説明

両面インプリント装置

【課題】 ドーナツ形の円盤状ディスク基板などの被転写体の両面に同時にインプリントすることができる両面インプリント装置を提供する。
【解決手段】 本発明の両面インプリント装置は、少なくとも、昇降機構に支持された上面側スタンパ装置と、ガイドレール上に乗せられた移動テーブルに固設された下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置と、からなるパターン転写機構を有し、前記移動テーブルは移動駆動機構により前記ガイドレール上を往復動することができ、これにより、前記上面側スタンパ装置の位置を中心として、前記下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置とが前記上面側スタンパ装置に対峙する位置に交互に移動することができる両面インプリント装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被転写体の表面に微細構造を形成するインプリント装置に関する。更に詳細には、本発明はディスクリートトラックメディアのように、両面に微細構造を形成するアプリケーションに適した両面インプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどの各種情報機器の目覚ましい機能向上により、使用者が扱う情報量は増大の一途を辿り、ギガからテラ単位領域に達している。このような環境下において、これまでよりも一層記録密度の高い情報記憶・再生装置やメモリーなどの半導体装置に対する需要が益々増大している。
【0003】
記録密度を増大させるには、一層微細な加工技術が必要となる。露光プロセスを用いた従来の光リソグラフィー法は、一度に大面積を微細加工することができるが、光の波長以下の分解能を持たないため、自ずから光の波長以下(例えば、100nm以下)の微細構造の作製には適さない。光の波長以下の微細構造の加工技術として、電子線を用いた露光技術、X線を用いた露光技術及びイオン線を用いた露光技術などが存在する。しかし、電子線描画装置によるパターン形成は、i線、エキシマレーザ等の光源を使用した一括露光方式によるものと異なって、電子線で描画するパターンが多ければ多いほど、描画(露光)時間がかかる。従って、記録密度が増大するにつれて、微細パターンの形成に要する時間が長くなり、製造スループットが著しく低下する。一方、電子線描画装置によるパターン形成の高速化を図るために、各種形状のマスクを組み合わせてそれらに一括して電子線を照射する一括図形照射法の開発が進められているが、一括図形照射法を使用する電子線描画装置は大型化すると共に、マスクの位置を一層高精度に制御する機構が更に必要になり、描画装置自体のコストが高くなり、結果的に、媒体製造コストが高くなるなどの問題点がある。
【0004】
光の波長以下の微細構造の加工技術として、従来のような露光技術に代えて、プリント技術による方法が提案されている。例えば、特許文献1には、「ナノインプリントリソグラフィー(NIL)技術」に関する発明が記載されている。ナノインプリントリソグラフィー(NIL)技術は、前もって電子線露光技術等の光の波長以下の微細構造の加工技術を用いて、所定の微細構造パターンを形成した原版(モールド)をレジスト塗布被転写基板に加圧しながら押し当て、原版の微細構造パターンを被転写基板のレジスト層に転写する技術である。原版さえあれば、特別に高価な露光装置は必要無く、通常の印刷機レベルの装置でレプリカを量産できるので、電子線露光技術等に比較してスループットは飛躍的に向上し、製造コストも大幅に低減される。このような目的に使用される装置は、「微細構造転写装置」又は「インプリント装置」などと呼ばれている。
【0005】
ナノインプリントリソグラフィー(NIL)技術において、レジストとして熱可塑性樹脂を使用する場合、その材料のガラス転移温度(Tg)近傍又はそれ以上の温度に上げて加圧して転写する。この方式は熱転写方式と呼ばれる。熱転写方式は熱可塑性の樹脂であれば汎用の樹脂を広範に使用できる利点がある。これに対し、レジストとして感光性樹脂を使用する場合、紫外線などの光を曝露すると硬化する光硬化性樹脂により転写する。この方式は光転写方式と呼ばれる。
【0006】
光転写方式のナノインプリント加工法では、特殊な光硬化型の樹脂を用いる必要があるが、熱転写方式と比較して、転写印刷版や被印刷部材の熱膨張による完成品の寸法誤差を小さくできる利点がある。また、装置上では、加熱機構の装備や、昇温、温度制御、冷却などの付属装置が不要であること、更に、インプリント(微細構造転写)装置全体としても、断熱などの熱歪み対策のための設計的な配慮が不要となるなどの利点がある。
【0007】
光転写方式のインプリント(微細構造転写)装置の一例は特許文献2に記載されている。この装置は、紫外線を透過できるスタンパを光硬化性樹脂の塗布された被転写基板に押し当て、上部から紫外線を照射するように構成されている。スタンパの被転写基板押圧面には所定の微細構造パターンが形成されている。
【0008】
特許文献1及び特許文献2に示されるように、従来のインプリント装置では、主に被転写体の片面にのみ所定の微細構造パターンが形成されてきた。しかし、最近では、記録密度を更に増大させるために、ディスクリートトラックメディアのように、両面に微細構造パターンを形成することが強く求められるようになってきた。
【0009】
ドーナツ形の円盤状ディスク基板などの被転写体の両面をインプリントする方法として、裏面を非接触として片面ずつ交互にインプリントする方法がある。しかし、この方法では、インプリントしている面の裏面は、次にインプリントする面又は既にインプリントされた面となる。一般的に、高品質のインプリントを行うためにはインプリントしようとする表面は平滑で、異物があってはならず、また、インプリントした面は微細構造パターンを損傷するような機械的接触をさせてはならない。従って、片面ずつ交互にインプリントする方式では、インプリント時のワーク保持において、裏面を非接触とする必要があり、プレス部の非接触機構が複雑となる。また、インプリントを表裏に分けて2回行うことから、プレス部が2式必要となり、自動機ではその間のハンドリングも必要となる。その結果、片面ずつ交互にインプリントする方式では、作業のスループットが低いばかりか、複雑な装置を使用するために製造コストも高くなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5772905号公報(US005772905A)
【特許文献2】特開2008−12844号公報(P2008−12844A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、ドーナツ形の円盤状ディスク基板などの被転写体の両面に同時にインプリントすることができる両面インプリント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、ディスク両面にレジスト薄膜を形成した後、微細なパターンが形成された2個のスタンパを前記ディスク両面のレジスト薄膜上に押し付けた状態で前記レジスト薄膜を硬化させ、前記ディスク両面に微細なパターンを形成する両面インプリント装置であって、前記両面インプリント装置は、少なくとも、昇降機構に支持された上面側スタンパ装置と、ガイドレール上に乗せられた移動テーブルに固設された下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置と、からなるパターン転写機構を有し、前記移動テーブルは移動駆動機構により前記ガイドレール上を往復動することができ、これにより、前記上面側スタンパ装置の位置を中心として、前記下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置とが前記上面側スタンパ装置に対峙する位置に交互に移動することができる両面インプリント装置により解決される。
【0013】
本発明の両面インプリント装置におけるパターン転写機構では、下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置とがガイドレール上に乗せられた移動テーブルに一体的に固設されているので、上面側スタンパ装置の位置を中心として往復的に動くことができる。これにより、例えば、下面側スタンパ装置に未硬化レジストが塗布されたディスクを載置する場合には、下面側スタンパ装置を上面側スタンパ装置の対峙位置からずらして、上面側スタンパ装置に被転写体剥離装置を対峙させる。下面側スタンパ装置に未硬化レジスト塗布ディスクが載置されたら下面側スタンパ装置を上面側スタンパ装置の対峙位置に移動させ、上面側スタンパ装置を下降させて両面転写作業を実施し、次いで、上面側スタンパ装置を上昇させて転写済みディスクを下面側スタンパ装置から剥離する。その後、被転写体剥離装置を上面側スタンパ装置に対峙させ、転写済みディスクを上面側スタンパ装置から剥離する。この時、下面側スタンパ装置に次の塗布ディスクを載置することもできる。最後に、被転写体剥離装置を上面側スタンパ装置の対峙位置からずらすことにより被転写体剥離装置に保持された転写済みディスクを回収することができる。前記のように、下面側スタンパ装置には次の塗布ディスクが既に載置済みなので、上面側スタンパ装置を下面側スタンパ装置に向かって下降させれば両面転写作業を速やかに連続的に実施できる。このように、本発明の両面インプリント装置におけるパターン転写機構によれば、プレス機構一式で連続的かつ効率的に被転写体に両面インプリントすることが可能であり、装置構造の簡素化が図られ、スループットを著しく増大させることができる。
【0014】
また、本発明の両面インプリント装置はパターン転写機構にディスクを搬入するためのディスク搬入機構と、パターン転写されたディスクを搬出するための、ディスク搬出機構を有し、ディスク搬入機構およびディスク搬出機構によりディスクが移動する方向と、パターン転写機構における基板の移動方向が直行するようにディスク搬入機構と複数のパターン転写機構とディスク搬出機構とが配置されていることを特徴とする両面インプリント装置により課題を解決する。
【0015】
上記構成にすることにより1組のディスク搬入機構およびディスク搬出機構で複数のパターン転写機構に対し、ディスクを供給(ロード)及び搬出(アンロード)することが可能になる。また、ディスク搬入、搬出機構におけるディスクの移動方向とパターン転写機構におけるディスクの移動方向とを直行させることにより、直線状のパターン転写機構を複数ユニット配置した場合、デットスペースの少ない装置配置が実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の両面インプリント装置の効果は、パターン転写機構において、上面側スタンパ装置の位置を中心にして、下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置が一体的に往復動することにより、一台のプレス機構のみで被転写体の両面同時にインプリント作業を連続的かつ効率的に実施できることである。これにより装置構造の簡素化が図られ、スループットを著しく増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の両面インプリント装置におけるパターン転写機構の一例の概要断面図である。
【図2】図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構を用いて両面インプリント作業を行う際の一工程を説明する概要断面図である。
【図3】図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構を用いて両面インプリント作業を行う際の一工程を説明する概要断面図である。
【図4】本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構において、上面側スタンパ装置を上昇させて転写済みディスクを下面側スタンパ装置から剥離する状態を説明する部分概要断面図である。
【図5】図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構を用いて両面インプリント作業を行う際の一工程を説明する概要断面図である。
【図6】本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構において、被転写体剥離装置により上面側スタンパ装置から転写済みディスクを剥離する状態を説明する部分概要断面図である。
【図7】図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構を用いて両面インプリント作業を行う際の一工程を説明する概要断面図である。
【図8】本発明の両面インプリント装置におけるパターン転写機構の別の実施態様の概要断面図である。
【図9】図8に示されたパターン転写機構を有する本発明の両面インプリント装置の或る実施態様の概要断面図である。
【図10】本発明の両面インプリント装置の他の実施態様の模式的平面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の両面インプリント装置の一例について詳細に説明する。図1は本発明の両面インプリント装置におけるパターン転写機構1の概要断面図である。本発明の両面インプリント装置におけるパターン転写機構1は基本的に、下面側スタンパ装置3と、上面側スタンパ装置5と、被転写体剥離装置7とからなるパターン転写機構2を有する。下面側スタンパ装置3と被転写体剥離装置7は移動テーブル9の上面に固設されており、移動テーブル9は、台座11の上面に配設されたガイドレール13に乗せられている。移動テーブル9は、例えば、ステッピングモータ、リニアモータ、ボールスクリューなど公知慣用の移動駆動機構15によりガイドレール13に沿って左右に一体的に移動可能に構成されている。上面側スタンパ装置5は昇降機構17により昇降可能に構成されている。移動駆動機構15及び昇降機構17の動作は制御部19により制御される。必要に応じてガイドレール11の両端部にストッパ41a,41bを配設することもできる。
【0019】
下面側スタンパ装置3はXYステージ21とアライメントカメラ23とUV光源25と、スタンパ載置テーブル27と、下側スタンパ29とスタンパクランプ31a,31bとからなる。スタンパ載置テーブル27及び下側スタンパ29は光透過性素材から形成されており、UV光源25から照射されるUV光を透過させることができる。アライメントカメラ23は下側スタンパ29の上面に被転写体のディスク(図示されていない)を載置するときに、下側スタンパ29とディスクを位置合わせさせるために使用される。実際にはアライメントカメラ23の検出情報に基づき、XYステージ21をX方向及び/又はY方向に移動させて、下側スタンパ29とディスクを位置合わせさせる。下側スタンパ29は、その周縁端部がクランプ31a,31bによりスタンパ載置テーブル27に締着されている。下記で詳細に説明するが、クランプ31a又は31bの一方は上下方向へ僅かに動くことができるように構成されていて、下側スタンパ29の一方の端部のスタンパ載置テーブル27への締着を解放することができる。これは被転写体のディスクを下側スタンパ29から剥離させるために採用された工夫である。
【0020】
上面側スタンパ装置5は、スタンパ支持テーブル33と、この支持テーブル33の下面側に配置された上側スタンパ35と、UV光源37とからなる。スタンパ支持テーブル33及び上側スタンパ35は光透過性素材から形成されており、UV光源37から照射されるUV光を透過させることができる。上側スタンパ35はクランプ39a,39bによりスタンパ支持テーブル33に締着されている。下記で詳細に説明するが、クランプ39a又は39bの一方は上下方向へ僅かに動くことができるように構成されていて、上側スタンパ35の一方の端部のスタンパ支持テーブル33への締着を解放することができる。これは被転写体のディスクを上側スタンパ35から剥離させるために採用された工夫である。
【0021】
下記で詳細に説明するが、パターン転写機構1を有する本発明の両面インプリント装置で被転写体のディスクに両面インプリント処理を行うと、ディスクは下面側スタンパ装置3の下側スタンパ29からは剥離させることができるが、上面側スタンパ装置5の上側スタンパ35に密着されたままの状態になる。従って、被転写体剥離装置7は上面側スタンパ装置5の上側スタンパ35からディスクを剥離させるために使用される。
【0022】
図2は図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構1を用いて両面インプリント作業を行う際の、下面側スタンパ装置3の下側スタンパ29にディスク43を載置する状態を説明する概要断面図である。両面に光硬化性レジスト(樹脂)が塗布されたディスク43は、ディスクハンドリングアーム45の先端に取り付けられたディスクチャック47により搬送される。ディスク43は外周縁までレジスト49a,49bが塗布されているので、ディスク外周縁をチャックする形式では搬送できないが、ディスク43の中央の貫通孔周辺部にはレジスト49a,49bが塗布されない領域51があるので、このレジスト非塗布領域51をディスクチャック47により真空吸着して搬送することが好ましい。ディスクハンドリングアーム45は昇降可能かつ進退(例えば、左右方向)又は回転可能に構成されていることが好ましい。ディスクハンドリングアーム45によりディスク43が下側スタンパ29の直上に搬送されてきたら、下面側スタンパ装置3のアライメントカメラ23がディスク43の内径中心と下側スタンパ29の中心のアライメントマークとを検出し、その検出信号に基づき、XYステージ21を駆動させ、ディスク43と下側スタンパ29とを位置合わせさせる。ディスク43と下側スタンパ29とが位置合わせされたら、ディスクハンドリングアーム45を下降させ、ディスク43を下側スタンパ29の表面に載置し、ディスクチャック47の真空吸着を解除した後、ディスクハンドリングアーム45を待避させる。ディスク43の両面にレジスト49a,49bを塗布する方法は、例えば、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、インクジェットなどの公知慣用の方法を使用することができる。ディスクへのレジストの両面スピンコートに関しては、東京都板橋区に所在する株式会社ナノテックから両面スピンコーターが市販されている。両面エアースプレーコーター、静電スプレーコーター、ロールコータは東京都目黒区に所在するファイコーポレーションから市販されている。ディスクの両面にレジストをインクジェット塗布する装置に関しては本願出願人による特願2009−161494の明細書に詳細に開示されている。
【0023】
ディスク43は例えば、HDD、CD又はDVDなどのような中心に貫通穴が形成されたドーナツ形の円盤状ディスク基板などである。ディスク43の表面には必要に応じて、金属層、樹脂層、酸化膜層などの常用の薄膜を形成し、多層構造体とすることもできる。レジスト49a,49bは例えば、合成樹脂材料に感光性物質を添加したものを使用することができる。合成樹脂材料としては例えば、主成分がシクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレンポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール(PVA)などが使用できる。感光性物質は例えば、過酸化物、アゾ化合物類(例えば、アゾビスイソブチロニトリルなど)、ケトン類(例えば、ベンゾイン、アセトンなど)、ジアゾアミノベンゼン、金属系錯塩類、染料類などが挙げられる。
【0024】
図3は図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構1による両面インプリント作業の一工程を示す概要断面図である。図2で説明したように、両面にレジスト49a,49bが塗布されたディスク43が下側スタンパ29の上面に載置されたら、下面側スタンパ装置3及び被転写体剥離装置7は、移動駆動機構15により移動テーブル9がガイドレール11に沿って移動され、下面側スタンパ装置3が上面側スタンパ装置5に対峙する位置にまで移動されたら、その位置で停止される。必要に応じて、下面側スタンパ装置3のアライメントカメラ23により、下側スタンパ29のアライメントマークと上側スタンパ35のアライメントマークとを検出し、その検出信号に基づき、XYステージ21を駆動させ、下側スタンパ29と上側スタンパ35とを位置合わせさせる。下側スタンパ29と上側スタンパ35とが位置合わせされたら、昇降機構17により上面側スタンパ装置5を下降させて、ディスク43に所定の圧力で押圧し、当接させる。次いで、下面側スタンパ装置3のUV光源25及び上面側スタンパ装置5のUV光源37からUV光を照射し、レジスト49a,49bを硬化させる。これにより、ディスク43の下面側レジスト49bに下側スタンパ29のパターンが転写され、上面側レジスト49aに上側スタンパ35のパターンが転写される。UV光源25及びUV光源37としては公知慣用のUV光源を使用することができる。例えば、水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀水銀ランプ、キセノンランプ又はUV−LED光源などを適宜選択して使用することができる。特に、UV−LED光源が好ましい。UV−LED光源は水銀ランプに比べて大幅に小型化され、紫外線波長が365nmのため熱の発生が大幅に抑えられるので、照射物への悪影響又はダメージが無い。更に低消費電力で環境に優しく、長寿命(10000〜20000時間)なのでランプ交換によるライン停止時間を短くすることができるなどの利点がある。
【0025】
図4は図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構1による両面インプリント作業の一工程を示す部分概要断面図である。図3で説明したように、ディスク43の両面へのパターン転写が完了したら、次に転写済みディスク53を回収する。その際、図4に示されるように、上面側スタンパ装置5のクランプ39a及び39bで上側スタンパ35を締着しつつ、下面側スタンパ装置3のクランプ31aで下側スタンパ29を締着しながら、クランプ31bによる締着を解放し、上面側スタンパ装置5を上昇させる。すると、転写済みディスク53と下側スタンパ29は締着されているクランプ31a側から徐々に剥離されていく。このような一端剥離方式によらず、クランプ39a及び39bで上側スタンパ35を締着し、かつ、クランプ31a及び31bで下側スタンパ29を締着させたまま上面側スタンパ装置5を上昇させると、各スタンパ29,35と転写済みディスク53の相互の密着力が強いために転写済みディスク53を下側スタンパ29から奇麗に剥離させることができず、無理に剥離させようとすると、上側スタンパ35、下側スタンパ29及び/又はディスク43に機械的な損傷を与えてしまう可能性がある。本発明の両面インプリント装置では、転写済みディスク53を下側スタンパ29から剥離させるが、上側スタンパ35には密着させたままの状態に維持しないと後のディスク回収工程に進むことができない。
【0026】
転写済みディスク53が下側スタンパ29から剥離されたら、図5に示されるように、移動テーブル9の上面に固設された下面側スタンパ装置3及び被転写体剥離装置7を、移動駆動機構15によりガイドレール11に沿って移動する。被転写体剥離装置7が上面側スタンパ装置5に対峙する位置にまで移動されたら、その位置で停止させる。その後、昇降機構17により上面側スタンパ装置5を下降させて、転写済みディスク53を被転写体剥離装置7に係合させる。この際、図2に示されるように、下面側スタンパ装置3に次の塗布ディスク43を載置することもできる。
【0027】
図6に示されるように、被転写体剥離装置7のディスク支持軸55の上端部の凸部が転写済みディスク53の中央部の貫通孔内に挿入され、転写済みディスク53の周縁部は真空チャック部57の上端寄り内壁面に係止される。真空チャック部57の内壁面は上端方向に向かって拡開するように構成されていることが好ましい。真空チャック部57の底部には真空吸引口59が配設されており、この真空吸引口59に真空ポンプなどの公知慣用の手段を接続することにより転写済みディスク53を真空チャックすることができる。ディスク支持軸55は昇降可能に構成されている。これは、後の工程で転写済みディスク53を別のアンローダに引き渡すために必要な機構である。従って、ディスク支持軸55と真空チャック部57との摺接界面には真空を維持するためのO−リング61を配設することが好ましい。
【0028】
図6に示されるように、真空吸着により転写済みディスク53を被転写体剥離装置7に係合させたままの状態で、上面側スタンパ装置5のクランプ39bで上側スタンパ35の一方の端部を締着しながら、クランプ39aを僅かに下降させることにより上側スタンパ35の他方の端部の締着を解放し、上面側スタンパ装置5を上昇させる。すると、上側スタンパ35は締着されているクランプ39b側から徐々に剥離されていき、最後には、転写済みディスク53は上側スタンパ35から完全に剥離され、被転写体剥離装置7に真空吸着されたまま保持される。
【0029】
図7は図1に示された本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構1による両面インプリント作業の最終工程を示す部分概要断面図である。転写済みディスク53が上側スタンパ35から剥離されたら、移動テーブル9に固設された下面側スタンパ装置3及び被転写体剥離装置7を、ガイドレール11に沿って移動し、下面側スタンパ装置3が上面側スタンパ装置5に対峙する位置にまで移動したら、その位置で停止させる。被転写体剥離装置7の真空チャック部57による真空チャックを停止し、ディスク支持軸55を上昇させる。ディスク支持軸55の上端部に支持された転写済みディスク53をアンローダ63により回収し、製品カセット(図示されていない)に収納する。アンローダ63にはXYZ方向に動くことができる真空チャック式の機構を使用することが好ましい。このようなアンローダ機構は当業者に公知である。前記のように、下面側スタンパ装置3に次の塗布ディスク43が既に載置されている場合には、転写済みディスク53のアンローダ作業と同時に、上面側スタンパ装置5を下降させ、転写作業を実施する。これにより、本発明の両面インプリント装置では、連続的かつ効率的に被転写体を両面インプリントすることが可能になり、スループットを飛躍的に増大させることができる。
【0030】
図8は本発明の両面インプリント装置のパターン転写機構の別の実施態様の概要断面図である。図8に示されたパターン転写機構1Aは、図1に示されたパターン転写機構1に示された構成に加えて、ブランクディスク42を載置するディスク置台65と、レジスト塗布機構67を更に有する。レジスト塗布機構67はブランクディスク42の両面にレジストを塗布可能な装置であれば全て使用できる。例えば、ブランクディスク42へのレジストの両面スピンコートに関しては、東京都板橋区に所在する株式会社ナノテックから両面スピンコーターが市販されている。両面エアースプレーコーター、静電スプレーコーター、ロールコータは東京都目黒区に所在するファイコーポレーションから市販されている。ディスクの両面にレジストをインクジェット塗布する装置に関しては本願出願人による特願2009−161494の明細書に開示されている。ディスクハンドリングアーム45は上下左右に移動可能に構成されている。ディスクハンドリングアーム45が左方向に移動し、その後下降して、ディスク外周チャック46がディスク置台65上のブランクディスク42を把持と同時に、ディスクチャック47がレジスト塗布機構67内の両面レジスト塗布ディスク43を真空吸着する。その後、ディスクハンドリングアーム45が上昇し、次いで、右方向に移動する。その後、ディスクハンドリングアーム45が下降し、ディスク外周チャック46に把持されたブランクディスク42をレジスト塗布機構67に載置すると共に、ディスクチャック47に真空吸着されている両面レジスト塗布ディスク43を図2に関連して説明したように位置合わせ後に下側スタンパ29の表面に載置する。
【0031】
図9は本発明の両面インプリント装置2の或る実施態様の概要断面図である。図9に示された両面インプリント装置2は、図8のパターン転写機構1Aに示された構成に加えて、ディスク搬出機構(アンローダ)63とディスク搬入機構(ローダ)69を有する。ディスク搬入機構(ローダ)69はブランクディスク42をディスク置台65に載置する。前記のようにディスクハンドリングアーム45は上下左右に移動可能に構成されている。ディスクハンドリングアーム45が左方向に移動し、その後下降して、ディスク外周チャック46がディスク置台65上のブランクディスク42を把持と同時に、ディスクチャック47がレジスト塗布機構67内の両面レジスト塗布ディスク43を真空吸着する。その後、ディスクハンドリングアーム45が上昇し、次いで、右方向に移動する。その後、ディスクハンドリングアーム45が下降し、ディスク外周チャック46に把持されたブランクディスク42をレジスト塗布機構67に載置すると共に、ディスクチャック47に真空吸着されている両面レジスト塗布ディスク43を位置合わせ後に下側スタンパ29の表面に載置する。図7に関連して説明したように、全ての処理が完了した転写済みディスク53はディスク搬出機構(アンローダ)63により製品カセット(図示されていない)に移送される。言うまでもなく、ディスク搬出機構(アンローダ)63とディスク搬入機構(ローダ)69はディスク置台65及び/又はレジスト塗布機構67を有しない両面インプリント装置のパターン転写機構1に対しても配設できる。即ち、ディスク置台65及び/又はレジスト塗布機構67は本発明の両面インプリント装置における必須構成要素ではないこともある。例えば、独立した別途の両面レジスト塗布装置で両面にレジストが塗布されたディスクをディスク搬入機構(ローダ)69により直接下面側スタンパ装置3に載置することもできる。
【0032】
図10は本発明の両面インプリント装置2Aの他の実施態様の概要断面図である。図8に示されたディスク置台65、レジスト塗布機構67、下面側スタンパ装置3、上面側スタンパ装置5及び被転写体剥離装置7からなるパターン転写機構1Aを複数基(図では4基)並行に配列し、このパターン転写機構1Aと直交するように、ディスク搬入機構(ローダ)69とディスク搬出機構(アンローダ)63を配設する。この実施態様によれば、1組のディスク搬入機構(ローダ)69とディスク搬出機構(アンローダ)63により、複数基のパターン転写機構1Aにディスク43を供給(ロード)及び搬出(アンロード)することが可能となり、4基のパターン転写機構1Aのそれぞれが何らかの工程のパターン転写作業を実施することにより生産性が飛躍的に向上すると共に、直線状のパターン転写機構1Aを1組のディスク搬入機構(ローダ)69とディスク搬出機構(アンローダ)63に対して直交方向に配置することにより、デッドスペースが少なくなり、フットプリント面積が小さく、生産性の高い両面インプリント装置が実現する。両面インプリント装置2Aでは、少なくとも2つ以上のディスクが、ディスク搬入機構(ローダ)69による搬入作業、レジスト塗布機構67における塗布作業、下面側スタンパ装置3へのディスク載置、上面側スタンパ装置5による加圧、下面側スタンパ装置3からのディスク剥離、被転写体剥離装置7による上面側スタンパ装置5からのディスク剥離、被転写体剥離装置7からディスク搬出機構(アンローダ)63による搬出作業の何れかの工程が同時に実施できるように統括的に制御するための全体制御機構71を有することが好ましい。全体制御機構71はパターン転写作業に加えて、ディスク搬入機構(ローダ)69によるディスク搬入作業及びディスク搬出機構(アンローダ)63によるディスク搬出作業も併せて制御するのでインプリント作業の能率を飛躍的に向上させることができる。言うまでもなく、図10において、図8のパターン転写機構1Aの代わりに、図1のパターン転写機構1を使用することもできる。
【0033】
本発明の本発明の両面インプリント装置2Aにおけるディスク搬入機構(ローダ)69は複数のブランクディスクが格納されたディスクケース又はカセット(図示されていない)よりブランクディスク42を取り出した後、パターン転写機構1Aのディスク置台65(図8参照)までブランクディスク42を搬送するものである。ローダ69によるブランクディスク42の保持方法としてはディスク端部をメカニカルにホールドする方式やディスク穴のレジスト非塗布領域を吸着する方式が例示される。また、ディスクの搬送方向としては、パターン転写機構1Aにおけるディスク移動方向と直行していることが装置の効率的な配置を可能にする上で好ましい。ディスク搬入機構(ローダ)69の駆動推力としてはモータとボールネジによる駆動の他、リニアモータによる駆動や圧縮空気による駆動が例示される。また、ディスク搬入機構(ローダ)69及びディスク搬出機構(アンローダ)63はロボットアームを介し、駆動機構(図示されていない)に接続されており、3次元的に可動する。本発明の本発明の両面インプリント装置2Aにおけるディスク搬出機構(アンローダ)63も剥離後の転写済みディスク53を被転写体剥離装置7より回収し、基板回収ケース(図示されていない)まで転写済みディスク53を移動させる機構であり、基本的な構成はディスク搬入機構(ローダ)69と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上、本発明の両面インプリント装置の好ましい実施態様について説明してきたが、本発明は例示された実施態様に限定されず、様々な変更を為すことが可能である。例えば、未硬化レジスト塗布ディスクとスタンパとの間に気泡が内包されないようにするため、スタンパ載置テーブルの上面を湾曲させたり、あるいは両面インプリント装置全体を脱気室に収納するなどの変更を為し得る。
【符号の説明】
【0035】
1,1A 本発明の両面インプリント装置におけるパターン転写機構
2,2A 本発明の両面インプリント装置
3 下面側スタンパ装置
5 上面側スタンパ装置
7 被転写体剥離装置
9 移動テーブル
11 台座
13 ガイドレール
15 移動駆動機構
17 昇降機構
19 制御部
21 XYステージ
23 アライメントカメラ
25 UV光源
27 スタンパ載置テーブル
29 下側スタンパ
31a,31b スタンパクランプ
33 スタンパ支持テーブル
35 上側スタンパ
37 UV光源
39a,39b スタンパクランプ
41a,41b ストッパ
42 ブランクディスク
43 両面レジスト塗布ディスク
45 ディスクハンドリングアーム
46 ディスク外周チャック
47 ディスクチャック
49a 上側未硬化レジスト
49b 下側未硬化レジスト
51 未硬化レジスト非塗布領域
53 転写済みディスク
55 ディスク支持軸
57 真空チャック部
59 真空吸引口
61 O−リング
63 ディスク搬出機構(アンローダ)
65 ディスク置台
67 レジスト塗布機構
69 ディスク搬入機構(ローダ)
71 全体制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク両面にレジスト薄膜を形成した後、微細なパターンが形成された2個のスタンパを前記ディスク両面のレジスト薄膜上に押し付けた状態で前記レジスト薄膜を硬化させ、前記ディスク両面に微細なパターンを形成する両面インプリント装置であって、前記両面インプリント装置は、少なくとも、昇降機構に支持された上面側スタンパ装置と、ガイドレール上に乗せられた移動テーブルに固設された下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置とからなるパターン転写機構を有し、前記移動テーブルは移動駆動機構により前記ガイドレール上を往復動することができ、これにより、前記上面側スタンパ装置の位置を中心として、前記下面側スタンパ装置と被転写体剥離装置とが前記上面側スタンパ装置に対峙する位置に交互に移動することができる両面インプリント装置。
【請求項2】
前記下面側スタンパ装置は、XYステージと、アライメントカメラと、UV光源と、光透過性スタンパ載置テーブルと、該光透過性スタンパ載置テーブルの上面にクランプで締着された下側スタンパとからなり、前記上面側スタンパ装置は、昇降機構と、光透過性スタンパ支持テーブルと、この支持テーブルの下面側にクランプで締着された上側スタンパと、UV光源とからなり、前記被転写体剥離装置は真空チャック部と、該真空チャック部の中心部に位置する昇降可能なディスク支持軸とからなる請求項1記載の両面インプリント装置。
【請求項3】
前記クランプは2個以上からなり、一方のクランプがスタンパを締着しつつ、他方のクランプはスタンパの締着を解放できるように構成されている請求項2記載の両面インプリント装置。
【請求項4】
前記UV光源はUV−LED光源である請求項2記載の両面インプリント装置。
【請求項5】
前記パターン転写機構はディスクの両面にレジストを塗布するためのレジスト塗布機構を更に有する請求項1記載の両面インプリント装置。
【請求項6】
前記パターン転写機構にディスクを搬入するためのディスク搬入機構と、前記パターン転写機構によりパターン転写されたディスクを搬出するためのディスク搬出機構を更に有し、前記ディスク搬入機構およびディスク搬出機構によりディスクが移動する方向と、前記パターン転写機構におけるディスクの移動方向が直行するように前記ディスク搬入機構と前期パターン転写機構と前期ディスク搬出機構とが配置されていることを特徴とする請求項1又は5の何れかに記載の両面インプリント装置。
【請求項7】
前記パターン転写機構は1組のディスク搬入機構およびディスク搬出機構の間に2組以上のパターン転写機構を有することを特徴とする請求項6に記載の両面インプリント装置。
【請求項8】
1組のディスク搬入機構およびディスク搬出機構と、2組以上のパターン転写機構を同時に制御するための全体制御機構を更に有する請求項7記載の両面インプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−150780(P2011−150780A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287429(P2010−287429)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】