004】
研究の後、本出願人は、さらに改良された耐摩耗性を有すると共に湿潤地面上での優れたレベルのグリップ性を保持するタイヤトレッドを得ることを可能にする、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、不飽和TPSコポリマーおよび補強用充填剤をベースとする特定のゴム組成物を発見した。
従って、本発明の第1の主題は、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)、ポリブタジエン(BR)、不飽和熱可塑性スチレン(TPS)コポリマーおよび補強用充填剤を含むゴム組成物に関する。
【0005】
本発明のもう1つの主題は、このゴム組成物の、タイヤまたはタイヤ用の半製品、特に、新品タイヤの製造または磨耗タイヤの再トレッド形成を意図するタイヤトレッドの製造における使用である。
本発明のもう1つの主題は、本発明に従うゴム組成物を含むトレッドである。
【0006】
本発明のもう1つの主題は、本発明に従うゴム組成物を含む場合の、タイヤそれ自体である。
本発明のタイヤは、特に、乗用車タイプ、SUV (“スポーツ用多目的車”)タイプの自動車;二輪車(特にオートバイ)および航空機;バン類、重量車両(即ち、地下鉄列車、バス、道路輸送車(トラック、けん引車両、トレーラー)、農業用および土木工学車両のような道路外車両)、および他の輸送または操作用車両から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
【0007】
本発明およびその利点は、以下の説明および典型的な実施態様を考慮すれば容易に理解し得るであろう
【発明を実施するための形態】
【0008】
I. 使用する測定および試験方法
硬化後のゴム組成物およびタイヤを、以下で示すように、特性決定する。
I.1. 引張試験
これらの試験は、弾性応力および破壊点諸特性の測定を可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46‐002に従って実施する。2回目の伸びにおいて(即ち、測定自体において使用する伸張速度においての順応サイクル後に)、引張強度(MPaでの、CRで示す)および破断点伸び(%での、ARで示す)を測定する。これらの引張測定は、全て、フランス規格NF T 40‐101 (1979年12月)に従う標準の温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)条件下において実施する。
【0009】
I.2. ショアA硬度
硬化後の組成物のシュアA硬度は、規格ASTM D 2240‐86に従って評価する。
I.3. 動的特性
動的特性は、規格ASTM D 5992‐96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互正弦剪断応力に10Hzの周波数で供した加硫組成物のサンプル(厚さ4mmおよび400mm2の断面積を有する円筒状試験片)の応答を、0.7MPaの一定応力での温度掃引中に記録する。40℃において観察されたtan(δ)の値(即ち、tan(δ)40℃)を記録する。
当業者にとっては周知の通り、tan(δ)40℃の値は、材料のヒステリシス、ひいては、転がり抵抗性を代表することを思い起されたい:tan(δ)40℃が低いほど、転がり抵抗性は低い。
【0010】
I. 4. タイヤ試験
耐摩耗性
タイヤを、特定の自動車において、走行による磨耗がトレッドの溝内に位置する磨耗指標に達するまで、実際の道路上走行に供する。任意に100に設定した対照の値よりも大きい値が、改良され結果、即ち、より大きな走行マイル距離を示す。
湿潤地面上でのグリップ性
湿潤地面上でのグリップ性能を評価するには、地面を湿った状態に保つために噴霧している極めて曲りくねったサーキットの周りを最高速度条件下に走行している所定の自動車に装着したタイヤの挙動を分析する。サーキット全体を走行するのに要した最短時間を測定する;任意に100に設定した対照の値よりも大きい値が、改良され結果、即ち、より短い走行時間を示す。
【0011】
II. 発明を実施する条件
本発明に従うゴム組成物は、スチレン/ブタジエンコポリマー(“SBR”と略記する)、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、不飽和熱可塑性スチレンコポリマー(“TPS”と略記する)および補強用充填剤を含む。
【0012】
本説明においては、特に明確に断らない限り、示すパーセント(%)は、全て質量%である。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでの範囲にある値の領域を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の範囲は、いずれも、aからbまでの範囲にある値の領域を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0013】
II‐1 ジエンエラストマー
ここで、用語“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきであることを思い起されたい。
【0014】
本発明に従うゴム組成物は、第1のジエンエラストマーとして、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)を含むという第1の本質的な特徴を有する。
上記SBRコポリマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列コポリマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのコポリマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリングおよび/または星型枝分れ化或いは官能化し得る。カーボンブラックとのカップリングにおいては、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミン化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とのカップリングにおいては、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、US 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、US 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、US 6 815 473号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、US 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。
【0015】
上記SBRエラストマーは、エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)であり得る。SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中程度のスチレン含有量または、例えば35質量%と45質量%の間の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する。
上記ゴム組成物は、SBR含有分を、好ましくは20phrと90phrの間、より好ましくは30phrと85phrの間、さらにより好ましくは50phrと80phrの間の量で含む(phrは、総エラストマー(従って、不飽和TPSコポリマーも含む)の100質量部当りの質量部を意味する)。
【0016】
本発明に従う組成物の第2の本質的な特徴は、第2のジエンエラストマーとして、ポリブタジエン(BR)を含むことである。
特に適切なのは、4%と80%の間の量の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエンまたは80%よりも多い、より好ましくは90%よりも多い、特に95%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエンである。
上記ゴム組成物は、好ましくは5phrと60phrの間の、より好ましくは10〜50phrの範囲内のBR含有分を含む。
【0017】
II.2. 不飽和熱可塑性スチレンエラストマー
本発明に従うゴム組成物は、熱可塑性スチレンコポリマー(“TPS”と略記する)を含むというもう1つの本質的な特徴を有する。
先ず第1に、熱可塑性スチレンエラストマー(“TPS”エラストマーとしても知られている)は、スチレン系ブロックコポリマーの形の熱可塑性エラストマーであることを思い起されたい。これらの熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリマーとエラストマーの中間の構造を有し、知られている通り、軟質エラストマーブロック、例えば、ポリブタジエン、ポロイソプレンまたはポリ(エチレン/ブチレン)ブロックが結合した硬質ポリスチレンブロックからなる。これらのTPSエラストマーは、多くの場合、1つの軟質セグメントが結合した2つの硬質セグメントを有するトリブロックエラストマーである。硬質および軟質セグメントは、線状、星型または枝分れ構造であり得る。また、これらのTPSエラストマーは、1つの軟質セグメントに結合した1つの硬質セグメントを有するジブロックエラストマーでもあり得る。典型的には、これらのセグメントまたはブロックの各々は、少なくとも5個よりも多い、一般的には10個よりも多い基本単位(例えば、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマーにおけるスチレン単位とイソプレン単位)を有する。
【0018】
また、“不飽和TPSコポリマー”なる表現は、エチレン系不飽和基を有する、即ち、(共役型または非共役型)炭素‐炭素二重結合を含むTPSコポリマーを意味するものと理解すべきであることを思い起されたい。“飽和TPSコポリマー”なる表現は、エチレン系不飽和(即ち、炭素‐炭素二重結合)を何ら含まないTPSコポリマーを意味するものと理解すべきである。
【0019】
1つの好ましい実施態様によれば、上記不飽和コポリマーは、少なくとも1つ(即ち、1以上)のスチレンブロック(即ち、ポリスチレンブロック)と、少なくとも1つ(即ち、1以上)のジエンブロック(即ち、ポリジエン)を含むコポリマーであり、このポリジエンブロックは、特に、ポリイソプレンまたはポリブタジエンブロックである。
1つの特定の実施態様によれば、上記TPSは、ポリジエンブロック、特に、ポリブタジエンまたはポリイソプレンブロックと、ポリスチレンブロックを含むジブロックコポリマーである;さらに好ましくは、上記TPSは、スチレン/ブタジエン(SB)およびスチレン/イソプレン(SI)ブロックコポリマー並びにこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる。
【0020】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記TPSは、少なくとも3つのブロック、即ち、2つのポリスチレンブロックの間に位置する少なくとも1つ(即ち、1以上)のポリジエンブロック、特に、ポリブタジエンまたはポリイソプレンブロックを含むコポリマーである;さらに好ましくは、上記TPSは、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)およびスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)の各コポリマー、並びにこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる。
【0021】
さらに好ましくは、この不飽和TPSエラストマーは、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)およびスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)の各ブロックコポリマー、並びにこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる。
1つのさらに特定の実施態様によれば、上記熱可塑性エラストマーは、SBSコポリマー、SISコポリマー、SIコポリマーおよびこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる。
【0022】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記TPSエラストマー中のスチレン含有量は、5%と50%の間の量である。上記の最低値よりも低いと、上記エラストマーの熱可塑性が実質的に低下するリスクに至り、一方、推奨する最高値よりも高いと、上記組成物の弾力性が悪影響を受け得る。これらの理由により、スチレン含有量は、より好ましくは10%と40%の間、特に15%と35%の間の量である。
【0023】
上記TPSエラストマーの数平均分子量(Mnで示す)は、特に上記組成物をタイヤトレッドにおいて使用するには、好ましくは50000g/モルと500000g/モルの間、より好ましくは75000g/モルと450000g/モルの間である。上記TPSエラストマーの数平均分子量(Mn)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、既知の方法で測定する。試験標本を、先ず、約1g/lの濃度でテトラヒドロフラン中に溶解する;その後、溶液を、0.45μmの有孔度を有するフィルター上で、注入前に濾過する。使用する装置は、WATERS Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、系の温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名STYRAGELを有する直列の4本のWATERSカラムセット(HMW7カラム、HMW6Eカラムおよび2本のHT6Eカラム)を使用する。ポリマー試験標本溶液の注入容量は、100μlである。検出器は、WATERS 2410示差屈折計であり、クロマトグラフデータを処理するその関連ソフトウェアは、WATERS MILLENNIUMシステムである。算出した平均分子量を、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線と対比する。
【0024】
上記ゴム組成物は、好ましくは、5phrと50phrの間の、好ましくは10phrと40phrの間の、例えば、15〜30phrの範囲内の不飽和TPSを含む。
本発明の1つの特定の好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、40〜80phrのSBR、10〜30phrのBRおよび10〜30phrのTPSコポリマーを含む。
【0025】
例えば、SBSまたはSISのような不飽和TPSエラストマーは、周知であり、例えば、Kraton社から、品名“Kraton D”(例えば、SISおよびSBSエラストマーの場合の製品 D1161、D1118、D1116、D1163)として;Dynasol社から、品名“Calprene”(例えば、SBSエラストマーの場合の製品 C405、C411およびC412)として商業的に入手可能である。
Dexco (Dow/Exxonmobil Venture)社は、例えば、下記の製品を販売している:
・Vector 8505:SBSコポリマー;
・Vector 4114:SIS/SIコポリマーのブレンド。
【0026】
II.3. 補強用充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、或いはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカのブレンドを使用することができる。
【0027】
タイヤにおいて通常使用される全てのカーボンブラック類、特に、HAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)、或いは、目的とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN772)が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号、WO‐A‐2006/069793号、WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0028】
“補強用無機充填剤”なる表現は、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”としても或いは“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその天然または合成起原の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0029】
補強用無機充填剤を使用する物理的状態は、粉末、微小球、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密形のいずれの形状であれ、重要ではない。勿論、“補強用無機充填剤”なる表現は、種々の補強用無機充填剤、特に、以下で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味することを理解されたい。
【0030】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特に、シリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特に、アルミナ(Al2O3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gのBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;および、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m2/gと400m2/gの間、より好ましくは60m2/gと300m2/gの間のBET表面積を有する。
【0031】
好ましくは、総補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の含有量は、20phrと200phrの間、より好ましくは30phrと150phrの間の量である;最適量は、知られている通り、目的とする特定の用途に応じて異なる:例えば、自転車タイヤに関して期待される補強レベルは、継続的に高速で走行することのできるタイヤ、例えば、オートバイタイヤ、乗用車用タイヤ、または重量車両のような実用車用タイヤに関して要求されるレベルよりも勿論低い。
本発明の好ましい実施態様によれば、50phrと120phrの間の無機充填剤、特に、シリカと、任意成分としてのカーボンブラックを含む補強用充填剤を使用する;カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20phrよりも少ない、より好ましくは10phrよりも少ない(例えば、0.1〜10phrの)含有量で使用する。
【0032】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の満足し得る結合を付与することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば、出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”と称されるポリスルフィド含有シラン類を使用する。
【0033】
特に適切なのは、下記の定義に限定されることなく、下記の一般式(I)に相応する“対称形”のポリスルフィド含有シランである:

(I) Z‐A‐Sx‐A‐Z

[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】

(式中、R1基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R2基は、置換されているかまたは置換されてなく、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルコキシルまたはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくは、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシル基から選ばれた基、より好ましくはC1〜C4アルコキシル基、特にメトキシルおよびエトキシルから選ばれた基)を示す)]。
【0034】
上記式(I)に相応するポリスルフィド含有アルコキシシランの混合物、特に、商業的に入手可能な通常の混合物の場合、“x”指数の平均値は、好ましくは2と5の間の、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、ジスルフィド含有アルコキシシラン(x = 2)によっても実施し得る。
【0035】
さらに詳細には、ポリスルフィド含有シランの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド類のようなビス((C1〜C4)アルコキシ(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式 [(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式 [(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(または、US 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0036】
ポリスルフィド含有アルコキシシラン類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式(I)において、R2 = OH)、または、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは4phrと8phrの間の量である。
【0037】
当業者であれば、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層によって被覆されているか或いはその表面に、官能部位、特にヒドロキシルを含み、該充填剤と上記エラストマー間の結合を形成させるためのカップリング剤の使用を必要とすることを条件として、この項で説明する補強用無機充填剤と等価の充填剤として使用し得ることを理解されたい。
【0038】
II.4. 各種添加剤
また、本発明に従うゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;上述した以外の可塑剤;疲労防止剤;補強用樹脂;メチレン受容体(例えば、フェノール・ノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤および加硫活性化剤のような、特にトレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または数種も含む。
【0039】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、無機充填剤の被覆用の薬剤、或いはゴムマトリックス中での充填剤の分散性の改善および組成物の粘度の低下のために、知られている通り、未硬化状態における組成物の加工能力を改善することのできるより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン類;ポリオール類;ポリエーテル類;第一級、第二級または第三級アミン類;または、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
【0040】
1つの好ましい実施態様によれば、本発明のゴム組成物は可塑剤も含む。好ましくは、この可塑剤は、固体の炭化水素系樹脂、液体可塑剤またはこれら2つの混合物である。
可塑剤の含有量は、好ましくは5phrと50phrの間、より好ましくは10phrと40phrの間、例えば、15phrと35phrの間の量である。
【0041】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、この可塑剤は、そのTgが0℃よりも高い、好ましくは+20℃よりも高い炭化水素系樹脂である。
当業者にとっては既知であるように、“樹脂”なる名称は、本特許出願においては、定義によれば、一方では、周囲温度(23℃)において固体であり(オイルのような液体可塑剤化合物とは対照的に)、且つ、他方では、意図するゴム組成物と相溶性(即ち、典型的には5phrよりも多い使用量において混和性)である化合物に対して使用される。
【0042】
好ましくは、上記可塑化用炭化水素系樹脂は、下記の特徴の少なくともいずれか1つを有する:
・20℃よりも高い、より好ましくは30℃よりも高いTg
・400g/モルと2000g/モルの間、より好ましくは500g/モルと1500g/モルの間の数平均分子量(Mn);
・3よりも低い、好ましくは2よりも低い多分散性指数(Ip) (注:Ip = Mw/Mn、Mwは質量平均分子量である)。
さらに好ましくは、この可塑化用炭化水素系樹脂は、上記の好ましい特徴の全てを示す。
【0043】
上記炭化水素系樹脂のマクロ構造(Mw、MnおよびIp)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する:溶媒 テトラヒドロフラン;温度 35℃;濃度 1g/l;流量 1ml/分;注入前に0.45μmの有孔度を有するフィルターにより濾過した溶液;ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正;直列の3本“Waters”カラムセット(“Styragel” HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(“Waters 2410”)およびその関連操作ソフトウェア(“Waters Empower”)による検出。
【0044】
上記炭化水素系樹脂は、脂肪族または芳香族或いは脂肪族/芳香族タイプであり得、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。これらの樹脂は、天然または合成であり得、さらに、石油系であり得るまたはあり得ない(そうであるある場合、石油樹脂の名称でも知られている)。これらの樹脂は、好ましくは、専ら炭化水素系である。即ち、これらの樹脂は、炭素原子および水素原子のみを含む。
【0045】
1つの特に好ましい実施態様によれば、上記炭化水素系可塑化用樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、およびこれらの樹脂の混合物によって形成される群から選ばれる。
特に、上記炭化水素系可塑化用樹脂のうちでは、α‐ピネン、β‐ピネン、ジペンテンまたはポリリモネン、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー、例えば、C5留分/スチレンコポリマーまたはC5留分/C9留分コポリマーの樹脂が挙げられ、これらの樹脂は、単独で、または液体可塑剤、例えば、MESまたはTDAEのような可塑化用オイルと組合せて使用し得る。
【0046】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記可塑剤は、“低Tg”可塑剤と称する20℃で液体である、即ち、定義すれば、−20℃よりも低い、好ましくは−40℃よりも低いTgを有する可塑剤である。
芳香族性または非芳香族性いずれかの増量剤オイル、ジエンエラストマーに対してその可塑化特性について知られている任意の液体可塑剤を使用し得る。ナフテン系オイル(特に、水素化ナフテン系オイル)、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、エステルおよびエーテル可塑剤、ホスフェートおよびスルホネート可塑剤、およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる液体可塑剤は、特に適している。
ホスフェート、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセリントリエステル、およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる化合物は、特に好ましい。
【0047】
本発明の1つの特に好ましい実施態様によれば、低Tg液体可塑剤として、下記の式(II)に相応するカルボン酸ジエステルを使用する:

R − O − OC − (CH2)n − CO − O − R

(式中、nは、1〜15の範囲内に含まれ;R基は、同一または異なるものであって、1〜30個の炭素原子を有する(且つ、特にS、OおよびNから選ばれるヘテロ原子を含み得る)任意の炭化水素系基(または鎖)を示す)。
【0048】
好ましくは、nは3〜10の範囲内に含まれ、R基は4〜15個の炭素原子を含む線状、枝分れまたは環状のアルキル基である。4〜15個の炭素原子を含むそのような好ましいR基としては、例えば、ブトキシエチル、ブトキシエトキシエチル、ブチル、イソブチル、ジブチル、ジイソブチル、ベンジルブチル、ヘプチル、2‐エチルヘキシル、ベンジルオクチル、ジオクチル、ジイソオクチル、イソノニル、イソデシル、ジイソデシル、トリデシル、およびオクチルデシル基を挙げることができる。特に、アジピン酸(即ち、アジペート、n = 4)、アゼライン酸(即ち、アゼレート、n = 7)またはセバシン酸((即ち、セバケート、n = 8)のジエステル、特に、アジピン酸のジエステル即ちアジペート(上記の式(II)においてn = 4)を使用する。
【0049】
さらに好ましくは、式(II)の上記アジペートのうちでは、下記の式(III)に相応するアジペートを使用する:

H2m+1Cm − O − OC − (CH2)4 − CO − O − CmH2m+1

(式中、mは、1〜30、より好ましくは4〜15、特に7〜13で変動する)
【0050】
好ましい式(III)のアジペートは、アジピン酸ジイソオクチル(m = 8)、アジピン酸ジイソノニル(m = 9)、アジピン酸ジイソデシル(m = 10)およびアジピン酸ジトリデシル(m = 13)である。これらのアジペートは、商業的に入手可能である。例えば、Exxon Mobil社から販売されている“Jayflex”シリーズの可塑剤、特に、アジペート“Jayflex DIOA”(m = 8)、“Jayflex DINA”(m = 9)、“Jayflex DIDA”(m = 10)または“Jayflex DTDA”(m = 13)を挙げることができる。式(III)のこれらのアジペートの他の例としては、Bayer社からの“Adimoll”シリーズ、CP Hall社からの“Plasthall”シリーズ或いはLonza社からの“Diplast”シリーズを挙げることができる。
【0051】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、液体可塑剤として、グリセリントリエステルを使用し得る。“グリセリントリエステル”なる表現は、トリエステルの混合物を意味することも理解されたい。このトリエステルは、好ましくは、主として(50質量%よりも多く、より好ましくは80質量%よりも多くにおいて)、不飽和C18脂肪酸、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物によって形成される群から選ばれる脂肪酸からなる。さらに好ましくは、合成起原または天然起原(例えば、ヒマワリまたはナタネ植物油の場合)のいずれであれ、使用する脂肪酸は、50質量%よりも多くにおいて、さらにより好ましくは80質量%よりも多くにおいてオレイン酸からなる。高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレート)は、周知である;例えば、そのようなトリエステルは、出願 WO 02/088238において、タイヤ用トレッドにおける可塑剤として記載されている。
【0052】
II.5. ゴム組成物の製造
本発明の組成物は、適切なミキサー内で、例えば、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階と称する)、並びに、その後の典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2段階(“生産”段階と称する)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋系を混入する。
【0053】
そのような組成物の製造方法は、例えば、下記の段階を含む:
‐SBRコポリマー中に、第1段階(“非生産”段階と称する)において、ポリブタジエン、不飽和TPSコポリマーおよび補強用充填剤を混入し、全てを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階(例えば、1回以上の工程で);
‐混ぜ合せた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
‐その後、第2段階(“生産”段階と称する)において、架橋系を混入する段階;
‐全てを110℃よりも低い最高温度まで混練する工程;
【0054】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械的段階で実施し、その間に、最初の工程において、全ての必須ベース成分(SBRコポリマー、ポリブタジエン、不飽和TPSコポリマー、補強用充填剤および無機充填剤の場合のカップリング剤)を標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入し、その後、例えば1〜2分間混練した後の第2の工程において、架橋系を除いた他の添加剤、必要に応じてのさらなる充填剤被覆剤または加工助剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間である。
そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、低温(例えば、40℃と100℃の間)に維持した開放ミルのような開放ミキサー内で混入する;その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と15分の間で混合する(生産段階)。
【0055】
架橋系自体は、好ましくは、イオウと、一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この加硫系に、各種既知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等を添加し、上記第1非生産段階中および/または上記生産段階中に混入する。イオウ含有量は、好ましくは、0.5phrと3.0phrの間の量であり、また、一次促進剤の含有量は、好ましくは、0.5phrと5.0phrの間の量である。
【0056】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、チウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用することができる。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“DCBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド(“TBBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンイミド(“TBSI”と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(“ZBEC”と略記する)およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
【0057】
その後、そのようにして得られた最終組成物を、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはスラブの形にカレンダー加工するか、或いは、押出加工して、例えば、トレッドを製造するのに使用するゴム形状要素を形成する。
本発明は、未硬化状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方の上述した組成物、タイヤおよびタイヤトレッドに関する。
【0058】
III. 本発明の典型的な実施態様
III.1. 組成物の製造
以下の試験を以下の方法で実施する:スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、不飽和TPSコポリマー、補強用充填剤(シリカおよびカーボンブラック)、さらにまた、加硫系を除く各種他の成分を、初期容器温度がほぼ60℃である密閉ミキサーに連続して導入する(最終充填比:ほぼ70容量%)。その後、熱機械加工(非生産段階)を、165℃の最高“落下”温度に達するまで、全体でおよそ3〜4分間継続する1工程で実施する。
【0059】
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、次いで、イオウとスルフェンアミドタイプの促進剤とを30℃のミキサー(ホモフィッシャー)内で混入し、混ぜ合せた混合物を適切な時間(例えば、5分と12分の間)で混合する(生産段階)。
そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質を測定するためのゴムのスラブ(2〜3mmの厚さ)または微細シートの形にカレンダー加工するか、或いはトレッド形状に押出加工する。
【0060】
III. 2. タイヤ試験
この試験は、本発明に従う組成物を含むトレッドの耐摩耗性に関しての改良を、対照トレッドとの比較において実証する。
この実証を行うために、2通りのゴム組成物、即ち、本発明に従う組成物(以下C.2で示す)と本発明に従わない組成物(対照、以下C.1で示す)を上述したようにして製造した。
組成物C.1は、SBRとBRをベースとする、乗用車用の“グリーンタイヤ”のトレッドの製造において通常使用される当業者にとっての参照組成物である。
【0061】
本発明に従う組成物C.2においては、対照組成物C.1との比較において、20phrのSBRを、20phrのTPSコポリマー(SBS)で置換えた。
組成物C.1およびC.2は、双方とも、炭化水素系樹脂(ポリリモネン樹脂)と液体可塑剤(MESオイル)を組合せて含む可塑剤を含む。
これら組成物の配合(phr、即ち、総エラストマー(従って、不飽和TPSコポリマーも含む)の100質量部当りの質量部での)、これら組成物のゴム特性およびタイヤ走行試験の結果を下記の表1、2および3に要約している。
【0062】
組成物C.1およびC.2は、同じ剛性レベル(ショアA硬度)、等価の引張強度値を有し、また、本発明に従う組成物C.2は改良された破断点伸びも示していることに注目されたい。本発明に従う組成物は、同じレベルの動的特性、特に、等価のヒステリシスと、ひいては等価の転がり抵抗性と同義である、対照組成物C.1の値と実質的に同等であるtan(δ)40℃の値を示している。
従って、上記から、不飽和TPSコポリマーの本発明の組成物中への導入は、対照組成物C.1と比較して、破断点伸びは別として、組成物の性質を実質的に変化させていないと結論付けるべきである。
【0063】
これら2通りの組成物を、RENAULT型式およびLAGUNAモデルの乗用車における寸法195/65R15を有する乗用車タイヤのトレッドとして、前記の項I.4に説明しているようにして試験した。
表3(相対的単位での結果、対照タイヤP.1に対して100の基礎点)を見るに、タイヤの走行は、対照C.1 (タイヤP.1)と比較して、湿潤地面上での同じ優れたグリップ性レベルを保持しながらの、本発明に従う組成物C.2を含むタイヤP.2のトレッドの耐摩耗性における特に顕著な改良を明白にしていることが観察される。
【0064】
要するに、これらの試験の結果は、スチレン/ブタジエンコポリマー、ポリブタジエンおよび不飽和TPSコポリマーの組合せ使用が、本発明に従うゴム組成物を含むタイヤトレッドにおける耐摩耗性と湿潤地面上でのグリップ性との間の妥協点を有意に改良するのを可能にしていることを実証している。
【0065】
表1

(1) SBR溶液(乾燥SBRとして表した含有量):25%のスチレン、58%の1,2‐ポリブタジエン単位および22%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン単位 (Tg = −21℃);
(2) 4.3%の1,2単位、2.7%のトランス単位、93%のシス‐1,4単位を有するBR (Tg = −106℃);
(3) SBS:Dexco社からの“Vector 8505”;
(4) シリカ:“HD”タイプのRhodia社からの“Zeosil 1165 MP”(BETおよびCTAB:およそ160 m/g);
(5) カーボンブラック N234 (ASTM級);
(6) TESTPカップリング剤(Degussa社からの“Si69”;
(7) MESオイル(Shell社からの“Catenex SNR”)+ポリリモネン樹脂 (DRT社からの“Dercolyte L120”)
(8) ステアリン(stearine) (Uniquema社からの“Pristerene”);
(9) 酸化亜鉛 (工業級;Umicore社から);
(10) イオウ;
(11) N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS);
(12) DPG = ジフェニルグアニジン (Flexsys社からの“Perkacit DPG”);
(13) N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からのSantoflex 6‐PPD)。
【0066】
表2

【0067】
表3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)、ポリブタジエン(BR)、不飽和熱可塑性スチレン(TPS)コポリマーおよび補強用充填剤を含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
SBR含有量が、20phrと90phrの量である、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
SBR含有量が、30phrと85phrの量である、請求項2記載のゴム組成物。
【請求項4】
BR含有量が、5phrと60phrの量である、請求項1〜3のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項5】
BR含有量が、10〜50phrの範囲内である、請求項4記載のゴム組成物。
【請求項6】
不飽和TPSコポリマーの含有量が、5phrと50phrの間の量である、請求項1〜5のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項7】
不飽和TPSコポリマーの含有量が、10phrと40phrの間の量である、請求項8記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記不飽和TPSコポリマーが、少なくとも1つのポリスチレンブロックと少なくとも1つのポリジエンブロックを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記ポリジエンブロックが、ポリイソプレンまたはポリブタジエンブロックである、請求項8記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記不飽和TPSコポリマーが、ポリジエンブロックとポリスチレンブロックを含む、請求項8または9記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記TPSが、好ましくは、スチレン/ブタジエン(SB)ブロックコポリマーおよびスチレン/イソプレン(SI)ブロックコポリマー、並びにこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる、ジブロックコポリマーである、請求項10記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記不飽和TPSコポリマーが、少なくとも3つのブロック、即ち、少なくとも2つのポリスチレンブロックの間に位置する少なくとも1つのポリジエンブロックを含む、請求項8または9記載のゴム組成物。
【請求項13】
スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)およびスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)の各ブロックコポリマー、並びにこれらのコポリマーのブレンドによって形成される群から選ばれる、請求項12記載のゴム組成物。
【請求項14】
さらに、可塑剤を含む、請求項1〜13のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項15】
可塑剤の含有量が、5phrと50phrの間の量である、請求項14記載のゴム組成物。
【請求項16】
前記可塑剤が、Tgが0℃よりも高い炭化水素系樹脂である、請求項14または15記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記炭化水素系樹脂が、シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、およびこれらの樹脂の混合物によって形成される群から選ばれる、請求項16記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記可塑剤が、20℃で液体であり、そのTgが−20℃よりも低い可塑剤である、請求項14または15記載のゴム組成物。
【請求項19】
前記液体可塑剤が、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、エステル可塑剤、エーテル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤、およびこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる、請求項18記載のゴム組成物。
【請求項20】
請求項16または17記載の炭化水素系樹脂と請求項18または19記載の液体可塑剤を含む、請求項14または15記載のゴム組成物。
【請求項21】
前記補強用充填剤が、カーボンブラック、シリカ、またはカーボンブラックとシリカの混合物を含む、請求項1〜20のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項22】
補強用充填剤の量が、20phrと200phrの間の量である、請求項1〜21のいずれか1項記載のゴム組成物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤ。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤトレッド。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項記載のゴム組成物の、タイヤまたはタイヤ用半製品の製造における使用。

【公表番号】特表2012−520385(P2012−520385A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500198(P2012−500198)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053189
【国際公開番号】WO2010/105984
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】