説明

中空部内面検査方法およびその装置

【課題】内径が小さくても内面の傷を検査することができる中空部内面検査方法およびその装置を目的とするものである。
【解決手段】差込プラグ1に設けたシールリング2を収縮させて中空部に嵌挿したうえシールリング2を拡張させて中空部の被測定部内をシールしてシール空間を形成し、該シール空間を加圧または減圧し、加圧または減圧した際のシール空間内からの漏れ量を測定して被検査部内面の傷を判定する方法及び中空部に嵌挿される差込プラグ1に中空部内をシールする拡縮自在なシールリング2を設けるとともに該シールリング2の拡縮を行うシール手段3を設け、該シールリング2により形成されるシール空間内を加圧または減圧し、加圧または減圧されたシール空間内からの漏れ量を測定して該漏れ量に基づいて被検査部内面の傷を判定する測定手段4を設けた装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイカスト成形時、鋳抜きピンの引き抜きの際に発生する縦筋等の傷を検査する中空部内面検査方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイカスト成形時、鋳抜きピンがアルミの収縮により締め付けられて鋳抜きピンを抜き出す際、鋳抜きピンにより形成された鋳抜き中空部孔にガジリが発生することがあるため、鋳抜きピンの抜き勾配、磨き、離型剤の塗布、温度管理等で対応しているが、成形時、鋳抜きピンにアルミが付着して離れなくなることがある。これを強引に引き抜くと鋳抜き中空部内面に毟り取ったような縦筋が発生する。この縦筋が大きく、且つOリングによるシール面となるとエアや油が漏れて不都合が生じるという問題があった。しかし、鋳抜き中空部の多くは切削加工を行うため縦筋が発生していても問題はないが、近年、生産性の向上と加工コストを低減するため鋳抜き中空部への切削加工を行わない場合が多くなってきている。
【0003】
鋳抜き中空部のような管内面の表面傷を検査する装置としては管内に渦流探傷機能を有するセグメントプローブを挿入移動させて検査を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この装置は傷の深さと長さを異なる探傷コイルにより検出するため電子回路が複雑となって高価なものとなるうえに、探傷コイルと鋼管との隙間を均一とする必要があり、セットアップに時間がかかり検査を高速化することが難しいという問題があった。
【特許文献1】特開2004−251839号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は内径が小さくても内面の傷を検査することができる中空部内面検査方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、差込プラグに設けたシールリングを収縮させて中空部に嵌挿したうえでシールリングを拡張させて中空部の被測定部内をシールしてシール空間を形成し、該シール空間を加圧または減圧し、加圧または減圧した際のシール空間内からの漏れ量を測定して被検査部内面の傷を判定する中空部内面検査方法と、中空部に嵌挿される差込プラグに中空部内をシールする拡縮自在なシールリングを設けるとともに該シールリングの拡縮を行うシール手段を設け、該シールリングにより形成されるシール空間内を加圧または減圧し、加圧または減圧されたシール空間内からの漏れ量を測定して該漏れ量に基づいて被検査部内面の傷を判定する測定手段を設けた中空部内面検査装置とを基本とする。なお、前記した中空部内面検査装置において、シール手段がシールリングを嵌着する環状溝内を加圧または加減圧する加減圧手段により行われるものとしたり、シール手段がシールリングを動き止めするストッパ面と、シールリングを環状のテーパガイド面に弾性嵌合されるとともに前記ストッパ面と接離自在とされるスライダにより行われるものとしたりすることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、差込プラグに設けたシールリングを収縮させて中空部に嵌挿したうえシールリングを拡張させて中空部の被測定部内をシールしてシール空間を形成し、該シール空間を加圧または減圧し、加圧または減圧した際のシール空間内からの漏れ量を測定して被検査部内面の傷を判定するものとしたから、差込プラグの中空部への脱着が容易なうえ、差込プラグを中空部に嵌挿するだけの簡単な操作で傷検査ができるので検査時間を大幅に短縮できるものとなる。しかも、傷の測定に複雑で高価な電子回路を用いる必要がないので安価なうえ信頼性が高く長期耐用できるものとなる。
【0008】
また、請求項3のように、シール手段がシールリングを嵌着する環状溝内を加圧または加減圧する加減圧手段により行われるものとすれば、構造が簡単で安価なうえ故障が生じ難く安定した検査が可能となるうえに動作速度も速いので検査時間を短縮でき、効率がよいものとなる。
【0009】
請求項4のように、シール手段がシールリングを動き止めするストッパ面と、シールリングを環状のテーパガイド面に弾性嵌合されるとともに前記ストッパ面と接離自在とされるスライダにより行われるものとすることにより、シールリングの加圧または加・減圧によりシールを行う場合のように、シールリングより漏れた圧がシール空間内に流入して測定値を変動させることがないので精度の高い測定が可能となり信頼性の高い判定ができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1中、1は鋳抜き孔のような中空部内をシールする差込プラグであり、該差込プラグ1には中空部内をシールするシールリング2が設けられている。3はシールリングを拡縮させるシール手段である。4は差込プラグ1に接続される測定手段であり、該測定手段4は差込プラグ1のシールリング2によりシールされたシール空間を加圧または減圧して、加圧または減圧されたシール空間内からの漏れによる圧力または流量を測定して被検査部内面の傷の深さや大きさを検査するものである。また、シール手段3はシールリング2の加圧と減圧を行う加減圧手段5よりなる。
【0011】
差込プラグ1は前記測定手段4とシールリング2への加圧または加圧と減圧を行う加減圧手段5とを接続する頭部10と、検査対象の中空部に嵌挿される挿入部11とからなる断面略T字形状のもので、頭部10を挿入部11より大径として頭部座面により挿入位置を決めるものとしている。
【0012】
挿入部11は中空部の内径より僅かに小径とするとともに、挿入部11にはシールリング2が設けられている。該シールリング2は挿入部11の中間部に所定間隔下に並設される環状溝21に嵌合されるもので、該各環状溝21に嵌合される各シールリング2はシール手段3により拡張と収縮が行われるものである。各シールリング2を嵌合する各環状溝21の離隔長や配設位置等は経験則により中空部に発生しやすい部位に設定される。
【0013】
また、シールリング2を所定間隔下に並設させた理由は、中空部が貫通孔の場合、対をなすシールリング2により被検査部位をシールする必要があるからである。このため中空部が貫通孔でなく閉塞された穴となっている場合は、シールリング2は一つでも良いことはいうまでもない。このような閉塞された穴の場合、縦筋等の傷を通じて加圧エアが穴内に漏れると差込プラグ1が圧力で被検査部より飛び出すことを防止するため圧力の逃がし孔12が形成されている。
【0014】
前記シール手段3はシールリング2が嵌着される環状溝21内を加減圧手段5により加圧と減圧を行うことにより、シールリング2の拡張と収縮を行わせるもので、シールリング2を収縮させることによりシールリング2を取り付けた挿入部11の中空部内への脱着が容易となり、シールリング2を拡張させることにより中空部内の所定領域にシール空間を瞬時に形成することができる。また、シールリング2を拡張させるものであるから中空部の内径が若干の違ってもシール空間を形成することができる。
【0015】
環状溝21の溝深さは収縮されたシールリング2の外形が環状溝21内に収まるものとしている。こうすることにより挿入部11を中空部内への嵌挿が小さな力で円滑に行えるものとなる。また、シールリング2の拡張時には、シールリング2の最大径部が環状溝21より抜け出ない程度とする。これはシールリング2の最大径部が環状溝21を越えるまで拡張されると、シールリング2と環状溝21間に隙間ができ、加圧または真空圧が漏れてシール空間内に流出し正確な測定ができなくなるおそれが生じるからである。
【0016】
35、36、38は差込プラグ1に形成される連通孔であり、該連通孔35はシールリング2を装着する環状溝21とシール手段3としての加減圧手段5とを接続するものである。また、連通孔36はシール空間に臨む環状溝37と測定手段4とを接続するものである。さらに、連通孔38は連通孔36に接続されてシール空間からの漏れ圧を検出するもので測定手段4に接続されている。
【0017】
また、シール手段3としての加減圧手段5は図1に示されるように、シールリング2を拡張させる加圧エアを供給する加圧回路50とシールリング2を収縮させる減圧回路60とからなるもので、加圧回路50はエア源51の0.5〜0.6MPaの圧力をレギュレータ52により0.4〜0.5MPaに調整したうえ切換弁53および流量調整弁54を介して差込プラグ1の環状溝21に供給するものである。また、減圧回路60は真空発生器61による真空圧を切換弁62を介して差込プラグ1に供給するものである。63は切換弁、64は流量調整弁である。
【0018】
さらに前記測定手段4は加減圧手段5と共通のエア源51と、エア源51の圧力を0.2MPaの検査用圧力に調整する精密レギュレータ41と、切換弁42と、流量調整弁43と、流量計44と、コントロ−ラ45と、圧力計46とからなるもので、該測定手段4は差込プラグ1の検出用エア供給用の外部接続口と漏れ圧力検出用の外部接続口とに接続されている。そして、流量計44か圧力計46により測定された流量または圧力に基づいてコントローラ45は縦筋等の傷の深さや大きさを判定する。
【0019】
なお、前記好ましい実施の形態では検査エアを加圧エアとしているが真空を用いた減圧エアとしてもよいことは勿論である。また、前記好ましい実施の形態ではシールリング2を加圧と減圧を行わない状態で環状溝21内の略中間位置に配置されるものとし、シールリング2の拡張を加減圧手段5の加圧回路50による加圧により行い、収縮を加減圧手段5の減圧回路60による減圧により行うものとしているが、シールリング2を加圧と減圧を行わない状態で環状溝21内の底部に配置される収縮状態とし、加圧回路50によりシールリング2を加圧することによってシールリング2はその弾性をもって拡張され、加圧を解くことによってその弾性により収縮するものとすれば高価な真空発生器61を用いた減圧回路60が不要となるので加減圧手段5を安価なものとすることができるうえに、真空発生器を駆動するエネルギーが不要となりランニングコストを低減できるものとなる。
【0020】
このように構成されたものは、先ず、切換弁62、63を切り換えてシール手段3としての加減圧手段5の減圧回路60に切り換えて真空発生器61による真空圧が環状溝21に加わるようにする。この減圧によりシールリング2は収縮されて環状溝21内に収納されるので、この状態で中空部に差込プラグ1の挿入部10を差し込めばシールリング2による抵抗を受けずに容易に差し込むことができる。
【0021】
このように差込プラグ1が中空部内の所定位置に嵌挿されたら、加減圧手段5の減圧回路60から加圧回路50に切り換えて加圧エアを環状溝21に供給する。これにより上下一対のシールリング2は拡張して環状溝21より張出されるので、中空部の所定範囲内はシールリング2によりシールされ、シール空間が形成されることとなる。
【0022】
このシール状態において、切換弁42を切り換えて測定手段4より検査用エアを差込プラグ1を介してシール空間に供給する。このとき中空部内面に縦筋がなければ検査用エアは漏れることがないので圧力は一定となる。しかし、縦筋がシール空間と非シール空間間を跨いでいれば検査用エアは漏れるので、流量計44または圧力計46で圧力または流量を測定する。そして、測定された流量または圧力に基づいてコントローラ45は縦筋の大きさや深さを判定して良否判定を行うこととなる。
【0023】
そして、良否判定が完了したら加減圧手段5を減圧回路60に切り換えて環状溝21内を減圧してシールリング2を収縮させる。この状態で差込プラグ1を引き抜けば力を要することなく中空部より挿入部11を抜き出すことができる。以下同様の操作を繰り返して中空部の縦筋の判定を行うものである。
【0024】
また、図2、3に示されるシール手段3は、シールリング2を動き止めするストッパ面70と、該ストッパ面70と当接して移動されるシールリング2を拡縮させる環状のテーパガイド面71に嵌合させたスライダ72とからなるもので、詳しく述べれば、スライダ72を頭部10のストッパ面70に当接させるロック部材73を設けたにシリンダ機構74を差込プラグ1に組み込んだものである。
【0025】
シリンダ機構74は差込プラグ1の頭部10に形成されるシリンダ孔10aにピストン10bを嵌挿し、該ピストン10bに取り付けられるピトンロッド10cを差込プラグ1の中心を貫通させてその先端にロック部材73を取り付けたものである。スライダ72はその下面をシリンダ機構74のロック部材73により受けられて上昇するとともに、上面を頭部10のストッパ面70に圧接されるものである。75はピストン10bを前進させるロック解除用のばねであり、76はピストン10bをばね75の付勢力に抗して後退させ、ロック部材73をロックさせるエア供給口である。
【0026】
スライダ72のテーパガイド面71に嵌合されるシールリング2は図2に示されるように、通常状態でテーパガイド面71より約半径分抜け出るものとしているが、シリンダ機構74により図3に示されるようにロック部材73が上昇して、スライダ72の上面をストッパ面70に当接させるとともに、スライダ72の下面をロック部材73の上面ストッパ面76に当接させることにより、シールリング2はその弾性によりテーパガイド面71に沿って拡開移動され、やがて中空部内面に当接してシール空間を形成するものである。また、ロック部材73をばね75の付勢力により下降させてスライダ72とストッパ面70、76との圧接を解けば、シールリング2はその弾性により収縮しテーパガイド面71より抜け出ていくこととなる。そして、拡開による伸びがなくなった時点で、テーパガイド面71より約半径分抜け出た収縮状態となる。
【0027】
また、スライダ72およびロック部材73は中空部に嵌挿できる環状のものであり、スライダ72の中間外周面にはシール空間に臨む環状溝37が形成されており、該環状溝37はシール空間を加圧または減圧する測定手段4に接続される。
【0028】
このようなシール手段3はシリンダ機構74を作動させてスライダ72を上下動させることにより、弾性を有するシールリング2をテーパガイド面71に沿わせて移動させることによりシールリング2の拡縮が行われるものである。このような機械的な方法によりシールリング2を拡縮させて差込プラグ1の被検査部への脱着を行うものとすれば、シールリング2を加圧または減圧して拡縮を行う場合のように、加圧または真空圧がシール空間に漏れることを確実に防止できるの、測定ミスを発生することがないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す回路図である。
【図2】差込プラグの他の実施例を示す断面図である。
【図3】同じく状態を異にして示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 差込プラグ
2 シールリング
3 シール手段
4 測定手段
5 加減圧手段
21 環状溝
70 ストッパ面
71 テーパガイド面
72 スライダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込プラグに設けたシールリングを収縮させて中空部に嵌挿したうえでシールリングを拡張させて中空部の被測定部内をシールしてシール空間を形成し、該シール空間を加圧または減圧し、加圧または減圧した際のシール空間内からの漏れ量を測定して被検査部内面の傷を判定することを特徴とする中空部内面検査方法。
【請求項2】
中空部に嵌挿される差込プラグに中空部内をシールする拡縮自在なシールリングを設けるとともに該シールリングの拡縮を行うシール手段を設け、該シールリングにより形成されるシール空間内を加圧または減圧し、加圧または減圧されたシール空間内からの漏れ量を測定して該漏れ量に基づいて被検査部内面の傷を判定する測定手段を設けたことを特徴とする中空部内面検査装置。
【請求項3】
シール手段がシールリングを嵌着する環状溝内を加圧または加減圧する加減圧手段により行われる請求項2に記載の中空部内面検査装置。
【請求項4】
シール手段がシールリングを動き止めするストッパ面と、シールリングを環状のテーパガイド面に弾性嵌合されるとともに前記ストッパ面と接離自在とされるスライダにより行われる請求項2に記載の中空部内面検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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