説明

中間転写ベルトとその製造方法、中間転写ベルトを用いた画像形成装置

【課題】柔軟性、トナー離型性に優れ、高耐久性と転写媒体によらず高い転写率を有し、高画質画像形成を持続できる中間転写ベルトとその製造方法、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】無端ベルト状の難燃性材料からなる基層11と、基層上に積層された弾性体からなる弾性層12と、弾性層の表層中に球形樹脂粒子本体の一部が個々に埋設され、該弾性層の表面上に露出形成された突部が弾性層表面全域に分散配列されてなる球形樹脂粒子突出層13と、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する弾性層表面の領域を覆い、且つ突出層の高さよりも低く形成されてなるコーティング層14とを構成層として備えた中間転写ベルトを製造し、これを装備した電子写真装置(例えば、タンデム型装置)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー・プリンター等の画像形成装置に装備される中間転写ベルトとその製造方法およびそれを用いた画像形成装置、特にフルカラー画像形成に好適な中間転写ベルトおよびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真装置においては様々な用途でシームレスベルトが部材として用いられている。特に近年のフルカラー電子写真装置においては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の現像画像を一旦中間転写媒体上に色重ねし、その後一括して紙などの転写媒体に転写する中間転写ベルト方式が用いられている。
【0003】
このような中間転写ベルト方式は、1つの感光体に対して4色の現像器を用いるシステムで用いられていたがプリント速度が遅いという欠点があった。そのため、高速プリントとしては、感光体を4色分並べ、各色を連続して紙に転写する4連タンデム方式が用いられている。しかし、この方式では紙の環境による変動などもあり、各色画像を重ねる位置精度を合わせることが非常に困難であり、色ずれ画像を引き起こしていた。そこで近年では、4連タンデム方式に中間転写方式を採用することが主流になってきている。
【0004】
このような情勢の中で中間転写ベルトにおいても、従来よりも要求特性(高速転写、位置精度)が厳しいものとなっており、これらの要求に対応する特性を満足することが必要となってきている。特に、位置精度に対しては、連続使用によるベルト自体の伸び等の変形による変動を抑えることが求められる。また、中間転写ベルトは、装置の広い領域に渡ってレイアウトされ、転写のために高電圧が印加されることから難燃性であることが求められている。このような要求に対応するため、中間転写ベルト材料として主に、高弾性率で高耐熱樹脂であるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが用いられている。
【0005】
ところが、ポリイミド樹脂による中間転写ベルトにおいては、高強度であるためにその表面硬度も高いので、トナー像を転写する際にトナー層に高い圧力がかかり、トナーが局部的に凝集して画像の一部が転写されない、いわゆる中抜け画像が発生することがある。また、感光体や用紙などの転写部での接触部材との接触追従性が劣るため、転写部において部分的な接触不良部(空隙)が発生し、転写むらが発生することがある。
【0006】
近年、フルカラー電子写真を用いてさまざまな用紙に画像を形成することが多くなり、通常の平滑な用紙だけでなく、コート紙のようなスリップ性のある平滑度の高いものからリサイクルペーパーやエンボス紙や和紙やクラフト紙のような表面性の粗いものが使用されることが増えてきている。このような表面性状の異なる用紙への追従性は重要であり、追従性が悪いと、用紙の凹凸状の濃淡むらや色調のむらが発生する。
この課題を解決するために比較的柔軟性のある層を基層上に積層した様々な中間転写ベルトが提案されている。
【0007】
しかしながら、比較的柔軟性のある層を表面層とした場合、転写圧力が低減されたり、用紙凹凸への追従性が向上する反面、表面の離型性が劣るためにトナーがうまく離型できず転写効率が低下し、前者の効果を生かせないという問題が発生する。また、耐摩耗性・耐擦傷性にも劣るという問題もある。
【0008】
この問題を解決するために、新たに保護層を設ける方法があるが、十分に転写性能の高い材料をコートした場合、柔軟層の柔軟性に追従できず、割れやはがれが発生するという
問題が発生するため、好ましくない。そこで、上記のような問題を発生させずに柔軟性のある表面層を保護する方法として、表面に微粒子を付着させることにより転写性を向上させる提案がなされている。
【0009】
特許文献1では、3μm以下の直径のビーズで中間転写部剤を被覆することが提案されている。しかしながら、本提案の構成では昨今の電子写真装置に要求される耐久性においては、粒子の脱離が発生してしまい十分ではない。
特許文献2では、トナーより小粒径で表面が疎水化処理された微粒子と親和性のある材料で、像担持体の表面に層を形成することが提案されている。一方、特許文献3では、ベルト基層と、バインダー層と、微小粒子からなる3層構成の円筒状ベルトからなる中間転写体が提案されている。これらの提案では、大きさの非常に小さな粒径の粒子を好ましく用いている。しかしながら、このような小粒径の粒子では粒子層が厚かったり、粒子の凝集による不均一性部分が存在して転写性能にもばらつきが発生し、昨今の電子写真装置に要求される高いレベルの画質を満たし、長期間安定して出力しうるものが得られない。
特許文献4および5では、トナー粒径より小径の粉体(疎水性シリカ)を用い、ベルト表面をなす層の樹脂にある程度埋設させることで耐久性を実現する構成が提案されている。しかし、これらの提案でも粉体(粒子)の表面における分布状態に不均一性が生じ、やはり昨今の電子写真装置の要求される高いレベルの画質を満足しうるものが得られない。
上記特許文献1〜5の提案においてはいずれもシリカが好ましく用いられているが、シリカ粒子は凝集力が強いため、均一な粒子層を形成することができない。さらに、シリカのような無機粒子は、像形成を担う潜像担持体として好適に用いられる有機感光体との転写部での接触によって有機感光体の表面を傷つけ、摩耗させやすく、耐久性を低下させるという不具合を生じさせる。
また、表面性と耐久性を両立させるため、熱可塑性樹脂中に球形シリコーン樹脂を含有させたシームレスベルト(特許文献6参照)、あるいは、表層樹脂中にフッ素樹脂やグラファイト等の潤滑剤を含有させた中間転写体(特許文献7参照)が提案されている。しかしながら、これらの提案においても粒子の表面における分布状態に不均一性が生じ、転写性能にばらつきが発生してしまう。また、これらの材料をゴム材料、エラストマー材料などの柔軟な材料の上に直接積層すると、クラックやはがれが発生するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、柔軟性とトナー離型性に優れ、転写媒体によらず高い転写率を実現でき、且つ長期にわたり高耐久性を有すると共に高画質画像の出力が持続できる中間転写ベルト、およびその製造方法、並びに中間転写ベルトを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔11〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
〔1〕:上記課題は、電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルトを介して被記録媒体上に転写する電子写真装置に用いられる該中間転写ベルトであって、
前記ベルト構成層として、
少なくとも無端ベルト状の難燃性材料からなる基層と、
前記基層上に積層された弾性体からなる弾性層と、
前記弾性層の表層中に球形樹脂粒子本体の一部が個々に埋設され、該弾性層の表面上に露出形成された突部が弾性層表面全域に分散配列されてなる球形樹脂粒子突出層と、
前記球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する前記弾性層表面の領域を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低く形成されてなるコーティング層と、
を備えたことを特徴とする中間転写ベルトにより解決される。
【0013】
〔2〕:上記〔1〕に記載の中間転写ベルトにおいて、前記球形樹脂粒子が、前記トナーに対して離型性を有する疎水性樹脂からなることを特徴とする。
【0014】
〔3〕:上記〔2〕に記載の中間転写ベルトにおいて、前記疎水性樹脂が、シリコーン樹脂であることを特徴とする。
【0015】
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の中間転ベルトにおいて、前記球形樹脂粒子の体積平均粒子径が、0.5μm〜6.0μmであることを特徴とする。
【0016】
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の中間転ベルトにおいて、前記コーティング層が、前記トナーに対して離型性を有する樹脂を含む水性溶液を用いて塗布形成されたものであることを特徴とする。
【0017】
〔6〕:上記〔5〕に記載の中間転写ベルトにおいて、前記水性溶液が、前記トナーに対して離型性を有する水溶性樹脂または水分散性樹脂を含有していることを特徴とする。
【0018】
〔7〕:上記〔6〕に記載の中間転写ベルトにおいて、前記水溶性樹脂または水分散性樹脂が、分子骨格中にシリコーン結合を含むシリコーン系樹脂または分子骨格中にフルオロカーボン結合を含むフッ素系樹脂から選択される樹脂を含むことを特徴とする。
【0019】
〔8〕:上記〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載の中間転写ベルトにおいて、前記基層が、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂からなることを特徴とする。
【0020】
〔9〕:上記課題は、〔1〕乃至〔8〕のいずれかに記載の中間転写ベルトを搭載したことを特徴とする電子写真装置により解決される。
【0021】
〔10〕:上記課題は、電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルトを介して被記録媒体上に転写する電子写真装置に用いられる該中間転写ベルトの製造方法であって、
少なくとも、無端ベルト状の難燃性材料からなる基層上にエラストマー材料またはゴム材料を積層して弾性体からなる弾性層を形成する工程と、
前記弾性層の表面上に、疎水性樹脂からなる球形樹脂粒子を乾式塗布後、押圧によりならして球形樹脂粒子本体の一部を個々に前記弾性層の表層中に埋設しつつ、該弾性層の表面上に露出形成された突部を弾性層表面全域に分散配列して球形樹脂粒子突出層を形成する工程と、
前記球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する前記弾性層表面を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い領域にコーティング層を形成する工程と、
を有することを特徴とする中間転写ベルトの製造方法により解決される。
【0022】
〔11〕:上記〔10〕に記載の中間転写ベルトの製造方法において、前記コーティング層を形成する工程において、トナーに対して離型性を有する樹脂を含む水性溶液を用いてコーティング層を塗布形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の中間転写ベルトの製造方法により、簡便、且つ均一に、基層上に積層された弾性層の表面上に球形樹脂粒子突出層が分散配列され、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と該間隙に露呈する弾性層表面を覆う領域に突出層の高さよりも低く制御されたコーティング層が設けられる。前記構成層を備えた中間転写ベルトによれば、柔軟性とトナー離型性に優れ、転写媒体によらず高い転写率を実現でき(初期のみならず長期にわたって維持可能)、且つ長期にわたり高耐久性(耐摩耗性、耐擦傷性等)を持続可能である。本発明の中間転写ベルトを電子写真装置に搭載すれば、中抜け画像の発生や、濃度むら、色調むら、あるいは転写むらを生ずることなく長期にわたり高画質の画像を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の中間転写ベルトに好適に用いられる層構成例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の中間転写ベルトの球形樹脂粒子の弾性層への埋設状態と弾性層表面上での露出状態およびコーティング層を説明するための模式図である。
【図3】弾性層の厚み方向に複数の球形樹脂粒子を含む構成を説明するための要部拡大模式図である。
【図4】本発明の中間転写ベルトの製造方法において弾性層表面上に球形樹脂粒子を乾式塗布後ならして球形樹脂粒子突出層を形成する工程を説明するための模式図である。
【図5】本発明の中間転写ベルトをベルト部材として装備する画像形成装置を説明するための要部模式図である。
【図6】本発明の中間転写ベルトに沿って複数の感光体ドラムが並設されているタンデム型電子写真装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
前述のように本発明における中間転写ベルトは、電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルトを介して被記録媒体上に転写する電子写真装置に用いられる該中間転写ベルトであって、
前記ベルト構成層として、
少なくとも無端ベルト状の難燃性材料からなる基層と、
前記基層上に積層された弾性体からなる弾性層と、
前記弾性層の表層中に球形樹脂粒子本体の一部が個々に埋設され、該弾性層の表面上に露出形成された突部が弾性層表面全域に分散配列されてなる球形樹脂粒子突出層と、
前記球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する前記弾性層表面の領域を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低く形成されてなるコーティング層と、
を備えたことを特徴とするものである。
なお、以降、「電子写真装置」を「画像形成装置」と呼称することがある。また、「電子写真感光体」を「像担持体」、「感光体ドラム」、「感光体」と呼称することがある。
【0026】
上記のように、本発明における中間転写ベルト(以下、「シームレスベルト」と呼称することがある。)は、その表面が、独立した球形樹脂粒子(好ましくは、体積平均粒子径0.5μm〜6.0μm)本体の各一部が前記弾性層の表層中に埋設され、未埋設部が該弾性層の表面上に露出してなる突部が面方向に配列して凹凸形状を形成し、且つ、球形樹脂粒子突出層の突部間と、その隙間に露呈する弾性層表面の領域をコーティング層によって被覆されてなること特徴とする。但し、コーティング層の厚さは球形樹脂粒子突出層の高さよりも低く形成される。
【0027】
以下、本発明の中間転写ベルトについて説明する。
本発明の中間転写ベルトは、像担持体、例えば、感光体ドラム上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行い、その一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する方式の電子写真装置(中間転写ベルト方式)における中間転写ベルトとして好適に装備されるものである。
【0028】
図1の断面模式図に、本発明の中間転写ベルトに好適に用いられる層構成例を示す。ただし、本発明の中間転写ベルトの層構成はこれに限定されるものではない。
図1の構成では、無端ベルト(シームレスベルト)状の難燃性材料からなり、比較的屈曲性が得られる剛性な基層11の上に、柔軟な弾性体からなる弾性層12が積層されており、この弾性層12の最表面には、該弾性層12の表面上に露出してなる突部が表面全域に分散配列された球形樹脂粒子突出層13が形成されている。なお、球形樹脂粒子は、トナーに対して離型性を有する疎水性樹脂が好ましく用いられる。そして、球形樹脂粒子突出層13の突部間の隙間と、その隙間に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層14が形成されている。但し、コーティング層14の厚さは球形樹脂粒子突出層13の高さよりも低く形成されている。なお、コーティング層14は、トナーに対して離型性を有する樹脂を含む水性溶液を用いて好ましく塗布形成される。これにより、球形樹脂粒子突出層13の突部先端近傍の領域はコーティング層に被覆されることがない。
【0029】
まず、無端ベルト状の難燃性材料からなる基層11について説明する。
基層11の構成材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整する充填材または添加材、所謂、電気抵抗調整材を含有してなるものが挙げられる。
用いられる樹脂としては、難燃性の観点から、例えば、PVDF、ETFEなどのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましく、機械強度(高弾性)や耐熱性の点から、特にポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂が好適である。
用いられる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などがある。
【0030】
前記金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。また、分散性を良くするため、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものも挙げられる。
前記カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。
前記イオン導電剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等が挙げられ、これらを併用して用いてもよい。
なお、本発明における電気抵抗調整材は、上記例示化合物に限定されるものではない。
【0031】
前記中間転写ベルトとして好適に装備されるシームレスベルトに含有される電気抵抗調整材は、好ましくは表面抵抗で1×10〜1×1013Ω/□、体積抵抗で1×10〜1×1012Ω・cmとなる量とされるが、機械強度の面から成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。
つまり、中間転写ベルトの基層とする場合には、前記樹脂成分(例えば、ポリイミド樹脂前駆体またはポリアミドイミド樹脂前駆体)と電気抵抗調整材の配合を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗および体積抵抗)と機械強度のバランスが取れたシームレスベルトを製造して用いるのが好ましい。本発明の無端ベルト(シームレスベルト)状の基層を製造する際に用いる塗工液には必要に応じて、さらに分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの添加材を含有してもよい。
【0032】
本発明における電気抵抗調整材の含有量としては、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25wt%、好ましくは15〜20wt%である。また、金属酸化物の場合の含有量としては、塗工液中の全固形分の1〜50wt%、好ましくは10〜30wt%である。カーボンブラックおよび金属酸化物の各含有量が前記それぞれの電気抵抗調整材の範囲よりも少ないと電気抵抗調整の効果が十分に得られず、また含有量が前記それぞれの範囲よりも多いと前記中間転写ベルト(シームレスベルト)の機械強度が低下し、実使用上好ましくない。
【0033】
次に、前記基層上に設けられる弾性体からなる弾性層12について説明する。
基層11上に積層される弾性層12を構成する材料としては、汎用の樹脂、エラストマー材料、ゴム材料など弾性体を使用することが可能であり、特に本発明の効果を十分に発現するのに十分な柔軟性(弾性)を有する弾性体として、エラストマー材料やゴム材料を用いるのが好ましい。エラストマー材料としては、熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーが用いられる。
熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系、フッ素系共重合体系等のエラストマー材料が挙げられる。また、熱硬化性エラストマーの具体例としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系等のエラストマー材料が挙げられる。
また、ゴム材料の具体例としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等のゴム材料が挙げられる。
【0034】
弾性層として、上記各種エラストマー材料、ゴム材料の中から、要求性能を満たす材料が適宜選択される。特に、被記録媒体(転写材)として表面性状に凹凸のある紙(例えば、レザック紙)を用いた場合においても、紙の表面状態に追従できるような柔軟性を有する、できるだけ柔らかいものを選択する方が好ましい。
本発明においては、弾性層表面全域に分散配列された球形樹脂粒子突出層を形成するため、熱可塑性の弾性体よりも熱硬化性の弾性体の方が好ましい。熱硬化性の弾性体の方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により、弾性層の表層中に埋設される各球形樹脂粒子本体の一部との密着性あるいは結合性に優れ、形樹脂粒子本体の一部を確実に固定化することができる。加硫ゴムも同様に好ましく用いられる弾性体である。
上記選択した材料に、電気特性を調整するための抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、加硫促進剤などの材料が適宜配合される。
【0035】
弾性層を構成する弾性体の電気特性を調整するための抵抗調整剤としては、前述の基層において記載した各種材料を適用可能であるが、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、これらの併用でも構わない。
当弾性層の抵抗値としては、表面抵抗で1×10〜1×1013Ω/□、体積抵抗で1×10〜1×1012Ω・cmとなる様に調整されることが好ましい。
弾性層の膜厚としては、200μm〜2mm程度が好ましい。膜厚が200μmよりも薄いと、転写媒体の表面性状への追従性や転写圧力低減効果が低く好ましくない。膜厚が2mmよりも厚いと、弾性層の重さが重くなってたわみやすくなり、ベルトとしての走行性が不安定になったり、ベルトを張架させるためのローラ曲率部での屈曲によって亀裂が発生しやすくなるため好ましくない。
【0036】
次に、弾性層の表面に形成される(弾性層表面全域に分散配列される)球形樹脂粒子突出層13について説明する。
球形樹脂粒子(略称「球形粒子」)を構成する材料としては特に問わないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、などの樹脂を主成分としてなる球形粒子が挙げられる。また、これらの樹脂材料からなる粒子の表面を異種材料で表面処理を施したものでもよい。また、ここで言う樹脂粒子の中には、ゴム材料も含む。そして、ゴム材料で作製された球状粒子の表面を硬い樹脂をコートしたような構成のものも適用可能である。また、中空であったり、多孔質であってもよい。
【0037】
これらの樹脂中で、滑性を有し、トナーに対して離型性を有する樹脂(疎水性樹脂)が好ましく用いられ、特に、トナーに対しての離型性、耐磨耗性を付与できる機能の高いものとして、シリコーン樹脂からなる球形粒子が最も好ましい。
球形樹脂粒子(球形粒子)としては、前記樹脂を用い、重合法などにより球状の形状に作製された粒子であることが好ましく、本発明においては、真球に近いものほど好ましい。
また、球形粒子の粒径は、体積平均粒径が、0.5μm〜6.0μmであり、分布がシャープな単分散であることが望ましい。粒径が0.5μm未満の場合、粒子による転写性能の効果が十分に得られず、一方、6.0を超えると、弾性層の表面上に露出してなる球形粒子の突部が高くなって表面粗さが大きくなり、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙(あるいは、「隙間」)が大きくなるため、トナーがうまく転写できなくなったりクリーニング不良となる不具合が生じる傾向が大きくなる。さらには、球形粒子は絶縁性であることが多いため、粒径が大きすぎると粒子による帯電電位の残留により、連続画像出力時に、この電位の蓄積により画像乱れが発生する不具合も生じる。
【0038】
弾性層表面全域に分散配列された球形樹脂粒子突出層、所謂、単分散の球形樹脂粒子からなる突出層は、弾性層の上に、粉体(体積平均粒子径0.5μm〜6.0μmの球形樹脂粒子)をそのまま直接塗布(乾式塗布)した後、押圧し(一定圧力で押し当て)て、ならし、この「ならし」により、球形粒子を容易に、且つ均一に整列させて球形粒子本体の各一部を弾性層の表層中に埋設しつつ、未埋設部を弾性層の表面上に露出するように制御し、球形樹脂粒子の露出された突部を弾性層表面全域に分散配列して形成することができる。
【0039】
上記球形樹脂粒子突出層を形成することにより、表面性状がある程度粗い被記録媒体(転写材)でも高いトナー転写性能を実現することが可能であるが、凹凸の大きい紙に対して追従するには十分とは言えない。具体的には、凹凸のピーク高さとして100μm以上あるような紙、例えば、連量175kg以上のレザック紙に対しては、この凹凸深さに追従する際の変形によってベルトの弾性層が伸び、球形樹脂粒子突出層の突部の間隔が広がり、弾性層が露出する。この突部の間隔が広がると、突部の間隙に露呈する弾性層にトナーが接触するようになり転写性能が低下する原因となる。
本発明者らは、弾性層上に球形樹脂粒子突出層を配列させた後に、前記弾性層表面上で、前記球形樹脂粒子突出層の突部間隙を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い領域にコーティング層を形成する構成により、前記課題が解決できることを見出した。
【0040】
コーティング層14について、以下説明する。
球形樹脂粒子突出層とコーティング層によって、凹凸の大きい紙に対して転写する際に大きく変形して粒子間の隙間の領域が露出した場合でも、トナー転写性能の低下を防ぐことが可能になる。球形樹脂粒子としては、トナーに対して離型性を有する疎水性樹脂からなるものが好ましく、疎水性樹脂としてシリコーン樹脂が好ましく用いられる。
本発明に適したトナーに対して離型性を有する疎水性樹脂からなる球形樹脂粒子を用いた場合、トナーに対して離型性を有する樹脂を含む水性溶液を用いてコーティング層を塗布形成することができる。すなわち、トナーに対して離型性を有する水溶性樹脂または水分散性樹脂などの水性溶液を、前記球形樹脂粒子突出層が設けられた弾性層表面にコーティング(塗布)すると、突部全体がコーティングされることなく、球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い領域にコーティング層を形成することができ、最表面に突出層の突部先端が露出することになる。これによって、球形樹脂粒子突出層表面と弾性層表面を完全にコーティングした場合よりも優れたトナー転写性能を発揮することができる。
【0041】
上記水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリメチルビニルエーテル、ポリアクリル酸ソーダおよびその共重合物、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ポリイソプレンスルホン酸ソーダ共重合物、ナフタレンスルホン酸縮重合物塩、ポリチレンイミンザンテート塩、ジメチルアミノエチルアクリレート(DAA)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DAM)、ジアリルジメチルアンモニウム塩重合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン、ポリアリルアミン、ジシアンアミド系縮合物、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン縮合物、ポリアミジンなどが挙げられる。
【0042】
上記水分散性樹脂としては、例えば、アクリル、アクリル−スチレン、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素、ウレタンなどのエマルション樹脂が挙げられる。本発明においては、上述した材料群の中でも、優れたトナー離型性が得られる分子骨格中にシリコーン結合を含むシリコーン系樹脂または分子骨格中にフルオロカーボン結合を含むフッ素系樹脂から選択される樹脂を含むものが特に好適に用いられる。
【0043】
コーティング層の厚みは、球形樹脂粒子突出層の高さ、すなわち、球形樹脂粒子の突部よりも低く形成され、突部を完全に被覆しない程度の厚みである必要がある。具体的には、弾性層の表面上に露出している(はみ出している)突部高さの半分以下の膜厚とすることが好ましい。例えば、体積平均粒子径が2μmの球形樹脂粒子を、埋没率50%で弾性層の表層中に埋設した場合、弾性層の表面上に露出した(弾性層からはみ出している)突部の高さは1μmとなり、形成すべきコーティング層の厚みは0.5μmよりも薄くすることが好ましい。
【0044】
図2は、本発明の中間転写ベルトの球形樹脂粒子の弾性層への埋設状態と弾性層表面上での露出状態およびコーティング層を説明するための模式図である図2において、符号12は弾性層、13は球形樹脂粒子突出層、14はコーティング層を示す。
前述のように、本発明の中間転写ベルトを構成する突出層のそれぞれの球形樹脂粒子は、弾性体からなる弾性層の表層(弾性体)中に埋設された形態を採ることが好ましく、その埋没率は、50%を超え100%に満たないことが好ましい。埋没率が50%以下では、電子写真装置の中間転写ベルトとして長期使用された際に、埋設された弾性層から球形樹脂粒子の脱離が起きやすく、耐久性に劣る。一方、埋没率が100%では、凹凸形状をなす突部による転写性への効果が低減し好ましくない。
本発明における球形樹脂粒子の埋設率は、転写紙として、表面に凹凸模様を施してある紙(連量175kg紙レザック紙)を用い、これに、青色のベタ画像を出力する操作を実施し、紙に転写する前の中間転写ベルト上の画像トナー量と紙に転写した後に中間転写ベルト上に残ったトナー量を計測し、下記式(1)により算出される。
【0045】
【数1】

【0046】
さらに、球形樹脂粒子突出層は、弾性層に対して、厚み方向に単一層で形成されることが好ましい。弾性層に対して、厚み方向に複数の粒子を含むような構成(図3)では、粒子の含有される分布がむらになり、粒子の有する電気抵抗値の影響により、ベルト表面の電気特性が不均一となり画像乱れを生じる。
具体的には、球形樹脂粒子が多く存在する部分での電気抵抗値が高くなり、この部分に残留電荷による表面電位が発生して、ベルト表面において表面電位のばらつきが生じ、隣接した部分での画像濃度に差が生じる等の影響が出て画像乱れが顕在化する。
なお、図3は、弾性層の厚み方向に複数の球形樹脂粒子を含む構成を説明するための要部拡大模式図である。図3の要部拡大模式図において、符号61は弾性層、62は球形樹脂粒子を示す。
【0047】
本発明における、 電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルトを介して被記録媒体上に転写する電子写真装置に用いられる該中間転写ベルトの製造方法は、
少なくとも、無端ベルト状の難燃性材料からなる基層上にエラストマー材料またはゴム材料を積層して弾性体からなる弾性層を形成する工程と、
前記弾性層の表面上に、球形樹脂粒子を乾式塗布後、押圧によりならして球形樹脂粒子本体の一部を個々に前記弾性層の表層中に埋設しつつ、該弾性層の表面上に露出形成された突部を弾性層表面全域に分散配列して球形樹脂粒子突出層を形成する工程と、
前記球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する前記弾性層表面を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い領域にコーティング層を形成する工程と、
を有することを特徴とすることを特徴とするものである。
以下に、本発明の構成の中間転写ベルトを作製する方法の一例を説明する。
【0048】
まず、無端ベルト状の難燃性材料からなる基層の作製方法について説明する。
難燃性の樹脂成分を含む塗工液、すなわち、ポリイミド樹脂前駆体またはポリアミドイミド樹脂前駆体を含む塗工液を用いて基層を製造する方法について説明する。
円筒状の型、例えば、円筒状の金属金型(金型ドラム)をゆっくりと回転させながら、少なくとも難燃性の樹脂成分を含む塗工液(例えば、ポリイミド樹脂前駆体またはポリアミドイミド樹脂前駆体を含む塗工液)をノズルやディスペンサーのような液供給装置にて円筒の外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。そして、回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が形成されたところで金型ごと高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温し、最終的に250〜450℃程度の高温で加熱処理(焼成)し、十分にポリイミド樹脂前駆体またはポリアミドイミド樹脂前駆体のイミド化またはポリアミドイミド化を行い基層を作製する。
【0049】
上記イミド化またはポリアミドイミド化して基層を作製した後十分に冷却してから、引き続き、基層上に弾性層を積層する。
弾性層は、射出成形、押し出し成形などにより基層上に形成することも可能であるが、ここでは、熱硬化型の液状のエラストマー材料を用い、基層上に塗布形成する方法について説明する。
例えば、少なくとも液状の熱硬化型エラストマー材料を含む塗布液を、基層の場合と同様にして円筒状の金属金型(金型ドラム)をゆっくりと回転させながら、ノズルやディスペンサーのような液供給装置にて円筒の外面に形成した基層上に全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、間回転を継続する。
そして、十分にレベリングしたところで、図4の模式図に示すように、基層上に弾性層を積層したベルト32が形成された金型ドラム31を、粉体供給装置35と押し当て部材33が設置された所定箇所に配置し、金型ドラム31を回転させながら粉体供給装置35から球形樹脂粒子(略称、「球状粒子」)を弾性層の表面に、均一にまぶしつつ分散し、表面に分散された球状粒子を押し当て部材33により一定圧力にて押し当てる。この押し当て部材33により、余剰な球状粒子を取り除きつつ、略単層状態で球状粒子を弾性層の表層中に埋設させ、未埋設部が弾性層の表面上に露出した突部を形成するように制御する。本発明では、特に単分散の球形粒子(例えば、シリコーン樹脂等のトナーに対して離型性を有する疎水性樹脂からなる球形樹脂粒子)を用いるために、このような押し当て部材を用いた簡便な「ならし工程」のみで、均一な単一粒子層を形成することが可能であり、弾性層表面全域に分散配列された球形樹脂粒子突出層を形成することができる。
なお、均一な球形樹脂粒子突出層を形成後、金型ドラム31を回転させながら所定温度および所定時間で加熱処理してエラストマー材料を硬化させ、弾性層を形成する。
【0050】
上記基層、弾性層、球形樹脂粒子突出層が順次形成された後、コーティング層を形成する。すなわち、トナーに対して離型性を有する樹脂(例えば、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂)を含む塗工液(水性溶液)を、基層、弾性層、球形樹脂粒子突出層が形成された円筒状の金属金型をゆっくりと回転させながら、スプレーやノズルやディスペンサーのような液供給装置にて、外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。
その後、十分にレベリングしたところで、回転させながら所定温度、所定時間で加熱処理して乾燥または硬化させ、コーティング層を形成する。なお、コーティング層の形成に用いられる塗工液の塗布量は、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する前記弾性層表面の領域を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低くなるように調整される。コーティング層の形成後、充分に冷却後、金型ドラムから基層ごと脱離させて所望のシームレス状の中間転写ベルトを得る。
【0051】
前述の方法により製造されたシームレス状の中間転写ベルトは、例えば、電子写真感光体(像担持体)上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行い、その一次転写画像を被記録媒体に一括して二次転写する、いわゆる中間転写方式の電子写真装置の中間転写ベルトとして好適に用いられ、高画質画像形成な電子写真装置(画像形成装置)を構成することができる。
【0052】
本発明のシームレス状の中間転写ベルト(以降、「シームレスベルト」と呼称するすることがある。)を搭載した本発明における電子写真装置(以降、「画像形成装置」と呼称することがある。)について、図を参照しながら以下に詳しく説明する。なお、模式図は一例であって本発明はこれに限定されるものではない。
図5は、本発明の中間転写ベルトをベルト部材として装備する画像形成装置を説明するための要部模式図である。
図5に示すベルト部材を含む中間転写ユニット500は、複数のローラに張架された中間転写体である中間転写ベルト501などにより構成されている。この中間転写ベルト501の周りには、2次転写ユニット600の2次転写電荷付与手段である2次転写バイアスローラ605、中間転写体クリーニング手段であるベルトクリーニングブレード504、潤滑剤塗布手段の潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ505などが対向するように配設されている。
【0053】
また、位置検知用マークが中間転写ベルト501の外周面または内周面に図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト501の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード504の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがあるので、その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト501の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ514は、中間転写ベルト501が架け渡されている1次転写バイアスローラ507とベルト駆動ローラ508との間の位置に設けられる。
【0054】
この中間転写ベルト501は、1次転写電荷付与手段である1次転写バイアスローラ507、ベルト駆動ローラ508、ベルトテンションローラ509、2次転写対向ローラ510、クリーニング対向ローラ511、およびフィードバック電流検知ローラ512に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、1次転写バイアスローラ507以外の各ローラは接地されている。1次転写バイアスローラ507には、定電流または定電圧制御された1次転写電源801により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流または電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
【0055】
中間転写ベルト501は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ508により、矢印方向に駆動される。このベルト部材である中間転写ベルト501は、通常、半導体、または絶縁体で、単層または多層構造となっているが、本発明においてはシームレスベルト(本発明の中間転写ベルト)が好ましく用いられ、これによって耐久性が向上すると共に、優れた画像形成が実現できる。また、中間転写ベルトは、感光体ドラム200上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
【0056】
2次転写手段である2次転写バイアスローラ605は、2次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501のベルト外周面に対して、後述する接離手段としての接離機構によって、接離可能に構成されている。2次転写バイアスローラ605は、2次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501との間に被記録媒体である転写紙Pを挟持するように配設されており、定電流制御される2次転写電源802によって所定電流の転写バイアスが印加されている。
【0057】
レジストローラ610は、2次転写バイアスローラ605と2次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501との間に、所定のタイミングで転写材である転写紙Pを送り込む。また、2次転写バイアスローラ605には、クリーニング手段であるクリーニングブレード608が当接している。該クリーニングブレード608は、2次転写バイアスローラ605の表面に付着した付着物を除去してクリーニングするものである。
【0058】
このような構成のカラー複写機において、画像形成サイクルが開始されると、感光体ドラム200は、図示しない駆動モータによって矢印で示す半時計方向に回転され、該感光体ドラム200上に、Bk(ブラック)トナー像形成、C(シアン)トナー像形成、M(マゼンタ)トナー像形成、Y(イエロー)トナー像形成が行われる。中間転写ベルト501はベルト駆動ローラ508によって矢印で示す時計回りに回転される。この中間転写ベルト501の回転に伴って、1次転写バイアスローラ507に印加される電圧による転写バイアスにより、Bkトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の1次転写が行われ、最終的にBk、C、M、Yの順に中間転写ベルト501上に各トナー像が重ね合わせて形成される。
【0059】
例えば、上記Bkトナー像形成は次のように行われる。
図5において、帯電チャージャ203は、コロナ放電によって感光体ドラム200の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。上記ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書き込み光学ユニットにより、Bkカラー画像信号に基づいてレーザ光によるラスタ露光を行う。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体ドラム200の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、Bk静電潜像が形成される。このBk静電潜像に、Bk現像器231Kの現像ローラ上の負帯電されたBkトナーが接触することにより、感光体ドラム200の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷の無い部分つまり露光された部分にはトナーが吸着し、静電潜像と相似なBkトナー像が形成される。
【0060】
このようにして感光体ドラム200上に形成されたBkトナー像は、感光体ドラム200と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト501のベルト外周面に1次転写される。この1次転写後の感光体ドラム200の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体ドラム200の再使用に備えて、感光体クリーニング装置201で清掃される。この感光体ドラム200側では、Bk画像形成工程の次にC画像形成工程に進み、所定のタイミングでカラースキャナによるC画像データの読み取りが始まり、そのC画像データによるレーザ光書き込みによって、感光体ドラム200の表面にC静電潜像を形成する。
【0061】
そして、先のBk静電潜像の後端部が通過した後で、且つC静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット230の回転動作が行われ、C現像機231Cが現像位置にセットされ、C静電潜像がCトナーで現像される。以後、C静電潜像領域の現像を続けるが、C静電潜像の後端部が通過した時点で、先のBk現像機231Kの場合と同様にリボルバ現像ユニットの回転動作を行い、次のM現像機231Mを現像位置に移動させる。これもやはり次のY静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。Y現像機231Yの場合も同様である。なお、MおよびYの画像形成工程については、それぞれのカラー画像データ読み取り、静電潜像形成、現像の動作が上述のBk、Cの工程と同様であるので説明は省略する。
【0062】
このようにして感光体ドラム200上に順次形成されたBk、C、M、Yのトナー像は、中間転写ベルト501上の同一面に順次位置合わせされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト501上に最大で4色が重ね合わされたトナー像が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙Pが転写紙カセットまたは手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ610のニップで待機している。そして、2次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501と2次転写バイアスローラ605によりニップが形成された2次転写部に、上記中間転写ベルト501上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙Pの先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ610が駆動されて、転写紙ガイド板601に沿って転写紙Pが搬送され、転写紙Pとトナー像とのレジスト合わせが行われる。
【0063】
このようにして、転写紙Pが2次転写部を通過すると、2次転写電源802によって2次転写バイアスローラ605に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト501上の4色重ねトナー像が転写紙P上に一括転写(2次転写)される。この転写紙Pは、転写紙ガイド板601に沿って搬送されて、2次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ606との対向部を通過することにより除電された後、ベルト構成部であるベルト搬送装置210により定着装置270に向けて送られる(図1参照)。そして、この転写紙Pは、定着装置270の定着ローラ271、272のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置270は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0064】
一方、上記ベルト転写後の感光体ドラム200の表面は、感光体クリーニング装置201でクリーニングされ、上記除電ランプ202で均一に除電される。また、転写紙Pにトナー像を2次転写した後の中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード504によってクリーニングされる。該ベルトクリーニングブレード504は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0065】
このベルトクリーニングブレード504の上記中間転写ベルト501の移動方向上流側には、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材502が設けられている。このトナーシール部材502は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード504から落下した落下トナーを受け止めて、該落下トナーが上記転写紙Pの搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材502は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード504とともに、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離される。
【0066】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト501のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ505により削り取られた潤滑剤506が塗布される。該潤滑剤506は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ505に接触するように配設されている。また、この中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト501のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ505および上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
【0067】
ここで、リピートコピーの時は、カラースキャナの動作および感光体ドラム200への画像形成は、1枚目の4色目(Y)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(Bk)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト501は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙への一括転写工程に引き続き、ベルト外周面の上記ベルトクリーニングブレード504でクリーニングされた領域に、2枚目のBkトナー像が1次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。以上は、4色フルカラーコピーを得るコピーモードであったが、3色コピーモード、2色コピーモードの場合は、指定された色と回数の分について、上記同様の動作を行うことになる。また、単色コピーモードの場合は、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット230の所定色の現像機のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード504を中間転写ベルト501に接触させたままの状態にしてコピー動作を行う。
なお、図5中、符号70は除電ローラ、80はアースローラ、204は電位センサー、205は画像濃度センサー、503は帯電チャージャ、513はトナー画像、Lはレーザー光露光手段を示す。
【0068】
上記実施形態では、感光体ドラム1を一つだけ備えた複写機について説明したが、本発明は、例えば、複数の感光体ドラムをシームレス状のベルトからなる一つの中間転写ベルトに沿って並設した画像形成装置にも適用できる。図6は、本発明の中間転写ベルトに沿って複数の感光体ドラムが並設されているタンデム型電子写真装置の一例を示す概略構成図である。すなわち、図6は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム21BK、21Y、21M、21Cを備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
図6において、プリンタ本体10は電子写真方式によるカラー画像形成を行うための、画像書込部12、画像形成部13、給紙部14、から構成されている。画像信号を元に画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)の各色信号に変換し、画像書込部12に送信する。画像書込部12は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、およびミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部13の各色毎に設けられた像坦持体(感光体)21BK、21M、21Y、21Cに各色信号に応じた画像書込を行う。
【0069】
画像形成部13は黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、シアン(C)用の各像坦持体である感光体21BK、21M、21Y、21Cを備えている。この各色用の各感光体としては、通常OPC感光体が用いられる。各感光体21BK、21M、21Y、21Cの周囲には、帯電装置、上記書込部12からのレーザ光の露光部、黒、マゼンタ、イエロー、シアンの各色用の現像装置20BK、20M、20Y、20C、1次転写手段としての1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23C、クリーニング装置(表示略)、および図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、上記現像装置20BK、20M、20Y、20Cには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。ベルト構成部である中間転写ベルト22は、各感光体21BK、21M、21Y、21Cと、各1次転写バイアスローラ23BK、23M、23Y、23Cとの間に介在し、各感光体上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
【0070】
一方、転写紙Pは、給紙部14から給紙された後、レジストローラ16を介して、ベルト構成部である転写搬送ベルト50に担持される。そして、中間転写ベルト22と転写搬送ベルト50とが接触するところで、上記中間転写ベルト22上に転写されたトナー像が、2次転写手段としての2次転写バイアスローラ60により2次転写(一括転写)される。これにより、転写紙P上にカラー画像が形成される。このカラー画像が形成された転写紙Pは、転写搬送ベルト50により定着装置15に搬送され、この定着装置15により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0071】
なお、上記2次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト22上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング部材25によって中間転写ベルト22から除去される。このベルトクリーニング部材25の下流側には、潤滑剤塗布装置27が配設されている。この潤滑剤塗布装置27は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト22に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。前記導電性ブラシは、中間転写ベルト22に常時接触して、中間転写ベルト22に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト22のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。なお、図6中、符号26は駆動ローラ、70はバイアスローラを示す。
【実施例】
【0072】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本件の発明の範囲内である。
【0073】
[実施例1]
下記により基層用塗工液を調製し、この塗工液を用いて無端ベルト状(シームレスベルト状)の難燃性材料からなる基層を製造した。
<基層用塗工液の調製>
先ず、ポリイミド樹脂前駆体を主成分とするポリイミドワニス(U−ワニスA;宇部興産社製)に、予めビーズミルにてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(SpecialBlack4;エボニックデグサ社製)の分散液を、カーボンブラック含有率がポリアミック酸固形分の17重量%になるように調合し、よく攪拌混合して基層用塗工液を調製した。
【0074】
<シームレスベルトの製造>
次に、外径100mm、長さ300mmの外面をブラスト処理にて粗面化した金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記基層用塗工液を円筒外面に均一に流延するようにディスペンサーにて塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に導入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱した。さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して成形膜が形成された円筒型を取り出し、これを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に導入し、段階的に320℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)し、膜厚80μmの基層を形成した。
【0075】
十分冷却した後、下記組成分からなる弾性層用塗工液を前記基層上に塗布して弾性層を形成した。
〔弾性層用塗工液の調整〕
まず、下記に示す各構成材料を混合し、2軸混練機を用いて、十分に混練し、マスターバッチを作製した。
<カーボンマスターバッチAの組成>
エポキシ−シリコーン共重合体
ALBIFLEX348(シリコーン60wt%Nanoresins社)20重量部
カーボンブラック VULCAN XC72(キャボット社) 100重量部
上記カーボンマスターバッチAを用いて、下記の構成材料を混合し塗布液を得た。
次に、上記カーボンマスターバッチAと下記組成分を均一に混合し、弾性層用塗工液を作製した。
<弾性層用塗工液の組成分>
上記カーボンマスターバッチA 8重量部
エポキシ−シリコーン共重合体
ALBIFLEX348(シリコーン60wt%Nanoresins社)40重量部
メチルテトラヒドロ無水フタル酸
HN−2000(日立化成工業社) 8重量部
【0076】
<基層上への弾性層の形成および球形樹脂粒子突出層の形成>
上記円筒金型の外周に形成したポリイミド基層の外面に上記弾性層用塗工液を均一にディスペンサーを用いて流延して塗布した。塗布量としては最終的な膜厚が300μmになるような液量の条件とした。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、図4に示す装置(粉体供給装置と押し当て部材を備えた設置)を用いて、円筒金型を回転させながら粉体供給装置から球形樹脂粒子[シリコーン樹脂粒子;X−52−854(体積平均粒径:0.8μm品)、信越化学]を弾性層の表面に乾式法により塗布して分散し(まんべんなく表面にまぶし)表面に分散された球状粒子を押し当て部材[ポリウレタンゴムブレード]により一定圧力にて押し当て余剰な球状粒子を取り除きつつ、略単層状態で球状粒子を弾性層の表層中に埋設し、固定化した。
ベルト表面全面の処理を終えた後、そのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で120℃まで昇温して30分加熱した。引き続き、昇温速度4℃/分で250℃まで昇温して120分加熱処理した。加熱を停止した後、常温まで徐冷した。上記処理により、基層上に弾性層が形成され、弾性層表面に球形樹脂粒子突出層が形成された。
【0077】
<コーティング層の形成>
続いて、上記で作製した球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域に、コーティング層用塗工液[シリコーン系グラフトポリマー;サイマックUS−480(東亞合成)]を用いて、スプレー塗工により金型を回転させながら均一に塗布した。塗布量としては、最終的な膜厚が0.1μmとなるような条件とした(球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い膜厚)。その後、円筒金型をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して90℃で30分加熱した。十分冷却後、金型から取り外し、中間転写ベルトAを得た。
中間転写ベルトAの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部先端領域にはコーティング層が被覆されていないこと、および球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0078】
[実施例2]
実施例1における球状樹脂粒子をシリコーン樹脂粒子[KMP701(体積平均粒径:3.5μm品)、信越化学]に代えた以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトBを得た。
中間転写ベルトBの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部先端領域にはコーティング層が被覆されていないこと、および球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0079】
[実施例3]
実施例1における球状樹脂粒子をシリコーン樹脂粒子[トスパール120(体積平均粒径:2.0μm品)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ]に代えた以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトCを得た。
中間転写ベルトCの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部先端領域にはコーティング層が被覆されていないこと、および球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0080】
[実施例4]
実施例1における球状樹脂粒子をシリコーン樹脂粒子[トスパール2000B(体積平均粒径:6.0μm品)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ]に代え、コーティング層の膜厚を1.0μmとする条件で塗工した以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトDを得た。
中間転写ベルトDの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部先端領域にはコーティング層が被覆されていないこと、および球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0081】
[実施例5]
実施例3におけるコーティング層の形成を下記とする以外は実施例3と同様にして中間転写ベルトEを得た。
弾性層表面に球形樹脂粒子突出層を形成した後、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域に、コーティング層用塗工液[水で26倍に希釈したエマルション型シリコーン;TSM631(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)]を用いて、スプレー塗工により金型を回転させながら均一に塗布した。塗布量としては、最終的な膜厚が0.5μmとなるような条件とした(球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い膜厚)。その後、金型をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して85℃で20分加熱した。十分冷却後、金型から取り外し、中間転写ベルトEを得た。
中間転写ベルトEの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部先端領域にはコーティング層が被覆されていないこと、および球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0082】
[実施例6]
実施例3におけるコーティング層の形成を下記とする以外は実施例3と同様にして中間転写ベルトFを得た。
弾性層表面に球形樹脂粒子突出層を形成した後、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域に、コーティング層用塗工液[水性フッ素樹脂;シルビアWF−400(日本特殊塗料)]を用いて、スプレー塗工により金型を回転させながら均一に塗布した。塗布量としては、最終的な膜厚が0.5μmとなるような条件とした(球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い膜厚)。その後、金型をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して80℃で20分加熱した。十分冷却後、金型から取り外し、中間転写ベルトFを得た。
中間転写ベルトFの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部先端領域にはコーティング層が被覆されていないこと、および球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0083】
[実施例7]
実施例3におけるコーティング層の形成を下記とする以外は実施例3と同様にして中間転写ベルトGを得た。
弾性層表面に球形樹脂粒子突出層を形成した後、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域に、コーティング層用塗工液[水性ウレタン樹脂;パイドランAP−40(F)、〔DIC株式会社〕]を用いて、スプレー塗工により金型を回転させながら均一に塗布した。塗布量としては、最終的な膜厚が0.5μmとなるような条件とした(球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い膜厚)。その後、金型をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して90℃で30分加熱した。十分冷却後、金型から取り外し、中間転写ベルトGを得た。
中間転写ベルトGの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部先端領域にはコーティング層が被覆されていないこと、および球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0084】
[比較例1]
実施例1において、弾性層表面に球形樹脂粒子突出層を設けないこと以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトHを得た。
中間転写ベルトGの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、弾性層表面の全領域にコーティング層が形成されていることが確認された。
【0085】
[比較例2]
実施例1において、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に露呈する弾性層表面の領域にコーティング層を設けないこと以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトIを得た。
中間転写ベルトIの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ、球形樹脂粒子の弾性層中への埋設率は60%以上であり、球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、突部間の間隙に弾性層表面が露呈していることが確認された。
【0086】
[比較例3]
実施例1において、弾性層表面に球形樹脂粒子突出層を設けず、且つ、コーティング層を設けないこと以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトJを得た。
中間転写ベルトJの断面を走査型電子顕微鏡にて断面観察したところ表面全領域に、弾性層が形成されていることが確認された。
【0087】
上記各実施例、比較例で得られた中間転写ベルトA〜Jを、図6に示す電子写真装置に搭載し、以下の条件で転写率の評価および画像評価を実施した。結果を下表1に示す。
【0088】
<転写率の測定>
転写紙として、表面に凹凸模様を施してある紙(連量175kg紙レザック紙)を用い、これに、青色のベタ画像を出力する操作を実施し、紙に転写する前の中間転写ベルト上の画像トナー量と紙に転写した後に中間転写ベルト上に残ったトナー量を計測し、下記式(1)により転写率を算出した。
【0089】
【数2】

【0090】
〈1万枚連続画像出力時点における転写率の測定〉
テストチャートを連続1万枚連続画像出力した後、停止し、上記に従いトナー量を計測し、前記式(1)により転写率を算出した。
〈1万枚連続画像出力時点における画像評価〉
テストチャートを連続1万枚連続画像出力した後、連量175kg紙レザック紙に全面シアン単色のハーフトーン画像を出力し、異常画像を観察した。
【0091】
【表1】

【0092】
上記評価結果から、無端ベルト状の難燃性材料からな基層、弾性体からなる弾性層、球形樹脂粒子突出層、コーティング層を備えた本発明の中間転写ベルト(A〜G)は、いずれも初期のみならず連続1万枚連続画像出力した後においても転写率は90%以上であり、また、白抜けなどの異常画像の発生も見られず、中間転写ベルトにも剥がれや、トナー固着などの不具合は発生しなかった。
すなわち、本発明の構成とした中間転写ベルトによれば、柔軟性とトナー離型性に優れ、転写媒体によらず高い転写率を実現でき、且つ長期にわたり高耐久性(耐摩耗性、耐擦傷性等)を持続可能である。本発明の中間転写ベルトを電子写真装置に搭載すれば、中抜け画像の発生や、濃度むら、色調むら、あるいは転写むらを生ずることなく長期にわたり高画質の画像を出力することができる。
【符号の説明】
【0093】
(図1の符号)
11 基層
12 弾性層
13 球形樹脂粒子突出層
14 コーティング層
(図2の符号)
21 弾性層
22 球形樹脂粒子
23 コーティング層
(図3の符号)
61 弾性層
62 球形樹脂粒子
(図4の符号)
31 金型ドラム
32 基層上に弾性層を積層したベルト
33 押し当て部材
34 球形樹脂粒子
35 粉体供給装置
(図5の符号)
P 転写紙
L レーザー光
70 除電ローラ
80 アースローラ
200 感光体ドラム
201 感光体クリーニング装置
202 除電ランプ
203 帯電チャージャ
204 電位センサー
205 画像濃度センサー
210 ベルト搬送装置
230 リボルバ現像ユニット
231Y Y現像機
231K Bk現像機
231C C現像機
231M M現像機
270 定着装置
271、272 定着ローラ
500 中間転写ユニット
501 中間転写ベルト
502 トナーシール部材
503 帯電チャージャ
504 ベルトクリーニングブレード
505 潤滑剤塗布ブラシ
506 潤滑剤
507 1次転写バイアスローラ
508 ベルト駆動ローラ
509 ベルトテンションローラ
510 2次転写対向ローラ
511 クリーニング対向ローラ
512 フィードバッグ電流検知ローラ
513 トナー画像
514 光学センサ
600 2次転写ユニット
601 転写紙ガイド板
605 2次転写バイアスローラ
606 転写紙除電チャージャ
608 クリーニングブレード
610 レジストローラ
801 1次転写電源
802 2次転写電源
(図6の符号)
P 転写紙
10 プリンタ本体
12 画像書込部
13 画像形成部
14 給紙部
15 定着装置
16 レジストローラ
20BK、20M、20Y、20C 現像装置
21BK、21M、21Y、21C 感光体
22 中間転写ベルト
23BK、23M、23Y、23C 1次転写バイアスローラ
25 ベルトクリーニング部材
26 駆動ローラ
27 潤滑剤塗布装置
50 転写搬送ベルト
60 2次転写バイアスローラ
70 バイアスローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特開平9−230717号公報
【特許文献2】特開2002−162767号公報
【特許文献3】特開2004−354716号公報
【特許文献4】特開2007−328165号公報
【特許文献5】特開2009−75154号公報
【特許文献6】特開2008−191225号公報
【特許文献7】特第3874360号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルトを介して被記録媒体上に転写する電子写真装置に用いられる該中間転写ベルトであって、
前記ベルト構成層として、
少なくとも無端ベルト状の難燃性材料からなる基層と、
前記基層上に積層された弾性体からなる弾性層と、
前記弾性層の表層中に球形樹脂粒子本体の一部が個々に埋設され、該弾性層の表面上に露出形成された突部が弾性層表面全域に分散配列されてなる球形樹脂粒子突出層と、
前記球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する前記弾性層表面の領域を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低く形成されてなるコーティング層と、
を備えたことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記球形樹脂粒子が、前記トナーに対して離型性を有する疎水性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記疎水性樹脂が、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記球形樹脂粒子の体積平均粒子径が、0.5μm〜6.0μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
前記コーティング層が、前記トナーに対して離型性を有する樹脂を含む水性溶液を用いて塗布形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の中間転ベルト。
【請求項6】
前記水性溶液が、前記トナーに対して離型性を有する水溶性樹脂または水分散性樹脂を含有していることを特徴とする請求項5に記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
前記水溶性樹脂または水分散性樹脂が、分子骨格中にシリコーン結合を含むシリコーン系樹脂または分子骨格中にフルオロカーボン結合を含むフッ素系樹脂から選択される樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の中間転写ベルト。
【請求項8】
前記基層が、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の中間転写ベルトを搭載したことを特徴とする電子写真装置。
【請求項10】
電子写真感光体上に形成されたトナー像を中間転写ベルトを介して被記録媒体上に転写する電子写真装置に用いられる該中間転写ベルトの製造方法であって、
少なくとも、無端ベルト状の難燃性材料からなる基層上にエラストマー材料またはゴム材料を積層して弾性体からなる弾性層を形成する工程と、
前記弾性層の表面上に、疎水性樹脂からなる球形樹脂粒子を乾式塗布後、押圧によりならして球形樹脂粒子本体の一部を個々に前記弾性層の表層中に埋設しつつ、該弾性層の表面上に露出形成された突部を弾性層表面全域に分散配列して球形樹脂粒子突出層を形成する工程と、
前記球形樹脂粒子突出層の突部間の間隙と、該間隙に露呈する前記弾性層表面を覆い、且つ球形樹脂粒子突出層の高さよりも低い領域にコーティング層を形成する工程と、
を有することを特徴とする中間転写ベルトの製造方法。
【請求項11】
前記コーティング層を形成する工程において、トナーに対して離型性を有する樹脂を含む水性溶液を用いてコーティング層を塗布形成することを特徴とする請求項10に記載の中間転写ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159737(P2012−159737A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19928(P2011−19928)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】