説明

中実タイヤ及びその製造方法

【課題】
充填した合成樹脂がタイヤ本体内部にて略均一な発泡状態をなすようにし、その状態で硬化できるようにする中実タイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
中実タイヤTはタイヤ本体1とホイール2を備えている。タイヤ本体1の一方の側面には、周方向に略等間隔で四箇所に内外部を連通した空気孔11が貫通して形成してある。ホイール2のリム部20には、バルブ孔200が貫通して形成してある。ホイール2に組み付けてある状態でタイヤ本体1の内部には、合成樹脂であるウレタン樹脂が発泡させた状態で充填してある。ウレタン樹脂3は、液状のものをタイヤ本体1内部に注入後、回転台6の天板60上に載せて水平方向に回転させることにより、タイヤ本体1の内部に満遍なく行きわたり略均一な発泡状態をなして硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中実タイヤ及びその製造方法に関する。更に詳しくは、充填した合成樹脂がタイヤ本体内部にて略均一な発泡状態をなすようにし、その状態で硬化できるようにしたもの関する。
【背景技術】
【0002】
従来から草刈機やゴルフ場のカート、電動車椅子等に装着されるタイヤは、内部にウレタン等の合成樹脂が発泡させた状態で充填してあり、パンク防止を図るようにしたものが使用されている。例えば、特許文献1には、ゴム製ケーシングであるタイヤの内部に、弾性合成樹脂を発泡充填してなるソリッドタイヤが開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平6−3701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したソリッドタイヤには、次のような課題があった。
即ち、上記したものはゴム製ケーシングであるタイヤの内部に合成樹脂を連続注入するだけで製造が完成するようになっていたので、注入された合成樹脂がタイヤ内部で発泡状態に偏りが生じてしまうことがあり、この状態のまま硬化してしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、充填した合成樹脂がタイヤ本体内部にて略均一な発泡状態をなすようにし、その状態で硬化できるようにする中実タイヤ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、内部に合成樹脂が発泡させた状態で充填してある中実タイヤであって、タイヤ本体と、ホイールと、を備えており、ホイールを取り付けた状態でタイヤ本体の内部に液状の合成樹脂を充填し、当該合成樹脂はタイヤ本体を回転させた状態で硬化させてあることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、内部に合成樹脂が発泡させた状態で充填してある中実タイヤであって、タイヤ本体と、バルブ孔を有するホイールと、を備えており、ホイールを取り付けた状態でバルブ孔が上側に位置するよう設置して、タイヤ本体を傾斜させた状態でタイヤ本体の内部に液状の合成樹脂を充填し、当該合成樹脂はタイヤ本体を回転させた状態で硬化させてあることを特徴とする。
【0008】
本発明は、内部に合成樹脂が発泡させた状態で充填してある中実タイヤの製造方法であって、ホイールを取り付けた状態でタイヤ本体の内部に液状の合成樹脂を充填するステップと、タイヤ本体を回転させた状態で合成樹脂を硬化するステップと、を含む。
【0009】
タイヤ本体の内部に充填した合成樹脂は、タイヤを水平方向または実質的に水平方向に回転させた状態で硬化させることが好ましい。しかし、これは限定するものではなく、例えば、斜め方向や垂直方向(縦方向)で回転させて硬化させることもできる。
【0010】
中実タイヤの使用用途は特に限定するものではないが、例えば、草刈機、ゴルフ場のカート、電動車椅子、運搬用の台車やキャリヤー等を挙げることができる。
【0011】
なお、特許請求の範囲及び次の作用の欄では、本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与して説明している。しかし、この符号の付与はあくまで説明の理解を容易にするためであって、各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0012】
(作 用)
本発明の作用を説明する。
中実タイヤは、ホイール(2)を取り付けた状態でタイヤ本体(1)の内部に液状の合成樹脂を充填し、タイヤ本体(1)を回転させた状態で当該合成樹脂を硬化させることで製造される。
【0013】
また、中実タイヤは、ホイール(2)を取り付けた状態でバルブ孔(200)が上側に位置するよう設置して、タイヤ本体(1)を傾斜させた状態でタイヤ本体(1)の内部に液状の合成樹脂を充填し、タイヤ本体(1)を回転させた状態で当該合成樹脂を硬化させることで製造される。
【0014】
タイヤ本体(1)の内部に充填した合成樹脂は、タイヤ本体(1)を水平方向または実質的に水平方向に回転させた状態で硬化される。
【発明の効果】
【0015】
(a)本発明によれば、ホイールを取り付けた状態でタイヤ本体の内部に液状の合成樹脂を充填し、タイヤ本体を回転させた状態で当該合成樹脂を硬化させるので、合成樹脂がタイヤ本体の内部全体に満遍なく行きわたるようになる。従って、合成樹脂は、タイヤ本体の内部にて全体的に略均一な発泡状態をなすようになり、その状態で硬化する。
【0016】
(b)合成樹脂は、ホイールを組み付けた状態のタイヤ本体の内部に液状のものを注入して設けているので、硬化することによりタイヤ本体の内面やホイールの内面と密着して、接着した状態になる。これによりタイヤ本体とホイールが一体化した状態になり、タイヤ本体とホイールとの間にはスリップが生じ難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る中実タイヤの一実施の形態を示しており、液状の合成樹脂をタイヤ本体の内部に注入している状態を表す断面説明図、
図2は合成樹脂を注入後のタイヤ本体及びホイールを水平方向に回転させながらウレタン樹脂を硬化させている状態を示す説明図である。
【0018】
中実タイヤTはタイヤ本体1とホイール2を備えている。タイヤ本体1は、凸状のラグ10がトレッド部の全周にわたって設けてあるものを使用している。タイヤ本体1の一方の側面には、周方向に略等間隔で四箇所に内外部を連通した空気孔11が貫通して形成してある。
ホイール2のリム部20には、バルブ孔200が貫通して形成してある。本実施の形態で示す中実タイヤTは、主として草刈機等の作業機械に用いられるものである。
【0019】
タイヤ本体1にはホイール2が組み付けてある。ホイール2に組み付けてある状態でタイヤ本体1の内部には、合成樹脂であるウレタン樹脂が発泡させた状態で充填してある。ウレタン樹脂3はタイヤ本体1の内部にて略均一な発泡状態をなして硬化している。
【0020】
本実施の形態で示す中実タイヤTの製造方法を説明する。
なお、タイヤ本体1とホイール2は公知技術のものを使用しているので、これらの説明は省略し、主としてウレタン樹脂3の注入から硬化について説明する。
【0021】
まず、ホイール2にタイヤ本体1を組み付けて一体物にする。そして、ホイール2を組み付けた状態のタイヤ本体1をバルブ孔200が上側に位置するよう斜めに設置する。この状態はウレタン樹脂3を注入する作業者またはその補助者が手で支えても良い。
【0022】
タイヤ本体1を斜めに傾けた状態のままホイール2のバルブ孔200から液状のウレタン樹脂3を注入する。なお、バルブ孔200の大きさが小さくウレタン樹脂3が注入し難い場合は、予めバルブ孔200を加工して拡げておくことも可能である。この場合はホイール2の切り屑が発生するので、タイヤ本体1との組み付け前に行うことが好ましい。
【0023】
タイヤ本体1内部に注入するウレタン樹脂3は、予め発泡剤が混合してあるものを使用する。ウレタン樹脂3は、バルブ孔200から注入され、タイヤ本体1の内壁に沿って下側に行きわたって充填される。タイヤ本体1内部の空気は、ウレタン樹脂3が注入されることにより、空気孔11から抜けて外部に排出される。注入されたウレタン樹脂3は、発泡剤が混合してあるのでタイヤ本体1内部に充填された後に発泡し始める。
【0024】
タイヤ本体1内部の空間部の空き容積が少なくなってきたらウレタン樹脂3の注入を止める。注入終了後バルブ孔200には、ウレタン樹脂3が漏れて出ないよう止め栓4が取り付けられる。止め栓4は、発泡するウレタン樹脂によってバルブ孔200から押し出されないように押さえ治具5によって押さえられる。
【0025】
押さえ治具5は、一部をホイール2のセンター穴21に引っ掛けてレバー50を操作することで棒状体51が進退する構造を有しており、棒状体51を伸ばして先端で止め栓4を押さえることで取り付けられる。
【0026】
符号6は、円盤状の天板60が中央部を中心として略水平方向に回転する回転台を示している。押さえ治具5が取り付けられたタイヤ本体1は、空気孔11が上側に配置されるよう天板60上に寝かせた状態で載せられる。こうしてタイヤ本体1を天板60上で水平方向に回転させながらウレタン樹脂3が硬化するのを待つ。
【0027】
タイヤ本体1内部のウレタン樹脂3は、タイヤ本体1が回転台6によって回転しているので全体に満遍なく行きわたって発泡する。従って、ウレタン樹脂3は、タイヤ本体1内部にて全体的に略均一な発泡状態をなすようになり、その状態で硬化する。
【0028】
ウレタン樹脂3は、発泡することによってタイヤ本体1内部において空間部を埋めるように膨らみ、これによりタイヤ本体1自体も膨らむ。ウレタン樹脂3はこの状態のまま硬化するので、タイヤ本体1は膨らんで張った状態が維持される。
【0029】
また、空気孔11の外部側には、ウレタン樹脂3が発泡することにより硬化前の液体が溢れ出て、これがタイヤ本体1上で硬化した状態になっている。この部分はウレタン樹脂が硬化後にタイヤ本体1の表面と面一になるよう切除して取り除かれる。空気孔11からタイヤ本体1の表面に露出したウレタン樹脂3には、外観上目立たないようにタイヤ本体1と同じ黒色の塗装が施される。
【0030】
押さえ治具5は、ウレタン樹脂の硬化後に取り外される。止め栓4はウレタン樹脂から取り外しても良いし、そのまま残しておいても良い。残しておく場合は、止め栓4の表面にも黒色の塗装が施される。なお、本実施の形態ではウレタン樹脂3や止め栓4を塗装する際に黒色の塗料を使用したが、これは塗料の色彩を限定するものではない。
【0031】
ウレタン樹脂3は、ホイール2を組み付けた状態のタイヤ本体1内部に液状のものを注入して設けているので、硬化することによりタイヤ本体1の内面やホイール2の内面と密着しており、接着した状態になっている。これによりタイヤ本体1とホイール2が一体化した状態になっており、タイヤ本体1とホイール2との間にはスリップが生じ難くなる。
【0032】
本実施の形態でタイヤ本体1内に充填する合成樹脂としてウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂)を例示したが、これは限定するものではなく、タイヤ本体1内で発泡した状態で硬化できれば、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等を使用することもできる。
【0033】
本実施の形態ではウレタン樹脂の注入後、タイヤ本体1を水平方向に回転させたが、これは限定するものではなく、タイヤ本体の回転は水平方向でなく、例えば、傾けた状態で行っても良い。つまり、タイヤ本体を回転することによってウレタン樹脂がタイヤ本体1内部にて全体に満遍なく行きわたれば良い。
【0034】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る中実タイヤの一実施の形態を示しており、液状の合成樹脂をタイヤ本体の内部に注入している状態を表す断面説明図。
【図2】合成樹脂を注入後のタイヤ本体及びホイールを水平方向に回転させながらウレタン樹脂を硬化させている状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0036】
T 中実タイヤ
1 タイヤ本体
10 ラグ
11 空気孔
2 ホイール
20 リム部
200 バルブ孔
21 センター穴
3 ウレタン樹脂
4 止め栓
5 押さえ治具
50 レバー
51 棒状体
6 回転台
60 天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に合成樹脂が発泡させた状態で充填してある中実タイヤであって、
タイヤ本体(1)と、
ホイール(2)と、
を備えており、
ホイール(2)を取り付けた状態でタイヤ本体(1)の内部に液状の合成樹脂を充填し、当該合成樹脂はタイヤ本体(1)を回転させた状態で硬化させてあることを特徴とする、
中実タイヤ。
【請求項2】
内部に合成樹脂が発泡させた状態で充填してある中実タイヤであって、
タイヤ本体(1)と、
バルブ孔(200)を有するホイール(2)と、
を備えており、
ホイール(2)を取り付けた状態でバルブ孔(200)が上側に位置するよう設置して、タイヤ本体(1)を傾斜させた状態でタイヤ本体(1)の内部に液状の合成樹脂を充填し、当該合成樹脂はタイヤ本体(1)を回転させた状態で硬化させてあることを特徴とする、
中実タイヤ。
【請求項3】
タイヤ本体(1)の内部に充填した合成樹脂は、タイヤ本体(1)を水平方向または実質的に水平方向に回転させた状態で硬化させてあることを特徴とする、
請求項1または2記載の中実タイヤ。
【請求項4】
内部に合成樹脂が発泡させた状態で充填してある中実タイヤの製造方法であって、
ホイール(2)を取り付けた状態でタイヤ本体(1)の内部に液状の合成樹脂を充填するステップと、
タイヤ本体(1)を回転させた状態で合成樹脂を硬化するステップと、
を含むことを特徴とする、
中実タイヤの製造方法。
【請求項5】
合成樹脂の硬化は、タイヤ本体(1)を水平方向または実質的に水平方向に回転させた状態で行われることを特徴とする、
請求項4記載の中実タイヤの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−168678(P2007−168678A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−371257(P2005−371257)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(398021489)株式会社フォレスト (1)
【出願人】(505476582)株式会社ブリヂストンアイピーケー (1)
【出願人】(000113517)BASF INOACポリウレタン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】