説明

中継装置、無線通信システム、及び無線通信方法

【課題】無線機器の消費電力を低減することである。
【解決手段】無線通信システム1は、ハブ10とノード20とを有する。ハブ10は、WiMAXネットワークN1とBANネットワークN2とを中継する。ノード20は、BANネットワークN2を構成する。ハブ10は、受信部11と制御部12と通知部13とを有する。受信部11は、WiMAXネットワークN1の省電力情報を受信する。制御部12は、受信部11により受信された省電力情報に基づき、BANネットワークN2を構成するノード20の通信可能時間を決定する。通知部13は、制御部12により決定された通信可能時間をノード20に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置、無線通信システム、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線方式の多様化に伴い、無線機器の適用分野が拡大している。標準化が進む近距離無線方式として、Bluetooth(登録商標)、Zigbee、BAN(Body Area Network)等がある。BANとは、人体表面(ウェアラブル)や体内(インプラント)から、ヘルスケアや医療で活用するための生体情報を収集する人体無線網であり、BANでは、体温計、心拍計、ペースメーカ、内視鏡といった医療機器への適用が検討されている。このような医療機器に、BAN等の無線通信機能を適用することで、独居老人の健康状態の見守りや孤島住民への遠隔医療といったサービスを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−521879号公報
【特許文献2】特開2004−152268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、BANの搭載が想定される医療機器のうち、特にペースメーカや内視鏡といった埋込み式の医療機器は、取替えが容易ではない。また、電池交換には手術を伴うこともあり、患者への負担も大きい。このため、特に、埋込み式の医療機器では、電池交換をすることなく、長期間(例えば、数年程度)連続して使用可能であることが望ましい。医療機器を長期間使用可能とするためには、医療機器に適用される無線機器についても、消費電力を低減する必要がある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、無線機器の消費電力を低減することのできる中継装置、無線通信システム、及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本願の開示する中継装置は、一つの態様において、第1の無線ネットワークと第2の無線ネットワークとを中継する。中継装置において、受信部と制御部と通知部とを有する。受信部は、前記第1の無線ネットワークの省電力情報を受信する。制御部は、前記受信部により受信された省電力情報に基づき、前記第2の無線ネットワークを構成する各無線装置の通信可能時間を無線装置毎に決定する。通知部は、前記制御部により決定された通信可能時間を前記各無線装置に通知する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する中継装置の一つの態様によれば、無線機器の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、医療機器に無線機器が適用されたネットワークを示す図である。
【図2】図2は、BANにおける省電力制御を説明するための図である。
【図3】図3は、WiMAXにおける省電力制御を説明するための図である。
【図4】図4は、BANとWiMAXとを用いたネットワークの構成を示す図である。
【図5】図5は、無線通信システムの機能的構成を示す図である。
【図6】図6は、ハブのネットワーク管理部の保持する省電力情報テーブルの初期状態を示す図である。
【図7】図7は、無線通信システムにおける省電力への移行シーケンスを説明するための図である。
【図8】図8は、MOB_SLP−REQフォーマットの一例を示す図である。
【図9】図9は、MOB_SLP−RSPフォーマットの一例を示す図である。
【図10】図10は、無線通信システムにおける時刻換算処理を説明するための図である。
【図11】図11は、無線通信システムにおけるフレーム番号換算処理を説明するための図である。
【図12】図12は、Connection Assignmentフォーマットの一例を示す図である。
【図13】図13は、無線通信システムにおける省電力中のシーケンスを説明するための図である。
【図14】図14は、MOB_TRF−INDフォーマットの一例を示す図である。
【図15】図15は、無線通信システムにおける省電力からの復帰シーケンスを説明するための図である。
【図16】図16は、本実施例に係る技術を所定の条件下で実施した場合における効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する中継装置、無線通信システム、及び無線通信方法の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する中継装置、無線通信システム、及び無線通信方法が限定されるものではない。
【0010】
図1は、医療機器に無線機器が適用されたネットワークを示す図である。図1に示すように、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)ネットワークN1とBANネットワークN2とは、ハブ10を介して接続されている。BANネットワークN2は、人体各部に複数のノードM1〜M10が配設されることによって構成されている。ハブ10は、BANにおけるコーディネータであり、人体に装着されることによってBAN内で基地局として機能する。また、ハブ10は、各ノードM1〜M10から収集された情報を、WiMAXや携帯電話網の広域通信手段を用いて、遠隔地のデータベースに転送する。複数のノードM1〜M10は、例えば、体温計、心拍計、ペースメーカ、内視鏡、血圧計、脳波測定器といった医療機器である。各ノードM1〜M10は、コーディネータの指示するタイミングで、各種信号やデータの送受信を行う。
【0011】
BAN及びWiMAXの各通信方式は、それぞれ、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.6及びIEEE802.16により標準化されている。図2は、BANにおける省電力制御を説明するための図である。図2に示すように、BANでは、スリープ状態とウェイクアップ状態とが規定されており、ハブ10は、各ノードM1〜M3に対してウェイクアップする周期を指定する。各ノードM1〜M3は、スリープ状態において、データ送受信を行わないため、省電力状態に遷移する。また、ハブ10は、配下にある全てのノードM1〜M3がスリープ状態にあるとき、これら全てのノードM1〜M3との間で送受信を行わないため、省電力状態に遷移する(インアクティブ期間)。一方、各ノードM1〜M3は、ウェイクアップ状態において、アップリンク及びダウンリンクの監視を行う。なお、アップリンクは、ノードM1〜M3からハブ10に向かう方向であり、ダウンリンクは、ハブ10からノードM1〜M3に向かう方向である。上述の省電力制御では、ノードM1〜M3は、ウェイクアップ状態では、各自ノードが発信制御するアップリンクデータが無い場合でも、ハブ10の発信制御するダウンリンクデータの監視を行う必要がある。
【0012】
続いて、図3は、WiMAXにおける省電力制御を説明するための図である。図3に示すように、WiMAXでは、WiMAXネットワークN1に接続された通信端末は、スリーピングウィンドウとリスニングウィンドウとを管理する。すなわち、通信端末は、基地局からの指示に従い、スリーピングウィンドウ及びリスニングウィンドウを開始及び終了する。ここで、スリーピングウィンドウの時間幅は、2フレーム(10ms)〜1024フレーム(5120ms)であり、リスニングウィンドウの時間幅は、最大64フレーム(320ms)である。通信端末は、スリーピングウィンドウ期間中には、ダウンリンク(基地局から端末方向)にデータが発生しないことが確実なため、自端末内でアップリンク(端末から基地局方向)にデータが発生しない場合には、省電力状態に遷移する。これに対し、通信端末は、リスニングウィンドウ期間中は、ダウンリンクデータの発生を待ち受けていなければならない。
【0013】
図4は、BANとWiMAXとを用いたネットワークの構成を示す図である。図4に示すように、WiMAXネットワークN1とBANネットワークN2とは、ゲートウェイを介して接続されている。WiMAXネットワークN1には、各ノードM1、M2との間で各種信号及びデータの送受信を行う通信端末40が接続されている。また、BANネットワークN2は、ノードM1、M2を配下に有する。以下、本実施例では、図4に示すようなネットワーク間の連携により、各ノードM1、M2の消費電力を低減するシステム及び方法について説明する。
【0014】
まず、本願の開示する一実施例に係る無線通信システムの構成を説明する。図5は、本実施例に係る無線通信システム1の機能的構成を示す図である。図5に示すように、無線通信システム1は、ハブ10とノード20とを有する。ハブ10は、受信部11と制御部12と通知部13とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
【0015】
受信部11は、WiMAXネットワークN1の省電力情報を受信する。受信部11は、省電力制御部11aと省電力情報通知部11bとを有する。省電力制御部11aは、WiMAXの通信プロトコルにより規定される通常の省電力制御に加えて、後述のネットワーク管理部12aから通知される指示に基づき省電力制御を行う。省電力情報通知部11bは、WiMAXの通信プロトコルにより規定される省電力情報として、省電力状態(スリープ状態、ウェイクアップ状態等)と省電力期間とを後述のネットワーク管理部12aに通知する。
【0016】
制御部12は、受信部11により受信された省電力情報に基づき、BANネットワークN2を構成するノード20のウェイクアップ時間をノード毎に決定する。制御部12は、受信部11により受信される省電力情報の変更に伴い、ウェイクアップ時間を更新する。制御部12は、BANネットワークN2における時間単位を、WiMAXネットワークN1における時間単位と共通の時間単位となるように変換する制御を行う。制御部12は、ネットワーク管理部12aとフレーム番号換算部12bとタイマ管理部12cとを有する。ネットワーク管理部12aは、WiMAXネットワークN1及びBANネットワークN2について省電力情報(省電力状態、省電力期間)を保持すると共に、収集された省電力情報を基に、省電力制御部11a及び省電力制御部13aに対して省電力指示を通知する。フレーム番号換算部12bは、絶対時間情報を、各無線ネットワークN1、N2で管理されるフレーム番号に変換する。タイマ管理部12cは、現在時刻を管理し、各無線ネットワークN1、N2に対して現在時刻を提供する。
【0017】
通知部13は、制御部12により決定されたウェイクアップ時間をノード20に通知する。通知部13は、省電力制御部13aと省電力情報通知部13bとを有する。省電力制御部13aは、BANの通信プロトコルにより規定される通常の省電力制御に加えて、上述のネットワーク管理部12aから通知される指示に基づき省電力制御を行う。省電力情報通知部13bは、BANの通信プロトコルにより規定される省電力情報として、省電力状態(スリープ状態、ウェイクアップ状態等)と省電力期間とをネットワーク管理部12aに通知する。
【0018】
ノード20は、通信部21と制御部22とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。通信部21は、ハブ10の通知部13から通知されるウェイクアップ時間を受信する。制御部22は、通信部21により受信されたウェイクアップ時間に基づき、ノード20の省電力制御を行う。なお、図5では、BANネットワークN2を構成するノードのうち、ノード20の構成を代表的に説明したが、ハブ10には、図1に示したように複数のノードが接続されており、ノード30を含む他のノードについてもノード20と同様の構成を有する。
【0019】
次に、本実施例における無線通信システム1の動作を説明する。前提として、以下の説明では、WiMAX基地局からハブを経由してノードに向かう方向の通信をダウンリンクとし、ノードからハブ経由でWiMAX基地局に向かう方向の通信をアップリンクとする。また、省電力情報テーブルとの整合を図るため、以下、必要に応じて、受信部11を「WiMAXデバイス」と記し、通知部13及び通信部21を「BANデバイス」と記すものとする。
【0020】
図6は、ハブ10のネットワーク管理部12aの保持する省電力情報テーブルの初期状態を示す図である。図6に示すように、省電力情報テーブル121aには、デバイスの状態、スリープ開始の時刻、スリープ終了の時刻、上位デバイス、及び下位デバイスが、デバイス及び当該デバイスからみた方向毎に、更新可能に格納されている。初期状態では、WiMAXデバイス(Dev0)、BANデバイス(Dev1)の何れのデバイスについても、各方向の「状態」として“アクティブ”が設定されており、「スリープ開始」及び「スリープ終了」の時刻は空欄となっている。また、ダウンリンクの場合、データは、WiMAX基地局から、WiMAXデバイス、BANデバイス、ノードへと流れるため、WiMAXデバイスは、BANデバイスの上位デバイスである。したがって、ダウンリンクについては、Dev0の「下位デバイス」として“Dev1”が、Dev1の「上位デバイス」として“Dev0”が、設定されている。一方、アップリンクの場合、データは、逆方向に流れるため、BANデバイスがWiMAXデバイスの上位デバイスとなる。したがって、Dev0の「上位デバイス」として“Dev1”が、Dev1の「下位デバイス」として“Dev0”が、設定されている。
【0021】
図7は、無線通信システム1における省電力への移行シーケンスを説明するための図である。ハブ10の省電力制御部11aは、省電力制御に際し、MOB_SLP−REQメッセージとMOB_SLP−RSPメッセージとを用いて、スリーピングウィンドウ開始時刻及び終了時刻を確定する。MOB_SLP−REQメッセージ111aのフォーマットの一例を図8に示す。また、MOB_SLP−RSPメッセージ111bのフォーマットの一例を図9に示す。
【0022】
まず、S1では、WiMAX基地局から、ハブ10宛に、図8に示したMOB_SLP−REQメッセージと図9に示したMOB_SLP−RSPメッセージとが送信される。省電力制御部11aからフレーム番号換算部12bに、現在のフレーム番号、フレーム長、及びスタートフレームが送信されると(S2)、時刻換算処理によって、時間単位がフレームから「時間」に変換される(S3)。省電力制御部11aは、MOB_SLP−RSPメッセージに含まれる“Start_frame_number”に基づき、フレーム番号換算部12bから、時間単位の変換されたスリープ開始時間を取得する(S4)。
【0023】
図10は、無線通信システム1における時刻換算処理を説明するための図である。時刻換算処理は、S3において、フレーム番号換算部12bにより実行される。この時刻換算処理は、現在フレーム番号、フレーム長、変換対象フレーム番号をインプット情報とし、変換後の時刻をアウトプット情報として実行される。フレーム番号換算部12bは、変換対象のフレーム番号から現在のフレーム番号を減算し、その結果をAとする(V1)。次に、フレーム番号換算部12bは、入力されたフレーム長をAに乗算し、その結果をBとする(V2)。そして、フレーム番号換算部12bは、タイマ管理部12cから現在時刻を取得すると(V3)、この現在時刻に上記Bを加算し、その結果をアウトプットとする(V4)。
【0024】
S2〜S4の各処理は、スリープ終了時間についても同様に実行される。すなわち、省電力制御部11aからフレーム番号換算部12bに、現在のフレーム番号、フレーム長、及び“Min-sleeping interval”が送信される(S5)。フレーム番号換算部12bは、MOB_SLP−RSPメッセージに含まれる“initial-sleep window”から、初期のスリープ時間を取得し、上記スリープ開始時間と当該スリープ時間との和によりスリープ終了時間を取得する。この終了時間の時間単位は、上述の時刻換算処理によって、フレームから「時間」に変換される(S6)。その後、フレーム番号換算部12bは、時間単位の変換されたスリープ終了時間を省電力制御部11aに送信し、省電力制御部11aはこれを取得する(S7)。
【0025】
省電力制御部11は、S4で入力されたスリープ開始時間とS7で入力されたスリープ終了時間とにデバイス名を付加し、これらの情報を省電力情報として、省電力情報通知部11bによりネットワーク管理部12aに通知する(S8、S9)。ネットワーク管理部12aは、通知された省電力情報により、省電力情報テーブルを更新する(S10)。その結果、省電力情報テーブルは、図6の省電力情報テーブル121aに示した状態から、図7に示す省電力情報テーブル121bの状態に遷移する。
【0026】
S9でネットワーク管理部12aの取得した省電力情報の変更は、省電力情報通知部13bを介して、省電力制御部13aに通知される(S11、S12)。すなわち、S11では、ネットワーク管理部12aは、更新されたデバイス情報における下位デバイスを参照し、下位のデバイスであるDev1(BANデバイス)に対して、省電力情報が更新されたことを通知する。S12では、省電力制御部13aは、省電力情報通知部13bを介して当該通知を受ける。省電力制御部13aは、省電力情報テーブルの内、Dev1(BANデバイス)の上位デバイスとして設定されているデバイス(Dev0)を参照し、スリープ開始時間とスリープ終了時間とを取得する(S13)。
【0027】
省電力制御部13aは、現在フレーム番号、フレーム長、及びS13で取得されたスリープ開始時間を、フレーム番号換算部12bに通知する(S14)。フレーム番号換算部12bは、現在フレーム番号を、BAN内で管理するためのスーパーフレーム番号に換算する。図11は、無線通信システム1におけるフレーム番号換算処理を説明するための図である。フレーム番号換算処理は、S15において、フレーム番号換算部12bにより実行される。このフレーム番号換算処理は、現在フレーム番号、フレーム長、変換対象時刻をインプット情報とし、変換後のフレーム番号をアウトプット情報として実行される。フレーム番号換算部12bは、タイマ管理部12cから現在時刻を取得すると(W1)、変換対象時刻から現在時刻を減算し、その結果をCとする(W2)。フレーム番号換算部12bは、入力されたフレーム長でCを除算することによりDを求め(W3)、現在フレーム番号+Dをアウトプットとする(W4)。フレーム番号換算部12bは、当該アウトプットを監視し(W5)、オーバーフローしている場合には(W5;Yes)、W4におけるアウトプットである「現在フレーム番号+D」から最大フレーム番号と1とを減算し、その結果をアウトプットに変更する(W6)。なお、W4におけるアウトプットにオーバーフローがない場合には(W5;No)、W6の処理は省略し、フレーム番号換算処理は終了する。
【0028】
S16では、フレーム番号換算部12bは、S15で換算されたスリープ開始フレーム番号を省電力制御部13aに通知する。スリープ終了フレームについても、スリープ開始フレームと同様の処理が実行される。スリープ終了フレームに関するS17〜S19の各処理では、上述したS14〜S16の各処理とそれぞれ同様の処理が実行されるため、その詳細な説明は省略する。
【0029】
省電力制御部13aは、S15でスーパーフレーム単位に換算されたスリープ開始フレーム番号とスリープ終了フレーム番号とを、Connection Assignmentメッセージにより、各ノード20、30に送信する(S20、S21)。図12は、Connection Assignmentメッセージ111cのフォーマットの一例を示す図である。Connection Assignmentメッセージにおいて、スリープ開始フレーム番号はWakeup Phaseフィールドに設定され、スリープ終了フレーム番号はWakeup Periodフィールドに設定されて送信される。各ノード20、30は、上記Connection Assignmentメッセージを受信すると、当該メッセージに含まれるWakeup Phase、Wakeup Periodの各フィールドの値を参照して、共にスリープ状態に遷移する。
【0030】
図13は、無線通信システム1における省電力中のシーケンスを説明するための図である。まず、T1では、WiMAX基地局から、ハブ10宛に、MOB_TRF−INDメッセージが送信される。MOB_TRF−INDメッセージ111dのフォーマットの一例を図14に示す。省電力制御部11aは、リスニングウィンドウの実行中に、MOB_TRF−INDメッセージを受信する。省電力制御部11aは、省電力制御を継続する場合には、MOB_TRF−INDメッセージにより、Negative Indicationを受信する。省電力制御を継続する場合、省電力制御部11aは、WiMAXのプロトコルに従い、スリープ時間を算出する(T2)。このスリープ時間は、前回のスリープフレーム数×2の算定式により算出される。
【0031】
省電力制御部11aからフレーム番号換算部12bに、現在のフレーム番号、フレーム長、及びスリープ開始フレームが送信されると(T3)、時刻換算処理によって、時間単位がフレームから「時間」に変換される(T4)。時刻換算処理については、図10を参照して上述したため、その詳細な説明は省略する。省電力制御部11aは、フレーム番号換算部12bから、時間単位の変換されたスリープ開始時間を取得する(T5)。
【0032】
T6〜T8の各処理は、スリープ終了時間についても同様に実行される。すなわち、省電力制御部11aからフレーム番号換算部12bに、現在のフレーム番号、フレーム長、及びスリープ終了フレームが送信される(T6)。フレーム番号換算部12bは、このスリープ終了フレームにより、スリープ終了時間を取得する。この終了時間の時間単位は、上述の時刻換算処理によって、フレームから「時間」に変換される(T7)。その後、フレーム番号換算部12bは、時間単位の変換されたスリープ終了時間を省電力制御部11aに送信し、省電力制御部11aはこれを取得する(T8)。
【0033】
省電力制御部11は、T5で入力されたスリープ開始時間とT8で入力されたスリープ終了時間とにデバイス名を付加し、これらの情報を省電力情報として、省電力情報通知部11bによりネットワーク管理部12aに通知する(T9、T10)。ネットワーク管理部12aは、通知された省電力情報により、省電力情報テーブルを更新する(T11)。その結果、省電力情報テーブルは、図7の省電力情報テーブル121bに示した状態から、図13に示す省電力情報テーブル121cの状態に遷移する。
【0034】
T10でネットワーク管理部12aの取得した省電力情報の変更は、省電力情報通知部13bを介して、省電力制御部13aに通知される(T12、T13)。すなわち、T12では、ネットワーク管理部12aは、更新されたデバイス情報における下位デバイスを参照し、下位のデバイスであるDev1(BANデバイス)に対して、省電力情報が更新されたことを通知する。T13では、省電力制御部13aは、省電力情報通知部13bを介して当該通知を受ける。省電力制御部13aは、省電力情報テーブルの内、Dev1(BANデバイス)の上位デバイスとして設定されているデバイス(Dev0)を参照し、スリープ開始時間とスリープ終了時間とを取得する(T14)。
【0035】
省電力制御部13aは、現在フレーム番号、フレーム長、及びT14で取得されたスリープ開始時間を、フレーム番号換算部12bに通知する(T15)。フレーム番号換算部12bは、現在フレーム番号を、BAN内で管理するためのスーパーフレーム番号に換算する(T16)。フレーム番号換算処理については、図11を参照して上述したため、その詳細な説明は省略する。T17では、フレーム番号換算部12bは、T16で換算されたスリープ開始フレーム番号を省電力制御部13aに通知する。スリープ終了フレームに関しても、スリープ開始フレームと同様の処理が実行される。スリープ終了フレームに関するT18〜T20の各処理では、上述したT15〜T17の各処理とそれぞれ同様の処理が実行されるため、その詳細な説明は省略する。
【0036】
省電力制御部13aは、T20においてスリープ終了フレーム番号を受信すると、タイマ割込みにより、前回のスリープ状態(アップリンクの監視のみ実行中)から、アクティブ状態(ダウンリンク送信可能な状態)に移行する。省電力制御部13aは、T16でスーパーフレーム単位に換算されたスリープ開始フレーム番号とスリープ終了フレーム番号とを、Connection Assignmentメッセージにより、各ノード20、30に送信する(T21、T22)。各ノード20、30は、上記Connection Assignmentメッセージを受信すると、当該メッセージに含まれるWakeup Phase、Wakeup Periodの各フィールドの値に従い、再びスリープ状態に遷移する。
【0037】
図15は、無線通信システム1における省電力からの復帰シーケンスを説明するための図である。省電力制御部11aは、リスニングウィンドウの実行中にMOB_TRF−IND(Positive Indication)を受信すると(U1)、WiMAXの省電力状態を解除する(U2)。すなわち、省電力制御部11aは、デバイス名と省電力の解除指示とを含む省電力情報を、省電力情報通知部11bを介して、ネットワーク管理部12aに通知する(U3、U4)。ネットワーク管理部12aは、この省電力情報に基づき、省電力情報テーブルを更新する(U5)。この更新処理に伴い、WiMAXデバイスのダウンリンクにおける状態フィールドは、従前のパワーセービング状態(図13参照)から、アクティブ状態(図6に示した初期状態)に変更される。
【0038】
ネットワーク管理部12aは、省電力情報テーブル121dを参照して、状態の更新されたデバイス(Dev0のWiMAXデバイス)の下位デバイス(Dev1のBANデバイス)を特定し、そのデバイス宛に省電力情報の変更を通知する(U6、U7)。また、省電力制御部13aは、省電力情報テーブル121dを参照して、自デバイス(Dev1)の上位デバイスとして設定されているデバイス(Dev0)がアクティブ状態であることを確認する。そして、省電力制御部13aは、タイマ割込みにより、前回のスリープ状態(アップリンクの監視のみ実行中の状態)からアクティブ状態(ダウンリンク送信の可能な状態)に移行する。すなわち、省電力制御部13aは、Connection Assignmentメッセージ111c(図12参照)におけるWakeup PhaseフィールドとWakeup Periodフィールドとに、省電力状態への移行前の値を設定することで、省電力状態から通常状態に遷移する(U8)。
【0039】
Connection Assignmentメッセージは、ノード20、30宛に送信され(U9、U10)、各ノード20、30は、Connection Assignmentメッセージの上記各フィールドの値に従い、通常の動作に復帰する(U11)。
【0040】
以上説明したように、無線通信システム1は、ハブ10とノード20とを有する。ハブ10は、WiMAXネットワークN1とBANネットワークN2とを中継する。ハブ10は、受信部11と制御部12と通知部13とを有する。受信部11は、WiMAXネットワークN1の省電力情報を受信する。制御部12は、受信部11により受信された省電力情報に基づき、BANネットワークN2を構成する各ノードのウェイクアップ時間をノード毎に決定する。通知部13は、制御部12により決定されたウェイクアップ時間を各ノードに通知する。ノード20は、BANネットワークN2を構成する。ノード20は、通信部21と制御部22とを有する。通信部21は、通知部13から通知されるウェイクアップ時間を受信する。制御部22は、通信部21により受信されたウェイクアップ時間に基づき、省電力制御を行う。すなわち、無線通信システム1は、WiMAXネットワークN1の省電力制御プロトコルの情報から、BANネットワークN2の使用が必要となる時間帯を予測する。そして、無線通信システム1は、この予測結果に基づき、BANネットワークN2のノード20がスリープすることのできる時間をスケジュールする。換言すれば、無線通信システム1は、WiMAXネットワークN1及びBANネットワークN2という異種ネットワーク間において、省電力情報を共有し連携を図る。これにより、無線通信システム1は、BANネットワークN2のインタフェースのスリープ時間を一定区間保障することができる。その結果、ハブ10ひいてはその配下のノード20、すなわち無線通信システム1全体の消費電力が低減される。
【0041】
続いて、図16を参照して、本実施例に係る無線通信システム1の奏する具体的な効果について説明する。図16では、次の(1)〜(3)の条件を設定するものとする。(1)スリープとウェイクアップの単位(Beacon Period)を100ms、各ノードのウェイクアップ周期を3とする。つまり、200ms毎にウェイクアップする場合を想定する。(2)WiMAXにおけるスリーピングウィンドウとリスニングウィンドウとの比を、1000ms:200msとする。(3)消費電力は、スリーピング時:リスニング時(WiMAX側)=スリープ時:ウェイクアップ時(BAN側)=10:240とする。かかる条件下において、単位時間(1200ms)における従来の消費電力Pb、及び本実施例における消費電力Paを算出する。
【0042】
ウェイクアップ時における100ms毎の消費電力をxとすると、スリープ時における100ms毎の消費電力は、10/240xにより表される。したがって、従来の消費電力は、Pb=(8×10/240x)+(4×x)=4.33xとなり、本実施例の消費電力は、Pa=(11×10/240x)+(1×x)=1.46xとなる。これにより、本実施例による消費電力は、従来の33.7%となり、約66%の電力低減効果が推定される。
【0043】
上記実施例では、ハブ10は、WiMAXネットワークN1側からの省電力情報に基づき、BANネットワークN2側の省電力制御を行うものとした。しかしながら、ハブ10は、これとは反対に、BANネットワークN2側からの省電力情報に基づき、WiMAXネットワークN1側の省電力制御を行うものとしてもよい。これにより、ハブ10は、BANネットワークN2から収集した省電力情報をWiMAXネットワークN1に反映させることができるので、WiMAX側のデバイスの省電力状態や省電力期間を、ノード20の省電力状態や省電力期間と同調させることができる。したがって、上記実施例とは逆に、WiMAXデバイスのスリープ時間がBANデバイスのスリープ時間と比較して短い場合にも、対応可能となる。その結果、省電力制御の柔軟性が高まる。
【0044】
なお、上述及び図示した各構成部は、機能上の概念的なものであり、物理的には、必ずしも上述及び図示のように構成されている必要はない。例えば、ハブ10において、受信部11と通知部13とは統合されていてもよいし、受信部11及び通知部13の有する省電力制御部と省電力情報通知部とについても、統合されてもよい。また、上記実施例では、ハブ10の制御部12において、ネットワーク管理部12aとフレーム番号換算部12bとタイマ管理部12cとは、別体で構成されるものとしたが、これら各部の機能を一体化して1つの装置にもたせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 無線通信システム
10 ハブ
11 受信部
11a 省電力制御部
11b 省電力情報通知部
12 制御部
12a ネットワーク管理部
12b フレーム番号換算部
12c タイマ管理部
13 通知部
13a 省電力制御部
13b 省電力情報通知部
20、30 ノード
21 通信部
22 制御部
40 通信端末
N1 WiMAXネットワーク
N2 BANネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線ネットワークと第2の無線ネットワークとを中継する中継装置において、
前記第1の無線ネットワークの省電力情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信された省電力情報に基づき、前記第2の無線ネットワークを構成する各無線装置の通信可能時間を無線装置毎に決定する制御部と、
前記制御部により決定された通信可能時間を前記各無線装置に通知する通知部と
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記受信部により受信される前記省電力情報の変更に伴い、前記通信可能時間を更新することを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2の無線ネットワークにおける時間単位を、前記第1の無線ネットワークにおける時間単位に変換することを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項4】
第1の無線ネットワークと第2の無線ネットワークとを中継する中継装置において、
前記第1の無線ネットワークの省電力情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信された省電力情報に基づき、前記第2の無線ネットワークを構成する各無線装置の通信可能時間を無線装置毎に決定する制御部と、
前記制御部により決定された通信可能時間を前記各無線装置に通知する通知部と
を有する中継装置と、
前記第2の無線ネットワークを構成すると共に、
前記通知部から通知される通信可能時間を受信する通信部と、
前記通信部により受信された通信可能時間に基づき、省電力制御を行う制御部と
を有する無線装置と
を有する無線通信システム。
【請求項5】
第1の無線ネットワークと第2の無線ネットワークとを中継する中継装置が、
前記第1の無線ネットワークの省電力情報を受信し、
受信された前記省電力情報に基づき、前記第2の無線ネットワークを構成する各無線装置の通信可能時間を無線装置毎に決定し、
決定された前記通信可能時間を前記各無線装置に通知する
ことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−160893(P2012−160893A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19027(P2011−19027)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】