中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法
【課題】簡単な設備と工程により効率的に製造することができる中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】中空成形品1は、上面11tに開口する溝12が形成された溝成形体11及び溝12を閉塞する蓋体14を有する第一次成形部位10と、蓋体14で溝12を閉塞した状態で溝成形体11の上面11tに配置された第二次成形部位15と、を備える。
【解決手段】中空成形品1は、上面11tに開口する溝12が形成された溝成形体11及び溝12を閉塞する蓋体14を有する第一次成形部位10と、蓋体14で溝12を閉塞した状態で溝成形体11の上面11tに配置された第二次成形部位15と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、インクジェットプリンターのインクカートリッジとプリンターヘッドを繋ぐインク流路は、流路の途中に継手部分を用いて接続している。この継手部分は、インクを流す為に中空体となっているが、継手部分で曲折しており、中空体を製作する為に下記のような方法が提案されていた。
【0003】
第一の技術では、プラスチックパーツに上端の開口した溝を形成し、開口した溝の上にフィルム体を重ね合わせ、プラスチックパーツとフィルム体を加熱若しくは超音波等で互いに溶着接合する(例えば、特許文献1)。
【0004】
第二の技術では、別々に成形加工されたプラスチックパーツを用い、一方、若しくは双方に溝を有するプラスチックパーツを互いに重ね合わせ、超音波若しくは溶剤等を用いて溶着接合し中空体を形成する。
【0005】
第三の技術では、金型内に別に成型されたプラスチックパーツをインサートし互いに重ね合わせ、二部材の隙間へ接合用樹脂を流して、インサート成形によって中空体を形成する。
【0006】
第四の技術では、金型内で同時に半成形品を2個成形した後、金型をスライド移動することにより2部材を互いに重ね合わせ、重ね合わせた隙間部分へ接合用樹脂を注入して接合させて中空体を形成する(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−231524号公報
【特許文献2】特開平10−315266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の技術では、様々な問題が存在した。
第一の技術では、プラスチックパーツとフィルムとの位置決め精度が重要となり、精度管理が煩雑であった。また、プラスチックパーツの溶着面の平面度及び平坦度は、溶着時間に影響を与えるため、プラスチックパーツの精度管理が大変であった。更に、溶着に際して治工具を用いないと、溶着にバラツキが出やすく、リークを起こす虞が存在した。また、フィルムを溶着する為、厚み管理にバラツキが生じやすかった。
【0009】
第二の技術では、プラスチックパーツ同士の位置決めが重要であり、プラスチックパーツの溶着面の平面度及び平坦度は、溶着時間に影響を与えるため、プラスチックパーツの精度管理が大変であった。また、溶着に際して治工具を用いないと、溶着にバラツキが出やすく、リークを起こす虞が存在した。更に、プラスチックパーツ同士を溶着する為、厚み管理にバラツキが生じやすかった。
【0010】
第三の技術では、金型内へのインサート治具が必要であった。また、2部品を別々に成形しておかなければならないため、複数の成形機が必要となり、生産性に課題が存在した。
【0011】
第四の技術、すなわちDSI(Die Slide Injection)工法では、製造のための設備投資額が大きくなり、少量生産には不向きであった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、簡単な設備と工程により効率的に製造することができる中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0014】
第一の発明に係る中空成形品は、上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を有する第一次成形部位と、前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に配置された封止体を有する第二次成形部位と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記蓋体は台形断面形に形成され、その底面の一端が前記溝の開口縁に沿うヒンジを介して連結されることを特徴とする。
また、前記蓋体の断面幅寸法は、前記溝の断面幅寸法より広いことを特徴とする。
また、前記ヒンジは、長手方向の複数個所に厚みを増した補強部を有することを特徴とする。
【0016】
また、ひとつの溝を複数の蓋体で閉塞したことを特徴とする。
また、一つの蓋体で複数の溝を閉塞したことを特徴とする。
【0017】
第二の発明に係る中空成形品用金型は、第一次成形時に上面に開口する溝が形成された溝成形体の裏面側を成形する第一金型と、第一次成形時に前記第一金型に接合して前記溝及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第二金型と、第二次成形時に前記第二金型に代わって第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞させた状態で前記溝成形体の上面に封止体を形成する第三金型と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、前記第二金型は、前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、を有し、前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型することを特徴とする。
【0019】
第三の発明に係る中空成形品の製造方法は、第一金型と第二金型を接合して、上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第一次成形工程と、前記第二金型に代わって第三金型を前記第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に封止体を配置する第二次成形工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、前記第二金型は、前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、を有し、前記第一次成形工程は、前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型する蓋体離型工程を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る中空成形品を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る中空成形品を示す断面図である。
【図3】中空成形品の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る金型及び中空成形品の製造工程を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る金型及び図4に続く製造工程を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る金型及び図5に続く製造工程を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る金型及び図6に続く製造工程を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る金型及び図7に続く製造工程を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係る金型及び図8に続く製造工程を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る金型及び図9に続く製造工程を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る金型及び図10に続く製造工程を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態に係る金型及び図11に続く製造工程を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態に係る金型及び図12に続く製造工程を説明する図である。
【図14】本発明の実施形態に係る中空成形品の変形例を示す斜視図である。
【図15】中空成形品の変形例において、蓋体を開いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
中空成形品1は、後述する金型100を用いて二色成形された樹脂成形品である。
図1,図2に示すように、中空成形品1は、第一色部分としての流路体10と、第二色部分としての封止体15とから構成されている。中空成形品1には、管状の流路2が複数設けられる。
【0024】
第一色部分として形成される流路体10は、上面側が開放された複数の溝12(12a〜12f)を有する溝成形体11と、溝成形体11に対してヒンジ13(13a〜13f)を介して連結された蓋体14(14a〜14f)とから構成される。
流路体10は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等により形成される。
なお、後述するように、流路体10は、溝成形体11に対して蓋体14が開いた状態で成形される(図3参照)。
【0025】
溝成形体11は、平坦な上面11tに対して例えばU字形に掘り込まれた複数の直線状の溝12a〜12fが並列に形成された長板形部材である。溝12の両端には、溝成形体11の底面11sに向けて貫通する貫通孔12hがそれぞれ連通している。
【0026】
蓋体14は、断面形状が台形に形成された長板形部材であって、その底面14sが溝成形体11の上面11tに密着することで、溝12を閉じるものである。
底面14sに対して上面14tは平行に形成される。また、斜面14v,14wは、上面14t及び底面14sに対してそれぞれ任意の角度を有するように形成される。底面14sの幅は、溝成形体11に形成された溝12の幅より広く形成される。
【0027】
蓋体14は、底面14sと斜面14vが交差する角部(稜線)が溝12の一方の開口縁に沿って連結される。溝12の一方の開口縁と蓋体14の角部を連結する部位は、例えば0.1〜0.3mm程度の厚みに成形され、ヒンジ13として機能する。つまり、蓋体14は、ヒンジ13を中心に溝成形体11に向けて折り曲げることが可能となっている。
【0028】
なお、図3に示すように、ヒンジ13a〜13cは溝12a〜12cの外側の開口縁に、ヒンジ13d〜13fは溝12d〜12fの外側の開口縁に、それぞれ設けられている。したがって、蓋体14a〜14cと蓋体14d〜14fは、それぞれ溝成形体11の中央側に向けて閉じるように線対称に連結されている。
【0029】
ヒンジ13は、その長手方向の両端を含めた複数箇所で補強されている。例えば0.5mm程度の厚みに成形された補強部13Hが、溝12の両端と中央の3箇所に形成される。
これにより、ヒンジ13の機械的強度が増加して、蓋体14を溝成形体11に対して折り曲げた際に、ヒンジ13にき裂が発生することを防止している。蓋体14を折り曲げた際にヒンジ13にき裂が発生すると、第二色部分(封止体15)の成形の際に樹脂が溝12内に浸入してしまう不都合があるからである。
【0030】
また、ヒンジ13の全部を厚く形成しないのは、蓋体14の折り曲げ性を損なわないためである。詳細は後述するが、第二色部分(封止体15)を成形する際に、蓋体14を確実に折り曲げるためである。
なお、ヒンジ13の長手方向の両端を補強するのは、この部分にき裂が発生しやすいからである。
【0031】
第二色部分としての封止体15は、蓋体14の上面14tに蓋体14の底面14sを密着させた状態において、蓋体14の上面14tを覆うように蓋体14の間に配置される。
封止体15を蓋体14の上面14tに配置することで、溝12と蓋体14とにより形成される流路2は、漏れのない完全な管形に形成される。
【0032】
なお、封止体15は、流路体10(溝成形体11、ヒンジ13、蓋体14)と同じ材質若しくはベースレジンが同じポリマーアロイを用いることが好ましい。
【0033】
次に、中空成形品1の成形に用いられる金型100について、図4〜図13を用いて説明する。
図4等に示すように、金型100は、第一次成形工程(第一色部分の成形)では、流路体10の溝成形体11を成形する第一金型101と、溝12とヒンジ13と蓋体14を成形する第二金型102が用いられる。
また、図10等に示すように、金型100は、第二次成形工程(第二色部分の成形)では、第一金型101と封止体15を成形する第三金型103が用いられる。つまり、第二金型102に代えて、第三金型103が用いられる。
【0034】
第一金型101は、溝成形体11を成形するキャビティ101c、貫通孔12hを成形するピン(不図示)を有している。そして、第一金型101は、不図示の二色成形機(射出成形機)の固定盤に取り付けられる。一方、第二金型102及び第三金型103は、射出成形機の可動盤に取り付けられる。
【0035】
図4等に示すように、第二金型102は、複数の薄板形の分割コア111〜118をその厚み方向に互いに摺動可能に重ねたコア110を有している。各分割コア111〜118は、第二金型102の進退方向に移動(摺動)できるようになっている。
【0036】
図4等に示すように、コア110の中心に配置される分割コア111,115の先端(第一金型101側)には、溝成形体11の溝12a,12dを成形する凸部111a,115aと、上面11tのうち蓋体14a,14dが当接する部位を形成する平坦部111c,115cが設けられる。
分割コア111,115の外側に隣接する分割コア112,116の先端には、溝12b,12eを成形する凸部112a,116aと、蓋体14a,14dを成形する凹部112b,116bと、上面11tのうち蓋体14b,14eが当接する部位を形成する平坦部112c,116cが設けられている。
【0037】
同様に、分割コア112,116の外側に隣接する分割コア113,117の先端には、溝12c,12fを成形する凸部113a,117aと、蓋体14b,14eを成形する凹部113b,117bと、上面11tのうち蓋体14c,14fが当接する部位を形成する平坦部113c,117cが設けられている。
分割コア113,117の外側に隣接し、コア110の最も外側に配置される分割コア114,117の先端には、蓋体14c,14fを成形する凹部114b,118bと、上面11tのうち蓋体14c,14fよりも外側の部位を形成する平坦部114c,118cが設けられている。
【0038】
凹部112b〜114b、116b〜118bは、蓋体14a〜14fを溝成形体11に連結するヒンジ13a〜fも成形する。また、凹部112b〜114b、116b〜118bの先端側内壁はアンダーカット形状となっている。
【0039】
また、分割コア111,115は、外側の面にキー111K,115Kが設けられる。その外側に隣接する分割コア112,116には、キー111K,115Kに対応して、進退方向に沿ったキー溝112M,116Mが設けられている。
同様に、分割コア112,116と分割コア113,117との間にはキー112K,116K及びキー溝113M,117Mが、分割コア113,117と分割コア114,118との間にはキー113K,117K及びキー溝114M,118Mが、それぞれ設けられる。
【0040】
各キー111K〜113K,115K〜117Kは、分割コア111〜118を最も第一金型101側に進行させた際に、各キー溝112M〜115M,116M〜118Mの第一金型101側の側面に当接する位置に配置されている。
なお、各キー溝112M〜115M,116M〜118Mの進退方向の長さは、蓋体14の底面の幅よりも長く形成される。
【0041】
したがって、第二金型102のコア110は、中心に配置される分割コア111,115を第一金型101側から後退させることで、分割コア112〜114,116〜118を段階的に引き連れて後退させることが可能となっている。
つまり、分割コア111,115を第一金型101側から後退させることで、順次、各キー111K〜113K,115K〜117Kが各キー溝112M〜115M,116M〜118M内を移動して反対側の側面に当接する。分割コア112〜114,116〜118は、各キー溝112M〜115M,116M〜118Mの長さ分だけ遅れるように階段的に後退する。
したがって、一回の後退動作により、分割コア111〜114,115〜118を段階的に後退することができる。
【0042】
第三金型103は、封止体15を成形するキャビティ103cを有しており、その深さは蓋体14の厚みと同一である。したがって、第一金型101に流路体10が保持された状態で、第一金型101と第三金型103を接合(型締)すると、蓋体14が溝12を隙間なく閉じるようになっている。
【0043】
次に、金型100を用いて中空成形品1を成形する製造方法について、図4〜図13に従って説明する。
第一次成形工程では、まず、図4に示すように、第一金型101と第二金型102を合わせて、第二金型102の全ての分割コア111〜118を第一金型101側に進行させる。
【0044】
次に、第一金型101と第二金型102により形成される空間に、第一色目の樹脂を射出充填する。これにより、流路体10(溝成形体11(溝12)、ヒンジ13、蓋体14)が成形される。また、溝12の両端に連通する貫通孔12hも成形される。
【0045】
続いて、図5〜図8に示すように、第二金型102の分割コア111〜114,115〜118を第一金型101側から段階的に後退する。つまり、分割コア111〜114,115〜118に設けたキー111K〜113K,115K〜117K及びキー溝112M〜115M,116M〜118Mの作用によって、最初に分割コア111,115が、続いて分割コア112,116、分割コア113,117、最後に分割コア114,118が後退する。
【0046】
この工程を詳細に説明すると、図5に示すように、分割コア111,115が第一金型101側から後退すると、分割コア112,116の凹部112b,116b側に空間が形成される。
続いて、図6に示すように、分割コア112,116が第一金型101側から後退すると、凹部112b,116bに形成された蓋体14a,14dは、分割コア111,115が後退することにより形成された空間に向けて折れ曲がる。
【0047】
なぜなら、蓋体14a,14dの斜面14vは、分割コア112,116に対してアンダーカット形状となっており、さらに蓋体14a,14dの斜面14vにヒンジ13a,13dが連結されているからである。つまり、分割コア112,116の凹部112b,116bが蓋体14a,14dの斜面14vを押し出すので、蓋体14a,14dは、ヒンジ13a,13dを中心にして底面14s側に折れ曲がる。
この際、蓋体14a,14dは、底面14sが溝成形体11の上面11tに対して例えば60°程度となるまで折れ曲がる。
【0048】
このようにして、図7,図8に示すように、順次、蓋体14b,14e、14c,14fが分割コア113,117、114,118の凹部113b,117b、114b,118bから押し出されて底面14s側に折れ曲がる。
【0049】
そして、全ての分割コア111〜114,115〜118を後退させたら、第二金型102を第一金型101から離間させる。
なお、図9に示すように、全ての蓋体14は、底面14sが溝成形体11の上面11tに対して例えば60°程度となるまで折れ曲がるが、その後、ヒンジ13のスプリングバックにより、35〜45°程度の角度まで戻ってしまう。
【0050】
続いて、第二次成形工程では、第三金型103を第一金型101に向けて進行させて、接合(型締)する。
この際、図10に示すように、第三金型103のキャビティ103cの底面103sが第一金型101に形成・保持された流路体10の各蓋体14(斜面14wと底面14s交差する角部)に当接する。
【0051】
そして、図11に示すように、第三金型103をそのまま第一金型101に向けて進行することで、蓋体14はヒンジ13を中心にして底面14s側に更に折れ曲がる。
そして、図12に示すように、第三金型103を第一金型101に接合すると、蓋体14が溝12を隙間なく閉塞する。第三金型103のキャビティ103cの深さと蓋体14の厚みを同一に設定しているからである。
【0052】
なお、蓋体14の倒れ込みを円滑にするために、第三金型103のキャビティ103cの底面103sに表面処理を施してもよい。蓋体14の斜面14wと底面14s交差する角部を丸く成形してもよい。
【0053】
そして、図13に示すように、第一金型101に保持された流路体10と第三金型103のキャビティ103cに、第二色目の樹脂を射出充填する。
これにより、溝成形体11の上面11tと蓋体14との間に封止体15が形成される。
【0054】
最後に、第三金型103を第一金型101から離間し、更に中空成形品1を金型100から離型することで、流路2を有する中空成形品1の製造工程が完了する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、溝12が形成された溝成形体11及び溝12を閉塞する蓋体14を有する流路体10と、蓋体14で溝12を閉塞した状態で溝成形体11の上面11tを封止体15で覆うことで、流路2を有する中空成形品1を二色成形機のみを用いて効率的に製造することができる。また、中空成形品1は、流路2にインク等の流体を流しても漏れることなく、また製造時に流路2にゴミが侵入することがないという高い品質を確保することができる。
【0056】
また、第二金型102は、後退方向に摺動可能に重畳させると共に側面に蓋体14を成形する凹部112b等が形成された複数の分割コア111,112等を有し、複数の分割コア111〜118を重畳方向の順に段階的に後退させて蓋体14を分割コア112等から離型するので、比較的簡単な金型構成により、また少ない工程により、溝12を閉塞する蓋体14を効率的に成形することができる。
【0057】
なお、前述した実施の形態で示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、図14,図15に示すように、流路(溝、蓋体)は、直線形のみでなく、湾曲する場合であってもよい。
中空成形品90の流路体91に形成される溝92は、直線部分92aと湾曲部分92bを有している。直線部分92aを覆う蓋体94は、個々に中空成形品90とヒンジ93を介して連結される。
また、湾曲部分92bを覆う蓋体96は、最も外側の溝92の近傍の一カ所で中空成形品90とヒンジ97を介して結合されている。蓋体96は、複数の湾曲部分92bの曲率にそれぞれ合致した複数の蓋部98が枠によって一体化されている。そして、溝92を閉塞した蓋体94,96の周囲を封止体95で密封している。
このように構成することで、湾曲部分を含む中空成形品90であっても二色成形機を使用して製造することができる。
【0059】
また、本実施形態では、複数の流路2(流路)を有する中空成形品1を成形する場合について説明したが、流路2(流路)は1つであってもよい。
また、一つの溝12を一つの蓋体14で閉じる場合について説明したが、これ限らない。一つの溝を複数の蓋体で閉じる場合であってもよい。例えば、一つの溝の長手方向に複数の蓋体が並んで配置すればよい。また、図15に示す蓋体99のように構成してもよい。
【0060】
蓋体14の断面形状は、分割コア111〜118からの型抜きの容易性、第三金型103の型締めの際の折れ曲がり性に応じて、適宜変更してもよい。
【0061】
流路2(溝12、蓋体14)の幅が一定の場合について述べたが、幅を途中から変更することも可能である。また、複数の流路2(溝12)が交差して連通する場合であってもよい。
【0062】
また、中空成形品1の流路2(溝12)に連通する貫通孔12hは、任意の位置・数・形状に成形できる。複数の流路2(溝12)に一つの貫通孔12hが連通したり、一つの流路2(溝12)に複数の貫通孔12hが連通したりする場合であってもよい。
【0063】
また、必ずしも、流路2(溝12)に貫通孔12hが連通する場合に限らない。中空成形品1内に密閉された空間(流路2)を形成することで、中空体として各種フロート(浮き)等としても使用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…中空成形品、 2…流路、 10…流路体(第一次成部位)、 11…溝成形体、 11t…上面、 12…溝、 13…ヒンジ、 13H…補強部、 14…蓋体、 14s…底面、 15…封止体(第二次成部位)、 90…中空成形品、 91…流路体(第一次成部位)、 92…溝、 94…蓋体、 93…ヒンジ、 95…封止体(第二次成部位)、 96…蓋体、 97…ヒンジ、 99…蓋体、 101…第一金型、 102…第二金型、 103…第三金型、 111〜118…分割コア(第一分割コア、第二分割コア)、 111a〜113a,115a〜117a…凸部、 112b〜114b,116b〜118b…凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、インクジェットプリンターのインクカートリッジとプリンターヘッドを繋ぐインク流路は、流路の途中に継手部分を用いて接続している。この継手部分は、インクを流す為に中空体となっているが、継手部分で曲折しており、中空体を製作する為に下記のような方法が提案されていた。
【0003】
第一の技術では、プラスチックパーツに上端の開口した溝を形成し、開口した溝の上にフィルム体を重ね合わせ、プラスチックパーツとフィルム体を加熱若しくは超音波等で互いに溶着接合する(例えば、特許文献1)。
【0004】
第二の技術では、別々に成形加工されたプラスチックパーツを用い、一方、若しくは双方に溝を有するプラスチックパーツを互いに重ね合わせ、超音波若しくは溶剤等を用いて溶着接合し中空体を形成する。
【0005】
第三の技術では、金型内に別に成型されたプラスチックパーツをインサートし互いに重ね合わせ、二部材の隙間へ接合用樹脂を流して、インサート成形によって中空体を形成する。
【0006】
第四の技術では、金型内で同時に半成形品を2個成形した後、金型をスライド移動することにより2部材を互いに重ね合わせ、重ね合わせた隙間部分へ接合用樹脂を注入して接合させて中空体を形成する(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−231524号公報
【特許文献2】特開平10−315266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の技術では、様々な問題が存在した。
第一の技術では、プラスチックパーツとフィルムとの位置決め精度が重要となり、精度管理が煩雑であった。また、プラスチックパーツの溶着面の平面度及び平坦度は、溶着時間に影響を与えるため、プラスチックパーツの精度管理が大変であった。更に、溶着に際して治工具を用いないと、溶着にバラツキが出やすく、リークを起こす虞が存在した。また、フィルムを溶着する為、厚み管理にバラツキが生じやすかった。
【0009】
第二の技術では、プラスチックパーツ同士の位置決めが重要であり、プラスチックパーツの溶着面の平面度及び平坦度は、溶着時間に影響を与えるため、プラスチックパーツの精度管理が大変であった。また、溶着に際して治工具を用いないと、溶着にバラツキが出やすく、リークを起こす虞が存在した。更に、プラスチックパーツ同士を溶着する為、厚み管理にバラツキが生じやすかった。
【0010】
第三の技術では、金型内へのインサート治具が必要であった。また、2部品を別々に成形しておかなければならないため、複数の成形機が必要となり、生産性に課題が存在した。
【0011】
第四の技術、すなわちDSI(Die Slide Injection)工法では、製造のための設備投資額が大きくなり、少量生産には不向きであった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、簡単な設備と工程により効率的に製造することができる中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0014】
第一の発明に係る中空成形品は、上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を有する第一次成形部位と、前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に配置された封止体を有する第二次成形部位と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記蓋体は台形断面形に形成され、その底面の一端が前記溝の開口縁に沿うヒンジを介して連結されることを特徴とする。
また、前記蓋体の断面幅寸法は、前記溝の断面幅寸法より広いことを特徴とする。
また、前記ヒンジは、長手方向の複数個所に厚みを増した補強部を有することを特徴とする。
【0016】
また、ひとつの溝を複数の蓋体で閉塞したことを特徴とする。
また、一つの蓋体で複数の溝を閉塞したことを特徴とする。
【0017】
第二の発明に係る中空成形品用金型は、第一次成形時に上面に開口する溝が形成された溝成形体の裏面側を成形する第一金型と、第一次成形時に前記第一金型に接合して前記溝及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第二金型と、第二次成形時に前記第二金型に代わって第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞させた状態で前記溝成形体の上面に封止体を形成する第三金型と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、前記第二金型は、前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、を有し、前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型することを特徴とする。
【0019】
第三の発明に係る中空成形品の製造方法は、第一金型と第二金型を接合して、上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第一次成形工程と、前記第二金型に代わって第三金型を前記第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に封止体を配置する第二次成形工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
また、前記第二金型は、前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、を有し、前記第一次成形工程は、前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型する蓋体離型工程を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る中空成形品を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る中空成形品を示す断面図である。
【図3】中空成形品の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る金型及び中空成形品の製造工程を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る金型及び図4に続く製造工程を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る金型及び図5に続く製造工程を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る金型及び図6に続く製造工程を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係る金型及び図7に続く製造工程を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係る金型及び図8に続く製造工程を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る金型及び図9に続く製造工程を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係る金型及び図10に続く製造工程を説明する図である。
【図12】本発明の実施形態に係る金型及び図11に続く製造工程を説明する図である。
【図13】本発明の実施形態に係る金型及び図12に続く製造工程を説明する図である。
【図14】本発明の実施形態に係る中空成形品の変形例を示す斜視図である。
【図15】中空成形品の変形例において、蓋体を開いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る中空成形品、中空成形品用金型、中空成形品の製造方法について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
中空成形品1は、後述する金型100を用いて二色成形された樹脂成形品である。
図1,図2に示すように、中空成形品1は、第一色部分としての流路体10と、第二色部分としての封止体15とから構成されている。中空成形品1には、管状の流路2が複数設けられる。
【0024】
第一色部分として形成される流路体10は、上面側が開放された複数の溝12(12a〜12f)を有する溝成形体11と、溝成形体11に対してヒンジ13(13a〜13f)を介して連結された蓋体14(14a〜14f)とから構成される。
流路体10は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等により形成される。
なお、後述するように、流路体10は、溝成形体11に対して蓋体14が開いた状態で成形される(図3参照)。
【0025】
溝成形体11は、平坦な上面11tに対して例えばU字形に掘り込まれた複数の直線状の溝12a〜12fが並列に形成された長板形部材である。溝12の両端には、溝成形体11の底面11sに向けて貫通する貫通孔12hがそれぞれ連通している。
【0026】
蓋体14は、断面形状が台形に形成された長板形部材であって、その底面14sが溝成形体11の上面11tに密着することで、溝12を閉じるものである。
底面14sに対して上面14tは平行に形成される。また、斜面14v,14wは、上面14t及び底面14sに対してそれぞれ任意の角度を有するように形成される。底面14sの幅は、溝成形体11に形成された溝12の幅より広く形成される。
【0027】
蓋体14は、底面14sと斜面14vが交差する角部(稜線)が溝12の一方の開口縁に沿って連結される。溝12の一方の開口縁と蓋体14の角部を連結する部位は、例えば0.1〜0.3mm程度の厚みに成形され、ヒンジ13として機能する。つまり、蓋体14は、ヒンジ13を中心に溝成形体11に向けて折り曲げることが可能となっている。
【0028】
なお、図3に示すように、ヒンジ13a〜13cは溝12a〜12cの外側の開口縁に、ヒンジ13d〜13fは溝12d〜12fの外側の開口縁に、それぞれ設けられている。したがって、蓋体14a〜14cと蓋体14d〜14fは、それぞれ溝成形体11の中央側に向けて閉じるように線対称に連結されている。
【0029】
ヒンジ13は、その長手方向の両端を含めた複数箇所で補強されている。例えば0.5mm程度の厚みに成形された補強部13Hが、溝12の両端と中央の3箇所に形成される。
これにより、ヒンジ13の機械的強度が増加して、蓋体14を溝成形体11に対して折り曲げた際に、ヒンジ13にき裂が発生することを防止している。蓋体14を折り曲げた際にヒンジ13にき裂が発生すると、第二色部分(封止体15)の成形の際に樹脂が溝12内に浸入してしまう不都合があるからである。
【0030】
また、ヒンジ13の全部を厚く形成しないのは、蓋体14の折り曲げ性を損なわないためである。詳細は後述するが、第二色部分(封止体15)を成形する際に、蓋体14を確実に折り曲げるためである。
なお、ヒンジ13の長手方向の両端を補強するのは、この部分にき裂が発生しやすいからである。
【0031】
第二色部分としての封止体15は、蓋体14の上面14tに蓋体14の底面14sを密着させた状態において、蓋体14の上面14tを覆うように蓋体14の間に配置される。
封止体15を蓋体14の上面14tに配置することで、溝12と蓋体14とにより形成される流路2は、漏れのない完全な管形に形成される。
【0032】
なお、封止体15は、流路体10(溝成形体11、ヒンジ13、蓋体14)と同じ材質若しくはベースレジンが同じポリマーアロイを用いることが好ましい。
【0033】
次に、中空成形品1の成形に用いられる金型100について、図4〜図13を用いて説明する。
図4等に示すように、金型100は、第一次成形工程(第一色部分の成形)では、流路体10の溝成形体11を成形する第一金型101と、溝12とヒンジ13と蓋体14を成形する第二金型102が用いられる。
また、図10等に示すように、金型100は、第二次成形工程(第二色部分の成形)では、第一金型101と封止体15を成形する第三金型103が用いられる。つまり、第二金型102に代えて、第三金型103が用いられる。
【0034】
第一金型101は、溝成形体11を成形するキャビティ101c、貫通孔12hを成形するピン(不図示)を有している。そして、第一金型101は、不図示の二色成形機(射出成形機)の固定盤に取り付けられる。一方、第二金型102及び第三金型103は、射出成形機の可動盤に取り付けられる。
【0035】
図4等に示すように、第二金型102は、複数の薄板形の分割コア111〜118をその厚み方向に互いに摺動可能に重ねたコア110を有している。各分割コア111〜118は、第二金型102の進退方向に移動(摺動)できるようになっている。
【0036】
図4等に示すように、コア110の中心に配置される分割コア111,115の先端(第一金型101側)には、溝成形体11の溝12a,12dを成形する凸部111a,115aと、上面11tのうち蓋体14a,14dが当接する部位を形成する平坦部111c,115cが設けられる。
分割コア111,115の外側に隣接する分割コア112,116の先端には、溝12b,12eを成形する凸部112a,116aと、蓋体14a,14dを成形する凹部112b,116bと、上面11tのうち蓋体14b,14eが当接する部位を形成する平坦部112c,116cが設けられている。
【0037】
同様に、分割コア112,116の外側に隣接する分割コア113,117の先端には、溝12c,12fを成形する凸部113a,117aと、蓋体14b,14eを成形する凹部113b,117bと、上面11tのうち蓋体14c,14fが当接する部位を形成する平坦部113c,117cが設けられている。
分割コア113,117の外側に隣接し、コア110の最も外側に配置される分割コア114,117の先端には、蓋体14c,14fを成形する凹部114b,118bと、上面11tのうち蓋体14c,14fよりも外側の部位を形成する平坦部114c,118cが設けられている。
【0038】
凹部112b〜114b、116b〜118bは、蓋体14a〜14fを溝成形体11に連結するヒンジ13a〜fも成形する。また、凹部112b〜114b、116b〜118bの先端側内壁はアンダーカット形状となっている。
【0039】
また、分割コア111,115は、外側の面にキー111K,115Kが設けられる。その外側に隣接する分割コア112,116には、キー111K,115Kに対応して、進退方向に沿ったキー溝112M,116Mが設けられている。
同様に、分割コア112,116と分割コア113,117との間にはキー112K,116K及びキー溝113M,117Mが、分割コア113,117と分割コア114,118との間にはキー113K,117K及びキー溝114M,118Mが、それぞれ設けられる。
【0040】
各キー111K〜113K,115K〜117Kは、分割コア111〜118を最も第一金型101側に進行させた際に、各キー溝112M〜115M,116M〜118Mの第一金型101側の側面に当接する位置に配置されている。
なお、各キー溝112M〜115M,116M〜118Mの進退方向の長さは、蓋体14の底面の幅よりも長く形成される。
【0041】
したがって、第二金型102のコア110は、中心に配置される分割コア111,115を第一金型101側から後退させることで、分割コア112〜114,116〜118を段階的に引き連れて後退させることが可能となっている。
つまり、分割コア111,115を第一金型101側から後退させることで、順次、各キー111K〜113K,115K〜117Kが各キー溝112M〜115M,116M〜118M内を移動して反対側の側面に当接する。分割コア112〜114,116〜118は、各キー溝112M〜115M,116M〜118Mの長さ分だけ遅れるように階段的に後退する。
したがって、一回の後退動作により、分割コア111〜114,115〜118を段階的に後退することができる。
【0042】
第三金型103は、封止体15を成形するキャビティ103cを有しており、その深さは蓋体14の厚みと同一である。したがって、第一金型101に流路体10が保持された状態で、第一金型101と第三金型103を接合(型締)すると、蓋体14が溝12を隙間なく閉じるようになっている。
【0043】
次に、金型100を用いて中空成形品1を成形する製造方法について、図4〜図13に従って説明する。
第一次成形工程では、まず、図4に示すように、第一金型101と第二金型102を合わせて、第二金型102の全ての分割コア111〜118を第一金型101側に進行させる。
【0044】
次に、第一金型101と第二金型102により形成される空間に、第一色目の樹脂を射出充填する。これにより、流路体10(溝成形体11(溝12)、ヒンジ13、蓋体14)が成形される。また、溝12の両端に連通する貫通孔12hも成形される。
【0045】
続いて、図5〜図8に示すように、第二金型102の分割コア111〜114,115〜118を第一金型101側から段階的に後退する。つまり、分割コア111〜114,115〜118に設けたキー111K〜113K,115K〜117K及びキー溝112M〜115M,116M〜118Mの作用によって、最初に分割コア111,115が、続いて分割コア112,116、分割コア113,117、最後に分割コア114,118が後退する。
【0046】
この工程を詳細に説明すると、図5に示すように、分割コア111,115が第一金型101側から後退すると、分割コア112,116の凹部112b,116b側に空間が形成される。
続いて、図6に示すように、分割コア112,116が第一金型101側から後退すると、凹部112b,116bに形成された蓋体14a,14dは、分割コア111,115が後退することにより形成された空間に向けて折れ曲がる。
【0047】
なぜなら、蓋体14a,14dの斜面14vは、分割コア112,116に対してアンダーカット形状となっており、さらに蓋体14a,14dの斜面14vにヒンジ13a,13dが連結されているからである。つまり、分割コア112,116の凹部112b,116bが蓋体14a,14dの斜面14vを押し出すので、蓋体14a,14dは、ヒンジ13a,13dを中心にして底面14s側に折れ曲がる。
この際、蓋体14a,14dは、底面14sが溝成形体11の上面11tに対して例えば60°程度となるまで折れ曲がる。
【0048】
このようにして、図7,図8に示すように、順次、蓋体14b,14e、14c,14fが分割コア113,117、114,118の凹部113b,117b、114b,118bから押し出されて底面14s側に折れ曲がる。
【0049】
そして、全ての分割コア111〜114,115〜118を後退させたら、第二金型102を第一金型101から離間させる。
なお、図9に示すように、全ての蓋体14は、底面14sが溝成形体11の上面11tに対して例えば60°程度となるまで折れ曲がるが、その後、ヒンジ13のスプリングバックにより、35〜45°程度の角度まで戻ってしまう。
【0050】
続いて、第二次成形工程では、第三金型103を第一金型101に向けて進行させて、接合(型締)する。
この際、図10に示すように、第三金型103のキャビティ103cの底面103sが第一金型101に形成・保持された流路体10の各蓋体14(斜面14wと底面14s交差する角部)に当接する。
【0051】
そして、図11に示すように、第三金型103をそのまま第一金型101に向けて進行することで、蓋体14はヒンジ13を中心にして底面14s側に更に折れ曲がる。
そして、図12に示すように、第三金型103を第一金型101に接合すると、蓋体14が溝12を隙間なく閉塞する。第三金型103のキャビティ103cの深さと蓋体14の厚みを同一に設定しているからである。
【0052】
なお、蓋体14の倒れ込みを円滑にするために、第三金型103のキャビティ103cの底面103sに表面処理を施してもよい。蓋体14の斜面14wと底面14s交差する角部を丸く成形してもよい。
【0053】
そして、図13に示すように、第一金型101に保持された流路体10と第三金型103のキャビティ103cに、第二色目の樹脂を射出充填する。
これにより、溝成形体11の上面11tと蓋体14との間に封止体15が形成される。
【0054】
最後に、第三金型103を第一金型101から離間し、更に中空成形品1を金型100から離型することで、流路2を有する中空成形品1の製造工程が完了する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、溝12が形成された溝成形体11及び溝12を閉塞する蓋体14を有する流路体10と、蓋体14で溝12を閉塞した状態で溝成形体11の上面11tを封止体15で覆うことで、流路2を有する中空成形品1を二色成形機のみを用いて効率的に製造することができる。また、中空成形品1は、流路2にインク等の流体を流しても漏れることなく、また製造時に流路2にゴミが侵入することがないという高い品質を確保することができる。
【0056】
また、第二金型102は、後退方向に摺動可能に重畳させると共に側面に蓋体14を成形する凹部112b等が形成された複数の分割コア111,112等を有し、複数の分割コア111〜118を重畳方向の順に段階的に後退させて蓋体14を分割コア112等から離型するので、比較的簡単な金型構成により、また少ない工程により、溝12を閉塞する蓋体14を効率的に成形することができる。
【0057】
なお、前述した実施の形態で示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、図14,図15に示すように、流路(溝、蓋体)は、直線形のみでなく、湾曲する場合であってもよい。
中空成形品90の流路体91に形成される溝92は、直線部分92aと湾曲部分92bを有している。直線部分92aを覆う蓋体94は、個々に中空成形品90とヒンジ93を介して連結される。
また、湾曲部分92bを覆う蓋体96は、最も外側の溝92の近傍の一カ所で中空成形品90とヒンジ97を介して結合されている。蓋体96は、複数の湾曲部分92bの曲率にそれぞれ合致した複数の蓋部98が枠によって一体化されている。そして、溝92を閉塞した蓋体94,96の周囲を封止体95で密封している。
このように構成することで、湾曲部分を含む中空成形品90であっても二色成形機を使用して製造することができる。
【0059】
また、本実施形態では、複数の流路2(流路)を有する中空成形品1を成形する場合について説明したが、流路2(流路)は1つであってもよい。
また、一つの溝12を一つの蓋体14で閉じる場合について説明したが、これ限らない。一つの溝を複数の蓋体で閉じる場合であってもよい。例えば、一つの溝の長手方向に複数の蓋体が並んで配置すればよい。また、図15に示す蓋体99のように構成してもよい。
【0060】
蓋体14の断面形状は、分割コア111〜118からの型抜きの容易性、第三金型103の型締めの際の折れ曲がり性に応じて、適宜変更してもよい。
【0061】
流路2(溝12、蓋体14)の幅が一定の場合について述べたが、幅を途中から変更することも可能である。また、複数の流路2(溝12)が交差して連通する場合であってもよい。
【0062】
また、中空成形品1の流路2(溝12)に連通する貫通孔12hは、任意の位置・数・形状に成形できる。複数の流路2(溝12)に一つの貫通孔12hが連通したり、一つの流路2(溝12)に複数の貫通孔12hが連通したりする場合であってもよい。
【0063】
また、必ずしも、流路2(溝12)に貫通孔12hが連通する場合に限らない。中空成形品1内に密閉された空間(流路2)を形成することで、中空体として各種フロート(浮き)等としても使用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…中空成形品、 2…流路、 10…流路体(第一次成部位)、 11…溝成形体、 11t…上面、 12…溝、 13…ヒンジ、 13H…補強部、 14…蓋体、 14s…底面、 15…封止体(第二次成部位)、 90…中空成形品、 91…流路体(第一次成部位)、 92…溝、 94…蓋体、 93…ヒンジ、 95…封止体(第二次成部位)、 96…蓋体、 97…ヒンジ、 99…蓋体、 101…第一金型、 102…第二金型、 103…第三金型、 111〜118…分割コア(第一分割コア、第二分割コア)、 111a〜113a,115a〜117a…凸部、 112b〜114b,116b〜118b…凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を有する第一次成形部位と、
前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に配置された封止体を有する第二次成形部位と、
を備えることを特徴とする中空成形品。
【請求項2】
前記蓋体は台形断面形に形成され、その底面の一端が前記溝の開口縁に沿うヒンジを介して連結されることを特徴とする請求項1に記載の中空成形品。
【請求項3】
前記蓋体の断面幅寸法は、前記溝の断面幅寸法より広いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の中空成形品。
【請求項4】
前記ヒンジは、長手方向の複数個所に厚みを増した補強部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の中空成形品。
【請求項5】
ひとつの溝を複数の蓋体で閉塞したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の中空成形品。
【請求項6】
一つの蓋体で複数の溝を閉塞したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の中空成形品。
【請求項7】
第一次成形時に上面に開口する溝が形成された溝成形体の裏面側を成形する第一金型と、
第一次成形時に前記第一金型に接合して前記溝及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第二金型と、
第二次成形時に前記第二金型に代わって第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞させた状態で前記溝成形体の上面に封止体を形成する第三金型と、
を備えることを特徴とする中空成形品用金型。
【請求項8】
前記第二金型は、
前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、
前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、
を有し、
前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型することを特徴とする請求項7に記載の中空成形品用金型。
【請求項9】
第一金型と第二金型を接合して、上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第一次成形工程と、
前記第二金型に代わって第三金型を前記第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に封止体を配置する第二次成形工程と、
を有することを特徴とする中空成形品の製造方法。
【請求項10】
前記第二金型は、
前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、
前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、
を有し、
前記第一次成形工程は、
前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型する蓋体離型工程を有することを特徴とする請求項9に記載の中空成形品の製造方法。
【請求項1】
上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を有する第一次成形部位と、
前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に配置された封止体を有する第二次成形部位と、
を備えることを特徴とする中空成形品。
【請求項2】
前記蓋体は台形断面形に形成され、その底面の一端が前記溝の開口縁に沿うヒンジを介して連結されることを特徴とする請求項1に記載の中空成形品。
【請求項3】
前記蓋体の断面幅寸法は、前記溝の断面幅寸法より広いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の中空成形品。
【請求項4】
前記ヒンジは、長手方向の複数個所に厚みを増した補強部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の中空成形品。
【請求項5】
ひとつの溝を複数の蓋体で閉塞したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の中空成形品。
【請求項6】
一つの蓋体で複数の溝を閉塞したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の中空成形品。
【請求項7】
第一次成形時に上面に開口する溝が形成された溝成形体の裏面側を成形する第一金型と、
第一次成形時に前記第一金型に接合して前記溝及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第二金型と、
第二次成形時に前記第二金型に代わって第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞させた状態で前記溝成形体の上面に封止体を形成する第三金型と、
を備えることを特徴とする中空成形品用金型。
【請求項8】
前記第二金型は、
前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、
前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、
を有し、
前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型することを特徴とする請求項7に記載の中空成形品用金型。
【請求項9】
第一金型と第二金型を接合して、上面に開口する溝が形成された溝成形体及び前記溝を閉塞する蓋体を成形する第一次成形工程と、
前記第二金型に代わって第三金型を前記第一金型に接合し、前記蓋体で前記溝を閉塞した状態で前記溝成形体の上面に封止体を配置する第二次成形工程と、
を有することを特徴とする中空成形品の製造方法。
【請求項10】
前記第二金型は、
前記溝を成形する凸部が先端に形成された第一分割コアと、
前記第一分割コアの側面に摺動可能に密着配置されると共に前記蓋体及び前記ヒンジを成形するアンダーカットを含む凹部が前記第一分割コアに密着する側面に形成された第二分割コアと、
を有し、
前記第一次成形工程は、
前記第一分割コアを前記第一金型側から後退させた後に前記第二分割コアを前記第一金型側から後退させて、前記第一分割コアが後退して生じた空間に向けて前記蓋体を前記第二コアから離型する蓋体離型工程を有することを特徴とする請求項9に記載の中空成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−214779(P2010−214779A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64367(P2009−64367)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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