説明

中空成形機

【課題】本発明は、成形終了後の自重による肉調シリンダ用ロッド、スピンドル及びコアの降下を防止し、樹脂の焼けを防止することを目的とする。
【解決手段】本発明による中空成形機は、ナット(3)に設けられ出入自在なエアシリンダ用ロッド(25)を有するエアシリンダ(23)を有し、エアシリンダ用ロッド(25)が肉調シリンダ(2)の上面(2a)に当接することにより、肉調シリンダ(2)の油圧ユニットの電源オフ後におけるコア(5)及びスピンドル(4)の自重落下を防止する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形機に関し、特に、成形終了後に自重による肉調シリンダ用ロッド、スピンドル及びコアの降下を防止し、樹脂の焼けを防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の中空成形機としては、例えば、特許文献1に開示された構成を、図2として概略的に示すことができる。
すなわち、図2において符号1で示されるものはクロスヘッドであり、このクロスヘッド1にはアダプタ1Aを介して押出機3が接続されると共に、このクロスヘッド1の上部には、肉調シリンダ2が設けられ、この肉調シリンダ2のナット3にはスピンドル4がこのクロスヘッド1を貫通して垂下している。
【0003】
前記スピンドル4の下部にはコア5が接続されていると共に、このクロスヘッド1の下部には前記コア5との間にダイギャップ6を形成するためのダイ7が固定して設けられている。
【0004】
前記ナット3には、図3に詳しく拡大開示されているように、肉調シリンダ用ロッド8が同軸配置されており、図示しない油圧ユニットにより油圧が制御され、ナット3、肉調シリンダ用ロッド8及びスピンドル4が矢印Aの方向において所定のストロークで上下動するように構成されている。
従って、前記肉調シリンダ2の油圧を制御することにより、スピンドル4を介してコア5が上下動し、ダイギャップ6が制御されてパリソン(図示せず)の肉厚の制御を行うことができる。
【0005】
図2及び図3で示される中空成形機10の場合、所定の中空成形機が終了した後は、スピンドル4とコア5を上方へ上昇させ、コア5をダイ7の内壁7aに密合させてクロスヘッド1内に残っている溶融樹脂の焼け(酸化)が発生することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−258123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の中空成形機は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図3の状態におけるダイギャップ6は、完全に閉じられ、クロスヘッド1内のアキュムレータに溜まっている溶融樹脂の中に空気が入り込むのを防止し、溶融樹脂の酸化を防止している状態であるが、この状態で時間が経過すると、肉調シリンダ用ロッド8、スピンドル4及びコア5の自重によってこれらが降下し、結果的に、図4及び図6のように、ダイギャップ6が開状態となり、このダイギャップ6を介してクロスヘッド1内に空気が入り込み、残っている溶融樹脂を酸化させ、この酸化が溶融樹脂の焼けの原因となり、次の成形を行なう時に悪影響が発生すると共に、中空成形機のメンテナンス周期を早めると云う問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による中空成形機は、筐体の上部に設けられた肉調シリンダと、前記肉調シリンダに上下動自在に設けられ同軸配置のスピンドル及び肉調シリンダ用ロッドと、前記スピンドルと肉調シリンダ用ロッドの上部に設けられた共通のナットと、前記スピンドルの下部に接続されダイの内面との間のダイギャップを形成するためのコアとを備え、前記コアの上下動により前記ダイギャップを調整してパリソンの肉厚を調整するようにした中空成形機において、前記ナットに設けられ出入自在なエアシリンダ用ロッドを有するエアシリンダを有し、前記エアシリンダ用ロッドが前記肉調シリンダの上面に当接することにより、前記肉調シリンダの油圧ユニットの電源オフ後における前記コア及びスピンドルの自重落下を防止する構成であり、また、前記ナットを肉調シリンダ用ロッドに取り付けるための第1取付ねじを有し、前記エアシリンダが取り付けられたブラケットは第1取付ねじによってナットに共締めされている構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による中空成形機は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筐体の上部に設けられた肉調シリンダと、前記肉調シリンダに上下動自在に設けられ同軸配置のスピンドル及び肉調シリンダ用ロッドと、前記スピンドルと肉調シリンダ用ロッドの上部に設けられた共通のナットと、前記スピンドルの下部に接続されダイの内面との間のダイギャップを形成するためのコアとを備え、前記コアの上下動により前記ダイギャップを調整してパリソンの肉厚を調整するようにした中空成形機において、前記ナットに設けられ出入自在なエアシリンダ用ロッドを有するエアシリンダを有し、前記エアシリンダ用ロッドが前記肉調シリンダの上面に当接することにより、前記肉調シリンダの油圧ユニットの電源オフ後における前記コア及びスピンドルの自重落下を防止することにより、成形終了後のダイギャップ閉状態をそのまま維持することができ、クロスヘッド内への空気の侵入を防止し、残留溶融樹脂の酸化による焼けの防止ができる。
そのため、次の成形時に成形可能なパリソンを射出するまでの時間が短くなり、中空成形機のメンテナンス周期を従来よりも大幅に延ばすことができる。
また、エアシリンダが取り付けられたブラケットは、第1取付ねじによってナットに共締めされているため、既存機に対して簡単に装着でき、新規及び既存に拘わらず、自重落下防止を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による中空成形機のクロスヘッドの上部を示す断面図である。
【図2】従来の中空成形機の全体構成を示す概略構成図である。
【図3】従来のダイギャップ閉時を示す断面図である。
【図4】従来の自重落下時を示す断面図である。
【図5】図3の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】図4の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、成形終了時の自重による肉調シリンダ用ロッド、スピンドル及びコアの降下を防止し、樹脂の焼けを防止するようにした中空成形機を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明による中空成形機の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を付して説明すると共に、図2及び図3については、本発明におけるエアシリンダを除いては同一構造であるため、図2及び図3の構成を援用するものとする。
図1において符号1で示されるものは、図2の押出機3に接続されたクロスヘッドであり、図3のように、このクロスヘッド1の筐体10Aの上部の肉調シリンダ2内には、肉調シリンダ用ロッド8及びスピンドル4が同軸状にかつ上下動自在に設けられている。
【0013】
前記スピンドル4及び肉調シリンダ用ロッド8の上部には、第1取付ねじ21を介して共通のナット3が取付けられており、この第1取付ねじ21にはL字型をなすブラケット22が前記肉調シリンダ2の上面2aと対向するように配設されている。
【0014】
前記ブラケット22の下面22aには、薄型に形成されたエアシリンダ23が取付けねじ24によって取付けられており、このエアシリンダ23のエアシリンダ用ロッド25は下方に向けて出入自在に構成されている。
【0015】
前記エアシリンダ23のエアシリンダ用ロッド25は、ストロークSを有しており、このエアシリンダ用ロッド25を突出させて前記上面2aに当接させた状態では、前記スピンドル4及び同調シリンダ用ロッド8は自重で下方に下がることはできず、スピンドル4の下部に接続されたコア5は、図3のように、ダイ7と接触し、ダイギャップ6が閉じられた状態を持続することができるように構成されている。
【0016】
前記ナット3に固定された連結部材27は、前記肉調シリンダ2の上面2aに植立されたガイド26内で作動自在に係合され、このガイド26と連結部材27によって前記ナット3の回り止めと上下動の案内ができるように構成されている。
【0017】
前述の構成の場合、前記エアシリンダ23を除けば、図3及び図4で示される従来のクロスヘッド1と同じ構成であると共に、エアシリンダ23を保持するためのブラケット22は、前記ナット3を肉調シリンダ用ロッド8に取付けるための第1取付ねじ21を利用し、この第1取付ねじ21によってナット3とブラケット22を共締めしているため、従来から使用されていてる既存中空成形機のクロスヘッド1に対しても簡単に取付けることができる。
【0018】
前述の構成において、中空成形機10の成形作業が終了した時点で、肉調シリンダ2を作動させて、スピンドル及び肉調シリンダ用ロッド8をナット3と共に上昇させると、コア5が図3及び図5で示されるように、ダイ7の内面7aに接触し、クロスヘッド1のダイギャップ6が閉じられ、溶融樹脂1aの洩れが防止されると共に、クロスヘッド1内の溶融樹脂1aが外気から遮断状態となる。
【0019】
前述の状態で、エアシリンダ23を作動させると、エアシリンダ用ロッド25が前記上面2aに当接し、このエアシリンダ用ロッド25がつっかい棒の役目をなし、スピンドル4及び肉調シリンダ用ロッド8が自重で下方へ降下できなくなり、図3のダイギャップ閉時が継続される。
従って、この状態で図示しない油圧ユニットの電源をオフとして肉調シリンダ2に油圧がかからない状態としても、スピンドル4と肉調シリンダ用ロッド8の自重落下は防止される。
【0020】
次に、中空成形機10による成形を再開する場合には、前述のように、溶融樹脂1aの酸化が防止できているため、エアシリンダ23のエアシリンダ用ロッド25を元の位置に戻すと、スピンドル4と肉調シリンダ用ロッド8の上下動は自在となるため、任意のダイギャップ6に設定して、再び、パリソンの成形を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による中空成形機のエアシリンダは、新規に作られる中空成形機だけでなく、既存機に対しても簡単に取り付けることができ、全ての中空成形機に適用できるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 クロスヘッド
1a 溶融樹脂
2 肉調シリンダ
2a 上面
3 ナット
4 スピンドル
5 コア
6 ダイギャップ
7 ダイ
7a 内壁
8 肉調シリンダ用ロッド
10 中空成形機
21 第1取付ねじ
22 ブラケット
22a 下面
23 エアシリンダ
24 取付ねじ
25 エアシリンダ用ロッド
26 ガイド
27 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(10A)の上部に設けられた肉調シリンダ(2)と、前記肉調シリンダ(2)に上下動自在に設けられ同軸配置のスピンドル(4)及び肉調シリンダ用ロッド(8)と、前記スピンドル(4)と肉調シリンダ用ロッド(8)の上部に設けられた共通のナット(3)と、前記スピンドル(4)の下部に接続されダイ(7)の内面(7a)との間のダイギャップ(6)を形成するためのコア(5)とを備え、前記コア(5)の上下動により前記ダイギャップ(6)を調整してパリソンの肉厚を調整するようにした中空成形機において、
前記ナット(3)に設けられ出入自在なエアシリンダ用ロッド(25)を有するエアシリンダ(23)を有し、前記エアシリンダ用ロッド(25)が前記肉調シリンダ(2)の上面(2a)に当接することにより、前記肉調シリンダ(2)の油圧ユニットの電源オフ後における前記コア(5)及びスピンドル(4)の自重落下を防止することを特徴とする中空成形機。
【請求項2】
前記ナット(3)を肉調シリンダ用ロッド(8)に取り付けるための第1取付ねじ(21)を有し、前記エアシリンダ(23)が取り付けられたブラケット(22)は前記第1取付ねじ(21)によって前記ナット(3)に共締めされていることを特徴とする請求項1記載の中空成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−235499(P2011−235499A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107559(P2010−107559)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】