説明

両面印刷装置および孔版印刷装置

【課題】孔版印刷では、版を用いた印刷のため、速く安価に印刷することができるが、版を用いるためにページ印刷や宛名印刷などの可変データの印刷には対応できなかった。そのため、これまでは、同じ部分を孔版印刷した後に、可変部分をインクジェット等のカラープリンタなどによって再度印刷していたことにより、時間がかかっていたという問題点を解決する。
【解決手段】第1の印刷部20で第1の製版画像Aまたは第2の製版画像Bに対応してその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙PAを一時的に保持した後、第1の印刷部20に向けて反転させ再給送する再給紙部3を用い、第1の印刷部20(孔版印刷部)と給紙部60との間に、第1の印刷部20と異なる印刷方式で印刷を行う第2の印刷部5(インクジェット印刷部30等)を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面印刷装置および孔版印刷装置に関し、詳しくは、1工程でシート状記録媒体(以下、単に「シート」ともいう)の両面に印刷を行うことが可能な、第1の印刷部とシート給送部との間に、第1の印刷部と異なる印刷方式で印刷を行う第2の印刷部を配置した新しい複合型(ハイブリッド型)の両面印刷装置および孔版印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にその厚みが大体1〜2μm程度のものからなる熱可塑性樹脂フィルムと、和紙繊維とか合成繊維あるいは和紙繊維および合成繊維を混抄したもの等からなる多孔質支持体とを貼り合わせたラミネート構造の孔版マスタ(以下、単に「マスタ」という)の該熱可塑性樹脂フィルム面を、サーマルヘッドの多数の発熱素子に接触させてそのサーマルヘッドの主走査方向への作動を介して加熱穿孔・製版するとともに、プラテンローラ等のマスタ搬送手段でその製版されたマスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に移動させながら、円筒状の多孔性支持板の周面に例えば樹脂あるいは金属網体製のメッシュスクリーンを複層巻着した構成の回転自在な版胴に巻装し、版胴内部に設けられたインク供給手段より版胴内周面にインクを供給し、プレスローラや圧胴等あるいは中押しローラと呼ばれる押圧手段によって、版胴上の製版済みのマスタに対してシートの一例としての印刷用紙(以下、単に「用紙」ともいう)を連続的に押し付け・押圧することで、版胴の開口部、マスタの穿孔部分よりインクを滲出させ、このインクを用紙に転移させて印刷を行う感熱デジタル式孔版印刷装置が知られている。
なお、印刷ドラムは単に「版胴」と呼ばれることもあるが、以下、この明細書では、版胴は印刷ドラムの外周部に配設されているものとし、特に断らない限り版胴を含めて単に「印刷ドラム」と呼ぶこととする。また、「インク」は、「インキ」とも称呼されるが、以下、この明細書では、インキという用語をインクの称呼で統一して用いることとする。
【0003】
上述の孔版印刷において、最近では用紙の消費量や書類の保管スペース等を低減させるため、用紙の両面に印刷を行う両面印刷が頻繁に行われるようになってきている。この両面印刷では、給紙部に積載した用紙を印刷部に通紙し、その用紙の一方の面である表面に印刷をした後に、その片面印刷済みの用紙を裏返して再度印刷部に通紙して他方の面である裏面に印刷を行う方法が採用されていたが、一度排紙された片面印刷済みの用紙を再度給紙部にセットしたり、片面印刷後の用紙を揃えたりする作業が面倒であった。
そこで、本出願人は、上記片面印刷後の作業の面倒さ等に鑑みこれらを解消できる新規な孔版式の両面印刷装置(以下、「孔版両面印刷装置」ともいう)を提案した(例えば、特許文献1および2参照)。
【0004】
近年、速く安価に印刷可能な孔版印刷に加え、比較的速く安価にカラー印刷が可能なインクジェット印刷装置等を組み合わせたハイブリッド型の孔版印刷装置が提案されている(例えば、特許文献3および4参照)。
また、電子写真画像形成装置と、インクジェット方式の記録装置とを備えた後処理装置に関する複合画像形成装置も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
さらに、最近では、インクジェット方式と異なる方式による記録方式と、インクジェット方式による記録方式とで画像を形成することが可能であって、インクジェットによる画像形成を行う部分に対するアクセスが容易な画像形成装置、かかる画像形成装置に着脱されるオプション装置等に関する技術も提案されてきている(例えば、特許文献6参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−200645号公報
【特許文献2】特許第3545861号公報
【特許文献3】特開2002−137514号公報
【特許文献4】特開2002−137515号公報
【特許文献5】特開2002−60072号公報
【特許文献6】特開2006−76043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2等の従来の孔版両面印刷装置では、速く安価に印刷することができるが、機能上1つの印刷ドラムで1色の印刷しかできないため、フルカラー印刷をするためには4本以上の印刷ドラムを用意して重ね印刷を行うか、1台のマシンに4本以上の印刷ドラムを配置した印刷機を用意して印刷するしかなかった。そのため、重ね印刷では時間が4倍かかり、また、同時4色印刷機は高価となるため実現していない現状にある。
孔版印刷では、版であるマスタ(孔版原紙)を用いた印刷のため、速く安価に印刷することができるが、版を用いるためにページ印刷や宛名印刷などの可変データの印刷には対応できなかった。そのため、これまでは、同じ部分を孔版印刷した後に、可変部分をインクジェット方式等のカラープリンタなどによって再度印刷していたことにより、時間がかかっていたという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点・事情に鑑みてなされたものであって、両面印刷が可能な第1の印刷部と、第1の印刷部にシートを給送するシート給送部との間に、第1の印刷部と異なる印刷方式で印刷を行う第2の印刷部を配置することにより、孔版方式を含む両面印刷と第2の印刷部による重ね印刷の両面印刷が可能となる両面印刷装置を実現し提供することを主な目的とする。
また、特には第2の印刷部をインクジェット印刷装置とすることで、孔版方式を含む両面印刷とインクジェット印刷による重ね印刷の両面印刷が可能となる両面印刷装置を実現し提供することも目的とする。この他、後述する効果を奏する両面印刷装置および孔版印刷装置を実現し提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・構成を採っている。
請求項1記載の発明は、その回転方向に沿って第1の製版画像と第2の製版画像とが並んで形成された両面印刷用の製版済みマスタを巻装する印刷ドラム、該印刷ドラム上の製版済みマスタにインクを供給するインク供給手段および前記印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段を有する第1の印刷部と、第1の印刷部にシートを給送するシート給送部と、第1の印刷部で印刷された印刷済みシートを排出するシート排出部と、第1の印刷部で第1の製版画像または第2の製版画像に対応してその表面に印刷画像を形成された表面印刷済みシートを一時的に保持した後、第1の印刷部に向けて反転させ再給送する再給送部と、第1の印刷部を通過したシートを前記再給送部または前記シート排出部に案内する切換手段とを具備する両面印刷装置において、第1の印刷部と前記シート給送部との間に、第1の印刷部と異なる印刷方式で印刷を行う第2の印刷部を配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の両面印刷装置において、第2の印刷部が、インクジェット印刷装置であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の両面印刷装置において、両面印刷用の第1の製版画像と第2の製版画像とに対応した各画像データの製版画像面積を検出して、該製版画像面積の検出値と印刷枚数とを乗じた値が予め設定された設定値以下である場合には、前記インクジェット印刷装置のみで両面印刷を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の両面印刷装置において、前記設定値は、可変であることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項2ないし4の何れか一つに記載の両面印刷装置において、前記印刷ドラムは、インクの色毎に装置本体に対して着脱自在なドラムユニットを構成しており、前記ドラムユニットのインク色を識別するドラムユニットインク色識別手段を有し、第1の印刷部により孔版印刷を実行する孔版印刷モードと、前記孔版印刷に加え前記インクジェット印刷装置で重ね印刷を実行する重ね印刷モードとの双方が実行可能であり、画像色データに応じて前記ドラムユニットのインク色以外を前記インクジェット印刷装置のインク色を用いて重ね印刷するとき、前記ドラムユニットのインク色を、前記ドラムユニットインク色識別手段により識別されたインク色によって判断することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の両面印刷装置において、前記判断は、印刷開始前に実行されることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項2ないし6の何れか一つに記載の両面印刷装置において、前記インクジェット印刷装置に所定のタイミングでシートまたは表面印刷済みシートを給送する該インクジェット印刷装置の上流側に配置されたレジスト手段を有し、前記再給送部のシート搬送路が、表面印刷済みシートを搬送すべく前記レジスト手段に向けて延びて形成されており、前記インクジェット印刷装置のみで両面印刷が可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の両面印刷装置において、前記孔版両面印刷における表面または裏面印刷画像の編集を実行する編集モードを設定したとき、該編集モードの印刷画像確認用として、前記インクジェット印刷装置のみで印刷することを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の両面印刷装置において、前記編集モードを設定したとき、該編集モードで設定された編集設定値を、前記インクジェット印刷装置のみでの印刷画像に追加印刷することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項7記載の両面印刷装置において、印刷モードとして、孔版両面印刷モード、インクジェット両面印刷モード、孔版印刷とインクジェット印刷との重ね両面印刷モードを設定することが可能であることを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の発明は、請求項3ないし10の何れか一つに記載の両面印刷装置において、孔版印刷による印刷画像の位置をシートの上流または下流に移動調整した場合に、前記インクジェットによる書き込み開始位置も前記孔版印刷による印刷画像の位置に合わせて、前記書き込み開始位置を自動的に変えることが可能であることを特徴とする。
【0019】
請求項12記載の発明は、請求項7ないし11の何れか一つに記載の両面印刷装置において、前記印刷ドラムに前記両面印刷用の製版済みマスタを巻装した後で、印刷モードの切換によって、インクジェット印刷モードを選択すると、前記インクジェット印刷装置のみで両面印刷することが可能であることを特徴とする。
【0020】
請求項13記載の発明は、請求項2ないし11の何れか一つに記載の両面印刷装置において、前記レジスト手段の表面が、微細な凹凸状の表面処理を施されていることを特徴とする。
【0021】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の両面印刷装置において、前記再給送部に配設されているシート搬送手段およびシート案内手段の表面が、微細な凹凸状の表面処理を施されていることを特徴とする。
【0022】
請求項15記載の発明は、片面印刷用の製版済みマスタを巻装する印刷ドラム、該印刷ドラム上の製版済みマスタにインクを供給するインク供給手段および前記印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段を有する第1の印刷部と、第1の印刷部にシートを給送するシート給送部と、第1の印刷部と前記シート給送部との間に配置されたインクジェット印刷装置とを具備した孔版印刷装置であって、前記製版済みマスタの製版画像に対応した画像データの製版画像面積を検出して、該製版画像面積の検出値と印刷枚数とを乗じた値が予め設定された設定値以下である場合には、前記インクジェット印刷装置のみで印刷を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、前記課題を解決して新規な両面印刷装置および孔版印刷装置を実現し提供することができる。請求項毎の効果を挙げれば、以下のとおりである。
請求項1記載の発明によれば、上記構成により、孔版方式を含む両面印刷と第2の印刷部による重ね印刷の両面印刷ができる。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、第2の印刷部をインクジェット印刷装置とすることで、孔版方式を含む両面印刷とインクジェット印刷による重ね印刷の両面印刷ができる。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、上記構成により、両面印刷用の第1の製版画像と第2の製版画像とに対応した各画像データの製版画像面積を検出して、製版画像面積の検出値と印刷枚数とを乗じた値が予め設定された設定値以下である場合には、印刷ドラムのインク消費量が少なくなると共にマスタを使用しないことにより、インクジェット印刷装置のみで両面印刷を行う方が安価になる。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、設定値が可変であることにより、ユーザが望むところにより設定値を自由に変えて設定することができるので、例えば印刷時間を短くしたい設定や、マスタやインク等のサプライ使用量を減らしたいモードなどをユーザが自由に設定できる。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、上記構成により、例えばドラムユニットが標準の黒色インク以外にオプション等で黒色以外のインク色を用いて使用する場合があり、ドラムユニットインク色識別手段によりドラムユニットのインク色を識別することで、ドラムユニットインク色識別手段により識別されたドラムユニットのインク色が黒色の場合には、黒色の画像色データに基づいて、第1の印刷部による孔版印刷モードを実行し、識別されたドラムユニットのインク色が黒色以外の場合には、黒色以外の画像色データに基づいて、インクジェット印刷装置による重ね印刷モードを実行することで、高価なインクジェットインクを使用しないで安価な孔版印刷と組み合わせることによって安価なカラー両面印刷ができる。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、上記構成により、ドラムユニットインク色識別手段により識別されたドラムユニットのインク色が黒色の場合には、黒色の画像色データに基づいて、第1の印刷部による孔版印刷モードを実行し、識別されたドラムユニットのインク色が黒色以外の場合には、黒色以外の画像色データに基づいて、インクジェット印刷装置による重ね印刷モードを実行することの判断を、印刷開始前に実行することで、印刷間違いをなくすことができる。
【0029】
請求項7記載の発明によれば、上記構成により、インクジェット印刷装置のみで両面印刷ができる。
【0030】
請求項8記載の発明によれば、上記構成により、第1の印刷部による表面または裏面印刷画像の編集(例えば、表裏印刷画像の位置、先端余白値、上下移動設定値、左右移動設定値、変倍設定値などを含む)を実行する編集モードを設定したとき、インクジェット印刷装置のみで印刷することにより、上記編集内容を印刷画像で確認することができるので、版としてのマスタの無駄遣いを未然に防止することができる。
【0031】
請求項9記載の発明によれば、編集モードを設定したとき、編集モードで設定された編集設定値をインクジェット印刷装置のみでの印刷画像に追加印刷することにより、請求項8記載の発明の効果に加えて、ユーザが編集設定値のどの値を修正すればよいかを正確かつ確実に認識して実施することができる。
【0032】
請求項10記載の発明によれば、上記構成により、印刷モードとして、孔版両面印刷モード、インクジェット両面印刷モードまたは孔版印刷とインクジェット印刷との重ね両面印刷モードに切り替えて設定することができるので、目的の印刷に合わせて印刷条件を変えることができる。
【0033】
請求項11記載の発明によれば、上記構成により、孔版印刷による印刷画像の位置をシートの上流または下流に移動調整した場合に、インクジェットによる書き込み開始位置も孔版印刷による印刷画像の位置に合わせて、書き込み開始位置を自動的に変えて利便性の高い両面印刷を行うことができる。
【0034】
請求項12記載の発明によれば、上記構成により、印刷ドラムに両面印刷用の製版済みマスタを巻装した後で、印刷モードの切換によって、インクジェット印刷モードを選択すると、インクジェット印刷装置のみで両面印刷することが可能となる。
【0035】
請求項13記載の発明によれば、レジスト手段の表面が、微細な凹凸状の表面処理を施されていることにより、例えば孔版印刷で画像位置補正を行ったときで先端余白がなくなったような場合に、レジスト手段としての例えばレジストローラが再給送の際に汚れてしまうことを防止することができる。
【0036】
請求項14記載の発明によれば、再給送部に配設されているシート搬送手段およびシート案内手段の表面が、微細な凹凸状の表面処理を施されていることにより、例えば孔版印刷で画像位置補正を行ったときで先端余白がなくなったような場合に、例えばレジスト手段としてのレジストローラ、例えばシート搬送手段としての搬送ローラ、シート案内手段としての搬送ガイド板表面が再給送の際に汚れてしまうことを防止することができる。
【0037】
請求項15記載の発明によれば、上記構成により、製版済みマスタの製版画像に対応した画像データの製版画像面積を検出して、製版画像面積の検出値と印刷枚数とを乗じた値が予め設定された設定値以下である場合には、印刷ドラムのインク消費量が少なくなると共にマスタを使用しないことにより、インクジェット印刷装置のみで印刷を行う方が安価になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態および実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。実施形態や変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素をそのまま引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0039】
図1は、本発明に係る両面印刷装置を適用した両面印刷装置の全体構成を示している。図6は、従来の孔版両面印刷装置の全体構成を示している。まず、図6を参照して公知である従来の孔版式の両面印刷装置(以下、「孔版両面印刷装置」ともいう)500について説明した後で、これと比較する態様で本発明に係る両面印刷装置の実施形態について説明する。
【0040】
図6に示すように、従来の孔版両面印刷装置500は、印刷部20(以下、「第1の印刷部20」ともいう)、製版部40、給紙部60、排版部80、排紙部70、スキャナとも呼ばれる画像読取部50、再給紙トレイ24、再給紙部300、切換手段としての切換部材17等を有している。スキャナ、製版・給版、排版の機構等、すなわち、製版部40、給紙部60、排版部80、排紙部70、画像読取部50の構成および機能については従来から知られている製版・印刷一体型孔版印刷装置と同様なのでその細部構成の説明を省略する(例えば、特許文献1または特開2006−224633号公報の図1等参照)。
【0041】
これらの特許文献1または特開2006−224633号公報記載の孔版式の両面印刷装置では、片面印刷時においては片面印刷用に製版された製版済みマスタ66を印刷ドラム2の外周面(版胴の外周面)に巻装し、両面印刷時においては両面印刷用に2つの製版画像が印刷ドラム2の回転方向に並んで製版された両面印刷用の製版済みマスタ65を印刷ドラム2の外周部に備えられた版胴(以下、単に「印刷ドラム2」ともいう)外周面に巻装して、片面印刷時には印刷ドラム2の1回転で1枚の片面印刷済み用紙を、両面印刷時には印刷ドラム2の1回転で1枚の両面印刷済み用紙を得るように構成されている。片面印刷動作は、従来同様周知の動作であるため、その説明を省略する。
【0042】
すなわち、両面印刷動作は、概略、次の工程で行われる。図6において、先ず、給紙部60より1枚目の用紙Pを給送し、印刷ドラム2上に巻装された両面印刷用の製版済みマスタ65のうちの第1の製版画像(以下、「A面画像」ともいう)と1枚目の用紙Pとをプレスローラ13によって押圧して表面印刷済みシートとしての表面印刷済み用紙PAを作成する。表面印刷済み用紙PAとなった1枚目の用紙の先端は、図において二点鎖線で示す位置にある切換部材17によって印刷ドラム2上から剥離された後、すれ違いガイド板41bに開閉自在に設けられたクランパ41aによってクランプされつつ矢印Xb方向に搬送されて、補助トレイとも呼ばれる再給紙トレイ24に案内されて一時停止・吸着保持される。この状態の1枚目の表面印刷済み用紙を「PB」とする。
【0043】
次に、給紙部60より2枚目の用紙Pを給送し、製版済みマスタ65の第1の製版画像(A面画像)と2枚目の用紙Pとをプレスローラ13によって押圧して次の表面印刷済み用紙PAを作成する。表面印刷済み用紙PAとなった2枚目の用紙の先端は、切換部材17によって印刷ドラム2上から剥離された後、すれ違いガイド板41bのクランパ41aによりクランプされつつ矢印Xb方向に搬送されて再給紙トレイ24上に一時停止・吸着保持される。この2枚目の用紙の表面印刷時において再給紙搬送装置300(再給紙搬送部300・再給送搬送手段)が作動し、再給紙トレイ24上から1枚目の用紙PBが所定のタイミングで再給紙コロ47によってプレスローラ13の外周面に押し付けられる。これにより、1枚目の用紙PBはガイド部材49に案内されつつ、また回転するプレスローラ13の回転反転作用によってプレスローラ13の外周面に沿って第1の印刷部20の印刷ニップ部に向けて送られる。この1枚目の用紙PBは、印刷ドラム2上に巻装された製版済みマスタ65のうちの第2の製版画像(以下、「B面画像」ともいう)と対応するタイミングで給送され、プレスローラ13によって印刷ドラム2の外周面に押圧されることで裏面印刷画像を印刷される。両面に印刷画像を形成されて印刷済み用紙PCとなった1枚目の用紙は、図において実線で示す位置に切り換えられた切換部材17により案内されつつ図示しない剥離爪によって印刷ドラム2の外周面上より剥離され、排紙搬送ユニット27Aの作動によって排紙部70の排紙トレイ62へと送られる。以下、この動作が繰り返され、印刷ドラム2の1回転で1枚の両面印刷済み用紙が作成される。
【0044】
孔版両面印刷装置500には、後述の実施形態と共通する構成が含まれているため、適宜図5を借りて上記各部・各部材の細部構成および動作を補説する。
印刷部20は、装置本体100のほぼ中央に配置されており、図中矢印方向(時計回り方向)に沿って第1の製版画像Aと第2の製版画像Bとが並んで形成された分割製版済みマスタ65とも呼ばれる両面印刷用の製版済みマスタ65を外周に巻装する印刷ドラム2と、印刷ドラム2の外周面に対して接離自在な押圧手段としてのプレスローラ13とを有している。
印刷ドラム2は、装置本体100に回転自在に支持されており、図5に示すドラム駆動手段121としての例えばブラシレスDCモータにより、図中矢印方向(時計回り方向)に回転駆動される。図1において、印刷ドラムを示す符号2とともに括弧を付して示す符号2Aは、印刷ドラム2を回転駆動するギヤやベルト等の駆動力伝達手段、上記ドラム駆動手段および図示しないインク補給機構を含めてインク色毎に一体化・ユニット化されて構成され、図示しない着脱手段を介して装置本体100に対して着脱自在なドラムユニットを示している。印刷ドラム2の外周面には、画像情報に基づいて製版部40により穿孔製版された製版済みマスタ65がその先端部を開閉自在なクランパ6によってクランプされて巻き付け装着されるようになっている。
【0045】
製版済みマスタ65には、表面印刷用のA面画像と、裏面印刷用のB面画像とが印刷ドラム2の回転方向順(円周方向順)に並んで形成されており、A面画像とB面画像との間には未製版部分が形成されている。
これら製版済みマスタ65上の画像の元となるデジタル画像データは、原稿を画像読取部50で読み取って作成され、またはパソコン等のコンピュータ上で作成される。原稿のセットは、図示しない自動原稿送り装置(ADF)や自動両面原稿送り装置あるいはユーザによるコンタクトガラスヘの原稿セット操作により行われる。デジタル画像データの作成は、コンピュータ上に作成されたデジタル原稿を出力したものでも良いのは言うまでもない。これらデジタル画像データは後述する画像処理部における画像メモリ(図5に示す画像処理部95における画像メモリ90参照)に一度格納された後、製版部40に送られマスタへの穿孔製版が行われる。
【0046】
印刷ドラム2の外周面近傍には、印刷ドラム2の回転位置(位相)を検知する回転位置検出手段としての回転位置センサ(例えば、図5にも示すホームポジションセンサ134)およびロータリエンコーダが設けられている。
印刷ドラム2の内部には、周知のインク供給手段61、すなわちインクローラと、該インクローラとの間にほぼ楔状のインク溜まりを形成するドクターローラ等とから構成される単一のインク供給手段61が設けられていて、このインク供給手段61により印刷ドラム2の内周面、すなわち版胴の内周面にインクを供給できるようになっている。
【0047】
印刷ドラム2の下方近傍には、プレスローラ13が配設されている。プレスローラ13は、耐油性を有する弾性体である例えばニトリルゴム(NBR)で形成されていて、少なくとも該ゴムの外周表面には、微細な凹凸状の表面処理を施されたフィルムとしての、例えばオフセット印刷機などで印刷物の汚れ防止等に用いられていると同様の例えばガラス質微粒子としてのガラスビーズやセラミック質微粒子が均一に被覆または接着されている。これにより、印刷ドラム2の外周表面または該印刷ドラム2上の製版済みマスタ65と接触したときや、表面印刷済み用紙PBの印刷画像面側のインクと接触することによる膨潤およびインク汚れが最小となるように構成されている。
プレスローラ13は、図示しないアーム部材にその両端を回転自在に支持されており、図示しないアーム部材はプレスローラ接離機構(図示せず)によって揺動昇降自在に支持されている。プレスローラ13は、その周面が印刷ドラム2より離間する図1に示す離間位置と、その周面が印刷ドラム2上の製版済みマスタ65に圧接する圧接位置とを選択的に占める。上記プレスローラ接離機構および印刷部20の細部構成は、特許文献1および特開2006−224633号公報の図1ないし図3等に示され、それらに対応した段落に記載されている内容と同様のものを採用している。
【0048】
次に、プレスローラ13の印圧範囲(押圧範囲)を決定している周知の印圧範囲可変手段28周りの構成について簡単に述べる。孔版両面印刷装置500では、図6に示すように、印刷ドラム2上の製版済みマスタ65におけるA面画像に対応した表面領域のみに印圧を付与する第1の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIと、印刷ドラム2上の製版済みマスタ65におけるB面画像に対応した裏面領域のみに印圧を付与する第2の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIと、印刷ドラム2上の片面印刷用の製版済みマスタ66における片面製版画像に対応して表面領域から続けて裏面領域に亘って印圧を付与する第3の印圧範囲パターンとしての印圧範囲パターンIIIとの少なくとも3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換え可能になっている。これら3つの印圧範囲パターンのうちの一つを選択的に切り換える印圧範囲可変手段28は、特許文献1の図2〜図4に示されている多段カム(43)、段差カム(49)、この段差カム(49)を回転駆動するステッピングモータ(52)等を具備したプレスローラー接離機構(55)と同様の構成である。印圧範囲可変手段28は、プレスローラ13を印刷位置と非印刷位置との間に変位させるための構成・機能も有する。
孔版両面印刷装置500は、特許文献1および特開2006−224633号公報記載の技術と同様に、単一の印刷ドラム2、単一のインク供給手段61および単一のプレスローラ13を用いて、孔版両面印刷を連続的に行うことが可能に構成されている。
【0049】
製版部40は、印刷ドラム2のほぼ右横に配置されていて、製版済みマスタ65,66を作製する周知の機能・構成を有する。製版部40の細部構成は、特許文献1の図1に示され、それに対応した段落「0066」〜「0073」に記載されている内容と同様のものである。製版部40に配設されているプラテンローラ等のマスタ搬送手段を回転駆動するステッピングモータおよびサーマルヘッド駆動回路等を含む駆動手段を総称して、図5において製版駆動手段124とする。
【0050】
給紙部60は、製版部40の右下方に配置されていて、第1の印刷部20や、後述する第1の実施形態等にあっては第2の印刷部5にシートの一例としての用紙Pを給送するシート給送部としての機能・構成を有する。給紙部60は、シート給送台・給紙台としての給紙トレイ61、シート給送手段・給紙手段としてのピックアップ給紙ローラ10aおよび分離ローラ10b、分離パッド11、レジスト手段としてのレジストローラ対12等から主に構成されている。
【0051】
ピックアップ給紙ローラ10aと分離ローラ10bとは、タイミングベルトによって連結されていて、タイミングベルトおよびタイミングプーリ等の駆動力伝達手段を介して給紙駆動手段としての例えば図示しないステッピングモータからなる給紙モータによって回転駆動される。
レジストローラ対12は、一対の従動ローラ12aと駆動ローラ12bとからなり、これらが図示しないバネ等の付勢手段を介して互いに圧接されている。レジストローラ対12も、タイミングベルトおよびタイミングプーリ等の駆動力伝達手段を介してレジスト駆動手段としての例えば図示しないステッピングモータからなるレジストモータによって回転駆動される。
【0052】
給紙トレイ61は、多数枚の用紙Pを積載して昇降自在に構成されている。この用紙Pは、A面画像とB面画像の大きさに適応した用紙サイズとなっている。つまり、片面印刷時の最大印刷サイズが例えばA3サイズである場合は、両面印刷の場合の最大印刷サイズはおおよそA4サイズとなり、最大通紙用紙もA4サイズになる。通紙方向は短手方向になる。
給紙トレイ61は、図示しない昇降機構により昇降可能となっている。給紙トレイ61には、給紙トレイ61上にセットされた用紙Pのサイズを検知する複数の用紙サイズ検知センサが配置されている。
図示しない昇降モータ、上記給紙モータおよびレジストモータ等の駆動手段を総称して、図5において給紙駆動手段125とする。
【0053】
排版部80は、印刷ドラム2の左上方に配置されていて、印刷ドラム2上の使用済みの製版済みマスタ65を剥離し排版する周知の機能・構成を有する。排版部80の細部構成は、特許文献1の図1に示され、それに対応した段落「0078」〜「0079」に記載されている内容と同様のものである。排版部80に配設されている排版モータや圧縮板駆動モータ等の駆動手段を総称して、図5において排版駆動手段126とする。
【0054】
排紙部70は、排版部80の左下方に配置されていて、印刷ドラム2上の製版済みマスタ65から印刷された用紙Pを剥離し排出するシート排出部としての周知の機能・構成を有する。排紙部70の細部構成は、特許文献1の図1に示され、それに対応した段落「0081」に記載されている内容と同様のものである。
すなわち、排紙部70は、図示しない剥離爪、排紙搬送ユニット27A、シート排出台・排紙台としての排紙トレイ62、図示しない剥離ファン等から主に構成されている。上記剥離爪は、図示しない揺動手段によってその先端部が印刷ドラム2の外周面に対して近接・離間可能に設けられており、近接位置を占めた際に印刷ドラム2の外周面より印刷済みの用紙を剥離する。排紙搬送ユニット27Aは、ベルト式の吸引搬送装置からなり、駆動ローラ25bと、従動ローラ25aと、駆動ローラ25bと従動ローラ25aとの間に掛け渡された無端ベルト27と、剥離された印刷済みの用紙を無端ベルト27上に吸引・吸着する空気吸引手段としての吸引ファン26等を具備している。駆動ローラ25bは、例えば駆動手段としてのステッピングモータで回転駆動される。排紙搬送ユニット27Aは、無端ベルト27の上面に印刷済みの用紙を吸引・吸着しつつ図中矢印Xe方向に搬送する。
【0055】
排紙トレイ62は、1個のエンドフェンスと一つのサイドフェンスとを有しており、その上面に印刷済みの用紙を整然と積載する。上記剥離ファンは、上記剥離爪の上方近傍に配設されており、印刷ドラム2上の製版済みマスタ65と印刷済みの用紙の先端部との間に送風することにより、表面印刷工程を終えて切換部材17によって印刷ドラム2上の製版済みマスタ65から剥離される用紙、および裏面印刷工程を終えて上記剥離爪によって印刷ドラム2上の製版済みマスタ65から剥離される用紙の先端部を浮き上がらせて完全剥離する送風分離手段として機能する。
排紙部70に配設されている駆動ローラ25bを駆動する図示しない駆動モータや吸引ファン26等の駆動手段を総称して、図5において排紙駆動手段127とする。
【0056】
画像読取部50(以下、「スキャナ50」ともいう)は、装置本体100の上部に配置されていて、原稿の画像情報を読み取る機能・構成を有する。スキャナ50は、コンタクトガラス52と、コンタクトガラス52に対して接離自在もしくは開閉自在に設けられた圧板51と、原稿の画像を走査して読み取る反射ミラーおよび蛍光灯と、走査された画像の反射光を集束するレンズ53と、集束された画像の反射光を光電変換処理するCCD等からなる画像センサ54と、コンタクトガラス52上にセットされた原稿のサイズを検知する複数の原稿サイズ検知センサ等を具備している。スキャナ50の上部には、周知構成の自動原稿送り装置(以下「ADF」ともいう)が適宜搭載される。図示しない自動両面原稿送り装置が搭載される場合もある。ADFは、複数枚の原稿を載置可能な原稿載置台を有しており、原稿載置台には原稿の有無を検知する原稿センサ等も設けられている。画像読取部50に配設されているスキャナモータ等の駆動手段を総称して、図5において読取駆動手段128とする。
なお、画像読取部50には、多色印刷に必要な色分解のための諸機能を有する構成、例えば特開昭64−18682号公報記載の複数の色フィルターを切換可能に制御できるフィルターユニットと同様の機能および構成を有するものが、画像読取部50に配置されている反射ミラーとレンズ53との間の光路上に配設されていて、図1に示すインクジェット印刷装置30等でカラーインクジェット印刷を行う際に利用される。
【0057】
再給紙部300は、プレスローラ13の周りに配置されていて、第1の製版画像Aまたは第2の製版画像Bに対応してその表面に印刷画像が形成された表面印刷済み用紙PAを一時的に保持した後、プレスローラ13に向けて搬送する再給送搬送手段を備え、該プレスローラ13で反転させて印刷部20に向けて再給送する再給送部(再給送手段)として機能する。以下、表面印刷済み用紙PAは、第1の製版画像Aに対応してその表面に印刷画像が形成されるものとする。
【0058】
再給紙部300は、印刷部20から送り出され該印刷部20でA面画像を印刷された表面印刷済み用紙PAの先端部を印刷部20近傍の第1の位置(移動位置)付近で挟持・保持する開閉自在なクランパ41aを備え、上記移動位置よりも低い第2の位置(初期位置もしくは待機位置)でクランパ41aをして表面印刷済み用紙PAの先端を開放させるシート挟持搬送手段としてのすれ違いガイド板41bと、再給紙トレイ24に配設され表面印刷済み用紙PBを一時的に保持してプレスローラ13に向けて吸引・吸着しながら搬送する再給送搬送手段としての再給紙搬送ユニット42と、再給紙搬送ユニット42により搬送されてきた表面印刷済み用紙PBの先端をプレスローラ13に受け渡す前で一時的に停止させて位置決めする再給送位置決め手段・再給紙位置決め部材もしくはストッパ部材であるストッパ48と、このストッパ48により一時的に停止された表面印刷済み用紙PBの先端の停止状態を所定のタイミングで解除してその用紙PBの先端をプレスローラ13に当接・押し付けさせる当接位置と、この当接位置から離間した非当接位置との間で変位自在な再給送レジスト手段としての再給紙コロ47と、プレスローラ13の右側においてプレスローラ13外周面に近接して設けられ、再給紙コロ47によりプレスローラ13外周面に当接された表面印刷済み用紙PBを印刷部20に形成されるニップ部へ案内する再給送案内手段・再給送案内部材としてのガイド部材49とから主に構成されている。
【0059】
再給紙トレイ24、再給紙搬送ユニット42、再給紙コロ47およびストッパ48は、プレスローラ13の上記接離機構を介して一体的に昇降揺動する。
再給紙搬送ユニット42は、ベルト式の吸引搬送装置からなり、再給紙トレイ24と一体的に形成された筺体側板に回転自在に軸支された駆動ローラ43と、上記筺体側板に回転自在に軸支された従動ローラ44と、駆動ローラ43と従動ローラ44との間に掛け渡された複数本の無端ベルト45と、比較的弱い吸着力で表面印刷済み用紙PBを無端ベルト45上に吸引・吸着する空気吸引手段としての吸引ファン46等を具備している。駆動ローラ43は、例えば駆動手段としてのステッピングモータからなる図5のみに示す搬送ユニット駆動モータ122で回転駆動される。
再給紙搬送ユニット42は、特許文献1の図1および図2等に示されている再給紙搬送部材(25)と同様のものである。
【0060】
クランパ41aを備えたすれ違いガイド板41bは、例えば特開2006−224633号公報の図1および図5等に示されている移動ガイド(81)と同様のものであり、同じく特開2006−224633号公報の図7および図8に示されている移動手段(87)等と同様の構成で往復移動し、クランパ41aの開閉が行われるものである。
ガイド部材49は、全体として弓形の形状をなし、その内周面がプレスローラ13の外周面から約0.3〜1.0mmの所定の隙間をもって、プレスローラ13と非接触状態に配置されていて、例えば特開2005−350161号公報の図1および図2等に示されている記録媒体ガイド手段(22)と同様のものである。
【0061】
切換部材17は、印刷ドラム2とプレスローラ13との圧接位置の左方であって、用紙搬送経路上に配設されている。切換部材17は、その用紙搬送方向下流側端部を装置本体100に揺動変位自在に支持されており、図示しない変位駆動手段(例えば、図5に示すソレノイド123と図示しないバネとの公知の機構からなる)によって揺動変位され、図1に実線で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置とを選択的に占める。
【0062】
上述した構成に基づき、孔版両面印刷装置500における孔版両面印刷モード時の基本的な動作について、図4に示す操作パネル103の従来構成を適宜借りると共に細部構成を随時補足しながら説明する。
ユーザは操作パネル103の孔版両面印刷モードキー117を押下して孔版両面印刷モードであることをLED117aの点灯によって確認した後、スタートキー104を押下して特許文献1と同様に版付け印刷を行い、孔版両面印刷装置500が印刷待機状態となった後、適宜の試し刷り後、印刷速度設定キー113および操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を入力した後にテンキー109によって印刷枚数が入力され、その後で、印刷スタートキー105が押下されると、印刷速度設定キー113により設定された印刷速度で以下の両面印刷動作が行われる。
印刷スタートキー105が押下されると、用紙Pは、ピックアップ給紙ローラ10aで送られ、分離ローラ10bと分離パッド11との協働作用により1枚ずつに分離され、レジストローラ対12へ向けて送られる。用紙Pは、レジストローラ対12で一旦停止されて斜めずれ(スキュー)等を修正された後、印刷ドラム2に対して所定の位相タイミングにて印刷ドラム2とプレスローラ13との間、すなわち印刷部20のニップ部に向けて送り出される。ピックアップ給紙ローラ10aおよび分離ローラ10bの回転は、上述したように専用のステッピングモータなどの給紙駆動手段で回転駆動してもよいし、印刷ドラム2のドラム駆動手段121であるメインモータ等からの駆動力を扇形カムや電磁クラッチを用いて受けるようにしてもよい。
【0063】
給紙部60から給送された用紙Pが印刷部20のニップ部で印刷されて、印刷部20でA面画像を印刷された表面印刷済み用紙PAは上向きに切り換わっている切換部材17により、図の左下方向に案内され、再給紙部300の再給紙トレイ24に向かって排出される。
すれ違いガイド板41bは図示しない駆動装置によって表面印刷済み用紙PAの排出に合わせて高速で矢印Xb方向に往復移動し、表面印刷済み用紙PAの先端部をクランプして案内するようになっている。
印刷部20でA面画像を印刷された表面印刷済み用紙PAは、その先端部をすれ違いガイド板41bに設けられたクランパ41aで挟持されて、すれ違いガイド板41bの左下方向への移動によって、既に再給紙搬送ユニット42上にある表面印刷済み用紙PBの上面との接触が防止された状態で再給紙トレイ24上に案内・搬送される。再給紙トレイ24上にあった表面印刷済み用紙PBは、ベルト式の吸引搬送装置である再給紙搬送ユニット42によって再給紙方向Xcの下流側(図1において右方向)に搬送される。この表面印刷済み用紙PBの先端は、ストッパ48に突き当たることで一時停止される。
【0064】
吸引ファン46の吸引力は比較的弱いので、過大な搬送力による用紙座屈や撓みが発生することはない。あるいは、ストッパ48への突き当てを検出して無端ベルト45の駆動を停止するようになっていてもよい。図1に示す再給紙トレイ24上の表面印刷済み用紙PBはストッパ48に突き当っている状態を示している。
ストッパ48に突き当っている表面印刷済み用紙PBは図1に示す状態で一時待機しているが、印刷ドラム2に対して所定のタイミング、すなわち、給紙部60から印刷部20に送られたA面画像印刷用の用紙Pの後端に続けて表面印刷済み用紙PBの先端が印刷部20に送り込まれるタイミングで、再給紙されることになる。勿論、A面画像印刷用の用紙Pの後端と表面印刷済み用紙PBの先端との間には適正な隙間が設けてあるのは言うまでもない。
再給紙コロ47は図示しない変位機構により上下方向に揺動自在(プレスローラ13に対して接離自在)に支持されており、上記所定のタイミングで表面印刷済み用紙PBの先頭部(先端部)を押し上げ、表面印刷済み用紙PBをプレスローラ13に当接・押圧させ、再給紙コロ47の押し上げ動作により表面印刷済み用紙PBの先端はストッパ48から外れ、再給紙・搬送可能な状態になる。プレスローラ13は印刷ドラム2の周速度と同じ周速度にて回転駆動されており、再給紙コロ47によって押し当てられた表面印刷済み用紙PBはその搬送力を受けて搬送される。
【0065】
再給紙コロ47の下流から印刷ドラム2とプレスローラ13とが圧接することにより形成されるニップ手前までの範囲にかけては、表面印刷済み用紙PBはガイド部材49によって案内される。表面印刷済み用紙PBは、プレスローラ13とガイド部材49間の上記所定の微細な隙間を、プレスローラ13に密着した状態で搬送され、印刷ドラム2とプレスローラ13のニップ部まで送り込まれる。こうして再給紙されて印刷部20のニップ部に入ってきた表面印刷済み用紙PBは反転されており、先ほどの表面印刷済み面が下面に、未印刷面が上面になっている。今度はその上面、すなわち未印刷面にB面画像を、製版済みマスタ65のB領域によって印刷する。こうして両面印刷が行われることになる。
両面印刷が行われた用紙PCは、今度は下向きに切り換わっている切換部材17により図において左方向にほぼ水平に案内され、排紙搬送ユニット27Aにより、排紙トレイ62に向けて図中Xe方向へ搬送され、エンドフェンスおよび一対のサイドフェンスにより排紙揃えがされつつ排出される。そして排紙トレイ62上に整然と順次積載される。
【0066】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る両面印刷装置1について説明する。両面印刷装置1は、図6に示した従来の孔版両面印刷装置500と比較して、再給紙部300に代えて、第1の印刷部20で第1の製版画像Aまたは第2の製版画像Bに対応してその表面に印刷画像を形成された表面印刷済み用紙PAを一時的に保持した後、第1の印刷部20に向けて反転させ再給送する再給送部としての再給紙部3を用いる点、および第1の印刷部20と給紙部60との間に、第1の印刷部20と異なる印刷方式で印刷を行う第2の印刷部5を配置した点が主に相違する。以下、「表面印刷済み用紙PA」には、第2の印刷部5で印刷された用紙が含まれるものとする。
【0067】
第2の印刷部5としては、図1に示すインクジェット印刷装置30(以下、「インクジェット印刷部30」ともいう)の他に、昇華型熱転写プリンタや感熱転写インクリボンプリンタなどを配置することによって、片面印刷、両面印刷の場合でも印刷ドラム2による印刷前に第2の印刷部5によって用紙Pに対して印刷をすることができる。
【0068】
再給紙部3は、図6に示した再給紙部300と比較して、クランパ41aを備えたすれ違いガイド板41bを除去しこれに代えて、表面印刷済み用紙PAの先端を再給紙トレイ24に向けて案内するガイド部材29をプレスローラ13の左斜め下方近傍に設けた点、ストッパ48、再給紙コロ47およびガイド部材49を除去すると共に、再給紙トレイ24、再給紙コロ47、ストッパ48および再給紙搬送ユニット42が図示しないプレスローラ接離機構を介して一体的に昇降揺動する構成を除去しこれに代えて、再給紙搬送ユニット42を図1の所定位置に取り付け・固定した点、ストッパ48および再給紙コロ47に代えて、再給紙レジストローラ対22を再給紙搬送ユニット42の下流側近傍に配設した点、再給紙部3のシート搬送路としての用紙搬送路が、表面印刷済み用紙PBを反転・搬送すべくレジストローラ対12に向けて図中Xd方向に延びて形成されている点が主に相違する。
【0069】
第1の印刷部20は、図6に示した孔版両面印刷装置500に具備するものと同様である。すなわち、プレスローラ13は、その周面が印刷ドラム2より離間する図1に示す離間位置と、その周面が印刷ドラム2上の両面印刷用の製版済みマスタ65または片面印刷用の製版済みマスタ66に圧接する圧接位置とを選択的に占める。この機構は、孔版両面印刷装置500に搭載されていると同様の、図示しないプレスローラ接離機構でもある印圧範囲可変手段28および印刷部20の細部構成は、特許文献1および特開2006−224633号公報の図1ないし図3等に示され、それらに対応した段落に記載されている内容と同様の周知のものである。
再給紙トレイ24および再給紙搬送ユニット42は、図1に示すようにプレスローラ13の下方の所定位置に取り付け・固定されていて、プレスローラ13の昇降揺動動作と共に揺動しない構成となっている。ガイド部材29は、装置本体100の不動部材に固定されている。
【0070】
本実施形態では、クランパ41aを備えたすれ違いガイド板41bは、必須の構成ではなく、無くてもよい。これは、再給紙部3の配置構成、特に再給紙トレイ24の配置位置および再給紙部3の用紙搬送路が図1に示したレイアウト構成となっていることにより、再給紙トレイ24上に先に搬送され一時停止している表面印刷済み用紙PBと接触する不具合が発生しにくくなっていることによる。しかしながら、クランパ41aを備えたすれ違いガイド板41bを用いると、表面印刷済み用紙PAを再給紙トレイ24まで確実かつ正確に再給紙・搬送することができるから、これを利用しても良いことは無論である。
【0071】
再給紙部3の用紙搬送路には、再給紙トレイ24の下流側近傍に設けられ、表面印刷済み用紙PBの先端をニップ部で一時的に受け止め保持する用紙(シート)搬送手段としての再給紙レジストローラ対22と、再給紙レジストローラ対22とレジストローラ対12との間に設けられ再給紙レジストローラ対22から送出された表面印刷済み用紙PBをレジストローラ対12に向けて搬送する再給紙搬送ローラ対16と、再給紙レジストローラ対22と再給紙搬送ローラ対16との間に設けられ表面印刷済み用紙PBをレジストローラ対12に向けて案内する用紙(シート)案内手段としての一対のガイド部材18aとガイド部材18bとからなる第1ガイド部材18と、再給紙搬送ローラ対16とレジストローラ対12との間に設けられ表面印刷済み用紙PBをレジストローラ対12に向けて案内する用紙(シート)案内手段としての一対のガイド部材19aとガイド部材19bとからなる第2ガイド部材19とが配置されている。
【0072】
再給紙レジストローラ対22は、一対の従動ローラ22a(以下、「再給紙レジストローラ22a」ともいう)と駆動ローラ22b(以下、「再給紙レジストローラ22b」ともいう)とからなり、これらが図示しないバネ等の付勢手段を介して互いに圧接されている。同様に、再給紙搬送ローラ対16は、一対の従動ローラ16a(以下、「再給紙搬送ローラ16a」ともいう)と駆動ローラ16b(以下、「再給紙搬送ローラ16b」ともいう)とからなり、これらが図示しないバネ等の付勢手段を介して互いに圧接されている。駆動ローラ22bは、図示しない回転駆動伝達手段を介して、例えばステッピングモータからなる図5のみに示す駆動モータ22cにより回転駆動される。同様に、駆動ローラ16bは、図示しない回転駆動伝達手段を介して、例えばステッピングモータからなる図5のみに示す駆動モータ16cにより回転駆動される。
【0073】
本実施形態では、第2の印刷部5を有し、かつ、再給紙部3の用紙搬送路が図1に示すレイアウト構成で用紙搬送が行われることに伴い、レジストローラ対12の下側のレジストローラ12b(駆動ローラ12b)表面が、微細な凹凸状の表面処理を施されていることが一つの特徴となっている。
給紙部60からレジストローラ対12に搬送される用紙Pは、印刷前のため搬送してもレジストローラ対12がインク等で汚れることはないが、再給紙される表面印刷済み用紙PBは、その表面を第2の印刷部(例えばインクジェット印刷装置30)および/または印刷ドラム2によって印刷されているために、レジストローラ対12で再給紙すると画像によっては汚れる場合がある。通常、レジストローラ対12の駆動ローラ12b(以下、「レジストローラ12b」ともいう)と従動ローラ12a(以下、「レジストローラ12a」ともいう)との間にはバネ等により圧力を加えていて、用紙先端がレジストローラ対12の間に入り込まないようにしてある。従って、レジストローラ対12による再給紙時にレジストローラ対12がインク等で汚れると、レジストローラ対12は用紙先端位置と印刷画像位置とを合わせるために、上記圧力を加えた状態でレジストローラ対12を図示しないレジストモータ(ステッピングモータ)によって回転させて用紙搬送するが、この時に用紙に表面印刷画像があるとレジストローラ12b側が汚れてしまう場合がある。レジストローラ12bが汚れてしまうと、別の用紙Pを搬送したときに再転写することによって汚してしまうことになる。
【0074】
そこで、本実施形態ではレジストローラ12b側をレジストローラの機能を損ねることなく、かつ、表面印刷済み用紙PBの印刷画像面等によるインクの転移のないローラの表面として、微小突起ないしは微細な凹凸状の表面処理を施されたフィルムとしての、例えばオフセット印刷機などで印刷物の汚れ防止等に用いられていると同様の例えばガラス質微粒子としてのガラスビーズやセラミック質微粒子が均一に被覆または接着されている。これにより、レジストローラ12bの外周表面が表面印刷済み用紙PBの印刷画像面側のインクと接触することによるインク汚れ等が最小となるように構成されている。
【0075】
上述したと同様の以下の理由により、再給紙部3に配設されている再給紙レジストローラ22b、再給紙搬送ローラ16b、ガイド部材18b、ガイド部材19bの各々の表面は、微細な凹凸状の表面処理を施されていることことが一つの特徴となっている。
上述したように、表面印刷済み用紙PAは所定のタイミングで再給紙レジストローラ対22により再給紙搬送され、さらに再給紙搬送ローラ対16によってレジストローラ対12に搬送される。再給紙レジストローラ対22は上述したレジストローラ対12のように用紙位置と印刷画像位置とを合わせる必要はないので、レジストローラ対12のように圧力を加える必要はない。再給紙後にレジストローラ対12によって用紙位置と印刷画像位置とを合わせるので、再給紙レジストローラ対22や再給紙搬送ローラ対16は搬送の圧力は低くて良いが、画像によっては再給紙レジストローラ22b、再給紙搬送ローラ16b、ガイド部材18b、ガイド部材19b側の各々の外周・表面が表面印刷済み用紙PBの印刷画像面側のインクと接触することによってインク等で汚れる場合がある。
そこで、再給紙レジストローラ22b、再給紙搬送ローラ16b、ガイド部材18b、ガイド部材19b側の各々の外周・表面を、微小突起ないしは微細な凹凸状の表面処理を施されたフィルムとしての、上記同様の例えばガラス質微粒子としてのガラスビーズやセラミック質微粒子が均一に被覆または接着されているものを使用する。
【0076】
次に動作を説明する。ステッピングモータからなる図示しない給紙モータの起動によって給紙部60のピックアップ給紙ローラ10a、分離ローラ10bが回転駆動されることにより、1枚の用紙Pをレジストローラ対12まで搬送した後に、印刷ドラム2の回転のタイミングに合わせてステッピングモータからなる図示しないレジストモータの起動によって、第1の印刷部20における印刷ドラム2とプレスローラ13との間の印刷ニップ部へと用紙Pが給送されることで、第1の印刷部20において用紙Pへの孔版印刷を行うことができると共に、第1の印刷部20と給紙部60との間に、第1の印刷部20と異なる印刷方式で印刷を行う第2の印刷部5(図1および図2に示すインクジェット印刷装置30の他に、昇華型熱転写プリンタや感熱転写インクリボンプリンタなどからなる)を配置したので、第1の印刷部20における印刷ドラム2による孔版片面印刷、孔版両面印刷の何れの場合でも印刷ドラム2による孔版印刷前に、第2の印刷部5によって用紙Pに重ね印刷をすることができる。
【0077】
(第2の実施形態)
図1〜図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る両面印刷装置1について、より詳しく説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態に係る両面印刷装置1の第2の印刷部5に関して、インクジェット印刷装置30であることを明定した点、再給紙部3の用紙搬送路周りの構成を明定した点、および両面印刷装置1を操作するための操作部としての図4に示す操作パネル103、両面印刷装置1の各部・装置および操作パネル103を制御する制御手段としての図5に示す制御装置129等の機能・構成を明定した点等が主に相違する。
【0078】
図1〜図3を参照して、インクジェット印刷部30を詳細に説明する。インクジェット印刷部30には、ライン型インクジェットプリンタヘッドが4色分配置されている。インクジェット印刷装置30は、図2において左から順にY(イエロー)のインクジェットプリンタヘッド30a、M(マゼンタ)のインクジェットプリンタヘッド30b、C(シアン)のインクジェットプリンタヘッド30c、Bk(ブラック)のインクジェットプリンタヘッド30dの4色の専用ヘッドで構成されていて、各インクジェットプリンタヘッド30a〜30dには各色のインクが供給される。これら4個のインクジェットプリンタヘッド30a〜30dは、各色のインクを吐出・噴射可能な吐出口(ノズル)が下方に向けて装着され、かつ、用紙搬送方向Xaに沿って並設されている。
【0079】
図3は、図2に示したインクジェット印刷部30のインクの流れの概略を模式的に示している。同図に示すように、各色のインクを収納したインクボトル、すなわちY(イエロー)のインクボトル31a,M(マゼンタ)のインクボトル31b、C(シアン)のインクボトル31c、Bk(ブラック)のインクボトル31dの4色の専用インクボトルが装置本体100内に配置されている。各色のインクボトル31a〜31d内には、それぞれのインク色に対応して模式的に示すインクポンプ34a〜34dが配置されていて、制御手段129からの指令信号により各色のインクを各色のインクジェットプリンタヘッド30a〜30dに供給する。
【0080】
各色のインクボトル31a〜31d内には、それぞれのインク色に対応してインク残量検知手段としての図5のみに示すインク残量検知センサ35a〜35dが配置されていて、各色のインク残量検知センサ35a〜35dで検知された各色のインク残量に係る信号を制御手段129に出力する。この信号を元に、各色のインク残量状態を図4に示す操作パネル103の表示装置120に表示することが可能となっている。また、各色のインクジェットプリンタヘッド30a〜30dのクリーニング時には、その廃液を各色の廃液管32a〜32dを通して一つの廃液タンク33に集めるように構成されている。廃液タンク33には、図5のみに示す廃液インク満杯検知センサ36も配置されていて、インクの満杯状態に係る信号を制御手段129に出力する。この信号を元に、廃液満杯状態を操作パネル103の表示装置120に表示することが可能となっている。
【0081】
インクジェット印刷部30の下方には、図1および図2に示すように、インクジェット搬送ユニット14Aが配置されている。インクジェット搬送ユニット14Aは、駆動ローラ14bと、従動ローラ14aと、駆動ローラ14bおよび従動ローラ14a間に掛け渡された用紙搬送部材(シート搬送部材)としての無端ベルト14cと、空気吸引手段としての吸引ファン15等とを有している。駆動ローラ14bは、駆動手段としての図5に示す例えばステッピングモータからなる搬送ユニット駆動モータ14dにより回転駆動される。
【0082】
図4を参照して、両面印刷装置1の操作パネルを説明する。図1において、両面印刷装置1の上部前面に設けられた操作パネル103は、図4に示すように、その上面にスタートキー104、印刷スタートキー105、試し刷りキー106、連続キー107、クリア/ストップキー108、テンキー109、エンターキー110、プログラムキー111、モードクリアキー112、印刷速度設定キー113、4方向キー114、用紙サイズ設定キー115、孔版両面印刷キー117、孔版片面印刷モードキー118、7セグメントLED(発光ダイオード)からなる表示装置119、LCD(液晶表示装置)からなる表示装置120等を有している。
【0083】
スタートキー104は、両面印刷装置1に製版動作を行わせる際に押下され、スタートキー104が押下されると排版動作および原稿読取動作が行われた後に製版動作が行われ、その後、版付け動作が行われて両面印刷装置1は印刷待機状態となる。また、スタートキー104は、両面印刷装置1にインクジェット印刷動作を行わせる際に押下されると、上記製版動作の他に、所定モードのインクジェット印刷動作を起動する動作起動設定手段としても機能する。
印刷スタートキー105は、両面印刷装置1に孔版印刷動作やインクジェット印刷動作を行わせる際に押下され、両面印刷装置1が印刷待機状態となり各種印刷条件が設定された後に印刷スタートキー105が押下されることにより所定モードの孔版印刷動作やインクジェット印刷動作あるいは重ね印刷動作が行われる。
試し刷りキー106は、両面印刷装置1に試し刷りを行わせる際に押下され、各種条件が設定された後に試し刷りキー106が押下されることにより1枚だけ孔版印刷やインクジェット印刷あるいは重ね印刷動作が行われる。連続キー107は、製版動作と孔版印刷動作とを連続して行う際にスタートキー104の押下前に押下され、連続キー107の押下後、印刷条件が入力された後にスタートキー104が押下されると、排版動作、原稿読取動作、製版動作に引き続いて印刷動作が行われる。
【0084】
クリア/ストップキー108は、両面印刷装置1の動作を停止させる際あるいは置数のクリア時に押下され、テンキー109は、数値入力に用いられる。エンターキー110は、各種設定時に数値等を設定する際に、プログラムキー111は、よく行う操作を登録したりそれを呼び出したりする際にそれぞれ押下され、モードクリアキー112は、各種のモードをクリアして初期状態に戻す際に押下される。
印刷速度設定キー113は、孔版印刷動作やインクジェット印刷動作あるいは重ね印刷動作に先立って印刷速度を設定する際に押下され、濃い目の画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が低い場合等には印刷速度を遅く、薄めの画像を得たい場合あるいは雰囲気温度が高い場合等には印刷速度を速く設定する。4方向キー114は、上キー114a、下キー114b、左キー114c、右キー114dを有しており、画像編集時に画像位置を調整する場合あるいは各種設定時に数値や項目等を選択する場合等に押下される。
【0085】
用紙サイズ設定キー115は、用紙サイズを任意で入力する際に押下され、用紙サイズ設定キー115で入力された用紙サイズは用紙サイズ検知センサ73によって検知された用紙サイズに優先される。
孔版両面印刷モードキー117は、両面印刷装置1に孔版両面印刷動作を実行させる孔版両面印刷モード設定手段として機能し、孔版両面印刷モードを設定する際にスタートキー104の押下前に押下され、孔版両面印刷モードキー117が押下されるとその近傍に配置されたLED117aが点灯してユーザに孔版両面印刷モードであることが表示される。孔版片面印刷モードキー118も孔版両面印刷モードキー117と同様に両面印刷装置1に孔版片面印刷動作を実行させる孔版片面印刷モード設定手段として機能し、孔版片面印刷モードを設定する際にスタートキー104の押下前に押下され、孔版片面印刷モードキー118が押下されるとその近傍に配置されたLED118aが点灯してユーザに孔版片面印刷モードであることが表示される。両面印刷装置1は、初期状態時においてLED118aが点灯しており、孔版片面印刷モードとなっている。
第1の印刷部20により孔版印刷を実行する孔版印刷モードには、孔版両面印刷モードと孔版片面印刷モードとが含まれる。
【0086】
本実施形態では、孔版印刷モードを設定する上記設定手段の他に、両面印刷装置1にインクジェット印刷部30のみによりインクジェット片面印刷動作を実行させるインクジェット片面印刷モード設定手段としてのインクジェット片面印刷モードキー135と、両面印刷装置1にインクジェット印刷部30のみによりインクジェット両面印刷動作を実行させるインクジェット両面印刷モード設定手段としてのインクジェット両面印刷モードキー136と、インクジェット印刷部30によるインクジェット両面印刷に加えて第1の印刷部20による孔版両面印刷とを重ねた重ね両面印刷動作を両面印刷装置1に実行させる重ね両面印刷モード設定手段としての重ね両面印刷モードキー137と、インクジェット印刷部30によるインクジェット片面印刷に加えて第1の印刷部20による孔版片面印刷とを重ねた重ね印刷動作を両面印刷装置1に実行させる重ね印刷モード設定手段としての重ね印刷モードキー138とが配設されている。
インクジェット片面印刷モードキー135、インクジェット両面印刷モードキー136、重ね両面印刷モードキー137および重ね印刷モードキー138は、各キーの内部にLEDを内蔵しており、各キーが1回押下されて各モードが設定された際に、それに対応したLEDが点灯してユーザに報知するようになっている。各キーを2回押下すると、各モードの設定が取り消されてLEDが消灯する。
重ね両面印刷モードには、上記の他に、インクジェット印刷部30によるインクジェット片面印刷に加えて第1の印刷部20による孔版両面印刷とを重ねた場合、およびインクジェット印刷部30によるインクジェット両面面印刷に加えて第1の印刷部20による孔版片面印刷とを重ねた場合が含まれる。これらのモード設定は、例えば対応するキーを連続的に押下することにより、設定される制御構成となっている。
【0087】
上記のとおり、本実施形態では、第1の印刷部20により孔版印刷を実行する孔版印刷モード(孔版両面印刷モードと孔版片面印刷モードとを含む)と、インクジェット印刷部30のみによるインクジェット片面印刷モードおよびインクジェット両面印刷モードと、孔版片面印刷あるいは孔版両面印刷に加えインクジェット印刷部30で重ね印刷動作を実行する重ね印刷モードおよび重ね両面印刷モードとが設定・実行可能になっている。
【0088】
孔版両面印刷モードキー117、孔版片面印刷モードキー118、インクジェット片面印刷モードキー135、インクジェット両面印刷モードキー136、重ね両面印刷モードキー137および重ね印刷モードキー138は、上記したものに限らず、例えば個別にタッチパネル方式で設けたり、単一の切換ダイヤル方式で切換設定したり、1つのキーの押下毎にLED表示を順次変えながら設定する方式のものでもよい。
【0089】
7セグメントLEDからなる表示装置119は、主に印刷枚数等の数字を表示する。LCDからなる表示装置120は階層表示構造となっており、その下方に設けられた選択設定キー120a,120b,120c,120dを押下することにより、変倍や位置調整等の様々なモードへの変更および各モードでの設定が可能に構成されている。また表示装置120には、図示したように「製版・プリントできます」のような両面印刷装置の状態が表示される他、製版あるいは排版ジャム、給紙あるいは排紙ジャム等のアラーム、印刷用紙、マスタ、インク等のサプライの供給指示等も表示される。なお、選択設定キー120a,120b,120c,120dを用いて、孔版印刷モード(孔版両面印刷モードと孔版片面印刷モードとを含む)と、インクジェット片面印刷モードおよびインクジェット両面印刷モードと、重ね印刷モード、重ね両面印刷モードあるいは編集モードとを実行可能に設定するようなことも可能である。
ここで、編集モードとは、孔版両面印刷における表面または裏面印刷画像の編集を実行する際の、表面印刷画像の位置合わせ、裏面印刷画像の位置合わせ、その他両面印刷の表裏、先端余白、上下移動設定値、左右移動設定値、変倍設定値などの編集を含む広い概念を意味する。
編集モード設定時において、表面印刷画像の位置合わせや裏面印刷画像の位置合わせをする際には、操作パネル103の表示装置120に、例えば特開2006−76270号公報の図5に示されている「画像位置調整モード」と同様な表示画面に切り替えられるようになっている。
【0090】
図5は、両面印刷装置1の制御構成を示している。同図のブロック図において、制御手段129は、内部にCPU130、ROM131、RAM132、図示しないタイマを有する周知のマイクロコンピュータを具備して構成されており、装置本体100の内部に設けられている。
CPU130は、操作パネル103および画像処理装置としての画像処理部95からの各種信号、装置本体100に設けられた各種センサからの検知信号およびROM131から呼び出された動作プログラムや関係データに基づいて、第1の印刷部20、製版部40、画像読取部50、給紙部60、排紙部70、排版部80に設けられた各駆動手段、インクジェット印刷部30に設けられたインクポンプ34a〜34d、搬送ユニット駆動モータ14d、吸引ファン15の作動等を制御し、また、再給紙部3に設けられた各種駆動モータ16c,22c、搬送ユニット駆動モータ122、吸引ファン46の作動等あるいは操作パネル103の表示装置119、120および画像処理部95を制御し、両面印刷装置1全体の動作を制御する。
【0091】
ここで、画像処理部95は、画像読取部50で読み取られた画像データを第1の印刷部20で使用するものとインクジェット印刷部30で使用するものとに振り分け処理する機能を含む装置であり、例えば特開2006−76270号公報の図6に示されている画像処理装置(37)と同様の構成を具備している。すなわち、画像読取部50で読み取られ第1の印刷部20とインクジェット印刷部30とで共通使用する共通印刷画像データは、画像処理部95内に設けられている図示しない共通画像データ処理装置で所定の画像処理が行われた後、画像処理部95内に設けられている図示しない画像形成部選択手段を経由して製版部40のサーマルヘッド駆動制御装置(図示せず)に送られ、このデータに基づいてサーマルヘッドの各発熱素子が選択的に発熱してマスタに対して穿孔製版を行うように構成されている。
【0092】
一方、パソコン101等のコンピュータから送出された可変画像データは、画像処理部95内に設けられている図示しない可変画像データ処理装置で所定の画像処理が行われた後、上記画像形成部選択手段を経由してインクジェット印刷部30のインクジェットプリンタヘッド駆動制御装置(図示せず)に送られ、このデータに基づいてインクジェットプリンタヘッド30a〜30dが選択的にインクを噴射して画像形成を行うように構成されている。または、画像処理部95内に設けられ、予め必要な画像データが記録されている図示しない可変データ記録メモリから送られた可変画像データが上記画像形成部選択手段を経由して上記インクジェットプリンタヘッド駆動制御装置に送られ、このデータに基づいてインクジェットプリンタヘッド30a〜30dが選択的にインクを噴射して画像形成を行うように構成されている。画像読取部50は、画像処理部95とも接続されている。また、パソコン101は、画像処理部95と接続されている。
【0093】
ROM131には、両面印刷装置1全体の動作プログラムや関係データが記憶されており、この動作プログラムや関係データはCPU130によって適宜呼び出される。RAM132は、CPU130の計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル103上の各種キーおよび各種センサから設定および入力されたデータ信号およびオン・オフ信号を随時記憶する機能等を有している。また制御手段129は、ホームポジションセンサ134からのホームポジション信号と、ドラム駆動手段20に設けられた図示しないエンコーダからの信号とに基づいて、印刷ドラム2の回転位置の把握も行っている。
【0094】
次に、両面印刷装置1の要部の動作を説明する。まず、インクジェット片面印刷動作を説明する。ユーザは給紙トレイ61に使用する用紙サイズの用紙を補充したり、印刷すべき原稿をコンタクトガラス52にあるいは図示しないADFの原稿台にセットしたりした後、操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を設定し、その後、インクジェット片面印刷モードキー135を押下してインクジェット片面印刷モードを設定する。次いで、ユーザはインクジェット片面印刷モードであることをインクジェット片面印刷モードキー135に内蔵されているLEDの点灯によって確認した後、スタートキー104を押下する。スタートキー104が押下されると、画像読取部50の画像センサ54によって原稿の画像データが読み取られ、この読み取られた画像データが画像処理部95に送信されて上述の画像処理が施される。
【0095】
一方、適宜の1枚の試し刷り(この動作は省略)後、印刷速度設定キー113および操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を入力した後にテンキー109によって印刷枚数が入力された後に印刷スタートキー105が押下されると、印刷速度設定キー113により設定された印刷速度で以下のインクジェッ片面印刷動作が行われる。
印刷スタートキー105が押下されると、図1において、孔版片面印刷動作と同様にして、分離された1枚の用紙Pがレジストローラ対12へ向けて送られる。用紙Pは、レジストローラ対12で一旦停止された後、インクジェット印刷部30でのインクジェット印刷画像形成のタイミングに合わせてインクジェット印刷部30に送られる。レジストローラ対12によって送られた用紙Pは、吸引ファン15による吸引力によって無端ベルト14cに吸着保持されながら搬送され、その先端がインクジェット印刷部30の入口近傍に設けられた図示しない用紙検出センサによって検出されると、画像処理部95で処理されたデータがインクジェット印刷部30のインクジェットプリンタヘッド駆動制御装置(図示せず)に送出される。送出されたデータに基づいてインクジェットプリンタヘッド30a〜30dが作動し、用紙Pの表面にはインクジェット印刷画像が形成される。インクジェット搬送ユニット14Aは、インクジェット印刷画像が形成された用紙Pa(表面印刷済み用紙PA)を吸着搬送し、印刷ドラム2とプレスローラ13との間に表面印刷済み用紙PAを搬送する。
【0096】
インクジェッ片面印刷動作および後述のインクジェット両面印刷動作では、当然のことながら第1の印刷部20での孔版印刷が行われないため、第1の印刷部20が非作動状態にある。すなわち、印刷ドラム2はホームポジションを占めて回転停止状態にあると共に印圧範囲可変手段(プレスローラ接離機構)28の図示しないソレノイドのオフによってプレスローラ13は図1に示す離間位置に保持されたままである。
インクジェット搬送ユニット14Aにより搬送される用紙Paは、用紙搬送経路上にある切換部材17によってその搬送方向を切り換えられる。インクジェット印刷装置30による片面印刷時には、切換部材17が実線で示す第1の位置を占めており、用紙Paは切換部材17によって排紙部70における排紙搬送ユニット27Aに案内され、図示しない剥離爪によって用紙Paの先端部が印刷ドラム2の外周面から剥離され、図中矢印Xe方向(用紙排出方向)に走行する無端ベルト27によって吸着搬送されて、排紙トレイ62に順次排出積載される。
【0097】
次に、インクジェット両面印刷動作を説明する。インクジェット片面印刷動作とほぼ同様にして、ユーザは給紙トレイ61に使用する用紙サイズの用紙を補充したり、印刷すべき複数の原稿をコンタクトガラス52にあるいは図示しないADFの原稿台にセットしたりした後、操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を設定し、その後、インクジェット両面印刷モードキー136を押下してインクジェット両面印刷モードを設定する。次いで、ユーザはインクジェット両面印刷モードであることをインクジェット両面印刷モードキー136に内蔵されているLEDの点灯によって確認した後、スタートキー104を押下する。スタートキー104が押下されると、画像読取部50の画像センサ54によって原稿の画像データ(表面印刷画像用の画像データと裏面印刷画像用の画像データ)が連続的に読み取られ、この読み取られた画像データが画像処理部95に送信されて上述の画像処理が施される。なお、裏面印刷画像用の画像データは、画像処理部95に設けられている画像データ記憶手段としての画像メモリ90に一時格納される。
【0098】
一方、適宜の1枚の試し刷り(この動作は省略)後、印刷速度設定キー113および操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を入力した後にテンキー109によって印刷枚数が入力され、その後で、印刷スタートキー105が押下されると、印刷速度設定キー113により設定された印刷速度で以下のインクジェット両面印刷動作が行われる。
印刷スタートキー105が押下されると、図1において、インクジェッ片面印刷動作と同様にして上記給紙手段により1枚に分離された1枚目の用紙Pは、レジストローラ対12で一旦停止された後、インクジェット表面印刷画像形成のタイミングに合わせてインクジェット印刷部30に送られる。レジストローラ対12によって送られた用紙Pは、吸引ファン15による吸引力によって無端ベルト14cに吸着保持されながら搬送され、その先端が上記用紙検出センサによって検出されると、画像処理部95で処理された表面印刷画像形成用のデータがインクジェット印刷部30のインクジェットプリンタヘッド駆動制御装置(図示せず)に送出される。送出されたデータに基づいてインクジェットプリンタヘッド30a〜30dが作動し、表面印刷画像が用紙Pに形成される。インクジェット搬送ユニット14Aは、インクジェット印刷部30により表面印刷画像が形成された用紙Pa(表面印刷済み用紙PA)を吸着搬送し、非作動状態にある印刷ドラム2とプレスローラ13との間に搬送する。
【0099】
インクジェット搬送ユニット14Aにより搬送される用紙PAは、切換部材17によってその搬送方向を切り換えられる。インクジェット印刷部30による両面印刷時には、切換部材17が二点鎖線で示す第2の位置を占めており、表面印刷済み用紙PAは上向きに切り換わっている切換部材17により、また切換部材17の装置本体100に固着された図示しないガイド部材とガイド部材29との間に案内され、上記ガイド部材とガイド部材29との間を通って図中Xb方向に再給紙トレイ24に向けて案内され、さらに再給紙搬送ユニット42によって吸着搬送されて、再給紙レジストローラ対22で一時保持・停止される。
【0100】
この間に、上記給紙手段により1枚に分離された2枚目の用紙Pは、上述したと同様の動作を経て、レジストローラ対12で一旦停止された後、インクジェット表面印刷画像形成のタイミングに合わせてインクジェット印刷部30に送られる。画像処理部95で処理された表面印刷画像形成用のデータがインクジェット印刷部30のインクジェットプリンタヘッド駆動制御装置(図示せず)に送出されることによって、インクジェットプリンタヘッド30a〜30dが作動し、表面印刷画像が2枚目の用紙Pに形成される。インクジェット搬送ユニット14Aは、表面印刷画像が形成された2枚目の用紙Pa(表面印刷済み用紙PAを表す)を印刷ドラム2とプレスローラ13との間に吸着搬送し、切換部材17によってその搬送方向を切り換えられる。2枚目の表面印刷済み用紙PAは上向きに切り換わっている切換部材17により、また上記ガイド部材とガイド部材29との間に案内され、上記ガイド部材とガイド部材29との間を通って図中Xb方向に再給紙トレイ24に案内され、さらに再給紙搬送ユニット42によって吸着搬送されて、再給紙レジストローラ対22で一時保持・停止されることとなる。
【0101】
説明が前後するが、再給紙レジストローラ対22で一時停止していた1枚目の表面印刷済み用紙PBは、再給紙レジストローラ対22が回転開始されることにより、レジストローラ対12に向けて所定のタイミングで送り出され、第1ガイド部材18に案内されつつ回転している再給紙搬送ローラ対16で再給紙・反転搬送され、さらに第2ガイド部材19に案内されながら図中Xd方向にレジストローラ対12に向けて搬送され、レジストローラ対12のニップ部で一旦停止される。
反転された1枚目の表面印刷済み用紙PBは、レジストローラ対12で一旦停止された後、インクジェット裏面印刷画像形成のタイミングに合わせてインクジェット印刷部30に送られる。レジストローラ対12によって送られた1枚目の表面印刷済み用紙PBは、吸引ファン15による吸引力によって無端ベルト14cに吸着保持されながら搬送され、その先端が上記用紙検出センサによって検出されると、画像処理部95で処理された裏面印刷画像形成用のデータがインクジェット印刷部30のインクジェットプリンタヘッド駆動制御装置(図示せず)に送出されることにより、インクジェットプリンタヘッド30a〜30dが作動し、反転された1枚目の表面印刷済み用紙PBの上面(裏面)に裏面印刷画像が形成される。インクジェット搬送ユニット14Aは、インクジェット印刷部30により裏面印刷画像が形成された1枚目のインクジェット両面印刷済み用紙PCを吸着搬送し、非作動状態にある印刷ドラム2とプレスローラ13との間に搬送する。1枚目のインクジェット両面印刷済み用紙PCは、下方(第1の位置)に切り換えられている切換部材17によって排紙部70における排紙搬送ユニット27Aに案内され、図示しない剥離爪によって用紙PCの先端部が印刷ドラム2の外周面から剥離され、図中矢印Xe方向に走行する無端ベルト27によって吸着搬送されて、排紙トレイ62に順次排出積載される。
【0102】
次に、重ね印刷動作(もしくは重ね片面印刷動作)を説明する。ユーザは給紙トレイ61に使用する用紙サイズの用紙を補充したり、印刷すべき複数の原稿をコンタクトガラス52にあるいは図示しないADFの原稿台にセットしたりした後、操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を設定し、その後、重ね印刷モードキー138を押下して重ね印刷モードを設定する。次いで、ユーザは重ね印刷モードであることを重ね印刷モードキー138に内蔵されているLEDの点灯によって確認した後、スタートキー104を押下すると、重ね印刷動作が開始する。重ね印刷動作は、上述したと同様に実行されるインクジェット片面印刷動作の後に、続けて上述したと同様の孔版片面印刷動作とが連続的に行われることにより、インクジェット印刷部30によるインクジェット片面印刷画像に重ねて第1の印刷部20による孔版片面印刷画像が印刷される動作であり、上述したインクジェット片面印刷動作と孔版片面印刷動作との説明から、当業者であれば容易に理解して実施できるからこれ以上の説明を省略する。
【0103】
次に、重ね両面印刷動作を説明する。ユーザは給紙トレイ61に使用する用紙サイズの用紙を補充したり、印刷すべき複数の原稿をコンタクトガラス52にあるいは図示しないADFの原稿台にセットしたりした後、操作パネル103上の各種キーによって印刷条件を設定し、その後、重ね両面印刷モードキー137を押下して重ね両面印刷モードを設定する。次いで、ユーザは重ね両面印刷モードであることを重ね両面印刷モードキー137に内蔵されているLEDの点灯によって確認した後、スタートキー104を押下すると、重ね両面印刷動作が開始する。重ね両面印刷動作は、上述したと同様に実行されるインクジェット両面印刷動作の後に、続いて孔版両面印刷動作が連続的に行われることにより、インクジェット印刷部30によるインクジェット両面印刷画像に重ねて第1の印刷部20による孔版両面印刷画像が印刷される動作であり、上述したインクジェット両面印刷動作と孔版両面印刷動作との説明から、当業者であれば容易に理解して実施できるからこれ以上の説明を省略する。
【0104】
上述したように、インクジェット印刷部30を上述したように配置することによって、インクジェット印刷部30による片面印刷、両面印刷の何れの場合でも、第1の印刷部20における印刷ドラム2による孔版片面印刷、孔版両面印刷前に、インクジェット印刷部30によって用紙P、表面印刷済み用紙PBに対してインクジェット印刷部30による印刷をすることができる。インクジェット印刷部30は単色でも良いが、上述のようにカラーのインクジェット印刷部30を配置することによって、第1の印刷部20における印刷ドラム2による孔版片面印刷、孔版両面印刷に加え、第2の印刷部5においてカラーのインクジェット印刷部30による重ね印刷を行うことができる。
【0105】
以下、制御手段129による制御の下で、第1の実施形態および上述した動作例以外に、本実施形態の両面印刷装置1で実行可能な動作例について適宜必要な構成を補足しながら説明する。
(第1の動作例)
第1の印刷部20による孔版両面印刷モードとインクジェット印刷部30による重ね印刷モードとで、すなわち重ね両面印刷モード設定時に、画像色データの印刷ドラム2(ドラムユニット2A)のインク色以外をインクジェット印刷する時に、印刷ドラム2に巻装されるべき両面印刷用の第1の製版画像(A面画像)と第2の製版画像(B面画像)とに対応した各画像データの製版画像面積を、制御手段129内の図示しない検出手段(CPU130)によって製版画像面積を計算・検出して、その検出値と印刷枚数とを乗じた値と予めROM131に設定されている設定値とを比較して、設定値以下の場合には、インクジェット両面印刷モードに自動的に変えて印刷するものである。
設定値は、A面画像とB面画像に対応した各画像データの製版画像面積(例えばマスタの製版サイズに対応した所定サイズの画像データにおいて、白画素データ信号および黒画素データ信号のうちの黒画素データ信号の数)と印刷枚数とを乗じた値、すなわちトータルの印刷画像面積に相当する値を用いて、印刷ドラム2で使用するインク消費量を予測して、インクジェット印刷で両面印刷した場合と比較して孔版印刷用インクで印刷した方が安価になる場合にのみ製版部40での製版および第1の印刷部20での孔版印刷を行う。上記設定値は、ROM131に予め実験等によって設定されている関係データやデータテーブル(黒画素データ信号の検出・計数と用紙サイズ毎の印刷枚数とに応じて設定されたインク消費量に相当する設定値を含む)である。
設定値としては、孔版両面印刷をするためにはマスタの使用コストも含めて安価になるような条件を考慮して設定値を設定してもよく、設定値を変えることが可能(可変)である。このように、設定値を、孔版用インクやマスタのコスト設定や、孔版印刷使用時の製版時間の有無などの条件を考慮して、ユーザが自由に設定できるようにする。印刷時間を短くしたい設定や、孔版用インクやマスタ等のサプライ使用量を減らしたいモードなどをユーザが設定できるようにしてもよい。
【0106】
上述したとおり、第1の動作例において、制御手段129(CPU130)は、重ね両面印刷モード設定時において、画像メモリ90に格納されている両面印刷用の第1の製版画像と第2の製版画像とに対応した各画像データの製版画像面積を検出・計測して、該製版画像面積の検出値とテンキー109で設定された印刷枚数とを乗じた値がROM131に予め設定・記憶された設定値以下である場合には、インクジェット印刷装置30のみで両面印刷を行うように、給紙部60の給紙駆動手段124、インクジェット印刷部30の各駆動手段(インクポンプ34a〜34d、搬送ユニット駆動モータ、吸引ファン15)、切換部材10のソレノイド123および再給紙部3の各駆動手段(各種駆動モータ16c、22c、搬送ユニット駆動モータ122、吸引ファン)、および排紙部70の排紙駆動手段127を制御する機能を有する。
【0107】
(第2の動作例)
両面印刷装置1において、孔版両面印刷モード設定時において、編集モードを用いて印刷条件設定を行い、表面印刷画像の位置合わせ、裏面印刷画像の位置合わせ、その他両面印刷の表裏、先端余白、上下移動設定値、左右移動設定値、変倍設定値などを設定したときに、実際に印刷を実行して画像位置を確認しないと両面印刷の印刷条件設定が正しかったのか判断がつかない。これまでは両面印刷の印刷条件設定後、製版し試し刷り印刷を行って正しかったのか判断していた。そのために正しい場合には続けて印刷を行えば良かったが、間違った設定をした場合は、印刷条件を再設定後、再製版する必要があった。ユーザが思ったように設定するために、この作業を繰り返す場合があった。そのたびに製版を行うため、版としてのマスタが無駄になっていた。そこで、本動作例では、版を無駄にすることなく印刷条件設定が正しかったのかを判断するために、孔版印刷画像の形成に代えて、インクジェット印刷部30のみでインクジェット印刷を行い、得られたインクジェット印刷物で確認を行うというものである。
【0108】
上述したとおり、第2の動作例において、制御手段129(CPU130)は、孔版両面印刷モード設定時において、孔版両面印刷における表面または裏面印刷画像の編集を実行する編集モード設定信号に基づいて、該編集モードの印刷画像確認用として、インクジェット印刷装置30のみで両面印刷するように、給紙部60の給紙駆動手段124、インクジェット印刷部30の各駆動手段(インクポンプ34a〜34d、搬送ユニット駆動モータ、吸引ファン15)、切換部材10のソレノイド123および再給紙部3の各駆動手段(各種駆動モータ16c、22c、搬送ユニット駆動モータ122、吸引ファン)、および排紙部70の排紙駆動手段127を制御する機能を有する。
【0109】
(第3の動作例)
第2の動作例に加えて、本動作例では、版を無駄にすることなく印刷条件設定の確認修正ができるように、インクジェット両面印刷画像の上にインクジェット印刷によって、両面印刷の編集設定値を印刷するものである。両面印刷の編集モードを用いて印刷条件設定を行い表面印刷画像の位置合わせ、裏面印刷画像の位置合わせなどを設定したときに、製版時にはその設定に基づいて製版を行っている。実際に印刷を実行して画像位置を確認した時に、設定値のどの値を修正すればよいか判断に困るときがある。そこで、製版に使用する編集設定値を、インクジェット印刷装置30のみでの印刷画像に重ねて両面印刷の編集設定値を印刷するものである。
上述したとおり、第3の動作例において、制御手段129(CPU130)は、編集モード設定信号に基づいて、該編集モードで設定された編集設定値を、インクジェット印刷装置のみでの印刷画像に追加印刷するように、主としてインクジェット印刷部30の各駆動手段(インクポンプ34a〜34d、搬送ユニット駆動モータ、吸引ファン15)を制御する機能を有する。
【0110】
(第4の動作例)
第2の実施形態で詳述したとおり、操作パネル103に配設された6つのモードキーのうちの何れか一つを選択設定して、6種類の印刷モードのうちの何れか一つのモードが実行可能である。
例えば、両面原稿についてすべて孔版印刷で単色印刷したい場合には、孔版両面印刷モードキー117の押下により孔版両面印刷モードを選択設定したとき、インクが孔版用インクなので多数印刷時にはインクジェット印刷よりも安価に印刷することができる。例えば、両面カラー原稿についてすべてインクジェットのカラー印刷したい場合には、インクジェット両面印刷モードキー136の押下によりインクジェット両面印刷モードを選択設定したとき、両面カラー原稿を原稿通りにカラーで印刷することができる。
また、両面原稿の裏面データを第1の印刷部20における印刷ドラム2で孔版印刷し、表面データを第2の印刷部5におけるインクジェット印刷部30でカラー印刷したい場合には、孔版印刷とインクジェットの印刷モードを選択し、裏面データは印刷ドラム2で安価に印刷し、表面データはインクジェット印刷部30の印刷によって再給紙時に発生する虞がある汚れを少なくすることもできる。
【0111】
(第5の動作例)
第3および第4の動作例において、印刷ドラム2に巻装する製版済みマスタ用の画像データと、それ以外の画像データをインクジェット印刷部30で印刷するために画像データを分割し、製版および印刷を行った後で、印刷途中または追加印刷時に、両面印刷条件設定をインクジェット両面モードキー136の押下によりインクジェット両面印刷モードに設定することによってインクジェット両面印刷モードにする。このときにはプレスローラ13を動作させないでインクジェット印刷のみで印刷する。
当然であるが、印刷途中または追加印刷時に、両面印刷条件設定を孔版印刷とインクジェットの印刷モードに設定すれば孔版印刷とインクジェットの印刷モードなる。
上述したとおり、第5の動作例において、制御手段129(CPU130)は、印刷ドラム2に両面印刷用の製版済みマスタ65を巻装した後で、印刷モードの切換によって、インクジェット両面モードキー136からのインクジェット印刷モードに係る信号に基づいて、インクジェット印刷装置30のみで両面印刷するように、給紙部60の給紙駆動手段124、インクジェット印刷部30の各駆動手段(インクポンプ34a〜34d、搬送ユニット駆動モータ、吸引ファン15)、切換部材10のソレノイド123および再給紙部3の各駆動手段(各種駆動モータ16c、22c、搬送ユニット駆動モータ122、吸引ファン)、および排紙部70の排紙駆動手段127を制御する機能を有する。
【0112】
(第6の動作例)
孔版両面印刷において、印刷モードの孔版印刷とインクジェットの重ね印刷モードで、印刷ドラム2はドラムユニット2Aを構成していて、装置本体100に対して着脱可能であり、オプションドラムを使用することによって黒以外のインクを使用して印刷することができるようになっている。そのため印刷ドラム2には、ドラムユニット2Aの色識別信号により印刷ドラム2のインク色を判別することができるようになっている。ここで、ドラムユニット2Aの色識別手段(検知手段)の具体例を説明しておく。
【0113】
印刷ドラム2は、一部上述したように、図示しないインク容器やインク供給ポンプと一体的にユニット化されたドラムユニット2Aを構成していて、装置本体100に対して着脱手段を介して簡単な操作で着脱できるようになっている。そして、例えばオプションの赤色インクを搭載した印刷ドラム2と、標準の黒色インクを搭載した印刷ドラム2とは別々に設定されていて、それぞれが前記着脱手段を介して装置本体100に対して着脱自在に構成されている。この赤色インクの印刷ドラム2と黒色インクの印刷ドラム2とを装置本体100に対して選択的に着脱可能とさせる着脱手段ないしは着脱機構(図示せず)の具体例としては、例えば実開昭61−85462号公報の第1図ないし第4図に示されている版胴支持装置と同様のものが挙げられ、それを採用している。その他、例えば特開平5−229243号公報の図2および図3等に示され段落「0021」等に記載されている保持手段(36)、把持フレーム(50)、前フレーム(51)および後フレーム(52)等から構成されているものと同様のものでも構わない。
【0114】
前記着脱手段近傍の装置本体100には、赤色インクのドラムユニット2Aおよび黒色インクのドラムニット2Aの何れであるかを検知するドラムインク色識別手段としてのドラムインク色検知センサ(図示せず)が配設されている。ドラムインク色検知センサの具体例としては、例えばドラムユニット2A側に配設された電気コネクタ(例えば雄)と、装置本体100側に配設された電気コネクタ(例えば雌)との結合の組み合わせにより、その違いを電気的に検出し判断するものが挙げられる。これは、特開2006−281658号公報の図5に示されているドラムユニットインク種類識別センサ(51)と同様のものである。
また、ドラムインク色識別手段は、上記したドラムインク色検知センサに限らず、例えば特開2004−155170号公報の図16に示されているホール素子センサ(136,137,138)と各インク色のドラムユニット2Aに配置されたマグネット(130,131、132)との組合せで検出するものでもよい。
【0115】
標準の孔版両面印刷装置の印刷ドラム2のインク色は黒色なので、画像色データの黒色データに基づいてマスタに製版し、その製版済みマスタを巻装した印刷ドラム2で印刷し、それ以外の画像色データをインクジェット印刷部30で印刷することによって、高価なインクジェットインクを使用しないで安価な孔版印刷と組み合わせることによって、安価なカラー印刷物が得られる両面印刷が行える。
【0116】
上述したとおり、第6の動作例において、制御手段129(CPU130)は、画像処理部95で処理される画像色データに応じて、ドラムユニット2Aのインク色以外をインクジェット印刷部30のインク色を用いて重ね印刷するとき、ドラムユニット2Aのインク色を、上記ドラムユニットインク色識別手段により識別されたインク色によって判断する機能を有する。
【0117】
(第7の動作例)
第6の動作例において説明したように、標準の孔版両面印刷装置の印刷ドラム2のインク色は黒色であるが、ドラムユニット交換してオプションのドラムユニットを装着して印刷を開始してしまうと、印刷の色が異なった印刷をしてしまうために無駄な印刷をしてしまう虞がある。また、印刷ドラム2を再度セットし直して再印刷しなければならないため、用紙とインクと時間の無駄が発生する。そこで、本動作例では印刷開始前にドラムユニット2Aのインク色を確認して、製版時のドラムユニット2Aのインク色と印刷開始前のドラムユニット2Aのインク色とを比較して、同じ場合に印刷開始できるが、異なったインク色の場合には第1の印刷部による印刷動作を禁止すると共に操作パネル103の表示装置120に警告報知・表示を行うようにしたものである。
【0118】
上述したとおり、第7の動作例において、制御手段129(CPU130)は、第6の動作例における機能に加えて、ドラムユニット2Aのインク色を、上記ドラムユニットインク色識別手段により識別されたインク色によって判断することを、印刷開始前に実行し、その判断の結果、製版時のドラムユニット2Aのインク色と印刷開始前のドラムユニット2Aのインク色とを比較して、同じ場合に印刷を許可し、異なったインク色の場合にはその旨の警告報知・表示を行うように操作パネル103の表示装置120を制御すると共に第1の印刷部による印刷動作を禁止する機能を有する。
【0119】
(第8の動作例)
片面、両面印刷時に画像位置補正を行う時に印刷ドラム2側を移動させた移動量と同じ移動量を、図示しないインクジェット移動機構によってインクジェット印刷部30を移動させる。これによって印刷ドラム2と同じようにインクジェット印刷部30が移動するためインクジェット印刷画像がずれることはなくなるが、上記インクジェット移動機構によってインクジェット印刷部30を移動させて画像位置合わせをするのは機構的に精度を出すのが難しい。上記インクジェット移動機構の一例としては、例えば案内レール、インクジェットプリンタヘッド保持部、ヘッド移動モータ、リードネジ、ヘッド用ホームポジションセンサ等からなる周知の機構が挙げられる。
そこで、本動作例では、インクジェット印刷部30に使用するライン型インクジェットプリンタヘッド30a〜30dの印刷幅を最大印刷用紙幅よりさらに画像移動範囲も大きく取って印刷できるように印刷幅の広いライン型インクジェットプリンタヘッドを使用し、通常の印刷位置は画像移動のない位置に印刷し、印刷ドラム2側の画像位置を移動した場合には、その移動量に合わせて印刷開始位置を移動し印刷位置を移動させる。これによって印刷ドラム2が移動しても、その移動量に合わせてライン型インクジェットプリンタヘッドの書き込み開始位置を移動させることによって、インクジェット印刷画像がずれることはなくなる。
【0120】
上述したとおり、第8の動作例において、制御手段129(CPU130)は、孔版印刷による印刷画像の位置を用紙の上流または下流に移動調整した場合に、インクジェットプリンタヘッド30a〜30dによる書き込み開始位置も孔版印刷による印刷画像の位置に合わせて、書き込み開始位置を自動的に変えるようにインクジェット印刷部30の各インクポンプ34a〜34dの作動時機を制御する機能を有する。
【0121】
(第3の実施形態)
本発明は、図1に示した両面印刷装置1に限らず、例えば図1から再給紙部3および再給紙部3とレジストローラ対12とを挿通した用紙搬送路を除去すると共に、図5から再給紙部3および印圧範囲可変手段28を除去した構成からなる孔版片面印刷装置、すなわち片面印刷用の製版済みマスタ66を巻装する印刷ドラム2、該印刷ドラム2上の製版済みマスタ66にインクを供給するインク供給手段61および印刷ドラム2に対して相対的に接離自在な押圧手段としてのプレスローラ13を有する第1の印刷部20と、第1の印刷部20に用紙(シート)Pを給送する給紙部(シート給送部)60と、第1の印刷部20と給紙部60との間に配置されたインクジェット印刷装置30とを具備した孔版印刷装置(複合型(ハイブリッド)孔版印刷装置)に対して、第1の動作例と同様な下記の制御構成および動作例を適用することも可能である。
また、図1に示した両面印刷装置1における孔版片面印刷動作に加えて、インクジェット印刷装置30による片面印刷動作の重ね印刷時にも、第1の動作例と同様な下記の制御構成および動作例を適用することも可能である。
すなわち、片面印刷用の製版済みマスタ66の製版画像に対応した画像データの製版画像面積を検出して、該製版画像面積の検出値と印刷枚数とを乗じた値が予め設定された設定値以下である場合には、インクジェット印刷装置30のみで印刷を行うことを特徴とするものである。
【0122】
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態および動作例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態および動作例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1および第2の実施形態を示す両面印刷装置全体の概略的な正面図である。
【図2】図1の両面印刷装置におけるインクジェット印刷部および第1の印刷部周りを拡大して示す概略的な正面図である。
【図3】図1のインクジェット印刷部のインクの流れを示す模式図である。
【図4】図1の両面印刷装置の操作パネルの平面図である。
【図5】第1および第2の実施形態に係る両面印刷装置全体の制御構成を示すブロック図である。
【図6】従来の孔版両面印刷装置全体を示す概略的な正面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 両面印刷装置
2 印刷ドラム
2A ドラムユニット
3 再給紙部(再給送部)
5 第2の印刷部
6 クランパ
13 プレスローラ(押圧手段・押圧部材)
14A インクジェット搬送ユニット
16 再給紙搬送ローラ対(シート搬送手段)
17 切換部材(切換手段)
18 第1ガイド部材(シート案内手段)
19 第2ガイド部材(シート案内手段)
20 第1の印刷部
22 再給紙レジストローラ対(シート搬送手段・再給送搬送手段)
24 再給紙トレイ(再給送部)
27A 排紙搬送ユニット
30 インクジェット印刷部・インクジェット印刷装置
30a〜30d 各色のインクジェットプリンタヘッド
31a〜31d 各色のインクボトル
34a〜34d 各色のインクポンプ
40 製版部
50 画像読取部
60 給紙部(シート給送部)
61 給紙トレイ(シート給送台・給紙台)
62 排紙トレイ(シート排出台・排紙台)
65 両面印刷用の製版済みマスタ
66 片面印刷用の製版済みマスタ
70 排紙部(シート排出部)
80 排版部
90 画像メモリ(画像データ記憶手段)
95 画像処理部(画像処理装置)
100 装置本体
103 操作パネル(操作部)
120 表示装置(報知手段、表示手段)
129 制御手段
130 CPU
P 用紙(シート・シート状記録媒体、被印刷媒体の一例)
PA,PB 表面印刷済み用紙
PC 両面印刷された用紙
Xa 用紙搬送方向(シート搬送方向)
Xb 再給紙方向(再給送方向)
Xc 再給紙方向(再給送方向)
Xd 再給紙方向(再給送方向)
Xe 用紙排出方向(シート排出方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その回転方向に沿って第1の製版画像と第2の製版画像とが並んで形成された両面印刷用の製版済みマスタを巻装する印刷ドラム、該印刷ドラム上の製版済みマスタにインクを供給するインク供給手段および前記印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段を有する第1の印刷部と、第1の印刷部にシートを給送するシート給送部と、第1の印刷部で印刷された印刷済みシートを排出するシート排出部と、第1の印刷部で第1の製版画像または第2の製版画像に対応してその表面に印刷画像を形成された表面印刷済みシートを一時的に保持した後、第1の印刷部に向けて反転させ再給送する再給送部と、第1の印刷部を通過したシートを前記再給送部または前記シート排出部に案内する切換手段とを具備する両面印刷装置において、
第1の印刷部と前記シート給送部との間に、第1の印刷部と異なる印刷方式で印刷を行う第2の印刷部を配置したことを特徴とする両面印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の両面印刷装置において、
第2の印刷部が、インクジェット印刷装置であることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の両面印刷装置において、
両面印刷用の第1の製版画像と第2の製版画像とに対応した各画像データの製版画像面積を検出して、該製版画像面積の検出値と印刷枚数とを乗じた値が予め設定された設定値以下である場合には、前記インクジェット印刷装置のみで両面印刷を行うことを特徴とする両面印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の両面印刷装置において、
前記設定値は、可変であることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項5】
請求項2ないし4の何れか一つに記載の両面印刷装置において、
前記印刷ドラムは、インクの色毎に装置本体に対して着脱自在なドラムユニットを構成しており、
前記ドラムユニットのインク色を識別するドラムユニットインク色識別手段を有し、
第1の印刷部により孔版印刷を実行する孔版印刷モードと、前記孔版印刷に加え前記インクジェット印刷装置で重ね印刷を実行する重ね印刷モードとの双方が実行可能であり、
画像色データに応じて前記ドラムユニットのインク色以外を前記インクジェット印刷装置のインク色を用いて重ね印刷するとき、前記ドラムユニットのインク色を、前記ドラムユニットインク色識別手段により識別されたインク色によって判断することを特徴とする両面印刷装置。
【請求項6】
請求項5記載の両面印刷装置において、
前記判断は、印刷開始前に実行されることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項7】
請求項2ないし6の何れか一つに記載の両面印刷装置において、
前記インクジェット印刷装置に所定のタイミングでシートまたは表面印刷済みシートを給送する該インクジェット印刷装置の上流側に配置されたレジスト手段を有し、
前記再給送部のシート搬送路が、表面印刷済みシートを搬送すべく前記レジスト手段に向けて延びて形成されており、
前記インクジェット印刷装置のみで両面印刷が可能であることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項8】
請求項7記載の両面印刷装置において、
前記孔版両面印刷における表面または裏面印刷画像の編集を実行する編集モードを設定したとき、該編集モードの印刷画像確認用として、前記インクジェット印刷装置のみで印刷することを特徴とする両面印刷装置。
【請求項9】
請求項8記載の両面印刷装置において、
前記編集モードを設定したとき、該編集モードで設定された編集設定値を、前記インクジェット印刷装置のみでの印刷画像に追加印刷することを特徴とする両面印刷装置。
【請求項10】
請求項7記載の両面印刷装置において、
印刷モードとして、孔版両面印刷モード、インクジェット両面印刷モード、孔版印刷とインクジェット印刷との重ね両面印刷モードを設定することが可能であることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項11】
請求項3ないし10の何れか一つに記載の両面印刷装置において、
孔版印刷による印刷画像の位置をシートの上流または下流に移動調整した場合に、前記インクジェットによる書き込み開始位置も前記孔版印刷による印刷画像の位置に合わせて、前記書き込み開始位置を自動的に変えることが可能であることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項12】
請求項7ないし11の何れか一つに記載の両面印刷装置において、
前記印刷ドラムに前記両面印刷用の製版済みマスタを巻装した後で、印刷モードの切換によって、インクジェット印刷モードを選択すると、前記インクジェット印刷装置のみで両面印刷することが可能であることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項13】
請求項2ないし11の何れか一つに記載の両面印刷装置において、
前記レジスト手段の表面が、微細な凹凸状の表面処理を施されていることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項14】
請求項13記載の両面印刷装置において、
前記再給送部に配設されているシート搬送手段およびシート案内手段の表面が、微細な凹凸状の表面処理を施されていることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項15】
片面印刷用の製版済みマスタを巻装する印刷ドラム、該印刷ドラム上の製版済みマスタにインクを供給するインク供給手段および前記印刷ドラムに対して相対的に接離自在な押圧手段を有する第1の印刷部と、第1の印刷部にシートを給送するシート給送部と、第1の印刷部と前記シート給送部との間に配置されたインクジェット印刷装置とを具備した孔版印刷装置であって、
前記製版済みマスタの製版画像に対応した画像データの製版画像面積を検出して、該製版画像面積の検出値と印刷枚数とを乗じた値が予め設定された設定値以下である場合には、前記インクジェット印刷装置のみで印刷を行うことを特徴とする孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−143138(P2009−143138A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323667(P2007−323667)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】