説明

串焼き装置

【課題】やけどするおそれがなく、生産効率が向上した、手作業による炭火焼きとほぼ同程度とすることができる串焼き装置の提供。
【解決手段】串挿着、串加熱、複数の串反転の各ステーション、及び串排出ステーションを備えた串焼き装置であって、扁平状串基端部の挿入用の扁平孔15を有する大径筒状体11と、扁平孔と連通する中心孔21を有する小径筒状体20と、外ガイドレール上を転動する転動ガイド部材22と内側ガイドレール間を摺動する摺動ガイド部材23と、串反転用ラックと協働して串ホルダを反転させるピニオンギヤ24と、串排出用ガイド板と協働して串を脱落させる、串排出用ロッド25とを有する串ホルダ10が複数保持された水平面を回転する搬送チェーン1と搬送の周回経路に沿ったガイドレールと串加熱手段と周回経路に複数配置された串反転用ラックと串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省力化した焼き鳥等の串焼き装置や、該串焼き装置における串ホルダ等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、串焼き装置としては、中心孔及び串棒挿入用の支持孔を有する筒状体と、支持孔内の串棒をバネ弾性力により前記支持孔に押圧する押圧体及び前記支持孔内部にその先端が位置決めされた状態にて前記中心孔内に挿入され、その後端を押すことにより、前記先端が串棒挿入口方向へ移動する串棒押し出し用ロッドとを有し、串棒が回転しながら移動する串物の焙焼装置(例えば、特許文献1参照)や、フレームに回動自在に取付けられ、一端に串端を挿入される挿入孔が穿設され、挿入孔に挿入される串を固定するピンを有する複数の串取付け部を備え、串取付け部がフレームに取付けられ動力部により所定量回転される串焼自動反転装置(例えば、特許文献2参照)や、串を着脱自在に保持する串ホルダと、串ホルダの回転軸が水平に保たれた水平姿勢と回転軸の串保持側端部が上方に持ち上げられた起立姿勢との間で上下に回動するように串ホルダを支持する支持手段と、串焼き材料を下方から加熱する加熱源とを具備した自動串焼き機(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0003】
また、串取付筒体の基部外周を保持する、複数の、略U字状でその開放端に締付具Tにより締付ける締付体を無限軌道体に設け、無限軌道体に直交交叉して連動するように、回転方向転換手段を設けて、該回転方向転換手段に連動して回転する短無限軌道体に支持片を取付て串取外し機構を構成する自動串焼き装置(例えば、特許文献4参照)や、焼串を水平回転させるための基端握り部付き焼串保持棒に取付けボスを介し同軸的に装着された係脱用スプロケットホイールと、上記の係脱用スプロケットホイールおよび取付けボスの側面形状に整合する係脱用スプロケットホイール位置決め落とし穴を上面に列設されて水平に装着された案内板とが設けられた自動回転式串焼き調理機(例えば、特許文献5参照)や、串ホルダが搬送チェーンと共に周回移動されているときに、第1特定位置で丸串又は鉄砲串を供給されて把持し、以後この把持状態を継続し、第2特定位置で解放し落下させる構成となされている串刺し食品焼成装置(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−56847号公報
【特許文献2】特開平8−187184号公報
【特許文献3】特開平10−14778号公報
【特許文献4】特開2003−93240号公報
【特許文献5】特開2004−248930号公報
【特許文献6】特開2007−7372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焼き鳥を人手により炭火で焼成した後に冷凍焼き鳥食品として大量に製造する場合、焼成途中で串を複数回、例えば表裏3回ずつ炙るには5回裏返す必要があり、炭火の熱で手が熱せられて長時間の作業ができない上に手を火傷するおそれもあった。特に夏場は暑さで大変過酷な作業環境となり、火傷防止と暑さの緩和のため、炭火こんろの手前には水槽を設け、常に手を水で濡らしながらの作業が強いられていた。また、1人の作業員が分担しうる串数も限定され、大勢の作業員が従事する場合には個人差により均一に焼き上げることが困難であるという問題があった。本発明の課題は、食品具材に鉄砲串等の板状基端部を有する串棒を挿通した焼き鳥等の串物を焼成する場合、手をやけどするおそれがなく、省力化が図れ、かつ生産効率が向上した、焼き上げの程度を同一作業者の手作業による炭火焼きとほぼ同程度とすることができる串焼き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、手作業による炭火焼きにこだわった串焼き装置をゴールとし、そのための基本コンセプトについて鋭意検討した。まず、1)手作業が余儀なくされる串挿着時に手を炭火熱に曝されないようにするためには串挿着ステーションと串加熱ステーションを異なるエリアとする必要があり、このためには串の移動手段、特に加熱源が炭火であることを想定すると水平周回移動手段とすること;2)作業効率を高めるために、串ホルダへの串の挿入・保持が簡便にできるためには串棒の基端部を板状とし、串ホルダの串挿入孔を扁平孔として板状基端部を挟持する構成とし、また、焼成後の串を串ホルダから簡便に脱落させるための串排出手段とすること;3)手作業による炭火焼きでは串を裏返して両面を焼成するため、串加熱ステーションにおいて串反転手段を配置する必要があること;を基本コンセプトとすることを決定し、かかる基本コンセプトを試行錯誤しながら具体化することにより本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、(1)水平面を周回する搬送コンベア、及び、串の搬送経路に沿って設けられた、串挿着ステーション、串排出ステーション、串挿着ステーションから串排出ステーションの間に設けられた串加熱ステーション、及び串加熱ステーションの途中に設けられた串反転ステーションを備えた串焼き装置における串ホルダであって、扁平状串基端部の挿入用の扁平孔を有する大径筒状体と;前記扁平孔と連通する中心孔を有し、前記大径筒状体と連結する小径筒状体と;前記搬送コンベアの周回経路に近接して配置された串反転用ラックと協働して、前記大径筒状体と小径筒状体との連結体である串ホルダを反転させる、前記大径筒状体と反対側の小径筒状体に挿嵌固設された串反転用ピニオンギヤと;串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板と協働して串を串ホルダから脱落させる、前記中心孔に挿通され、その一端が扁平孔の一端部から他端部へ少なくとも進退する串排出用ロッドと;を備えた串ホルダ、に関する。
【0008】
また本発明は、(2)さらに、水平面を周回するガイド部材が設けられ、該ガイド部材が、小径筒状体の大径筒状体側に挿設され、小径筒状体を軸支して、かつ外側ガイドレール上を転動する転動ガイド部材と;前記小径筒状体の前記転動ガイド部材の反対側に挿嵌固設され、内側ガイドレール間を摺動する平行する2つの摺動面を有する摺動ガイド部材と;からなることを特徴とする前記(1)記載の串ホルダや、(3)大径筒状体が大径筒状凹面体と大径筒状凸面体とからなり、扁平孔が大径筒状凹面体の凹面部と大径筒状凸面体の凸面部とから形成され、前記大径筒状凹面体と大径筒状凸面体とが前記扁平孔を互いに狭くする方向に付勢されていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の串ホルダや、(4)扁平孔の挿入口が、奥に行くにしたがって小さくなる漏斗状の口部として形成されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の串ホルダに関する。
【0009】
さらに本発明は、(5)串の搬送経路に沿って設けられた、串挿着ステーション、串排出ステーション、串挿着ステーションから串排出ステーションの間に設けられた串加熱ステーション、及び串加熱ステーションの途中に設けられた串反転ステーションを備え、扁平状基端部を有する串の串焼き装置であって、前記(1)〜(4)のいずれか記載の串ホルダが複数保持された水平面を回転する搬送コンベアと;串挿着ステーションから串排出ステーションの間の串搬送経路の前記搬送コンベアの外側下部に設けられた串加熱手段と;搬送コンベアの周回経路に近接して配置された複数の串反転用ラックと;串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板と;を備えた串焼き装置や、(6)さらに、搬送コンベアの周回経路に沿ってガイドレールが配設され、該ガイドレールが、外側ガイドレール、及び対向して平行に周設された上下一対のガイドレールからなる内側ガイドレールと;からなることを特徴とする前記(5)記載の串焼き装置や、(7)串加熱手段が炭火加熱であることを特徴とする前記(5)又は(6)記載の串焼き装置や、(8)前記(5)〜(7)のいずれか記載の串焼き装置の串挿着ステーションにおいて、串ホルダに串を挿着することを特徴とする冷凍焼き串の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の串ホルダや串焼き装置を用いると、手作り炭火焼きの風味を有する焼き鳥等の串焼きを省力化を図りながら大量に連続生産することができる。また、手をやけどするおそれがなく、長時間連続焼成が可能となり生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の串焼き装置の串搬送部全体を示す平面図である。
【図2】串を挿通した後の本発明の串ホルダの平面図である。
【図3】串を挿通する前の本発明の串ホルダの側面図である。
【図4】本発明の串ホルダの串ホルダの分解斜視図である。
【図5】本発明の串ホルダの走行状態を示す平面図である。
【図6】本発明の串ホルダの走行状態を示す側面図である。
【図7】本発明の串ホルダの反転状況を示す側面図である。
【図8】本発明の串ホルダの反転状況を示す他の側面図である。
【図9】本発明の串ホルダの反転状況を示す作動説明図である。
【図10】他の態様の串を挿通した後の本発明の串ホルダの平面図である。
【図11】他の態様の串を挿通する前の本発明の串ホルダの側面図である。
【図12】他の態様の本発明の串ホルダの走行状態を示す平面図である
【図13】他の態様の本発明の串ホルダの走行状態を示す側面図である。
【図14】他の態様の本発明の串ホルダの反転状況を示す側面図である。
【図15】他の態様の本発明の串ホルダの反転状況を示す他の側面図である。
【図16】扁平状基端部を有する各種串棒を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の串焼き装置は、焼き鳥、団子、田楽等の基端部が扁平状である串の搬送経路に沿って設けられた、串挿着ステーション、串排出ステーション、串挿着ステーションから串排出ステーションの間に設けられている串加熱ステーション、及び串加熱ステーションの途中に設けられた複数の串反転ステーションを備えている。本発明において串とは、主として串棒に鶏肉等の具材が挿通されている物をいい、上記串棒の形状としてはその基端部が扁平状であれば特に制限されず、鉄砲串、平串、田楽串の他、手で持つ部分が平べったい丸串や角串等を挙げることができ(図16参照)、串棒の基端部が板状の場合、その断面寸法としては略2〜5mm×5〜12mm、好ましくは3〜4mm×8〜10mmを例示することができる。また、串棒の材質としては竹や金属を例示することができる。
【0013】
また本発明の串焼き装置は、串を略水平に支持する串ホルダが複数保持された、水平面を周回する搬送コンベアと;串挿着ステーションから串排出ステーションの間の串搬送経路の前記搬送コンベアの外側下部に設けられた炭火や電熱等の串加熱手段と;搬送コンベアの周回経路に近接して配置された複数の串反転用ラックと;串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板と;を備え、好ましくは、前記搬送コンベアの周回経路に沿って配設されたガイドレールを備えている。また、正味焼き時間3〜6分の焼き鳥の場合、搬送速度1000〜2000mm/分で連続的に周回する搬送コンベアを備えた本発明の串焼き装置の生産数量は1時間当たり1500〜3200本となる。
【0014】
上記搬送コンベアとしては、駆動スプロケットと従動スプロケットとの間に掛け回されている、無端状の搬送チェーンや搬送ベルト等を挙げることができ、特にアタッチメント付き搬送チェーンを好適に例示できる。アタッチメントには、串ホルダと協働して、串ホルダを回転自在ではあるが、搬送方向及び搬送方向と直行する方向に位置規制しうる構造を有する串ホルダの保持部材を固着することが好ましい。かかる保持部材として、例えば、アタッチメント付き搬送チェーンに、アタッチメントを介して、下端に半円柱状又は断面逆U字状の切欠きを有する矩形ブロック形状の保持ブロックを取り付けることができ、この保持ブロックで串ホルダを回転自在に保持することができる。保持ブロックはチェーンの2つの駒に1個の割合で固着することが好ましい。かかる保持ブロックにより、串反転ステーションで反転させながら、串ホルダを搬送可能に保持することができる。搬送される串ホルダのピッチは保持ブロックのピッチと同ピッチとなるが、チェーンの駒ピッチの2倍(38.1mmの範囲)の間隔とすることが好ましい。
【0015】
本発明の串ホルダは、扁平状串基端部の挿入用の扁平孔を有する大径筒状体と;かかる扁平孔と連通する中心孔を有し、前記大径筒状体と連結されている小径筒状体と;前記搬送コンベアの周回経路に近接して配置された串反転用ラックと協働して、前記大径筒状体と小径筒状体との連結体である串ホルダを反転させる、前記大径筒状体と反対側の小径筒状体に挿嵌固設された串反転用ピニオンギヤと;串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板と協働して串を串ホルダから脱落させる、前記中心孔に挿通され、その一端が扁平孔の一端部(例えば奥部)から他端部(例えば挿入口部)へ少なくとも進退する串排出用ロッドと;を備えている。したがって、串排出用ロッドは、扁平孔の一端部(奥部)に隣接する中心孔側まで退出するものであってもよく、また他端部(挿入口部)を少し越えて進出するものであってもよい。その他、大径筒状体と小径筒状体との間に中径筒状体を形成することもできる。
【0016】
上記大径筒状体としては、串を安定的に把持又は支持しうるものであれば特に制限されないが、成型が容易なように2つのパーツから構成することが好ましい。2つのパーツから構成する場合、スプリングや環状バネリング等で前記扁平孔を互いに狭くする方向に付勢することが好ましい。例えば、大径筒状凹面体と大径筒状凸面体とからなり、扁平孔が大径筒状凹面体の凹面部と大径筒状凸面体の凸面部とから形成され、前記大径筒状凹面体と大径筒状凸面体とが前記扁平孔を互いに狭くする方向にスプリングネジや環状バネリング等で付勢されている構成とすることが好ましい。また、扁平孔の挿入口部を、奥に行くにしたがって小さくなる漏斗(ラッパ)状の口部として形成し、そのテーパー面が串の挿入ガイドとなる構成とすることが、串挿入の作業性向上の点で好ましい。そしてまた、大径筒状体の材質としては、炭火等の加熱源に直接曝されるので耐熱性プラスチックが好ましい。
【0017】
上記小径筒状体としては、大径筒状体と連結されており、大径筒状体における扁平孔と連通し、その一端が扁平孔の端部から端部へ少なくとも進退する串排出用ロッドが挿通される中心孔を有するものであれば特に制限されず、かかる小径筒状体は炭火等の加熱源に直接曝されることがないので、加工がしやすい金属パイプで通常作られる。大径筒状体の外径が3〜4cmである場合、小径筒状体の外径を8〜15mmとすることが好ましい。
【0018】
本発明の串焼き装置は串反転手段を備えている。かかる串反転手段としては、串加熱ステーションの搬送コンベアの周回経路に近接して搬送コンベアの進行方向と平行に複数、好ましくは3〜7、より好ましくは5カ所配置された串反転用ラックと、該串反転用ラックと協働して、大径筒状体と小径筒状体との連結体である串ホルダを反転させる、大径筒状体と反対側の小径筒状体に挿嵌固設された串反転用ピニオンギヤとから構成されている。串が挿着されている串ホルダが水平面を摺動移動することにより串反転ステーションに搬送されてくると、串反転用ピニオンギヤとラックの歯がかみ合い、串反転用ピニオンギヤが漸次反転し、串反転用ピニオンギヤが固定されている串ホルダが反転するようになっている。例えば、5カ所に串反転用ラックを等間隔など適宜間隔で配置した(5カ所串反転ステーション)場合、串は5回反転し、表裏3回ずつ炭火焼成することができる。串反転用ピニオンギヤの歯数は12〜20個程度の偶数が好ましく、例えば歯数が16個の場合、ラックの歯数は6個となる。串ホルダが摺動ガイド部材を有するとき、摺動ガイド部材に対応するガイドレールは、串ホルダの反転を妨げないように串反転ステーションでは摺動ガイドしないように構成されている。また、串反転用ピニオンギヤは前記摺動ガイド部材と一体に成型してもよい。
【0019】
本発明の串焼き装置は串ホルダに挿着されている串を自動的に脱落させる串排出手段を備えている。かかる串排出手段としては、串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板と、該串排出用ガイド板と協働して挿着串を串ホルダから脱落させる、前記中心孔に挿通され、その一端が扁平孔の端部から端部へ少なくとも進退する串排出用ロッドとから構成されている。上記串排出用ガイド板としては、搬送方向に向かって搬送方向の後方より前方が搬送コンベアやガイドレールに近づくように配置され、串排出用ロッドの一端が当接するガイド板を例示することができる。上記串排出用ロッドとしては、中央部分が幅広部として形成された板状のロッドや中央部分が拡径部として形成された柱状のロッドを例示することができ、幅広部や拡径部の両端が前記小径筒状体の中心孔に形成された縮径部のストッパ作用により長手方向に位置規制され、ロッドの一端が扁平孔の端部(奥部)から端部(挿入口部)へ進退するように構成されているものが好ましい。串挿着ステーションにおいて、扁平状串基端部が串ホルダの扁平孔に挿入されたときロッドの一端は扁平孔の端部(奥部)まで退出し、他端は中心孔の外側に退出するが前記ストッパ作用により退出しすぎることはない。そして、串ホルダが串排出ステーションに搬送されると、ロッドの前記他端が上記串排出用ガイド板に当接しながら漸進することによりロッドは漸次進出しロッドの前記一端が扁平孔の端部(挿入口部)まで進出(串は退出)するが前記ストッパ作用により進出しすぎることはない。その結果、串が串ホルダから自動的に脱落する。なお、バネ等によりロッドを退出方向に付勢しておくこともできる。
【0020】
本発明の串ホルダにはガイド部材を設けることが好ましい。かかるガイド部材としては、ガイドレールと協働して串ホルダを安定的かつスムーズに搬送しうるものが好ましく、ガイドレールは1本でもよいが2本の方が好ましい。串の搬送を安定的に行うために、反転ステーションを除き、ガイドレールを平行に対向して周設された上下一対のガイドレールとした場合、ガイド部材をかかる上下一対のガイドレール間を摺動する平行する2つの摺動面を有する摺動ガイド部材とすることが好ましい。また串の搬送をスムーズに行うために、ガイド部材を、小径筒状体の大径筒状体側に挿設され、小径筒状体を軸支して、かつガイドレール上を転動する転動ガイド部材とすることもできる。ガイドレールが2本の場合、その内の1本を2つの摺動面を有する摺動ガイド部材用とし、他の1本を転動ガイド部材とすることが好ましい。例えば、外側ガイドレールと、対向して平行に周設された上下一対の内側ガイドレールとを2本のガイドレールとして配設した場合、ガイド部材として上記転動ガイド部材と上記摺動ガイド部材とを用いることが好ましい。この場合、転動ガイド部材と摺動ガイド部材が嵌挿固定されていない小径筒状体部分を、前記保持ブロックの受け部とすることができる。
【0021】
本発明の冷凍焼き串の製造方法には本発明の串焼き装置が用いられる。搬送チェーンの周回により、搬送コンベアに保持された空(串未挿着)の串ホルダが連続的に串挿着ステーションに搬送されてきたとき、人手により串を挿着する。串挿着ステーションには炭火等の加熱源はないことから作業者の手は加熱源から遮断されている。串を略水平に挿着した串ホルダは次いで炭火等の加熱源を備えた串加熱ステーションに搬送され、串の片面が焼成されながら搬送され、串加熱ステーションに設けられた最初の串反転ステーションまで搬送されると串は反転され、串の他方の面が焼成されながら搬送されることになる。次の串反転ステーションまで搬送されると串は反転され、串の片面が焼成(2回目)されることになる。このように串の表裏両面が複数回、好ましくは2〜5回繰り返し焼成されると、串排出ステーションにおいて串を脱落させ、回収・冷却後に冷凍される。
【0022】
以下、本発明の実施の一形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の串焼き装置の串搬送部全体を示す平面図である。串反転ステーションCが5カ所に設けられたこの串焼き装置は、焼き鳥等の基端部が扁平状である串(なお、具材が挿通された串に代えて串棒で図示している。以下同じ。)が挿通された174個の串ホルダ10が搬送チェーン1により保持・搬送され、その搬送経路に沿って設けられた、串挿着ステーションA、炭火を加熱源とする2カ所の串加熱ステーションB、5カ所の串反転ステーションC及び串排出ステーションDを備えている。搬送チェーン1(No.60)にはアタッチメント2を介して174個の保持ブロック8が取り付けられている。この保持ブロック8にチェーンの駒ピッチの2倍の間隔(串ホルダピッチ38.1mm)で串ホルダ10が保持されている。搬送チェーン1の往復の直進部のうち、片側3mと反対側2mが串加熱ステーションBに、1mが串挿着ステーションAと串排出ステーションDになっている。
【0023】
本発明の串ホルダを図2〜図4により説明する。図2及び図3は、それぞれ串を挿通した後の串ホルダ10の平面図、串を挿通する前の串ホルダ10の側面図であり、図4は串ホルダ10の分解斜視図である。本発明の串ホルダ10は、扁平状串基端部Pの挿入用の扁平孔15を有する耐熱プラスチック製大径筒状体11と;かかる扁平孔15と連通する中心孔21を有し、前記大径筒状体11と一体に成型された中径筒状体19を介して連結されている金属パイプ製小径筒状体20と;中径筒状体19に近接して小径筒状体20に挿設され、小径筒状体20を軸支して、かつ外側ガイドレール3の上を転動する転動ガイド部材22と;小径筒状体20の転動ガイド部材22の反対側に挿嵌固設され、上下2本の内側ガイドレール4,5の間を摺動する平行する2つの摺動面を有する摺動ガイド部材23と;前記搬送チェーン1の周回経路に近接して配置された串反転用ラック6と協働して、大径筒状体11と小径筒状体20との連結体である串ホルダ10を反転させる、前記大径筒状体11と反対側の小径筒状体20に挿嵌固設された串反転用ピニオンギヤ24と;串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板7と協働して串の扁平状串基端部Pを串ホルダ10から脱落させる、前記中心孔21に挿通され、その一端が扁平孔の端部(奥部)16から端部(挿入口部)17へ進退する串排出用ロッド25と;を備えている。
【0024】
上記串ホルダ10の大径筒状体11は、図4に示されているように、扁平孔15を形成する大径筒状凹面体12と大径筒状凸面体13とから構成され、これらは2本のスプリングネジ14により、扁平孔15を互いに狭くする方向に付勢された状態で連結されている。また、扁平孔15は、その挿入口部17が奥に行くにしたがって小さくなる漏斗(ラッパ)状の口部18として形成され、その45°のテーパー面が扁平状串基端部Pの挿入ガイドとなっている。なお、図4では、串排出用ロッド25が扁平孔の端部(挿入口部)17に位置している。
【0025】
図5及び図6は、それぞれ串ホルダ10の走行状態を示す平面図と側面図である。串の搬送を安定的に行うために、反転ステーションCを除き、ガイドレールを平行に対向して周設された上下一対の上ガイドレール4と下ガイドレール5の間を、平行する2つの摺動面を有する摺動ガイド部材23が摺動移動し、また串の搬送をスムーズに行うために、外側ガイドレール3の上を転動ガイド部材22が転動することにより串ホルダ10が摺動走行し、串を搬送することができる。また、図5及び図6に示されるように、転動ガイド部材22と摺動ガイド部材23との間の小径筒状体の部分が保持ブロック8の受け部(下側の切込みの係合部)となっている。
【0026】
図7及び図8は、それぞれ串ホルダ10の串反転手段を示す、搬送方向と直行する方向から見た側面図と搬送方向から見た側面図である。また、図9は串ホルダ10の反転状況を示す作動説明図である。本発明の串焼き装置における串反転手段は、串加熱ステーションBの搬送チェーン1の周回経路に近接して搬送チェーン1の進行方向と平行に5カ所配置された串反転用ラック6と、該串反転用ラック6と協働して、大径筒状体11と小径筒状体20との連結体である串ホルダ10を反転させる、小径筒状体20に挿嵌固設された串反転用ピニオンギヤ24とから構成されている。串が挿着されている串ホルダ10が摺動移動することにより串反転ステーションCに搬送されてくると、図9に示されているように、歯数16個の串反転用ピニオンギヤ24と歯数6個のラック6の歯が漸次かみ合い、串反転用ピニオンギヤ24が180°回転し、串反転用ピニオンギヤ24に固定されている串ホルダ10が反転するようになっている。5カ所に串反転用ラック6が配置されているので、串は5回反転し、表裏3回ずつ炭火焼成されることになる。また、串反転用ピニオンギヤ24と一体成型されている摺動ガイド部材23も反転するので、摺動ガイド部材23に対応する内側ガイドレール4,5は、摺動ガイド部材23の反転を妨げないように串反転ステーションCではその間隔が広げられている。
【0027】
本発明の串焼き装置は串ホルダ10に挿着されている串を自動的に脱落させる串排出手段を備えている。かかる串排出手段としては、串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板7(図1)と、該串排出用ガイド板7と協働して挿着串を串ホルダ10から脱落させる、中心孔21に挿通され、その一端が扁平孔15の一端部(奥部)16から他端部(挿入口部)17へ進退する串排出用ロッド25(図2,3)とから構成されている。上記串排出用ガイド板7は、搬送方向に向かって搬送方向の後方より前方が搬送チェーン1や内側ガイドレール4,5に近づくように配置されている。串ホルダ10が串排出ステーションDに搬送されてくると、このガイド板7に串排出用ロッド25の一端がロッド退出位置でまず当接する。上記串排出用ロッド25は、中央部分が幅広部として形成された板状のロッドとして形成されており、幅広部の両端が前記小径筒状体20の中心孔21に形成された縮径部のストッパ作用により長手方向に位置規制され、ロッド25の一端が扁平孔15の端部(奥部)16から端部(挿入口部)17へ進退するように構成されている。串挿着ステーションAにおいて、扁平状串基端部Pが串ホルダ10の扁平孔15に挿入されたときロッドの一端は扁平孔の端部(奥部)16まで退出し、他端は中心孔21の外側に退出するが前記ストッパ作用により退出しすぎることはない。そして、串ホルダが串排出ステーションDに搬送されると、ロッド25の前記他端が上記串排出用ガイド板7に当接しながら漸進することによりロッド25は漸次進出しロッド25の前記一端が扁平孔15の端部(挿入口部)17まで進出(串は退出)するが前記ストッパ作用により進出しすぎることはない。その結果、焼成済みの串が串ホルダ10から自動的に脱落する。
【0028】
次に、ガイド部材が設けられていない他の態様の本発明の串ホルダや、かかる串ホルダとガイドレールが配設されていない串焼き装置について図10〜図15により説明する。なお、上記図2、図3及び図5〜図8と共通している説明や図面の符号は省略した。図10及び図11は、転動ガイド部材に代えてスペーサーカラー26が装着されている、それぞれ串を挿通した後の串ホルダの平面図、串を挿通する前の串ホルダの側面図である。図12及び図13は、転動ガイド部材に代えてスペーサーカラー26が装着されている、それぞれ串ホルダの走行状態を示す平面図と側面図である。図14及び図15は、転動ガイド部材に代えてスペーサーカラー26が装着されている、それぞれ串ホルダの串反転手段を示す、搬送方向と直行する方向から見た側面図と搬送方向から見た側面図である。ガイド部材が設けられていない串ホルダが複数保持された水平面を回転する搬送コンベアと、搬送コンベアの周回経路に沿ってガイドレールが配設されていない他の態様の串焼き装置についても実際に製作したところ、手作り炭火焼きの風味を有する焼き鳥の串焼きを省力化を図りながら大量に連続生産することができることを確認した。
【符号の説明】
【0029】
1 搬送チェーン
2 アタッチメント
3 外側ガイドレール
4 内側ガイドレール(上側)
5 内側ガイドレール(下側)
6 串反転用ラック
7 串排出用ガイド板
8 保持ブロック
10 串ホルダ
11 大径筒状体
12 大径筒状凹面体
13 大径筒状凸面体
14 スプリングネジ
15 扁平孔
16 扁平孔の端部(奥部)
17 扁平孔の端部(挿入口部)
18 漏斗状口部
19 中径筒状体
20 小径筒状体
21 中心孔
22 転動ガイド部材
23 摺動ガイド部材
24 串反転用ピニオンギヤ
25 串排出用ロッド
26 スペーサーカラー
A 串挿着ステーション
B 串加熱ステーション
C 串反転ステーション
D 串排出ステーション
P 扁平状串基端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面を周回する搬送コンベア、及び、串の搬送経路に沿って設けられた、串挿着ステーション、串排出ステーション、串挿着ステーションから串排出ステーションの間に設けられた串加熱ステーション、及び串加熱ステーションの途中に設けられた串反転ステーションを備えた串焼き装置における串ホルダであって、
扁平状串基端部の挿入用の扁平孔を有する大径筒状体と;
前記扁平孔と連通する中心孔を有し、前記大径筒状体と連結する小径筒状体と;
前記搬送コンベアの周回経路に近接して配置された串反転用ラックと協働して、前記大径筒状体と小径筒状体との連結体である串ホルダを反転させる、前記大径筒状体と反対側の小径筒状体に挿嵌固設された串反転用ピニオンギヤと;
串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板と協働して串を串ホルダから脱落させる、前記中心孔に挿通され、その一端が扁平孔の一端部から他端部へ少なくとも進退する串排出用ロッドと;
を備えた串ホルダ。
【請求項2】
さらに、水平面を周回するガイド部材が設けられ、該ガイド部材が、小径筒状体の大径筒状体側に挿設され、小径筒状体を軸支して、かつ外側ガイドレール上を転動する転動ガイド部材と;前記小径筒状体の前記転動ガイド部材の反対側に挿嵌固設され、内側ガイドレール間を摺動する平行する2つの摺動面を有する摺動ガイド部材と;からなることを特徴とする請求項1記載の串ホルダ。
【請求項3】
大径筒状体が大径筒状凹面体と大径筒状凸面体とからなり、扁平孔が大径筒状凹面体の凹面部と大径筒状凸面体の凸面部とから形成され、前記大径筒状凹面体と大径筒状凸面体とが前記扁平孔を互いに狭くする方向に付勢されていることを特徴とする請求項1又は2記載の串ホルダ。
【請求項4】
扁平孔の挿入口が、奥に行くにしたがって小さくなる漏斗状の口部として形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の串ホルダ。
【請求項5】
串の搬送経路に沿って設けられた、串挿着ステーション、串排出ステーション、串挿着ステーションから串排出ステーションの間に設けられた串加熱ステーション、及び串加熱ステーションの途中に設けられた串反転ステーションを備え、扁平状基端部を有する串の串焼き装置であって、
請求項1〜4のいずれか記載の串ホルダが複数保持された水平面を回転する搬送コンベアと;
串挿着ステーションから串排出ステーションの間の串搬送経路の前記搬送コンベアの外側下部に設けられた串加熱手段と;
搬送コンベアの周回経路に近接して配置された複数の串反転用ラックと;
串搬送経路の終端部に設けられた串排出用ガイド板と;
を備えた串焼き装置。
【請求項6】
さらに、搬送コンベアの周回経路に沿ってガイドレールが配設され、該ガイドレールが、外側ガイドレール、及び対向して平行に周設された上下一対のガイドレールからなる内側ガイドレールと;からなることを特徴とする請求項5記載の串焼き装置。
【請求項7】
串加熱手段が炭火加熱であることを特徴とする請求項5又は6記載の串焼き装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか記載の串焼き装置の串挿着ステーションにおいて、串ホルダに串を挿着することを特徴とする冷凍焼き串の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−232112(P2012−232112A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90128(P2012−90128)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(000113067)プリマハム株式会社 (72)
【Fターム(参考)】