説明

中間転写ベルトの製造方法および中間転写ベルト

【課題】より低コストで製造可能なポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトの製造方法の提供。
【解決手段】ポリイミドフィルムからなる基材層を有する中間転写ベルトの製造方法において、該ポリイミドフィルム11を芯40に螺旋状に巻き付けて、基材層を形成する工程を含む。好ましくは、前記螺旋状に巻き付けたポリイミドフィルムの隣り合う側縁の突き合わせ幅21が1mm以下であり、ポリイミドフィルムの厚みが10〜50μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、およびこれらの複合装置に使用されるベルト、特に中間転写ベルトおよびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、より効率がよく、低コストで製造可能な中間転写ベルトの製造方法およびそのような方法で得られた中間転写ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式画像形成装置の中間転写体として、シームレスベルトが使用されている。シームレスベルトの製造方法としては、例えば、筒状金型の内面に樹脂溶液を展開し、回転成型および加熱成型を行い、前記金型を誘導加熱などにより、加温する方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来、シームレスベルトの材料としては、成形性が良いこと、軽量であること等の理由から、プラスチック材料が使用されている。なかでも、耐熱性、機械的強度、耐環境特性に優れるという点から、ポリイミド系樹脂を使用したポリイミド系シームレスベルトの検討がなされている。
【0004】
また、静電的な転写方式に用いられるベルト材料に要求される特性としては、表面抵抗率が10〜1013Ω/□程度の、いわゆる中抵抗を有することが挙げられる。一般には、こうした特性を確保するために、ポリイミド樹脂中にカーボンブラック等の導電性フィラーを含有させる技術が用いられている(例えば、特許文献2)。
【0005】
しかしながら、材料にポリイミド樹脂を用いてシームレスベルトを製造する場合、シームレスでの製造、厚みの制御、サイズごとの金型の必要性、生産タクトタイムが長い等の点から、単価が高くなる。近年、低コスト化という要望は高まっているが、難燃性や機械強度の観点から中間転写ベルトに使用可能な樹脂は限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−181731号公報
【特許文献2】特開平10−63115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より低コストで製造可能なポリイミドフィルムを用いた中間転写ベルトの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の中間転写ベルトの製造方法は、ポリイミドフィルムからなる基材層を有する中間転写ベルトの製造方法であって、該ポリイミドフィルムを芯に螺旋状に巻き付けて基材層を形成する工程を含む。
好ましい実施形態においては、上記螺旋状に巻き付けたポリイミドフィルムの隣り合う側縁の突き合わせ幅は1mm以下である。
好ましい実施形態においては、上記ポリイミドフィルムの厚みは10〜50μmである。
好ましい実施形態においては、上記ポリイミドフィルムは導電性材料を含み、該ポリイミドフィルムの体積抵抗率は1×10Ω・cm〜1×1013Ω・cmである。
好ましい実施形態においては、上記基材層を形成する工程を繰り返して基材層を2層以上の積層体とする工程を含む。
好ましい実施形態においては、上記2層以上のポリイミドフィルムからなる基材層が各ポリイミドフィルムを接着剤層を介して積層する工程を含む。該接着剤層はシリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、スチレン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、フェノール系接着剤およびエポキシ系接着剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
好ましい実施形態においては、上記接着剤層の厚みは10μm以下である。
好ましい実施形態においては、上記基材層の上に弾性層を形成する工程、および該弾性層の上に離型層を形成する工程をさらに含む。
好ましい実施形態においては、上記弾性層はクロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、液状ポリオレフィンおよびスチレン−イソプレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
好ましい実施形態においては、上記離型層はクロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ビニルエーテルおよび溶剤可溶型ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
本発明の別の局面によれば、中間転写ベルトが提供される。この中間転写ベルトは、上記の中間転写ベルトの製造方法により得られる。
好ましい実施形態においては、上記中間転写ベルトの表面抵抗率は1×1010Ω/□〜1×1012Ω/□である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、芯にポリイミドフィルムを螺旋状に巻き付けることにより、中間転写ベルトを製造することができる。そのため、芯のサイズを変更することにより、容易に様々なサイズの中間転写ベルトを製造することができる。さらに、芯にポリイミドフィルムを螺旋状に巻き付けた後、所望の長さに切断することで中間転写ベルトとすることができるため、製造工程を削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好ましい実施形態における中間転写ベルトの製造方法の一工程の概念を示す模式図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態における中間転写ベルトの製造方法の別の一工程の概念を示す模式図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態における中間転写ベルトの要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<A.中間転写ベルトの製造方法>
本発明の中間転写ベルトの製造方法は、芯にポリイミドフィルムを螺旋状に巻き付け基材層を形成する工程を含む。該基材層は、単一の層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。好ましくは、基材層は2層以上の積層体である。基材層を2層以上の積層体とすることにより、ポリイミドフィルムを螺旋状に巻き付けた際に生じる隣り合うポリイミドフィルムの隣接する側縁の隙間をその上部に積層するポリイミドフィルムにより覆うことができ、中間転写ベルトの画像形成性能を向上させることができる。
【0012】
<A−1.ポリイミドフィルムの形成>
上記ポリイミドフィルムは、ポリイミド系樹脂を含むフィルムであればよく、任意の適切なものを用いることができる。該ポリイミド系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用される。具体例としては、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物との共重合体が挙げられる。
【0013】
上記ポリイミドフィルムを形成する方法としては、任意の適切な方法を用いることができ、例えば、ポリイミドを含む溶液を塗布しフィルムを形成する方法や、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物を含有する溶液中で重合反応を進行させて得られたポリアミド酸溶液を塗布し、閉環イミド化反応を進行させることによりフィルムを形成する方法が挙げられる。上記ポリイミドフィルムとしては、市販のポリイミドフィルムを用いてもよい。好ましくは、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物を含有する溶液中で重合反応を進行させて得られたポリアミド酸溶液を塗布し、閉環イミド化反応を進行させるフィルムの形成方法が用いられる。当該方法によれば、例えば、以下に詳述する導電性材料を含有するポリイミドフィルムをも容易に形成することができる。上記好ましいフィルムの形成方法は、例えば、有機溶媒中にテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物を溶解させた後、重合反応を進行させることによりポリアミド酸溶液を調製する工程、該ポリアミド酸溶液を塗布し、閉環イミド化反応を進行させる工程を含む。
【0014】
上記テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0015】
上記ジアミン化合物の具体例としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0016】
上記有機溶媒としては、重合反応系に対して不活性である限り、任意の適切な有機溶媒が用いられ得る。有機溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。なかでも、極性のアミド系溶媒である、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらの極性のアミド系溶媒であれば、導電性材料の分散溶媒とポリアミド酸を生成する際の重合反応溶媒とを兼用することができる。また、低分子量のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドであれば、蒸発、置換または拡散によりポリアミド酸及びポリアミド酸成形品から容易に除去することができる。上記有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記有機溶媒には、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を単独でまたは2種以上を組み合わせて混合してもよい。
【0018】
上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物とを重合反応させる際、好ましくは、触媒を添加する。当該触媒は、任意の適切な触媒が採用され得る。当該触媒の具体例としては、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等が挙げられる。なかでも、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、ジエチルピリジンまたはβ−ピコリン等の含窒素複素環化合物が好ましい。
【0019】
上記触媒の使用量は、ポリアミド酸前駆体溶液のアミド酸1モル当量に対して、好ましくは0.04〜0.4モル当量、より好ましくは0.05〜0.4モル当量である。触媒の添加量が0.04モル当量未満では触媒の効果が十分ではないおそれがある。また、触媒の添加量が0.4モル当量より多くても触媒添加効果の向上が見られないおそれがある。
【0020】
上記重合反応時のモノマー濃度(有機溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン化合物の濃度)は、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。
【0021】
上記重合反応時の反応温度は、好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは5〜50℃である。また、反応時間は、好ましくは0.5〜10時間である。
【0022】
上記ポリイミドフィルムは、好ましくは導電性材料をさらに含有する。ポリイミドフィルムが導電性材料を含有することにより、ポリイミドフィルムの導電性を所望の値に調整することができる。ポリイミドフィルムが含有する導電性材料は、1種のみでもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0023】
導電性材料を含有するポリイミドフィルムの形成方法としては、任意の適切な方法が採用される。例えば、(1)有機溶媒中に導電性材料を分散させて、導電性材料分散液を調製し、(2)導電性材料分散液に上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体と上記ジアミン化合物を溶解させた後、重合反応を進行させることにより導電性材料分散ポリアミド酸溶液を調製し、(3)導電性材料分散ポリアミド酸溶液を塗布し、閉環イミド化反応を進行させることにより形成され得る。また、例えば、上記(1)および(2)の代わりに、導電性材料分散液とポリアミド酸溶液とをそれぞれ別に調製してから混合することにより、導電性材料分散ポリアミド酸溶液を得てもよい。
【0024】
上記導電性材料としては、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、カーボンブラック等の各種カーボン、アルミニウム、ニッケル、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機化合物、ポリアニリンやポリピロール等の導電性高分子を用いることができる。なかでも、低コストであり、取り扱いが容易であるという点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0025】
上記カーボンブラックは、所望の電気特性に応じて任意の適切なものが採用され得る。上記カーボンブラックの具体例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。中抵抗から高抵抗域(例えば、表面抵抗率10〜1014Ω/□、体積抵抗率10〜1014Ω・cm)において制電性が必要である場合は、特にチャンネルブラックやファーネスブラックが好適に用いられる。上記カーボンブラックは、用途に応じて、酸化処理、グラフト処理等の処理を施してもよい。酸化処理を施せば、酸化劣化を防止することができ、グラフト処理を施せば、溶媒への分散性を向上させることができる。
【0026】
上記カーボンブラックは、市販品を用いてもよい。市販品のチャンネルブラックの具体例としては、デグサ・ジャパン社製の商品名「Color Black FW200」、「Color Black FW2」、「Color Black FW2V」、「Color Black FW1」、「Color Black FW18」、「Special Black 6」、「Color Black S170」、「Color Black S160」、「Special Black 5」、「Special Black 4」、「Special Black 4A」、「Printex 150T」、「Printex U」、「Printex V」、「Printex 140U」、「Printex 140V」等が挙げられる。市販品のファーネスブラックの具体例としては、デグサ・ジャパン社製の商品名「Special Black 550」、「Special Black 350」、「Special Black 250」、「Special Black 100」、「Printex 35」、「Printex 25」、三菱化学社製の商品名「MA 7」、「MA 77」、「MA 8」、「MA 11」、「MA 100」、「MA 100R」、「MA 220」、「MA 230」、キャボット社製、「MONARCH 1300」、「MONARCH 1100」、「MONARCH 1000」、「MONARCH 900」、「MONARCH 880」、「MONARCH 800」、「MONARCH 700」、「MOGUL L」、「REGAL 400R」、「VULCAN XC−72R」等が挙げられる。
【0027】
ポリイミドフィルムに含まれる導電性材料の含有量は、所望の電気特性、機械的特性等に応じて適切に設定され得る。該含有量は、ポリイミドフィルムの形成に用いられる樹脂成分100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部である。導電性材料の含有量がこのような範囲内であれば、機械的特性に優れ、所望の電気特性を有する中間転写ベルトが得られ得る。
【0028】
導電性材料を含有するポリイミドフィルムの形成に用いられる有機溶媒としては、上記導電性材料を分散させ得、重合反応系に対して不活性である限り、任意の適切な有機溶媒が用いられ得る。具体的には、上記導電性材料を含有しないポリイミドフィルムの形成に用いられる有機溶媒が挙げられる。また、重合反応に用いられる触媒やその使用量、重合時のモノマー濃度、重合反応の反応温度および反応時間についても、上記の導電性材料を含有しないポリイミドフィルムの形成に用いられる範囲と同様である。
【0029】
上記導電性材料分散ポリアミド酸溶液には、さらに分散剤が添加されていてもよい。分散剤を含んでいれば、上記導電性材料と上記有機溶媒との親和性を高めることができる。
【0030】
上記分散剤は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な分散剤が採用され得る。上記分散剤の具体例としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等の高分子分散剤;界面活性剤;無機塩;等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記導電性材料の分散方法としては、任意の適切な分散方法を適用できる。当該分散方法として、例えば、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、超音波分散等の方法が挙げられる。分散状態を調べる方法としては、任意の適切な方法を適用できる。例えば、光学顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。
【0032】
上記ポリイミドフィルムの厚みは、好ましくは10μm〜50μmであり、より好ましくは15μm〜50μmである。該ポリイミドフィルムの幅は、ポリイミドフィルムを巻き付ける芯の外径や長さ、また目的とする中間転写ベルトのサイズに合わせて、適切な値に調整すればよい。ポリイミドフィルムの幅は、例えば、30mm〜100mmに設定され得る。
【0033】
上記導電性材料を含有するポリイミドフィルムの体積抵抗率(ρv)は、好ましくは1×10Ω・cm〜1×1013Ω・cmであり、より好ましくは1×10Ω・cm〜1×1012Ω・cmである。体積抵抗率が1×10Ω・cm未満の場合、印刷した際に中間転写ベルトの基材層を螺旋状に巻き付けた際の隙間に起因するスジが画像内に見えてしまうおそれがある。体積抵抗率が1×1013Ω・cmを超える場合、絶縁領域となってしまうため、印刷に適さないおそれがある
【0034】
<A−2.基材層の形成工程>
本発明の中間転写ベルトの製造方法について、図1および図2を参照して説明する。図1および図2は、それぞれ本発明の中間転写ベルトの製造方法の一製造工程の概念を示す模式図である。図1に示す工程においては、あらかじめスプール31に巻きとっておいたポリイミドフィルム11を芯40に螺旋状に巻き付ける。該巻き付け工程において、ポリイミドフィルム11の先端を両面接着テープ等を用いて芯40に貼り付け、次いで該ポリイミドフィルムを芯40に螺旋状に巻き付けることが好ましい。
【0035】
上記巻き付け工程において、芯40にあらかじめライナー(図示しない)を巻き付けておくことが好ましい。芯にあらかじめライナーを巻き付けておくことにより、成形後の中間転写ベルトを容易に芯から取り外すことができ、製造効率が向上する。ライナーを芯に巻き付ける方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。例えば、ライナーの先端を両面接着テープ等を用いて芯40に貼り付け、芯40に巻き付ける方法等が挙げられる。なお、ライナーは芯を覆うように巻き付けられていれば良く、螺旋状に巻き付けられていなくてもよい。ライナーを用いる場合も、上記と同様の方法で、ポリイミドフィルムの先端をライナーに貼り付け、螺旋状に巻き付けていけばよい。
【0036】
上記巻き付け工程において、上記螺旋状に巻き付けたポリイミドフィルムの隣り合う側縁同士が重ならないように巻き付けられていればよく、該側縁の突き合わせ幅が狭いほど好ましい。上記螺旋状に巻き付けたポリイミドフィルムの隣り合う側縁同士が重ならず、かつ、側縁同士が接するように巻き付けられていることが特に好ましい。上記突き合わせ幅21は、例えば、1mm以下となるように巻き付けることが好ましく、0.5mm以下となるように巻き付けられることがより好ましい。ポリイミドフィルムの突き合わせ幅を1mm以下とすることにより、得られた中間転写ベルトの画像形成性能が向上する。また、上記巻き付け工程において、巻き付けられたポリイミドフィルムが重なると、ポリイミドフィルムの厚み分の段差が生じるため、中間転写ベルトの表面の平滑性が得られないおそれや、抵抗ムラによる画像の乱れが生じるおそれがある。なお、本明細書において、突き合わせ幅は、図1に示すように、巻き付けられたポリイミドフィルムにおいて、隣り合うポリイミドフィルムの隣接する側縁間の距離をいう。
【0037】
ポリイミドフィルムを巻き付ける際の巻き角度(芯の軸方向に対する巻き付け方向の角度)は、特に制限はなく、例えば、37〜87度の範囲であればよい。
【0038】
基材層として、2層以上の積層体を用いる場合、上記工程により、芯に螺旋状に巻き付けられたポリイミドフィルムの表面に、さらにポリイミドフィルムを螺旋状に巻き付け、積層体からなる基材層を形成する工程をさらに含む。該積層体からなる基材層を形成する工程は、好ましくは新たに巻き付けるポリイミドフィルムと既に巻き付けられたポリイミドフィルムとの間に接着剤層を形成する工程を含む。該接着剤層は、芯に螺旋状に巻き付けられたポリイミドフィルムの外側(芯と接していない面)に形成されていても、新たに巻き付けるポリイミドフィルムの既に芯に巻きつけられたポリイミドフィルムと接する面に形成されていてもよく、両方に形成されていてもよい。上記の接着剤の塗布方法としては、任意の適切な方法を用いることができ、例えば、ロール法、噴霧法、浸漬法等が挙げられる。
【0039】
接着剤層を形成する接着剤としては、任意の適切な接着剤を用いることができる。具体的には、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、スチレン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、フェノール系接着剤、エポキシ系接着剤が挙げられる。また、接着剤の種類によっては、各基材層を形成するポリイミドフィルムを積層した後、さらに加熱工程を含んでいてもよい。
【0040】
上記接着剤層の厚みは、任意の適切な値にすることができ、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm〜5μmである。
【0041】
図2に示す例では、あらかじめスプール32に巻きとっておいたポリイミドフィルム12(以下、第2のポリイミドフィルムともいう)の芯に巻き付けられたポリイミドフィルム11(以下、第1のポリイミドフィルムともいう)と接する面に接着剤を塗布して接着剤層を形成し、第1のポリイミドフィルム11(図2では破線で表わす)の上に螺旋状に巻き付ける。接着剤層は、第1のポリイミドフィルムの外周面に接着剤を塗布し、形成されていてもよい。第2のポリイミドフィルムを巻き付ける際の突き合わせ幅も上記の第1のポリイミドフィルムと同じ範囲であればよい。なお、図示例では、スプール31,32を芯40に対して対向するように配置した製造工程を示したが、スプール31,32は芯40の片側に配置されていてもよい。また、スプール31にて、積層工程を繰り返し行い2層以上の積層体からなる基材層としてもよい。
【0042】
第2のポリイミドフィルムを巻き付ける工程において、第2のポリイミドフィルム12の側縁(図2の実線部)と第1のポリイミドフィルム11の側縁(図2の破線部)とが重ならないよう巻き付けることが好ましい。つまり、第1のポリイミドフィルムの隙間(突き合わせ幅)21の上に第2のポリイミドフィルム12が積層されていることが好ましい。それぞれのポリイミドフィルムを側縁が重ならないように螺旋状に巻き付け、積層することにより、下層となるポリイミドフィルムにできた隙間を上部に巻き付けるポリイミドフィルムで覆うことができ、この隙間に由来する画像形成時のスジの発生等の画像形成不良を防止することができる。なお、図2においては、2層の積層体について説明したが、積層体が3層以上からなる場合も、上記と同様の方法で、ポリイミドフィルムを巻き付け、積層体とすればよい。その際も、巻き付け時に最外層となっているポリイミドフィルムの隙間の上に、新たに巻き付けようとするポリイミドフィルムが積層されるよう、巻き付ければよい。
【0043】
上記2層以上の積層体からなる基材層を形成する場合、積層体を形成するポリイミドフィルムの幅は全て同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、同じ幅のポリイミドフィルムを用いて、2層以上の積層体からなる基材層は形成される。また、巻き付け時の巻き角度は、特に制限はなく、上記の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、積層体を形成するポリイミドフィルムが全て同じ巻き角度で、つまり、螺旋状に巻き付けられた各ポリイミドフィルムの側縁が互いに平行となるように巻き付けられていることが好ましい。
【0044】
<A−3.弾性層の形成工程>
本発明の中間転写ベルトの製造方法は、好ましくは、上記ポリイミドフィルムからなる基材層の上に弾性層を形成する工程をさらに含む。
【0045】
上記弾性層は、エラストマーを含む層である。上記弾性層の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、弾性層の形成材料を含む溶液(以下、「弾性層形成溶液」という)を上記ポリイミドフィルムの外周面に展開する方法が挙げられる。
【0046】
上記弾性層形成溶液は、溶液状態のエラストマーあっても良いし、任意の適切な有機溶媒に上記形成材料を溶解または分散したものでも良い。芯に螺旋状に巻き付けた基材層の外周面に弾性層形成溶液を展開することによって、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さないシームレスベルトの弾性層を得ることができる。その結果、耐久性および周長精度に優れるシームレスベルトを得ることができる。
【0047】
上記エラストマーとしては、任意の適切なエラストマーが採用され得る。エラストマーとは、一般に知られているように、弾性を示す高分子物質であり、外力により容易に変化するが、それを除くと直ちに原型にほぼ回復する力学的性質(ゴム弾性)を有する。
【0048】
上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴムや合成ゴムなどの加硫ゴム;熱可塑性エラストマー;スパンデックスやポリカーボネート弾性繊維などの弾性繊維;スポンジゴムやフォームラバーなどの弾性発泡体;などが挙げられる。
【0049】
上記合成ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO、GECO、GPCO)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM、FEPM、FFKM)、シリコーンゴム(MQ、PMQ)、多硫化ゴム(OT、EOT)、ホスファゼンゴム(FZ、PZ)などが挙げられる。
【0050】
上記熱可塑性エラストマーは、常温では加硫ゴムの性質を示し、高温では可塑化されて、プラスチック加工機で成形できる高分子材料であり、TPEと称される。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)等のポリスチレン系TPE、ポリオレフィン系TPE、ポリエステル系TPE、ポリウレタン系TPE、1,2−ポリブタジエン系TPE、ポリ塩化ビニル系TPE、ポリアミド系TPEなどが挙げられる。
【0051】
本発明においては、上記エラストマーが、硬化反応を必要とせずに得られるエラストマーであることが好ましく、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、液状ポリオレフィンおよびスチレン−イソプレン共重合体であることがより好ましく、取り扱い性と柔軟性に優れ、弾性層の電気特性の制御が容易になるという点から、SISであることがさらに好ましい。
【0052】
上記弾性層は、好ましくは半導電性を付与するために導電性材料をさらに含む。該弾性層に用いられる導電性材料としては、弾性層に所望の電気特性を付与し得るものであれば、任意の適切な材料が採用され得る。具体例としては、上記のポリイミドフィルムに用いられる導電性材料として例示された材料と同様の材料が挙げられる。なかでも、低コストを実現でき、取り扱いが容易であるという点から、カーボンブラックが好ましい。
【0053】
弾性層中における導電性材料の含有量は、所望の電気特性、機械的特性等に応じて適切に設定され得る。弾性層中の導電性材料の含有量は、エラストマー100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。導電性材料の含有量がこのような範囲内であれば、機械的特性に優れ、所望の電気特性を有する中間転写ベルトが得られ得る。
【0054】
上記弾性層が導電性材料を含有する場合、上記弾性層形成溶液は、溶液状態のエラストマーに導電性材料を分散したものであっても良いし、任意の適切な有機溶媒に上記形成材料を溶解または分散したものでも良い。
【0055】
上記弾性層形成溶液を基材層の外周面に展開する方法は、好ましくは、上記弾性層形成溶液を基材層の外周面に塗布する工程と、塗布後に乾燥および加熱する工程を含む。
【0056】
上記弾性層形成溶液を塗布する方法としては、任意の適切な方法を用いることができ、例えば、ディスペンサー塗布法、浸漬法、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、刷毛塗り、ダイ塗工法、ディッピング法等の方法が挙げられる。
【0057】
上記弾性層形成溶液は、乾燥後の厚みが所望の厚みとなるように塗布される。上記弾性層の厚みは、目的等に応じて適切に設定され得る。弾性層の厚みは、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは50〜400μmである。また、このような厚みであれば、強度や柔軟性等の機械的特性に優れた中間転写ベルトが得られる。
【0058】
上記弾性層形成溶液を塗布した後の加熱温度は、好ましくは20〜200℃であり、さらに好ましくは80〜150℃である。また、加熱時間は、好ましくは1分〜24時間である。
【0059】
上記弾性層を形成する際には、予めポリイミドフィルムの表面に表面処理を施して、ポリイミドフィルムと弾性層との密着性を向上してもよい。このような処理としては、例えば、アルカリ処理、プライマー処理、超音波処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線(UV)照射処理、電子線照射処理、レーザー処理が挙げられる。
【0060】
<A−4.離型層の形成工程>
本発明の中間転写ベルトの製造方法は、好ましくは上記弾性層の上に離型層を形成する工程をさらに含む。
【0061】
上記離型層の形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、離型層を形成する材料を含む溶液(以下、「離型層形成溶液」という)を上記弾性層の外周面に展開する方法が挙げられる。管状の弾性層の外周面に離型層形成溶液を展開することによって、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さないシームレスベルトの離型層を得ることができる。その結果、耐久性および周長精度に優れるシームレスベルトを得ることができる。
【0062】
離型層形成溶液は、溶液状態の離型層形成用樹脂に他の材料を溶解または分散したものであっても良いし、有機溶媒に上記形成材料を溶解または分散したものでも良い。有機溶媒としては、例えば、上記ポリイミドフィルムの形成方法に記載の有機溶媒が用いられ得る。
【0063】
上記離型層形成用樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ビニルエーテル、および、これらを含む共重合体(例えば、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(CTFE/VDF))等のフッ素系樹脂や溶剤可溶性ポリエステル樹脂が挙げられる。離型層形成用樹脂としては、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ビニルエーテル、溶剤可溶型ポリエステル樹脂が好ましく、離型性に優れることから、フッ素系樹脂がより好ましく用いられる。フッ素系樹脂としては、液状(ディスパージョンを含む)のフッ素系樹脂が好ましい。上記離型層形成用樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
上記離型層形成用樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは35℃以下である。離型層形成用樹脂のTgがこのような範囲内であれば、離型層表面の柔軟性が維持され得るので、ヒビ割れ、シワ等の発生が抑制されて、耐久性および転写性に優れた中間転写ベルトが得られ得る。
【0065】
上記離型層形成用樹脂は、離型層中において架橋していることが好ましい。離型層形成用樹脂が架橋構造を有することにより、離型層表面のベタつきが低減され、トナー離型性が向上し得る。
【0066】
上記離型層は、好ましくは架橋剤をさらに含む。架橋剤を含むことにより、離型層形成用樹脂の架橋を進行させ得、トナー離型性に優れた中間転写ベルトが得られ得るからである。架橋剤は、離型層形成用樹脂が有する官能基に応じて適切に選択され得る。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤が挙げられる。架橋剤の使用量は、架橋剤および/または離型層形成用樹脂が有する官能基の含有量等に応じて適切に設定され得る。架橋密度が高いと離型層の柔軟性が低下する場合があり、架橋密度が低いと十分なトナー離型性が得られない場合があるからである。代表的には、架橋剤の使用量は、離型層形成用樹脂100重量部に対し、1〜40重量部である。
【0067】
上記離型層は、導電性材料をさらに含んでいてもよい。導電性材料を含むことにより、離型層の電気特性を所望の範囲に容易に制御することができる。導電性材料としては、上記の基材層に用いられる導電性材料として例示された材料と同様の材料が挙げられる。なかでも、低コストを実現でき、取り扱いが容易である点から、カーボンブラックが好ましい。
【0068】
離型層が導電性材料を含有する形態である場合、上記離型層形成溶液は、溶液状態の離型層形成用樹脂に導電性材料等の他の材料を溶解または分散したものであっても良いし、有機溶媒に上記形成材料を溶解または分散したものでも良い。有機溶媒としては、例えば、上記ポリイミドフィルムの形成方法に記載の有機溶媒が用いられ得る。
【0069】
上記離型層形成溶液を塗布する方法としては、任意の適切な方法を用いることができ、例えば、上記の弾性層形成溶液の塗布方法と同様の方法が挙げられる。上記離型層形成溶液は、乾燥後の離型層の厚みが所望の厚みとなるように、塗布される。上記離型層の厚みは、目的等に応じて適切に設定され得る。画像形成装置への組み込み等を考慮すると、該厚みは、好ましくは0.5〜30μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。また、このような厚みであれば、離型性および機械的特性に優れた中間転写ベルトが得られ得る。
【0070】
上記のとおり、本発明の中間転写ベルトの製造方法では、接着剤の接着性を発揮させるための加熱工程や、弾性層を形成する工程における加熱工程において、基材層であるポリイミドフィルムも加熱されることになる。その結果、ポリイミドフィルムにある程度の収縮が発生することになる。そのため、ポリイミドフィルムの突き合わせ幅は巻き付け時よりもわずかに大きくなる場合がある。しかしながら、突き合わせ幅が上記の好ましい範囲内であれば、収縮後であっても、中間転写ベルトを用いた際の画質には何ら影響はない。
【0071】
<B.中間転写ベルトの構成>
図3は、本発明の好ましい実施形態の製造方法により得られる中間転写ベルトの要部概略断面図である。図示例の中間転写ベルト100は、弾性層50および離型層60を含むがこれらの層は上記の通り、含まれていなくてもよい。図示例の中間転写ベルト100は、ポリイミドフィルムからなる基材層10、弾性層50および離型層60がこの順に積層されている。図示例においては、基材層10は、第1のポリイミドフィルム11から形成される第1の基材層と第2のポリイミドフィルム12から形成される第2の基材層12からなる積層体である。図示しないが、第1のポリイミドフィルム11からなる基材層と第2のポリイミドフィルム12からなる基材層とは接着剤層を介して積層されている。
【0072】
本発明の製造方法により得られる中間転写ベルトの基材層10には、隙間が生じ得る(図示例の第1のポリイミドフィルム11から形成される第1の基材層における隙間21および第2のポリイミドフィルム12から形成される第2の基材層における隙間22)。図示例では、第2のポリイミドフィルム12が第1のポリイミドフィルム11の隙間(突き合わせ幅)21の上に積層しており、隙間21,22が互いに重ならないよう積層されている。第2のポリイミドフィルム12から形成される第2の基材層が隙間の上に積層されることにより、隙間21に由来する画像の形成性能をさらに向上させることができる。
【0073】
図示例では、第2のポリイミドフィルム12から形成される基材層に生じた隙間22は、その上部に形成された弾性層50により覆われ、隙間22に由来する画像の形成不良が抑制される。図示しないが、基材層10が単一の層である場合、基材層10に生じる隙間は、弾性層がさらに形成される形態においては、上部に形成される弾性層50により覆われるため、巻き付け時に生じる隙間に由来する画像の形成不良を抑制することができる。
【実施例】
【0074】
本発明について、以下の実施例および参考例を用いてさらに説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた分析方法は、以下の通りである。
(1)表面抵抗率(ρs)および体積抵抗率(ρv)の測定方法:
ハイレスタ−UP MCP−HT450(三菱化学アナリテック社製、プローブ:URS)を用いて、25℃、60%RHの条件下で、表面抵抗率(印加電圧500V、10秒後)および体積抵抗率(印加電圧100V、10秒後)を測定した。測定した表面抵抗率および体積抵抗率は、常用対数値として示した。ポリイミドフィルムおよび中間転写ベルト表面の4箇所を測定し、平均値を常用対数値にて示した。なお、上記の測定条件では、常用対数値で8以下の表面抵抗率および体積抵抗率は測定できないため、値が測定できなかったものについては、8以下と記載した。
中間転写ベルトの表面抵抗率が1×1010Ω/□〜1×1012Ω/□、体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×1012Ω・cmであれば、中間転写ベルトとして好適な抵抗域を有することを示す。
【0075】
(2)画出し評価
カラープリンター(リコー社製、製品名「MP C2500」)に実施例および参考例で製造した中間転写ベルトをセットし、普通紙に対して、グリーンでベタ印刷を行った。画像中につなぎ目のスジが見えなければ○、薄くスジが見えるものには△、スジがはっきり見えるものには×とした。
【0076】
[実施例]
(基材層の形成)
1800gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に乾燥したカーボンブラック(デグサジャパン製、商品名「Special Black 4」)200gを添加し、ボールミルにて12時間室温で撹拌し、固形分濃度15重量%のカーボンブラック分散液を得た。
【0077】
得られたカーボンブラック分散液1113.0gを5000mLの4つ口フラスコに移し、NMPを2901.8gとp−フェニレンジアミン(PDA)104.2gを4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)193.0gを仕込み、常温で撹拌しながら溶解した。次いで、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)567.3gを添加し、温度25℃で1時間反応させた後、75℃で20時間加熱することにより、B型粘度計による溶液粘度が160Pa・sのカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(固形分濃度20重量%)を得た。
【0078】
得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液をディスペンサーで塗布し、130℃の熱風を30分間あてた後、350℃まで4℃/分の昇温速度で昇温した。350℃で15分間保持した後、冷却し、ポリイミド樹脂製フィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの厚みは25μmであった。
【0079】
得られたポリイミドフィルムを幅100mmの短冊状にカットした。カットしたポリイミドフィルムの片側の面に、接着剤(セメダイン社製、商品名「スーパーXクリアタイプ」)を厚みが3μm程度となるように塗布した。接着剤を塗布した面が芯に接するようにし、隣り合うポリイミドフィルムの隣接する隙間が0.5mm以下となるようにポリイミドフィルムを巻き角度60度で螺旋状に巻き付けた。次いで、常温で30分間放置し、第1の基材層を形成した。
【0080】
次いで、同じ幅の短冊状のポリイミドフィルムの片側の面に上記と同様にして接着剤を塗布し、第1の基材層を形成するポリイミドフィルムの側縁と側縁が重ならないように(第1の基材層の隣り合うポリイミドフィルムの側縁の隙間の上に第2のポリイミドフィルムが積層されるように)、隣り合うポリイミドフィルムの隣接する隙間が0.5mm以下となるよう、巻き角度60度で螺旋状に巻き付けた。次いで、常温で30分間放置し、第2の基材層を形成した。
【0081】
(弾性層の形成)
SIS(日本ゼオン社製、商品名「クインタック」)100重量部に、カーボンブラックトルエン分散液(御国色素社製、商品名「#209」)20重量部を添加し、撹拌することにより、カーボンブラック分散液を得た。得られたカーボンブラック分散液を、上記の基材層の外周面に乾燥後の厚みが250μm〜350μmとなるように塗布し、120℃で15分間昇温・乾燥を行い、弾性層を形成した。
【0082】
(離型層の形成)
クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(セントラル硝子社製、商品名「セフラルソフト」)をメチルエチルケトン(MEK)とN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)の混合溶媒に溶解し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液を上記の弾性層の外周面にスプレー法で乾燥後の厚みが1〜5μmとなるように塗布し、120℃で10分間乾燥を行い、離型層を形成し、中間転写ベルトを得た。ポリイミドフィルムの巻き付け時の突き合わせ幅、用いたポリイミドフィルムの厚み、表面抵抗率、体積抵抗率、得られた中間転写ベルトの表面抵抗率、体積抵抗率および画出しの結果を表1に示す。
【0083】
[参考例1]
基材層の形成に用いるカーボンブラック分散液の量を1484.0g、NMPの量を2809.0gとした以外は、実施例と同様にして、中間転写ベルトを得た。製造に用いたポリイミドフィルムおよび得られた中間転写ベルトの評価結果を表1に示す。
【0084】
[参考例2]
基材層の形成に用いるカーボンブラック分散液の量を2875.3g、NMPの量を1219.0gとした以外は、実施例と同様にして、中間転写ベルトを得た。製造に用いたポリイミドフィルムおよび得られた中間転写ベルトの評価結果を表1に示す。
【0085】
[参考例3]
基材層の形成工程において、螺旋状に巻き付けたポリイミドフィルムの隣り合うポリイミドフィルムの隣接する側縁の隙間が2mmとなるようにした以外は、実施例と同様にして、中間転写ベルトを得た。製造に用いたポリイミドフィルムおよび得られた中間転写ベルトの評価結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示す通り、本発明の製造方法は従来の製造方法よりも容易な方法であるが、得られた中間転写ベルトは、画像に基材層のポリイミドフィルムの隙間に由来するスジが形成されず、優れた画像形成性能を有していた。用いたポリイミドフィルムの体積抵抗率が1×10Ω・cm未満である参考例1および2では、中間転写ベルト自体の体積抵抗率も低くなり、画像形成時に薄くスジが確認された。また、突き合わせ幅が2mmであった参考例3では、形成された画像にスジがはっきりと見え、画像形成性能が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の中間転写ベルトは、複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置における、中間転写用ベルトに好適である。
【符号の説明】
【0089】
10 基材層
11 第1のポリイミドフィルム
12 第2のポリイミドフィルム
21,22 隙間(突き合わせ幅)
31,32 スプール
40 芯
50 弾性層
60 離型層
100 中間転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムからなる基材層を有する中間転写ベルトの製造方法であって、
該ポリイミドフィルムを芯に螺旋状に巻き付けて基材層を形成する工程を含む、中間転写ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記螺旋状に巻き付けたポリイミドフィルムの隣り合う側縁の突き合わせ幅が1mm以下である、請求項1に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムの厚みが10〜50μmである、請求項1または2に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムが導電性材料を含み、
該ポリイミドフィルムの体積抵抗率が1×10Ω・cm〜1×1013Ω・cmである、請求項1から3のいずれかに記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記基材層を形成する工程を繰り返して基材層を2層以上の積層体とする工程を含む、請求項1から4のいずれかに記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記2層以上の基材層を接着剤層を介して積層する工程を含み、
該接着剤層がシリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、スチレン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、フェノール系接着剤、および、エポキシ系接着剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項5に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記接着剤層の厚みが10μm以下である、請求項6に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項8】
前記基材層の上に弾性層を形成する工程、および
該弾性層の上に離型層を形成する工程をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項9】
前記弾性層がクロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、液状ポリオレフィンおよびスチレン−イソプレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項10】
前記離型層がクロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ビニルエーテルおよび溶剤可溶型ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項8または9に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の中間転写ベルトの製造方法により得られる、中間転写ベルト。
【請求項12】
表面抵抗率が1×1010Ω/□〜1×1012Ω/□である、請求項11に記載の中間転写ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−189614(P2011−189614A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57382(P2010−57382)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】