中空撚り線の製造方法、中空撚り線及び中空撚り線を用いた接触センサ
【課題】長尺化、細径化が容易で、低コストな中空撚り線の製造方法、中空撚り線及び中空撚り線を用いた接触センサを提供する。
【解決手段】熱可塑材料からなるシート材7の一方の面にシート材7の長手方向に伸びた複数本の導線9をシート材7の幅方向に間隔を隔てて配置することによりテープ線4を形成し、テープ線4の一方の面を円柱状の巻き癖ジグ1に向けてテープ線4を螺旋状に巻き付け、加熱され可塑状態のテープ線4を巻き癖ジグ1に巻き付けた状態で冷却することによりテープ線4に巻き癖を形成し、テープ線4を巻き癖ジグ1から離脱させると共にテープ線4を筒状に整形する。
【解決手段】熱可塑材料からなるシート材7の一方の面にシート材7の長手方向に伸びた複数本の導線9をシート材7の幅方向に間隔を隔てて配置することによりテープ線4を形成し、テープ線4の一方の面を円柱状の巻き癖ジグ1に向けてテープ線4を螺旋状に巻き付け、加熱され可塑状態のテープ線4を巻き癖ジグ1に巻き付けた状態で冷却することによりテープ線4に巻き癖を形成し、テープ線4を巻き癖ジグ1から離脱させると共にテープ線4を筒状に整形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空撚り線の製造方法、中空撚り線及び中空撚り線を用いた接触センサに関する。
【背景技術】
【0002】
人、動物、岩石、土砂、乗り物、荷物などの被検出物体が壁や乗り物などの対象物に接触したことを検出する接触センサとして、複数本の導線を外皮の中心の中空部に内蔵した中空撚り線を対象物に取り付けるものが知られている。
【0003】
この中空撚り線は、中心が中空である外皮の内壁面に、複数本の導線が所定の間隔でもって配置され、内蔵された導線同士が中空部を隔てて電気的に絶縁されている。そして、外から外力が加わって外皮が変形すると、導線同士が接触し導通する。このように中空撚り線が押圧されて各導線間が絶縁状態から導通状態へ変化したことを電気回路で検出することにより、被検出物体が対象物に接触したことを検出することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−281906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、中空撚り線は、図5(a)〜図5(c)に示されるように、中空部の母型となる心材(スペーサ)101と、互いに独立した複数本の導線102とから撚り線を形成し、その撚り線に弾性絶縁体からなる外皮103を被覆した後、スペーサ101を長手方向に引き抜いて中空部104を形成する。スペーサ101は、複数本の導線102を撚るときの心となる中心の円柱状部分105と、各導線102間に介在する介在線部106とからなる。
【0006】
図6に示されるように、中空部104は、スペーサ101の円柱状部分105と介在線部106とを除去してなるため、中空部104の断面は、複雑な凹凸に湾曲した輪郭を持つ。
【0007】
従来の中空撚り線は、導線102及び外皮103とスペーサ101との接触摩擦が大きいため、スペーサ101を引き抜くのは容易でない。そこで、従来の製造方法では、外皮103の内部に片端から圧縮空気を送り込むことで、外皮とスペーサとの接触摩擦を抑える工程を必要としている。
【0008】
中空撚り線の利用用途が敷地を囲む塀とか道路沿いの防護壁のような対象物に取り付ける接触センサであると、中空撚り線が長尺であることが要求される。ところが、前述したスペーサ入りの撚り線では長尺になるほど摩擦抵抗が増大し、スペーサの引き抜きが困難となる。このため、長尺の中空撚り線は未だ提供されていない。
【0009】
細径の中空撚り線の製造には、スペーサも細径のものを用いる必要があるが、引き抜きに必要な力に対してスペーサを細くしすぎると、スペーサが応力に耐えられずに破断してしまう。また、外皮にも大きな引っ張り応力がかかるため、外皮の厚さを薄くすることが難しく、細径化は困難であった。
【0010】
また、従来の中空撚り線は、いったんスペーサ入りの撚り線として製造され、それからスペーサを引き抜いて完成する。このため、引き抜いたスペーサは廃棄物となる。この廃棄物としてのスペーサは、中空撚り線を製造した長さ分発生するため、コスト増の原因となっていた。また、発生した廃棄物の廃棄処理又はリサイクル処理には更にコストがかかる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、長尺化、細径化が容易で、低コストな中空撚り線の製造方法、中空撚り線及び中空撚り線を用いた接触センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の製造方法は、熱可塑性材料からなるシート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線を上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置することによりテープ線を形成し、上記テープ線の一方の面を円柱状の巻き癖ジグに向けて上記テープ線を螺旋状に巻き付け、加熱され可塑状態の上記テープ線を上記巻き癖ジグに巻き付けた状態で冷却することにより上記テープ線に巻き癖を形成し、上記テープ線を上記巻き癖ジグから離脱させると共に上記テープ線を筒状に整形するものである。
【0013】
上記巻き癖ジグは、軸方向に高温から低温となる温度勾配を有し、その高温部に上記テープ線が斜め方向から巻き付けられ、そのテープ線が螺旋状の巻き付けによって軸方向に搬送され低温部を経て、上記巻き癖ジグから離脱されてもよい。
【0014】
上記離脱したテープ線を筒状に整形するために整形ジグを用い、該整形ジグは中空円筒に形成され、上記整形ジグ内に取り込まれたテープ線が上記整形ジグの内面に沿って整形されつつ軸方向に搬送され、上記筒状に整形されたテープ線が上記整形ジグの一端から取り出されてもよい。
【0015】
また、本発明に係る中空撚り線は、シート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線が上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置され、そのテープ線が上記導線を内側にして螺旋状に巻かれ筒状に形成されたものである。
【0016】
上記筒状に整形されたテープ線の互いに隣接するテープ線間に隙間が形成され、該隙間を介して上記筒状に整形されたテープ線の内部の導線と外部の電気部品とが接続されてもよい。
【0017】
上記電気部品に代えて、他の中空撚り線が接続されてもよい。
【0018】
また、本発明の接触センサは、上記いずれかの中空撚り線と、上記中空撚り線に接続される検出器とから形成されることを特徴とする中空撚り線を用いたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0020】
(1)長尺化が容易である。
【0021】
(2)細径化が容易である。
【0022】
(3)低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1に示されるように、本発明の中空撚り線の製造方法を実施する製造装置は、円柱状の巻き癖ジグ1と、中空円筒状の整形ジグ2とを有する。
【0025】
また、本発明の中空撚り線3は、テープ線4を円筒状に整形して形成される。テープ線4は、後述するシート材7の一方の面にシート材7の長手方向に伸びた複数本の導線がシート材7の幅方向に間隔を隔てて配置されたものである。
【0026】
巻き癖ジグ1は、製造される中空撚り線3の内径とほぼ等しい外径を有する。テープ線4は、巻き癖ジグ1の軸に対し所定の角度で螺旋状に巻き付けられると共に、巻き癖ジグ1の表面を滑るようにして巻き癖ジグ1の軸方向に継続的に搬送される。
【0027】
ここで、テープ線4を巻き癖ジグ1に対して所定の角度から供給するために、巻き癖ジグ1の一端(テープ線4が供給される一端)にはテープ線4を案内する取り込みガイドローラ5が設けられる。巻き癖ジグ1の表面にテープ線4を所定の角度で案内するための螺旋状の山を設けてもよい。
【0028】
一方、テープ線4を搬送させると共に、巻き癖ジグ1から離脱させるために、巻き癖ジグ1の他端(テープ線4が離脱される一端)には、引き出しガイドローラ6が設けられる。引き出しガイドローラ6は、対向する2つのローラでテープ線4を挟み込みつつこれらのローラを回転させて、巻き癖ジグ1に巻き付けられたテープ線4を引き出し、後述する整形ジグ2へ搬送するものである。
【0029】
巻き癖ジグ1は、軸方向に高温から低温となる温度勾配を有する。巻き癖ジグ1の温度勾配は、テープ線4が供給される一端の温度が高く、他端に向かって低温となるように与えられる。ここで高温とは、テープ線4を構成する熱可塑性を有するシート材7が剛性、弾性を失って可塑状態になる温度であり、低温とはシート材7が所定の剛性あるいは弾性を得て非可塑状態になる温度(例えば、常温)である。巻き癖ジグ1に軸方向の温度勾配を付与する手段については限定しないが、例えば、高温側の端部あるいは内部に熱源があり、低温側が雰囲気によって冷却されることで熱伝導による温度勾配が得られる。
【0030】
取り込みガイドローラ5は、図示しないテープ線4の供給源から巻き癖ジグ1の高温部にテープ線4を送り込む位置に配置される。引き出しガイドローラ6は、巻き癖ジグ1の低温部を経たテープ線4を引き外す(離脱させる)位置に配置される。
【0031】
整形ジグ2は、中空円筒の側面にテープ線4を取り込むための長円形の窓8を形成したものである。整形ジグ2は、巻き癖ジグ2から離脱され引き出しガイドローラ6を経て搬送されたテープ線4が窓8から整形ジグ2内に取り込まれるように、引き出しガイドローラ6に窓8を臨ませて設置される。整形ジグ2の一端は、筒状に整形されたテープ線4(中空撚り線3)が連続的に取り出される出口となっている。
【0032】
テープ線4の製造装置は、図2に示されるように、対向する2つの加熱圧着ドラム21,22により構成される。この製造装置は、図示奥の方から供給される熱可塑性を有するシート材7と、このシート材7とは異なる角度で図示奥の上方から供給される複数本の平行な導線9とを加熱圧着により連続的に一体化してテープ線4として図示手前の方へ搬送するものである。
【0033】
導線9が供給される側に設けられた圧着ドラム21は、図示しない熱源が設けられており、シート材7の一方の面を加熱することができる。これにより、シート材7の一方の面は、導線9の埋め込みが可能な程度に可塑状態にされる。
【0034】
加熱圧着ドラム21,22には図示しない押圧機構が設けられており、シート材7を導線9と共に押圧することができる。
【0035】
一方の加熱圧着ドラム21に、導線9を所定の配列ピッチに案内するための導線案内溝23を形成してもよい。
【0036】
この製造装置は、シート材7の一方の面を加熱により導線9の埋め込みが可能な程度に可塑状態とする加熱工程と、その可塑状態のシート材7の一方の面に導線9を載せる導線配置工程と、そのシート材7と導線9をシート材7の両方の面から押圧することにより、そのシート材7に導線9の一部を埋め込む埋設工程とを有するものである。
【0037】
導線9が埋め込まれたシート材7(テープ線4)は、加熱圧着ドラム21,22の回転により搬送される。また、加熱圧着ドラム21,22の下流(テープ線4が搬送される側)に図示しない搬送ローラを設けてもよい。
【0038】
この実施形態では、導線9が埋め込まれたシート材7の冷却は、加熱圧着ドラム21,22より下流の雰囲気によって行われるが、冷却装置を用いて行ってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、加熱圧着ドラム21に熱源を設けることで、シート材7の一方の面を可塑状態にして導線9を埋め込み、テープ線4を形成する方法を用いたが、テープ線4の形成方法はこれに限定されるものではない。例えば、シート材7に供給される前に導線9を加熱し、加熱された導線9をシート材7に押圧することで、導線9をシート材7に埋め込んでもよい。また、接着剤を用いてシート材7に導線9を設けてもよい。
【0040】
図2のテープ線製造装置は、図1の中空撚り線製造装置の前段に設け、テープ線製造装置が製造したテープ線4を直接、中空撚り線製造装置を供給するようにしてもよい。また、図2のテープ線製造装置で製造したテープ線4をいったん保管しておいて、そのテープ線4を図1の中空撚り線製造装置に供給するようにしてもよい。
【0041】
本発明の詳しい動作をテープ線製造から順に説明する。
【0042】
図2に示されるように、熱可塑性を有するシート材7は、長尺で所定の幅に形成され、その長手方向に搬送されて加熱圧着ドラム21,22の隙間に供給される。同時に、複数本の導線9がシート材7の上方から斜め下に搬送されて加熱圧着ドラム21,22の隙間に供給される。
【0043】
シート材7の幅や厚さは、製造したい中空撚り線3の仕様に応じて決定する。導線9の太さ、本数、配列ピッチも中空撚り線3の仕様に応じて決定する。仕様の一例として、中空撚り線3の外径5.4mm、シート材7の幅12mm、シート材7の厚さ0.35mm、導線9の径0.25mmである。
【0044】
シート材7の材料としては、熱可塑性を有するフッ素樹脂が挙げられる。シート材7(テープ線4)は、中空撚り線3を接触センサとして使用するときに、被検出体の接触に起因する外力で導線9同士が接触するまで変形する程度に軟らかく、風や対象物への取付がもたらす外力では変形せず導線9同士が間隔を保てる程度に硬いことが望ましい。シート材7は、上記要求を満たせる熱可塑性樹脂であればよく、熱可塑性を有するフッ素樹脂に限定する必要はない。
【0045】
加熱圧着ドラム21によって加熱されたシート材7の一方の面は軟化して可塑状態となり、シート材7の一方の面に供給される導線9が加熱圧着ドラム21,22の圧力によってシート材7に埋め込まれる。このときの加熱圧着ドラム21,22の温度と圧力は、導線9をシート材7から露出させたい度合い(埋め込む深さ)やシート材7の可塑状態での軟らかさ、非可塑状態での応力変形の度合いなどによって決定する。そして、露出させたい度合いは、製造したい中空撚り線3の仕様(どの程度の変形で導線同士が導通するか、どの程度の応力でどの程度変形するかなど)に応じて決定する。
【0046】
この実施形態では、加熱工程、導線配置工程、埋設工程を加熱圧着ドラムで一括して行うようにしたが、これらの工程は異なる箇所でそれぞれ専用のジグ、工具によって行ってもよい。
【0047】
加熱圧着ドラム21,22を通過した導線9が埋め込まれたシート材7は、下流に向けて搬送され、搬送中に雰囲気内で冷却されて非可塑状態となる。すなわち、テープ線4が製造される。
【0048】
次に、このテープ線4が図1の中空撚り線製造装置に供給されると、取り込みガイドローラ5は、テープ線4を巻き癖ジグ1の高温部(一端)に所定の角度で斜め方向から送り込む。
【0049】
巻き癖ジグ1の低温部(他端)には、引き出しガイドローラ6が備えられ、テープ線4を巻き癖ジグ1から離脱させるように引き外す。これにより、テープ線4の一端に斜め方向から送り込まれたテープ線4は、巻き癖ジグ1に螺旋状に巻き付けられつつ巻き癖ジグ1の一端から他端へ軸方向に搬送され、引き出しガイドローラ6を経て、整形ジグ2へ搬送される。このとき、テープ線4は導線9が配置された面を巻き癖ジグ1の外周に面するように送り込むものとする。また、取り込みガイドローラ5から巻き癖ジグ1に送り込まれるときの角度は、テープ線4の幅や製造される中空撚り線の径により適宜決定される。
【0050】
巻き癖ジグ1の高温部においてテープ線4は加熱されてシート材7が可塑状態となる。このときのシート材7の軟らかさは、シート材7が応力を蓄えることなく螺旋状に巻き付けられた形状になる程度の軟らかさでよい。よって、巻き癖ジグ1の高温部の温度は、シート材7をその程度の軟らかさにできる温度にしておく。
【0051】
軸方向に搬送されたテープ線4は、巻き癖ジグ1の低温部に至り、冷却される。低温部の温度は、螺旋状に巻き付けられたシート材7がそのままの形状で非可塑状態となる温度にしておく。これにより、螺旋状に巻き付けられたテープ線4が低温部を通過すると、そのシート材7がそのままの形状で非可塑状態となり、所定の剛性、弾性を示すようになる。
【0052】
低温部を通過してシート材7が非可塑状態となったテープ線4は、引き出しガイドローラ6によって巻き癖ジグ1から外される。テープ線4は、巻き癖ジグ1を離脱して引き出しガイドローラ6を経て整形ジグ2に搬送される。このとき、テープ線4は、引き出しガイドローラ6の引っ張り力によって螺旋状ではない形状に変形されるが、螺旋状に戻ろうとする応力が生じる。つまり、螺旋状のまま冷却されたことで巻き癖がついている。
【0053】
テープ線4は、整形ジグ2の窓8から整形ジグ2内に取り込まれる。整形ジグ2内の空間ではテープ線4を変形させる力がないので、テープ線4は、自然状態である螺旋状に戻ろうとする。整形ジグ2内の空間が円柱状であるため、テープ線4は螺旋状に復元し、整形ジグ2の内面に沿って筒状となる。
【0054】
筒状となったテープ線4は、整形ジグ2の内部を軸方向に案内されて整形ジグ2の端部から中空撚り線3として搬出される。
【0055】
巻き癖ジグ1の外径は、製造したい中空撚り線3の細さ(太さ)により適宜決定される。また、整形ジグ2の内径は、テープ線4を内部で筒状に整形すると共に、筒状のテープ線4が軸方向に搬送されるように、中空撚り線3の外径とほぼ等しく形成される。
【0056】
巻き癖ジグ1は、テープ線4の巻き付けによって変形しないように、十分硬いことが望ましい。さらに、巻き癖ジグ1の表面は、テープ線4が滑りながら軸方向に搬送されるように、シート材7や導線9との摩擦が小さいものが好ましい。また、整形ジグ2の材質は、内部を搬送される中空撚り線3(シート材7)との摩擦係数が小さいものが好ましい。本実施形態では、巻き癖ジグ1、整形ジグ2ともステンレス鋼SUS304を用いた。
【0057】
また、本実施形態では、温度勾配を有する巻き癖ジグ1を用いてテープ線4に巻き癖を付けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、巻き癖ジグ1に巻き付ける前にテープ線4を加熱して可塑状態にし、可塑状態のテープ線4を温度勾配を有しない、かつ低温に保たれた巻き癖ジグに巻き付けて冷却することで、テープ線4に巻き癖を付けてもよい。
【0058】
以上説明したように、本発明の中空撚り線の製造方法によれば、従来のような中空部の母型となる心材を用いない。従来の外皮に相当する本発明の筒状にしたテープ線4は、心材を引き抜く工程がないため、伸びたり裂けたりすることを考慮する必要がなく、従来の外皮より薄くすることができる。よって、中空撚り線の細線化、軽量化が図られる。
【0059】
本実施形態で製造される中空撚り線3は、隣り合うテープ線4とテープ線4、つまり一周回前と後のテープ線4同士が接着などにより固定されることなく、テープ線4が筒状に形成されたものである。これにより、隣り合うテープ線4同士が相互に自由となり、中空撚り線3の可撓性が高いため、中空撚り線3の対象物への布設が容易になる。
【0060】
次に、中空撚り線に外皮を設ける実施形態を説明する。
【0061】
前実施形態において筒状に形成されたテープ線4の外周を外皮で覆うために、例えば、整形ジグ2内で外皮を形成する。外皮は、低温(常温)において非可塑状態(硬化)となり、高温において可塑状態(例えば、液状)となる熱可塑材、又は低温(常温)の初期状態において液状であり、高温において非可逆的に硬化する熱硬化材、又は紫外線照射前には液状であり、紫外線照射により非可逆的に硬化する紫外線硬化材を材料として用いる。なお、ここで言う高温とは、シート材7が可塑状態となる温度よりは低い温度である。具体的な外皮の材料は、熱可塑剤としてフッ素樹脂、熱硬化材としてエポキシ樹脂、紫外線硬化材としてウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0062】
液状の外皮材料を筒状のテープ線4の外周に塗布すると、隣り合うテープ線4とテープ線4が接している合わせ目には、毛細管現象により外皮材料が行き渡る。この状態で外皮材料を硬化させれば外皮が形成される。外皮材料が熱可塑材の場合は高温で塗布を行い、低温で硬化させる。また、外皮材料が熱硬化材の場合は低温で塗布を行い、高温で硬化させる。
【0063】
例えば、図4(a)に示した筒状のテープ線4に、図4(b)に示すように外周に液状の外皮材41を噴霧によって塗布する。図4(c)に示すように、この外皮材41を硬化させることにより、図4(d)に示すように、外皮42を形成する。
【0064】
このようにして、テープ線4の外周を外皮で覆うことにより、外部雰囲気の水分、油分、塵埃などがテープ線間の隙間を介して中空撚り線3の中に入ることが防止される。
【0065】
上記実施例では、隣り合うテープ線4同士を接着するものとしたが、隣り合うテープ線4の縁同士を融着することによりテープ線間の隙間を塞ぐ構造でもよい。
【0066】
次に、外皮を形成する他の実施形態を説明する。
【0067】
図3(a)に示した筒状のテープ線4に、図3(b)に示すように目張りテープ31を巻き回す。これにより、筒状のテープ線4が目張りされ、外皮材が中空撚り線の中に進入することが防止される。目張りテープ31は、周回前の目張りテープ31の一部に周回後の目張りテープ31の一部に重なるように巻くのが好ましい。また、テープ線4の巻き回し方向と、目張りテープ31の巻き回し方向とが逆になるようにしてもよい。目張りテープ31は、テープ線4との密着性を考慮して選択されるとよい。本実施形態では、ポリエステルテープを用いた。
【0068】
図3(c)に示すように、この目張りされたテープ線32を液状の外皮材33に浸漬する。図3(d)に示すように、テープ線32を液状の外皮材から取り出すと、目張りテープ31の外周に外皮材33が付着した状態となる。図3(e)に示すように、この外皮材33を硬化させて外皮34を形成する。目張りされたテープ線32を外皮材33に浸漬させる際は、テープ線32の先端又は後端から外皮材33が入り込まないように、図示しないキャップなどによりテープ線32の先端及び後端を覆うとよい。
【0069】
なお、図3は、説明のためテープ線32を液状の外皮材33に浸漬するときのテープ線搬送方向と、テープ線32を液状の外皮材33から取り出すときのテープ線搬送方向とが逆方向としたが、テープ線搬送方向を常に一定にし、テープ線32が液状の外皮材33を通過して浸入した側とは反対側から取り出されるようにしてもよい。
【0070】
図3の方法、図4の方法のように液状の外皮材を塗布してから硬化させる方法において熱を利用する場合は、外皮材の硬化温度をシート材が可塑化する温度より低くする点は既に述べた通りである。
【0071】
これらの方法で形成した外皮(以下、内層外皮と言い換える)の外周にさらに外層外皮を被覆させてもよい。このとき、例えば、熱可塑材で形成した内層外皮に対して紫外線硬化材で形成した外層外皮を設けるなど、内層外皮とは種類の異なる材料で外層外皮を形成してもよい。中空撚り線が使用される環境による要求仕様により適宜材料を選択するとよい。
【0072】
筒状のテープ線4に対する外皮の形成は、図1の整形ジグの内部において行ってもよいし、図1の整形ジグの外部において整形ジグから搬出された筒状のテープ線に対して行ってもよい。
【0073】
このようにして製造した中空撚り線は、例えば、図7のように使用する。
【0074】
図7に示されるように、中空撚り線71を金網等からなるフェンス72に取り付ける。中空撚り線71はフェンス72の長手方向に引き回すことで、フェンス72を接触センサの対象物とすることができる。この中空撚り線71を検出器73に検出部として接続し、本発明の接触センサ74を構成する。検出器73は、図示しないその内部に、中空撚り線71中の導線同士の絶縁から導通への変化を検出する電気回路、その電気信号に基づいて被検出物体が対象物に接触したことを認識する情報処理回路、その結果を人に知らせる報知器等を備える。
【0075】
また、中空撚り線は、例えば、図8のように回路を組むことができる。
【0076】
図8に示されるように、中空撚り線81の一端では、中空撚り線81中の4本の導線82のうち2本の間に抵抗器83を挿入して接続し、残り2本の導線82はそれぞれ開放して出力端84とする。中空撚り線81の反対端には、抵抗器83で繋がる2本の導線が残り2本の導線に繋がるよう、折り返し回路85を形成する。これにより、抵抗器83を直列に入れ、長手方向に往復してコ字状に折り返された導線ループ86が形成される。導線ループ86の出力端84を図7の検出器73に接続する。
【0077】
この中空撚り線81に外力がないときは、図9に示されるように、中空撚り線81が変形しないので、導線82同士が互いに離間している。このとき、出力端84に接続された検出器73では抵抗器83の抵抗値が検出される。
【0078】
中空撚り線81に外力が加わると、図10に示されるように、中空撚り線81が扁平に変形し、導線82同士が接触して導通する。図8の回路における両出力端84に接続された導線82同士が導通すると、出力端84に現れる抵抗値が小さくなる。
【0079】
よって、図7の検出器73において、これを検出して被検出物体が対象物に接触したことを認識することができる。
【0080】
次に、本発明の他の実施形態を図11を用いて説明する。
【0081】
本実施形態の中空撚り線111は、隣り合うテープ線4とテープ線4、つまり一周回前と後のテープ線4同士が接着などにより固定されることなく、テープ線4が筒状に形成されたものであると共に、外皮が形成されないものである。その他の点では前述の実施形態と同じである。つまり、中空撚り線111は、隣り合うテープ線4同士が接してはいても固定はされず、あるいはテープ線4同士間に隙間があってもよい。これにより、隣り合うテープ線4同士が相互に自由となり、中空撚り線111の可撓性が向上し、対象物への布設が容易になる。
【0082】
また、図11に示されるように、一条の中空撚り線111を検出器73(図7)に直接、接続された本線111aとする。この本線111aに対し、他の中空撚り線111をブランチ111b、111cとして接続する。さらに、ブランチ111cにはブランチ111dを接続する。このようにして、任意の個数のブランチを設け、任意のツリー構造で布設することができる。
【0083】
これにより、従来の中空撚り線を用いた接触センサでは配線が困難であった複雑な構造を有する対象物においても配線が容易となる。
【0084】
このとき、各中空撚り線111内の複数の導線3は、各々一対一で接続される。導線3の接続は、テープ線4同士間の隙間を通して行うことができる。テープ線4の隣接箇所は螺旋状に連続的に存在するので、中空撚り線111の長手方向任意の箇所において接続を行うことができる。
【0085】
具体的なブランチの形成方法は、図12(a)に示されるように、本線111aとなっている中空撚り線111のテープ線4同士間の隙間を所定の幅dに拡げてギャップ部112を形成する。ギャップ部112では一定のピッチで螺旋となっていたテープ線4のピッチがそこだけ伸びる。
【0086】
一方、図12(b)に示されるように、ジョイント部材113をあらかじめ形成しておく。ジョイント部材113は、ギャップ部112の幅dより長く形成された本線パイプ114と、この本線パイプ114の中間に直交するブランチパイプ115とからなるT字形の継ぎ手である。
【0087】
ジョイント部材113は、すでに布設された中空撚り線111に追加して設けられるように、本線パイプ114を断面(図示せず)がC字形のパイプ状に形成し、その開口部116から中空撚り線111を本線パイプ114内に嵌め込むことができるようにする。このとき、ギャップ部112の両端に位置する筒状の中空撚り線111をC字形の本線パイプ114により保持することで、ギャップ部112の形成を維持することができる。さらに、本線パイプ114に本線111aのギャップ部112を嵌め込んだとき、ギャップ部112の内面となっているテープ線4の導線3を設けた面が本線パイプ94の開口部116から見えるようになる。
【0088】
また、ブランチパイプ115は、ブランチ111bとなる中空撚り線111の一端が挿入できるようになっており、本線パイプ114に近い側に開口部118が形成されている。ブランチパイプ115に中空撚り線111の一端を挿入したとき、その端面が開口部118から見えるようになる。
【0089】
なお、ジョイント部材113を構成する各パイプの内径は、中空撚り線111の外径とほぼ等しく形成する。
【0090】
これにより、すでに布設済みの中空撚り線111であっても、ジョイント部材113に中空撚り線111を嵌め込み、中空撚り線111にギャップ部112を形成しつつ中空撚り線111を保持することができる。このとき、ジョイント部材113の内壁面と筒状の中空撚り線111の外壁面とを接着剤などにより固定するとよい。
【0091】
ジョイント部材113の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、すでに布設済みの中空撚り線111にギャップ部112を形成し、そのギャップ部112を保持できるものであればよい。また、ジョイント部材113と中空撚り線111とを固定する接着剤の代わりに、ジョイント部材113に中空撚り線111の動きを規制する保持部を設けてもよい。
【0092】
図12(c)のジョイント部材113は透明に描いてある。図示されるように、ブランチパイプ115に挿入した中空撚り線111の一端の端面に現れている導線3と、本線パイプ114に嵌められた中空撚り線111のギャップ部112に現れている導線3とを一対一で配線接続する。配線には、短絡を避けるため、被覆線117を用いる。この配線作業の後は、開口部116,118を封じるとよい。
【0093】
この実施形態によれば、いったん布設がなされた中空撚り線111に対して、さらに中空撚り線111を追加して布設することが容易となる。
【0094】
この実施形態では、本線111aとなる中空撚り線111にブランチ111bを接続するものとしたが、ブランチとして中空撚り線を接続する以外に、電気部品を適宜接続しても良い。
【0095】
例えば、接触センサを構成する中空撚り線において、検出器から所定の距離にスイッチ機構を有する電気部品を接続することで、上記電気部品が接続された箇所より先の中空撚り線を接触検出に使用するか又は不使用とするかを切り換え可能な回路を構成することができる。
【0096】
また、中空撚り線に他の検出装置を切り換え可能に接続することで、上記他の検出装置からの検出信号を検出器73(図7)側に適宜出力することができる。これにより、中空撚り線を用いた接触センサに他の検出機能を付与した複合センサを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態を示す中空撚り線製造装置の要部外観図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すテープ線製造装置の要部外観図である。
【図3】(a)〜(e)は、外皮の被覆方法の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、外皮の被覆方法の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、従来の中空撚り線の製造工程図である。
【図6】従来の中空撚り線の断面図である。
【図7】本発明の接触センサの構成図である。
【図8】本発明の接触センサにおける中空撚り線の回路図である。
【図9】本発明で製造した中空撚り線の断面図である。
【図10】本発明の中空撚り線の押圧時における断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す中空撚り線の布設図である。
【図12】(a)〜(c)は、本発明のブランチの形成方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0098】
1 巻き癖ジグ
2 整形ジグ
3 中空撚り線
4 テープ線
5 取り込みガイドローラ
6 引き出しガイドローラ
7 シート材
8 窓
9 導線
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空撚り線の製造方法、中空撚り線及び中空撚り線を用いた接触センサに関する。
【背景技術】
【0002】
人、動物、岩石、土砂、乗り物、荷物などの被検出物体が壁や乗り物などの対象物に接触したことを検出する接触センサとして、複数本の導線を外皮の中心の中空部に内蔵した中空撚り線を対象物に取り付けるものが知られている。
【0003】
この中空撚り線は、中心が中空である外皮の内壁面に、複数本の導線が所定の間隔でもって配置され、内蔵された導線同士が中空部を隔てて電気的に絶縁されている。そして、外から外力が加わって外皮が変形すると、導線同士が接触し導通する。このように中空撚り線が押圧されて各導線間が絶縁状態から導通状態へ変化したことを電気回路で検出することにより、被検出物体が対象物に接触したことを検出することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−281906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、中空撚り線は、図5(a)〜図5(c)に示されるように、中空部の母型となる心材(スペーサ)101と、互いに独立した複数本の導線102とから撚り線を形成し、その撚り線に弾性絶縁体からなる外皮103を被覆した後、スペーサ101を長手方向に引き抜いて中空部104を形成する。スペーサ101は、複数本の導線102を撚るときの心となる中心の円柱状部分105と、各導線102間に介在する介在線部106とからなる。
【0006】
図6に示されるように、中空部104は、スペーサ101の円柱状部分105と介在線部106とを除去してなるため、中空部104の断面は、複雑な凹凸に湾曲した輪郭を持つ。
【0007】
従来の中空撚り線は、導線102及び外皮103とスペーサ101との接触摩擦が大きいため、スペーサ101を引き抜くのは容易でない。そこで、従来の製造方法では、外皮103の内部に片端から圧縮空気を送り込むことで、外皮とスペーサとの接触摩擦を抑える工程を必要としている。
【0008】
中空撚り線の利用用途が敷地を囲む塀とか道路沿いの防護壁のような対象物に取り付ける接触センサであると、中空撚り線が長尺であることが要求される。ところが、前述したスペーサ入りの撚り線では長尺になるほど摩擦抵抗が増大し、スペーサの引き抜きが困難となる。このため、長尺の中空撚り線は未だ提供されていない。
【0009】
細径の中空撚り線の製造には、スペーサも細径のものを用いる必要があるが、引き抜きに必要な力に対してスペーサを細くしすぎると、スペーサが応力に耐えられずに破断してしまう。また、外皮にも大きな引っ張り応力がかかるため、外皮の厚さを薄くすることが難しく、細径化は困難であった。
【0010】
また、従来の中空撚り線は、いったんスペーサ入りの撚り線として製造され、それからスペーサを引き抜いて完成する。このため、引き抜いたスペーサは廃棄物となる。この廃棄物としてのスペーサは、中空撚り線を製造した長さ分発生するため、コスト増の原因となっていた。また、発生した廃棄物の廃棄処理又はリサイクル処理には更にコストがかかる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、長尺化、細径化が容易で、低コストな中空撚り線の製造方法、中空撚り線及び中空撚り線を用いた接触センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の製造方法は、熱可塑性材料からなるシート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線を上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置することによりテープ線を形成し、上記テープ線の一方の面を円柱状の巻き癖ジグに向けて上記テープ線を螺旋状に巻き付け、加熱され可塑状態の上記テープ線を上記巻き癖ジグに巻き付けた状態で冷却することにより上記テープ線に巻き癖を形成し、上記テープ線を上記巻き癖ジグから離脱させると共に上記テープ線を筒状に整形するものである。
【0013】
上記巻き癖ジグは、軸方向に高温から低温となる温度勾配を有し、その高温部に上記テープ線が斜め方向から巻き付けられ、そのテープ線が螺旋状の巻き付けによって軸方向に搬送され低温部を経て、上記巻き癖ジグから離脱されてもよい。
【0014】
上記離脱したテープ線を筒状に整形するために整形ジグを用い、該整形ジグは中空円筒に形成され、上記整形ジグ内に取り込まれたテープ線が上記整形ジグの内面に沿って整形されつつ軸方向に搬送され、上記筒状に整形されたテープ線が上記整形ジグの一端から取り出されてもよい。
【0015】
また、本発明に係る中空撚り線は、シート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線が上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置され、そのテープ線が上記導線を内側にして螺旋状に巻かれ筒状に形成されたものである。
【0016】
上記筒状に整形されたテープ線の互いに隣接するテープ線間に隙間が形成され、該隙間を介して上記筒状に整形されたテープ線の内部の導線と外部の電気部品とが接続されてもよい。
【0017】
上記電気部品に代えて、他の中空撚り線が接続されてもよい。
【0018】
また、本発明の接触センサは、上記いずれかの中空撚り線と、上記中空撚り線に接続される検出器とから形成されることを特徴とする中空撚り線を用いたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0020】
(1)長尺化が容易である。
【0021】
(2)細径化が容易である。
【0022】
(3)低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1に示されるように、本発明の中空撚り線の製造方法を実施する製造装置は、円柱状の巻き癖ジグ1と、中空円筒状の整形ジグ2とを有する。
【0025】
また、本発明の中空撚り線3は、テープ線4を円筒状に整形して形成される。テープ線4は、後述するシート材7の一方の面にシート材7の長手方向に伸びた複数本の導線がシート材7の幅方向に間隔を隔てて配置されたものである。
【0026】
巻き癖ジグ1は、製造される中空撚り線3の内径とほぼ等しい外径を有する。テープ線4は、巻き癖ジグ1の軸に対し所定の角度で螺旋状に巻き付けられると共に、巻き癖ジグ1の表面を滑るようにして巻き癖ジグ1の軸方向に継続的に搬送される。
【0027】
ここで、テープ線4を巻き癖ジグ1に対して所定の角度から供給するために、巻き癖ジグ1の一端(テープ線4が供給される一端)にはテープ線4を案内する取り込みガイドローラ5が設けられる。巻き癖ジグ1の表面にテープ線4を所定の角度で案内するための螺旋状の山を設けてもよい。
【0028】
一方、テープ線4を搬送させると共に、巻き癖ジグ1から離脱させるために、巻き癖ジグ1の他端(テープ線4が離脱される一端)には、引き出しガイドローラ6が設けられる。引き出しガイドローラ6は、対向する2つのローラでテープ線4を挟み込みつつこれらのローラを回転させて、巻き癖ジグ1に巻き付けられたテープ線4を引き出し、後述する整形ジグ2へ搬送するものである。
【0029】
巻き癖ジグ1は、軸方向に高温から低温となる温度勾配を有する。巻き癖ジグ1の温度勾配は、テープ線4が供給される一端の温度が高く、他端に向かって低温となるように与えられる。ここで高温とは、テープ線4を構成する熱可塑性を有するシート材7が剛性、弾性を失って可塑状態になる温度であり、低温とはシート材7が所定の剛性あるいは弾性を得て非可塑状態になる温度(例えば、常温)である。巻き癖ジグ1に軸方向の温度勾配を付与する手段については限定しないが、例えば、高温側の端部あるいは内部に熱源があり、低温側が雰囲気によって冷却されることで熱伝導による温度勾配が得られる。
【0030】
取り込みガイドローラ5は、図示しないテープ線4の供給源から巻き癖ジグ1の高温部にテープ線4を送り込む位置に配置される。引き出しガイドローラ6は、巻き癖ジグ1の低温部を経たテープ線4を引き外す(離脱させる)位置に配置される。
【0031】
整形ジグ2は、中空円筒の側面にテープ線4を取り込むための長円形の窓8を形成したものである。整形ジグ2は、巻き癖ジグ2から離脱され引き出しガイドローラ6を経て搬送されたテープ線4が窓8から整形ジグ2内に取り込まれるように、引き出しガイドローラ6に窓8を臨ませて設置される。整形ジグ2の一端は、筒状に整形されたテープ線4(中空撚り線3)が連続的に取り出される出口となっている。
【0032】
テープ線4の製造装置は、図2に示されるように、対向する2つの加熱圧着ドラム21,22により構成される。この製造装置は、図示奥の方から供給される熱可塑性を有するシート材7と、このシート材7とは異なる角度で図示奥の上方から供給される複数本の平行な導線9とを加熱圧着により連続的に一体化してテープ線4として図示手前の方へ搬送するものである。
【0033】
導線9が供給される側に設けられた圧着ドラム21は、図示しない熱源が設けられており、シート材7の一方の面を加熱することができる。これにより、シート材7の一方の面は、導線9の埋め込みが可能な程度に可塑状態にされる。
【0034】
加熱圧着ドラム21,22には図示しない押圧機構が設けられており、シート材7を導線9と共に押圧することができる。
【0035】
一方の加熱圧着ドラム21に、導線9を所定の配列ピッチに案内するための導線案内溝23を形成してもよい。
【0036】
この製造装置は、シート材7の一方の面を加熱により導線9の埋め込みが可能な程度に可塑状態とする加熱工程と、その可塑状態のシート材7の一方の面に導線9を載せる導線配置工程と、そのシート材7と導線9をシート材7の両方の面から押圧することにより、そのシート材7に導線9の一部を埋め込む埋設工程とを有するものである。
【0037】
導線9が埋め込まれたシート材7(テープ線4)は、加熱圧着ドラム21,22の回転により搬送される。また、加熱圧着ドラム21,22の下流(テープ線4が搬送される側)に図示しない搬送ローラを設けてもよい。
【0038】
この実施形態では、導線9が埋め込まれたシート材7の冷却は、加熱圧着ドラム21,22より下流の雰囲気によって行われるが、冷却装置を用いて行ってもよい。
【0039】
また、本実施形態では、加熱圧着ドラム21に熱源を設けることで、シート材7の一方の面を可塑状態にして導線9を埋め込み、テープ線4を形成する方法を用いたが、テープ線4の形成方法はこれに限定されるものではない。例えば、シート材7に供給される前に導線9を加熱し、加熱された導線9をシート材7に押圧することで、導線9をシート材7に埋め込んでもよい。また、接着剤を用いてシート材7に導線9を設けてもよい。
【0040】
図2のテープ線製造装置は、図1の中空撚り線製造装置の前段に設け、テープ線製造装置が製造したテープ線4を直接、中空撚り線製造装置を供給するようにしてもよい。また、図2のテープ線製造装置で製造したテープ線4をいったん保管しておいて、そのテープ線4を図1の中空撚り線製造装置に供給するようにしてもよい。
【0041】
本発明の詳しい動作をテープ線製造から順に説明する。
【0042】
図2に示されるように、熱可塑性を有するシート材7は、長尺で所定の幅に形成され、その長手方向に搬送されて加熱圧着ドラム21,22の隙間に供給される。同時に、複数本の導線9がシート材7の上方から斜め下に搬送されて加熱圧着ドラム21,22の隙間に供給される。
【0043】
シート材7の幅や厚さは、製造したい中空撚り線3の仕様に応じて決定する。導線9の太さ、本数、配列ピッチも中空撚り線3の仕様に応じて決定する。仕様の一例として、中空撚り線3の外径5.4mm、シート材7の幅12mm、シート材7の厚さ0.35mm、導線9の径0.25mmである。
【0044】
シート材7の材料としては、熱可塑性を有するフッ素樹脂が挙げられる。シート材7(テープ線4)は、中空撚り線3を接触センサとして使用するときに、被検出体の接触に起因する外力で導線9同士が接触するまで変形する程度に軟らかく、風や対象物への取付がもたらす外力では変形せず導線9同士が間隔を保てる程度に硬いことが望ましい。シート材7は、上記要求を満たせる熱可塑性樹脂であればよく、熱可塑性を有するフッ素樹脂に限定する必要はない。
【0045】
加熱圧着ドラム21によって加熱されたシート材7の一方の面は軟化して可塑状態となり、シート材7の一方の面に供給される導線9が加熱圧着ドラム21,22の圧力によってシート材7に埋め込まれる。このときの加熱圧着ドラム21,22の温度と圧力は、導線9をシート材7から露出させたい度合い(埋め込む深さ)やシート材7の可塑状態での軟らかさ、非可塑状態での応力変形の度合いなどによって決定する。そして、露出させたい度合いは、製造したい中空撚り線3の仕様(どの程度の変形で導線同士が導通するか、どの程度の応力でどの程度変形するかなど)に応じて決定する。
【0046】
この実施形態では、加熱工程、導線配置工程、埋設工程を加熱圧着ドラムで一括して行うようにしたが、これらの工程は異なる箇所でそれぞれ専用のジグ、工具によって行ってもよい。
【0047】
加熱圧着ドラム21,22を通過した導線9が埋め込まれたシート材7は、下流に向けて搬送され、搬送中に雰囲気内で冷却されて非可塑状態となる。すなわち、テープ線4が製造される。
【0048】
次に、このテープ線4が図1の中空撚り線製造装置に供給されると、取り込みガイドローラ5は、テープ線4を巻き癖ジグ1の高温部(一端)に所定の角度で斜め方向から送り込む。
【0049】
巻き癖ジグ1の低温部(他端)には、引き出しガイドローラ6が備えられ、テープ線4を巻き癖ジグ1から離脱させるように引き外す。これにより、テープ線4の一端に斜め方向から送り込まれたテープ線4は、巻き癖ジグ1に螺旋状に巻き付けられつつ巻き癖ジグ1の一端から他端へ軸方向に搬送され、引き出しガイドローラ6を経て、整形ジグ2へ搬送される。このとき、テープ線4は導線9が配置された面を巻き癖ジグ1の外周に面するように送り込むものとする。また、取り込みガイドローラ5から巻き癖ジグ1に送り込まれるときの角度は、テープ線4の幅や製造される中空撚り線の径により適宜決定される。
【0050】
巻き癖ジグ1の高温部においてテープ線4は加熱されてシート材7が可塑状態となる。このときのシート材7の軟らかさは、シート材7が応力を蓄えることなく螺旋状に巻き付けられた形状になる程度の軟らかさでよい。よって、巻き癖ジグ1の高温部の温度は、シート材7をその程度の軟らかさにできる温度にしておく。
【0051】
軸方向に搬送されたテープ線4は、巻き癖ジグ1の低温部に至り、冷却される。低温部の温度は、螺旋状に巻き付けられたシート材7がそのままの形状で非可塑状態となる温度にしておく。これにより、螺旋状に巻き付けられたテープ線4が低温部を通過すると、そのシート材7がそのままの形状で非可塑状態となり、所定の剛性、弾性を示すようになる。
【0052】
低温部を通過してシート材7が非可塑状態となったテープ線4は、引き出しガイドローラ6によって巻き癖ジグ1から外される。テープ線4は、巻き癖ジグ1を離脱して引き出しガイドローラ6を経て整形ジグ2に搬送される。このとき、テープ線4は、引き出しガイドローラ6の引っ張り力によって螺旋状ではない形状に変形されるが、螺旋状に戻ろうとする応力が生じる。つまり、螺旋状のまま冷却されたことで巻き癖がついている。
【0053】
テープ線4は、整形ジグ2の窓8から整形ジグ2内に取り込まれる。整形ジグ2内の空間ではテープ線4を変形させる力がないので、テープ線4は、自然状態である螺旋状に戻ろうとする。整形ジグ2内の空間が円柱状であるため、テープ線4は螺旋状に復元し、整形ジグ2の内面に沿って筒状となる。
【0054】
筒状となったテープ線4は、整形ジグ2の内部を軸方向に案内されて整形ジグ2の端部から中空撚り線3として搬出される。
【0055】
巻き癖ジグ1の外径は、製造したい中空撚り線3の細さ(太さ)により適宜決定される。また、整形ジグ2の内径は、テープ線4を内部で筒状に整形すると共に、筒状のテープ線4が軸方向に搬送されるように、中空撚り線3の外径とほぼ等しく形成される。
【0056】
巻き癖ジグ1は、テープ線4の巻き付けによって変形しないように、十分硬いことが望ましい。さらに、巻き癖ジグ1の表面は、テープ線4が滑りながら軸方向に搬送されるように、シート材7や導線9との摩擦が小さいものが好ましい。また、整形ジグ2の材質は、内部を搬送される中空撚り線3(シート材7)との摩擦係数が小さいものが好ましい。本実施形態では、巻き癖ジグ1、整形ジグ2ともステンレス鋼SUS304を用いた。
【0057】
また、本実施形態では、温度勾配を有する巻き癖ジグ1を用いてテープ線4に巻き癖を付けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、巻き癖ジグ1に巻き付ける前にテープ線4を加熱して可塑状態にし、可塑状態のテープ線4を温度勾配を有しない、かつ低温に保たれた巻き癖ジグに巻き付けて冷却することで、テープ線4に巻き癖を付けてもよい。
【0058】
以上説明したように、本発明の中空撚り線の製造方法によれば、従来のような中空部の母型となる心材を用いない。従来の外皮に相当する本発明の筒状にしたテープ線4は、心材を引き抜く工程がないため、伸びたり裂けたりすることを考慮する必要がなく、従来の外皮より薄くすることができる。よって、中空撚り線の細線化、軽量化が図られる。
【0059】
本実施形態で製造される中空撚り線3は、隣り合うテープ線4とテープ線4、つまり一周回前と後のテープ線4同士が接着などにより固定されることなく、テープ線4が筒状に形成されたものである。これにより、隣り合うテープ線4同士が相互に自由となり、中空撚り線3の可撓性が高いため、中空撚り線3の対象物への布設が容易になる。
【0060】
次に、中空撚り線に外皮を設ける実施形態を説明する。
【0061】
前実施形態において筒状に形成されたテープ線4の外周を外皮で覆うために、例えば、整形ジグ2内で外皮を形成する。外皮は、低温(常温)において非可塑状態(硬化)となり、高温において可塑状態(例えば、液状)となる熱可塑材、又は低温(常温)の初期状態において液状であり、高温において非可逆的に硬化する熱硬化材、又は紫外線照射前には液状であり、紫外線照射により非可逆的に硬化する紫外線硬化材を材料として用いる。なお、ここで言う高温とは、シート材7が可塑状態となる温度よりは低い温度である。具体的な外皮の材料は、熱可塑剤としてフッ素樹脂、熱硬化材としてエポキシ樹脂、紫外線硬化材としてウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0062】
液状の外皮材料を筒状のテープ線4の外周に塗布すると、隣り合うテープ線4とテープ線4が接している合わせ目には、毛細管現象により外皮材料が行き渡る。この状態で外皮材料を硬化させれば外皮が形成される。外皮材料が熱可塑材の場合は高温で塗布を行い、低温で硬化させる。また、外皮材料が熱硬化材の場合は低温で塗布を行い、高温で硬化させる。
【0063】
例えば、図4(a)に示した筒状のテープ線4に、図4(b)に示すように外周に液状の外皮材41を噴霧によって塗布する。図4(c)に示すように、この外皮材41を硬化させることにより、図4(d)に示すように、外皮42を形成する。
【0064】
このようにして、テープ線4の外周を外皮で覆うことにより、外部雰囲気の水分、油分、塵埃などがテープ線間の隙間を介して中空撚り線3の中に入ることが防止される。
【0065】
上記実施例では、隣り合うテープ線4同士を接着するものとしたが、隣り合うテープ線4の縁同士を融着することによりテープ線間の隙間を塞ぐ構造でもよい。
【0066】
次に、外皮を形成する他の実施形態を説明する。
【0067】
図3(a)に示した筒状のテープ線4に、図3(b)に示すように目張りテープ31を巻き回す。これにより、筒状のテープ線4が目張りされ、外皮材が中空撚り線の中に進入することが防止される。目張りテープ31は、周回前の目張りテープ31の一部に周回後の目張りテープ31の一部に重なるように巻くのが好ましい。また、テープ線4の巻き回し方向と、目張りテープ31の巻き回し方向とが逆になるようにしてもよい。目張りテープ31は、テープ線4との密着性を考慮して選択されるとよい。本実施形態では、ポリエステルテープを用いた。
【0068】
図3(c)に示すように、この目張りされたテープ線32を液状の外皮材33に浸漬する。図3(d)に示すように、テープ線32を液状の外皮材から取り出すと、目張りテープ31の外周に外皮材33が付着した状態となる。図3(e)に示すように、この外皮材33を硬化させて外皮34を形成する。目張りされたテープ線32を外皮材33に浸漬させる際は、テープ線32の先端又は後端から外皮材33が入り込まないように、図示しないキャップなどによりテープ線32の先端及び後端を覆うとよい。
【0069】
なお、図3は、説明のためテープ線32を液状の外皮材33に浸漬するときのテープ線搬送方向と、テープ線32を液状の外皮材33から取り出すときのテープ線搬送方向とが逆方向としたが、テープ線搬送方向を常に一定にし、テープ線32が液状の外皮材33を通過して浸入した側とは反対側から取り出されるようにしてもよい。
【0070】
図3の方法、図4の方法のように液状の外皮材を塗布してから硬化させる方法において熱を利用する場合は、外皮材の硬化温度をシート材が可塑化する温度より低くする点は既に述べた通りである。
【0071】
これらの方法で形成した外皮(以下、内層外皮と言い換える)の外周にさらに外層外皮を被覆させてもよい。このとき、例えば、熱可塑材で形成した内層外皮に対して紫外線硬化材で形成した外層外皮を設けるなど、内層外皮とは種類の異なる材料で外層外皮を形成してもよい。中空撚り線が使用される環境による要求仕様により適宜材料を選択するとよい。
【0072】
筒状のテープ線4に対する外皮の形成は、図1の整形ジグの内部において行ってもよいし、図1の整形ジグの外部において整形ジグから搬出された筒状のテープ線に対して行ってもよい。
【0073】
このようにして製造した中空撚り線は、例えば、図7のように使用する。
【0074】
図7に示されるように、中空撚り線71を金網等からなるフェンス72に取り付ける。中空撚り線71はフェンス72の長手方向に引き回すことで、フェンス72を接触センサの対象物とすることができる。この中空撚り線71を検出器73に検出部として接続し、本発明の接触センサ74を構成する。検出器73は、図示しないその内部に、中空撚り線71中の導線同士の絶縁から導通への変化を検出する電気回路、その電気信号に基づいて被検出物体が対象物に接触したことを認識する情報処理回路、その結果を人に知らせる報知器等を備える。
【0075】
また、中空撚り線は、例えば、図8のように回路を組むことができる。
【0076】
図8に示されるように、中空撚り線81の一端では、中空撚り線81中の4本の導線82のうち2本の間に抵抗器83を挿入して接続し、残り2本の導線82はそれぞれ開放して出力端84とする。中空撚り線81の反対端には、抵抗器83で繋がる2本の導線が残り2本の導線に繋がるよう、折り返し回路85を形成する。これにより、抵抗器83を直列に入れ、長手方向に往復してコ字状に折り返された導線ループ86が形成される。導線ループ86の出力端84を図7の検出器73に接続する。
【0077】
この中空撚り線81に外力がないときは、図9に示されるように、中空撚り線81が変形しないので、導線82同士が互いに離間している。このとき、出力端84に接続された検出器73では抵抗器83の抵抗値が検出される。
【0078】
中空撚り線81に外力が加わると、図10に示されるように、中空撚り線81が扁平に変形し、導線82同士が接触して導通する。図8の回路における両出力端84に接続された導線82同士が導通すると、出力端84に現れる抵抗値が小さくなる。
【0079】
よって、図7の検出器73において、これを検出して被検出物体が対象物に接触したことを認識することができる。
【0080】
次に、本発明の他の実施形態を図11を用いて説明する。
【0081】
本実施形態の中空撚り線111は、隣り合うテープ線4とテープ線4、つまり一周回前と後のテープ線4同士が接着などにより固定されることなく、テープ線4が筒状に形成されたものであると共に、外皮が形成されないものである。その他の点では前述の実施形態と同じである。つまり、中空撚り線111は、隣り合うテープ線4同士が接してはいても固定はされず、あるいはテープ線4同士間に隙間があってもよい。これにより、隣り合うテープ線4同士が相互に自由となり、中空撚り線111の可撓性が向上し、対象物への布設が容易になる。
【0082】
また、図11に示されるように、一条の中空撚り線111を検出器73(図7)に直接、接続された本線111aとする。この本線111aに対し、他の中空撚り線111をブランチ111b、111cとして接続する。さらに、ブランチ111cにはブランチ111dを接続する。このようにして、任意の個数のブランチを設け、任意のツリー構造で布設することができる。
【0083】
これにより、従来の中空撚り線を用いた接触センサでは配線が困難であった複雑な構造を有する対象物においても配線が容易となる。
【0084】
このとき、各中空撚り線111内の複数の導線3は、各々一対一で接続される。導線3の接続は、テープ線4同士間の隙間を通して行うことができる。テープ線4の隣接箇所は螺旋状に連続的に存在するので、中空撚り線111の長手方向任意の箇所において接続を行うことができる。
【0085】
具体的なブランチの形成方法は、図12(a)に示されるように、本線111aとなっている中空撚り線111のテープ線4同士間の隙間を所定の幅dに拡げてギャップ部112を形成する。ギャップ部112では一定のピッチで螺旋となっていたテープ線4のピッチがそこだけ伸びる。
【0086】
一方、図12(b)に示されるように、ジョイント部材113をあらかじめ形成しておく。ジョイント部材113は、ギャップ部112の幅dより長く形成された本線パイプ114と、この本線パイプ114の中間に直交するブランチパイプ115とからなるT字形の継ぎ手である。
【0087】
ジョイント部材113は、すでに布設された中空撚り線111に追加して設けられるように、本線パイプ114を断面(図示せず)がC字形のパイプ状に形成し、その開口部116から中空撚り線111を本線パイプ114内に嵌め込むことができるようにする。このとき、ギャップ部112の両端に位置する筒状の中空撚り線111をC字形の本線パイプ114により保持することで、ギャップ部112の形成を維持することができる。さらに、本線パイプ114に本線111aのギャップ部112を嵌め込んだとき、ギャップ部112の内面となっているテープ線4の導線3を設けた面が本線パイプ94の開口部116から見えるようになる。
【0088】
また、ブランチパイプ115は、ブランチ111bとなる中空撚り線111の一端が挿入できるようになっており、本線パイプ114に近い側に開口部118が形成されている。ブランチパイプ115に中空撚り線111の一端を挿入したとき、その端面が開口部118から見えるようになる。
【0089】
なお、ジョイント部材113を構成する各パイプの内径は、中空撚り線111の外径とほぼ等しく形成する。
【0090】
これにより、すでに布設済みの中空撚り線111であっても、ジョイント部材113に中空撚り線111を嵌め込み、中空撚り線111にギャップ部112を形成しつつ中空撚り線111を保持することができる。このとき、ジョイント部材113の内壁面と筒状の中空撚り線111の外壁面とを接着剤などにより固定するとよい。
【0091】
ジョイント部材113の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、すでに布設済みの中空撚り線111にギャップ部112を形成し、そのギャップ部112を保持できるものであればよい。また、ジョイント部材113と中空撚り線111とを固定する接着剤の代わりに、ジョイント部材113に中空撚り線111の動きを規制する保持部を設けてもよい。
【0092】
図12(c)のジョイント部材113は透明に描いてある。図示されるように、ブランチパイプ115に挿入した中空撚り線111の一端の端面に現れている導線3と、本線パイプ114に嵌められた中空撚り線111のギャップ部112に現れている導線3とを一対一で配線接続する。配線には、短絡を避けるため、被覆線117を用いる。この配線作業の後は、開口部116,118を封じるとよい。
【0093】
この実施形態によれば、いったん布設がなされた中空撚り線111に対して、さらに中空撚り線111を追加して布設することが容易となる。
【0094】
この実施形態では、本線111aとなる中空撚り線111にブランチ111bを接続するものとしたが、ブランチとして中空撚り線を接続する以外に、電気部品を適宜接続しても良い。
【0095】
例えば、接触センサを構成する中空撚り線において、検出器から所定の距離にスイッチ機構を有する電気部品を接続することで、上記電気部品が接続された箇所より先の中空撚り線を接触検出に使用するか又は不使用とするかを切り換え可能な回路を構成することができる。
【0096】
また、中空撚り線に他の検出装置を切り換え可能に接続することで、上記他の検出装置からの検出信号を検出器73(図7)側に適宜出力することができる。これにより、中空撚り線を用いた接触センサに他の検出機能を付与した複合センサを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態を示す中空撚り線製造装置の要部外観図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すテープ線製造装置の要部外観図である。
【図3】(a)〜(e)は、外皮の被覆方法の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、外皮の被覆方法の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、従来の中空撚り線の製造工程図である。
【図6】従来の中空撚り線の断面図である。
【図7】本発明の接触センサの構成図である。
【図8】本発明の接触センサにおける中空撚り線の回路図である。
【図9】本発明で製造した中空撚り線の断面図である。
【図10】本発明の中空撚り線の押圧時における断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す中空撚り線の布設図である。
【図12】(a)〜(c)は、本発明のブランチの形成方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0098】
1 巻き癖ジグ
2 整形ジグ
3 中空撚り線
4 テープ線
5 取り込みガイドローラ
6 引き出しガイドローラ
7 シート材
8 窓
9 導線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料からなるシート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線を上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置することによりテープ線を形成し、
上記テープ線の一方の面を円柱状の巻き癖ジグに向けて上記テープ線を螺旋状に巻き付け、加熱され可塑状態の上記テープ線を上記巻き癖ジグに巻き付けた状態で冷却することにより上記テープ線に巻き癖を形成し、上記テープ線を上記巻き癖ジグから離脱させると共に上記テープ線を筒状に整形することを特徴とする中空撚り線の製造方法。
【請求項2】
上記巻き癖ジグは、軸方向に高温から低温となる温度勾配を有し、その高温部に上記テープ線が斜め方向から巻き付けられ、そのテープ線が螺旋状の巻き付けによって軸方向に搬送され低温部を経て、上記巻き癖ジグから離脱されることを特徴とする請求項1記載の中空撚り線の製造方法。
【請求項3】
上記離脱したテープ線を筒状に整形するために整形ジグを用い、該整形ジグは中空円筒に形成され、上記整形ジグ内に取り込まれたテープ線が上記整形ジグの内面に沿って整形されつつ軸方向に搬送され、上記筒状に整形されたテープ線が上記整形ジグの一端から取り出されることを特徴とする請求項1記載の中空撚り線の製造方法。
【請求項4】
シート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線が上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置され、そのテープ線が上記導線を内側にして螺旋状に巻かれ筒状に形成されたことを特徴とする中空撚り線。
【請求項5】
上記筒状に整形されたテープ線の互いに隣接するテープ線間に隙間が形成され、該隙間を介して上記筒状に整形されたテープ線の内部の導線と外部の電気部品とが接続されることを特徴とする請求項4記載の中空撚り線。
【請求項6】
上記電気部品に代えて、他の中空撚り線が接続されることを特徴とする請求項4記載の中空撚り線。
【請求項7】
請求項4〜6いずれか記載の中空撚り線と、上記中空撚り線に接続される検出器とから形成されることを特徴とする中空撚り線を用いた接触センサ。
【請求項1】
熱可塑性材料からなるシート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線を上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置することによりテープ線を形成し、
上記テープ線の一方の面を円柱状の巻き癖ジグに向けて上記テープ線を螺旋状に巻き付け、加熱され可塑状態の上記テープ線を上記巻き癖ジグに巻き付けた状態で冷却することにより上記テープ線に巻き癖を形成し、上記テープ線を上記巻き癖ジグから離脱させると共に上記テープ線を筒状に整形することを特徴とする中空撚り線の製造方法。
【請求項2】
上記巻き癖ジグは、軸方向に高温から低温となる温度勾配を有し、その高温部に上記テープ線が斜め方向から巻き付けられ、そのテープ線が螺旋状の巻き付けによって軸方向に搬送され低温部を経て、上記巻き癖ジグから離脱されることを特徴とする請求項1記載の中空撚り線の製造方法。
【請求項3】
上記離脱したテープ線を筒状に整形するために整形ジグを用い、該整形ジグは中空円筒に形成され、上記整形ジグ内に取り込まれたテープ線が上記整形ジグの内面に沿って整形されつつ軸方向に搬送され、上記筒状に整形されたテープ線が上記整形ジグの一端から取り出されることを特徴とする請求項1記載の中空撚り線の製造方法。
【請求項4】
シート材の一方の面に上記シート材の長手方向に伸びた複数本の導線が上記シート材の幅方向に間隔を隔てて配置され、そのテープ線が上記導線を内側にして螺旋状に巻かれ筒状に形成されたことを特徴とする中空撚り線。
【請求項5】
上記筒状に整形されたテープ線の互いに隣接するテープ線間に隙間が形成され、該隙間を介して上記筒状に整形されたテープ線の内部の導線と外部の電気部品とが接続されることを特徴とする請求項4記載の中空撚り線。
【請求項6】
上記電気部品に代えて、他の中空撚り線が接続されることを特徴とする請求項4記載の中空撚り線。
【請求項7】
請求項4〜6いずれか記載の中空撚り線と、上記中空撚り線に接続される検出器とから形成されることを特徴とする中空撚り線を用いた接触センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−117171(P2009−117171A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288639(P2007−288639)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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