説明

中空樹脂粒子

【課題】本発明の目的は、中空樹脂粒子の体積に対する空孔の空間容積の割合、すなわち空孔率を落とすことなく、極めて強度の高い中空粒子を提供することにある。
【解決手段】1個の中空樹脂粒子(P)中に、独立した空間を有し平均空間容積が中空樹脂粒子(P)の体積に対して1〜40体積%である空孔(S)を少なくとも2個以上有し、体積平均粒子径が0.5〜50μmであり、好ましくは中空樹脂粒子を構成する樹脂成分が、架橋樹脂を含有し、ウレタン結合及びウレア結合の少なくとも一方を含有することを特徴とする中空樹脂粒子(P)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空樹脂粒子に関する。さらに詳しくは、独立した空間を少なくとも2個以上有する中空樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
中空樹脂粒子(内部に単一の閉鎖空孔を有する樹脂粒子)は、例えば、その空孔に各種の物質を充填させた有機系マイクロカプセル粒子として、また粒子を空孔化にすることよって生じる光散乱性を利用した有機系光散乱剤や有機系光散乱助剤等として、紙、繊維、皮革等のコーティング、塗料等の分野で従来から広く用いられている。このような中空樹脂粒子としては低沸点有機溶剤を内包したマイクロカプセルを加熱し、膨張させた粒子や、少なくとも1個のカルボン酸基を含むモノマーシステムを乳化重合したコアと、異なったモノマーシステム(少なくとも1個のモノマーは、硬質で、かつアンモニア及びアミンに対して浸透可能なポリマーを生成するもの)から重合したシェルとを有し、コアをアンモニア又はアミンで中和することにより膨潤させ、さらに乾燥させて単一の空孔をコア内に形成させるものが開示されている。(特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特公平3−7688号公報
【特許文献2】特公平3−9124号公報
【特許文献3】特開2002−30113
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの中空樹脂粒子は1粒子あたり1つの空孔しか有さず、粒子強度が弱く、僅かな力でシェルが崩壊し、強度を強くするためにはシェルの厚さを厚くする必要があり、中空樹脂粒子の体積に対する空孔の空間容積の割合(以下、空孔率と記載する。)が低くなる問題があった
本発明の課題は、空孔率を落とすことなく、極めて強度の高い中空粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、1個の中空樹脂粒子(P)中に、独立した空間を有し平均空間容積が中空樹脂粒子(P)の体積に対して1〜40体積%である空孔(S)を少なくとも2個以上有し、体積平均粒子径が0.5〜50μmであることを特徴とする中空樹脂粒子(P);
該中空樹脂粒子(P)を含有する紙塗工用組成物である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の中空樹脂粒子は空孔の空間容積を減少させることなく、極めて高い強度を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の中空樹脂粒子(P)中の空孔(S)の数は2個以上であり、中空樹脂粒子の強度
の観点から好ましくは3〜100個、さらに好ましくは10〜30個である。
空孔(S)は独立した空間であって、通常は空気が存在するが、水、有機溶剤及び香料等の薬剤の溶解液、懸濁液が存在していてもよい。
【0007】
1個の空孔(S)の平均容積は、中空樹脂粒子(P)の体積の1〜40体積%の空間容積
を有し、中空樹脂粒子の強度の観点から好ましくは1〜30体積%、さらに好ましくは2
〜30体積%、より好ましくは3〜25体積%を有する。
空間容積が1体積%未満の場合は空孔率が下がり、本来の中空粒子としての機能が損なわれる。40体積%を超える場合は強度が著しく低下し、圧力を加えると破断してしまう。
各々の空孔(S)の容積のばらつきは小さい方が好ましい。平均空孔径に対する標準偏差は80%以下が好ましく、より好ましくは50%以下である。
【0008】
1個の中空樹脂粒子(P)中に存在する空孔(S)の空間容積の合計が、中空樹脂粒子(P)の体積に対して、好ましくは30〜95%であり、さらに好ましくは60〜90%である。
【0009】
本発明の中空樹脂粒子(P)の体積平均粒子径は0.5〜50μmであり、体積平均粒子径が0.5μm未満の場合は空孔率を上げることが困難になり、50μmを超える場合は中空樹脂粒子の強度が低下し、産業上の利用範囲が限定される。
【0010】
中空樹脂粒子(P)及び空孔(S)の形状は、真球状、異形状であるが、実質的に真球状であることが好ましい。
【0011】
中空樹脂粒子(P)を構成する樹脂成分(p)としては、特に制限されないが、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びビニル系樹脂が好ましく、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエステル樹脂がさらに好ましい。
これらの樹脂成分(p)の中でも、柔軟性及び破断強度の観点からウレタン結合及びウレア結合の少なくとも一方を含有するものが特に好ましい。
【0012】
また、樹脂成分(p)中に、架橋樹脂(p1)を含有することが、圧縮強度及び耐溶剤性
の観点から好ましい。架橋樹脂(p1)の含有率は、樹脂成分(p)の重量に基づいて、
好ましくは0〜90重量%、さらに好ましくは20〜70重量%である。
【0013】
中空樹脂粒子(P)の粒子の表面が、体積平均粒子径が0.01〜5μmである微粒子(M)
で被覆されている中空樹脂粒子(P)が好ましい。中空樹脂粒子(P)の粒子形成時、微
粒子(M)で(P)の表面を被覆することで、(P)の粒径を安定させることができ、効
率的に空孔率を上げることができるからである。(P)の粒子の表面が、微粒子(M)か
らなる膜で被覆されている場合が、粒径を安定させる観点からさらに好ましい。
【0014】
(P)の粒子の表面を微粒子(M)からなる膜で被覆する方法は特に限定されず、公知の方法が適用でき、例えば〔1〕〜〔3〕及びこれらを組み合わせた方法等が適用できる。
・ 微粒子(M)が溶剤に膨潤する設計にすることにより造膜させる方法。具体的には微粒子(M)との溶解度パラメーター(以下、SP値と記載する。)の差が0.1〜3の溶剤を使用し、微粒子(M)を分散体表面で造膜させる方法。
具体例としては、微粒子(M);ポリウレタン(SP値10)と溶剤;キシレン(SP値8.8)の組み合わせ、微粒子(M);ポリスチレン(SP値8.6)と溶剤;酢酸エチル(SP値9.1)の組み合わせ等が挙げられる。
・ 微粒子(M)のTg以上に加熱することにより造膜させる方法。
・ 下記の中空樹脂粒子(P)の製造方法に記載の工程2で製造された水性分散液に微粒子(M)が膨潤しうる溶剤を加え、造膜させる方法。具体例としては微粒子(M)とのSP値差が(0.1〜3)の溶剤を上記工程2で製造された水性分散液に対して0.01〜5重量%添加し、微粒子(M)を分散体表面で造膜させる方法。具体例としての微粒子(M)と溶剤の組み合わせは〔1〕と同様である。
〔2〕は溶剤の沸点が微粒子(M)のTgよりも高い場合は好ましいが、一般的には〔1〕が好ましい。
【0015】
微粒子(M)としては、水性分散液を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂であっても使用でき、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良い。
例えばビニル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
微粒子(M)としては、上記樹脂の2種以上を併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散液が得られやすいという観点からビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびそれらの併用である。
微粒子(M)の粒径として好ましくは0.05〜1μmである。
【0016】
中空樹脂粒子(P)の製造方法は、例えば以下の4つの工程からなる方法が好ましい。
第1工程:界面活性剤が溶解した水溶液を製造する。粒子の表面が微粒子(M)で被覆されている中空樹脂粒子(以下、微粒子被覆粒子と記載。)を製造する場合は、体積平均粒径0.01〜5μmの微粒子(M)の水性分散液を製造する。
第2工程:樹脂(p)又は前駆体(p0)を濃度が40重量%以下になるように溶剤中に溶解した溶液を、界面活性剤が溶解した工程1の水溶液中に分散した後、すみやかに水により希釈する(好ましくは希釈倍率は1.5〜20)。この希釈化により、最終工程で多空孔化された中空樹脂粒子を得ることができる。
微粒子被覆粒子を製造する場合は、微粒子(M)が不溶である溶剤の樹脂(p)又は樹脂(p)の前駆体(p0)の溶液であって、樹脂(p)又は前駆体(p0)の濃度が40重量%以下である樹脂(p)又は前駆体(p0)の溶液を、微粒子(M)の水性分散液に分散した後、すみやかに水により希釈する。
第3工程:微粒子被覆粒子を製造する場合は、必要により、上記の方法で微粒子(M)を造膜させる。
第4工程:溶剤を除去し、前駆体(p0)を使用した場合は重合反応を行なうことにより、中空樹脂粒子(P)を形成させる。
【0017】
中空樹脂粒子(P)を含有する熱転写型記録紙を製造する際の中空樹脂粒子(P)の使用方法としては、本発明の中空樹脂粒子をバインダーを溶解させた水、又は有機溶剤に分散させ、ワイヤーコーター等で紙上にコーティングし、乾燥させ、必要により、さらに樹脂層を形成させる方法が好ましい。
【0018】
本発明で得られた中空樹脂粒子(P)は、紙、繊維、皮革等のコーティング、塗料等の用途における光散乱剤又は光散乱助剤として有用である。本発明の中空樹脂粒子(P)は、上記の他にも種々の用途に用いることができ、例えば、塗料、インキ、繊維・皮革処理剤、インクジェット紙の吸収性充填剤、製紙工程の内添充填剤、修正インキ、修正リボン用の高隠蔽性顔料、マイクロカプセル材料又は電子写真に用いられるトナーの中間材料としても有用である。また、感熱プリンター用紙、熱転写プリンター用紙や感熱紙の感熱層下塗りの断熱層等、空気による断熱特性を利用する用途、樹脂、セメント、コンクリート内添による軽量化などの空気による軽量化を利用する用途にも有用である。さらには半導体封止材料等に添加し、空気の低誘電性を利用する用途に用いることができる。
【0019】
本発明の中空樹脂粒子(P)を、例えば紙塗工用組成物の顔料の一部として使用することで隠蔽性、白色度、光沢、表面強度等の物性バランスが優れた塗工紙を得ることができる。
【0020】
紙塗工用組成物においては、白色度、不透明度、光沢等の特性の観点から、中空樹脂粒子(P)を0.1〜80重量%、顔料及び/又はバインダーを0〜99.9重量%、溶剤を20〜99.9重量%を含有することが好ましい。
【0021】
顔料としては、有機系の顔料、無機系の顔料を挙げることができる。無機系の顔料としては、例えば、カオリンクレー、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチンホワイト等を挙げることができる。有機系の顔料としては、スチレン系、スチレン/ブタジエン系、スチレン/アクリル系、中実プラスチックピグメント、尿素樹脂粒子等を挙げることができる。
また、バインダー(結合剤)としては、例えば、デンプン、変性デンプン、カゼイン等の天然バインダー、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、アクリル系重合体エマルジョン、ポリクロロプレンラテックス、ポリビニルアルコール等の合成バインダーを挙げることができ、これらのバインダーは、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、特に、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを単独で又はデンプン、カゼイン等の天然バインダーと組合せて用いることが好ましい。バインダーの配合量は、好ましくは、顔料及び中空樹脂粒子(P)の合計100重量部に対して3〜30重量部、さらに好ましくは、5〜25重量部である。バインダーの配合量が3重量部未満であると、バインダーとしての効果が得られないことがあり、30重量部を超えると紙塗工用組成物又はコーティング用組成物の粘度が上昇して塗工作業性が劣ることがある。
【0022】
本発明で得られた中空樹脂粒子(P)を用いた紙塗工用組成物及びコーティング用組成物には、必要に応じて、各種添加剤を添加することができ、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリカルボン酸ナトリウム等の顔料分散剤;ポリグリコール脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコンオイル等の消泡剤;ポリアミド等の耐水化剤、ステアリン酸カルシウム等の潤滑剤等を挙げることができる。
【0023】
原紙への紙被覆用組成物の塗工方法としては、例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター等を挙げることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによっていかなる制限を受けるものではない。なお、以下の記載において「部」及び「%」は、特別に規定しない限り重量部および重量%を示す。
【0025】
<製造例1>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン139部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、25℃で、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度85℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液M−1]を得た。[微粒子分散液M−1]をLA−920で測定した体積平均粒径は、0.05μmであった。
【0026】
<製造例2>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、ヒドロキシル価が56のポリカプロラクトンジオール[「プラクセルL220AL」、ダイセル化学工業(株)製]2,000部を投入し−0.2MPaの減圧下で110℃に加熱して1時間脱水を行った。続いてイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記載することがある。)457部を投入し、110℃で10時間反応を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。該ウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート含量は3.6%であった。これを[ウレタンプレポリマー1]とする。
【0027】
<製造例3>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、エチレンジアミン50部とメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと記載することがある。)50部を仕込み、生成水を除去しながら50℃で5時間反応を行った。得られたケチミン化合物を[硬化剤1]とする。
【0028】
<製造例4>
水784部、[微粒子分散液M−1]136部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(「エレミノールMON−7」、三洋化成工業製)80部を混合攪拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0029】
<製造例5>
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物570部、テレフタル酸217部を常圧下、230℃で6時間重縮合し、数平均分子量2,400、水酸基価51、酸価5の変性されていない[ポリエステル樹脂1]を得た。
【0030】
<製造例6>
撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物343部、イソフタル酸166部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに−0.15MPa(ゲージ圧力、以下同じである。)の減圧で5時間反応した。その後、110℃まで冷却し、トルエン中にてイソホロンジイソシアネート17部を入れて110℃で5時間反応を行い、次いで脱溶剤し、重量平均分子量72,000、遊離イソシアネート含量0.7%の[ウレタン変性ポリエステル1]を得た。
【0031】
<製造例7>
表1、油相1〜7に示した部数を容器中に入れ、混合撹拌し、透明な[油相1〜7]を得た。
【0032】
【表1】

【0033】
<製造例8>
容量2リットルの反応容器に、予め、媒体として水109.5部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王(株)製商品名:F65)0.2部、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.5部を投入した。その一方で、メタクリル酸メチル90部、メタクリル酸10部、分子量調整剤としてオクチルチオグリコレート0.5部、乳化剤(花王(株)製商品名:F65)0.1部及び水40部を混合撹絆してモノマー混合物の水性分散体を調製した。このモノマー混合物の水性分散体の20%を前記反応容器に投入し、攪拌しながら温度75℃まで昇温して1時間重合反応を行なった。その後温度を75℃に保ちながら、残りのモノマー混合物の水性分散体を連続的に2時間かけて反応容器に添加した。さらに、2時間熟成を行い、固形分40%、粒子径200nm、重量平均分子量70,000のポリマー粒子の水性分散体を得た。容量2リットルの反応容器に、予め、媒体として水186部を投入し、ポリマー粒子の水性分散体を固形分で10部(水性分散体で25部)、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.5部を投入した。その一方で、メタクリル酸メチル69.5部、メタクリル酸30部、ジビニルベンゼン0.5部(純度80%)、乳化剤(花王(株)製商品名:F65)0.1部及び水40部を混合攪拌してモノマー混合物の水性分散体を調製した。次に、反応容器内の液を攪拌しながら温度80℃まで昇温、保持し、上記モノマー混合物の水性分散体を反応容器に連続的に3時間かけて投入した。その後、さらに2時間熟成を行ない、固形分31%、粒子径400nmの[核微粒子1]の水性分散体を得た。
【0034】
<実施例1>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相1]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数12,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で5時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P1)を得た。体積平均粒径は3.9μmであった。
【0035】
<実施例2>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相2]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数14,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水7000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P2)を得た。体積平均粒径は3.5μmであった。
【0036】
<実施例3>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相2]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数14,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P3)を得た。体積平均粒径は3.6μmであった。
【0037】
<実施例4>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相2]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数14,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水1000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P4)を得た。体積平均粒径は3.6μmであった。
【0038】
<実施例5>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相3]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数6,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P5)を得た。体積平均粒径は35.3μmであった。
【0039】
<実施例6>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相4]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数14,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P6)を得た。体積平均粒径は3.5μmであった。
【0040】
<実施例7>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相5]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P7)を得た。体積平均粒径は2.0μmであった。
【0041】
<実施例8>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相6]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数14,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P8)を得た。体積平均粒径は3.5μmであった。
【0042】
<実施例9>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相7]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数14,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P9)を得た。体積平均粒径は3.5μmであった。
【0043】
<実施例10>
ビーカー内に[水相1]550部、[油相2]450部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数3,500rpmで1分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(P9)を得た。体積平均粒径は50.0μmであった。
【0044】
<実施例11>
ビーカー内に[水相1]700部、[油相2]300部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数16,000rpmで20分間混合し、混合液を得た。水4000部を入れた撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、すみやかに混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を遠心分離、乾燥を行い中空樹脂粒子(P9)を得た。体積平均粒径は0.5μmであった。
【0045】
<比較例1>
ビーカー内に[水相1]600部、[油相6]400部を添加した後、TKホモミキサー(プライミクス社製)を使用し、回転数10,000rpmで5分間混合し、混合液を得た。撹拌棒および温度計をセットした反応容器に混合液を投入し、50℃で7時間、減圧(−0.02MPa)で脱溶剤を行った後、混合液を95℃まで温度を上げ、8時間反応を行い、水性分散体を得た。得られた水性分散液を濾別、乾燥を行い中空樹脂粒子(R1)を得た。体積平均粒径は5.2μmであった。
【0046】
<比較例2>
反応容器に、水240部を投入し、製造例8に示した[核微粒子1]の水性分散体を固形分で15部(水性分散体で48.4部)、メタクリル酸メチル5部、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.4部を投入した。その一方で、スチレン94部、乳化剤(花王(株)製商品名:F65)0.1部及び水40部を混合攪拌してモノマーの水性分散体を調製した。次に、反応容器内の液を攪拌しながら温度80℃まで昇温、保持して30分間でメタクリル酸メチルの重合を行い、[核微粒子1]にポリメタクリル酸メチルが複合した複合樹脂粒子を得た、続けてこの反応容器内の液を攪拌しながら80℃に保持して上記モノマーの水性分散体を反応容器に連続的に4時間かけて投入し複合樹脂粒子の表層にスチレンを重合・積層させた。この際、モノマーの水性分散体を投入開始後2時間経過時に、アクリル酸1部を反応容器に一括投入してスチレンと共重合させた。すべてのモノマーの投入終了後2時間熟成を行ない、固形分26.5%、粒子径0.8μm、の樹脂粒子水性分散体を得た。次いで、得られた樹脂粒子水性分散体を25%水酸化アンモニウムを用いてpH10に調整し、24時間放置、その後、攪拌しながら80℃に昇温し3時間加熱処理を行い、粒子径1.0μm、内径0.9nm、体積空孔率56%の単一の空孔を有する球状の中空樹脂粒子(R2)の水性分散体を得た。
【0047】
中空樹脂粒子(P1〜P9)及び、比較例として(R1、R2)について後述の評価方法(1)〜(6)に従って性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
比較例に示すような1つの空孔を持つ中空樹脂粒子と比較して、2つ以上の空孔を有する本発明の中空樹脂粒子は2倍以上の強度を示した。
また、実施例2〜4に示したように、2つ以上の空孔を有する中空樹脂粒子は、同一の粒子径の中空樹脂粒子において、空孔数が多い程強度が強い。
【0050】
[評価方法]
(1)体積平均粒径の評価
フロー式画像解析粒子径測定装置(FPIA3000[シスメックス社製])を用いて、体積平均粒径を測定した。
【0051】
(2)TEMによる平均空孔径の測定方法
中空樹脂粒子(P)を市販のエポキシ樹脂中に分散させ、加熱により硬化させた後、ダイヤモンドカッターで、該樹脂を切断した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する。
画像中の空孔の空孔径を確認。20個の粒子を測定し、その平均を平均空孔径とした。
【0052】
(3)平均空孔数の測定方法
上記(2)の方法で測定した平均空孔径から、空孔の平均体積を計算する。
下記の方法で粒子の空孔率を測定し、その空孔率を空孔の平均体積で割り、算出した。
【0053】
(4)空孔率の評価
市販のパウダーテスターを用いて固め比重を測定し、その積層状態が細密充填であると仮定し、下記数式に従い空間容積を計算した。実施例記載の樹脂の比重はすべて1.15であった。
【0054】
【数1】

【0055】
(5)圧縮硬度の評価
中空樹脂粒子(P)をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量%水溶液中に固形分が20重量%になるよう混合した後、超音波洗浄機を用いて60分間分散させた。得られた分散液を表面をコロナ処理したPETフィルム上に乾燥後20μmの厚さになるようワイヤーコーターを用いて塗工した後、50℃で24時間乾燥させた。得られたフィルムをフィッシャー硬度計で荷重を与え、破断点(降伏点)を評価した。フィッシャー硬度計の圧子は一辺が100μmの正方形の面を持つものを用い、最大荷重を200mNに設定した。荷重の印加速度は5mN/秒とした。中空樹脂粒子に破断点以上の負荷がかかった場合、中空樹脂粒子はもとの形に戻ることが出来ないため、破断点をもって、強度とした。
【産業上の利用可能性】
【0056】
中空樹脂粒子(P)は紙、繊維、皮革等のコーティング、塗料等の用途における光散乱剤又は光散乱助剤として有用な中空ポリマー粒子を、効率良く製造することが可能な方法を提供することができる。本発明のポリマー粒子は、上記の他にも種々の用途に用いることができ、例えば、塗料、インキ、繊維・皮革処理剤、インクジェット紙の吸収性充填剤、製紙工程の内添充填剤、修正インキ、修正リボン用の高隠蔽性顔料、マイクロカプセル材料又は電子写真に用いられるトナーの中間材料としても有用である。また、感熱プリンター用紙、熱転写プリンター用紙や感熱紙の感熱層下塗りの断熱層等、空気による断熱特性を利用する用途、樹脂、セメント、コンクリート内添による軽量化などの空気による軽量化を利用する用途にも有用である。さらには半導体封止材料等に添加し、空気の低誘電性を利用する用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個の中空樹脂粒子(P)中に、独立した空間を有し平均空間容積が中空樹脂粒子(P)の体積に対して1〜40体積%である空孔(S)を少なくとも2個以上有し、体積平均粒子径が0.5〜50μmであることを特徴とする中空樹脂粒子(P)。
【請求項2】
中空樹脂粒子(P)及び空孔(S)の形状が、実質的に真球状である請求項1に記載の中空樹脂粒子(P)。
【請求項3】
1個の中空樹脂粒子(P)中に存在する空孔(S)の空間容積の合計が、中空樹脂粒子(P)の体積に対して、30〜95%である請求項1又は2に記載の中空樹脂粒子(P)。
【請求項4】
中空樹脂粒子(P)を構成する樹脂成分(p)が、架橋樹脂(p1)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空樹脂粒子(P)。
【請求項5】
樹脂成分(p)が、ウレタン結合及びウレア結合の少なくとも一方を含有する請求項4に記載の中空樹脂粒子(P)。
【請求項6】
粒子の表面が、体積平均粒子径が0.01〜5μmである微粒子(M)で被覆されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空樹脂粒子(P)。
【請求項7】
微粒子(M)からなる膜で被覆されている請求項6に記載の中空樹脂粒子(P)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の中空樹脂粒子(P)を含有する紙塗工用組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の中空樹脂粒子(P)を含有する熱転写型記録紙。


【公開番号】特開2009−263553(P2009−263553A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116643(P2008−116643)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】