説明

両性イオン化合物およびその使用

【課題】界面活性剤のような細胞損傷作用を有さない新規な両性イオン化合物、その使用、およびその大量生産を可能にする製造方法を提供する。
【解決手段】カルボキシメチル化された短鎖ジアルキルアミノアルキルアミドの形での両性イオン構造を有する非界面活性化合物、炎症性皮膚疾患などの治療薬としてのその使用、およびカルボン酸と短鎖ジアルキルアミノアルキルアミンより短鎖ジアルキルアミノアルキルアミドに転換した後、ハロゲンカルボン酸またはその塩で両性イオン構造を有する非界面活性化合物に転換する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短鎖ジアルキルアミノアルキルアミドのカルボキシアルキル化によって得られうる両性イオン化合物およびその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸のジメチルアミノプロピルアミドのカルボキシメチル化によって得られるようなグリシナート化合物はかなり前から周知である。それらは「アミドプロピルベタイン」の名称で界面活性剤として普及している(例えば、Parfuemerie und Kosmetik、1996年、77(4)、244−248頁を参照)。
【0003】
この物質クラスの周知の化合物は、例えば、ヤシ油脂肪酸、水素化ヤシ油脂肪酸、またはヤシ油脂肪酸フラクションによって誘導されている(例えば、ココアミドプロピルベタイン)。それらは、例えば、香粧品製剤(例えば、シャワー用ジェル、シャンプー、液体せっけん)および食器用洗剤における二次界面活性剤として広く使用されている。
【0004】
周知のアミドプロピルベタインの特徴はその界面活性作用、すなわち、水性系の表面張力を削減する特徴である。この特徴は分子構造によって、すなわち、一方では疎水性長鎖脂肪酸残基、および他方では親水性両性イオンジメチルアンモニウムグリシン酸基によってもたらされる。通常の脂肪酸残基は、特に、天然脂肪、特に、ヤシ油脂肪または水素化ヤシ油脂肪に存在するもの、すなわち飽和および不飽和C−C18脂肪酸を含んでなる。カプロン酸のアミドプロピルベタイン(C6)も記載されている。
【0005】
例えば、アミンオキシド、プロリン、エクトイン、またはトリメチルグリシンなど両性イオン物質の多くは、いわゆる両親媒性であり、すなわち、それらは水性系の構造もしくは秩序を増大させる。この物質の多くは周知のようにオスモライトであり、すなわち、それらは細胞の水分を制御し、かつそれによって安定化をもたらす。
【0006】
多くの界面活性剤の不利な作用は皮膚および眼の刺激である。アミドプロピルジメチルグリシナートの刺激ポテンシャルは、例えばアルキル硫酸またはアルキルエーテル硫酸のものより小さいが、それらも可能な刺激作用が全くないわけではない。
【非特許文献1】Parfuemerie und Kosmetik、1996年、77(4)、244−248頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、両性イオン、親水性頭基を有するが、従来技術に記載されている界面活性剤のような細胞損傷作用を有さず、したがって界面活性構造を有さず、かつ好ましくは、皮膚および眼を刺激しない新しい化合物を提供することであった。好ましくは、これらの両性イオン化合物は、大量生産を可能にする方法で製造されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外にも、周知の、長鎖脂肪酸に基づく上述したアミドプロピルジメチルグリシナートとは逆に、本発明による化合物は細胞損傷作用を有さず、刺激性ではないことが見出されたが、このことは界面活性の特徴を欠いていることに起因すると思われる。
【0009】
特に意外にも、本発明による化合物は皮膚モデルにおいて抗炎症作用を誘発することが見出された。
【0010】
したがって、本発明の対象は、請求項10〜12に記載されているさまざまな治療として使用するための、請求項1〜9に記載されている両性イオン化合物、および請求項13に記載されているその製造方法である。
【0011】
本発明による化合物の別の利点が、従来使用されている化合物と比べその小さな分子量にあるが、それによって高濃度のイオンもしくは両性イオンの構造が達成されうる。
【0012】
本発明による方法の利点が、本発明による化合物をゲルの形成なしに、したがって粘性の問題なしに高濃度で製造する可能性にある。
【0013】
本発明による化合物およびこれを製造するための方法を以下に例示的に述べるが、本発明をこれらの例示的な実施形態に限定してはならない。以下に範囲、一般式、または化合物クラスが挙げられている場合、これらは明示的に述べられている対応する範囲または化合物のグループだけではなく、個々の値(範囲)または化合物の除去によって得られうる、すべての部分範囲およびすべての化合物の部分グループも含んでなる。本明細書の範囲内で文書が引用される場合、その内容は完全に本発明の開示内容に属するものとする。「短鎖」、両性イオン、非界面活性化合物としては以下、式Iによれば、6個以上の炭素原子のXを有するものと理解される。「長鎖」両性イオン、非界面活性化合物としては、炭素原子が5個より多いXを有するものと理解すべきである。挙げられているすべてのパーセント(%)は、別の指示がない場合、質量パーセントである。
【0014】
本発明は、一般式I
【化1】

[式中、
nは1〜6、好ましくは、1〜3、好ましくは、3であり、かつmは1〜4、好ましくは、1または2であり、かつRおよびRは互いに独立して同一か、または異なる、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素残基、好ましくは、C〜C炭化水素残基、かつ好ましくはCH残基であり、かつYは、2価の炭化水素残基、好ましくは、−CH−であり、かつXは、m価の残基または共有結合であるとともに、mが1である場合のXは、H、エチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピルまたは3−ヒドロキシプロピルであり、かつmが2である場合にXは、直接共有結合、−CH−、−CH(OH)−、−CHCH (OH)−、または−CH(OH)CH(OH)−であり、かつmが2である場合にXは、直接結合、または少なくとも1つのOH基で置換され、もしくは置換されていない、2価のC〜C炭化水素残基であり、かつm>2である場合にXは、少なくとも1つのOH基で置換され、もしくは置換されていない、m価のC〜C炭化水素残基である]の化合物を含む。
【0015】
式Iの本発明による化合物の好ましい実施形態において、mは2であり、かつXは直接共有結合、CH、CH(OH)、CHCH (OH)、またはCH(OH)CH(OH)、好ましくは、XはCHである。特に好ましい化合物が、式Iの実施形態であり、ここでnは3であり、mは2であり、R=R=CHであり、YはCHであり、かつXはCHである。
【0016】
式Iの本発明による化合物の別の好ましい実施形態において、mは1であり、かつXはHである。特に好ましい化合物が、式Iの実施形態であり、ここでnは3であり、mは1であり、R=R=CHであり、YはCHであり、かつXはHである。
【0017】
本発明の別の対象が、本発明による化合物の少なくとも1つの有効量からなる薬剤、および薬剤としての本発明による化合物の使用である。
【0018】
実施例3.1〜3.4に示されているように、本発明による化合物は、再構成ヒト表皮に対して作用するほか、細胞保護的および抗炎症的に作用する。したがって、治療作用物質として使用するための本発明による化合物は、本発明の対象である。
【0019】
細胞保護および抗アポトーシス効果は特に皮膚細胞に対してよく示されうるため、本発明による化合物の好ましい使用が、皮膚科疾患の治療、特に好ましくは、炎症性皮膚疾患の治療のための使用である。
【0020】
ここでは例示的に述べることにする。すなわち、尋常性乾癬、壊疽性膿皮症、角層下膿疱症(スネド・ウィルキンソン病)、アトピー性皮膚炎、環状肉芽腫、尋常性天疱瘡、尋常性白斑、アトピー性湿疹、乾癬、神経性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性血管炎、アレルギー性肺胞炎、接触性湿疹、脂漏性湿疹、異発汗性湿疹、薬疹(湿疹)、一般のアレルギー性皮膚疾患、円形脱毛症、完全脱毛症、完全に近い脱毛症、全身性脱毛症、びまん性脱毛症、皮膚ループス・エリテマトーデス、扁平苔癬、皮膚筋炎、限局性強皮症、強皮症、頭部乾癬、滴状乾癬、異型乾癬、蛇行型円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症、アレルギー性接触性湿疹、刺激性接触性湿疹、接触性湿疹、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、瘢痕性粘膜天疱瘡、水疱性天疱瘡、粘膜天疱瘡、皮膚炎、ジューリング疱疹瘡状皮膚炎、リポイド類壊死症、結節性紅斑、ビダール苔癬、単純性痒疹、結節性痒疹、急性痒疹、線状IgA皮膚症、多形光線性皮膚病、日光紅斑、硬化性苔癬、口囲皮膚炎、皮膚の発疹、薬疹(発疹)、進行性慢性紫斑、異発汗性(dihidrotisches)湿疹、湿疹、固定薬疹(発疹)、光アレルギー性皮膚反応、単純性苔癬、または移植片対宿主病である。
【0021】
本発明による薬剤は、例えば、鼻内、静脈内、筋内、局所および局部など、各々当業者に周知の投与経路によって投与されうるが、ここで皮膚疾患においては局所および局部投与が好ましい。皮膚疾患の治療は、従来の方法、例えば、本発明による化合物を含有する、包帯、硬膏、圧迫包帯、再構成式凍結乾燥品によって、硬膏もしくは泥膏またはジェルとして行われうるが、本発明による化合物はリポソーム錯体もしくは金粒子錯体の形でも疾患皮膚表面の領域において局所および局部に投与されうる。別の局所投与は、例えば、溶液、乳剤、クリーム、軟膏、泡、エアロゾル・スプレー、ゲルマトリックス、再構成式凍結乾燥品として、硬膏または泥膏としての海綿、滴、または洗浄剤の形で行われうる。
【0022】
式Iによる本発明による化合物は、例えば、以下に記載される本発明による方法により製造されうる。
【0023】
この方法は、第1の方法のステップAにおいて、式II
【化2】

によるカルボン酸が、式III
【化3】

のアミンで、式IV
【化4】

によるアミドアミンに転換されることを特徴とするが、式中、nは、1〜6であり、かつ
mは、1〜4であり、かつRおよびRは、互いに独立して同一か、または異なる、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素残基であり、かつXは、m価の残基または共有結合であるとともに、mが1である場合のXは、H、エチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピルまたは3−ヒドロキシプロピル、およびmが2である場合にXは、直接共有結合、−CH−、−CH(OH)−、−CHCH (OH)−、または−CH(OH)CH(OH)−であり、かつmが2である場合にXは、直接結合、または少なくとも1つのOH基で置換され、または置換されていない、2価のC〜C炭化水素残基であり、かつm>2である場合にXは、少なくとも1つのOH基で置換され、または置換されていない、m価のC〜C炭化水素残基であり、かつその後に方法のステップBにおいて、Aにおいて得られた式IVのアミドアミンを、ω−ハロゲンカルボン酸またはその塩、好ましくは、金属塩、具体的には、式V
【化5】

による酸残基を有するナトリウム塩で式Iの化合物に転換するが、式中、Zはハロゲンであり、かつYは2価の炭化水素残基である。方法のステップAにおけるカルボン酸としては、式IIについて挙げられた条件を満たすすべてのモノカルボン酸、ジカルボン酸、もしくはポリカルボン酸、またはこれらの混合物も使用されうる。mが2である式Iのジ両性イオン化合物の製造ために、方法のステップAにおけるカルボン酸として、好ましくは、オキサル酸(HOOC−COOH)、タルトロン酸(HOOC−CH(OH)−COOH)、リンゴ酸(HOOC−CH(OH)−CH−COOH)および酒石酸(HOOC−CH(OH)−CH(OH)−COOH)、特に好ましくはマロン酸(HOOC−CH−COOH)が使用される。好ましくは、mが1である式Iによる本発明による物質の製造方法のステップAにおける好ましいカルボン酸は、乳酸、プロピオン酸、およびグリコール酸であり、特に好ましくは、蟻酸(HCOOH)である。
【0024】
アミン成分としては、式IIIの条件を満たすすべての適切なアミン化合物が使用されうる。好ましくは、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、2−(ジエチルアミノ)エチルアミンまたは2−(ジメチルアミノ)エチルアミンが使用されうる。特に好ましくは、アミン成分としてはジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)である。
【0025】
好ましくは、本発明による方法のステップAにおいて、式IIによる酸成分が、式IIIによるアミン成分により90℃〜220℃の温度、特に好ましくは、約180℃の温度で式IVによるアミドアミンに転換される。特に好ましくは、本発明による方法の方法のステップAが適切な触媒を使用して実施される。好ましくは、適切な触媒として、例えば、アルコラートなどの強い塩基性触媒が使用されるが、特に好ましくは、ナトリウムエチラート、カリウムエチラート、ナトリウムメチラート、およびカリウムメチラートが使用される。
【0026】
反応に際して発生する水は製品から除去されうる。好ましくは、水は反応条件下に蒸留され、かつ製品混合物から除去される。特に、約130℃以下で、水の除去を蒸留によって促進するために減圧をかけることが有利である。
【0027】
次の反応スキームは、方法のステップAの可能な反応経過を示す。
【化6】

【0028】
方法のステップAにおいて発生する塩混合物は反応の初めに固形であるため、好ましくは、従来技術と比べ逆の順序で本発明による方法における式IIによる酸成分は式IIIによる提供されたアミン成分に添加される。
【0029】
式IVによる短鎖アミドアミンの製造に際しては、従来技術から周知の長鎖脂肪酸のアミドアミンと比べ、式IIIによるアミンと式IIによる酸との間の塩化に際してのきわめて高い発熱が考慮されなければならないが、これは低いモル重量およびそれによる高い質量濃度によって引き起こされる。そのために、本発明による方法の好ましい実施形態において、方法のステップAでは、カルボン酸成分のアミン成分への添加が、添加中の反応混合物の温度が130℃、好ましくは、100℃を超えないようにゆっくり行われる形で特別に適合した工程パラメータが使用されうる。高温では発生する水によって大量のアミン成分が排出されうるが、このことは使用成分の化学量論に対して好ましくない影響を及ぼしうる。好ましくは、上記の温度範囲の維持のために反冷却され、経済的に有意義な流量を達成する。
【0030】
方法ステップBは、反応混合物の攪拌およびポンピング可能性を方法の各時点で保証する量での適切な溶剤の存在下で行われうる。好ましくは、転換は溶剤として水の存在下で行われる。方法のステップBは、好ましくは、約70−100℃の温度で実施される。副産物として存在するハロゲン化物Zは反応溶液から除去されるか、またはこの中に残留しうる。ハロゲン化物が除去される場合、例えば、適切な溶剤による沈殿または透析が使用されうる。沈殿に好ましい溶剤はエタノールである。
【0031】
本発明による方法の好ましい実施形態において、ハロゲン化物Zは溶液中に残留する。
【0032】
式Vによる酸残基を有するモノハロゲンカルボン酸またはモノハロゲンカルボン酸塩としては、その酸残基が式Vに対して挙げられた条件を満たすすべてのハロゲンカルボン酸が使用されうる。式Vによるモノハロゲンカルボン酸塩として特に好ましくは、モノクロルアセテートである。
【0033】
すでに方法のステップAにおけるように、方法のステップBにおいても、従来技術の方法とは逆に、短鎖アミドアミン成分の少ないモル質量によって引き起こされるきわめて高い発熱が考慮されなければならない。したがって、本発明による方法のステップBにおいて、反応は、好ましくは、ハロゲンカルボン酸成分のアミドアミン成分への完全な添加中および添加後に熱的変化の崩壊まで反応温度が最大約70℃に維持される形で行われるが、場合により反冷却されうる。次の反応は、好ましくは、わずかに溶剤の沸点以下で行われるが、溶剤としての水の使用に際しては、好ましくは95−99℃の範囲で使用される。
【0034】
次の反応スキームは方法のステップBの可能な反応経過を示す。
【化7】

【0035】
式IVによるアミドアミンの式Iによる対応する化合物への転換は、記載されているように、好ましくは、溶剤中で行われる。アミドアミンは、好ましくは、3〜75%、好ましくは、5〜50%の濃度で使用される。この方法のステップにおいて存在する式Iによる化合物の溶液は、例えば、香粧品製剤の製造のために、別の濃縮または脱塩ステップとともに、またはそれなしに使用されうる。本発明による方法の別の好ましい実施形態において、式Iの本発明による化合物は、適切な溶剤によるハロゲン化物成分の沈殿または透析によって脱塩されるか、または溶剤のすべてもしくは一部分の蒸留によって濃縮される。好ましくは、方法のステップBにより存在する溶液はさらなる精製ステップなしに使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明による方法の好ましい実施形態において、方法のステップAにおいて過剰に使用されたアミンIIはハロゲンカルボン酸成分による転換前に方法のステップBにおいて除去される。これは、例えば、減圧による蒸留によって行われうる。
【0037】
以下の実施例において本発明は例示的に説明されるが、その使用範囲がすべての説明および特許請求の範囲から生じる本発明は、実施例において挙げられた実施形態に限定されることはない。
【実施例】
【0038】
実施例1.1:化合物1.1の製造
還流冷却器および窒素導入部を備えた500mlの攪拌装置に蟻酸100gを入れ、窒素で約10分不活性化した。次いで、3−ジメチルアミノプロピルアミン225mlを攪拌および窒素で連続不活性化しながら添加した。塩化は発熱性であり、混合物は約175℃に加熱され、かつ約4−5時間、この温度で維持した。この時間の間、反応に際して発生する水を蒸留塔を介して混合物から除去した。酸数によって約98%の転換度が達成された場合、過剰のDMAPAを真空蒸留によって除去した。第3級窒素の含量は精製された最終生成物において10.4%であった。
【0039】
実施例1.2:化合物1.2の製造
還流冷却器および窒素導入部を備えた500mlの攪拌装置に乳酸133gを入れ、窒素で約10分不活性化した。次いで、3−ジメチルアミノプロピルアミン188mlを攪拌および窒素で連続不活性化しながら添加した。塩化は発熱性であり、混合物は約150℃に加熱され、かつ約4−5時間、175℃の温度で維持した。この時間の間、反応に際して発生する水を蒸留塔を介して混合物から除去した。酸数によって約98%の転換度が達成された場合、過剰のDMAPAを真空蒸留によって除去した。第3級窒素の含量は精製された最終生成物において8.14%であった。
【0040】
実施例1.3:化合物1.3の製造
還流冷却器および窒素導入部を備えた500mlの攪拌装置にプロピオン酸148gを入れ、窒素で約10分不活性化した。次いで、3−ジメチルアミノプロピルアミン280mlを攪拌および窒素で連続不活性化しながら添加した。塩化は発熱性であり、混合物は約150℃に加熱され、かつ約4−5時間、175℃の温度で維持した。この時間の間、反応に際して発生する水を蒸留塔を介して混合物から除去した。酸数によって約98%の転換度が達成された場合、過剰のDMAPAを真空蒸留によって除去した。第3級窒素の含量は精製された最終生成物において8.91%であった。
【0041】
実施例1.4:化合物1.4の製造
還流冷却器および窒素導入部を備えた500mlの攪拌装置にオキサル酸90gを入れた。次いで、3−ジメチルアミノプロピルアミン328mlを攪拌および窒素で連続不活性化しながら添加した。発生した固形物の溶解の後、塩化は発熱性であり、混合物は約150℃に加熱され、かつ約4−5時間、窒素下に175℃の温度で維持した。この時間の間、反応に際して発生する水を蒸留塔を介して混合物から除去した。酸数によって約98%の転換度が達成された場合、過剰のDMAPAを真空蒸留によって除去した。第3級窒素の含量は精製された最終生成物において12.5%であった。
【0042】
実施例1.5:化合物1.5の製造
還流冷却器および窒素導入部を備えた500mlの攪拌装置にマロン酸104gを入れた。次いで、3−ジメチルアミノプロピルアミン280mlを攪拌および窒素で連続不活性化しながら添加した。発生した固形物の溶解の後、塩化は発熱性であり、混合物は約140℃に加熱され、かつ約4−5時間、窒素下に175℃の温度で維持した。この時間の間、反応に際して発生する水を蒸留塔を介して混合物から除去した。酸数によって約98%の転換度が達成された場合、過剰のDMAPAを真空蒸留によって除去した。第3級窒素の含量は精製された最終生成物において9.84%であった。
【0043】
実施例1.6:化合物1.6の製造
還流冷却器および窒素導入部を備えた500mlの攪拌装置にグリコール酸76gを入れた。次いで、3−ジメチルアミノプロピルアミン135mlを攪拌および窒素で連続不活性化しながら添加した。発生した固形物の溶解の後、塩化は発熱性であり、混合物は約140℃に加熱され、かつ約4−5時間、窒素下に175℃の温度で維持した。この時間の間、反応に際して発生する水を蒸留塔を介して混合物から除去した。酸数によって約98%の転換度が達成された場合、過剰のDMAPAを真空蒸留によって除去した。第3級窒素の含量は精製された最終生成物において8.96%であった。
【0044】
実施例2.1:化合物2.1の製造
攪拌器、サーモメーター、還流冷却器、および分液漏斗を備えた、500mlの4つ首フラスコに、Na−モノクロルアセテート91gおよび水191gを入れて振盪し、40℃に加熱した。実施例1.1からのアミドアミン100gを添加し、反応混合物を熱的変化の崩壊まで70℃の温度で維持した。次いで、98℃に加熱した。約7時間後、残留アミドアミンの含量は0.5%未満であった。
次の組成の水溶液382gが得られた。すなわち、
化合物2.1 38.1%
NaCl: 11.9%
水: 50%
外見: 液状、透明
【0045】
実施例2.2:化合物2.1の製造
攪拌器、サーモメーター、還流冷却器、および分液漏斗を備えた、500mlの4つ首フラスコに、Na−モノクロルアセテート70gおよび水170gを入れて振盪し、40℃に加熱した。実施例1.2からのアミドアミン100gを添加した。次いで、反応混合物を70℃に加熱し熱的変化の崩壊までこの温度を維持した。次いで、98℃に加熱した。約7時間後、残留アミドアミンの含量は0.5%未満であった。
次の組成の水溶液340gが得られた。すなわち、
化合物2.2 39.7%
NaCl: 10.3%
水: 50%
外見: 液状、透明
【0046】
実施例2.3:化合物2.3の製造
攪拌器、サーモメーター、還流冷却器、および分液漏斗を備えた、1000mlの4つ首フラスコに、Na−モノクロルアセテート153gおよび水353gを入れて振盪し、40℃に加熱した。実施例1.3からのアミドアミン200gを添加した。次いで、反応混合物を70℃に加熱し熱的変化の崩壊までこの温度を維持した。次いで、98℃に加熱した。約7時間後、残留アミドアミンの含量は0.5%未満であった。
次の組成の水溶液706gが得られた。すなわち、
化合物2.3 39.2%
NaCl: 10.8%
水: 50%
外見: 液状、透明
【0047】
実施例2.4:化合物2.4の製造
攪拌器、サーモメーター、還流冷却器、および分液漏斗を備えた、500mlの4つ首フラスコに、Na−モノクロルアセテート107gおよび水207gを入れて振盪し、40℃に加熱した。実施例1.4からのアミドアミン100gを添加した。次いで、反応混合物を70℃に加熱し熱的変化の崩壊までこの温度を維持した。その後、98℃に加熱した。約7時間後、残留アミドアミンの含量は0.5%未満であった。
次の組成の水溶液414gが得られた。すなわち、
化合物2.4 35.9%
NaCl: 14.1%
水: 50%
外見: 液状、透明
【0048】
実施例2.5:化合物2.5の製造
攪拌器、サーモメーター、還流冷却器、および分液漏斗を備えた、500mlの4つ首フラスコに、Na−モノクロルアセテート85gおよび水185gを入れて振盪し、40℃に加熱した。実施例1.5からのアミドアミン100gを添加した。次いで、反応混合物を70℃に加熱し、熱的変化の崩壊までこの温度を維持した。その後、98℃に加熱した。約7時間後、残留アミドアミンの含量は0.5%未満であった。
次の組成の水溶液370gが得られた。すなわち、
化合物2.5 38.5%
NaCl: 11.5%
水: 50%
外見: 液状、透明
【0049】
実施例2.6:化合物2.6の製造
攪拌器、サーモメーター、還流冷却器、および分液漏斗を備えた、1000mlの4つ首フラスコに、Na−モノクロルアセテート115gおよび水265gを入れて振盪し、40℃に加熱した。実施例1.6からのアミドアミン150gを添加した。次いで、反応混合物を70℃に加熱し、熱的変化の崩壊までこの温度を維持した。その後、98℃に加熱した。約7時間後、残留アミドアミンの含量は0.5%以下であった。
次の組成の水溶液530gが得られた。すなわち、
化合物2.6 38.5%
NaCl: 11.5%
水: 50%
外見: 液状、透明
【0050】
本発明による化合物の有効性の例
化合物2.1〜2.6の治療薬および皮膚保護特性の特徴づけを可能にするために、皮膚モデルにおけるさまざまなインビトロ試験(再構成ヒト表皮、会社:スキンエチック(SkinEthic))を実施した。
【0051】
実施例3.1 ラクテートデヒドロゲナーゼ放出(LDH放出)
細胞培養培地におけるLDHの出現は、細胞の細胞質膜の損傷とともに上皮細胞層の損傷の確実な徴候である。さらに、この酵素の発現が細胞にとって「引き返し限界点(point of no return)」であること、すなわち損傷の不可逆性を示すことが周知である。
【0052】
LDH濃度の測定は、市販の試験キット(LDH−試験キット、ロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)、独国マンハイム(Mannheim))で行った。
【0053】
試験製剤を24時間の間隔で2回、皮膚モデルに投与した。図1は最後の投与後24時間のLDH放出を示す。
【0054】
試験製剤3.1: 本発明による化合物の4%水溶液を投与した。それぞれ1%の活性物質の両性イオン、非界面活性化合物は約0.3%の食塩を含有しているため、さらに対応する食塩濃度を試験した。
【0055】
両性イオン化合物の投与によって、細胞からのLDH放出は変化せず、しかも未処置皮膚モデルと比べわずかに少なかった。これは、本発明による化合物が細胞膜を攻撃せず、細胞損傷的には作用せず、それとは正反対に細胞およびその増殖を補助することを意味する。
【0056】
実施例3.2 SDSによる細胞の損傷後のLDH放出:
硫酸ドデシルナトリウム(SDS)は、細胞膜を攻撃し、かつLDH放出の上昇をもたらすことが周知である。次に記載した実験により、どの程度まで化合物2.1がSDSによる損傷後に細胞を保護しうるかを検査するのが適切である。
皮膚モデルに40分、SDSで損傷を与えた。次いで、試験製剤として、1または4%の化合物2.1を有するO/Wクリームを塗布した。LDH放出を試験製剤の投与後24時間および48時間に測定した。
【0057】
試験製剤3.2:
ポリグリセリル−3メチルグルコースジステアレート 3.0%
グリセリルステアレート 2.0%
ステアリールアルコール 1.0%
セテアリルエチルヘキサノアート 5.0%
鉱油 14.0%
化合物2.1 1.0/4.0%
水 ad 100.0%
【0058】
図2は、24時間および48時間後のLDHの総濃度を示す。
【0059】
SDSによる損傷によって、LDH放出は予想通り大幅に上昇した。この上昇は、損傷直後に試験製剤を投与すると明らかに減少した。有利な効果がすでに賦形剤において検出可能であったが、これは、製剤が化合物2.1を含有するとさらに明らかに増強した。
【0060】
この場合、4%で効果の明らかな上昇が検出可能ではなかったため、本発明による化合物のすでに1%で十分であるように思われる。
【0061】
実施例3.3 SDSによる損傷後のI1−1α放出:
IL1−αは、炎症反応において体内で中心的な役割を果たす伝達物質(Botenstoff)である。硫酸ドデシルナトリウム(SDS)は、モデル刺激物質として対象試験で使用すると、ヒトにおいて刺激性の接触性皮膚炎を引き起こしうるとともに、とりわけIL−1αの放出を誘発する皮膚刺激性の界面活性剤である。IL−1α濃度の測定は、市販の試験キット(ヒトIL−1αイムノアッセイ、R&Dシステムズ有限責任会社(Systems GmbH)、独国ヴィースバーデン(Wiesbaden))で行われた。
【0062】
試験製剤として、短鎖、両性イオン化合物の4%水溶液を皮膚モデルに投与した。投与後24時間に40分、0.25%のSDS溶液で損傷を与えた。次いで、試験製剤を2回投与した。さらに24時間のインキュベーション後、放出されたサイトカインIL−1αの測定を行った。
【0063】
試験溶液は1%活性物質につき約0.3%のNaClを含有するため、対応する濃縮食塩溶液も検査した。
【0064】
図3は、損傷後24時間のIL−1α濃度の測定値を示す。
【0065】
試験されたすべての両性イオン、非界面活性化合物は、炎症マーカーIL−1αの放出を削減した、すなわち、短鎖、両性イオン化合物が炎症抑制特性を有することから出発しうる。
【0066】
実施例3.4 化合物2.1を有するO/Wクレームの炎症抑制作用:
本発明による化合物の炎症抑制効果が香粧品製剤の使用に際しても示されるかどうか検査するのが適切である。そのために皮膚モデルにSDSで損傷を与えた。次いで、試験製剤を投与した。投与後24時間および48時間にIL−1α濃度を測定した。
【0067】
試験製剤:
ポリグリセリル−3メチルグルコースジステアレート 3.0%
グリセリルステアレート 2.0%
ステアリールアルコール 1.0%
セテアリルエチルヘキサノアート 5.0%
鉱油 14.0%
化合物2.1 1.0/4.0%
水 ad 100.0%
【0068】
図4は、24時間および48時間後の累積IL−1α濃度を示す。
【0069】
予想通り、SDSによる損傷によってサイトカインIL−1αの形成は大きく上昇した。この上昇は化合物2.1の添加によって濃度依存的に大幅に削減されたため、O/W乳剤からの本発明による化合物の使用に際しても明らかに炎症抑制作用を示す。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例における、最後の投与後24時間のLDH放出を示す。
【図2】実施例における、24時間および48時間後のLDHの総濃度を示す。
【図3】実施例における、損傷後24時間のIL−1α濃度の測定値を示す。
【図4】実施例における、24時間および48時間後の累積IL−1α濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

[式中、
nは、1〜6であり、かつ
mは、1〜4であり、かつ
およびRは、互いに独立して同一か、または異なる、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素残基であり、かつ
Yは、2価の炭化水素残基であり、かつ
Xは、m価の残基または共有結合であるとともに、
mが1である場合のXは、H、エチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピルまたは3−ヒドロキシプロピルであり、かつ
mが2である場合にXは、直接共有結合、または少なくとも1つのOH基で置換され、もしくは置換されていない、2価のC〜C炭化水素残基であり、かつ
m>2である場合にXは、少なくとも1つのOH基で置換され、もしくは置換されていない、m価のC〜C炭化水素残基である]の化合物。
【請求項2】
mが2であり、かつXが直接共有結合、CH、CH(OH)、CHCH(OH)、またはCH(OH)CH(OH)であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがCHであることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
mが1であり、かつXがHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
nが3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
=R=CHであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
YがCHであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
nが3であり、mが2であり、R=R=CHであり、YがCHであり、かつXがCHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
nが3であり、mが1であり、R=R=CHであり、YがCHであり、かつXがHであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
治療作用物質として使用するための請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
皮膚科疾患を治療するための請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
炎症性皮膚疾患を治療するための請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
A.式II
【化2】

によるカルボン酸を、式III
【化3】

のアミンで、式IV
【化4】

[式中、
nは、1〜6であり、かつ
mは、1〜4であり、かつ
およびRは、互いに独立して同一か、または異なる、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素であり、かつ
Xは、m価の残基または共有結合であり、
mが1である場合のXは、H、エチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピルまたは3−ヒドロキシプロピルであり、かつ
mが2である場合にXは、直接共有結合、または少なくとも1つのOH基で置換され、もしくは置換されていない、2価のC〜C炭化水素残基であり、かつ
m>2である場合にXは、少なくとも1つのOH基で置換され、もしくは置換されていない、m価のC〜C炭化水素残基である]によるアミドアミンに転換するステップと、
B.Aにおいて得られた式IVのアミドアミンを、式V
【化5】

による酸残基を有するω−ハロゲンカルボン酸またはその塩で、式I

[式中、
Zは、ハロゲンであり、かつ
Yは、2価の炭化水素残基である]の化合物に転換するステップとを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−51823(P2009−51823A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188293(P2008−188293)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】