説明

中空成形方法

【課題】電動中空成形機では、その電気系駆動機構であるサーボモータとかシーケンサとかの制限によって型締装置の動作にて有効な短縮化を達成することができなかった。
【解決手段】ヘッド2から垂下した筒状パリソンを型締装置7の駆動によって成形金型6にて挟んだ型閉後、型締を行い、ブローピン8a,8b下方に成形金型6をスライド移動させ、下動したブローピン8a,8bからエアを吹き込んでパリソンを膨らませて成形品を成形し、エアを排気し、ついで成形金型6をヘッド2下方に逆方向にスライド移動させる中空成形法において、操作画面20に成形品の水平方向の最大外形寸法値および筒状パリソンの外径値を入力し、最大型開定点からこれら値のいずれか大きい値に至る型閉時間を計測し、成形金型の型閉位置から当該大きい方の値に所望の値を加算してなる寸法位置にて成形金型6の逆方向のスライド移動を開始し、ついで計測した型閉時間に相当する位置にて型閉を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のパリソンを中空成形する際、型締装置の好適な動作制御を行う中空成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空成形は、押出機から押し出した溶融樹脂を押出機先端に配設したヘッドに送り、該ヘッドからパリソンを下方に垂下させ、該パリソンを型締装置の駆動によって一対の割型からなる金型にて挟んで閉じ、ついでヘッドに並べて設けたブローピン下方に金型をスライド移動させ、下動したブローピンからエアを吹き込んでパリソンを金型に形成したキャビティに膨らませて成形品を成形し、エアを排気して再び金型をヘッド下方に逆方向にスライド移動させて一成形サイクルが終了する。
【0003】
前記型締装置の動作は、従来、たとえば、特許文献1の図11中、金型移行(ダイ下へ)の工程から金型閉鎖(パリソンの収納)工程に示すように、金型がヘッド下方に上述のように逆移動して静止するという移動完了後、型閉めを開始し次動作への工程を行っていた。
【0004】
この成形サイクルの短縮化は、中空成形の生産性向上から重要な課題である。中空成形において、成形サイクルの短縮化は、機械装置である型締装置の動作の短縮化、金型の冷却の短縮化、エア吹込動作の短縮化などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−205417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動中空成形機において、従来、型締装置の動作の短縮化を図るべくいろいろな手法がなされてきたが、その電気系駆動機構たとえばサーボモータとかシーケンサとかの制限によって型締装置の動作において有効な短縮化を達成することができなかった。
【0007】
本発明は、近年の型締装置の電気系駆動機構の性能向上に従い、従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、型締装置の好適な動作制御を行う中空成形機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、ヘッドから垂下した筒状パリソンを型締装置の駆動によって一対の割型からなる成形金型にて挟んだ型閉および型締を行い、ブローピン下方に前記成形金型をスライド移動させ、下動したブローピンからエアを吹き込みパリソンを膨らませて成形品を成形し、吹き込んだエアを排気し、ついで前記成形金型を前記ヘッド下方に逆方向にスライド移動させる中空成形法において、操作画面に成形品の水平方向の最大外形寸法値および筒状パリソンの外径値を入力し、最大型開定点から成形品の前記最大外形寸法値およびパリソンの前記外径値のいずれか大きい値に至る型閉時間を測定し、一対の前記割型が型閉位置から成形品の前記最大外形寸法値およびパリソンの前記外径値のいずれか大きい値に所望の値を加算してなる寸法を離反した位置にて、前記成形金型の前記逆方向のスライド移動を開始し、ついでスライドがヘッド下方到達時より前記最大型開定点から前記成形金型が閉まる前記時間に相当する位置にて型閉を開始させることを特徴とする中空成形方法である。
【0009】
前記所望の値は、型閉の位置決めをするガイドピンが一方の前記割型の型面から突出した寸法値であり、10ミリメートルないし20ミリメートルの範囲内の値が好ましい。
【0010】
第1の課題解決手段による作用は、次の通りである。すなわち、型開動作の型開定点に達する途中から成形金型のスライド移動をさせること、および成形金型の逆方向のスライド動作中に型閉動作を開始させることにより成形金型のスライド移動中でも金型の開閉動作を同時進行することによって、成形サイクルを短縮することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述した中空成形方法によれば、一成形サイクルを短縮することができるので、中空成形の生産性を大いに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に使用する中空成形機の正面図。
【図2】図1に示した中空成形機の側面図。
【図3】図1に示した中空成形機の動作機構を示す概略図。
【図4】図1に示した中空成形機の操作画面を示す正面図。
【図5】本発明の一実施の形態を示すフローチャート図。
【図6】図5に示した各ステップを示すタイムチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を図1ないし図6に基づいて説明する。
【0014】
図1および図2において、この実施の形態に使用する中空成形機は、フレーム基台1を具備し、成形するための作動部として、双頭クロスヘッド2と、クロスヘッド2に後方から接続する主押出機3および第1副押出機4と、クロスヘッド2に前方から接続する第2副押出機5と、図示を省略したパリソン切断装置と、一対の割型からなる成形金型6と、型締装置7と、エア打込装置8と、成形金型および型締装置ユニットの移動装置9と、図示を省略した成形品取出装置とを具備している。
【0015】
主押出機3,第1副押出機4および第2副押出機5はそれぞれ、これら押出機内部に樹脂組成物の移送・混錬・溶融・吐出を行うためのスクリュを備えている。これら押出機は、3層構造の成形品を製造するためのものであり、主押出機3が主材となる樹脂組成物を、第1副押出機4が第1の副材となる樹脂組成物を、第2副押出機5が第1の副材とは異なる樹脂組成物をクロスヘッド2に押し出すようになっている。主押出機3および第1副押出機4は枢軸12を中心にクロスヘッド2を上下動するため揺動するようになっている。この揺動は、成形金型6に収納した筒状パリソンの上方端を図示を省略したパリソン切断装置にて切断する際、切断された先の筒状パリソンと次に垂下している筒状パリソンとが干渉しないよう、切断前にクロスヘッド2を若干上昇させて筒状パリソンを切断するために行うものである。
【0016】
図示を省略したパリソン切断装置は、クロスヘッド2から垂下する筒状のパリソンの上部を切断するものであり、電熱カッタを有するカッタホルダを備えている。
【0017】
成形金型6は、前方プラテン10および後方プラテン11にそれぞれ固定された一対の割型6a,6bからなり、これら割型が挿入した筒状パリソンを中空成形品に成形するためのキャビティを形成している。成形金型6はまた、図4に示すように、成形金型6の一方の割型6aの型面から複数のガイドピン6cを突出して形成し、他方の割型6bの型面にこれらガイドピン6aが嵌まるガイド穴6dを形成している。成形金型6は、型締装置7と一緒に移動装置9によって、双頭クロスヘッド2の直下の位置およびエア打込装置8の左右一対のブローピン8a,8bの直下の位置の間にて、横方向に往復スライド移動できるようになっている。
【0018】
成形金型および型締装置ユニットの移動装置9は、サーボモータ9aと、成形金型および型締装置ユニットを案内する一対のレール9b,9cとを備えている。
【0019】
型締装置7は、成形金型6の一対の割型6a,6bを型閉、型開および型締をするものであり、電動機7aによって駆動される回転ディスク(図示略)を備え、このディスクの回転に伴い、ディスクに前後から結合した一対のリンク7b,7cを屈曲・伸張させて、前方プラテン10と後方プラテン11を近接・離反させるようになっている。型締装置7は、その底部に移動装置9のレール9b,9cに係合するレール係合部7d,7eを設けている。
【0020】
エア打込装置8のブローピン8a,8bは、成形金型6の一対のキャビティのそれぞれ上方にて、これらキャビティにて支持した筒状パリソン内に挿入してパリソン内に圧縮エアを吹き込むものである。
【0021】
これら作動部の制御系統は、図3に示したように、当該中空成形機BM内に設けた、操作画面20と、操作画面20に接続したシーケンサ30と、シーケンサ30中のモーションCPU31に接続した型締サーボアンプ50,スライドサーボアンプ60,および打込サーボアンプ70等とから構成されている。さらに、これらサーボアンプ50,60,70それぞれにサーボモータ7a,9a,8cが接続している。
【0022】
モーションCPU31は、当中空成形機の駆動部を受け持ち、メインCPU32との高速バス通信の並列処理による高速制御を実現する機能を果たし、モーション制御たとえば位置制御、同期制御など高度な位置決め制御を実現するようになっている。より具体的には、図5に示すようなフローの動作処理を実現する。
【0023】
シーケンサ30のメインCPU32は、高速制御によりスキャンタイムを短縮し、成形機自体の動作のばらつきを抑制する機能を果たす。
【0024】
操作画面20は、当該中空成形機BMの種々の動作装置を駆動するため、操作者が種々のデータを入力するものであり、たとえば図4に示した画面に本実施の形態を実施するための所要なデータを入力するものである。画面中右のデータ入力表21にて、3行目の製品厚みの行の右欄に成形しようとする成形品の水平方向の最大外形寸法値Bを入力し、7行目のパリソンの外径の行の右欄にパリソンの外径値Dpを入力するようになっている。データ入力表21にて、1行目の型締開閉ステップ量Aは、下記の式1によって算出されるようになっている。下記の式1中、Dは最大型開定点における成形金型6の割型6a,6bの最大開き量を表し、データ入力表21の5行目の型締開閉移動量Dに相当し、Xは成形品の上記最大外形寸法値Bおよびパリソンの上記外形値Dpのいずれか大きい値を示し、Lgはガイドピン6cの割型6aの型面から突出した寸法値(出代値ともいう)を示し10ミリメートルないし20ミリメートルの値を示す。
【0025】
A=(D−X)/2−Lg‥‥(1)
画面20のデータ入力表21にて、4行目のステップ型開き量Cは、下記の式2により算出される。下記の式2中、Aは上述の型締開閉ステップ量を示し、Dは上述の型締開閉移動量を示す。
【0026】
C=D−(2×A)‥‥(2)
画面20のデータ入力表21にて、6行目のスライド移動量Eは、成形金型6のスライド最大移動量を表す。画面20にて、データ入力表21の左側に配した図中、上図左はパリソンPに対する成形金型6の一対の割型6a,6bの型閉め時の状態を表わし、上図右は成形品Bpに対する成形金型6の一対の割型6a,6bの型開き時の状態を表わし、下図が前方プラテン10を通しての成形金型6のスライド状態を表わす。
【0027】
次に、上述の中空成形機を用いた本発明の一実施の形態を述べる。
【0028】
まず、図5にて、ステップS1に示すように、操作者が操作画面20にて成形品の水平方向の最大外形寸法値Bおよびパリソンの外径値Dpを入力する。
【0029】
次にステップS2に示すように成形運転を行い、メインCPU32が、図5中のステップS3に示すように、最大型開定点から成形品の水平方向の最大外形寸法値Bおよびパリソンの外径値Dpのいずれか大きい値に至る型閉時間を、内蔵タイマによって計測する。
【0030】
一対の割型6a,6bが、型閉位置から成形品の水平方向の最大外形寸法値Bおよびパリソンの外径値Dpのいずれか大きい値Xにガイドピン6cの突出寸法値Lgを加算してなる寸法離れた位置にて、図5中のステップS4に示すように、金型・型締装置ユニットの移動装置9がクロスヘッド2下方への行き方向のスライド移動を開始させる。
【0031】
ヘッド2の下方行きスライド中、ステップS3にて求めた前記型閉時間に相当する位置にて、図5中のステップS5に示すように、型締装置7が駆動して成形金型6の型閉を開始する。
【0032】
このことで、図5中のステップS6に示すように、成形金型6および型締装置7のユニットの行き方向のスライド移動が完了し、ついでステップS7に示すように、型締が完了する。
【0033】
型締動作の完了後、図5中のステップS8に示すように、エア打込装置8のブローピン8a,8bが上昇して一対の割型6a、6bの上面より上方に抜けた後、金型・型締装置ユニットの移動装置9が駆動して、成形金型6は、ブローピン8a,8b下方へ戻り方向のスライド移動を開始する。
【0034】
所定時間後、ステップS9に示すように、ブローピン8a,8bの上昇が完了する。
【0035】
所定時間後、図5中のステップS10に示すように、成形金型6の戻り方向のスライド移動が完了する。
【0036】
成形金型6の戻り方向のスライド移動が完了した後、図5中のステップS11に示すように、ブローピン8a,8bの下降が開始する。
【0037】
所定時間後、図5中のステップS12に示すように、ブローピン8a,8bの下降が完了する。この際、ブローピン8a,8bが対応するパリソン上部のバリを成形金型6のキャビティ上端と協働して喰いちぎって除去する。
【0038】
ブローピンの下降完了後または下降途中から、図5中のステップS13に示すように、ブローピン8a,8bの先端からそれぞれに対応するパリソン中に圧縮エアを吹き込む。パリソンは、吹き込んだ圧縮エアによって成形金型6に形成したそれぞれのキャビティまで膨らんで成形品となる。
【0039】
所定時間後、図5中のステップS14に示すように、これらパリソンに吹き込んだエアを排気(放出)する。
【0040】
エア排気後、図5中のステップS15に示すように、成形金型6の型開が型締装置7の駆動によって開始する。
【0041】
ついで、上述のステップS4が再び実施して、成形金型6は、クロスヘッド2下方へ行き方向のスライド移動を開始する。上述のステップS4ないしステップS15にて一成形サイクルが成立する。成形後の成形品は、図示を省略した成形品取出装置によって中空成形機外に搬出される。
【0042】
そして、ステップS16に示すように、この行き方向の金型・型締装置ユニットのスライド移動中に、成形金型6の型開が完了する。
【0043】
これらステップのタイムチャートを示す図6において、「スライド行」および「スライド戻」は成形金型6・型締装置7のユニットのスライド動作を示し、「型締閉」および「型締開」は成形金型6の開閉動作を示し、「打込上」および「打込下」はブローピン8a,8bの上下動の結果の最上の位置および最下の位置を示し、「吹込ON」および「吹込OFF」はエア吹込作動中およびエア吹込停止中を示し、「排気ON」および「排気OFF」はエア排気中およびエア排気停止中を示す。
【0044】
また、タイムチャート図6において、符号B1はスライド動作行きの待ちタイムを示し、符号F1は打込上昇待ちタイムを示し、符号G1はスライド動作戻り待ちタイムを示し、符号I1は打込下降待ちタイムを示し、符号J1は吹込待ちタイムを示し、符号K1は型開待ちタイムを示す。これらタイムは、各動作のタイマにて設定されるが、ゼロ(0)またはゼロ(0)に近いのが型締動作短縮化から好ましい。打込ジャンプ動作は、ブローピン8a,8bが製品口内より抜けやすくするため、型締中(型開き前)にブローピン8a,8bを0〜5mm程度上昇させるものである。
【0045】
図6に示すように、中空成形品を成形してなる型閉状態から型開待ちタイムK1の経過後の型開動作途中に、スライド行き指令が出て、待ちタイムB1の経過後、スライド行きが実行される。そしてスライド行き途中に型閉め指令が出て、開いた成形金型6が閉じ始める。さらに、スライド行き動作が完了した後、所定時間後に成形金型6の型閉動作が完了する。
【0046】
打込動作は、打込上昇待ちタイムF1の経過後、ブローピン8a,8bの上昇途中にスライド戻り指令が出て、スライド戻り待ちタイムG1の経過後にスライド戻り動作が開始する。同時に、ブローピン8a,8bは最上昇位置に達する。
【0047】
スライド戻り動作の完了後に打込下降待ちタイムI1の経過後にブローピン8a,8bが下降し始め、吹込待ちタイムJ1の経過時に最下位置に達し、エアの吹込が開始する。所定の吹込時間経過後、エアの排気が開始する。その後、ブローピン8a,8bがジャンプ動作し、上記型開待ちタイムK1経過後に上述の動作を繰り返すこととなる。
【符号の説明】
【0048】
2…クロスヘッド
6…成形金型
6a,6b…割型
7…型締装置
8…エア打込装置
8a,8b…ブローピン
20…操作画面
21…データ入力表
30…シーケンサ
31…モーションCPU
32…メインCPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドから垂下した筒状パリソンを型締装置の駆動によって一対の割型からなる成形金型にて挟んで型閉および型締を行い、ブローピン下方に前記成形金型をスライド移動させ、下動した前記ブローピンからエアを吹き込んでパリソンを膨らませて成形品を成形し、吹き込んだエアを排気し、ついで前記成形金型を前記ヘッド下方に逆方向にスライド移動させる中空成形法において、
操作画面に成形品の水平方向の最大外形寸法値および筒状パリソンの外径値を入力し、
最大型開定点から成形品の前記最大外形寸法値およびパリソンの前記外径値のいずれか大きい値に至る型閉時間を測定し、
一対の前記割型が型閉位置から成形品の前記最大外形寸法値およびパリソンの前記外径値のいずれか大きい値に所望の値を加算してなる寸法を離反した位置にて前記成形金型の前記逆方向のスライド移動を開始し、
ついでスライドがヘッド下方到達時より前記最大型開定点から成形金型が閉まる前記時間に相当する位置にて型閉を開始させることを特徴とする中空成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86318(P2013−86318A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227547(P2011−227547)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(711011386)株式会社タハラ (5)
【Fターム(参考)】