両頭平面研削盤及びワークの両面研削方法
【課題】研削熱の影響による静圧パッドの局部的な熱膨張を少なくしてワークとの隙間をその頬全面で均一化でき、ワークに対する静圧支持力がワークの略全面で安定して研削精度の高精度化と安定化を実現することができるようにする。
【解決手段】薄板状のワークを両面から流体の静圧により非接触支持する一対の静圧パッドと、この静圧パッドにより非接触支持されたワークを回転させるキャリアと、各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つワークを研削する研削砥石とを備え、各静圧パッド、キャリアの外周部に配置されたキャリアリングを熱膨張係数の低い材料によりを構成する。熱膨張係数の低い材料はセラミック材が適当である。
【解決手段】薄板状のワークを両面から流体の静圧により非接触支持する一対の静圧パッドと、この静圧パッドにより非接触支持されたワークを回転させるキャリアと、各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つワークを研削する研削砥石とを備え、各静圧パッド、キャリアの外周部に配置されたキャリアリングを熱膨張係数の低い材料によりを構成する。熱膨張係数の低い材料はセラミック材が適当である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハ等の薄板状のワークの両面を研削するための両頭平面研削盤及びワークの両面研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ等の薄板状のワークの両面を研削する両頭平面研削盤としては、従来、特許文献1、2に記載されたものがある。この両頭平面研削盤は、ポケット部から供給された流体の静圧によりワークを両側から非接触支持する一対の静圧パッドと、この静圧パッドにより非接触支持されたワークを回転させるキャリアと、各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つワークを研削する研削砥石とを備えている。
【0003】
静圧パッドには切り欠き部の内周縁に沿って円弧状の内周ポケット部が形成されると共に、この内周ポケット部に対して切り欠き部と反対側に周方向に多数の外周ポケット部が形成され、この各ポケット部相互間に各ポケット部を区画するランド部が形成されている。そして、各ポケット部内には、流体を供給するための供給孔が形成されている。
【0004】
そして、ワークの研削に際しては、静圧パッドの各供給孔から供給される流体の静圧によりワークを両面側から非接触支持した状態で、キャリアによりワークをその中心廻りに回転させながら、研削砥石の中心側から研削砥石面に研削水を供給しつつ研削砥石によりワークの両面を研削する。
【特許文献1】特開2005−205528号公報
【特許文献2】特開2007−96015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、ワークがシリコンウェーハの場合には要求精度が高精度化し、加工精度の向上とその安定化が必要になっている。しかし、従来は複雑な形状でも加工し易いアルミニウム合金を母材とし、表面加工とアルミニウムイオン流出の防止のために表面をコーティング処理した静圧パッドが使用されている。このためワークの研削中に静圧パッドが研削熱の影響を受けて局部的な熱膨張が発生し、ワークの研削精度に悪影響を与えるという問題がある。
【0006】
即ち、両頭平面研削盤では、その研削方法からワークの中央部は常に研削砥石と接触している。そのため組み付けられた静圧パッドの平面バラツキによる流体の圧力変動が生まれ、研削中のワークがその圧力変動を受けると研削点に応力が働き、ワークにその影響が転写され研削精度を悪化させてしまう。従って、静圧パッドの取り付け時の組み付け精度は平面度及び平行度を約10μm以内に収まるように調整している。
【0007】
しかし、従来のアルミニウム合金を母材とした静圧パッドでは、研削精度の高精度化と安定化を実現することは困難であった。そこで、その不安定要素を解明するために、図10(a)及び(b)に示すように静圧パッド1の略中央部A1と、静圧パッド1の下部に形成された切り欠き部2の開口部3の後部B1及び前部C1の両側とに変位センサを取り付けて、静圧パッド1の各測定点の変位を測定したところ、図11に示すような結果が得られた。
【0008】
図11は1回の研削サイクルにおける測定結果を示し、Aは静圧パッドの略中央部A1の変位を、Bは静圧パッド1の後部B1の変位を、Cは静圧パッド1の前部C1の変位を夫々示す。またDはキャリアの外周部のキャリアリングよりも下でのドレン水温を示し、Eは研削砥石の駆動モータが消費する砥石電流値を示す。
【0009】
この図11の測定結果からも判るように、従来の静圧パッド1は熱膨張係数の高いアルミニウム合金を母材としているため、ワークの研削加工中にその研削熱の影響を非常に受け易く、局部的な熱膨張が発生している。特に静圧パッド1の中央領域4での変形量Xは、およそ片側で7μm以上になっており、ワークとの隙間が極端に狭くなっていることが判った。
【0010】
これは、ワークを研削砥石で研削する際に発生する研削熱によって熱せられた研削水が、高速回転する研削砥石の遠心力を受けて、静圧パッド1の切り欠き部2の内周面に飛散し、静圧パッド1に局部的な熱膨張が発生するためである。
【0011】
因みに静圧パッド1がどのような形状に変形するかを捉えるために、静圧パッド1の取り付け状態をモデリングして、切り欠き部2の内周面側に熱影響を受けた静圧パッドの1形状を熱解析ソフトを用いて解析したところ、静圧パッド1のワーク側の全体が膨張するのではなく、図10(b)に示す略中央部A1及びその周辺部分を含む中央領域4が、図10(a)に二点鎖線で示すように略中央部A1を頂点として山形状に隆起することが判った。
【0012】
従って、静圧パッド1を如何に高精度に組み付けても、熱膨張係数の高いアルミニウム合金を母材とした静圧パッドを使用する限りは、静圧パッド1の形状が研削熱の影響によって崩れ、ワークを非接触支持している静圧パッド1とワークとの隙間が狭くなることにより、ポケットから供給される流体の圧力が上昇し、ワークの研削精度に悪影響を与えることになる。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、研削熱の影響による静圧パッドの局部的な熱膨張が少なくワークとの隙間をその略全面で均一化でき、ワークに対する静圧支持力がワークの略全面で安定し研削精度の高精度化と安定化を実現することができる両頭平面研削盤及びワークの両面研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、薄板状のワークを両面から流体の静圧により非接触支持する一対の静圧パッドと、該静圧パッドにより非接触支持された前記ワークを回転させるキャリアと、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つ前記ワークを研削する研削砥石とを備えた両頭平面研削盤において、熱膨張係数の低い材料により前記各静圧パッドを構成したものである。前記キャリアの外周部に配置されたキャリアリングを熱膨張係数の低い材料により構成してもよい。前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることが望ましい。
【0015】
また別の本発明は、一対の静圧パッドの非接触支持面側に供給される流体の静圧により薄板状のワークを両側から非接触支持した状態で前記ワークを回転させながら、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置された研削砥石により前記ワークの両面を研削するに際し、前記各静圧パッドに熱膨張係数の低い材料を用いるものである。前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各静圧パッドに熱膨張係数の低い材料を使用することにより、研削熱の影響による静圧パッドの局部的な熱膨張が少なくワークとの隙間をその略全面で均一化でき、ワークに対する静圧支持力がワークの略全面で安定し研削精度の高精度化と安定化を実現することができる利点がある。
【0017】
特に熱膨張係数の低い材料としてはセラミック材、ステンレス鋼等の材料を使用することが可能であるため、アルミニウム合金を使用する従来に比較して材料の剛性が向上して、静圧パッド自体の加工精度(平面度や平行度)を高精度に製作することができる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1〜図4は本発明を横型両頭平面研削盤に採用した第1の実施例を例示する。横型両頭平面研削盤は、図1〜図3に示すように、薄板状のワークWを両面から水等の流体の静圧により非接触支持する左右一対の静圧パッド10と、この静圧パッド10により非接触支持されたワークWを回転させるキャリア11と、各静圧パッド10の切り欠き部12に配置され且つワークWを研削する左右一対の研削砥石13とを備えている。
【0019】
静圧パッド10は横軸心上に遠近方向に摺動自在に配置されたパッド取り付け台14に着脱自在に装着されている。静圧パッド10、パッド取り付け台14は下部側に円形状の切り欠き部12,15を有し、この切り欠き部12,15を除く全体が略円形状に形成されている。
【0020】
静圧パッド10は熱膨張係数の低い材料、例えばアルミナ等のセラミック材Sを母材として構成されており、ワークWと対向する非接触支持面25側に凸状のランド部16〜20と、このランド部16〜20により区画された複数個のポケット部21〜23とを有し、その各ポケット部21〜23内に静圧水(流体)の供給孔24が設けられている。
【0021】
ポケット部21〜23には切り欠き部12に近い側に形成された内周ポケット部21と、切り欠き部12から遠い側に形成された外周ポケット部22,23とがある。内周ポケット部21はその切り欠き部12に沿って長い円弧状であって、周方向に複数個、例えば2個形成されている。外周ポケット部22,23は内周ポケット部21を挟んで切り欠き部12と反対側に周方向に複数個、例えば4個あり、内周側ポケット部21の数よりも多くなっている。
【0022】
ランド部16〜20は各ポケット部21〜23を区画するように網目状に形成され、そのランド部17〜20には流体を逃がす溝26が形成されている。ランド部16〜20には、切り欠き部12に沿って周方向に形成された内周ランド部16と、静圧パッド10の外周に沿って周方向に形成され且つ両端が内周ランド部16の両端に接続された外周ランド部17と、内周ポケット部21及び外周ポケット部22,23間に内周ランド部16に沿って周方向に形成され且つ両端が外周ランド部17に接続された中間ランド部18と、静圧パッド10の略中央部から静圧パッド10の径方向に上下に延び且つ内周ランド部16、外周ランド部17及び中間ランド部18に夫々接続された縦ランド部19と、この縦ランド部19の両側に所定の間隔を置いて斜め方向に形成され且つ両端が外周ランド部17及び中間ランド部18に接続された斜めランド部20とがある。
【0023】
各ポケット部21〜23には、このポケット部21〜23内に静圧水(流体)を供給する供給孔24が形成されている。この供給孔24は各ポケット部21〜23に夫々複数個設けられているが、内周ポケット部21、外周ポケット部22の供給孔24は、静圧パッド10の略中央を通る縦ランド部19の両側周辺に集中的に配置されている。特に内周ポケット部21の供給孔24は縦ランド部19の近傍の数が多くなるように周方向の両端に複数個ずつ配置されている。各供給孔24は静圧パッド10内又は静圧パッド10の非接触支持面25と反対の裏側に形成された供給通路24aを介して裏側の供給口(図示省略)に連通されている。中間ランド部18、縦ランド部19及び斜めランド部20には、静圧水を静圧パッド10の外周側に逃がすための溝26が形成されている。
【0024】
キャリア11は一対の静圧パッド10間でワークWを回転可能に支持するもので、ワークWが内周孔に横方向に着脱自在に嵌合するキャリア板27と、静圧パッド10の外周の段部36に対応して外周部に配置され且つキャリア板27の外周側を着脱自在に支持するキャリアリング28とを備えている。キャリアリング28は周方向に複数個の支持ローラ(図示省略)により回転自在に支持され、内周ギヤ29に噛合する駆動ギヤ30により回転駆動される。駆動ギヤ30は一方の静圧パッド10、パッド取り付け台14の上部の通孔31に挿通された駆動軸32により装着されている。
【0025】
なお、キャリアリング28は、ワークWの研削中の挙動に影響があるため、ワークWの研削熱によって熱せられた研削水が飛散しても熱膨張し難くなるように、静圧パッド10と同様に熱膨張係数の低い材料、例えばアルミナ等のセラミック材S、又はステンレス鋼を母材として構成することが望ましい。
【0026】
研削砥石13はカップ型等であって、静圧パッド10の軸心と平行に配置された一対の砥石軸33の対向端側の砥石取り付け台34に着脱自在に装着されている。研削砥石13はワークWの研削時にその中心部と外周部とを通過可能な直径を有する。各砥石軸33は軸心方向に移動可能であり、この各砥石軸33には研削砥石13の中心側から研削砥石面に研削水を供給する供給通路35が形成されている。なお、砥石軸33は研削時には図外の砥石駆動モータにより回転駆動される。
【0027】
この横型両頭平面研削盤を使用してシリコンウェーハ等のワークWを研削する場合には、次のように行う。静圧パッド10の各供給孔24から水等の静圧流体を供給して、静圧パッド10により流体の静圧を介してワークWを両面から非接触状態で静圧支持すると共に、キャリア11によりワークWを図2のP矢印方向に回転させる。そして、砥石軸33の供給通路35から研削水を研削砥石13内へと供給しながら、図2のQ矢印方向に回転する研削砥石13によりワークWの両面を研削する。
【0028】
研削砥石13内に供給された研削水は、高速回転する研削砥石13の遠心力を受けて図1に矢印で示すように外周の砥石面側へと流れ、研削砥石13でワークWを研削する際に発生する研削熱によって熱せられた後、遠心力によって静圧パッド10の切り欠き部12の内周面へと飛散する。
【0029】
しかし、熱膨張係数の低いアルミナ等のセラミック材Sを母材とする静圧パッド10を使用することにより、研削熱による静圧パッド10の熱膨張を抑えることができる。この結果、静圧パッド10の非接触支持面25の略全面において、静圧パッド10とワークWとの隙間変化が小さくなり、全体的に両者の隙間を略均一に保つことができるため、ワークWを非接触支持する流体の局部的な圧力変化を抑えることが可能となる。従って、研削時のワークWに余計な応力を与えずに研削できることになり、ワークWの研削精度の高精度化とその安定化を実現することができる。
【0030】
因みにアルミナを母材とした静圧パッド10を製作して、従来のアルミ合金製の静圧パッド1と同様の各部A1〜C1での研削熱の影響による変位A〜Cを測定したところ、図4に示すような測定結果が得られた。この図4の変位Aからも判るように、静圧パッド10の母材を熱膨張係数の低いアルミナに変更することによって、静圧パッド10の略中央部A1の変位量Yは、従来のアルミニウム合金製の場合に比較して約1/3程度に抑えることができた。
【0031】
なお、静圧パッド10の中央部を通る縦ランド部19の両側近傍に静圧水の供給孔24が集中して配置されているため、その各供給孔24から供給される静圧水によって静圧パッド10の略中央部の熱膨張を抑えることもできる。
【0032】
また例えばアルミナの場合にはアルミニウム合金に比較して約5倍のヤング率を有する等、静圧パッド10の母材にセラミック材Sを使用することによりその剛性が向上して、静圧パッド10自体の加工精度(平面度や平行度)を高精度に製作することができる。
【0033】
図5は本発明の第2の実施例を例示する。静圧パッド10はアルミナ等のセラミック材Sを母材として構成されると共に、その静圧パッド10内には研削熱の熱影響を受け易い略中央部に対応して冷却通路38が形成されており、この冷却通路38を流れる冷却水により、静圧パッド10の熱影響を受け易い中央部分を内側から強制冷却するようになっている。
【0034】
冷却通路38は静圧パッド10の略中央部につづら折り、その他の所定形状に集中的に形成されている。また冷却通路38の両端は非接触支持面25と反対の裏側に開口する供給口39と排出口40とに接続され、供給口39から供給された冷却水(冷媒)が、この冷却通路38の静圧パッド10の中央側から外側へと流れる間に、静圧パッド10の熱影響を受け易い中央部分を内側から強制冷却する。なお、冷却水の流れは逆でもよい。他の構成は第1の実施例と同じである。
【0035】
このように静圧パッド10をセラミック材Sを母材として構成する他、静圧パッド10内にその略中央部に対応して冷却通路38を形成して、この冷却通路38を流れる冷却水により静圧パッド10の略中央部を内側から強制冷却することにより、静圧パッド10の中央部分の熱膨張を抑えることができる。
【0036】
特に静圧パッド10をセラミック材Sにより構成することにより、冷却通路38を容易に形成することができる。即ち、焼成前のセラミック原料を積層して所定形状に成型する際に、その内部に消失型等を入れて成型する等により、静圧パッド10の略中央部分に冷却通路38を形成し、その後に焼成すればよいので、機械加工により冷却通路38を形成する場合に比較して、複雑な回路構成の冷却通路38を容易に設けることができる。
【0037】
従って、静圧パッド10の熱影響を受け易い部分に集中的に冷却通路38を配置することも可能であり、冷却水により静圧パッド10を効率的に強制冷却することができる。
【0038】
なお、静圧パッド10内の冷却通路38は薄板状のセラミック原料を複数枚積層することにより設けてもよい。
【0039】
図6は本発明の第3の実施例を例示する。この実施例では、静圧パッド10の略中央部分の内、その少なくともランド部16,18,19に対応する部分を強制的に冷却するように、静圧パッド10内に冷却通路38が設けられている。他の構成は第1又は第2の実施例と同じである。
【0040】
静圧パッド10が研削熱の熱影響により熱膨張する場合、凹入状に形成されたポケット部21〜23よりも凸状のランド部16,18,19の膨張が問題となる。従って、少なくとも中央部分のランド部16,18,19に対応して冷却通路38を設けることにより、最重要部分を効率的に強制冷却することができる。
【0041】
図7は本発明の第4の実施例を例示する。この実施例では、静圧パッド10の内、熱影響を受け易い中央部分と他の部分とで熱膨張係数の異なるセラミック材S1,S2が使用されている。
【0042】
即ち、熱膨張係数の低いセラミック材S1,S2の内でも、静圧パッド10の熱影響を受け易い中央部分には熱膨張係数のより低いセラミック材S1が使用され、中央部分を除く他の部分、すなわち中央部分よりも比較的熱影響を受け難い周辺部分には、中央部分のセラミック材S1よりも熱膨張係数の高いセラミック材S2が使用されている。他の構成は第1の実施例と同じである。
【0043】
このように熱膨張係数の異なるセラミック材S1,S2を組み合わせることにより、静圧パッド10全体の熱膨張が略均一になるようにすることも可能である。
【0044】
図8、図9は本発明の第5の実施例を例示する。この実施例では、静圧パッド10の内、ポケット部21〜23に対応する部分以外の部分の略全体が非多孔質のセラミック材Sにより構成されると共に、ポケット部21〜23の底部側に、静圧水供給領域42を構成する多孔質のセラミック材S3が設けられている。そして、静圧パッド10の裏側の供給通路24aから多孔質のセラミック材S3を経て各ポケット部21〜23に略均等に静圧水を供給するようになっている。静圧水供給領域42はポケット部21〜23の底部の略全面に対応している。なお、他の構成は第1の実施例と同様である。
【0045】
このように多孔質のセラミック材S3によりポケット部21〜23の底部の略全面に静圧水供給領域42を形成し、この静圧水供給領域42の略全面から非接触支持面25側へと静圧水を供給するようにしてもよい。
【0046】
なお、この実施例では、ポケット部21〜23の底部側の厚さ方向の全体を多孔質のセラミック材S3により構成しているが、厚さ方向のポケット部21〜23側の一部を多孔質のセラミック材S3により構成するのみでもよい。
【0047】
以上、本発明の各実施例について詳述したが、この実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、各実施例では熱膨張係数の低い材料としてセラミック材S〜S2を例示しているが、セラミック材S〜S2に代替してステンレス鋼、その他の低熱膨張材を使用することも可能である。またその場合にも、熱膨張係数の異なる低熱膨張材を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
静圧パッド10の非接触支持面25側にはランド部16〜20、ポケット部21〜23、溝26が配置されているが、その配置は実施例に例示するものに限らず、他の配置を採用してもよい。横型両頭平面研削盤の他、縦型にも採用可能である。またワークWはシリコンウェーハ以外のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施例を示す横型両頭平面研削盤の断面図である。
【図2】同静圧パッド等の側面図である。
【図3】同図2のZ−Z線断面図である。
【図4】同測定結果を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例を示す静圧パッドの一部破断側面図である。
【図6】本発明の第3の実施例を示す静圧パッドの一部破断側面図である。
【図7】本発明の第4の実施例を示す静圧パッドの一部破断側面図である。
【図8】本発明の第5の実施例を示す静圧パッドの側面図である。
【図9】同断面図である。
【図10】(a)は従来の静圧パッドの正面図、(b)はその斜視図である。
【図11】従来の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
W ワーク
10 静圧パッド
11 キャリア
12 切り欠き部
13 研削砥石
S セラミック材
S1 セラミック材
S2 セラミック材
S3 セラミック材
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハ等の薄板状のワークの両面を研削するための両頭平面研削盤及びワークの両面研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ等の薄板状のワークの両面を研削する両頭平面研削盤としては、従来、特許文献1、2に記載されたものがある。この両頭平面研削盤は、ポケット部から供給された流体の静圧によりワークを両側から非接触支持する一対の静圧パッドと、この静圧パッドにより非接触支持されたワークを回転させるキャリアと、各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つワークを研削する研削砥石とを備えている。
【0003】
静圧パッドには切り欠き部の内周縁に沿って円弧状の内周ポケット部が形成されると共に、この内周ポケット部に対して切り欠き部と反対側に周方向に多数の外周ポケット部が形成され、この各ポケット部相互間に各ポケット部を区画するランド部が形成されている。そして、各ポケット部内には、流体を供給するための供給孔が形成されている。
【0004】
そして、ワークの研削に際しては、静圧パッドの各供給孔から供給される流体の静圧によりワークを両面側から非接触支持した状態で、キャリアによりワークをその中心廻りに回転させながら、研削砥石の中心側から研削砥石面に研削水を供給しつつ研削砥石によりワークの両面を研削する。
【特許文献1】特開2005−205528号公報
【特許文献2】特開2007−96015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、ワークがシリコンウェーハの場合には要求精度が高精度化し、加工精度の向上とその安定化が必要になっている。しかし、従来は複雑な形状でも加工し易いアルミニウム合金を母材とし、表面加工とアルミニウムイオン流出の防止のために表面をコーティング処理した静圧パッドが使用されている。このためワークの研削中に静圧パッドが研削熱の影響を受けて局部的な熱膨張が発生し、ワークの研削精度に悪影響を与えるという問題がある。
【0006】
即ち、両頭平面研削盤では、その研削方法からワークの中央部は常に研削砥石と接触している。そのため組み付けられた静圧パッドの平面バラツキによる流体の圧力変動が生まれ、研削中のワークがその圧力変動を受けると研削点に応力が働き、ワークにその影響が転写され研削精度を悪化させてしまう。従って、静圧パッドの取り付け時の組み付け精度は平面度及び平行度を約10μm以内に収まるように調整している。
【0007】
しかし、従来のアルミニウム合金を母材とした静圧パッドでは、研削精度の高精度化と安定化を実現することは困難であった。そこで、その不安定要素を解明するために、図10(a)及び(b)に示すように静圧パッド1の略中央部A1と、静圧パッド1の下部に形成された切り欠き部2の開口部3の後部B1及び前部C1の両側とに変位センサを取り付けて、静圧パッド1の各測定点の変位を測定したところ、図11に示すような結果が得られた。
【0008】
図11は1回の研削サイクルにおける測定結果を示し、Aは静圧パッドの略中央部A1の変位を、Bは静圧パッド1の後部B1の変位を、Cは静圧パッド1の前部C1の変位を夫々示す。またDはキャリアの外周部のキャリアリングよりも下でのドレン水温を示し、Eは研削砥石の駆動モータが消費する砥石電流値を示す。
【0009】
この図11の測定結果からも判るように、従来の静圧パッド1は熱膨張係数の高いアルミニウム合金を母材としているため、ワークの研削加工中にその研削熱の影響を非常に受け易く、局部的な熱膨張が発生している。特に静圧パッド1の中央領域4での変形量Xは、およそ片側で7μm以上になっており、ワークとの隙間が極端に狭くなっていることが判った。
【0010】
これは、ワークを研削砥石で研削する際に発生する研削熱によって熱せられた研削水が、高速回転する研削砥石の遠心力を受けて、静圧パッド1の切り欠き部2の内周面に飛散し、静圧パッド1に局部的な熱膨張が発生するためである。
【0011】
因みに静圧パッド1がどのような形状に変形するかを捉えるために、静圧パッド1の取り付け状態をモデリングして、切り欠き部2の内周面側に熱影響を受けた静圧パッドの1形状を熱解析ソフトを用いて解析したところ、静圧パッド1のワーク側の全体が膨張するのではなく、図10(b)に示す略中央部A1及びその周辺部分を含む中央領域4が、図10(a)に二点鎖線で示すように略中央部A1を頂点として山形状に隆起することが判った。
【0012】
従って、静圧パッド1を如何に高精度に組み付けても、熱膨張係数の高いアルミニウム合金を母材とした静圧パッドを使用する限りは、静圧パッド1の形状が研削熱の影響によって崩れ、ワークを非接触支持している静圧パッド1とワークとの隙間が狭くなることにより、ポケットから供給される流体の圧力が上昇し、ワークの研削精度に悪影響を与えることになる。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、研削熱の影響による静圧パッドの局部的な熱膨張が少なくワークとの隙間をその略全面で均一化でき、ワークに対する静圧支持力がワークの略全面で安定し研削精度の高精度化と安定化を実現することができる両頭平面研削盤及びワークの両面研削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、薄板状のワークを両面から流体の静圧により非接触支持する一対の静圧パッドと、該静圧パッドにより非接触支持された前記ワークを回転させるキャリアと、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つ前記ワークを研削する研削砥石とを備えた両頭平面研削盤において、熱膨張係数の低い材料により前記各静圧パッドを構成したものである。前記キャリアの外周部に配置されたキャリアリングを熱膨張係数の低い材料により構成してもよい。前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることが望ましい。
【0015】
また別の本発明は、一対の静圧パッドの非接触支持面側に供給される流体の静圧により薄板状のワークを両側から非接触支持した状態で前記ワークを回転させながら、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置された研削砥石により前記ワークの両面を研削するに際し、前記各静圧パッドに熱膨張係数の低い材料を用いるものである。前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各静圧パッドに熱膨張係数の低い材料を使用することにより、研削熱の影響による静圧パッドの局部的な熱膨張が少なくワークとの隙間をその略全面で均一化でき、ワークに対する静圧支持力がワークの略全面で安定し研削精度の高精度化と安定化を実現することができる利点がある。
【0017】
特に熱膨張係数の低い材料としてはセラミック材、ステンレス鋼等の材料を使用することが可能であるため、アルミニウム合金を使用する従来に比較して材料の剛性が向上して、静圧パッド自体の加工精度(平面度や平行度)を高精度に製作することができる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1〜図4は本発明を横型両頭平面研削盤に採用した第1の実施例を例示する。横型両頭平面研削盤は、図1〜図3に示すように、薄板状のワークWを両面から水等の流体の静圧により非接触支持する左右一対の静圧パッド10と、この静圧パッド10により非接触支持されたワークWを回転させるキャリア11と、各静圧パッド10の切り欠き部12に配置され且つワークWを研削する左右一対の研削砥石13とを備えている。
【0019】
静圧パッド10は横軸心上に遠近方向に摺動自在に配置されたパッド取り付け台14に着脱自在に装着されている。静圧パッド10、パッド取り付け台14は下部側に円形状の切り欠き部12,15を有し、この切り欠き部12,15を除く全体が略円形状に形成されている。
【0020】
静圧パッド10は熱膨張係数の低い材料、例えばアルミナ等のセラミック材Sを母材として構成されており、ワークWと対向する非接触支持面25側に凸状のランド部16〜20と、このランド部16〜20により区画された複数個のポケット部21〜23とを有し、その各ポケット部21〜23内に静圧水(流体)の供給孔24が設けられている。
【0021】
ポケット部21〜23には切り欠き部12に近い側に形成された内周ポケット部21と、切り欠き部12から遠い側に形成された外周ポケット部22,23とがある。内周ポケット部21はその切り欠き部12に沿って長い円弧状であって、周方向に複数個、例えば2個形成されている。外周ポケット部22,23は内周ポケット部21を挟んで切り欠き部12と反対側に周方向に複数個、例えば4個あり、内周側ポケット部21の数よりも多くなっている。
【0022】
ランド部16〜20は各ポケット部21〜23を区画するように網目状に形成され、そのランド部17〜20には流体を逃がす溝26が形成されている。ランド部16〜20には、切り欠き部12に沿って周方向に形成された内周ランド部16と、静圧パッド10の外周に沿って周方向に形成され且つ両端が内周ランド部16の両端に接続された外周ランド部17と、内周ポケット部21及び外周ポケット部22,23間に内周ランド部16に沿って周方向に形成され且つ両端が外周ランド部17に接続された中間ランド部18と、静圧パッド10の略中央部から静圧パッド10の径方向に上下に延び且つ内周ランド部16、外周ランド部17及び中間ランド部18に夫々接続された縦ランド部19と、この縦ランド部19の両側に所定の間隔を置いて斜め方向に形成され且つ両端が外周ランド部17及び中間ランド部18に接続された斜めランド部20とがある。
【0023】
各ポケット部21〜23には、このポケット部21〜23内に静圧水(流体)を供給する供給孔24が形成されている。この供給孔24は各ポケット部21〜23に夫々複数個設けられているが、内周ポケット部21、外周ポケット部22の供給孔24は、静圧パッド10の略中央を通る縦ランド部19の両側周辺に集中的に配置されている。特に内周ポケット部21の供給孔24は縦ランド部19の近傍の数が多くなるように周方向の両端に複数個ずつ配置されている。各供給孔24は静圧パッド10内又は静圧パッド10の非接触支持面25と反対の裏側に形成された供給通路24aを介して裏側の供給口(図示省略)に連通されている。中間ランド部18、縦ランド部19及び斜めランド部20には、静圧水を静圧パッド10の外周側に逃がすための溝26が形成されている。
【0024】
キャリア11は一対の静圧パッド10間でワークWを回転可能に支持するもので、ワークWが内周孔に横方向に着脱自在に嵌合するキャリア板27と、静圧パッド10の外周の段部36に対応して外周部に配置され且つキャリア板27の外周側を着脱自在に支持するキャリアリング28とを備えている。キャリアリング28は周方向に複数個の支持ローラ(図示省略)により回転自在に支持され、内周ギヤ29に噛合する駆動ギヤ30により回転駆動される。駆動ギヤ30は一方の静圧パッド10、パッド取り付け台14の上部の通孔31に挿通された駆動軸32により装着されている。
【0025】
なお、キャリアリング28は、ワークWの研削中の挙動に影響があるため、ワークWの研削熱によって熱せられた研削水が飛散しても熱膨張し難くなるように、静圧パッド10と同様に熱膨張係数の低い材料、例えばアルミナ等のセラミック材S、又はステンレス鋼を母材として構成することが望ましい。
【0026】
研削砥石13はカップ型等であって、静圧パッド10の軸心と平行に配置された一対の砥石軸33の対向端側の砥石取り付け台34に着脱自在に装着されている。研削砥石13はワークWの研削時にその中心部と外周部とを通過可能な直径を有する。各砥石軸33は軸心方向に移動可能であり、この各砥石軸33には研削砥石13の中心側から研削砥石面に研削水を供給する供給通路35が形成されている。なお、砥石軸33は研削時には図外の砥石駆動モータにより回転駆動される。
【0027】
この横型両頭平面研削盤を使用してシリコンウェーハ等のワークWを研削する場合には、次のように行う。静圧パッド10の各供給孔24から水等の静圧流体を供給して、静圧パッド10により流体の静圧を介してワークWを両面から非接触状態で静圧支持すると共に、キャリア11によりワークWを図2のP矢印方向に回転させる。そして、砥石軸33の供給通路35から研削水を研削砥石13内へと供給しながら、図2のQ矢印方向に回転する研削砥石13によりワークWの両面を研削する。
【0028】
研削砥石13内に供給された研削水は、高速回転する研削砥石13の遠心力を受けて図1に矢印で示すように外周の砥石面側へと流れ、研削砥石13でワークWを研削する際に発生する研削熱によって熱せられた後、遠心力によって静圧パッド10の切り欠き部12の内周面へと飛散する。
【0029】
しかし、熱膨張係数の低いアルミナ等のセラミック材Sを母材とする静圧パッド10を使用することにより、研削熱による静圧パッド10の熱膨張を抑えることができる。この結果、静圧パッド10の非接触支持面25の略全面において、静圧パッド10とワークWとの隙間変化が小さくなり、全体的に両者の隙間を略均一に保つことができるため、ワークWを非接触支持する流体の局部的な圧力変化を抑えることが可能となる。従って、研削時のワークWに余計な応力を与えずに研削できることになり、ワークWの研削精度の高精度化とその安定化を実現することができる。
【0030】
因みにアルミナを母材とした静圧パッド10を製作して、従来のアルミ合金製の静圧パッド1と同様の各部A1〜C1での研削熱の影響による変位A〜Cを測定したところ、図4に示すような測定結果が得られた。この図4の変位Aからも判るように、静圧パッド10の母材を熱膨張係数の低いアルミナに変更することによって、静圧パッド10の略中央部A1の変位量Yは、従来のアルミニウム合金製の場合に比較して約1/3程度に抑えることができた。
【0031】
なお、静圧パッド10の中央部を通る縦ランド部19の両側近傍に静圧水の供給孔24が集中して配置されているため、その各供給孔24から供給される静圧水によって静圧パッド10の略中央部の熱膨張を抑えることもできる。
【0032】
また例えばアルミナの場合にはアルミニウム合金に比較して約5倍のヤング率を有する等、静圧パッド10の母材にセラミック材Sを使用することによりその剛性が向上して、静圧パッド10自体の加工精度(平面度や平行度)を高精度に製作することができる。
【0033】
図5は本発明の第2の実施例を例示する。静圧パッド10はアルミナ等のセラミック材Sを母材として構成されると共に、その静圧パッド10内には研削熱の熱影響を受け易い略中央部に対応して冷却通路38が形成されており、この冷却通路38を流れる冷却水により、静圧パッド10の熱影響を受け易い中央部分を内側から強制冷却するようになっている。
【0034】
冷却通路38は静圧パッド10の略中央部につづら折り、その他の所定形状に集中的に形成されている。また冷却通路38の両端は非接触支持面25と反対の裏側に開口する供給口39と排出口40とに接続され、供給口39から供給された冷却水(冷媒)が、この冷却通路38の静圧パッド10の中央側から外側へと流れる間に、静圧パッド10の熱影響を受け易い中央部分を内側から強制冷却する。なお、冷却水の流れは逆でもよい。他の構成は第1の実施例と同じである。
【0035】
このように静圧パッド10をセラミック材Sを母材として構成する他、静圧パッド10内にその略中央部に対応して冷却通路38を形成して、この冷却通路38を流れる冷却水により静圧パッド10の略中央部を内側から強制冷却することにより、静圧パッド10の中央部分の熱膨張を抑えることができる。
【0036】
特に静圧パッド10をセラミック材Sにより構成することにより、冷却通路38を容易に形成することができる。即ち、焼成前のセラミック原料を積層して所定形状に成型する際に、その内部に消失型等を入れて成型する等により、静圧パッド10の略中央部分に冷却通路38を形成し、その後に焼成すればよいので、機械加工により冷却通路38を形成する場合に比較して、複雑な回路構成の冷却通路38を容易に設けることができる。
【0037】
従って、静圧パッド10の熱影響を受け易い部分に集中的に冷却通路38を配置することも可能であり、冷却水により静圧パッド10を効率的に強制冷却することができる。
【0038】
なお、静圧パッド10内の冷却通路38は薄板状のセラミック原料を複数枚積層することにより設けてもよい。
【0039】
図6は本発明の第3の実施例を例示する。この実施例では、静圧パッド10の略中央部分の内、その少なくともランド部16,18,19に対応する部分を強制的に冷却するように、静圧パッド10内に冷却通路38が設けられている。他の構成は第1又は第2の実施例と同じである。
【0040】
静圧パッド10が研削熱の熱影響により熱膨張する場合、凹入状に形成されたポケット部21〜23よりも凸状のランド部16,18,19の膨張が問題となる。従って、少なくとも中央部分のランド部16,18,19に対応して冷却通路38を設けることにより、最重要部分を効率的に強制冷却することができる。
【0041】
図7は本発明の第4の実施例を例示する。この実施例では、静圧パッド10の内、熱影響を受け易い中央部分と他の部分とで熱膨張係数の異なるセラミック材S1,S2が使用されている。
【0042】
即ち、熱膨張係数の低いセラミック材S1,S2の内でも、静圧パッド10の熱影響を受け易い中央部分には熱膨張係数のより低いセラミック材S1が使用され、中央部分を除く他の部分、すなわち中央部分よりも比較的熱影響を受け難い周辺部分には、中央部分のセラミック材S1よりも熱膨張係数の高いセラミック材S2が使用されている。他の構成は第1の実施例と同じである。
【0043】
このように熱膨張係数の異なるセラミック材S1,S2を組み合わせることにより、静圧パッド10全体の熱膨張が略均一になるようにすることも可能である。
【0044】
図8、図9は本発明の第5の実施例を例示する。この実施例では、静圧パッド10の内、ポケット部21〜23に対応する部分以外の部分の略全体が非多孔質のセラミック材Sにより構成されると共に、ポケット部21〜23の底部側に、静圧水供給領域42を構成する多孔質のセラミック材S3が設けられている。そして、静圧パッド10の裏側の供給通路24aから多孔質のセラミック材S3を経て各ポケット部21〜23に略均等に静圧水を供給するようになっている。静圧水供給領域42はポケット部21〜23の底部の略全面に対応している。なお、他の構成は第1の実施例と同様である。
【0045】
このように多孔質のセラミック材S3によりポケット部21〜23の底部の略全面に静圧水供給領域42を形成し、この静圧水供給領域42の略全面から非接触支持面25側へと静圧水を供給するようにしてもよい。
【0046】
なお、この実施例では、ポケット部21〜23の底部側の厚さ方向の全体を多孔質のセラミック材S3により構成しているが、厚さ方向のポケット部21〜23側の一部を多孔質のセラミック材S3により構成するのみでもよい。
【0047】
以上、本発明の各実施例について詳述したが、この実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、各実施例では熱膨張係数の低い材料としてセラミック材S〜S2を例示しているが、セラミック材S〜S2に代替してステンレス鋼、その他の低熱膨張材を使用することも可能である。またその場合にも、熱膨張係数の異なる低熱膨張材を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
静圧パッド10の非接触支持面25側にはランド部16〜20、ポケット部21〜23、溝26が配置されているが、その配置は実施例に例示するものに限らず、他の配置を採用してもよい。横型両頭平面研削盤の他、縦型にも採用可能である。またワークWはシリコンウェーハ以外のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施例を示す横型両頭平面研削盤の断面図である。
【図2】同静圧パッド等の側面図である。
【図3】同図2のZ−Z線断面図である。
【図4】同測定結果を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例を示す静圧パッドの一部破断側面図である。
【図6】本発明の第3の実施例を示す静圧パッドの一部破断側面図である。
【図7】本発明の第4の実施例を示す静圧パッドの一部破断側面図である。
【図8】本発明の第5の実施例を示す静圧パッドの側面図である。
【図9】同断面図である。
【図10】(a)は従来の静圧パッドの正面図、(b)はその斜視図である。
【図11】従来の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
W ワーク
10 静圧パッド
11 キャリア
12 切り欠き部
13 研削砥石
S セラミック材
S1 セラミック材
S2 セラミック材
S3 セラミック材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のワークを両面から流体の静圧により非接触支持する一対の静圧パッドと、該静圧パッドにより非接触支持された前記ワークを回転させるキャリアと、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つ前記ワークを研削する研削砥石とを備えた両頭平面研削盤において、熱膨張係数の低い材料により前記各静圧パッドを構成したことを特徴とする両頭平面研削盤。
【請求項2】
前記キャリアの外周部に配置されたキャリアリングを熱膨張係数の低い材料により構成したことを特徴とする請求項1に記載の両頭平面研削盤。
【請求項3】
前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の両頭平面研削盤。
【請求項4】
一対の静圧パッドの非接触支持面側に供給される流体の静圧により薄板状のワークを両側から非接触支持した状態で前記ワークを回転させながら、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置された研削砥石により前記ワークの両面を研削するに際し、前記各静圧パッドに熱膨張係数の低い材料を用いることを特徴とするワークの両面研削方法。
【請求項5】
前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることを特徴とする請求項4に記載のワークの両面研削方法。
【請求項1】
薄板状のワークを両面から流体の静圧により非接触支持する一対の静圧パッドと、該静圧パッドにより非接触支持された前記ワークを回転させるキャリアと、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置され且つ前記ワークを研削する研削砥石とを備えた両頭平面研削盤において、熱膨張係数の低い材料により前記各静圧パッドを構成したことを特徴とする両頭平面研削盤。
【請求項2】
前記キャリアの外周部に配置されたキャリアリングを熱膨張係数の低い材料により構成したことを特徴とする請求項1に記載の両頭平面研削盤。
【請求項3】
前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の両頭平面研削盤。
【請求項4】
一対の静圧パッドの非接触支持面側に供給される流体の静圧により薄板状のワークを両側から非接触支持した状態で前記ワークを回転させながら、前記各静圧パッドの切り欠き部に配置された研削砥石により前記ワークの両面を研削するに際し、前記各静圧パッドに熱膨張係数の低い材料を用いることを特徴とするワークの両面研削方法。
【請求項5】
前記熱膨張係数の低い材料はセラミック材であることを特徴とする請求項4に記載のワークの両面研削方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−64214(P2010−64214A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234505(P2008−234505)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000167222)光洋機械工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000167222)光洋機械工業株式会社 (85)
【Fターム(参考)】
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