説明

主幹制御器

【課題】主幹制御器の操作部及び制御部間の接続距離を延長できるようにして、制御部を運転室以外の場所へ収納し運転室収納機器のスペースを確保するとともに、角度検出器の出力信号数を削減することで、車両艤装線数を削減することができる主幹制御器を提供する。
【解決手段】主幹制御器1は、ノッチ指令を操作するハンドル11の角度を検出するために角度検出器15を用いた操作部10とその制御部20とが分離された、鉄道車両用の主幹制御器である。この主幹制御器において、操作部の角度検出器出力を差動出力のシリアル信号とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道車両に使用する主幹制御器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両用の無接点式等の主幹制御器の操作ハンドルの角度検出器は、その出力がアナログ電圧によるものまたはパラレル出力式デジタル信号によるものであった。この角度検出器からの信号を受信しノッチ信号へ変換する制御部は、角度検出器からの出力信号の減衰やノイズの影響を防ぐため、主幹制御器の操作部に近い運転室内に設置された。あるいは、操作部とともに主幹制御器内に収容されて一体に構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−97726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、角度検出器の出力がパラレル出力式デジタル信号の場合、電線数が多く配線作業時間を費やしていた。また、上記のように制御部が主幹制御器の操作部に近い運転室内に設けられるため、運転室に収納する他の機器スペースを圧迫していた。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、主幹制御器の操作部及び制御部間の接続距離を延長できるようにして、制御部を運転室以外の場所へ収納し運転室収納機器のスペースを確保するとともに、角度検出器の出力信号数を削減することで、車両艤装線数を削減することができる主幹制御器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の主幹制御器は、ノッチ指令を操作するハンドルの角度を検出するために角度検出器を用いた操作部とその制御部とが分離された、鉄道車両用の主幹制御器である。この主幹制御器において、操作部の角度検出器出力を差動出力のシリアル信号とした。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、一実施形態にかかる主幹制御器の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、シリアルクロックとシリアル角度データの構成例を示した図である。
【図3】図3は、従来の主幹制御器の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
はじめに、一実施形態にかかる主幹制御器の構成について、図1を用いて説明する。図1は、一実施形態にかかる主幹制御器の構成を示すブロック図である。
【0009】
主幹制御器1は、電気鉄道車両の力行(加速)ノッチ指令及びブレーキ(制動)ノッチ指令を出力するもので、これらのノッチ指令を操作するための操作ハンドル機構、及びノッチ指令ハンドル11の操作角度を検出するロータリエンコーダ等の角度検出器15からなる操作部10、操作部10からの角度データを力行ノッチ指令及びブレーキノッチ指令に変換して出力する制御部20及び操作部10及び制御部20間の信号および電源を伝達する信号ケーブル30から構成される。
【0010】
操作部10のノッチ指令ハンドル11は、図1に示すように回転軸12に固定され、回転軸12はその両端を軸受け13a、13bにより、回動可能に支持されている。この構成によって、ノッチ指令ハンドル11は回転軸12により前後方向の往復操作を可能とする。回転軸12の回転は、回転軸12とともに回転する歯車14aと角度検出器15側の回転軸16とともに回転する歯車14bを介して角度検出器15に伝達される。
【0011】
角度検出器15は、ノッチ指令ハンドル11の回転角度を検出し、検出結果を電気信号として制御部20へ出力する。具体的には、角度検出器15は、制御部20から電源の供給を受けるとともに、制御部20からのシリアルクロック(下記)を受け、ノッチ指令ハンドル11の回転角度の検出結果である角度データを、シリアルクロックのデータクロック部に重畳した差動出力のシリアル信号(シリアル角度データ)を生成して、制御部20に返信する。なお、この角度検出器15は、従来のパラレル出力のロータリエンコーダに、その出力を上記差動出力のシリアル信号に変換する変換器を付加することで実施することもできる。
【0012】
ここで、図2に、シリアルクロックとシリアル角度データの構成例を示す。同図に示すように、シリアルクロックは、スタートコードとデータエンドコードの間にデータクロックを格納したデータクロック部を有し、末尾にチェックコードを付加したデータ構造となっている。このデータ構造をもつパケットが差動出力のシリアルクロックとして順次送信される。一方、シリアル角度データは、シリアルクロックのデータクロック部の各1クロックに1ビット分の角度データを重畳したもので、スタートコードとデータエンドコードの間に角度データが格納され、末尾にチェックコードが付加されたデータ構造となる。このデータ構造をもつパケットが差動出力のシリアル角度データとして角度検出器15から制御部20へ順次返信される。なお、角度データ部分には、データの誤りをチェックするためのコード等をさらに付加するようにしてもよい。
【0013】
図1に戻り、制御部20は、シリアルデータクロック生成部21と、シリアル/パラレル変換部22と、チェックコード生成部23と、チェックコード比較部24と、ノッチ変換部25を備えて構成される。
【0014】
シリアルデータクロック生成部21は、操作部10の角度検出器15のシリアル信号出力用伝送クロックを生成しこのクロックに、チェックコード生成部23が生成した可変チェックコード(このコードは、例えば“0101”の並びとしてもよいし、ランダムに生成するようにしてもよい)を付加して、角度検出器15へ差動出力のシリアルクロック信号として送出する。
【0015】
シリアル/パラレル変換部22は、角度検出器15から返されたシリアル角度データに含まれる角度データ及びチェックコードを、シリアルデータクロック生成部21からのシリアルクロックによりパラレル信号に変換して、角度データをノッチ変換部25へ出力し、チェックコードをチェックコード比較部24へ出力する。また、チェックコード比較部24からリセット信号(下記)を受けた場合には、シリアル/パラレル変換を停止する。
【0016】
チェックコード比較部24は、チェックコード生成部23からのチェックコードと、シリアル/パラレル変換部22からのチェックコードとを比較し、比較結果が一致した場合ノッチ変換部25に対しノッチ出力許可信号を出力する。一方、比較した結果が連続して異なった場合には、ノッチ変換部25およびシリアル/パラレル変換部22に対しリセット信号を出力し、また、ノッチ変換部25およびノッチ信号を受ける外部の車両情報制御装置(図示せず)に異常アラーム信号を出力する(この異常アラーム信号は、この信号を受けたノッチ変換部25から外部へ出力するようにしてもよい)。この異常アラーム信号により、外部の車両情報制御装置は、現在制御部20から出力されているノッチ信号が異常によるものであることを認識することができる。
【0017】
ノッチ変換部25は、シリアル/パラレル変換部22からのノッチ指令ハンドル11の角度データに対応したノッチ信号(力行ノッチ指令/ブレーキノッチ指令)に変換し、チェックコード比較部24からの出力許可信号によりノッチ信号を外部の車両情報制御装置に出力する。一方、チェックコード比較部24からリセット信号、異常アラームが入力された場合は、ノッチ信号の出力をリセット(力行指令及びブレーキ指令:“切”)する。
【0018】
本実施形態の主幹制御器1の比較例として、図3に、パラレル信号出力の角度検出器15’を用いた操作部10’と制御部20’が分離された従来の主幹制御器1’の構成例を示す。従来は、操作部10’から制御部20’への信号を(例えば、8ビットの)パラレル信号として信号ケーブル30’を介して送信していたため、操作部10’と制御部20’間の設置距離を延長するにも限りがあった。
【0019】
一方、本実施形態の主幹制御器1では、操作部10と制御部20間で送受信する信号を差動出力のシリアル信号としたので、操作部10と制御部20間の配線本数を削減することができ、また、外部ノイズの影響等を受けにくくなることから操作部10と制御部20間の設置距離を延長することが容易となった。
【0020】
また、本実施形態では、シリアルクロックおよびシリアル角度データに特定のチェックコードを付加し、制御部20が操作部10から誤ったチェックコードを受信した場合には、ノッチ信号をリセット(”切”)するようにしたので、誤った指令を制御部20から出力されるのを防ぐことができる。また、この場合に、異常アラーム信号も制御部20から出力するので、ノッチ信号を受ける外部の車両情報制御装置は、現在制御部20から出力されているノッチ信号が異常によるものであることを認識することができる。
【0021】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
1、1’ 主幹制御器
10、10’ 操作部
11 ノッチ指令ハンドル
12 回転軸
13a、13b 軸受け
14a、14b 歯車
15、15’ 角度検出器
16 回転軸
20、20’ 制御部
21 シリアルデータクロック生成部
22 シリアル/パラレル変換部
23 チェックコード生成部
24 チェックコード比較部
25 ノッチ変換部
30、30’ 信号ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノッチ指令を操作するハンドルの角度を検出するために角度検出器を用いた操作部とその制御部とが分離された、鉄道車両用の主幹制御器において、
前記操作部の角度検出器出力を差動出力のシリアル信号とした主幹制御器。
【請求項2】
前記制御部は、スタートコード、データクロック部、エンドコードおよびチェックコードで構成される差動出力のシリアルクロック信号を生成し前記角度検出器へ出力するシリアルクロック生成手段を備え、
前記角度検出器は、前記制御部からのシリアルクロック信号のデータクロック部に、該角度検出器が検出した前記ハンドルの角度データを重畳し、前記差動出力のシリアル信号として前記制御部に返信するようにした請求項1に記載の主幹制御器。
【請求項3】
前記制御部は、前記角度検出器から誤ったチェックコードを受信した場合、シリアル/パラレル変換を停止するとともに、外部に出力するノッチ信号をリセットし、さらに外部へ異常アラーム信号を出力するようにした請求項2に記載の主幹制御器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−51861(P2013−51861A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189852(P2011−189852)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】