説明

乗客コンベアの異常検出装置

【課題】踏段チェーンに対する踏段の連結異常を早期に検出することができる乗客コンベアの異常検出装置。
【解決手段】駆動スプロケット9と従動スプロケットの間に掛け渡されて循環移動する無端状の踏段チェーン3と、踏段チェーン3に設けられたローラ5と、踏段チェーン3に連結された複数の踏段2と、踏段チェーン3の循環移動方向に沿って配設されローラ5を案内するガイドレール6とを備えた乗客コンベアの異常検出装置30において、駆動スプロケット9及び従動スプロケットの外周を移動する踏段2から間隔をあけて駆動スプロケット9及び従動スプロケットの外周に沿って設けられた検出片32と、駆動スプロケット9及び従動スプロケットから離隔する方向への検出片32の移動を検出するスイッチ34と、検出片32から駆動スプロケット9及び従動スプロケットの外周を移動する踏段2へ向けて突出する突部40とを備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、乗客コンベアの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動く歩道やエスカレータ等の乗客コンベアは、乗客が乗る複数の踏段と、これらの踏段が連結された無端状の踏段チェーンとを備えている。踏段チェーンは、その折返し部に設けられた駆動スプロケットと従動スプロケットの間に掛け渡されており、駆動スプロケットに駆動装置から駆動力が伝達されることで、踏段チェーンが一方の乗降口と他方の乗降口との間を循環移動する。この踏段チェーンと共に循環移動する踏段の移動経路に沿って、一対の乗降口との間にはガイドレールが設けられ、踏段に設けられたローラが、このガイドレールに係合して転動することにより、踏段はガイドレールに案内されて一方の乗降口と他方の乗降口との間を移動する。
【0003】
踏段チェーンに対する踏段の連結が不十分であったり、寿命や外的な要因などの何らかの理由により踏段を踏段チェーンに連結するボルトが外れると、踏段チェーンの折返し部において踏段が反転する際にチェーンより脱落するおそれがあることから、従来より、踏段の脱落を検出する異常検出装置が提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−91755号公報
【特許文献2】特開2008−222354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような異常検出装置では、踏段を踏段チェーンに固定し忘れた場合や踏段がガイドレールから脱輪した場合に踏段の脱落を検出することができるが、踏段チェーンから完全に外れる前の踏段チェーンに対する踏段の連結が弛んだ状態では、異常を検出できないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題を考慮してなされたものであり、踏段チェーンに対する踏段の連結異常を早期に検出することができる乗客コンベアの異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の乗客コンベアの異常検出装置は、一対のスプロケットの間に掛け渡されて循環移動する無端状の踏段チェーンと、前記踏段チェーンに設けられたローラと、前記踏段チェーンに連結された複数の踏段と、前記踏段チェーンの循環移動方向に沿って配設され前記ローラを案内するガイドレールとを備えた乗客コンベアの異常検出装置において、前記スプロケットの外周を移動する前記踏段から間隔をあけて前記スプロケットの外周に沿って設けられた検出片と、前記スプロケットから離隔する方向への前記検出片の移動を検出するスイッチと、前記検出片から前記スプロケットの外周を移動する踏段へ向けて突出する突部とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る異常検出装置が適用された乗客コンベアの側面図である。
【図2】図1に示す乗客コンベアの駆動スプロケット近傍の要部拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1に示す乗客コンベアの駆動スプロケット近傍の要部拡大図であって、踏段が踏段チェーンから脱落した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に例示する乗客コンベア1は、本発明の一実施形態に係る乗客コンベアの異常検出装置(以下、異常検出装置という)30が適用される傾斜型の動く歩道である。なお、動く歩道では、複数の踏段が水平方向あるいは緩やかに傾斜方向に移動するのが一般的であるため、踏段を特に「踏板」や「パレット」と称する場合もあるが、本明細書においては、動く歩道の場合も「踏段」として以降の表記を統一する。また、本実施形態では、踏段2が一方(例えば、下階側)の乗降口7から他方(例えば、上階側)の乗降口8へ移動し、乗客が下階側の乗降口7から踏段2の踏み面2aに乗り移り上階側の乗降口8で降りる場合について説明する。
【0011】
乗客コンベア1は、複数の踏段2を備えている。これらの踏段2の両側部には、無端状の踏段チェーン3が取り付けられトラス4内に配置されている。
【0012】
図示した踏段チェーン3は、リンクプレートと組み合わされて踏段チェーン3を構成するローラ5が、各踏段2の前後に設けられた踏段ローラを兼ねる、コンベアチェーンの例を示している。
【0013】
踏段2の両側部には、ガイドレール6が踏段2の進行方向に沿って配設されており、ボルトなどによってトラス4に固定されている。ガイドレール6は踏段2に設けられたローラ5が転動する転動面を備え、ローラ5をガイドレール6に沿って案内する。
【0014】
ガイドレール6は、乗口に相当する下階側の乗降口7から降口に相当する上階側の乗降口8へ移動する踏段2に設けられたローラ5を案内する往路側ガイドレール6aと、上階側の乗降口8から下階側の乗降口7へ移動する踏段2に設けられたローラ5を案内する帰路側ガイドレール6b、6cとを備える。
【0015】
トラス4の内部の上階側には、駆動スプロケット9と、駆動スプロケット9に回転力を伝達する不図示の駆動装置とが配置されている。トラス4の内部の下階側には、従動スプロケット10が配置されている。
【0016】
駆動スプロケット9と従動スプロケット10との間には、踏段チェーン3のローラ5が両スプロケット9,10の外周面に設けられた歯部9a,10aに噛み合うように、踏段チェーン3が架け渡されている。
【0017】
そして、駆動スプロケット9と従動スプロケット10の歯部9a,10aにローラ5が噛み合った状態で駆動装置から回転力を受けた駆動スプロケット9が回転することで、ローラ5が、往路側ガイドレール6aを下階側から上階側へ摺動し、駆動スプロケット9の歯部9aに噛み合って駆動スプロケット9の外周を移動して帰路側ガイドレール6b、6cに移載され、帰路側ガイドレール6b,6cを上階側から下階側へ摺動した後、従動スプロケット10の歯部10aに噛み合って従動スプロケット10の外周を移動して再び往路側ガイドレール6aに戻るように循環する。これにより、踏段チェーン3に連結された踏段2が乗降口7と乗降口8の間を循環移動する。
【0018】
このような構成の乗客コンベア1では、駆動スプロケット9及び従動スプロケット10の近傍に、踏段チェーン3に対する連結が弛んだり、あるいは、踏段チェーン3に対する連結が外れた踏段2を検出する異常検出装置30がそれぞれ設けられている。
【0019】
なお、駆動スプロケット9及び従動スプロケット10の近傍に設けた異常検出装置30は、同一構造を有していることから、以下、駆動スプロケット9の近傍に設けた異常検出装置30について説明し、従動スプロケット10の近傍に設けた異常検出装置30の説明を省略する。
【0020】
なお、異常検出装置30は、左右の駆動スプロケット9及び左右の従動スプロケット10にそれぞれ設けられており、1の乗客コンベア1につき4つ設けられているが、いずれも同一構造を有していることから、以下、一方の駆動スプロケット9の近傍に設けた異常検出装置30について説明し、他の異常検出装置30の説明を省略する。
【0021】
異常検出装置30は、図2及び図3に示すように、駆動スプロケット9の外方に設けられた検出片32と、検出片32の移動を検出するスイッチ34とを備える。
【0022】
検出片32は、駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2から径外方向に間隔Cをあけて駆動スプロケット9の外周に沿って円弧状に設けられた円弧部35と、円弧部35から上方に延びる取付部37とを備える。
【0023】
円弧部35は、駆動スプロケット9において踏段2の踏み面2aが水平面に対して垂直になる位置から帰路側ガイドレール6b,6cの上方に踏段2が到達する位置までの区間に沿って設けられている。
【0024】
円弧部35の内面側、つまり、駆動スプロケット9の外周面に対向する面には駆動スプロケット9へ向けて突出する突部40が設けられており、突部40と駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2との間隔Dが、円弧部35から駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2までの間隔Cより小さくなっている。なお、本実施形態では、突部40は、検出片32と別個に成形された部材であり、ネジなどにより検出片32の円弧部35に固定されている。
【0025】
円弧部35の下端部は下支持部材36を介してトラス4に固定されている。下支持部材36は検出片32が水平方向であって駆動スプロケット9から離れる方向H1へ移動可能な状態で検出片32を支持している。
【0026】
円弧部35には、下支持部材36が支持する位置より下方に延びる延出部35aが設けられており、延出部35aの先端に下方へ向けて折れ曲がる逃げ部35bが設けられている。
【0027】
取付部37の上端部は、上支持部材38を介してトラス4に固定されている。この上支持部材38は、駆動スプロケット9から離れる水平方向の一方向H1へ移動可能としつつ、バネ39によって水平方向の一方向H1の反対の方向H2に検出片32を付勢した状態で、駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2に対して所定の間隔Cを維持する位置に検出片32を支持する。
【0028】
スイッチ34は、検出片32に当接するアクチュエータ34aの作動を検出するリミットスイッチであり、検出片32が踏段2に対して所定の間隔Cを維持する位置から駆動スプロケット9より離れる水平方向の一方向H1へ移動したことを検出する。
【0029】
なお、図2〜図4における符号50は、駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2の移動軌跡に沿った傾斜面を備え、踏段チェーン3から脱落した踏段2を支持する補助レールである。
【0030】
踏段チェーン3に対する連結が外れた踏段2は、図4に示すように、当該踏段2の移動方向前方のローラ5を中心とする軸回りに下方へ向けて落下するが、落下した踏段2の踏み面2aを補助レール50によって支持することでローラ5を帰路側ガイドレール6bへ移載する。このような補助レール50は、図3に示すように、帰路側ガイドレール6b,6cの内側へ乗客コンベア1の幅方向に位置をずらして配置され、取付部材51を介してトラス4に固定されている。
【0031】
本実施形態の異常検出装置30において、踏段チェーン3に対する連結が弛んだり、あるいは、踏段チェーン3に対する連結が外れた踏段2は、駆動スプロケット9の外周を移動すると、踏段2の踏み面2aが水平面に対して垂直になる位置から帰路側ガイドレール6b,6cの上方に踏段2が到達する位置までの区間において、踏段2に作用する重力によって駆動スプロケット9の歯部9aとローラ5との噛み合わせが外れて駆動スプロケット9の外周面から離れる。
【0032】
駆動スプロケット9の外周面から離れた踏段2は、検出片32の円弧部35あるいは円弧部35から突出する突部40に当接して駆動スプロケット9から離れる水平方向の一方向H1へ検出片32を押圧して、スイッチ34のアクチュエータ34aを作動させる。これにより、異常検出装置30は、駆動スプロケット9及び従動スプロケット10の近傍に、踏段チェーン3に対する連結が弛んだり、あるいは、踏段チェーン3に対する連結が外れた踏段2を検出し、乗客コンベア1の運転を停止する。
【0033】
以上のように本実施形態の異常検出装置30では、検出片32の円弧部35に駆動スプロケット9へ向けて突出する突部40が設けられ突部40と駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2との間隔Dが、円弧部35から駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2までの間隔Cより小さくなっている。
【0034】
そのため、円弧部35において駆動スプロケット9の外周を移動する踏段2までの間隔Cをある程度大きく設けて円弧部35の取付作業性を向上させつつ、踏段チェーン3に対する踏段2の連結が弛み始めた状態や、踏段2の移動方向に沿った踏み面2aの長さが駆動スプロケット9の直径に対して小さい場合のように、踏段2が駆動スプロケット9の外周面から離れる距離が小さい場合でも、突部40において踏段2が当接して踏段2の異常を検出することができ、踏段チェーンに対する踏段の連結異常を早期に検出することができる。
【0035】
また、本実施形態の異常検出装置30では、検出片32がその下端部を支持する下支持部材36より下方に延びる延出部35aを備えているため、重力により踏段2に作用する下向きの力が大きく踏段2が脱落しやすい位置に検出片32を配設することができ、駆動スプロケット9の外周面の広範囲にわたって検出片32を配設することができる。
【0036】
また、延出部35aの先端に下方へ向けて折れ曲がる逃げ部35bが設けられているため、駆動スプロケット9から帰路側ガイドレール6cに踏段2のローラ5が乗り移る際にローラ5が検出片32に不用意に当接するのを抑えることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、異常検出装置30を適用する乗客コンベアとして動く歩道の場合について説明したが、エスカレータに異常検出装置30を適用することもできる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1…乗客コンベア 2…踏段 2a…踏み面
3…踏段チェーン 4…トラス 5…ローラ
6…ガイドレール 6a…往路側ガイドレール 6b,6c…帰路側ガイドレール
7…乗降口 8…乗降口 9…駆動スプロケット
30…異常検出装置 32…検出片 34…スイッチ
34a…アクチュエータ 35…円弧部 35a…延出部
35b…逃げ部 36…下支持部材 37…取付部
38…上支持部材 39…バネ 40…突部
50…補助レール 51…取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスプロケットの間に掛け渡されて循環移動する無端状の踏段チェーンと、前記踏段チェーンに設けられたローラと、前記踏段チェーンに連結された複数の踏段と、前記踏段チェーンの循環移動方向に沿って配設され前記ローラを案内するガイドレールとを備えた乗客コンベアの異常検出装置において、
前記スプロケットの外周を移動する前記踏段から間隔をあけて前記スプロケットの外周に沿って設けられた検出片と、
前記スプロケットから離隔する方向への前記検出片の移動を検出するスイッチと、
前記検出片から前記スプロケットの外周を移動する踏段へ向けて突出する突部とを備えることを特徴とする乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項2】
前記一対のスプロケットは、駆動装置によって回転駆動される駆動スプロケットと、従動スプロケットとを備え、
前記検出片が、前記駆動スプロケットに沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項3】
前記検出片が、前記駆動スプロケット及び前記従動スプロケットに沿って設けられていることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項4】
前記検出片の下端部を支持する支持部材を備え、
前記検出片が、前記支持部材より下方に延出する延出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの異常検出装置。
【請求項5】
前記ガイドレールは、乗口から降口へ移動する前記踏段の前記ローラを案内する往路側ガイドレールと、降口から乗口へ移動する前記踏段の前記ローラを案内する帰路側ガイドレールとを備え、
前記踏段チェーンから脱落した踏段を支持する補助レールが、前記延出部の下方から前記帰路側ガイドレールの下方まで設けられていることを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18603(P2013−18603A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153026(P2011−153026)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】