説明

並列の実効抵抗領域を有するPTC回路保護装置

【課題】過度な温度および電流に対して電子装置を保護するPTC回路保護装置を提供する。
【解決手段】装置100 はポリマー抵抗素子102 と、第1の電極104 と、第2の電極106 とを備え、温度に応答してその電気抵抗を変化させる。抵抗素子102 は上部表面 と下部表面 とを有し、第1の電極104 は上部表面 と下部表面 の両者と電気的に接触し、第2の電極106 は上部表面 と下部表面 の両者と電気的に接触している。回路保護装置100 は第1の実効抵抗領域と第2の実効抵抗領域とを有しており、それらは電気的に並列に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路保護装置に関する。特に、本発明は正の温度係数(PTC)のポリマー抵抗回路保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
正の温度係数(PTC)の抵抗を有している回路保護装置は通常PTC装置と呼ばれており、その抵抗特性を与える特定の材料は通常PTC材料またはPTC抵抗素子と呼ばれている。PTC装置は一般的に種々の異なった電子装置、例えば電気モータ等で使用され、過電流および、または過大な温度状態に対する保護を行っている。
【0003】
PTC装置は、電流が保護される装置に到達する前にPTC装置の抵抗素子を通過させるように保護される装置に電力を供給する電流路内に配置される。正常の動作温度および電流では、抵抗素子は電流に対して比較的低い抵抗値を示しており、保護される装置に電流が流れるのを実質上妨害しない。PTC装置の抵抗は増加して少なくとも保護される装置に与えられる電流量を実質的に制限して、保護される装置が損傷を受けることを阻止している。
【0004】
抵抗素子は典型的にポリマー抵抗素子であり、ポリオレフィン材料と導電性のカーボン粒子との均質な混合物である。正常の動作温度および電流では、抵抗素子は結晶構造を有し、それは低い抵抗の導電路の装置を提供する。電流に対して比較的低い抵抗値を示しており、電流が保護される装置に流れるのを実質上妨害しない。周囲温度および、または電流が過度に高くなったとき、抵抗素子は相の変化(切替え作用)を受けてアモルファス(非結晶)構造となり、ポリオレフィンの膨張を生じる。相の変化はカーボンブラックの粒子を分離することによって導電を抑制し、その結果として抵抗が増加する。相の変化は非常に狭い温度帯域中で生じ、数桁の大きさの抵抗の急激な増加を生じさせる。高抵抗状態は保護される装置を流れる電流を制限してこの装置を過大な電流および、または温度による損傷から保護する。過大な電流および、または温度が消滅した後、抵抗素子は低抵抗状態に戻る。抵抗素子は自己により誘起されたI2 R加熱または周囲環境中の高い温度に曝されることによってその相の変化温度にもたらされる。
【0005】
PTC装置が正常状態でその低抵抗状態で動作しているときでも、PTC装置は保護される装置を流れる電流をある程度妨害する。それ故、PTC装置の存在により、PTC装置の存在しない時に必要とされるよりも保護される装置に供給される電力に対して追加の電力を必要とする。エネルギを節約するために抵抗素子の抵抗は正常の動作電流および温度では可能な限り低いことが望ましい。標準的な動作状態では通常のPTC装置の抵抗は意図している目的に適したPTC装置を提供するように充分に低いが、保護される装置を動作させるために必要な電流の量を減少させて、それによりエネルギを節約するためには正常の動作状態でさらに低い抵抗値を有するPTC装置が必要とされる。
【0006】
正常の動作状態では、PTC装置の全体の抵抗(Ω)は抵抗素子の厚さ(t)と、抵抗素子の実効抵抗面積(A)の関数[その長さ(l)×幅(l)×比抵抗(ρ)]であり、それは特定の抵抗素子の組成の性質に固有である。特に正常の動作状態では、PTC装置の全体の抵抗は次の式で計算されることができる。
Ω=(t/A)(ρ),ここでA=w×l
抵抗素子の実効抵抗面積は電流が実際に通過する抵抗素子の部分であり、それ故、電流に実際に抵抗を与える抵抗素子の部分である。実効抵抗面積(A)が大きいほどPTC装置の全体の抵抗(Ω)は低くなる。さらに、直列に接続された抵抗よりも並列に接続された抵抗が低い抵抗値を有することはよく知られている。それ故、並列の多数の抵抗素子を有するPTC装置は直列に接続された多数の抵抗素子を有するPTC装置よりも正常の動作状態で低い抵抗を有している。
【0007】
正常の動作状態で低い抵抗を有しているPTC装置は抵抗素子の実効抵抗面積を増加させることによって得られるが、スペースが貴重な用途でPTC装置を使用することを可能にするためにはPTC装置はできるだけ小さい全体の寸法を維持することが必要であるために競合する要求が存在する。本発明は,それぞれ並列に接続された多数の抵抗素子を有し、通常のPTC装置と比較して拡大された実効抵抗面積を有するPTC装置を提供することによって正常の動作状態下で低い抵抗を有するPTC装置に対する要求を満足させている。複数の改良されたPTC装置はPTC構造体中で互いに並列に設けられており、改良されたPTC装置単独の抵抗よりも低い抵抗を正常の動作状態で有している。
【0008】
通常のPTC装置の理解することによって本発明の特徴はより良好に理解されることかできる。図1は例示的なPTC装置10を示している。通常のPTC装置10は一般的にポリマーPTC抵抗素子12と、第1の電極14と、第2の電極16とを備えている。抵抗素子12は通常上部表面18と、下部表面20と、第1の端部22と、第2の端部24とを備えている。第1の電極14は第1のの部分26と、第2の部分28とを有している。第2の電極16は第1の部分30と、第2の部分32とを有している。第1の部分26および30と第2の部分28および32は互いに抵抗素子12の反対側に位置している。
【0009】
第1の電極14は第1の部分26は抵抗素子12の上部表面18上に、または上部表面18の付近に近接して配置され、第1の電極14の第2の部分28は第1の電極14の下部表面20上に、または上部表面20の付近に近接して配置されている。第1の部分26と第2の部分28は、第1のサイド電極34によって電気的に接続されている。第1のサイド電極34は第1の端部22において抵抗素子12の厚さにわたって設けられている。
【0010】
第2の電極16の第1の部分30は抵抗素子12の上部表面18上に、または上部表面18の付近に近接して配置され、第2の電極16の第2の部分32は抵抗素子12の下部表面20上に、または下部表面20の付近に近接して配置されている。第1の部分30と第2の部分32は、第2のサイド電極36によって電気的に接続されている。第2のサイド電極36は第2の端部24において抵抗素子12の厚さで設けられている。
【0011】
第1の電極14は第1の部分26がPTC素子12の反対側の第2の部分28と対向するように配置されている。同様に第2の電極16の第2の部分32はそれが第1の部分30と対向するように配置されている。第1の電極14の第1の部分26と第2の電極16の第2の部分32とはそれぞれ装置10の中央方向に第1の電極14の第2の電極16の第2の部分28と第1の部分30とを越えて延在し、装置10の中央で重なっている。第1の電極14と第2の電極16は切込みマークまたは間隙37A 、37B によって分離されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
さらに、図2および3を参照すると電気コンタクトが第1の電極14と第2の電極16の任意の地点に形成され、電流が電極14と16との間に供給されたとき、電流が電極14と16とが重なっているER領域中の抵抗素子12を通って電極14と16との間に流れる。ER領域はPTC装置10の実効抵抗領域である。示されているように抵抗素子12の実効抵抗領域であるER領域は抵抗素子12の全体の面積よりも遥かに小さく、正常の動作状態のPTC装置10の抵抗は抵抗素子12の実効抵抗領域ERが増加された場合と比較して大きくなる。さらに、実効抵抗領域ERが回路図で示されている図3に示されているように、PTC装置10は単一の実効抵抗領域ERしか有しておらず、したがって、抵抗素子12が電気的に並列の多数の実効抵抗領域に分割されている場合よりも正常の動作状態下では大きい実効抵抗ERを与える。
【0013】
したがって、PTC装置10のような通常のPTC装置と比較して正常の動作状態下で減少された抵抗を有する改良されたPTC装置が必要とされている。
本発明は、過度の温度および電流に対して電子装置を保護するPTC回路保護装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のPTC装置は正常の動作温度および電流において通常のPTC装置よりも低い抵抗を有している。PTC装置は電気的に並列である多数の実効抵抗領域を有する抵抗素子を備えているために減少された抵抗が実現される。減少された抵抗はまた増加された実効抵抗領域を有するPTC装置によって生じたものであるが、全体の寸法は増加されていない。本発明はまた個々のいずれのPTC装置の抵抗よりも低い正常の動作状態下の抵抗を有するPTC構造体を形成するために電気的に並列に接続された複数の改良されたPTC装置を組合わせたPTC構造体を提供する。
【0015】
本発明の1実施形態では、装置はポリマー抵抗素子と、第1の電極と、第2の電極とを備えている。このポリマー抵抗素子は温度に応答してその電気抵抗を変化させる。抵抗素子は第1の表面と第2の表面とを有している。第1の電極は第1の表面と電気的に接触しており、第2の電極は第2の表面と電気的に接触している。第1の電極と前記第2の電極とはポリマー抵抗素子によって互いに電気的に接続されている。この抵抗素子は実効抵抗の第1の領域と実効抵抗の第2の領域とを有し、その実効抵抗の第1の領域は実効抵抗の第2の領域と電気的に並列に接続されている。
【0016】
本発明はさらに、ポリマー抵抗素子と、第1の電極と、第2の電極とを備えている回路保護装置を提供する。このポリマー抵抗素子は温度に応答してその電気抵抗を変化させ、上部表面と、下部表面と、第1の端部と、この第1の端部と反対側の第2の端部とを有している。第1の電極は上部表面と電気的に接触している第1の部分と、下部表面と電気的に接触している第2の部分とを有している。第2の電極は下部表面と電気的に接触している第3の部分と上部表面と電気的に接触している第4の部分とを有している。第1の電極の第1の部分は第2の電極の第1の部分とは反対であり、電気的に接触している。第1の電極の第2の部分は第2の電極の第2の部分とは反対であり、電気的に接触している。第1の電極の第1の部分と第2の部分とは抵抗素子の第1の端部と第2の端部との間に配置された第1のサイド電極によって電気的に接続されている。第2の電極の第1の部分と第2の部分とは抵抗素子の第1の端部と第2の端部との間に配置された第2のサイド電極によって電気的に接続されている。
【0017】
本発明はまた、ポリマー抵抗素子と、第1の電極と、第2の電極と、第3の電極と、第4の電極とを備えている回路保護装置を提供する。このポリマー抵抗素子は温度に応答してその電気抵抗を変化させる。ポリマー抵抗素子は上部表面と下部表面とを有している。第1の電極は上部表面と電気的に接触している。第2の電極は上部表面と電気的に接触している。第3の電極は下部表面と電気的に接触している。第4の電極は下部表面と電気的に接触している。第1の電極は第3の電極および第4の電極の両者と重なり、それらと電気接触を形成している。第2の電極は第3の電極および第4の電極の両者と重なり、それらと電気接触を形成している。回路保護装置は第1の実効抵抗領域と第2の実効抵抗領域と有しており、第2の実効抵抗領域は第1の実効抵抗領域と電気的に並列に接続されている。
【0018】
本発明はまた回路保護装置の製造方法を提供する。その方法は、上部表面と下部表面とを有し、環境変化に応答して抵抗を変化するポリマー抵抗素子を形成し、上部表面および下部表面と電気的に接触して第1の電極を配置し、上部表面および下部表面と電気的に接触して第2の電極を配置するステップを含んでいる。このようにして、抵抗素子は第1の実効抵抗領域と第2の実効抵抗領域とを通って導通し、第2の実効抵抗領域は第1の実効抵抗領域と電気的に並列に接続されている。
【0019】
本発明の適用可能なさらに別の分野は以下の詳細な説明によりさらに明瞭にされるであろう。詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示してが、それらは例示として記載されているだけであり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好ましい実施形態についての以下の説明は本質的に単なる例示であり、本発明の技術的範囲、応用或いは使用を限定するものではないことを理解すべきである。
【0021】
まず、図4乃至7を参照すると、本発明の1実施形態による正の温度係数の回路保護装置(PTC装置)が参照符号100 で示されている。PTC装置100 は一般的にポリマー抵抗の抵抗素子102 と、第1電極104 と、第2の電極106 と、第3の電極108 と、第4の電極110 とを備えている。
【0022】
抵抗素子102 はポリオレフィン材料とカーボンブラック粒子との均一な混合物で構成されることができる。例えば、抵抗素子102 は高密度ポリエチレンとカーボンブラックから製造されることができる。抵抗素子102 は長方形の形状を有するものとして図示されているが、抵抗素子102 は種々の異なる形状および寸法にすることができる。ある応用では、抵抗素子102 は0.05インチ以下であることが好ましく、通常は0.02インチ以下の厚さを有している。抵抗素子102 は一般的に上部表面112 と下部表面114 と第1端部116 と第2の端部118 とを有している。
【0023】
正常の動作温度および動作電流において抵抗素子102 は一般に結晶構造を有しており、それによって低抵抗の導電路を電極104, 106, 108, 110の間に提供している。例えば自己誘導I2 R加熱または周囲環境温度の増加によって生じた温度上昇に抵抗素子102 がさらされたとき、抵抗素子102 は相変化によってアモルファス構造に変化する。この相変化中にポリオレフィンは膨張してカーボンブラック粒子間の距離が増加して抵抗素子102 の導電度を減少させ、反対にその抵抗を増加させる。相変化は122 乃至128 度Cのような非常に狭い温度帯域で生じて抵抗を数桁増加させる。相変化が生じる正確な温度は抵抗素子102 の組成に対して選択されたポリオレフィンおよびカーボンブラック粒子のタイプに依存している。
【0024】
多くの応用では、抵抗素子102 は80度Cより低くはない相変化温度を有しているが、相変化温度は80度C以外の温度にすることも可能である。相変化温度において、抵抗素子102 の抵抗は急速に少なくとも数桁増加する。用途によっては、抵抗素子102 の抵抗は相変化温度において急速に増加して25度Cにおける抵抗の103 倍以上になる。例えば、25度Cにおける抵抗素子102 の比抵抗がほぼ100オームcmであるならば、相変化温度においては比抵抗は100,000オームcmになるであろう。25度Cと相変化温度との間の温度においては、比抵抗は25度Cにおける抵抗値からあまり大きくずれることはない。
【0025】
第1電極104 、第2の電極106 、第3の電極108 、第4の電極110 は互いに類似した形状およびタイプであるが抵抗素子102 に対する方向が異なっている。電極104 、106 、108 、110 は任意の適当な材料から製造することができるが、典型的にはニッケル被覆銅箔電極である。
【0026】
図4の組立てられた構造で示されているように、第1電極104 は抵抗素子102 の第1端部116 から抵抗素子102 の一部を横切って延在し、傾斜した部分120aで終端している。同様に、第2の電極106 は抵抗素子102 の第2の端部118 から抵抗素子102 の一部を横切って延在し、傾斜した部分120bで終端している。傾斜した部分120a、120bは互いに平行であり、第1間隙または切込みマーク122 によって分離されている。
【0027】
図5でさらに明瞭に示されているように、第3の電極108 と第4の電極110 は第1電極104 および第2の電極106 とは端部の傾斜方向が反対方向で、例えば水平面で90度回転された方向で配置されている。第3の電極108 は抵抗素子102 の第1端部116 から抵抗素子102 の一部を横切って延在し、傾斜した部分120cで終端している。第4の電極110 は抵抗素子102 の第2の端部118 から抵抗素子102 の一部を横切って延在し、傾斜した部分120dで終端している。傾斜した部分120cと120dは互いに平行であり、第2の間隙または切込みマーク123 によって分離されている。図6の平面図で示されているように、電極104 、106 、108 、110 は、傾斜した部分120aおよび120bが傾斜した部分120cおよび120dと平面図でX形を形成するような方向である。
【0028】
PTC装置100 は、電源とPTC装置100 により保護される装置との間に直列に配置されて電流がPTC装置100 により保護される装置に到達する前にPTC装置100 を通過するように構成されている。PTC装置100 は第1電極104 、第2の電極106 、第3の電極108 、第4の電極110 の任意の2つに接続されることができる。
【0029】
特に、図6の平面図を参照すると、抵抗素子102 は4つの実効抵抗領域ER1 、ER2 、ER3 、ER4 を有し、それらは電源124 により供給される電流に対して抵抗を与えている。実効抵抗領域ER1 乃至ER4 は電極104 乃至110 の間のオーバーラップ領域に対応している。特に、実効抵抗領域ER1 は第1電極104 が第3の電極108 と対向している抵抗素子102 の領域に位置している。実効抵抗領域ER2 は第1電極104 が第4の電極110 と対向している抵抗素子102 の領域に位置している。実効抵抗領域ER3 は第2の電極106 と第3の電極108 との間の抵抗素子102 の領域に位置している。実効抵抗領域ER4 は第2の電極106 と第4の電極110 との間の抵抗素子102 の領域に位置している。
【0030】
図7を参照すると、実効抵抗領域ER1 乃至ER4 が回路図で示されている。PTC装置100 が第3の電極108 および第4の電極110 において電源124 に接続されたとき、実効抵抗領域ER1 は実効抵抗領域ER2 と直列であり、実効抵抗領域ER3 は実効抵抗領域ER4 と直列である。実効抵抗領域ER1 およびER2 の領域は実効抵抗領域ER3 およびER4 の領域と並列である。その理由は、多数の通路が多数の通路が存在するように電極104 、106 、108 、110 の形状および方向が選定されているためである。特に、第1電極104 は第3の電極108 および第4の電極110 の両者と電気的に接触し、第2の電極106 は第3の電極108 および第4の電極110 の両者と電気的に接触している。
【0031】
PTC装置100 は従来の技術のPTC回路方後装置に勝る多くの利点を提供する。PTC装置100 の全抵抗は直列である実効抵抗領域ER2 とER3 の寸法を減少させることによって低下させることができ、また、例えば、電極104 乃至110 の形状、寸法、および、または方向を変化させ、これらの領域の影響を最小にするために実効抵抗領域ER2 およびER3 の抵抗を減少させることによって低下させることができる。実効抵抗領域ER2 およびER3 の抵抗素子102 の抵抗は多数の異なった方法によって低下させ、或いは消去させることができる。例えば、実効抵抗領域ER2 中の抵抗素子102 の抵抗はメッキまたはワイヤ接続によってER2 の領域で第4の電極110 に第1電極104 を直接接続することによって消去され、或いは著しく減少させることができる。同様に、実効抵抗領域ER3 中の抵抗素子102 の抵抗はメッキまたはワイヤ接続によってER3 の領域で第3の電極108 に第2の電極106 を直接接続することによって消去され、或いは著しく減少させることができる。
【0032】
上述したPTC装置100 の構成に加えて、PTC装置100 の種々の付加的な実施形態が本発明に包含される。例えば、第1電極104 が第3の電極108 および第4の電極110 と対向して配置され、第2の電極106 が第3の電極108 および第4の電極110 と対向して配置されているかぎり上述した設計に加えて種々の異なった方法で成形されることができる。さらに、電極104, 106, 108, 110は電極104 乃至110 と電源124 との間の接続を容易にするために、電極104, 106, 108, 110に接続されている端子(図示せず)を含むことができる。さらに、多数のPTC装置100 は並列に組合わされて正常の動作状態下でさらに低い抵抗を有する構造体として構成されることができる。PTC装置100 は任意の適当な方法で並列に組合わされることができる。例えば多数のPTC装置100 は直接互いに並列に固定され、および、または以下説明する構造体500 (図16参照)と類似して端子により並列に組合わされることができる。
【0033】
さらに、図8乃至11を参照すると、本発明の別の実施形態によるPTC装置200 が示されている。以下説明するように、PTC装置200 は正常の動作状態で通常のPTC装置および前述のPTC装置100 よりも低い抵抗を有する。それは2つの実効抵抗領域が互いにおよび電源と電気的に並列であるからである。
【0034】
PTC装置200 は一般的にポリマーのPTC抵抗素子202 と、第1電極204 と、第2の電極206 とを備えている。抵抗素子202 は一般的に上部表面208 と下部表面210 と第1端部212 と第2の端部214 とを有している。抵抗素子202 は上述した抵抗素子102 と実質的に類似しており、それ故、上述した抵抗素子102 に関する説明は抵抗素子202 に対しても同様に適用される。第1の電極204 は一般的に第1の部分216 と第2の部分218 とを有している。第2の電極206 は一般的に第1の部分220 と第2の部分222 とを有している。
【0035】
第1の電極204 の第1の部分216 は抵抗素子202 の第1の端部212 において抵抗素子202 の上部表面208 上に直接配置され、或いは電気的に接触している。第1の電極204 の第2の部分218 は抵抗素子202 の第2の端部214 において抵抗素子202 の下部表面210 上に直接配置され、或いは電気的に接触している。第1の部分216 と第2の部分218 とは第1サイド電極226 により電気的に接続されている。第1のサイド電極226 は導電性のプレートであり、抵抗素子202 の上部表面208 と下部表面210 との間に延在している。第1サイド電極226 は抵抗素子202 の第1端部212 と第2の端部214 とのほぼ中間位置で第1側面230 の第1の凹部228 内に位置している。第1のサイド電極226 は第1の電極204 の第1の部分216 および第2の部分218 と一体にされることができ、或いは第1の部分216 および第2の部分218 の両者に導電接触して配置された別個の導電性部材であってもよい。
【0036】
第2の電極206 は第1の電極204 と実質的に類似した形状を有し、抵抗素子202 に関して第1電極204 とは方向が反対で実質的に類似した方法で方向性を定められている。特に、第2の電極206 の第1の部分220 は抵抗素子202 の第2の端部214 で抵抗素子202 の上部表面208 上に直接位置され、または電気的に接触している。第2の電極206 の第2の部分222 は抵抗素子202 の第1の端部212 で抵抗素子202 の下部表面210 上に直接位置され、または電気的に接触している。それらの第1の部分220 と第2の部分222 は第2のサイド電極236 によって電気的に接続されている。第2のサイド電極236 は第1のサイド電極226 と類似しており、抵抗素子202 の上部表面208 と下部表面210 との間に延在する導電性のプレートである。第2のサイド電極236 は第1の端部212 と第2の端部214 とのほぼ中間に位置し、抵抗素子202 の第2の側面の第2の凹部234 内に位置している。第2のサイド電極236 は第1の部分220 および第2の部分222 と一体に形成されることができ、或いは第1の部分220 および第2の部分222 と導電接触して配置された別個の導電性部材であってもよい。
【0037】
第1の電極204 の第1の部分216 は抵抗素子202 の上部表面上で第1の間隙または切込みマーク240 によって第2の電極206 の第2の部分220 から分離されている。同様に、第2の電極206 の第2のの部分222 は抵抗素子202 の下部表面210 上で第2の間隙または切込みマーク242 によって第1の電極204 の第2の部分218 から分離されている。
【0038】
図10および11を付加的に参照すると、電流を抵抗素子202 を通ってPTC装置200 に伝送するために端子電極204 と206 において電源238 とPTC装置200 との間に電気接触が形成されている。第1の電極204 と第2の電極206 の抵抗素子202 に関してオーバーラップした方向は、抵抗素子202 内に2つの実効抵抗領域ER5 およびER6 を形成する。これら2つの実効抵抗領域ER5 およびER6 を抵抗素子202 を通過する電流が流れる。実効抵抗領域ER5 は第1の電極204 の第1の部分216 と第2の電極206 の第2の部分222 との間に位置する抵抗素子202 の部分で形成される。実効抵抗領域ER6 は第2の電極206 の第1の部分220 と第1の電極204 の第2の部分218 との間に位置する抵抗素子202 の部分で形成される。
【0039】
図11に示されているように、2つの実効抵抗領域ER5 およびER6 は互いに電気的に並列である。実効抵抗領域ER5 およびER6 の間の並列抵抗は抵抗素子202 に関する電極204 と206 の方向による。特に、並列抵抗は抵抗素子202 の上下表面208 と210 の間の電極204 と206 の交差によって与えられる。その理由は両方の電極204 と206 が抵抗素子202 の全長に延在しているからである。
【0040】
PTC装置200 に対する種々の変形もまた本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、第1の電極204 と第2の電極206 は、第1の電極204 と第2の電極206 のそれぞれが抵抗素子202 の上部表面208 と下部表面210 の両者と電気的に接触し、また第1の電極204 の第1の部分216 が第2の電極206 の第2の部分218 と対向しており、第2の電極206 の第1部分220 が第1の電極204 の第2の部分218 と対向しているかぎり、種々の異なった形状および寸法であることができる。さらに、第1の電極204 と第2の電極206 のそれぞれが電源238 と接続するのを容易にするために端子(図示せず)を備えることができる。さらに多数の装置200 が並列に結合されてさらに低い抵抗を有する構造体を提供することができる。装置200 は任意の適当な方法によって並列に結合されることができる。例えば、多数のPTC装置は直接互いに並列に固定され、および、または以下説明する構造体500 と類似して端子により並列に組合わされることができる。
【0041】
図12乃至15をさらに参照すると、本発明の付加的な実施形態によるPTC回路保護装置が符号300 で示されている。この装置300 は一般的にppPTC抵抗素子302 と、第1の電極304 と、第2の電極306 とを備えている。装置300 は第1の電極304 と第2の電極306 の形状および、または設計が装置200 の第1の電極204 と第2の電極206 の形状および、または設計と異なっていることを除いては装置200 と類似している。装置200 と同様に、PTC装置300 は、通常のPTC装置の抵抗と比較して正常の動作状態下でPTC装置300 の全体の抵抗を減少させるために抵抗素子302 の主要部を含む2つの並列の実効抵抗領域を有している。
【0042】
ポリマー抵抗素子302 は一般的に上部表面308 と、下部表面310 と、第1端部312 と、第1の端部312 と反対側の第2の端部313 と、第1の側面316 と、第2の側面318 とを有している。抵抗素子302 は上述した抵抗素子102 と実質的に類似しており、それ故、上述した抵抗素子102 に関する説明は抵抗素子302 に対しても同様に適用される。
【0043】
第1電極304 は一般的に第1の部分320 と第2の部分322 とを有している。第1の部分320 は抵抗素子302 の上部表面308 上に直接配置され、或いは電気的に接触している。第1の部分320 は上部表面308 の第2の端部313 および第2の側面318 に沿ってほぼL字形で延在しいる。第2の部分322 は抵抗素子302 の下部表面310 上に直接配置され、或いは電気的に接触しており、抵抗素子302 の第1の側面316 と第1端部312 の付近で下部表面310 一部を横切って延在している。
【0044】
第1の部分320 と第2の部分322 とは第1のサイド電極324 により電気的に接続されている。第1のサイド電極324 は導電性のプレートであり、抵抗素子302 の上部表面308 と下部表面310 との間に延在している。第1のサイド電極324 は抵抗素子302 の第1の端部312 の第1凹部326 内に位置している。第1のサイド電極324 は第1の部分320 および第2の部分322 と一体に形成されることができ、或いは第1の部分320 および第2の部分322 の両者と導電接触した配置された別個の導電性部材であってもよい。
【0045】
第2の電極306 は第1の電極304 の形状と実質的に類似した形状を有であるが第1の電極304 の方向とは反対の方向である。特に、第2の電極306 は一般的に第1の部分328 と第2の部分330 とを有している。第1の部分328 は抵抗素子302 の上部表面308 上に直接配置され、或いは電気的に接触している。第1の部分328 は抵抗素子302 の上部表面308 の一部に沿って第1の端部312 から第2の電極306 付近まで延在しいる。第2の電極306 の第1の部分328 は第1の電極304 の第1の部分320 によって境界を定められ、間隙または切込みマーク332 によって第1の部分320 から分離されている。
【0046】
第2の電極306 の第2の部分330 は抵抗素子302 の下部表面310 上に直接配置され、または電気的に接触している。この第2の部分330 は下部表面310 の第2の端部313 および第2の側318 に沿ってほぼL字形で延在している。第2の部分330 は第2の切込みマーク334 によって第2の部分322 から分離されている。
【0047】
第2の電極306 の第1の部分328 と第2の部分330 は第2のサイド電極336 により電気的に接続されている。第2のサイド電極336 は導電性プレートであり、抵抗素子302 の上部表面308 と下部表面310 との間に延在している。第2のサイド電極336 は抵抗素子302 の第1の側面に沿って配置されている。第2のサイド電極336 は抵抗素子302 の第1の側面316 の第2の凹部338 内に位置している。第2のサイド電極336 は第1の部分328 および第2の部分330 と一体にされることができ、或いは第1の部分328 および第2の部分330 の両者と導電接触して配置された別個の導電性部材であってもよい。
【0048】
特に、図14および15を参照すると、PTC装置300 へ抵抗素子302 を通って電流を伝送するために端子304 と306 において電源340 とPTC装置300 との間に電気接続が形成される。第1電極304 と第2の電極306 の抵抗素子302 に関する方向は2つの実効抵抗領域ER7 とER8 とを形成し、これらの2つの実効抵抗領域ER7 とER8 とにおいて電流が抵抗素子302 を通過する。
【0049】
図15に示されているように、2つの実効抵抗領域ER7 およびER8 は互いに電気的に並列である。実効抵抗領域ER7 およびER8 の間の並列抵抗は抵抗素子302 に関する電極304 と306 の方向による。特に、並列抵抗は抵抗素子302 の上下表面308 と310 の間の電極304 と306 の交差によって与えられる。その理由は両方の電極304 と306 が抵抗素子302 の全長に延在しているからである。
【0050】
PTC装置300 に対する種々の変形もまた本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、第1の電極304 と第2の電極306 は、第1の電極304 と第2の電極306 のそれぞれが抵抗素子302 の上部表面308 と下部表面310 の両者と電気的に接触し、また第1の電極304 の第1の部分320 が第2の電極306 の第2の部分330 と対向しており、第2の電極306 の第1の部分328 が第1の電極304 の第2の部分322 と対向しているかぎり、種々の異なった形状および寸法であることができる。さらに、第1の電極304 と第2の電極306 のそれぞれを電源340 と接続するのを容易にするために端子(図示せず)を備えることができる。
【0051】
図16をさらに参照すると、それぞれPTC装置300 と同一である2つのPTC装置300Aと300Bは組合わされて端子板400 上に設置されて、多重チップPTCまたは積層PTC回路保護装置構造体500 が形成されている。以下説明するように、構造体500 は2つのPTC装置300Aと300Bが並列に組合わされているために単一のPTC装置300 よりも正常の動作状態下で低い抵抗を有している。さらに、端子板400 は保護される装置と構造体500 との接続を容易にし、或いは電源と保護される装置との間の電流通路に沿った接続を容易にする。
【0052】
端子板400 は第1の端子部分402 と第2の端子部分404 とを備えている。第1の端子部分402 はL字形状を有しており、それは第1の電極304 の第1の部分320 および第2の電極306 の第2の部分330 の形状に近似している。第1の端子部分402 はPTC装置300 の第1の凹部326 よりも広い端子凹部406 を備えている。第2の端子部分404 は第2の電極306 の第1の部分328 と第1の電極304 の第2の部分322 の形状に近似している。
【0053】
第1の端子部分402 と第2の端子部分404 は互いにずれてそれら第1の端子部分402 と第2の端子部分404 との間に空間またはスリット408 が形成されている。回路保護装置300 により覆われた端子板400 の区域において、スリット408 は第1および第2の切込みマーク332 /334 の寸法および形状に近似するような寸法および形状にされている。回路保護装置300 により覆われていない端子板400 の区域においては、端子板400 は第1の端子部分402 および第2の端子部分404 の凹部により規定された円形開口409 を含んでいる。第1の端子部分402 および第2の端子部分404 中のディテール410 はスリット408 の形状を付加的に規定している。このディテール410 および円形開口409 は端子板400 と用途により保護されるべき電気装置との間の共同動作を容易にする。端子板400 は銅または青銅のような任意の適当な導電材料で形成されることができる。
【0054】
図17および18は組立てられた構造体500 を示している。PTC装置300Aは、第1の電極304 の第1の部分320 が端子板400 の第1の端子部分402 と電気的に接触し、第2の電極306 の第1部分328 が端子板400 の第2の端子部分404 と電気的に接触するような方向で配置されている。PTC装置300Bは、第2の電極306 の第2の部分330 が端子板400 の第1の端子部分402 と電気的に接触し、第1の電極304 の第2の部分322 が端子板400 の第2の端子部分404 と電気的に接触するような方向で配置されている。
【0055】
電流は端子板400 を通ってPTC装置300Aと300Bへ供給され、その端子板400 は第1の端子部分402 と第2の端子部分404 において電源に接続されている。PTC装置300Aと300Bは端子板400 上のそれらの位置および方向によって電気的に並列である。PTC装置300Aと300Bが並列であるために、正常の動作温度における構造体500 の全体の抵抗は同じ寸法の抵抗素子を有するPTC装置300 の抵抗のほぼ2分の1である。
【0056】
付加的なPTC装置300 がPTC装置300Aと300Bの一方または双方に取付けられて、3以上のPTC装置300 が並列に設けられて、正常の動作温度における構造体500 の全体の抵抗をさらに減少させることができる。例えば、構造体500 が3個のPTC装置300 を有している場合には、構造体500 の全体の抵抗はほぼ3分の1であり、構造体500 が4個のPTC装置300 を有している場合には、構造体500 の全体の抵抗はほぼ4分の1である。2個のPTC装置300 が互いに重ねて直接積層されている場合には、端子板400 に直接固定されないで他のPTC装置300 に取付けられている装置300 は若干変形されて、2つの隣接する装置300 の第2の切込みマーク334 は少なくとも実質上互いに整列していることが好ましい。
【0057】
図19、20、および21は本発明の別の実施形態による別の多重チップPTC装置または積層PTC装置構造体600 を示している。この構造体600 は複数のPTC装置604 を有している。この構造体600 は正常の動作状態では単一の通常のPTC装置よりも低い抵抗を示す利点を有している。何故ならば、複数のPTC装置604 が並列に結合されて抵抗素子の大部分を含む実効抵抗領域を有しているからである。
【0058】
構造体600 は1個の端子602 と、4個の回路保護装置604a、604b、604c、604dを備えている。端子602 は第1の端子部分606 と第2の端子部分608 とを有している。第1の端子部分606 は第1の貫通孔610 を有し、第2の端子部分608 は第2の貫通孔612 を有している。第1の端子部分606 と第2の端子部分608 とは一体ではなく分離されている。
【0059】
PTC装置604a、604b、604c、604dはそれぞれ第1の電極614a乃至d と第2の電極616a乃至d を備えている。電極614A乃至D と電極616a乃至d とはそれぞれ切込みマーク618A乃至D によって分離されている。PTC装置604 はPTC装置300 と実質上類似している。PTC装置604 とPTC装置300 との実質上の相違点は、図に示されているようにPTC装置604 の電極614 および616 がPTC装置300 の電極304 および306 と形状が異なっていることである。
【0060】
PTC装置604 は、第2のPTC装置604bの第2の電極616bと第3のPTC装置604cの第1の電極614cとが第1の端子部分606 の反対側と電気的に接触している。さらに、PTC装置604bの第1の電極614bと第3のPTC装置604cの第2の電極616cとが第2の端子部分608 と電気的に接触している。切込みマーク618a' は切込みマーク618bと少なくとも実質上整列され、切込みマーク618c' は切込みマーク618dと少なくとも実質上整列されている。
【0061】
構造体600 は種々の用途に使用されることができるが、特に電池の保護装置として使用するのに適している。構造体600 と電池のような保護される装置との間の電気接続は第1の端子部分606 と第2の端子部分608 の両部分において行われる。PTC装置300 と同様に、第1の電極614 と第2の電極616 の位置および形状は、抵抗素子の2つの並列の実効抵抗領域を有するそれぞれのPTC装置604 を提供し、したがって、正常の動作温度において個々の各PTC装置604 の抵抗を減少させる。上述した構成の端子602 に関する多数の装置の組合わせはPTC装置604 を互いに並列に配置して、正常の動作温度において構造体600 の全体の抵抗を減少させる。
【0062】
PTC装置100, 200, 300, 500, 600 は種々の通常のプロセス、装置、および技術を使用して製造されることができる。例えば、PTC装置100 は多数のPTC100 を製造するために使用されることができるプロセスによりしばしば製造される。特に、抵抗素子102 は最初にニッケル被覆銅箔のような導電材料の2枚のシートの間に押し出され、またはプレスされる。その後、機械的または化学的エッチングのような適当な技術を使用して装置100 の間隙122 および123 の領域を除去し或いは切込んで電極104 乃至110 を形成する。1以上の個々のPTC装置100 は通常の機械的または化学的切断技術を使用して金属シートから切断される。
【0063】
PTC装置200 は多少の相違はあるがPTC100 と実質的に同様の方法で製造される。最初に第1および第2の電極204, 206が第1および第2のサイド電極226, 236によって製造処理中に接合される。これはPTC装置200 に2つの穴を機械的パンチすることにより第1および第2の凹部228 および234 を形成することによって行われる。凹部228 および234 はその後第1のサイド電極226 およぴ第2のサイド電極232 と共にメッキされて第1の電極204 の第1の部分216 が第2の部分218 に接合され、第2の電極206 の第3の部分が第2の部分222 に接合される。次に、装置200 は異なった方向にエッチングされて切込みマーク240 および242 が形成される。サイド電極226 と236 はまた、別々のサイド電極を使用する代わりに電極を接続するために、抵抗素子102 を横切ってシートの部分を曲げることによってニッケル被覆銅シートから直接形成されることができる。
【0064】
装置300 は実質的に同様の方法で製造されるが、相違点は第1および第2の凹部326 および338 の位置が異なっており、また第1および第2の切込みマーク332 および334 の位置が異なっていることである。
【0065】
構造体500 を形成するために、PTC装置300Aおよび300Bは任意の適当な方法で上述した方向で端子板400 に固定され、それによりハンダ付けのような方法でPTC装置300A/300Bと端子板400 との間の電気的接続を可能にする。製造プロセス中にチップまたはウエブ(図示せず)が円形開口409 内に挿入され、PTC装置300Aおよび300Bが端子板400 に取付けられる前に第1および第2の端子位置402 および404 を保持する。
【0066】
構造体600 は構造体500 と実質的に同様の方法で製造される。PTC装置604a、604b、604c、604dはPTC装置300 と実質的に同様の方法で製造されるが、相違点は電極614 および616 の寸法および方向が異なっていることである。PTC装置604aおよび604bはハンダ付けその他の適当な技術により互いに電気的に接続されて固定される。さらに、PTC装置604aと604bの組合わせおよびPTC装置604cと604dの組合わせはハンダ付けその他の適当な技術を使用して前述したような方向で端子602 に電気的に接続されて固定される。製造プロセス中に第1および第2の端子部分606 および608 の位置を保持するために、端子部分606 および608 は第1および第2の貫通孔610 および612 において適当なマウントにより支持される。完成した構造体600 はその後、第1および第2の端子部分606 および608 において電気接続により適切な電子装置中に設置されることができ、電子装置の電源システムを過大な電流に対して保護することができる。
【0067】
PTC装置100, 200, 300, 500, 600 は種々の異なった電子装置で使用されて装置を過大な電流から保護することができる。例えば、PTC装置100, 200, 300, 500, 600 は窓の開閉用のモータ、座席駆動モータ、日除け駆動モータ、ドアロックモータ、トランク引き下げモータその他の過大な電流から保護する必要のある任意の装置で使用されることができる。
【0068】
上述したように、本発明は、PTC装置の抵抗を低下させるためにPTC抵抗素子の大部分を含む実効抵抗領域ERを有する改良されたPTC装置を提供する。PTC装置の抵抗をさらに低下させるために、多数の装置は互いに電気的に並列である多数の実効抵抗領域を含んでいる。多重PTC装置は端子を介して接合されてさらに抵抗の減少されたPTC回路保護構造体を提供することができる。
【0069】
本発明の説明は本質的に単なる例示であり、したがって、本発明の精神から逸脱しない変形は本発明の技術的範囲に含まれることを意図している。そのような変形は本発明の技術的範囲を逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来技術のPTC装置の斜視図。
【図2】図1のPTC装置の平面図。
【図3】図1のPTC装置の実効抵抗領域の概略回路図。
【図4】本発明の1実施形態によるPTC装置の斜視図。
【図5】図4のPTC装置の分解図。
【図6】図4のPTC装置の平面図。
【図7】図4のPTC装置の実効抵抗領域の概略回路図。
【図8】本発明の別の実施形態によるPTC装置の斜視図。
【図9】図8のPTC装置の分解図。
【図10】図8のPTC装置の平面図。
【図11】図8のPTC装置の実効抵抗領域の概略回路図。
【図12】本発明の追加の実施形態によるPTC装置の斜視図。
【図13】図12のPTC装置の分解図。
【図14】図13のPTC装置の平面図。
【図15】図12のPTC装置の実効抵抗領域の概略回路図。
【図16】本発明の1実施形態によるPTC構造体の分解図。
【図17】図16のPTC構造体の組立てられた状態の斜視図。
【図18】図16のPTC装置構造体の付加的な詳細図。
【図19】本発明の別の実施形態によるPTC構造体の斜視図。
【図20】図19のPTC構造体の分解図。
【図21】図19のPTC構造体の付加的な詳細図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面とを有し、温度に応答してその電気抵抗が変化するポリマー抵抗素子と、
前記第1の表面と電気的に接触している第1の電極と、
前記第2の表面と電気的に接触している第2の電極とを具備し、
前記第1の電極と前記第2の電極とは前記ポリマー抵抗素子によって互いに電気的に接続され、
前記ポリマー抵抗素子は第1の実効抵抗領域と第2の実効抵抗領域とを有し、前記第1の実効抵抗の域は前記第2の実効抵抗領域と電気的に並列に接続されている回路保護装置。
【請求項2】
前記ポリマー抵抗素子はポリオレフィン材料とカーボンブラック粒子とから構成されている請求項1記載の回路保護装置。
【請求項3】
前記ポリマー抵抗素子は第1の温度における第1の電気抵抗値と、第2の温度における第2の電気抵抗値とを有し、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高い温度であり、前記第1の電気抵抗値は前記第2の電気抵抗値よりも低い電気抵抗値を有している請求項1記載の回路保護装置。
【請求項4】
前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方はニッケル被覆された銅箔の電極である請求項1記載の回路保護装置。
【請求項5】
前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方は端子を含んでいる請求項1記載の回路保護装置。
【請求項6】
前記第1の実効抵抗領域は前記第1の電極の第1の部分と前記第2の電極の第1の部分との間にある請求項1記載の回路保護装置。
【請求項7】
前記第2の実効抵抗領域は前記第1の電極の第2の部分と前記第2の電極の第2の部分との間にある請求項1記載の回路保護装置。
【請求項8】
前記第1の電極は、前記抵抗素子の前記第1の表面と電気的に接触している第1の部分と、前記抵抗素子の前記第2の表面と電気的に接触している第2の部分とを備え、
前記第2の電極は、前記抵抗素子の前記第1の表面と電気的に接触している第1の部分と、前記抵抗素子の前記第2の表面と電気的に接触している第2の部分とを備え、
前記第1の実効抵抗領域は前記第1の電極の第1の部分と前記第2の電極の第1の部分との間にあり、
前記第2の実効抵抗領域は前記第1の電極の第2の部分と前記第2の電極の第2の部分との間にある請求項1記載の回路保護装置。
【請求項9】
前記第1の電極の前記第1の部分および前記第2の部分は第1のサイド電極によって電気的に接続され、
前記第2の電極の前記第1の部分および前記第2の部分は第2のサイド電極によって電気的に接続され、
前記第1の電極と前記第2の電極とは前記抵抗素子の厚さにわたっている請求項8記載の回路保護装置。
【請求項10】
複数の前記回路保護装置が電気的に並列に接続されている請求項1記載の回路保護装置。
【請求項11】
前記複数の回路保護装置は端子で電気的に並列に接続されている請求項10記載の回路保護装置。
【請求項12】
上部表面と、下部表面と、第1の端部と、第1の端部と反対側の第2の端部とを有し、温度変化に応答してその電気抵抗が変化するポリマー抵抗素子と、
前記上部表面と電気的に接触している第1の部分と、前記下部表面と電気的に接触している第2の部分とを有している第1の電極と、
前記下部表面と電気的に接触している第1の部分と前記上部表面と電気的に接触している第2の部分とを有している第2の電極とを具備し、
前記第1の電極の前記第1の部分は前記第2の電極の前記第1の部分と対向し、電気的に接続されており、
前記第1の電極の前記第2の部分は前記第2の電極の前記第2の部分と対向し、電気的に接続されており、
前記第1の電極の前記第1の部分と前記第2の部分とは前記抵抗素子の前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置された第1のサイド電極により電気的に接続され、
前記第2の電極の前記第1の部分と前記第2の部分とは前記抵抗素子の前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置された第2のサイド電極により電気的に接続されている回路保護装置。
【請求項13】
前記ポリマー抵抗素子はポリオレフィン材料とカーボンブラック粒子とから構成されている請求項12記載の回路保護装置。
【請求項14】
前記ポリマー抵抗素子は低い温度における第1の電気抵抗値と、高い温度における第2の電気抵抗とを有し、前記第1の電気抵抗値は前記第2の電気抵抗値よりも低い抵抗値を有している請求項12記載の回路保護装置。
【請求項15】
前記第1の電極の第1の部分と前記第2の電極の第1の部分との間にある第1の実効抵抗領域と、
前記第1の電極の第2の部分と前記第2の電極の第2の部分との間にある第2の実効抵抗領域と備え、
前記第1の実効抵抗領域は前記第2の実効抵抗領域と電気的に並列である請求項12記載の回路保護装置。
【請求項16】
前記第1のサイド電極と前記第2のサイド電極の少なくとも一方は、前記第1の電極と前記第2の電極にそれぞれ電気的に接続されている別々の部品である請求項12記載の回路保護装置。
【請求項17】
複数の前記回路保護装置は電気的に並列に接続されている請求項12記載の回路保護装置。
【請求項18】
複数の前記回路保護装置は導電性の端子によって電気的に並列に接続されている請求項12記載の回路保護装置。
【請求項19】
上部表面と下部表面とを有し、温度に応答してその電気抵抗が変化するポリマー抵抗素子と、
前記上部表面と電気的に接触している第1の電極と、
前記上部表面と電気的に接触している第2の電極と、
前記下部表面と電気的に接触している第3の電極と、
前記下部表面と電気的に接触している第4の電極とを具備し、
前記1の電極は前記第3の電極および前記第4の電極の両者と重なり、それらと電気的に接触しており、
前記2の電極は前記第3の電極および前記第4の電極の両者と重なり、それらと電気的に接触しており、
回路保護装置は第1の実効抵抗領域と第2の実効抵抗領域と有しており、前記第2の実効抵抗領域は第1の実効抵抗領域と電気的に並列に接続されている回路保護装置。
【請求項20】
さらに、第3の実効抵抗領域と第4の実効抵抗領域と有し、前記第3の実効抵抗領域は前記第1の実効抵抗領域と電気的に直列に接続されており、前記第4の実効抵抗領域は前記第2の実効抵抗領域と電気的に直列に接続されており、前記第2の実効抵抗領域と前記第3の実効抵抗領域とは互いに電気的に並列に接続されている請求項19記載の回路保護装置。
【請求項21】
前記ポリマー抵抗素子はポリオレフィン材料とカーボンブラック粒子とから構成されている請求項19記載の回路保護装置。
【請求項22】
前記ポリマー抵抗素子は低い温度における第1の電気抵抗値と、高い温度における第2の電気抵抗値とを有し、前記第1の電気抵抗値は前記第2の電気抵抗値よりも低い抵抗値を有している請求項19記載の回路保護装置。
【請求項23】
前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方は銅箔で被覆された電極である請求項19記載の回路保護装置。
【請求項24】
前記第1の実効抵抗領域は前記第1の電極と前記第3の電極との間の前記ポリマー抵抗素子の部分である請求項19記載の回路保護装置。
【請求項25】
前記第2の実効抵抗領域は前記第2の電極と前記第4の電極との間の前記ポリマー抵抗素子の部分である請求項19記載の回路保護装置。
【請求項26】
複数の前記回路保護装置は電気的に並列に接続されている請求項19記載の回路保護装置。
【請求項27】
複数の前記回路保護装置は導電性の端子によって電気的に並列に接続されている請求項19記載の回路保護装置。
【請求項28】
第1の実効抵抗領域と、その第1の実効抵抗領域と電気的に並列に接続されている第2の実効抵抗領域と有する抵抗素子を具備している回路保護装置の製造方法において、
上部表面と下部表面とを有し、環境変化に応答して電気抵抗を変化させるポリマー抵抗素子を形成し、
前記上部表面および前記下部表面と電気的に接触して第1の電極を配置し、
前記上部表面および前記下部表面と電気的に接触して第2の電極を配置する回路保護装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−190981(P2006−190981A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−337165(P2005−337165)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(504144507)サーム−オー−ディスク・インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】