説明

中継装置及び電力制御方法

【課題】省電力化を考慮した無線通信に適した送信電力を自動的に設定する。
【解決手段】ネットワークに接続して通信するネットワーク通信手段と、無線通信装置と無線により接続して通信する無線通信手段と、ネットワークと無線通信装置との間の通信を中継する中継手段と、無線通信手段と無線通信装置との間の伝送速度を、無線通信手段による無線通信装置への送信電力に応じて決定する速度決定手段と、ネットワーク通信手段とネットワークとの間において設定された伝送速度、または、ネットワークと無線通信装置との間における単位時間あたりのトラフィック量のうち何れかを示すネットワーク情報を取得するネットワーク情報取得手段と、ネットワーク情報が示す値となるような伝送速度が速度決定手段により決定されるように、送信電力を決定する電力決定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークと無線通信装置との通信を中継する中継装置の無線通信における送信電力の制御の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント機能を有する中継装置である無線ルータ装置の普及が進んできている。無線ルータ装置は、PC(パーソナルコンピュータ)等の無線通信装置と無線により接続し、無線通信装置とWAN(Wide Area Network)等のネットワークとの通信を中継する。
【0003】
近年における環境問題対策として、装置の省電力化が装置開発において重要視されてきており、省電力化の機能を有した装置がユーザからも求められている。そのため、無線ルータ装置においても、無線通信における送信電力の省電力化が求められている。
【0004】
省電力化に関連して、無線ルータ装置の無線送信の電力は、従来、設定により変更することが可能であったが、PC等を使用してウェブの設定画面から任意の送信電力を設定することが一般的であった。そのため、ユーザによっては送信電力の設定機能を全く利用しないことがあったため、送信電力が初期値の最大電力のままとなってしまうことがあった。また、ユーザが送信電力の設定を変更する場合も、変更前の無線通信状態をユーザが正確に把握する方法がないことから、最適な送信電力への変更が困難なため、最適な省電力化が実施されないといった問題があった。そのため、通信パフォーマンスの低下や、リンクアップすることができなくなってしまうといった問題が発生していた。
【0005】
また、無線LAN装置の省電力化方法としては、特許文献1において、端末が無線LAN装置に接続していない場合、無線LAN装置が省電力モードに状態遷移する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−251564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、端末を電源ON状態で放置した場合等においては、端末が無線LANに接続されていても全く通信を行っていないのに、省電力モードに状態遷移しないといった問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、省電力化を考慮した無線通信に適した送信電力を自動的に設定することができる中継装置及び電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ネットワークに接続して通信するネットワーク通信手段と、無線通信装置と無線により接続して通信する無線通信手段と、前記ネットワークと前記無線通信装置との間の通信を中継する中継手段と、前記無線通信手段と前記無線通信装置との間の伝送速度を、前記無線通信手段による前記無線通信装置への送信電力に応じて決定する速度決定手段と、前記ネットワーク通信手段と前記ネットワークとの間において設定された伝送速度、または、前記ネットワークと前記無線通信装置との間における単位時間あたりのトラフィック量のうち何れかを示すネットワーク情報を取得するネットワーク情報取得手段と、前記ネットワーク情報が示す値となるような伝送速度が前記速度決定手段により決定されるように、前記送信電力を決定する電力決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の中継装置において、前記電力決定手段は、前記速度決定手段により決定された伝送速度が前記ネットワーク情報が示す値よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に、前記ネットワーク情報が示す値以下となる伝送速度が前記速度決定手段により決定されように、前記送信電力を下げることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の中継装置において、前記電力決定手段は、前記速度決定手段により決定される伝送速度が前記ネットワーク情報が示す値以下となるまで徐々に前記送信電力を下げ、前記送信電力を下げることにより前記無線通信手段と前記無線通信装置との接続が切断されたときには、接続が確立するまで前記送信電力を上げることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の中継装置において、前記ネットワーク情報取得手段は、予め設定された時間間隔ごとに前記トラフィック量の平均値を示す前記ネットワーク情報を取得し、前記電力決定手段は、前記ネットワーク情報が示す平均値となるような伝送速度が前記速度決定手段により決定されるように、前記時間間隔ごとに前記送信電力を決定することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の中継装置において、前記無線通信手段は、前記ネットワーク情報が示す平均値が予め設定された閾値以下である場合には、予め設定された時間、前記無線通信装置への無線送信をしないことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、ネットワークと無線通信装置との通信を中継する中継装置から無線通信装置への無線送信における送信電力を制御する電力制御方法であって、前記中継装置と前記ネットワークとの間において設定された伝送速度、または、前記ネットワークと前記無線通信装置との間における単位時間あたりのトラフィック量のうち何れかを示すネットワーク情報を取得するネットワーク情報取得工程と、前記中継装置と前記無線通信装置との間の伝送速度が前記ネットワーク情報が示す値となるように、前記送信電力を決定する電力決定工程と、前記中継装置と前記無線通信装置との間の伝送速度を、前記電力決定工程において決定された前記送信電力に応じて決定する速度決定工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、省電力化を考慮した無線通信に適した送信電力を自動的に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る無線ルータ装置10のブロック構成図である。
【図2】リンクアップ情報テーブルに格納される情報の一例を示す図である。
【図3】一実施形態に係る無線ルータ装置10の送信パワー制御部8による処理例を示すフローチャートである。
【図4】一実施形態に係る無線ルータ装置10の送信パワー制御部8による処理例を示すフローチャートである。
【図5】リンクアップ情報テーブルに格納される情報の一例を示す図である。
【図6】リンクアップ情報テーブルに格納される情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[1.無線ルータ装置の構成]
先ず、本実施形態に係る無線ルータ装置10の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る無線ルータ装置10のブロック構成図である。図1に示すように、無線ルータ装置10は、ユーザの端末であるPC6と接続するためのLAN側無線制御部1と、通信データや中央処理部4のワークメモリ等を格納するメモリ部2と、プログラムを格納するROM3と、無線ルータ装置10全体を制御する中央処理部(CPU)4と、ネットワーク7と接続するためのWAN側制御部5と、LAN側無線制御部1の送信パワーを制御するための送信パワー制御部8と、により構成されている。ユーザは、PC6を操作することにより、電子メールの送受信やネットサーファイン、ネットワーク7上のサーバ装置からの動画等のコンテンツのダウンロード等を行う。
【0019】
なお、LAN側無線制御部1は、本発明における無線通信手段及び速度決定手段の一例である。また、WAN側制御部5は、本発明におけるネットワーク通信手段の一例である。また、送信パワー制御部8は、本発明における送信電力決定手段の一例である。また、WAN側制御部5及び中央処理部4は、本発明におけるネットワーク情報取得手段の一例である。また、LAN側無線制御部1、中央処理部4及び送信パワー制御部8は、本発明における中継手段の一例である。
【0020】
WAN側制御部5は、ネットワーク7と回線接続し、回線のリンクアップ情報とリンクアップ速度とを取得して中央処理部4に通知するとともに、これらの情報をメモリ部2に格納する。ネットワーク7は、例えば、インターネット等のWANである。WAN側制御部5は、例えばIEEE802.3に準拠したケーブルによりモデムと接続され、PPPoEによりモデムを介してネットワーク7に接続するのが一般的である。
【0021】
LAN側無線制御部1は、PC6と無線により接続し、無線のリンクアップ情報とリンクアップ速度とを中央処理部4に通知するとともに、これらの情報をメモリ部2に格納する。LAN側無線制御部1は、無線LANの規格であるIEEE803.11に準拠した方式でPC6と接続し、通信を行うのが一般的である。また、LAN側無線制御部1は、送信パワー制御部により設定(決定)された送信パワーで無線送信を行う。また、LAN側無線制御部1は、PC6へ無線送信する際のリンクアップ速度を、送信パワー制御部により設定された送信パワーに応じて決定する。
【0022】
中央処理部4は、WAN側制御部5によりネットワーク7から受信されたパケットを、宛先のIPアドレスに基づいてLAN側無線制御部1によりPC6に送信させるとともに、LAN側無線制御部1によりPC6から受信されたパケットを、宛先のIPアドレスに基づいてWAN側制御部5によりネットワーク7へ送信させる。また、中央処理部4は、トラフィック情報をメモリ部2に格納し、また、リンクアップ情報テーブルをメモリ部2に作成する。
【0023】
送信パワー制御部8は、リンクアップ情報テーブルを参照して最適な送信パワーの設定を行う。
【0024】
図2は、リンクアップ情報テーブルに格納される情報の一例を示す図である。図2に示すように、リンクアップ情報テーブルには、リンクアップ情報、リンクアップ速度、トラフィック情報及び送信パワーが格納される。
【0025】
リンクアップ情報は、回線の接続状態を示す。回線接続されている状態(リンクアップ)の場合には、「UP」が格納され、回線接続されていない状態(リンクダウン)の場合には「DOWN」が格納される。リンクアップ情報としては、WAN側のリンクアップ情報とLAN側のリンクアップ情報とがある。WAN側のリンクアップ情報は、WAN側制御部5とネットワーク7との回線の接続状態を示す。LAN側のリンクアップ情報は、LAN側無線制御部1とPC6との回線の接続状態を示す。
【0026】
リンクアップ速度は、接続された回線において通信可能な最大の伝送速度を示す。リンクアップ情報としては、WAN側のリンクアップ速度とLAN側のリンクアップ速度とがある。WAN側のリンクアップ速度は、WAN側制御部5がネットワーク7を介して通信する際の最大の伝送速度である。また、LAN側のリンクアップ速度は、LAN側無線制御部1がPC6と通信する際の最大の伝送速度である。
【0027】
トラフィック情報は、中央処理部4によりWAN側制御部5からLAN側無線制御部1へ伝送された単位時間あたりのデータ量のこれまでの最大値である。つまり、トラフィック情報は、無線ルータ6により中継されたネットワーク7からPC6への単位時間あたりのトラフィック量の最大値である。
【0028】
送信パワーは、LAN側無線制御部1がPC6へ無線送信するときの送信パワー(送信電力)である。送信パワーは、例えば、LAN側無線制御部1が出力可能な送信パワーの最大値を100%として、百分率で設定される。
[2.無線ルータ装置の動作]
次に、本実施形態に係る無線ルータ装置10の動作について、図3及び図4を用いて説明する。
【0029】
WAN側制御部5は、ネットワーク7との回線の接続状態が変化するごとに、リンク情報を中央処理部4に通知するとともに、リンク情報をトラフィック情報テーブルに格納する。また、WAN側制御部5は、ネットワーク7との回線の接続が確立するごとに、接続の確立時に設定されたリンクアップ速度を中央処理部4に通知するとともに、リンクアップ速度をリンクアップ情報テーブルに格納する。
【0030】
LAN側無線制御部1は、PC6との回線の接続状態が変化するごとに、リンク情報を中央処理部4に通知するとともに、リンク情報をトラフィック情報テーブルに格納する。また、LAN側無線制御部1は、PC6との回線の接続が確立するごとに、接続の確立時に設定したリンクアップ速度を中央処理部4に通知するとともに、リンクアップ速度をリンクアップ情報テーブルに格納する。このリンクアップ速度は、例えば、送信パワー制御部8により設定された送信パワーやPC6との通信状況等に応じて設定される。
【0031】
送信パワー制御部8は、リンクアップ情報テーブルのWAN側のリンクアップ情報及びLAN側のリンクアップ情報が両方「UP」に設定された状態になったとき、すなわち、無線ルータ装置10がネットワーク7との接続が確立し、且つ、PC6との接続が確立している場合に、図3または図4に示す処理を開始させる。図3または図4に示す処理は、例えば、ROM3に格納されたプログラムに従って実行されても良いし、図3または図4に示す処理を実行するように送信パワー制御部8のハードウェアが構成されていても良い。
【0032】
図3は、本実施形態に係る無線ルータ装置10の送信パワー制御部8による処理例を示すフローチャートである。図3に示す処理は、LAN側のリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度に合わせられるように、送信パワーが調整される場合の実施例における処理例である。
【0033】
先ず、送信パワー制御部8は、リンクアップ情報テーブルに格納されているWAN側のリンクアップ速度及びLAN側のリンクアップ速度を取得する。そして、送信パワー制御部8は、WAN側のリンクアップ速度がLAN側のリンクアップ速度以上であるか否かを判定する(ステップS1)。このとき、送信パワー制御部8は、WAN側のリンクアップ速度がLAN側のリンクアップ速度以上であると判定した場合には(ステップS1:YES)、図3に示す処理を終了させる。
【0034】
一方、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度よりも大きいと判定した場合には(ステップS1:NO)、LAN側無線制御部1の送信パワーを下げる(ステップS2)。具体的に、送信パワー制御部8は、リンクアップ情報テーブルに格納されている送信パワーから所定値を減算する。また、送信パワー制御部8は、減算後の送信パワーを中央処理部4に通知する。
【0035】
減算後の送信パワーの通知を受けた中央処理部4は、LAN側無線制御部1にリンクアップ速度の再設定を指令する。これにより、LAN側無線制御部1は、リンクアップ速度の再設定を行う。具体的に、LAN側無線制御部1は、リンクアップ情報テーブルから、減算後の送信パワーを参照し、送信パワーに応じてLAN側のリンクアップ速度を設定する。このとき、LAN側無線制御部1は、送信パワーが大きいほど、リンクアップ速度の値を大きくし、送信パワーが小さいほど、リンクアップ速度の値を小さくする。送信パワーが小さくなるほど通信品質が低下するため、リンクアップ速度を遅くすることで通信品質を向上させる。ここでは、送信パワーが下がったため、その分リンクアップ速度が遅くなる。LAN側無線制御部1は、再設定したLAN側のリンクアップ速度を、リンクアップ情報テーブルに格納する。なお、リンクアップ速度は、例えば、変調方式の変更や、変調時の畳み込み符号の符号化率の変更等によって変更される。従って、リンクアップ速度は段階的に設定可能である(例えば、6Mbps、9Mbps、12Mbps・・・)。そのため、送信パワーが下がっても、リンクアップ速度は変わらない場合がある。
【0036】
送信パワー制御部8は、送信パワーを下げると、リンクアップ情報テーブルに格納されているLAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されているか否かを判定する(ステップS3)。つまり、送信パワー制御部8は、PC6との接続が維持されているか否かを判定する。このとき、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されていると判定した場合には(ステップS3:YES)、ステップS1に移行する。送信パワー制御部8は、ステップS1〜S3の処理を繰り返すことにより、LAN側のリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度以下となるまで、LAN側無線制御部1の送信パワーを徐々に下げていく。
【0037】
LAN側のリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度よりも速くても、無線ルータ装置10がネットワーク7からPC6へのデータの中継による実際の最大の伝送速度(実効速度)は、WAN側のリンクアップ速度を越えない。そのため、通信パフォーマンスが低下しないようにしながら、省電力化を自動的に行うことができる。なお、送信パワー制御部8は、例えばWAN側のリンクアップ速度が変化すること等により、LAN側のリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度よりもある程度小さくなった場合には、LAN側のリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度に合わせられるように、送信パワーを上げても良い。
【0038】
ここで、送信パワーが下がったことにより、PC6との接続が切断される場合がある。送信パワーが小さくなると、例えば、PC6が無線ルータ装置10からの送信を検出することができなくなったり、正常な通信を行うことができなくなったりするからである。PC6との接続が切断されると、LAN側無線制御部1は、リンクアップ情報テーブルに、LAN側のリンクアップ情報として「DOWN」を格納する。すると、送信パワー制御部8は、ステップS3において、LAN側のリンクアップ情報が「DOWN」に設定されていると判定する(ステップS3:NO)。この場合、送信パワー制御部8は、LAN側無線制御部1の送信パワーを上げる(ステップS4)。具体的に、送信パワー制御部8は、リンクアップ情報テーブルに格納されている送信パワーに所定値を加算する。また、送信パワー制御部8は、加算後の送信パワーを中央処理部4に通知する。
【0039】
加算後の送信パワーの通知を受けた中央処理部4は、LAN側無線制御部1にリンクアップ速度の再設定を指令する。これにより、LAN側無線制御部1は、PC6との再接続を行う。このとき、LAN側無線制御部1は、PC6との接続が確立した場合には、リンクアップ情報テーブルに、LAN側のリンクアップ情報として「UP」を格納する。また、LAN側無線制御部1は、送信パワーに応じてLAN側のリンクアップ速度を設定する。
【0040】
送信パワー制御部8は、送信パワーを上げると、リンクアップ情報テーブルに格納されているLAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されているか否かを判定する(ステップS5)。つまり、送信パワー制御部8は、PC6との接続が確立したか否かを判定する。このとき、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ情報が「DOWN」に設定されていると判定した場合には(ステップS5:NO)、ステップS4に移行する。一方、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されていると判定した場合には(ステップS5:YES)、図3に示す処理を終了させる。送信パワー制御部8は、ステップS4及びS5を繰り返すことにより、PC6との接続が確立するまで送信パワーを徐々に上げていく。この場合、最終的なLAN側のリンクアップ速度が、WAN側のリンクアップ速度よりも速くなることがある。
【0041】
図4は、本実施形態に係る無線ルータ装置10の送信パワー制御部8による処理例を示すフローチャートである。図4に示す処理は、LAN側のリンクアップ速度がトラフィック情報が示す単位時間あたりのトラフィック量に合わせられるように、送信パワーが調整される場合の実施例における処理例である。
【0042】
先ず、送信パワー制御部8は、リンクアップ情報テーブルに格納されているトラフィック情報及びLAN側のリンクアップ速度を取得する。そして、送信パワー制御部8は、トラフィック情報が示す単位時間あたりのトラフィック量の最大値がLAN側のリンクアップ速度の値以上であるか否かを判定する(ステップS11)。このとき、送信パワー制御部8は、単位時間あたりのトラフィック量の最大値がLAN側のリンクアップ速度の値以上であると判定した場合には(ステップS11:YES)、図4に示す処理を終了させる。
【0043】
一方、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ速度の値が単位時間あたりのトラフィック量の最大値よりも大きいと判定した場合には(ステップS11:NO)、図3のステップS2と同様に、LAN側無線制御部1の送信パワーを下げる(ステップS12)。なお、このときの中央処理部4及びLAN側無線制御部1の処理内容は、図3の場合と同様である。
【0044】
次いで、送信パワー制御部8は、リンクアップ情報テーブルに格納されているLAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されているか否かを判定する(ステップS13)。このとき、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されていると判定した場合には(ステップS13:YES)、ステップS11に移行する。送信パワー制御部8は、ステップS11〜S13の処理を繰り返すことにより、LAN側のリンクアップ速度の値が単位時間あたりのトラフィック量の最大値以下となるまで、LAN側無線制御部1の送信パワーを徐々に下げていく。
【0045】
無線ルータ装置10がネットワーク7からPC6へのデータの中継による実際の最大の伝送速度(実効速度)は、種々の要因により、WAN側のリンクアップ速度及びLAN側のリンクアップ速度よりも遅くなることが一般的である。その要因の一例として、各装置(無線ルータ装置10、PC6、ネットワーク7上のサーバ装置等)の処理能力等が上げられる。そこで、実効速度に対応する情報である単位時間あたりのトラフィック量に基づいて送信パワーを調整することで、通信パフォーマンスの低下を抑えながら、省電力化を自動的に行うことができる。
【0046】
一方、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ情報が「DOWN」に設定されていると判定した場合には(ステップS3:NO)、図3のステップS4と同様に、LAN側無線制御部1の送信パワーを上げる(ステップS14)。なお、このときの中央処理部4及びLAN側無線制御部1の処理内容は、図3の場合と同様である。
【0047】
次いで、送信パワー制御部8は、送信パワーを上げると、リンクアップ情報テーブルに格納されているLAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されているか否かを判定する(ステップS15)。このとき、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ情報が「DOWN」に設定されていると判定した場合には(ステップS15:NO)、ステップS14に移行する。一方、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ情報が「UP」に設定されていると判定した場合には(ステップS15:YES)、図4に示す処理を終了させる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、LAN側無線制御部1が、送信パワー制御部8により決定された送信パワーに応じてLAN側のリンクアップ速度を決定し、WAN側制御部5が、WAN側のリンクアップ速度を取得し、送信パワー制御部8が、WAN側のリンクアップ速度となるようなLAN側のリンクアップ速度がLAN側無線制御部1により決定されるように、送信パワーを決定する。そのため、LAN側のリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度に合わせられるように、送信電力が調整されるので、送信パワーの設定を人為的に行うことなく、省電力化を考慮した無線通信に適した送信パワーを自動的に設定することができる。
【0049】
また、送信パワー制御部8が、LAN側無線制御部1により決定されたリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に、WAN側のリンクアップ速度以下となるLAN側のリンクアップ速度がLAN側無線制御部1により決定されように、送信パワーを下げる。そのため、送信パワーが下げられるので、省電力化を自動的に行うことができる。
【0050】
また、送信パワー制御部8が、LAN側無線制御部1により決定されるリンクアップ速度がWAN側のリンクアップ速度以下となるまで徐々に送信パワーを下げ、送信パワーを下げることによりLAN側無線制御部1とPC6との接続が切断されたときには、接続が確立するまで送信パワーを上げる。そのため、PC6との無線通信が可能なように送信パワーが下げられるので、無線通信により適した省電力化を自動的に行うことができる。
【0051】
また、LAN側無線制御部1が、送信パワー制御部8により決定された送信パワーに応じてLAN側のリンクアップ速度を決定し、中央処理部4が、ネットワーク7とPC6との間の単位時間あたりのトラフィック量を取得し、送信パワー制御部8が、単位時間あたりのトラフィック量の値となるようなLAN側のリンクアップ速度がLAN側無線制御部1により決定されるように、送信パワーを決定する。そのため、LAN側のリンクアップ速度が単位時間あたりのトラフィック量に合わせられるように、送信電力が調整されるので、送信パワーの設定を人為的に行うことなく、省電力化を考慮した無線通信に適した送信パワーを自動的に設定することができる。
【0052】
また、送信パワー制御部8が、LAN側無線制御部1により決定されたリンクアップ速度が単位時間あたりのトラフィック量の値よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に、単位時間あたりのトラフィック量の値以下となるLAN側のリンクアップ速度がLAN側無線制御部1により決定されように、送信パワーを下げる。そのため、送信パワーが下げられるので、省電力化を自動的に行うことができる。
【0053】
また、送信パワー制御部8が、LAN側無線制御部1により決定されるリンクアップ速度が単位時間あたりのトラフィック量の値以下となるまで徐々に送信パワーを下げ、送信パワーを下げることによりLAN側無線制御部1とPC6との接続が切断されたときには、接続が確立するまで送信パワーを上げる。そのため、PC6との無線通信が可能なように送信パワーが下げられるので、無線通信により適した省電力化を自動的に行うことができる。
[3.他の実施例]
上記実施形態においては、LAN側のリンクアップ速度と比較されるトラフィック量を、トラフィック量の最大値としていたが、他の実施例として、送信パワーの更新間隔とトラフィック量の平均値とを用いることで、省電力化を工夫しても良い。
【0054】
図5は、リンクアップ情報テーブルに格納される情報の一例を示す図である。図5に示すように、リンクアップ情報テーブルには、WAN側及びLAN側のリンクアップ情報、WAN側及びLAN側のリンクアップ速度、トラフィック情報、更新間隔、平均値、並びに送信パワーが格納される。更新間隔は、LAN側無線制御部1の送信パワーを更新する時間間隔である。更新間隔は、例えば予め設定される。平均値は、更新間隔内において無線ルータ6により中継されたネットワーク7とPC6との間の総トラフィック量を更新間隔の時間で除算して得られた値である。つまり、平均値は、更新間隔内での単位時間あたりのトラフィック量の平均値である。
【0055】
中央処理部4は、リンクアップ情報テーブルに格納された更新間隔ごとに、更新間隔内での単位時間あたりのトラフィック量の平均値を計算し、計算した平均値を、リンクアップ情報テーブルに格納する。送信パワー制御部8は、無線ルータ装置10がネットワーク7との接続が確立し、且つ、PC6との接続が確立しているときに、リンクアップ情報テーブルのトラフィック量の平均値が更新されるごとに、図4と同様の処理を開始させる。つまり、送信パワー制御部8は、更新間隔が経過するごとに処理を開始させる。
【0056】
ここで、送信パワー制御部8は、ステップS11において、トラフィック量の平均値がLAN側のリンクアップ速度の値以上であるか否かを判定する(ステップS11)。このとき、送信パワー制御部8は、トラフィック量の平均値がLAN側のリンクアップ速度の値以上であると判定した場合には(ステップS11:YES)、図4に示す処理を終了させる。一方、送信パワー制御部8は、LAN側のリンクアップ速度の値がトラフィック量の平均値よりも大きいと判定した場合には(ステップS11:NO)、LAN側無線制御部1の送信パワーを下げる(ステップS12)。
【0057】
このように、中央処理部4が、更新間隔ごとにトラフィック量の平均値を取得し、送信パワー制御部8が、トラフィック量の平均値となるようなLAN側のリンクアップ速度がLAN側無線制御部1により決定されるように、更新間隔ごとに送信パワーを決定するので、トラフィックが少ない時間帯での省電力化が可能となる。
【0058】
なお、送信パワー制御部8は、トラフィック量の平均値が変化すること等により、LAN側のリンクアップ速度がトラフィック量の平均値よりもある程度小さくなった場合には、LAN側のリンクアップ速度がトラフィック量の平均値に合わせられるように、送信パワーを上げても良い。
【0059】
また、トラフィック量の平均値に応じて、LAN側無線制御部1の送信パワーを所定時間オフにしても良い。
【0060】
図6は、リンクアップ情報テーブルに格納される情報の一例を示す図である。図6に示すように、リンクアップ情報テーブルには、WAN側及びLAN側のリンクアップ情報、WAN側及びLAN側のリンクアップ速度、トラフィック情報、更新間隔、平均値、閾値、並びにパワーオフ時間が格納される。閾値は、LAN側無線制御部1の送信パワーをオフにする条件を示すトラフィック量の平均値である。パワーオフ時間は、LAN側無線制御部1の送信パワーをオフにする時間である。閾値及びパワーオフ時間は、例えば、予め設定される。
【0061】
送信パワー制御部8は、例えば、更新間隔が経過するごとに、図4に示す処理に先だって、トラフィック量の平均値が閾値以下であるか否かを判定する。このとき、送信パワー制御部8は、トラフィック量の平均値が閾値以下ではないと判定した場合には、図4に示す処理を実行し、トラフィック量の平均値とLAN側のリンクアップ速度とを比較する。一方、送信パワー制御部8は、トラフィック量の平均値が閾値以下であると判定した場合には、送信パワーとして0%を設定する。LAN側無線制御部1は、送信パワーが0%になったとこに基づいて、リンクアップ情報テーブルに格納されているパワーオフ時間の間、PC6に対する無線送信を行わない。
【0062】
このように、LAN側無線制御部1が、トラフィック量の平均値が閾値以下である場合には、パワーオフ時間の間、PC6への無線送信をしないことで、更なる省電力化を可能となる。
【0063】
また、上記実施形態においては、無線ルータ装置10がネットワーク7に有線で接続する場合について説明したが、無線ルータ装置10がネットワーク7に無線で接続されても良い。無線接続に用いられる通信規格としては、例えば、無線LANの規格であるIEEE802.11、第3世代移動通信システムの規格であるIMT−2000(International Mobile Telecommunication 2000)、第3.9世代移動通信システムの規格であるLTE(Long Term Evolution)等がある。
【0064】
また、本発明は、無線技術あるいは、他の技術を利用してインターネットサービスを提供する中継装置に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 LAN側無線制御部
2 メモリ部
3 ROM部
4 中央処理部
5 WAN側制御部
6 PC
7 ネットワーク
8 送信パワー制御部
10 無線ルータ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続して通信するネットワーク通信手段と、
無線通信装置と無線により接続して通信する無線通信手段と、
前記ネットワークと前記無線通信装置との間の通信を中継する中継手段と、
前記無線通信手段と前記無線通信装置との間の伝送速度を、前記無線通信手段による前記無線通信装置への送信電力に応じて決定する速度決定手段と、
前記ネットワーク通信手段と前記ネットワークとの間において設定された伝送速度、または、前記ネットワークと前記無線通信装置との間における単位時間あたりのトラフィック量のうち何れかを示すネットワーク情報を取得するネットワーク情報取得手段と、
前記ネットワーク情報が示す値となるような伝送速度が前記速度決定手段により決定されるように、前記送信電力を決定する電力決定手段と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中継装置において、
前記電力決定手段は、前記速度決定手段により決定された伝送速度が前記ネットワーク情報が示す値よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合に、前記ネットワーク情報が示す値以下となる伝送速度が前記速度決定手段により決定されように、前記送信電力を下げることを特徴とする中継装置。
【請求項3】
請求項2に記載の中継装置において、
前記電力決定手段は、前記速度決定手段により決定される伝送速度が前記ネットワーク情報が示す値以下となるまで徐々に前記送信電力を下げ、前記送信電力を下げることにより前記無線通信手段と前記無線通信装置との接続が切断されたときには、接続が確立するまで前記送信電力を上げることを特徴とする中継装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の中継装置において、
前記ネットワーク情報取得手段は、予め設定された時間間隔ごとに前記トラフィック量の平均値を示す前記ネットワーク情報を取得し、
前記電力決定手段は、前記ネットワーク情報が示す平均値となるような伝送速度が前記速度決定手段により決定されるように、前記時間間隔ごとに前記送信電力を決定することを特徴とする中継装置。
【請求項5】
請求項4に記載の中継装置において、
前記無線通信手段は、前記ネットワーク情報が示す平均値が予め設定された閾値以下である場合には、予め設定された時間、前記無線通信装置への無線送信をしないことを特徴とする中継装置。
【請求項6】
ネットワークと無線通信装置との通信を中継する中継装置から無線通信装置への無線送信における送信電力を制御する電力制御方法であって、
前記中継装置と前記ネットワークとの間において設定された伝送速度、または、前記ネットワークと前記無線通信装置との間における単位時間あたりのトラフィック量のうち何れかを示すネットワーク情報を取得するネットワーク情報取得工程と、
前記中継装置と前記無線通信装置との間の伝送速度が前記ネットワーク情報が示す値となるように、前記送信電力を決定する電力決定工程と、
前記中継装置と前記無線通信装置との間の伝送速度を、前記電力決定工程において決定された前記送信電力に応じて決定する速度決定工程と、
を含むことを特徴とする電力制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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