説明

中空帯板材の接合構造

【課題】隣接する中空帯板材を強固に接続させる。
【解決手段】複数の中空帯板材a、b等を接合する接合構造であって、中空帯板材a、b等は、表面板1aと裏面板1bとの間に中空部3を有し、中空部3の表側の両側には表面板の延長縁4を形成し、裏側の両側には上記延長縁4と平行な支持縁5を形成し、表側または裏側に一方の中空帯板材aの隣り合う帯板材の一方の延長縁4の係合部7を他方の延長縁4の係合溝8に係合するとともに、一方の支持縁5の挟持溝11をかしめて該挟持溝11の内側に他方の支持縁5の突縁10を挟持させて接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面板と裏面板との間に中空部を有する中空帯板材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、標識板や掲示板のような表面が平坦な大型の板状体は、大型の一枚板かあるいは小さな板材を接合した複合板によって構成されている。一枚板の場合、表面に凹凸がなく、その上に印刷フィルム等を貼着しても一体の連続面であるから仕上がりが綺麗である。その反面、一枚板の強度は板厚によって確保される場合が多いから、高強度の板状体は単価が高くなる。これに対し、複合板の場合は、単価が廉価であるほか、強度も板厚ではなくリブ出しによって確保することができるから、全体としてのコストも低く抑えることができる。その反面、複合板は複数の板材を接合した構成であるから、隣り合う板材間に凹凸が出やすく、印刷物を貼ると、板材の境界に凹凸が生じ、印刷物自体が美しくても、その美しさが損なわれてしまうという問題がある。
【0003】
ところが、複合板には、上記欠点があるものの、コストが安く、大型の設備は不要であり、全体の大きさを自由に調整できる、アルミニウムであればアルマイト処理は形材の方が板材よりも経済的である等の利点があるという理由から、表面が平坦な大型の板材を形成するには、凹凸の少ない板状体の複合板が望まれている。
【0004】
そして、中空の帯板材を接合して大型の板状体を製造する場合は、一方の帯板材の端部の表裏側に係止部(又は嵌合部)を形成し、各係止部を隣接する帯板材の端部の表裏側に形成された係止受け部(又は嵌合受け部)に係止(又は嵌合)させることによって行われていた。
【特許文献1】特開2000−120217
【特許文献2】特開平3−129111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成によれば、接合作業は容易であるが、容易である半面、隣接する中空帯板材を強固に接続させることはできない。
【0006】
本発明は上記問題点を解消し、隣接する中空帯板材を強固に接合させることができる中空帯板材の接合構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため請求項1に係る発明は、複数の中空帯板材を接合する接合構造であって、少なくとも、表側または裏側に一方の中空帯板材の隣り合う帯板材の一方の延長縁の係合部を他方の延長縁の係合溝に係合するとともに、一方の支持縁の挟持溝をかしめて該挟持溝の内側に他方の支持縁の突縁を挟持させて接合したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、表面板と裏面板との間に中空部を有するとともに、中空部の表側の両側には表面板の延長縁を形成し、裏側の両側には上記延長縁と平行な支持縁を形成し、上記延長縁の一方には先端が裏側に屈曲した係合部を、他方には上記係合部に係合可能な大きさの係合溝を形成し、上記支持縁の一方の裏側には突縁を、他方の裏側には挟持溝を形成した複数の帯板材を、隣り合う帯板材の一方の延長縁の係合部を他方の延長縁の係合溝を係合し、一方の支持縁の挟持溝をかしめて他方の支持縁の突縁を挟持させて接合したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記延長縁と支持縁とを連結片によって連結して上記中空部の端部に別個の中空部を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記支持縁は、上記中空部の端部の中間部から形成され、かつ上記挟持溝の裏面と同じか又は上記裏面板の裏面よりも内側に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、表面板と裏面板との間に中空部を形成した、2つの中空帯板材を接合する接合構造であって、上記中空部の表側と裏側には表面板と裏面板の延長縁を形成し、一方の中空帯板材の一方の延長縁に形成された挟持溝をかしめて該挟持溝の内側に、他方の中空帯板材の延長縁に形成された突縁を挟持させて接合した
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、少なくとも、表側または裏側に一方の中空帯板材の隣り合う帯板材の一方の延長縁の係合部を他方の延長縁の係合溝に係合するとともに、一方の支持縁の挟持溝をかしめて該挟持溝の内側に他方の支持縁の突縁を挟持させて接合したので、用意に強固なサインボード等が得られる。板材として、サインボード以外にも、壁板材等としても使用できる。また、パイプ等の場合には、外側に、かしめ部を配置する構成としてもよい。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、支持縁の一方の裏側には突縁を、他方の裏側には挟持溝を形成した複数の帯板材を、隣り合う帯板材の一方の延長縁の係合部を他方の延長縁の係合溝を係合し、一方の支持縁の挟持溝をかしめて他方の支持縁の突縁を挟持させて接合したから、隣接する中空帯板材を強固に接合させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、係合部、係合溝、突縁および挟持溝がみだりに動かないので、接合を強固に確保することができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、上記支持縁は、上記中空部の端部の中間部から形成され、かつ上記挟持溝の裏面と同じか又は上記裏面板の裏面よりも内側に形成されているから、枠に納めたりするときの処理が簡単である。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、中空内部に、嵌合、かしめ部を配置できるので、表面が面一で、強固な材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は中空帯板材の接合構造を示す断面図、図2はその要部の拡大図であり、図3は中空帯板材の側面図である。
【0018】
上記接合構造は、図3に示す複数の中空帯板材a、b、cを接合したもので、これらの中空帯板材a、b、cはアルミニウムなどの押出形材から構成され、中央の中空帯板材aは、表面板1aと裏面板1bとの間に中空部3を有する押出形材で、中空部3の一側の表側には表面板1aの延長縁4が形成されている。また、中空部3の裏側には上記延長縁4と平行な支持縁5が形成されている。上記支持縁5は、上記中空部3の端部6の中間部から形成されている。そして、延長縁4の先端には裏側に屈曲した係合部7が形成され、支持縁5の先端には直角に屈曲した突縁10が形成されている。
【0019】
また、中空部3の他側にも小さな台形状の中空部3aが形成され、中空部3aの端部には、上記係合部7に係合可能な大きさの係合溝8と挟持溝11が形成されている。挟持溝11の裏面は上記裏面板1bの裏面のレベルと同じに形成されている。
【0020】
上記突縁10の外側面には凹溝12が形成され、内側面には上下2個の凹条部13が形成されている。これらの2個の凹条部13は、上記凹溝12より上および下の位置に形成されている。さらに、帯板部1の突縁10側の端部には戻り止め突起14が形成されている。この戻り止め突起14の内側には傾斜した案内面5が形成されている。
【0021】
次に、上記挟持溝11は外側の溝壁11aと内側の溝壁11bと溝底11cとから構成されている。内側の溝壁11bの内面には上記突縁10の凹溝12に嵌まり合う嵌合凸部15が形成されている。また、外側の溝壁11aの内面には上記突縁10の凹条部13に係合可能な2個の凸条部16が形成されている。さらに、外側の溝壁11aの基部には、薄肉部17がV字状に形成されている。溝底11cには、上記突縁10の先端を案内する案内凸部18が形成されている。
【0022】
なお、上記外側の溝壁11aは押出成形時には内側の溝壁11bに対して斜めになり、挟持溝11が開くように成形されている。
【0023】
次に、中空帯板材bの中空部3の一側にも小さな台形状の中空部3aが形成され、中空部3aの端部には、上記係合部7に係合可能な大きさの係合溝8と挟持溝11が形成されている。
【0024】
また、中空帯板材cの中空部の一側には、延長縁4と平行な支持縁5が形成され、延長縁4の先端には裏側に屈曲した係合部7が形成され、支持縁5の先端には直角に屈曲した突縁10が形成されている。
【0025】
ところで、中空帯板材a、bの中空部3aは、延長縁4と支持縁5の先端を連結片9で連結して構成されているものであるから、上記中空部3aも延長縁4と支持縁5とを備えているということができる。同様に、中空部3aと隣り合う延長縁4と支持縁5も連結片(図示せず)によって連結することによって中空に形成することができる。これによれば、係合部、係合溝、突縁および挟持溝がみだりに動かない。
【0026】
次に、上記構成の中空帯板材a、bを接合するときは、図1および図3に示されるように、中空帯板材aの延長縁4の係合部7を中空帯板材bの係合溝8に係合させる。そして、中空帯板材aの突縁10を中空帯板材bの挟持溝11内に差し込む。このとき、突縁10の先端は溝底11cの案内凸部18により内側の溝壁11bの方に寄った位置に案内され、嵌合凸部15と凹溝12とが嵌合する。そこで、かしめ装置(図面省略)により上記外側の溝壁11aを内側に曲げると、外側の溝壁11aは薄肉部から曲がり、その先端は戻り止め突起14の内側に入り込むとともに、強く突縁10にかしめ付けられる。このとき、外側の溝壁11aの凸条部16は突縁10の凹条部13に係合する。
【0027】
次に、中空帯板材aに中空帯板材cを接合する場合も同様とする。複数の中空帯板材aを接合する場合も同様である。
【0028】
なお、中空部3の両端部は斜めに形成され、上記かしめ部分の外側には広い空間が確保されているので、かしめ作業を容易に行うことができる。
【0029】
上述のように、中空帯板材b(a)に形成した挟持溝11の外側の溝壁11aを予め開いておいて他方の中空帯板材b(c)の突縁10を差し込み、上記溝壁11aを閉じるようにしてかしめれば中空帯板材aを強く接合することができる。
【0030】
中空帯板材a、b、cの接合はかしめによるものであるから、隣り合う中空帯板材a、b又はa、c同士は強固に結合する。また、一方の中空帯板材の突縁10の外側面の凹溝12と、他方の中空帯板材の嵌合凸部15とが嵌り合い、さらに、一方の中空帯板材の凹条部13と他方の中空帯板材の凸条部16とが係合するので、両中空帯板材が正しく位置決めされるから、両中空帯板材は面一に保持される。したがって、一枚板のような表面状態のボードを製作することができる。また、中空帯板材の数によって大小いろいろなボードを製作することができる。
【0031】
しかも、凹溝12と嵌合凸部15とが嵌合し、凸条部16と凹条部13とが係合した上でかしめを行うものであるから、2枚の中空帯板材aの係合は強固であり、振動や衝撃を受けても接合の緩みや外れを起こすことがない。
【0032】
また、上記突縁10の凹条部13は、上記凹溝12より上および下の位置に2個形成されているから、外側の溝壁11aをかしめたとき、この溝壁の凸条部16が上記凹条部13に強く押圧されるので、接合が強固となる。
【0033】
さらに、上記外側の溝壁11aをかしめて閉じたとき、戻り止め突起14によって元の開き状態に戻ることはできないから、接合状態は良好に保持される。
【0034】
また、挟持溝11の溝内へ突縁10を差し込むと、突縁10の先端は案内凸部18に案内されて所定の位置に位置決めされるので、突縁10が挟持溝11内で遊んでぐらつくことがない。
【0035】
さらにまた、外側の溝壁11aをかしめるとき、必ず薄肉部から曲がっていくから、かしめ作業が安定する。
【0036】
さらに、上記支持縁5は、中空部3の端部の中間部から形成され、かつ挟持溝11の裏面は上記裏面板1bの裏面と同じに形成されているので、裏面の面一性が確保され、枠などに円滑に納めることができる。なお、挟持溝11の裏面は上記裏面板1bの裏面のレベルよりも内側に(表面側)に形成し、裏面よりも外側に出っ張らないようにするのが好ましい。
【0037】
支持縁5の突縁10と挟持溝11とは、上述の例に限定されない。例えば、図4(a)(b)(c)のように構成してもよい。なお、同図において前述と同じ符号は同じ部材を示すものとする。同図中符号20は係合突起である。
【0038】
なお、中空帯板材の接合構造は上述の実施形態に限定されない。たとえば、図5に示されるように、表面板1aと裏面板1bとの間に中空部を形成した、2つの中空帯板材d、eを接合する接合構造であって、上記中空部3の表側と裏側には表面板1aと裏面板1bの延長縁4を形成し、一方の中空帯板材dの一方の延長縁4に形成された挟持溝11をかしめて該挟持溝11の内側に、他方の中空帯板材eの延長縁4に形成された突縁10を挟持させて接合するようにしてもよい。
【0039】
また、挟持溝11と突縁10との接合は、図4(a)(b)(c)に示したものと同じ構造にすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】中空帯板材の接合構造を示す断面図である。
【図2】中空帯板材の断面図である。
【図3】図1の要部の拡大図である。
【図4】(a)(b)(c)は、他の接合構造の例の断面図である。
【図5】他の接合構造の例の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
a、b、c、d、e 中空帯板材
1a 表面板
1b 裏面板
7 係合部
8 係合溝
10 突縁
11 挟持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空帯板材を接合する接合構造であって、少なくとも、表側または裏側に一方の中空帯板材の隣り合う帯板材の一方の延長縁の係合部を他方の延長縁の係合溝に係合するとともに、一方の支持縁の挟持溝をかしめて該挟持溝の内側に他方の支持縁の突縁を挟持させて接合した
ことを特徴とする中空帯板材の接合構造。
【請求項2】
複数の中空帯板材を接合する接合構造であって、
上記中空帯板材は、表面板と裏面板との間に中空部を有し、中空部の表側の両側には表面板の延長縁を形成し、裏側の両側には上記延長縁と平行な支持縁を形成し、上記延長縁の一方には先端が裏側に屈曲した係合部を、他方には上記係合部に係合可能な大きさの係合溝を形成し、上記支持縁の一方の裏側には突縁を、他方の裏側には挟持溝を形成するとともに、
隣り合う帯板材の一方の延長縁の係合部を他方の延長縁の係合溝に係合するとともに、一方の支持縁の挟持溝をかしめて該挟持溝の内側に他方の支持縁の突縁を挟持させて接合した
ことを特徴とする請求項1記載の中空帯板材の接合構造。
【請求項3】
上記延長縁と支持縁とを連結片によって連結して上記中空部の端部に別個の中空部を形成したことを特徴とする、請求項1記載の中空帯板材の接合構造。
【請求項4】
上記支持縁は、上記中空部の端部の中間部から形成され、かつ上記挟持溝の裏面と同じか又は上記裏面板の裏面よりも内側に形成されている、請求項1又は2に記載の中空帯板材の接合構造。
【請求項5】
表面板と裏面板との間に中空部を形成した、2つの中空帯板材を接合する接合構造であって、上記中空部の表側と裏側には表面板と裏面板の延長縁を形成し、一方の中空帯板材の一方の延長縁に形成された挟持溝をかしめて該挟持溝の内側に、他方の中空帯板材の延長縁に形成された突縁を挟持させて接合した
ことを特徴とする中空帯板材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−16827(P2007−16827A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196695(P2005−196695)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)
【Fターム(参考)】