説明

中子塗型設備への中子の搬入・搬出方法及び中子塗型設備

【課題】 中子を乾燥設備へ衝撃なく確実に受け渡しできるようにし、工程中に待ち時間を生じさせにくいようにする。
【解決手段】 筒状中子10の内側を搬入用チャック装置5によりクランプし塗型剤7の塗布設備へ搬送する中子搬入工程と、中子10に塗型剤7を塗布する塗型剤塗布工程と、中子10を反転させる反転工程と、反転後の中子10を乾燥設備4へ搬送する中子搬出工程とからなる中子塗型設備への中子搬入・搬出方法において、前記中子10の内側を搬出用チャック装置25によって上方からクランプし、その搬出用チャック装置25の移動により中子10を乾燥設備4へ搬送するようにした。中子10は反転状態で上方からクランプされているので、衝撃なく確実に乾燥設備4に受け渡しできる。また、上記反転工程に、反転後の中子10を載置する台座20を設ければ、後段の工程が前段の工程に待ち時間を生じさせにくくなり効率を悪化させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋳鉄管を鋳造する際、その受口部に装填する中子への塗型剤を塗布する際に使用する中子塗型設備への中子の搬入・搬出方法、及びその中子塗型設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心力鋳造は、鋳造物内部にブローホール、引け巣などの欠陥が生じ難く、材質も緻密となり、機械的性質等の良好な品質の鋳造物を円滑に得ることができる。このため、鋳鉄管においても、今日、前記良好な品質、生産性などの点からその遠心力鋳造により製造されている。
【0003】
その遠心力鋳造法による鋳鉄管Pの製造は、例えば、図6に示すように、円筒形モールド(鋳型)11をローラ12により回転し、そのモールド11内面に、取鍋13から、三角取鍋14を介して鋳込用トラフ15に溶湯aを送り込み、そのトラフ15を介して溶湯aをモールド11内に鋳込んで(注湯し)、所要厚の円筒状溶湯層(管状体)を形成することによって行うのが一般的である(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開昭54−38229号公報
【特許文献2】特開2004−58094号公報
【0004】
この遠心力鋳造法において、同図に示すように、受口1の内面1aの形成のために、中子10をモールド11の受口部分内に装着し、その中子10とモールド11内面との間(受口形成部)に溶湯aを送り込んで受口1を鋳造するようにしている。図中、符号2は挿し口である。
【0005】
その中子10には、溶湯aの焼き付けを防止して良好な鋳肌面を得るために、塗型剤が塗布される。この塗型剤の塗布には、中子10の表面強度の向上や表面組織の改質を図り得るという効能もある。
【0006】
塗型剤の塗布に際し、例えば、図7に示すように、筒状を成す中子10の内周部10cをチャック装置5の爪5aで掴んで、その状態で中子10を塗型剤槽6に溜めた塗型剤7に浸漬させる、所謂、どぶ漬け法が採用されている。
この手法において、例えば、図8に示すように、中子造型機3から取り出された中子10を上記のように塗型剤槽6に浸漬させて取出した後(図中の矢印a,b,c,d参照)、その塗布面の余分な塗型剤(液溜まり)7を除去するための塗型剤7の液切り(垂れ切り)を適宜行い、その後、塗布した塗型剤7を乾かすための乾燥設備4に送られる。
【0007】
塗型剤7が塗布された中子10が乾燥設備4に運ばれる際、中子10の筒軸方向内側端面(受口1内に入り込む側の端面)10aに塗布された塗型剤7はまだ乾いていない状態であるので、図8に示すように、その中子10を上下反転させて乾燥炉に通じるコンベヤ4a上に載置する(図中の矢印e,f,g参照)。このように反転させることにより、中子10は、塗型剤7が塗布されていない筒軸方向外側端面10bがコンベヤ4aに接することになり、塗布面を傷めることなく良好な表面仕上がりとすることができる。
【0008】
なお、例えば、特許文献3には、中子への塗型剤の塗布をどぶ漬け法によらず、中子の外面に塗型剤を噴射する手法によって行った後、上記と同様、中子を上下反転させた状態で中子搬出装置により搬送し、さらに、乾燥設備へ受け渡しする搬送方法の技術が開示されている。
この搬送方法において、塗型剤塗布後の中子10は、図9に示すように、中子搬出装置を構成する対の挟持部材16の下端に設けられた対の横桟16a,16aが上記外側端面10bに接することにより、その横桟16a,16aによって下方から支えられた状態で、乾燥設備4へと搬送されるようになっている。
【0009】
中子10を乾燥設備4のコンベヤ4aへ受け渡す際には、まず、上記挟持部材16,16を互いに離間させる方向に移動させて、横桟16a,16aを中子10の下方空間から退去させるとともに、同時に、エアシリンダ17のロッド17aを伸長駆動することにより、対の挟持板18,18により中子10の側面を両側から挟んで保持する。つぎに、横桟16a,16aが中子10の下方空間から完全に退去すれば、その中子10を所定高さに微調整した後、前記対の挟持板18,18同士を少し離間させることにより、その中子10をコンベヤ4a上に載置し、確実に受け渡すことができる。
【特許文献3】特開平9−168851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記手法によれば、中子10を乾燥設備4に受け渡すに際し、上記中子10の下面を支える横桟16a,16a、中子10の側面を挟んで支持する挟持板18,18の複数の機構を併せて用いなければならないので、その装置の構造が複雑になる。
仮に、上記横桟16a,16aのみを使用して中子10の受け渡しを行うと、その横桟16a,16a同士を離間させて中子10をコンベヤ4a上に載置する際に、中子10に衝撃が加わりやすいので好ましくない。
【0011】
また、その中子10の乾燥設備4への受け渡しが終了するまで、中子搬出装置は、塗型剤槽6から引き上げられた次なる中子10を受け取ることができない。このため、その間、前段の塗型剤を塗布する工程等が止まってしまうという問題もある。一部の工程が他の工程に待ち時間を生じさせ、塗型設備全体の工程の効率を悪化させることは好ましくない。
【0012】
そこで、この発明は、塗型剤塗布工程を終えた中子を乾燥設備へ衝撃なく確実に受け渡しできるようにすることを第一の課題とし、その一部の工程が他の工程に待ち時間を生じさせにくいようにすることを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第一の課題を解決するために、この発明は、塗型剤を塗布した後の中子を上下反転させ、その反転状態の中子の内側をチャック装置により上方からクランプし、そのクランプ状態で乾燥設備へ搬送する手段を採用したものである。
このようにすれば、中子は反転状態で上方からクランプされているので、その反転状態のまま乾燥設備へ搬送し所定の位置でアンクランプすれば、衝撃なく確実に受け渡しできる。
【0014】
また、上記第二の課題を解決するための、この発明は、上下反転させた中子を台座の上に載置し、乾燥設備への搬送の際、上記チャック装置は、その台座の上に載置された中子をクランプし搬送する手段を採用したものである。
このようにすれば、塗型剤を塗布する工程、及び中子を反転させる工程と、その後段の中子を乾燥設備へ搬送する工程とが別々に稼働することができるので、一部の工程が他の工程に待ち時間を生じさせにくくなり、塗型設備全体の工程の効率を悪化させないようにし得る。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、塗型剤を塗布した後の中子を上下反転させ、その反転状態の中子の内側をチャック装置により上方からクランプし、そのクランプ状態で乾燥設備へ搬送するようにしたので、中子を乾燥設備へ衝撃なく確実に受け渡しできる。
【0016】
また、この発明は、塗型剤を塗布した後の中子を上下反転させ、その反転状態の中子を台座の上に載置し、乾燥設備への搬送の際、チャック装置が、その台座の上に載置された中子をクランプし搬送するようにしたので、一部の工程が他の工程に待ち時間を生じさせにくくなり、塗型設備全体の工程の効率を悪化させない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記手段の実施形態として、造型機から取り出された筒状を成す鋳鉄管鋳造用の中子の内側を搬入用チャック装置によりクランプし塗型剤の塗布設備へ搬送する中子搬入工程と、その塗布設備により前記中子に対し、その筒軸方向外側端面が上向きの状態で塗型剤を塗布する塗型剤塗布工程と、その塗型剤を塗布した後の前記中子を、前記筒軸方向外側端面が下向きになるよう反転させる反転工程と、前記中子を前記反転状態で乾燥設備へ搬送する中子搬出工程とからなる中子塗型設備への中子搬入・搬出方法において、下記の構成を採用した。
すなわち、上記中子搬出工程は、上記搬入用チャック装置とは別の搬出用チャック装置によって上記反転状態の中子の内側を上方からクランプし、その搬出用チャック装置が移動することにより前記中子を上記乾燥設備へ搬送する構成である。
【0018】
このようにすれば、中子はその筒軸方向外側端面が下向きに反転した状態で、搬出用チャック装置により上方からクランプされているので、その反転状態のまま乾燥設備へ搬送して所定の位置でアンクランプすれば、乾燥設備へ衝撃なく確実に受け渡しできる。
【0019】
上記の構成において、塗型剤塗布工程は、上記搬入用チャック装置によりクランプした状態の中子に対し上記塗型剤を塗布するものとし、上記反転工程は、前記中子をクランプした状態における前記搬入用チャック装置を水平軸周りに回動させることによりその中子を反転させるようにしてもよい。中子の反転工程は、塗型剤塗布工程で用いる搬入用チャック装置とは別の装置としてもよいが、このように搬入用チャック装置に反転機能を設ければ、両工程の動作が一体的、連続的となってより効率的である。
【0020】
さらに、上記塗型剤塗布工程は、上記搬入用チャック装置によりクランプした中子を塗型剤槽内に溜めた塗型剤に浸漬するとともに、その中子を引き上げた後、前記搬入用チャック装置を水平軸周りに回動させて前記中子の筒軸方向を傾け、その傾けた中子を前記塗型剤槽上で筒軸周りに回転させて液切りを行うようにしてもよい。
所謂、どぶ漬け法を採用した場合において、上記搬入用チャック装置に反転機能が設けられていれば、中子を引き上げた後、前記搬入用チャック装置を水平軸周りに回動させて前記中子を傾けた状態に維持できるようにし、さらに、その傾けた中子を前記塗型剤槽上で筒軸周りに回転できるようにすれば、塗型剤の液切り工程と上記反転工程との動作が一体的、連続的となってさらに効率的である。
【0021】
また、上記反転工程は、上記中子を反転させた後、その中子を、上向きに設けた台座上へ載置し、上記中子搬出工程は、前記台座上に載置された中子を上記搬出用チャック装置によりクランプするようにした構成を採用し得る。
このようにすれば、上記塗型剤塗布工程、及び反転工程と、その後段の中子搬出工程とが別々に稼働することができるので、例えば、反転工程を終了した後、中子を台座上に載置しておけば、中子搬出工程の動作を待つことなく反転工程は、次なる中子に対する動作を開始することができる。このように、各工程相互間の待ち時間を少なくすることができるので、中子の乾燥設備への搬送が工程全体の効率を悪化させない。
【0022】
一方、上記中子塗型設備への中子搬入・搬出方法に使用する中子塗型設備の構成としては、下記のものを採用することができる。
【0023】
すなわち、造型機から取り出された筒状を成す鋳鉄管鋳造用の中子に塗型剤を塗布する塗布設備と、前記造型機と前記塗布設備との間を往復可能であるとともに昇降自在に支持されて前記中子の内側をクランプ可能な搬入用チャック装置と、前記塗布設備で塗型剤を塗布した後の前記中子を上下方向に反転させる中子反転装置と、前記反転した後の中子の位置と乾燥設備との間を往復可能であるとともに昇降自在に支持されて前記反転後の中子の内側をクランプ可能な前記搬入用チャック装置とは別の搬出用チャック装置とを備えた中子塗型設備の構成である。
このようにすれば、中子はその筒軸方向外側端面が下向きに反転した状態で、搬出用チャック装置により上方からクランプでき、その反転状態のまま乾燥設備へ搬送して所定の位置でアンクランプできるので、中子を乾燥設備へ衝撃なく確実に受け渡しできる。
【0024】
上記の構成において、塗布設備は、上記搬入用チャック装置によりクランプした状態の中子に対し上記塗型剤を塗布するものであり、前記搬入用チャック装置を水平軸周りに回動可動として上記中子反転装置とした構成を採用し得る。
このように搬入用チャック装置に反転機能を設ければ、搬入用チャック装置と中子反転装置とが一体的となって、装置を簡略化し得る。
【0025】
さらに、上記塗布設備は、上記搬入用チャック装置によりクランプした中子を塗型剤槽内に溜めた塗型剤に浸漬するものであって、前記塗型剤を塗布した後の中子を、その筒軸方向が傾いた状態で保持可能であるとともに、前記塗型剤槽上において、その傾けた状態の中子を筒軸周りに回転可能とした構成を採用し得る。
所謂、どぶ漬け法を採用した場合において、上記搬入用チャック装置に反転機能が設けられていれば、さらに、その搬入用チャック装置に中子を傾けた状態に維持できる機能を設けて、その傾けた中子を前記塗型剤槽上で筒軸周りに回転できるようにすれば、塗型剤の液切り機能と上記反転機能とが一体的となって、さらに便利である。
【0026】
また、上記中子反転装置に、上記反転後の中子を載置可能な上向きの台座を備えれば、上記搬入用チャック装置、中子反転装置と、その後段の搬出用チャック装置とが別々に稼働することができるので、各装置相互間の待ち時間を少なくし、工程全体が効率的に稼働し得るようになる。
【実施例】
【0027】
一実施例を図面に基づいて説明する。この実施例は、塗型剤7の塗布装置として、図7に示した中子10の外周面にどぶ漬けによって塗型剤7を塗布するものである。全体の流れを図1に示す。
【0028】
筒状を成す中子10の内側に、中子搬入装置の搬入用チャック装置5の複数の爪5aが挿入されて、その複数の爪5aの位置が外側に広がることによって内周部10cが保持されるようになっている。
中子搬入装置は、前記搬入用チャック装置5が、図2に示すように、上方に設けたレール8上を走行する台車9に軸上のラックジャッキ5cと、そのラックジャッキ5cの下端に設けた吊り具5dを介して固定されている。ラックジャッキ5cは、台車9に設けたサーボモータ9aのその出力軸と噛み合うようになっており、そのサーボモータ9aの駆動によって昇降するようになっている。また、吊り具5dは、その側方に沿うガイド部材5eによってその昇降が案内される。
【0029】
前記搬入用チャック装置5と前記吊り具5dとは、水平軸5bを介して上下方向に回動自在に取付けられている。また、その搬入用チャック装置5は、前記爪5aが筒状を成す中子10を保持した状態で、その中子10を筒軸周りに回転させる方向へ回転可能となっている。
【0030】
造型機3からビームによって取り出された中子10を上記搬入用チャック装置5で保持し、その中子10を少し上昇させる(図1及び図2の矢印A参照)。このとき、筒軸方向外側端面10bは上向き、筒軸方向内側端面10aは下向きとなっている。中子10を上昇させたら、その被塗布面をエアブローして、結合力の弱い砂を剥離する。その際、搬入用チャック装置5を回転させることにより中子10に筒軸周りの回転を与えると、砂が剥離しやすい。
中子10の表面を清掃した後、中子搬入装置を塗型剤槽6の直上まで搬送する(図1及び図2の矢印B参照)。
【0031】
その後、搬入用チャック装置5を降下させて中子10を塗型剤槽6に溜められた塗型剤7に浸漬する(図1及び図2の矢印C参照)。このとき、少なくとも内周部10c及び筒軸方向外側端面10bを除く全ての面を浸漬する。内周部10c及び筒軸方向外側端面10bは、鋳鉄管Pの製造の際、円筒状溶湯層(管状体)に直接接しない(図6参照)ので、この部分の塗型剤7の塗布を省略すれば、材料を節約することができる。
なお、この塗型剤槽6は混練槽6aと連通しており、その混練槽6aにおいて塗型剤7が所定の濃度に調整されてから塗型剤槽6内へ必要量供給されるようになっている。
【0032】
つぎに、中子10を所定時間浸漬した後、搬入用チャック装置5を上昇させて中子10を引き上げた後(図1及び図3の矢印C’参照)、その搬入用チャック装置5を水平軸5b周りに少し回動させて、中子10の筒軸方向の軸心を鉛直方向に対し傾けて液切れさせる(図3の矢印D’参照)。
このとき、その傾斜した状態で、さらに、中子10を前記軸心回りに回転させることが望ましい(図1及び図3の矢印D参照)。これは、中子10が傾むけば、中子10下方の一点が最下部となって、その最下部に塗型剤7が集まり、その集まった塗型剤7は、落下しやすくなって液切れし易くなり、中子10を回転させれば、塗型剤7は遠心力によって移動が活発となり、最下部の液切れはさらに促進され、中子10表面の余分な塗型剤7は遠心力によって塗布面上を活発に移動して、垂れ跡を残すことなく剥離されるとともに、塗布面は満遍なく均されるからである。
なお、この液切れの際、搬入用チャック装置5をレール8に沿って横方向に進退させて、中子10の最下部が塗型剤槽6の直上に来るように調整することができる。
【0033】
液切れ作業が終了すれば(塗布面が均され、垂れ跡が無くなれば)、上記搬入用チャック装置5を水平軸5b周りにさらに上方へ回動させることによりその搬入用チャック装置5を中子反転装置として機能させ、中子10を上下反転させる(図1及び図3の矢印E参照)。
その反転させた中子10の下方に、対のスライドテーブル(台座)20,20が外側から内側に向かって水平方向に進入し(図1及び図3の矢印F参照)、そのスライドテーブル20,20が、中子10の前記筒軸方向外側端面10bに接してその中子10を支持する。このスライドテーブル20,20の進退は、シリンダ等によって動作するようになっている。
このとき、中子10に塗布された塗型剤7は、そのほとんどが乾いていない状態であるため、その乾いていない状態の塗布面に触れると表面が荒れて綺麗に仕上がらない。塗布面が綺麗に仕上がらないと、鋳鉄管Pの仕上がりにも影響を及ぼしてしまう。このため、前述のように、鋳鉄管Pの製造の際、円筒状溶湯層(管状体)に直接接しない筒軸方向外側端面10bで中子10を支持することが望ましいといえる。
【0034】
中子10がスライドテーブル20,20によって支持された後、搬入用チャック装置5が中子10をアンクランプし、その搬入用チャック装置5が水平軸5b周りに下方に回動して元の状態に復帰するとともに、中子搬入装置は、造型機3からの中子取出し箇所へと戻っていく(図4の矢印B’参照)。以後、中子搬入装置は、次なる未塗布の中子10に順々に同様の工程を行っていく。中子搬入装置は、次なる中子搬出装置の動作を待たずに、次なる中子10に対応することができるので、工程相互間、装置相互間に待ち時間が発生することを防止し得る。
【0035】
つぎに、乾燥装置4に中子10を移動させる。まず、スライドテーブル20,20上に載置された中子10の上方に、中子搬出装置を移動させる。中子搬出装置は、上記搬入用チャック装置5と同様の構成からなる搬出用チャック装置25を備えており、その搬出用チャック装置25の複数の爪25aが中子10の内周部10cに挿入されて、その複数の爪25aの位置が外側に広がることによって、その内周部10cが保持されるようになっている。
【0036】
また、中子搬出装置は、中子搬入装置の場合と同様、搬出用チャック装置25が、図3及び図4に示すように、上方に設けたレール28上を走行する台車29に軸上のラックジャッキ25cと、そのラックジャッキ25cの下端において固定されている。ラックジャッキ25cは、台車29に設けたサーボモータ29aの出力軸と噛み合うようになっており、そのサーボモータ29aの駆動によって昇降するようになっている。
【0037】
搬出用チャック装置25を降下させて中子10をクランプし、そのクランプ状態で搬出用チャック装置25を上昇させて中子10をスライドテーブル20,20上から引き上げる(図1及び図4の矢印G’,G参照)。その後、台車29をレール28上に走行させて、中子搬出装置を乾燥装置4のコンベヤ4aの直上まで搬送する(図1及び図4の矢印H参照)。
【0038】
その後、搬出用チャック装置25を降下させて中子10をコンベヤ4a上に載置する(図1及び図4の矢印I参照)。中子10から搬出用チャック装置25をアンクランプした後、その搬出用チャック装置25を上昇させるとともに、中子搬出装置は、中子反転装置の箇所(スライドテーブル20の箇所)へと戻っていく(図1及び図5の矢印I’,H’参照)。以後、中子搬出装置は、次なる塗型剤塗布後の中子10に順々に同様の工程を行っていく。
【0039】
この実施例では、搬入用チャック装置5により中子10をクランプした状態で、その中子10に対し塗型剤7を塗布するようにしたが、塗布設備の構成としては、例えば、この実施例のどぶ漬け法に代えて、従来例に示すような、塗型剤7を噴射する態様のものを採用してもよい。
また、塗型剤塗布後の中子10を反転させる工程、及びその工程に用いる中子反転装置は、この実施例では、前記中子10をクランプした状態における前記搬入用チャック装置5を水平軸5b周りに回動させることによりその中子10を反転させるようにしたが、中子の反転工程は、塗型剤塗布工程で用いる搬入用チャック装置とは別の装置として設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施例の中子塗型設備への中子搬入・搬出方法の全体の工程、及びその中子塗型設備の構成を示す説明図
【図2】図1の中子搬入工程、塗型剤塗布工程、及びその中子塗型設備の搬入用チャック装置、塗型剤の塗布設備の作用を示す詳細図
【図3】図1の反転工程、及びその中子塗型設備の中子反転装置の作用を示す詳細図
【図4】図1の中子搬出工程、及びその中子塗型設備の搬出用チャック装置、乾燥設備の作用を示す詳細図
【図5】図4の中子受け渡し後の状態を示す詳細図
【図6】中子の使用状態を示す説明図
【図7】どぶ漬け法によって中子に塗型剤を塗布する際の状態を示す説明図
【図8】従来の中子塗型設備への中子搬入・搬出方法を示す説明図
【図9】従来の乾燥設備での受け渡し方法を示す説明図
【符号の説明】
【0041】
1 鋳鉄管の受口
2 同挿し口
3 造型機
4 乾燥設備
5 搬入用チャック装置
5a,25a 爪
5b 水平軸
5c,25c ラックジャッキ
5d 吊り具
5e ガイド
6 塗型剤槽
7 塗型剤
8,28 レール
9,29 台車
10 中子
10a 筒軸方向内側端面
10b 筒軸方向外側端面
10c 内周部
11 モールド
20 台座(スライドテーブル)
25 搬出用チャック装置
a 溶湯
P 鋳鉄管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造型機3から取り出された筒状を成す鋳鉄管鋳造用の中子10の内側を搬入用チャック装置5によりクランプし塗型剤7の塗布設備へ搬送する中子搬入工程と、その塗布設備により前記中子10に対し、その筒軸方向外側端面10bが上向きの状態で塗型剤7を塗布する塗型剤塗布工程と、その塗型剤7を塗布した後の前記中子10を、前記筒軸方向外側端面10bが下向きになるよう反転させる反転工程と、前記中子10を前記反転状態で乾燥設備4へ搬送する中子搬出工程とからなる中子塗型設備への中子搬入・搬出方法において、
上記中子搬出工程は、上記搬入用チャック装置5とは別の搬出用チャック装置25によって上記反転状態の中子10の内側を上方からクランプし、その搬出用チャック装置25が移動することにより前記中子10を上記乾燥設備4へ搬送するものであることを特徴とする中子塗型設備への中子搬入・搬出方法。
【請求項2】
上記塗型剤塗布工程は、上記搬入用チャック装置5によりクランプした状態の中子10に対し上記塗型剤7を塗布するものであり、上記反転工程は、前記中子10をクランプした状態における前記搬入用チャック装置5を水平軸5b周りに回動させることによりその中子10を反転させることを特徴とする請求項1に記載の中子塗型設備への中子搬入・搬出方法。
【請求項3】
上記塗型剤塗布工程は、上記搬入用チャック装置5によりクランプした中子10を塗型剤槽6内に溜めた塗型剤7に浸漬するとともに、その中子10を引き上げた後、前記搬入用チャック装置5を水平軸5b周りに回動させて前記中子10の筒軸方向を傾け、その傾けた中子10を前記塗型剤槽6上で筒軸周りに回転させて液切りを行うものであることを特徴とする請求項2に記載の中子塗型設備への中子搬入・搬出方法。
【請求項4】
上記反転工程は、上記中子10を反転させた後、その中子10を、上向きに設けた台座20上へ載置し、上記中子搬出工程は、前記台座20上に載置された中子10を上記搬出用チャック装置25によりクランプすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中子塗型設備への中子搬入・搬出方法。
【請求項5】
請求項1に記載の中子塗型設備への中子搬入・搬出方法に使用する中子塗型設備であって、造型機3から取り出された筒状を成す鋳鉄管鋳造用の中子10に塗型剤7を塗布する塗布設備と、前記造型機3と前記塗布設備との間を往復可能であるとともに昇降自在に支持されて前記中子10の内側をクランプ可能な搬入用チャック装置5と、前記塗布設備で塗型剤7を塗布した後の前記中子10を上下方向に反転させる中子反転装置と、前記反転した後の中子10の位置と乾燥設備4との間を往復可能であるとともに昇降自在に支持されて前記反転後の中子10の内側をクランプ可能な前記搬入用チャック装置5とは別の搬出用チャック装置25とを備えた中子塗型設備。
【請求項6】
上記塗布設備は、上記搬入用チャック装置5によりクランプした状態の中子10に対し上記塗型剤7を塗布するものであり、前記搬入用チャック装置5を水平軸5b周りに回動可動として上記中子反転装置としたことを特徴とする請求項5に記載の中子塗型設備。
【請求項7】
上記塗布設備は、上記搬入用チャック装置5によりクランプした中子10を塗型剤槽6内に溜めた塗型剤7に浸漬するものであって、前記塗型剤7を塗布した後の中子10を、その筒軸方向が傾いた状態で保持可能であるとともに、前記塗型剤槽6上において、その傾けた状態の中子10を筒軸周りに回転可能であることを特徴とする請求項6に記載の中子塗型設備。
【請求項8】
上記中子反転装置は、上記反転後の中子10を載置可能な上向きの台座20を備えたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の中子塗型設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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