説明

中性pHで可溶性の終末的に滅菌されたコラーゲンの製造

中性pHで可溶性の終末的に滅菌されたコラーゲンは、医学的用途に有用である。本発明は、前記終末的に滅菌されたコラーゲンを調製する方法にも関連する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、コラーゲン組成物およびその製造方法に関する。より詳細には、天然コラーゲンの当初の性質のほとんど、特に粘度特性を維持しながらも、中性pHで完全に可溶性のままである、終末的に滅菌されたコラーゲンについて記載する。
【0002】
この開示において、「可溶性」の語がコラーゲンに関して使用されるとき、コラーゲンが水に可溶性であることを意味する。
【0003】
コラーゲンの製造および滅菌技術は公知である。滅菌は、コラーゲンの製造方法の最終段階の前に行われる場合がある。しかしながら、このような場合に、製造方法の最終段階の間、厳格に滅菌状態を維持することは困難である。
【0004】
コラーゲンの終末的な滅菌を用いるコラーゲンの製造方法において、困難も生じる。前記方法によっては、天然コラーゲンの生理学的性質、効力および有効性を保持しながら中性pHで完全に可溶性のコラーゲンが製造されないことが多い。以前に開示された終末的に滅菌されたコラーゲン組成物は、天然コラーゲンの性質を維持するよりむしろ、架橋され、変性され、および/または中性pHで完全には可溶性でない。
【0005】
しかし、例えば、コラーゲンの溶解度が重要となるかもしれない接着剤の成分として使用するために、天然コラーゲンの性質を保持しながらも中性pHで完全に可溶性の終末的に滅菌されたコラーゲンを近い将来得ることは、興味深い。さらに、天然状態の特性を保持しながらも中性pHで完全に可溶性の終末的に滅菌されたコラーゲンを得て、例えば、皺や尿失禁の治療のため、欠陥(例えば、骨の欠陥)を満たすために使用できる注射可能な製品としての前記溶液の使用を可能にする粘度を有する、滅菌されたコラーゲン溶液の製造を可能にすることもまた興味深い。
【0006】
天然コラーゲンの特性を保持しながらも中性pHで完全に可溶性の終末的に滅菌されたコラーゲンをもたらす方法を提供することは有利だろう。
【発明の概要】
【0007】
コラーゲン製剤を製造する方法は、コラーゲンを化学的に修飾して生理的pHでコラーゲンを可溶性とすることと、当該化学的に修飾されたコラーゲンを生理的pHに中和することと、当該化学的に修飾され、中和されたコラーゲンを任意に乾燥することと、当該化学的に修飾され、中和されたコラーゲンを密閉単位に包装することと、当該化学的に修飾され、中和され、包装されたコラーゲンを放射線量、例えば約25KGy以下のベータ線によって照射することとを含む。実施形態において、コラーゲンは、コラーゲンを水溶性脂肪族アルコールと反応させることによって化学的に修飾され、当該コラーゲンをエステル化する。
【0008】
実施形態において、コラーゲン製剤を製造する方法は、コラーゲンを化学的に修飾し、生理的pHにおいて当該コラーゲンを可溶性とすることと、当該化学的に修飾されたコラーゲンを生理的pHに中和することと、当該化学的に修飾され、中和されたコラーゲンを任意に乾燥することと、当該化学的に修飾され、中和されたコラーゲンを包装することと、当該化学的に修飾され、中和され、包装されたコラーゲンを放射線量、例えば約25KGy以下のベータ線によって照射することとを含む。
【0009】
実施形態において、当該化学的に修飾され、中和され、乾燥したコラーゲンは、当該照射工程の前に、約30℃以下で保管される。
【0010】
実施形態において、当該照射はベータ線、例えば約6KGyから約25KGyの線量、好ましくは約6KGyから約15KGyの線量、より好ましくは約10KGyから約15KGyの線量で照射される。実施形態において、ベータ線による照射は、約15KGy未満の線量、好ましくは約10KGy未満の線量で照射される。
【0011】
実施形態において、照射は、複数の周期の照射線量として行われ、総照射線量は、約25KGy以下である。
【0012】
実施形態において、照射は0℃未満で行われる。
【0013】
実施形態において、コラーゲンを化学的に修飾することは、例えば、コラーゲンを水溶性の脂肪族アルコールと反応させることによってコラーゲンをエステル化することを含む。
【0014】
実施形態において、包装することは、化学的に修飾され、中和されたコラーゲンをシリンジに密封することを含む。
【0015】
本発明の別の側面は、生理的pHで可溶性の、化学的に修飾され、中和され、終末的に滅菌されたコラーゲンを含むコラーゲン製剤である。実施形態において、コラーゲンは、少なくとも部分的に完全な三重らせん構造を有する。実施形態において、コラーゲンはブタ由来である。
【0016】
本発明の別の側面は、上述のコラーゲン製剤から形成される線維である。本発明の別の側面は、上述のコラーゲン製剤を含む組織密封剤または組織接着剤である。組織密封剤または組織接着剤はさらに酸化デンプンを含んでよい。
【0017】
本発明の別の側面は、生物活性物質と組み合わせた上述のコラーゲン製剤である。
【0018】
本発明の別の側面は、注射可能であり、且つシリンジに含まれる上述のコラーゲン製剤である。
【0019】
本発明の別の側面は、一以上の骨形態形成タンパク質を含み、注射可能であり、且つシリンジに含まれる上述のコラーゲン製剤を含む骨充填剤(bone filler)である。
【0020】
本発明の別の側面は、生理的pHで可溶性の、化学的に修飾され、中和され、終末的に滅菌されたコラーゲンを含むコラーゲン製剤を、生物活性物質を含む滅菌組成物と組み合わせ、組織への適用に適した製剤を提供することを含む方法である。本発明は、i)生理的pHで可溶性の、化学的に修飾され、中和され、終末的に滅菌されたコラーゲンを含むコラーゲン製剤と、ii)生物活性物質を含む滅菌組成物とを含む製剤に関する。
【0021】
実施形態において、ここで記載されるコラーゲン製剤は、注射可能に処方され、シリンジに詰められてよい。実施形態において、ここで記載されるコラーゲン製剤は、組織密封剤および組織接着剤としての使用に適するよう処方される。実施形態において、ここで記載されるコラーゲン製剤は、一以上の骨形態形成タンパク質を含むよう処方され、骨または軟骨の障害の修復に適したものになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、コントロールとしてのβ線照射を受けていない酸性コラーゲンのDSC(示差走査熱量測定)プロファイルを示す。
【図1B】図1Bは、6KGyでβ線照射を受けた酸性コラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図1C】図1Cは、10KGyでβ線照射を受けた酸性コラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図2A】図2Aは、コントロールとしてのβ線照射を受けていないエステル化されたコラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図2B】図2Bは、6KGyでβ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図2C】図2Cは、10KGyでβ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図3A】図3Aは、コントロールとしてのβ線照射を受けていない中性コラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図3B】図3Bは、6KGyでβ線照射を受けた中性コラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図3C】図3Cは、10KGyでβ線照射を受けた中性コラーゲンのDSCプロファイルを示す。
【図4】図4は、β線照射を受けたコラーゲン、特に:β線照射を受けた中性コラーゲン(6KGyでβ線照射を受けたサンプルRHE00015および10KGyでβ線照射を受けたサンプルRHI00016);β線照射を受けた酸性コラーゲン(6KGyでβ線照射を受けたサンプルRHI00017および10KGyでβ線照射を受けたサンプルRHI00018);β線照射を受けたエステル化されたコラーゲン(6KGyでβ線照射を受けたサンプルRHI00019および10KGyでβ線照射を受けたサンプルRHI00020);β線照射を受けていないコラーゲン(コントロールサンプルCHE00341);およびβ線照射を受けていないエステル化されたコラーゲン(コントロールサンプルRHH00032)の電気泳動パターンを示す。
【図5】図5は、γ線照射を受けたコラーゲン、特に:γ線照射を受けたエステル化されたコラーゲン(8−9KGyでγ線照射を受けたサンプルRGI00008、ドライアイス中6−8KGyでγ線照射を受けたサンプルRGI00009、14−15KGyでγ線照射を受けたサンプルRGI00010、ドライアイス中11−14KGyでγ線照射を受けたサンプルRGI00011、29−34KGyでγ線照射を受けたサンプルRGI00012、およびドライアイス中28−30KGyでγ線照射を受けたサンプルRGI00013)の電気泳動パターンを示す。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本発明に従うコラーゲン製剤は、例えば化学的に修飾されたコラーゲンを、滅菌を達成するために十分なベータ線照射線量に曝露することにより製造される。まず、生理的pHおよび体温で可溶性のコラーゲンを提供するために、コラーゲン材料を化学的に修飾する。次に、生理的pHで中和し、終末的に滅菌する前に任意に乾燥する。コラーゲンを製造および照射する方法を、以下でさらに詳しく記載する。
【0024】
いずれかのタイプのコラーゲンが用いられてよく、これは、タイプI、II、III、IVおよびV、少数派のコラーゲンの型、またはこれらのいずれかの組み合わせを含むがこれらに限定されない。コラーゲンは、いずれかの供給源、例えばヒト、ウシまたはブタなどに由来してよく、皮膚、腱、筋肉、結合組織、または高いコラーゲン含有率を有する他のいずれかの天然に発生する構造要素に由来してよい。コラーゲンは、組み換え技術によって、またはそうでなければ、例えば組織工学によって製造された合成コラーゲンであってもよい。実施形態において、タイプIのブタまたはウシコラーゲンが用いられる。他の実施形態において、異なる動物起源、例えば、ウシ、ブタ、ヒトなどに由来するタイプIおよびタイプIIIコラーゲン、またはそれらのタイプのいずれかの割合での混合物が用いられる。
【0025】
コラーゲンとは、コラーゲンの全ての形態を言い、これは加工された、あるいはそうでなければ修飾されたものを含む。天然のコラーゲンは、非らせん状の末端部分を有する三重らせん構造に巻かれた3本のポリペプチド鎖で構成される、長く硬い(rigid)棒状構造の線維状タンパク質として特徴付けられる。実施形態において、用いられるコラーゲンは、完全な三重らせん構造を有し、溶液中で非常に高い粘度を示し、熱変性したコラーゲンよりも酵素による分解を受けにくいコラーゲン製剤を提供する。実施形態において、通常ゼラチンとして既知であり、少なくとも部分的にそのらせん構造を失った熱変性したコラーゲンが用いられてよい。
【0026】
アテロペプチドまたはテロペプチド含有コラーゲンが用いられてもよい。コラーゲンの非らせん末端部分であるテロペプチドは、コラーゲン分子のアミノ末端およびカルボキシ末端からランダムコイルとして伸長する。テロペプチドは、分子内および分子間架橋のための主要な部位として働き、免疫原生部位である。実施形態において、それらの低減した免疫原生のため、ウシまたはブタなどの動物供給源由来のアテロコラーゲンが用いられる。
【0027】
用いられるコラーゲンの免疫原生を最小化するため、テロペプチドが除去されてよい。アテロコラーゲンは、当該分野の当業者に既知のいずれかの技術によって製造され、これはタンパク質分解酵素を用いた方法を含むがこれに限定されない。例えば、U.S.Pat.No4,164,559においてMiyataらによって記載される通り、ペプシンが用いられてよく、その全内容がこの引用によってここに組み込まれる。要するに、この技術は、コラーゲン原料をペプシンによって可溶化すること、およびpH約10.0でアルカリ処理によって酵素活性を不活性化した後に可溶性コラーゲンをpH約7.0で沈殿させることに関係する。コラーゲンは、pH約2.0から約4.0の酸性水中で再溶解およびpH約7.0で再沈殿を繰り返すことによって精製される。
【0028】
例えば、生理的pHで可溶性のコラーゲンを製造するために、例えば、皮膚または腱などのコラーゲン原料またはコラーゲン供給源を洗浄し、非コラーゲン成分、例えば、毛髪、脂肪、炭水化物、ムコ多糖類などを除去する。次にコラーゲン原料を可溶化する。生理的pHで可溶性のコラーゲンは、上述の通り、生理的pHおよび体温で可溶性となるような方法で、既知の方法、例えば酸抽出またはペプシンなどのタンパク質分解酵素などによって、化学的に修飾されるコラーゲンを言う。特定のコラゲナーゼではない、多くのタンパク質分解酵素が用いられ、変性させることなくコラーゲンを可溶化させてよい。ペプシンに加え、例えばトリプシン、キモトリプシンまたはパパインが用いられてよい。
【0029】
生理的pHで可溶性コラーゲンを提供するコラーゲンの化学的修飾は、例えば、水溶性脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノールなどの酸性化アルコールによる反応を含む、何れかの既知の方法によるコラーゲンのカルボキシル基のエステル化によって達成されてよい。コラーゲンを化学的に修飾し、生理的pHでコラーゲンを可溶にするための適切な技術は、例えば、U.S.Patent No.4,164,559に記載され、その全体の内容は、この引用によってここに組み込まれる。例えば、タイプIアテロコラーゲンのエチル化は、それらをpH約5.5〜約9.0、特に7.0〜7.5の範囲で可溶にする。非修飾アテロコラーゲンは、5.0未満の酸性pH、または9.0を超えるアルカリ性pHにおいてのみ可溶性である。
【0030】
生理的pHにおいて可溶性のコラーゲンが一旦得られると、それは、例えば約6.0〜約8.0のpH、実施形態においては生理的pHで中和される。生理的pHとは、ヒト体液内で通常生ずる比較的狭い範囲、一般的には、約7.0〜約7.5の範囲にあるpHを言う。
【0031】
次に生理的pHで可溶性のコラーゲンは、何れかの既知の関連する方法によって任意に乾燥されてよく、これは真空下オーブン中で乾燥すること、凍結乾燥すること、およびアセトンなどの溶媒によって脱水することを含むが、これらに限定されない。
【0032】
任意に乾燥されたコラーゲンは、前記コラーゲンの最終的な使用に関連したいずれかの適切な既知の密閉または閉鎖された単位で包装される。包装単位は、シリンジ、バイアル、パウチ、プレート、ジャー、チューブ、および製品の最終的使用に適した他のいずれかの包装を含む。終末的に包装されたコラーゲンは次に、それがベータ線照射によって滅菌されるまで30℃未満の温度で保管されてよい。
【0033】
滅菌は一般的に、終末的に包装されたコラーゲンについて放射線照射によって行われる。滅菌とは、コラーゲンが保管および/または流通する条件においてコラーゲン中で増殖可能な微生物の数を低減し、且つ標準化された滅菌プロトコールおよび/または妥当性検査により決定されたレベル以下の単一の工程、または工程の組み合わせによって処理されたコラーゲンを言う。終末的な滅菌とは、使用前の保管および流通のための最終的な包装中で、上で定義された通り滅菌されたコラーゲンを言う。
【0034】
滅菌処理は、例えば、いずれかの既知の適切な方法に従って、室温または室温よりも低いいずれかの温度で行われる。室温とは、放射線照射施設で一般的に記録される温度を言い、実施形態において、室温は50℃未満、より一般的には25℃±5℃である。実施形態において、滅菌はドライアイス上、0℃未満で達成される。
【0035】
滅菌は、滅菌総線量25kGy以下で行われる。実施形態において、滅菌は、滅菌総線量15KGy未満のベータ線照射により行われる。滅菌線量は、総累計線量が上述の値以下であること以外は、一以上の照射サイクルを含んでよい。
【0036】
生理的pHで可溶性のコラーゲン、特にエステル化されたコラーゲンは、ベータ線照射滅菌処理によって大幅には分解されない。コラーゲンは、当初の性質(例えば、分子量プロファイル、粘度、熱的性質など)の大部分を保持している。例えば、エチル化されたタイプIアテロコラーゲンは、ベータ線照射による滅菌の後、生理的pHで可溶性のままである。エチル化されたタイプIアテロコラーゲンの溶液は、ベータ線照射の前と同様に粘着性である。対照的に、タイプIコラーゲンは、もはや可溶性でない程度にまで分解される。
【0037】
ベータ線照射されたエステル化されたコラーゲンの使用は、関連分野の専門家が、天然コラーゲンと同様の特徴を有する終末的に滅菌されたコラーゲンを使用することを有利に考慮するかもしれないどんな場合も、制限無く想定されてよい。ベータ線照射されたエステル化されたコラーゲンがどのように使用されるかという非限定的な例は、密封剤、接着剤、組織および器官の治癒および再生のためのマトリックス、創傷の包帯剤、造骨製剤、軟骨形成製剤、薬物送達のためのマトリックス、止血製品、化粧品製剤、皺および唇の充填剤、スキンクリームの成分、ならびに細胞培養のための培養液、微生物培養のための培養液、インビトロおよびインビボ試験のための試薬を含むが、これらに限定されない。
【0038】
実施形態において、ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンは、線維形成および前記線維から作られるデバイスにおいて用いられてよい。本発明のコラーゲンから作られ、ここに記載される方法に従って製造されるマトリックス、足場および網目は、内科的および外科的用途において特に有用な性質を有する。例えば、用途には、外科的縫合、血管移植、カテーテル、および一般的に、外科的プロテーゼおよび人工臓器が含まれるが、これらに限定されない。コラーゲンから線維を作る技術は、当該分野の当業者の認識範囲内であり、この引用によってその全体がここに組み込まれるU.S.Paten Nos.6,997,231および6,361,551に開示される技術を含むが、これらに限定されない。
【0039】
処理の後および使用の直前に、ベータ線照射を受けたエステル化コラーゲンは、シリンジ、チューブ、または適切なプランジャー、噴霧器、もしくは針またはノズルなどを経てコラーゲン内容物を押し出すよう設計されたシステムを具備する他の容器に含まれる、均質または不均質なペースト、ゲル、溶液または、懸濁液の形態で用いられてよい。コラーゲンは、注射されるか、外套針を経て外科的に適用されるか、あるいは直接創傷の表面に適用される。コラーゲンペースト、ゲル、溶液、または懸濁液は、完全に可溶性のままであるため、その終末的な滅菌の前後で同様の粘度を有する。
【0040】
実施形態において、少なくとも一つの生物活性物質が、本発明の組成物において使用されるためにコラーゲンと組み合わされてよい。これらの実施例において、コラーゲン製剤はまた、生物活性物質の送達のための賦形剤として働く。「生物活性物質」の語は、ここで用いられる通り、その最も広い意味において用いられ、臨床的用途を有するいずれかの物質または物質の混合物を含む。結果として、生物活性物質はそれ自体、薬学的活性を有していても、あるいは例えば染料または香料のように薬学的活性を有していなくてもよい。あるいは、生物活性物質は、治療的または予防的効果を提供するいずれかの物質、組織成長、細胞成長、細胞分化に影響を及ぼすか、または関与する化合物、付着防止剤、免疫応答などの生物学的作用を誘発することができるか、または一以上の生物学的方法において他の何れかの役割を果たしてよい化合物であってよい。
【0041】
実施形態において、使用前に生物活性物質を、照射を受けたエステル化されたコラーゲンに添加してよい。前記実施形態において、生物活性物質は、既知のタイプの無菌包装、例えばシリンジ内に別に提供されてよい。一例として、滅菌コラーゲンのシリンジの内容物を、滅菌の骨形態形成タンパク質(BMP)を含むシリンジの内容物と混合し、骨の修復に適した製剤を提供してよい。
【0042】
他の実施形態において、一以上の生物活性物質がコラーゲンの滅菌前にコラーゲン製剤に添加される。
【0043】
本発明に従って利用されてよい生物活性物質の種類の例は、付着防止剤、抗菌剤、鎮痛剤、解熱剤、麻酔剤、抗てんかん剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、心臓血管薬、診断用薬、交感神経様作用薬、コリン様作動薬、抗ムスカリン薬、鎮痙薬、ホルモン、成長因子、筋肉弛緩剤、アドレナリン作働性ニューロン遮断薬、抗腫瘍薬、免疫原性剤、免疫抑制剤、胃腸薬、利尿薬、ステロイド、脂質、リポ多糖類、多糖類および酵素を含む。生物活性剤との組み合わせが用いられることも意図される。
【0044】
付着防止剤を用いて、移植可能な医療用具と標的組織でない周囲の組織との間の付着を防止してよい。本発明の組成物に含まれてよいこれらの物質のいくつかの例は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の組成物中に生物活性物質として含まれてよい適切な抗菌剤は、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテルとしても既知のトリクロサン、クロルヘキシジン、およびクロロヘキシジンアセテート、クロロヘキシジングルコナート、クロロヘキシジンハイドロクロリドとクロロヘキシジンサルフェートを含むその塩、銀、および酢酸銀、安息香酸銀、酢酸銀、クエン酸銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、ラウリン酸銀、硝酸銀、酸化銀、パルミチン酸銀、タンパク銀とスルファジアジン銀を含むその塩、ポリミキシン、テトラサイクリン、トブラマイシンやゲンタマイシンなどのアミノグルコシド、リファンピシン、バシトラシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシンやシプロフロキサシンなどのキノリン、オキサシリンやピプラシルなどのペニシリン、ノノキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ならびにこれらの組み合わせを含む。さらに、例えばウシラクトフェリンやラクロフェリシンBなどの抗菌性タンパク質およびペプチド、ならびにフカンや誘導体などの抗菌性多糖類が、本発明の生物活性コーティング中に生物活性物質として含まれてよい。
【0046】
本発明に従う組成物中に生物活性物質として含まれてもよい他の生物活性物質は:局所麻酔薬;非ステロイド避妊薬;副交感神経興奮薬;精神治療薬;精神安定薬;鬱血除去薬;催眠鎮静薬;ステロイド;スルホンアミド;交感神経様作用薬;ワクチン;ビタミン;抗マラリア薬;抗偏頭痛薬;L−ドーパなどの抗パーキンソン病薬;鎮痙薬;抗コリン作用薬(例えば、オキシブチニン);鎮咳薬;気管支拡張剤;冠動脈拡張薬やニトログリセリンなどの心臓血管薬;アルカロイド;鎮痛薬;コデイン、ジヒドロコデイノン、メペリジン、やモルホリンなどの麻酔薬;サリチル酸塩、アスピリン、アセトアミノフェン、d−プロポキシフェンなどの非麻酔薬;ナルトレキソンやナロキソンなどのオピオイドレセプターアンタゴニスト;抗癌剤;抗けいれん薬;制吐薬;抗ヒスタミン薬;ホルモン剤、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、非ホルモン剤、アロプリノール、インドメタシン、フェニルブタゾンなどの抗炎症剤;プロスタグランジンや細胞毒性薬;エストロゲン;抗菌剤;抗生剤;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗凝結剤;抗けいれん薬;抗うつ薬;抗ヒスタミン剤;および免疫薬を含む。
【0047】
本発明の組成物に含まれてよい適切な生物活性物質の他の例は、ウイルスおよび細胞、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、類似体、ムテイン、およびその活性断片、例えば、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンフォカイン、モノカイン、ケモカイン)、血液凝固因子、造血因子、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6)、インターフェロン(3−IFN(a−IFNおよびy−IFN)、エリスロポエチン、ヌクレアーゼ、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子(例えば、GCSF、GM−CSF、MCSF)、インスリン、抗腫瘍剤および腫瘍抑制因子、血液タンパク質、ゴナドトロピン(例えば、FSH、LH、CGなど)、ホルモンおよびホルモンの類似体(例えば、成長ホルモン)、ワクチン(例えば、腫瘍性、細菌性およびウイルス性抗原);ソマトスタチン;抗原;血液凝固因子;成長因子(例えば、神経成長因子、インスリン様成長因子);骨形態形成タンパク質(BMP)などの骨または軟骨の修復に有用な因子;タンパク質阻害剤、タンパク質アンタゴニストおよびタンパク質アゴニスト;アンチセンス分子などの核酸、DNAおよびRNA;オリゴヌクレオチド;ポリヌクレオチドならびにリボソームを含む。
【0048】
以下の非限定的な例は、ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンの性質と、ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンとベータ線照射を受けた酸性および中性コラーゲンとの比較、ならびにガンマ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンとの比較を示す。
【0049】
例1
コラーゲンの調製
タイプIブタコラーゲンをブタ真皮から抽出し、種々の技術によって可溶化し、酸性コラーゲン、中性コラーゲンおよびエステル化されたコラーゲンを製造する:
1°)酸性コラーゲン
タイプIブタコラーゲンを酸性pHで、またはペプシン消化によって可溶化し、次に慣習的な技術を用いた生理食塩水沈殿によって精製する。NaClを添加し、次に80%から100%まで増加する濃度を有するアセトンの水溶液によって得られる沈殿物を洗浄および乾燥することにより、乾燥コラーゲン線維をコラーゲンの酸性溶液の沈殿によって得る。
【0050】
2°)中性コラーゲン
上記1°)に記載される通り得られるタイプIブタコラーゲンを、30g/lの濃度で水に可溶化する。その後、希釈水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、コラーゲン製剤のpHをpH7.0〜7.5の間に中和する。次にコラーゲンをアセトン洗浄または凍結乾燥のいずれかによって乾燥する。
【0051】
3°)エステル化されたコラーゲン
上記1°)の通り得られた乾燥コラーゲン線維20gを密閉容器中、室温で7日間、0.1N HClを含む無水エタノール1リットルに浸漬する。コラーゲン添加前、HClを含むエタノールの脱水は、過剰な無水硫酸ナトリウムとともに断続的に攪拌することによって行われる。エチル化後、溶媒を除去する。
【0052】
当該エステル化されたコラーゲン線維をアセトンによって数回洗浄する。次に、それらを乾燥し、水中で最終濃度1%w/vに溶解する。当該溶液のpHを、7.0〜7.5の間に調節し、コラーゲンを凍結乾燥する。
【0053】
コラーゲンの滅菌
上記の通り得られた酸性コラーゲン、中性コラーゲン、およびエステル化されたコラーゲンを個々にシリンジに充填する。次にシリンジを密封されたバッグに詰める。コラーゲンのシリンジを、6KGyから25KGyの範囲の異なる線量でベータ線照射によって滅菌する。
【0054】
上述のエステル化コラーゲンもまた、ドライアイス上、0℃未満の温度で、6KGyから25KGyの範囲の異なる線量でベータ線照射によって滅菌する。
【0055】
ベータ線照射を受けたコラーゲンの分析
ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンについて個々に、またベータ線照射を受けた酸性コラーゲン、中性コラーゲンおよびエステル化されたコラーゲンについて比較して、ベータ線照射を受けたコラーゲンの性質を示す。
【0056】
ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンの滅菌性
欧州薬局方の滅菌性基準にしたがって、上述の通り調製した照射を受けたエステル化コラーゲンの異なるバッチについて滅菌性試験を行った。試験された全てのバッチは表1に示す通り、無菌であることがわかった:
【表1】

【0057】
ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンの溶解度および粘度
ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンの溶解度を以下の通り、評価した:
まず、乾燥コラーゲン150mg(残留水分含有率:10%と仮定)を中性pHで100mlの水に混合することにより、コラーゲンを可溶化した。当該試料を10000rpmで4分間遠心分離した。上清中のコラーゲン総量は、ビウレット法によって添加され、遠心分離の前に当該試料中に最初に存在したコラーゲン総量と比較した。表2に示す通り、照射を受けたエステル化コラーゲンは、照射を受けていないエステル化コラーゲンと同程度、可溶性であった。
【表2】

【0058】
ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲンの種々のバッチの塑性粘度および降伏応力を、溶液中、2%w/vの濃度、+25℃でビンガムモデル(Bingham’s model)に従って測定した。数値は、300〜600rpmでTVe−05Lamy粘度計によって得られた。表3に示される通り、数値は、6KGyおよび10KGyのベータ線照射の前後で同じ範囲であった。照射を受けたエステル化されたコラーゲンは、6KGyおよび10KGyでベータ線照射した場合、完全に可溶性のままであり、25KGyでは部分的にのみ可溶性であった。
【表3】

【0059】
ベータ線照射を受けたコラーゲンの比較溶解度および粘度
ベータ線照射を受けたエステル化コラーゲンおよびベータ線照射を受けた酸性コラーゲンの種々のバッチの粘度を、上述の通り、溶液中、2%w/vの濃度、+25℃で測定した。粘度測定もまた、中性コラーゲンについて+50℃の温度まで熱し、ゼラチンを得た後行った。
【0060】
ベータ線照射を受けた中性コラーゲンは、酸性pHにおいて、あるいは+42℃に加熱した後中性pHにおいて、いずれのベータ線照射の線量でも不溶性であった。加熱後、溶液は、4%w/v以下の濃度でも、室温でゲルを形成しなかったが、一方、加熱後、ベータ線照射を受けていない中性コラーゲンは室温で1%w/v未満の濃度でゲルを提供した。照射を受けた酸性コラーゲンは可溶性であり、+42℃に加熱した後、ゲル化しなかった。照射を受けたエステル化コラーゲンは、照射を受けていないエステル化コラーゲンと同程度可溶性であった。
【表4】

【0061】
ベータ線照射したコラーゲンの熱的性質
Micro−DSCIII装置(Tian−Calvet Type)を用い、速度0.5 K/minで15℃から65℃まで示差走査熱量分析(DSC)によって熱的性質を測定した。500μlの脱塩水中で15mgのコラーゲン線維を膨潤させることにより調製したコラーゲン線維のウェット・サンプルから、読み込みを得た。
【0062】
10KGy以下のベータ線照射後、エステル化されたコラーゲンについて熱的性質は実質的に変化しなかったが、一方、照射を受けた酸性および中性コラーゲンについては低下し、後者についてはより大きく低下した。
【0063】
以下の表5に示される結果は、ベータ線照射による熱的性質の変化をより明確に示している。
【表5】

【0064】
ベータ線照射を受けたコラーゲンの電気泳動特性
コラーゲンの電気泳動は、ランニングバッファXTトリシンランニングバッファ20x(BioRad)を用いることによって、Criterion(登録商標)XT7%トリスアセテートのプレキャストゲル上で行われた。サンプル試料には、XT還元剤(BioRad)が含まれていた。BioRadの説明書に従い、ゲルをBioSafe Coomassie(BioRad)で染色した。
【0065】
ベータ線照射を受けた中性コラーゲンは、明白なバンドを持たないが、広範囲にわたる痕跡を有する大きく変化した電気泳動特性を示した。エステル化されたコラーゲンおよび酸性コラーゲンの電気泳動特性は、10KGy以下の線量のベータ線照射後、実質的に変化しなかった。
【0066】
機能性試験:ベータ線照射を受けたエステル化コラーゲンに基づく試料の付着強度
外科的および/または治療的用途のため、特に、生物学的組織を互いに、または移植された生体材料と接着するための付着性コラーゲンに基づく組成物は、TardyらによってU.S.Patent No.6,165,488に記載される通り調製されてよく、この引用によって、この全体の内容はここにおいて組み込まれる。要するに、一般的に組成物は、酸化デンプンの水溶液、生分解性多糖類、および加熱されたコラーゲンの水溶液(即ち、ゼラチン)を含む。
【0067】
酸化デンプンとコラーゲンを一緒に混合することによって、中性pHで空気の泡を取り込むことによってまたは取り込まないことによって、当該組成物を得る。混合することによって、組織および/または生物材料に迅速に適用されるゲルを提供し、接着を達成する。接着性は、酸化デンプンアルデヒドとコラーゲンの遊離アミノ酸基との化学反応の組合せ、ならびにコラーゲン特有の性質(例えば、粘度または疎水性親水性特性)の結果である。
【0068】
機能性試験のため、加熱されたコラーゲンは、6KGyの線量でベータ線照射されたエステル化されたコラーゲンに置き換えた。
【0069】
濃度8%以下で、熱を加えることなく、コラーゲンをあるシリンジから他のシリンジへと1分未満、数回行ったり来たり移動させることにより、照射を受けたコラーゲンの完全に半透明な溶液を得た。酸化デンプンと反応させる場合、照射を受けたコラーゲンおよびデンプンは架橋し、粘性の高い泡を形成する。
【0070】
エクスビボの接着試験
脱脂したブタ真皮の正方形、25 mm×25 mmを、以下に記載する試験に供される生成物(試料A、B、C)とともに接着する。次に、それらを+37℃で45分インキュベートする。接着強度は、卓上材料試験機器(Tinius Olsen, ECME230)を用いることにより、一方の真皮の断片を他方からはがすことによって測定する。剥離カーブをQMat−Proソフトウエアによって分析する。
【0071】
生成物の調製
試料A:ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲン−バッチRGK00026−を4%w/vの濃度で可溶化した。第一のシリンジ中の当該溶液2mlを、あるシリンジから別のシリンジへと数回言ったり来たりと移動させることにより、第二のシリンジ中で希釈した0.7mlの1.5%w/vの酸化デンプン−バッチZFE00523x2−と混合した。
【0072】
試料B:ベータ線照射を受けたエステル化されたコラーゲン−バッチRGK00026−が、酸化デンプンを用いることなくそれだけで、濃度8%w/vで用いられた。
【0073】
試料C:Prevadh(登録商標) Foamは、SOFRADIM市販キットからの使用説明書から調製した。濃度16%w/vの加熱したコラーゲン2ml−バッチSCC23330−を、濃度3%w/vの酸化デンプン0.7ml−バッチSA024016−と架橋した。
【0074】
接着強度
接着強度の結果を以下の表6に示す。市販の製品Prevadh(登録商標) Foamと比較した場合、エステル化コラーゲンは酸化デンプンと架橋し、非常に有効に働く接着製品を製造した。しかし、架橋剤を用いずそれだけでは、エステル化コラーゲンの接着特性は低かった。
【0075】
接着強度が、より高濃度のコラーゲン(16%w/v)と架橋剤(3%w/v)によってその接着性を獲得するPrevadh Foamの接着強度の60%に達したので、酸化デンプンと架橋したエステル化されたコラーゲンの接着性は満足なものであった。したがって、市販のPrevadh Foam製品と比較してわずか25%のコラーゲンおよび50%の架橋剤を有する本発明のコラーゲン製剤は、市販製品の接着強度の60%を提供した。
【表6】

【0076】
エステル化されたコラーゲンは、酸性および中性コラーゲンと比較した場合、25KGy未満の線量のベータ線照射によって安全に滅菌される唯一のコラーゲンであった。分析結果は、照射を受けたエステル化された特性は、照射を受けていない対応物と同様であることを示した。
【0077】
例2
コラーゲンの調製
エステル化されたコラーゲンについては、例1で上述した通りコラーゲンを調製した。
【0078】
コラーゲンの滅菌
エステル化されたコラーゲンのシリンジを例1で上述した通り調製したが、室温または0℃未満のいずれかで、ドライアイス中、6KGyから30KGyの範囲の種々の線量で、ガンマ線照射することにより滅菌した。
【0079】
ガンマ線照射を受けたコラーゲンの分析
エステル化されたコラーゲンは、いくらかの粘度を示す半透明の溶液を提供するが、γ線照射の線量が増加すると、完全に分解されていると想定される25KGyを超える線量で照射を受けたコラーゲンを除いて、明らかにその粘度が低下する。これは、電気泳動分析と一致し、ガンマ線照射線量が増加することにより、より明らかな分解の兆候を示す。
【0080】
ガンマ線照射は、エステル化されたコラーゲンの当初の特性を保つことについてベータ線照射よりも効果が少ない。ガンマ線照射によって滅菌された場合、約10KGyの低い線量でさえ、エステル化コラーゲンは明らかに変化した。エステル化コラーゲンの滅菌試料を調製するためにガンマ線を照射することは、ベータ線を照射することに比べて有利ではない。
【0081】
ここで開示される実施形態に種々の変更が行われてよいことが理解されるだろう。したがって上述の記載は、好ましい実施形態の例示に過ぎず、限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲および精神の中で他の修正を想定するだろう。前記修正および変更は、以下の特許請求の範囲内にあるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンを化学的に修飾し、当該コラーゲンを生理的pHで可溶化することと;
当該化学的に修飾されたコラーゲンを生理的pHに中和することと;
当該化学的に修飾され、中和されたコラーゲンを密閉単位に包装することと;
当該化学的に修飾され、中和され、包装されたコラーゲンを約25KGy以下の放射線線量で放射線照射することと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、当該化学的に修飾され、中和されたコラーゲンを、包装する前に乾燥することをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、当該化学的に修飾され、中和され、乾燥されたコラーゲンを、当該放射線を照射する工程の前に約30℃以下で保管することをさらに含む方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、放射線照射がベータ線による照射である方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、当該ベータ線による照射が約6KGy〜約25KGy、好ましくは10KGy〜約15KGyの線量である方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、当該ベータ線による照射が約15KGy未満、好ましくは約10KGy未満の線量である方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、放射線照射が照射線量の複数のサイクルとして行われ、総照射線量が25KGy以下である方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、放射線照射が0℃未満の温度で行われる方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、コラーゲンを化学的に修飾することがコラーゲンをエステル化することを含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、コラーゲンをエステル化することが、コラーゲンを水溶性脂肪族アルコールと反応させることを含む方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、包装することが、化学的に修飾され、中和されたコラーゲンをシリンジに密閉することを含む方法。
【請求項12】
生理的pHで可溶性の、化学的に修飾され、中和され、終末的に滅菌されたコラーゲンを含むコラーゲン製剤。
【請求項13】
請求項12に記載のコラーゲン製剤であって、当該コラーゲンが少なくとも一部に完全な三重らせん構造を有するコラーゲン製剤。
【請求項14】
請求項12または13に記載のコラーゲン製剤であって、当該コラーゲンがブタ由来であるコラーゲン製剤。
【請求項15】
請求項12に記載のコラーゲン製剤から形成される線維。
【請求項16】
請求項12に記載のコラーゲン製剤を更に含む、組織密封剤または組織接着剤。
【請求項17】
請求項16に記載の組織密封剤または組織接着剤であって、酸化デンプンを更に含む組織密封剤または組織接着剤。
【請求項18】
生物活性物質と組み合わせた請求項12に記載のコラーゲン製剤を含む組成物。
【請求項19】
注射可能であり、シリンジ内に含まれる請求項12に記載のコラーゲン製剤を含む、組織充填剤。
【請求項20】
一以上の骨形態形成タンパク質を含み、注射可能であり、シリンジ内に含まれる
請求項12に記載のコラーゲン製剤を含む、骨充填剤(bone filler)。
【請求項21】
生理的pHで可溶性の、化学的に修飾され、中和され、終末的に滅菌されたコラーゲンを含むコラーゲン製剤を、生物活性物質を含む滅菌組成物と組み合わせ、組織への適用に適した製剤を提供することを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−510971(P2011−510971A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544815(P2010−544815)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000325
【国際公開番号】WO2009/095790
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(505453631)
【Fターム(参考)】