説明

中性飲料

【課題】長期の乳化安定性を維持することができる中性飲料を提供すること。
【解決手段】不溶性固形分を飲料に添加する際に、不溶性固形分を凍結粉砕及び/又は湿式摩砕し、これにエーテル化度が0.6〜1.2であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有することにより、沈殿、凝集することなく長期に安定性を維持する。さらしに好ましくは、IOBが0.5〜1.0である有機酸モノグリセリドおよびカゼインナトリウムを併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉砕された不溶性固形分及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下CMC−Naと記す)を含有する中性飲料に関する。さらに詳しくは、例えば、凍結粉砕して得られた微粉砕コーヒー豆、微粉砕紅茶、微粉砕抹茶、及びCMC−Naを含むコーヒー、紅茶、抹茶、緑茶等の中性飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー等を代表とする一般的な嗜好性中性飲料は不溶性固形分(この場合は焙煎コーヒー豆)より熱水で可溶性固形分を抽出して飲料とすることが多い。しかしながら、このようにして抽出される固形分は原料の持つ固形分の数十パーセント程度であり効率が良いとはいえない。また、抽出終了した残渣は産業廃棄物として廃棄されており資源の有効利用という意味で問題がある。
【0003】
近年の飲料は従来に比べより本格的なものが好まれるようになっており、内容成分が年々濃厚になる傾向にある。しかしながら、従来の抽出機では抽出能力に限界があり望まれているような濃厚な抽出液を得ることは難しく、また製造効率も低下することにより好ましくない。濃縮液、香料、粉末製品等を配合し風味を増すことも行われているが、何れも充分に目的を達成しているとはいいがたい。
【0004】
これらを解決する方法として凍結粉砕したコーヒー豆をコーヒー液に調合するコーヒー飲料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この技術では粉砕されたコーヒー豆の飲料中での沈殿が問題となり、商品価値を下げる危険性があり好ましくない。
【0005】
【特許文献1】特開2005−318812(第1頁〜第9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長期の乳化安定性を維持することができる飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の飲料は、微粉砕された不溶性固形分を飲料に添加する際、CMC−Naを含有することにより、沈殿、凝集することなく長期の安定性に優れるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明でいうCMC−Naはセルロースを主原料としたアニオン性の水溶性高分子であり、詳しくはセルロースのグルコースの水酸基にカルボキシメチル基を置換させたものである。その置換度によってエーテル化度が0.6から1.5まで分布している。
【0009】
本発明に係るCMC−Naは商業的に流通しているものであればなんら制限を受けるものではないが、安定性の観点からエーテル化度は0.6〜1.2が好ましく、0.7〜1.1がより好ましく、0.8〜1.0が最も好ましい。また、安定性、風味の観点から粘度は低い方が好ましく、25℃、1%濃度での粘度が500mPa・s以下であれば好ましく、更には200mPa・s以下であればより好ましく、100mPa・s以下であれば最も好ましい。添加量は安定性、風味の観点より飲料100重量部に対し、0.001〜0.2重量部が好ましく、0.003〜0.1重量部がより好ましく、0.005〜0.05重量部が最も好ましい。
【0010】
本発明でいう微粉砕された不溶性固形分とは水不溶性物質を物理的工程により粉砕したもので、粉砕方法については特に限定されるものではないが、一般的な粉砕方法としては乾式粉砕、湿式粉砕、凍結粉砕、湿式摩砕等があげられる。本発明においては効率的に微粒子を得られる点より凍結粉砕、湿式摩砕あるいは両者を組み合わせた粉砕方法が好ましい。
【0011】
粉砕された不溶性固形分の平均粒子径は安定性、食感の観点より50μm以下であることが好ましく、更には30μm以下であればより好ましく、20μm以下であることが最も好ましい。粒子径の測定方法については特に制限をうけるものではない。粒子径の測定方法としては、ふるい法、遠心沈降法、レーザー回折散乱法、動的光散乱法、画像処理等の各種の方法があるが、本発明ではレーザー回折式粒度分布測定装置を用い測定した。平均粒子径の定義については特に限定されるものではないが、例をあげると体積平均径、面積平均径、個数平均径、標準偏差などがある。本発明における平均粒子径は体積平均径を使用した。
【0012】
また、本発明でいう不溶性固形分については、一般食品として流通しているものであれば何ら制限を受けるものではないが、飲料調製時抽出効率を上げることが難しいコーヒー、紅茶、抹茶等を粉砕することが好ましい。
【0013】
本発明でいう中性飲料とは、pHが中性に近い飲料であれば何ら制限を受けるものではない。具体的には殺菌後のpHが6.0〜7.0の範囲であるが、安定性、風味の観点よりpH6.1〜6.9が好ましく、pH6.2〜6.8が最も好ましい。中性飲料の種類としてはコーヒー、紅茶、抹茶、緑茶、ココア、スープ、ミルクセーキ、豆乳、果汁、スポーツドリンク、野菜飲料、アルコール飲料等が例示できるが、風味の点よりコーヒー、紅茶、抹茶、緑茶、ココアが好ましい。また、中性飲料には乳成分が含まれていることが多いが、風味の点より乳成分を含有していることが好ましい。乳成分としては特に限定はないが、全脂粉乳、脱脂粉乳、生乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、チーズ、クリーム、濃縮ホエイ、加糖練乳、加糖脱脂練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、クリームパウダー、ホエイパウダー等が挙げられる。
【0014】
本発明でいう有機酸モノグリセリドとは、グリセリン骨格に有機酸と脂肪酸とがエステル結合したものであり、通常、有機酸とモノグリセリドのエステル反応によって得られる。
【0015】
有機酸モノグリセリドに使用される有機酸としては、特に限定するものではないが、酢酸、乳酸、ジアセチル酒石酸、クエン酸、コハク酸等が挙げられる。なかでも、風味及び効果の観点から、コハク酸が好ましく、本発明に用いる有機酸モノグリセリドとしては、コハク酸モノグリセリドが好ましい。
【0016】
有機酸モノグリセリドの性状は、化合物の極性を示すIOB(Inorganic and Organic Balance)を指標として表すことができる。IOBは、化合物の沸点、結合エネルギー等のデータに基づいて官能基毎の有機性値と無機性値を算出し、以下の式:
IOB=Σ無機性値/Σ有機性値
により得られるものであり、IOBの近いもの同士ほど良く溶解する。有機酸モノグリセリドのIOBは、安定性の観点から、0.5〜1.0が好ましく、0.55〜0.9がより好ましく、0.6〜0.8がさらに好ましい。
【0017】
本発明には安定性の観点より上記有機酸モノグリセリド以外の乳化剤、安定剤が適宣併用されているほうが良い。乳化剤としては、特に制限はなく公知の乳化剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベート、レシチン、酵素分解レシチン、サポニン等の乳化剤を1種又は2種以上を併せて使用することができる。好ましくはショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが併用されていると良い。
【0018】
安定剤としては、キサンタンガム、カラギナン、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、ペクチン、ジェランガム、アラビアガム、タマリンドガム、微結晶セルロース、澱粉、加工澱粉、ゼラチン等が挙げられる。これらの安定剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくはカラギナン、ジェランガム、微結晶セルロース、キサンタンガムが併用されていると良い。
【0019】
またカゼインナトリウム、塩類が配合されていることも好ましく、特に安定性の面よりカゼインナトリウムが併用されていると好ましい。
【0020】
本発明の飲料は、例えば、微粉砕された不溶性固形分を含有する既成の飲料に対してCMC−Naを添加することにより得られるが、それらの飲料を調製する際に、CMC−Naを微粉砕された不溶性固形分に予め添加するか、若しくは調製工程中に共に配合することにより、調製することができる。本発明の所望の効果を発現しうる飲料が得られるのであれば、該製品へのCMC−Naの添加時期や添加方法については特に限定されるものではない。
【0021】
なお、得られる飲料は、容器に充填後、殺菌処理に供されてもよい。容器としては、缶、ペットボトル、瓶、紙パック、ラミネートパック、チルドカップ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0022】
殺菌処理としては、レトルト殺菌、UHT殺菌等が挙げられるが、処理方法は特に限定なく、公知の方法に従って行えばよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の態様を実施例によりさらに記載し、開示する。この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
【0024】
実施例1〜4及び比較例1
コーヒー抽出液(Bx3.0)400g、牛乳300g、グラニュー糖60g、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーP−1670:三菱化学フーズ(株)製)0.5g、表1に示す量のCMC−Na、湿式摩砕により微粉砕化された焙煎コーヒー豆粉末、各種添加物、及び水を適量加え混合溶解し、重曹にてpH6.7に調整後、さらに水を加え全量を1000gとした。調合されたコーヒーミックスを65〜70℃に昇温し、高圧ホモジナイザーにて15MPaの圧力で均質化し缶容器に充填した。充填された缶容器は121℃、30分間レトルト殺菌を行い、コーヒー飲料を調製した。殺菌後の飲料のpHは6.3であった。
【0025】
試験例1
実施例1〜4及び比較例1で得られたコーヒー飲料を、5℃、40℃及び55℃にてそれぞれ60日間保存した。保存後、内容物をビーカーに移し目視確認を行い、以下の評価基準によりクリーミング性及び沈殿を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
<クリーミング性の評価基準>
◎:クリーミングが発生しない
○:クリーミングが僅かに発生するが、軽く振盪することにより分散消失する
△:クリーミングが発生し、軽く振盪しても分散しない
×:クリーミングの発生量が多く、振盪により分散しない
<沈殿の評価基準>
◎:沈殿が発生しない
○:沈殿が僅かに発生するが、軽く振盪することにより分散消失する
△:沈殿が発生し、軽く振盪しても分散しない
×:沈殿の発生量が多く、振盪により分散しない
【0027】
【表1】

【0028】
以上の結果より、実施例のコーヒー飲料は、比較例のコーヒー飲料に比べ、クリーミング状態も良好で、沈殿の発生も少ないものであり、良好な乳化状態を維持していることが明らかとなった。
【0029】
実施例5〜7及び比較例2
紅茶抽出液(Bx1.5)200g、牛乳200g、グラニュー糖60g、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーP−1670:三菱化学フーズ(株)製)0.5g、表2に示す量のCMC−Na、凍結粉砕により微粉砕化された紅茶葉粉末、各種添加物、及び水を適量加え混合溶解し、重曹にてpH6.9に調整後、さらに水を加え全量を1000gとした。調合された紅茶ミックスを65〜70℃に昇温し、高圧ホモジナイザーにて15MPaの圧力で均質化し、次いでUHT(超高温瞬間滅菌装置)にて145℃、30秒間の殺菌処理を行い、ペットボトル容器に充填して、紅茶飲料を調製した。殺菌後の飲料のpHは6.7であった。
【0030】
試験例2
実施例5〜7及び比較例2で得られた紅茶飲料を、5℃、40℃及び55℃にてそれぞれ60日間保存した。保存後、内容物をビーカーに移し目視確認を行い、試験例1と同じ評価基準により、クリーミング性及び沈殿を評価した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
以上の結果より、実施例の紅茶飲料は、比較例の紅茶飲料に比べ、クリーミング状態も良好で、沈殿の発生も少ないものであり、良好な乳化状態を維持していることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、長期の乳化安定性を維持することができる飲料が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉砕された不溶性固形分及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する中性飲料。
【請求項2】
殺菌後のpHが6.0〜7.0である請求項1の飲料。
【請求項3】
カルボキシメチルセルロースナトリウムのエーテル化度が0.6〜1.2である請求項1又は2記載の飲料。
【請求項4】
カルボキシメチルセルロースナトリウムとIOBが0.5〜1.0である有機酸モノグリセリドを併用することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の飲料。
【請求項5】
カゼインナトリウムを併用することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の飲料。
【請求項6】
微粉砕された不溶性固形分が凍結粉砕及び/又は湿式摩砕、あるいは両者を組み合わせた粉砕方法により粉砕されたものである請求項1〜5いずれか記載の飲料。

【公開番号】特開2008−104428(P2008−104428A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292448(P2006−292448)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】